(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025018427
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】物体検知装置及び物体検知方法
(51)【国際特許分類】
G01S 17/89 20200101AFI20250130BHJP
【FI】
G01S17/89
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023122119
(22)【出願日】2023-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】390010054
【氏名又は名称】コイト電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】細谷 大輔
(72)【発明者】
【氏名】木村 晃治
【テーマコード(参考)】
5J084
【Fターム(参考)】
5J084AA05
5J084AA07
5J084AA09
5J084AA14
5J084AB01
5J084AB07
(57)【要約】
【課題】センサヘッド(LiDAR)からの距離に関わらず、精度良くクラスタリングすることができる物体検知装置及び物体検知方法を提供する。
【解決手段】物体検知装置10は、地上に設置されたLiDAR2から点群情報が入力される入力部11aと、入力部11aに入力された点群情報が含む各点の点間距離について設定された閾値に基づいてクラスタリング処理を行う処理部11bと、を備えている。そして、処理部11bは、点間距離について設定された複数の閾値それぞれによってクラスタリング処理を行い、それらのクラスタリング処理で得られたクラスタのうち、重複するクラスタを削除する重複クラスタ整理処理を行っている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上に設置され、光を間欠的に照射して所定の空間を走査し、当該光の反射光を受光して当該反射光に基づく点群情報を取得するセンサから前記点群情報が入力される入力部と、
前記入力部に入力された前記点群情報を含む各点の点間距離について設定された閾値に基づいてクラスタリング処理を行う処理部と、
を備え、
前記処理部は、前記点間距離について設定された複数の閾値それぞれによってクラスタリング処理を行い、前記クラスタリング処理で得られたクラスタのうち、重複するクラスタを削除する処理を行う、
ことを特徴とする物体検知装置。
【請求項2】
前記処理部は、前記複数の閾値を、前記センサが検知できる最大奥行距離と、最低限分離したい近接物体間距離に基づく最小の点間距離と、に基づいて算出することを特徴とする請求項1に記載の物体検知装置。
【請求項3】
前記処理部は、前記複数の閾値を、前記最大奥行距離での最大点間距離と、前記最小の点間距離と、の間を複数に等分して算出することを特徴とする請求項2に記載の物体検知装置。
【請求項4】
前記処理部は、一のクラスタ内に複数のクラスタが含まれる場合に当該一のクラスタを削除することを特徴とする請求項1に記載の物体検知装置。
【請求項5】
前記処理部は、一のクラスタが他のクラスタ内にただ一つ含まれている場合は当該一のクラスタを削除することを特徴とする請求項1に記載の物体検知装置。
【請求項6】
前記処理部でクラスタリングされた点群に基づいて物体を検知する検知部を更に備えることを特徴とする請求項1から5のうちいずれか一項に記載の物体検知装置。
【請求項7】
地上に設置され、光を間欠的に照射して所定の空間を走査し、当該光の反射光を受光して当該反射光に基づく点群情報を取得するセンサを備える物体検知装置で実行される物体検知方法であって、
前記センサから前記点群情報が入力される入力工程と、
前記入力工程に入力された前記点群情報が含む各点の点間距離について設定された閾値に基づいてクラスタリング処理を行う処理工程と、
を含み、
前記処理工程は、前記点間距離について設定された複数の閾値それぞれによってクラスタリング処理を行い、前記クラスタリング処理で得られたクラスタのうち、重複するクラスタを削除する処理を行う、
ことを特徴とする物体検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば道路上の物体を検知する物体検知装置及び物体検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路上の物体を検知する物体検知装置として、LiDAR(Light Detection And Ranging)により検出された点群をクラスタリングして生成されたクラスタを用いて物体を検出する方法が知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、各測距点同士の点間距離に基づいて、測距点群の部分集合であるクラスタにクラスタリングすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したクラスタリングの際には、予め定めた点間距離の閾値に基づいて、クラスタリングを行っている。LiDARのレーザは放射状の広がりを持つため、センサヘッドから遠くなるほど単位面積当たりの反射点数が少なく、かつ点同士の間隔が大きくなる。遠い地点では点間距離の閾値を十分に大きく設定しないと同一物体からの反射点群であるにもかかわらず別々のクラスタとして扱ってしまうおそれがある。
