特開 2025-1845 塗布装置

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2025001845

(43)【公開日】2025-01-09

(54)【発明の名称】塗布装置

(51)【国際特許分類】

   B05C 5/02 20060101AFI20241226BHJP

   B05C 11/10 20060101ALI20241226BHJP

   H01M 4/139 20100101ALI20241226BHJP

【ＦＩ】

B05C5/02

B05C11/10

H01M4/139

【審査請求】未請求

【請求項の数】7

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2023101554

(22)【出願日】2023-06-21

(71)【出願人】

【識別番号】000219314

【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社

(72)【発明者】

【氏名】北島 賢司

(72)【発明者】

【氏名】木田 威

【テーマコード（参考）】

4F041

4F042

5H050

【Ｆターム（参考）】

4F041AA12

4F041AB01

4F041CA03

4F041CA13

4F041CA16

4F041CA17

4F042AA22

4F042AB00

4F042BA08

4F042BA12

4F042BA25

4F042CB02

4F042CB08

4F042CB24

5H050AA19

5H050BA17

5H050GA10

5H050GA22

5H050GA29

(57)【要約】

【課題】塗布終了部における塗布液の引きずりを抑制することができる塗布装置を提供することを目的としている。
【解決手段】搬送される基材に対して塗布液を塗布する塗布装置であって、基材の搬送方向と直交する幅方向に長い吐出口と、前記吐出口と繋がり塗布液を前記吐出口に供給する塗布流路とが形成された塗布部と、前記塗布流路の容積を変化させる容積調節機構と、を備えており、前記容積調節機構は、前記幅方向に沿って配列されるように前記塗布流路に挿入された複数の容積調節部と、前記容積調節部の挿入量を調節する駆動部と、を有している構成とする。
【選択図】図２

【特許請求の範囲】

【請求項1】

搬送される基材に対して塗布液を塗布する塗布装置であって、
基材の搬送方向と直交する幅方向に長い吐出口と、前記吐出口と繋がり塗布液を前記吐出口に供給する塗布流路とが形成された塗布部と、
前記塗布流路の容積を変化させる容積調節機構と、を備えており、
前記容積調節機構は、前記幅方向に沿って配列されるように前記塗布流路に挿入された複数の容積調節部と、前記容積調節部の挿入量を調節する駆動部と、を有していることを特徴とする塗布装置。

【請求項2】

前記容積調節部は、一方向に長く形成され、前記塗布部の前記塗布流路を形成する壁部において前記吐出口と対向する部分から前記吐出口に向かって伸びるように前記塗布流路に挿入されて、前記駆動部により前記容積調節部の長手方向に往復動作することを特徴とする請求項１に記載の塗布装置。

【請求項3】

前記容積調節機構は、前記駆動部により各々の前記容積調節部の挿入量を個別に調節することを特徴とする請求項１又は請求項２に記載の塗布装置。

【請求項4】

前記容積調節機構は、前記塗布部による塗布液の塗布を中断させる際に前記容積調節部の挿入量が少なくなるように前記容積調節部の挿入量を調節する第１の調節モードと、
前記塗布部による塗布液の塗布を再開させる際に前記第１の調節モードにおいて調節された前記容積調節部の挿入量を調節前の挿入量に戻すように前記容積調節部の挿入量を調節する第２の調節モードと、を有しており、
前記第１の調節モードでは、前記駆動部により各々の前記容積調節部の挿入量を同時に調節し、
前記第２の調節モードでは、前記駆動部により各々の前記容積調節部の挿入量を時間差をもたせて調節することを特徴とする請求項３に記載の塗布装置。

【請求項5】

前記第２の調節モードでは、前記幅方向において端部側に位置する前記容積調節部から中央部側に位置する前記容積調節部に向かって順番に前記駆動部により各々の前記容積調節部の挿入量を調節することを特徴とする請求項４に記載の塗布装置。

【請求項6】

前記塗布流路は、前記幅方向に長く塗布液を溜める空間であるマニホールドと、前記幅方向に広く前記マニホールドと前記吐出口とを繋ぐスリットと、を有しており、
前記容積調節部は、前記マニホールドに挿入されていることを特徴とする請求項１又は請求項２に記載の塗布装置。

【請求項7】

前記容積調節部の前記マニホールドに挿入された先端部には、塗布液を撹拌するための撹拌部が設けられていることを特徴とする請求項６に記載の塗布装置。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

基材に塗布液を塗布して塗膜を形成する塗布装置に関する。

【背景技術】

【0002】

リチウムイオン電池は、ロールツーロールで搬送されるアルミ箔や、銅箔などのシート状の基材に対して、電極材料のスラリーを塗布して塗膜を形成し、形成した塗膜を乾燥させることで正極、負極が形成されている。

【0003】

そして、搬送される基材に塗布液を塗布する工程では、生産性向上のための高速化、塗布液のロス軽減のために塗布液を間欠的に塗布することが行われている。すなわち、ロールツーロールで搬送される基材に対して塗布液の塗布と塗布の中断が繰り返されて、基材の搬送方向において各々の塗膜間に任意の間隔が空くように基材上に塗膜を連続的に形成している。