【0006】
一方で、点間距離の閾値が大きすぎるとセンサヘッドから近い地点では、近接して存在する複数物体からの反射点群を1つのクラスタとして扱ってしまうおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は、センサヘッド(LiDAR)からの距離に関わらず、精度良くクラスタリングすることができる物体検知装置及び物体検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載された発明は、地上に設置され、光を間欠的に照射して所定の空間を走査し、当該光の反射光を受光して当該反射光に基づく点群情報を取得するセンサから前記点群情報が入力される入力部と、前記入力部に入力された前記点群情報を含む各点の点間距離について設定された閾値に基づいてクラスタリング処理を行う処理部と、を備え、前記処理部は、前記点間距離について設定された複数の閾値それぞれによってクラスタリング処理を行い、前記クラスタリング処理で得られたクラスタのうち、重複するクラスタを削除する処理を行う、ことを特徴とする物体検知装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数の点間距離の閾値でクラスタリング処理を施すので、1つの閾値では複数の物体を含む1つのクラスタとなるものを分離した複数のクラスタとすることができる。また、複数の閾値で生成されたクラスタで重複する場合は、一方を削除することで、現実の物体とクラスタとを整合させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる物体検知装置の設置例である。
【
図2】
図1に示された物体検知装置のブロック図である。
【
図3】
図2に示された物体検知装置における点間距離リスト作成処理のフローチャートである。
【
図4】検知したい最大奥行距離dmaxと最大点間距離wmaxについての説明図である。
【
図5】
図2に示された物体検知装置におけるマルチクラスタリング処理のフローチャートである。
【
図7】注目クラスタが他クラスタ内にただ一つ含まれる場合の例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を、
図1~
図7を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態にかかる物体検知装置の設置例である。
【0012】
図1に示した物体検知装置10は、例えば交差点の近傍等に固定された支柱Pに設置される。そして、物体検知装置10は交差点を通行する歩行者や車両等の移動体を検知する。即ち、物体検知装置10は、地上に設置されている。この地上に設置されているとは、直接的又は間接的を問わずに地上に固定されていること、つまり、車両等の移動体ではなく建造物等の地上に固定的に設置されている物体へ設置されることを意味している。
【0013】
物体検知装置10は、本体部1と、LiDAR2と、を備えている。本体部1は、支柱Pの下部に制御ボックス等として設けられる。本体部1は、
図2のブロック図に示すように、制御部11と、通信部12と、を備えている。
【0014】
制御部11は、例えばコンピュータ等で構成されている。制御部11は、物体検知装置10の全体制御を司る。
図1では、制御部11は、入力部11aと、処理部11bと、検知部11cと、を機能的に備えている。
【0015】
入力部11aは、LiDAR2が取得した点群情報が入力される。処理部11bは、入力部11aに入力された点群情報が含む各点の点間距離について設定された閾値に基づいてクラスタリング処理を行う。検知部11cは、処理部11bでクラスタリングされた点群に基づいて物体を検知する。検知部11cは、例えばクラスタの形状や大きさ等から歩行者や車両などの移動体の種別を判別する。
【0016】
通信部12は、制御部11で検知された物体に関する情報を外部へ出力する。通信部12は、例えば無線通信装置として構成すればよい(有線通信装置でもよい)。物体に関する情報としては、物体の種別や移動方向、移動速度などが挙げられる。また、出力先の具体例としては、支柱Pの近隣を通行する車両等の移動体や、交通管制センター等が挙げられる。
【0017】
LiDAR2は、レーザ光を間欠的に照射して所定の空間を走査し、当該光の反射光を受光して当該反射光に基づく点群情報(3次元点群情報)を取得するセンサである。LiDAR2は、照射したレーザ光の反射光により、照射範囲の空間に存在する物体までの距離を離散的に測定し、当該物体の位置や形状を3次元の点群として認識する。LiDAR2は、本実施形態では、
図1に示したように、支柱Pの上部に設置され、所定の空間として道路表面R上(道路表面R及びその上方の空間)を走査する。
【0018】
次に、上述した構成の物体検知装置10において、物体検知動作のうちのクラスタリング動作について
図3~
図7を参照して説明する。
図3は、点間距離リスト作成処理のフローチャートである。
図3のフローチャートは後述する
図5のフローチャートを実行する前に行う。
【0019】
点間距離リストとは、後述するマルチクラスタリング処理で用いる点間距離の閾値のリストである。つまり、
図3のフローチャートを実行することで複数の閾値を生成しリスト化している。
【0020】
まず、処理部11bは、LiDAR2で検知したい最大奥行距離dmaxでの最大点間距離wmaxを算出する(ステップS11)。ここで、最大奥行距離dmaxと最大点間距離wmaxについて
図4を参照して説明する。
図4はLiDAR2から間欠的に出射されたレーザ光を模式的に示した図である。
図4では、LiDAR2から出射されたレーザ光は、奥行距離d離れた地点まで到達する。奥行とは、
図4に示したように、LiDAR2から見てレーザ光を照射する方向である。
【0021】
そして、LiDAR2の水平方向の分解能をθとすると、奥行距離dにおける点間距離w1、w2、…、wnは図示した式のとおりとなる。
図4に示した式のうちwnを算出する式を(1)式として以下に示す。
wn=d*tan(nθ)-d*tan((n-1)θ)・・・(1)
【0022】
つまり、検知したい最大奥行距離dmaxとは、LiDAR2により検知したい最大の奥行距離dである。また、最大点間距離wmaxとは、最大奥行位置dmaxにおける一番外側の照射点とその内側の照射点の点間距離wnである。LiDAR2の構造上、最大奥行位置dmaxにおける最大点間距離はこのwnとなる。したがって、上記した最大奥行位置dmaxと、分解能θと、LiDAR2の片側水平方向発射数nと、が判明すれば、最大点間距離wmaxを求めることができる。
【0023】
図3の説明に戻る。次に、処理部11bは、点間距離リスト要素間の差分値wdiffを算出する(ステップS12)。差分値wdiffは以下の(2)式により求められる。
wdiff=(wmax-wmin)/j・・・(2)
【0024】
(2)式中のwminは、最低限分離したい近接物体間距離より十分に小さい数値である(以下、最小の点間距離wminとする)。最小の点間距離wminは、例えば並走する歩行者が500mm以上離れている場合は分離したいが、499mmの場合は分離できなくても許容するとした場合はwmin=499mmとなる。(2)式中のjは、点間距離リストを分割したい数である。この分割したい数jは1以上の値が設定される。分割したい数jの上限値は処理部11bの処理能力によるが概ね10以下が望ましい。
【0025】
分割したい数jと差分値wdiffについて説明する。例えば、点間距離リストが2要素(1000mmと500mm)であるとする。この場合、点間距離1000mmを基準(閾値)としてクラスタリング処理を行うと、レーザの照射間隔が999mmに広がってしまう奥行地点でも点群のグループ化が可能になる。一方で、999mm以下の間隔で並んで移動する2つの物体は一体化してしまう。点間距離500mmを基準としてクラスタリング処理を行うと、501mm以上の間隔で並んで移動する2つの物体は分離して検知することが出来る。しかし、レーザの照射間隔が501mm以上に広がってしまう奥行地点では500mmの点間距離を基準としたクラスタリング処理は有効に働かない。
【0026】
ここで、レーザの照射間隔が749mmに広がってしまう奥行地点において800mm間隔で並んで移動する2つの物体を検知する場合、点間距離1000mm基準でのクラスタリング処理では一塊の物体として検知される。一方で点間距離500mm基準でのクラスタリング処理では点のグループができずに全てが孤立点となってしまう。そこで、点間距離1000mmでのクラスタリング処理と点間距離500mmのクラスタリング処理の間に点間距離750mmのクラスタリング処理を行うと、2つの物体としての検知が可能になる。つまり、分割したい数jとは、最大点間距離wmaxと最小の点間距離wminとの間を何分割するかを定める値である。
【0027】
例えば「奥行距離100m以内の物体を検知したい。また、501mm以上の間隔をあけて移動する物体は分離して検知したい。ただし、500mm以下に近接して移動しているなら分離できなくても許容する」という要求を受けた場合、最大の基準点間距離(wmax)は、上記したように奥行距離100mでのレーザの照射間隔になる。例えば、照射間隔が999mmに広がってしまうなら1000mmの点間距離(閾値)が必要になる。一方、最小の点間距離(wmin)は分離要求から500mmになる。上記した分割したい数jは、換言すればクラスタリング処理を余分に追加できる数であり、このjに応じて最大点間距離wmaxから最小の点間距離wminの区間を等分したのが差分値wdiffである。
【0028】
次に、処理部11bは、点間距離リストLのi番目を算出する(ステップS13)。i番目の点間距離Liは以下の(3)式により求められる。ここで、iは整数であり、このステップS13はiを0から始めるとすると、ステップS13を1回実行する度にiを1ずつ増加させ、i≦jの関係を満たす間繰り返す。つまり、ステップS13はj+1回繰り返される。
Li=wmax-wdiff*i・・・(3)
【0029】
このようにして、点間距離リストLが作成される。例えば、最大点間距離wmax=1000mm、最小の点間距離wmin=500mm、分割したい数j=2ならば差分値wdiffは250になり、点間距離リストLは(1000mm、750mm、500mm)の3要素を持つことになる。
【0030】
次に、マルチクラスタリング処理について
図5のフローチャートを参照して説明する。マルチクラスタリング処理とは、
図3のフローチャートを実行して生成した点間距離リストLに含まれる点間距離を閾値として用いて複数回のクラスタリング処理を行うことである。
【0031】
まず、以下のステップS21、S22は、点間距離リストLの長さ分繰り返す。例えば点間距離リストLがL0=1000、L1=750、L2=500の場合は、L0から順にL2まで3回繰り返される。点間距離リストLは、分割したい数jが1以上であることと、(2)式から、必ず2以上の点間距離が含まれる。したがって、ステップS21、S22のループ(クラスタリングループ)は複数回実行される。
【0032】
ステップS21では、処理部11bは、クラスタリング処理を実行する。クラスタリング処理は、上記したように、LiDAR2が取得した点群情報が入力部11aに入力され、入力された点群情報について、点間距離リストLから選択された点間距離(閾値)に基づいてクラスタを生成する周知の処理である。
【0033】
次のステップS22では、処理部11bは、各クラスタに含まれない点を除外する。このステップS22は、クラスタリング処理を繰り返す際に、より大きな点間距離でのクラスタリングでクラスタに含まれなかった点はそれよりも小さな点間距離でのクラスタリングでクラスタに含まれる可能性は無いため、処理高速化のために除外するものである。このステップS22の処理を行うことで、次回のループを実行する際にクラスタリングの対象となるのは全てクラスタに含まれる点群となる。
【0034】
次のステップS23~S25は、ステップS21で生成されたクラスタ個数分繰り返す。これらのステップS23~S25は重複クラスタ整理ループともいう。ステップS23では、処理部11bは、ループ処理の各回において処理対象として注目しているクラスタ(以下、注目クラスタ)内に複数のクラスタが含まれるか判定する。注目クラスタ内に複数のクラスタが含まれるとは、
図6に示したように、クラスタα2内にクラスタβ1とクラスタβ2とが含まれるような場合を示している。
図6は、LiDAR2から照射されたレーザ光と、そのレーザ光の範囲にある物体V(車両)、P1(歩行者)、P2(歩行者)がある場合に、点間距離aではクラスタα1、α2が生成され、点間距離aより短い点間距離bではクラスタβ1、β2が生成されている。
【0035】
図5の説明に戻る。ステップS23の判定の結果複数のクラスタが含まれる場合は(ステップS23:yes)、処理部11bは、注目クラスタを削除する(ステップS24)。このステップS24は、例えば、
図6において、注目クラスタをクラスタα2とした場合が該当する。この場合、クラスタα2にはクラスタβ1とクラスタβ2とが含まれる。これは、例えば点間距離aに基づいてクラスタα2を生成したが、実際は物体P1と物体P2を含んでいるのでクラスタα2は不要であり、点間距離bに基づいて生成されたクラスタβ1とクラスタβ2のみを残すのが適切である。
【0036】
一方、ステップS23の判定の結果複数のクラスタが含まれない場合は(ステップS23:no)、処理部11bは、注目クラスタが他クラスタ内にただ一つ含まれるか判定する(ステップS25)。ステップS25について、
図7を参照して説明する。
図7は、トラックTの側面を示したものである。このトラックTについてクラスタγ1とクラスタγ2が生成され、クラスタγ2はクラスタγ1にただ一つ含まれるとする。また、図中の黒丸は点群の点であるとする。
【0037】
これは、注目クラスタが他クラスタ内にただ一つ含まれる状態とは、
図7において、トラックTの荷台など物体の水平な部分で点の粗密が発生している状態となっていることを意味する。そのため、小さいクラスタγ2は削除して大きなクラスタγ1のみを残すようにするのが妥当である。
【0038】
ステップS24の判定の結果、注目クラスタが他クラスタ内にただ一つ含まれる場合は(ステップS24:yes)、処理部11bは、ステップS25に進む。つまり、上記したように注目クラスタを削除する。
【0039】
一方、注目クラスタが他クラスタ内にただ一つ含まれない場合は(ステップS24:no)、処理部11bは、ステップS23~S25のループを終了し、次のクラスタの重複クラスタを整理する。全てのクラスタの重複クラスタの整理が完了した場合はフローチャートを終了する。
【0040】
ここで、
図5の重複クラスタ整理ループについて例を用いて説明する。例えば、点間距離リストLが(1000mm、750mm、500mm)の3要素の場合であれば、クラスタリングループ(ステップS21、S22)は3回実行される。
【0041】
このとき、レーザの照射間隔が749mmに広がってしまう奥行地点において800mm間隔で並んで移動する2つの物体がいる場合、点間距離1000mmでのクラスタリング処理では2つの物体を囲う大きなクラスタが1つ出力される。また、点間距離750mmでのクラスタリング処理では並んでいる物体をそれぞれ囲うクラスタが2つ出力される。また、点間距離500mmでのクラスタリング処理ではクラスタが出力されない。この結果、出力されたクラスタ全てを採用してしまうと、物体は2つなのに3つの出力があるという現実に即さない結果になってしまうので、重複クラスタを整理する必要がある。
【0042】
そこで、重複クラスタ整理ループにおいて、クラスタリングループの結果で出力されたクラスタについて順に注目して処理を行う。点間距離1000mmでのクラスタリング処理で出力されたクラスタに注目した場合、そのクラスタの空間的な広がりの中には点間距離750mmでのクラスタリング処理で出力されたクラスタ2つが含まれている。よって、点間距離1000mmでのクラスタリング処理で出力されたクラスタは削除する。これにより、現実に存在するのは並走する2つの物体であり、残されたクラスタも2つなので合致することになる。
【0043】
上述したフローチャートによれば、ステップS21が入力工程、クラスタリングループが処理工程として機能する。
【0044】
本実施形態によれば、物体検知装置10は、地上に設置されたLiDAR2から点群情報が入力される入力部11aと、入力部11aに入力された点群情報が含む各点の点間距離について設定された閾値に基づいてクラスタリング処理を行う処理部11bと、を備えている。そして、処理部11bは、点間距離について設定された複数の閾値それぞれでクラスタリング処理を行い、それらのクラスタリング処理で得られたクラスタのうち、重複するクラスタを削除する重複クラスタ整理処理を行っている。
【0045】
物体検知装置10が上記のように構成されることにより、複数の点間距離の閾値でクラスタリング処理を施すので、1つの閾値だけでは複数の物体を含む1つのクラスタとなるものを分離した複数のクラスタとすることができる。また、複数の点間距離で生成されたクラスタで重複する場合は整理して削除することで、現実の物体とクラスタとを整合させることができる。
【0046】
また、処理部11bは、複数の閾値をLiDAR2からの奥行距離dに基づいて予め算出している。このようにすることにより、例えばLiDAR2から離れるにしたがって、点間距離が大きくなるような閾値を設定することができる。
【0047】
また、処理部11bは、複数の閾値を、LiDAR2が検知できる最大奥行距離dmaxと、最小の点間距離wminと、に基づいて算出している。このようにすることにより、最大奥行距離dmaxにおける最大点間距離wmaxを求めることができ、少なくとも最大点間距離wmaxと最小の点間距離wminとを閾値に含むことができるようになる。
【0048】
また、処理部11bは、複数の閾値を、LiDAR2が検知できる最大奥行距離dmaxでの最大点間距離wmaxと、最小の点間距離wminと、の間を複数に等分して算出している。このようにすることにより、最大点間距離wmaxと最小の点間距離wminとに加えて、それらの中間距離に対応する点間距離も閾値として設定することができる。したがって、より精度良くクラスタリング処理を行うことができる。
【0049】
また、処理部11bは、注目クラスタ内に複数のクラスタが含まれる場合に注目クラスタを削除している。このようにすることにより、重複するクラスタを削除することができる。
【0050】
また、処理部11bは、注目クラスタが他クラスタ内にただ一つ含まれている場合は注目クラスタを削除している。このようにすることにより、物体の水平な部分で点の粗密が発生している状態などで、注目クラスタが他クラスタ内にただ一つ含まれている場合は、注目クラスタを削除して現実の物体とクラスタとを整合させることができる。
【0051】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。即ち、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によってもなお本発明の物体検知装置及び物体検知方法の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【符号の説明】
【0052】
1 本体部
2 LiDAR(センサ)
10 物体検知装置
11 制御部
11a 入力部
11b 処理部
11c 検知部