【0004】

下記特許文献１には、塗布液を間欠的に塗布する塗布装置が開示されている。この塗布装置は、図８に示すように、塗布液を塗布する塗布部９１０と、塗布部９１０に塗布液を供給する供給機構９２０と、を備え、供給機構９２０から塗布部９１０に供給された塗布液が、塗布部９１０の内部に形成されたマニホールド９１１およびスリット９１２を経由して、基材９３０と対向する吐出口９１３から吐出される。

【0005】

また、供給機構９２０は、図８に示すように、塗布液を貯留するタンク９４０と塗布部９１０を連結する供給路９２１と、供給路９２１の途中に設けられた供給バルブ９２２と、を有しており、供給バルブ９２２の内部に設けられた弁体９２３の位置がモータの駆動により変化することによって、塗布液の流路を形成する開状態と塗布液の流路を遮断する閉状態との２つの状態に切り替える。ここで、塗布装置９００は、供給バルブ９２２を開状態に切り替えたときに塗布部９１０の吐出口９１３から塗布液が吐出されて塗布液の塗布を開始し、供給バルブ９２２を閉状態に切り替えたときに塗布部９１０への塗布液の供給が途切れて塗布液の塗布を中断する。すなわち、塗布装置９００は、弁体９２３の位置を変化させて供給バルブ９２２の開状態と閉状態の切り替えを繰り返すことによって、基材上に塗布液を間欠的に塗布している。

【0006】

また、図８に示すように、供給バルブ９２２よりも手前の供給路９２１の途中には回収バルブ９２４があり、回収バルブ９２４の内部に設けられた弁体９２５の位置がモータの駆動により変化することによって、回収バルブ９２４を開状態と閉状態に切り替える。ここで、塗布装置９００は、供給バルブ９２２を閉状態に切り替え回収バルブ９２４を開状態に切り替えることによって塗布液の塗布を中断して塗布液をタンク９４０に回収し、供給バルブ９２２を開状態に切り替え回収バルブ９２４を閉状態に切り替えることによって、塗布液の塗布を行っている。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0007】

【特許文献1】特開２０１４－１８８４４９号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0008】

しかし、上記塗布装置９００では、塗布終了部において塗布液の引きずりが生じるという問題があった。具体的には、上記塗布装置９００では、供給バルブ９２２を閉状態に切り替えて塗布部９１０による塗布液の塗布を中断する際に、供給路９２１の上流側に向かって弁体９２３の位置を変化させて塗布部９１０内の圧力を低減させることによって、吐出口９１３から供給路９２１に向かって塗布液を引き込み、吐出口９１３における液切りを行っている。このように、上記塗布装置９００では、吐出口９１３から離れた位置に設けられた供給バルブ９２２の弁体９２３の動作によって、塗布部９１０内の圧力を低減させているため、その効果が吐出口９１３に及びにくくなっていた。そのため、吐出口９１３における液切りを十分に行うことができず、図９（ａ）に示すように塗膜９３１の終端である塗布終了部９３２において塗布液の引きずり９３３が生じる場合があった。

【0009】

本発明は、上記問題点を鑑みてなされたものであり、塗布終了部における塗布液の引きずりを抑制することができる塗布装置を提供することを目的としている。

【課題を解決するための手段】

【0010】

上記課題を解決するために本発明の塗布装置は、搬送される基材に対して塗布液を塗布する塗布装置であって、基材の搬送方向と直交する幅方向に長い吐出口と、前記吐出口と繋がり塗布液を前記吐出口に供給する塗布流路とが形成された塗布部と、前記塗布流路の容積を変化させる容積調節機構と、を備えており、前記容積調節機構は、前記幅方向に沿って配列されるように前記塗布流路に挿入された複数の容積調節部と、前記容積調節部の挿入量を調節する駆動部と、を有していることを特徴としている。

【0011】

上記塗布装置によれば、容積調節機構が複数の容積調節部と駆動部を有し、駆動部によって塗布流路に挿入された複数の容積調節部の挿入量を調節することにより塗布流路の容積を大きくし、塗布流路の圧力を低減させ、塗布液を吐出口から塗布流路に引き込ませることが可能になる。すなわち、容積調節機構は、塗布部内に挿入された容積調節部の挿入量を調節することによって、塗布部内の圧力を低減させている。これにより、吐出口に近い位置で塗布部内の圧力を低減させることが可能になるため、その効果を吐出口に及ぼしやすくなる。これにより、塗布部による塗布液の塗布を中断させる際に吐出口における液切りを十分に行うことが可能になり、塗布終了部における塗布液の引きずりを抑制することができる。また、複数の容積調節部が基材の搬送方向と直交する幅方向（以下、幅方向と呼ぶ）に配列されるように塗布流路に挿入されているため、塗布流路の圧力を幅方向に亘って低減させることが可能になり、その効果を吐出口の幅方向に亘って及ぼすことができる。これにより、塗布終了部における塗布液の引きずりを幅方向に亘って抑制することができる。

【0012】

また、前記容積調節部は、一方向に長く形成され、前記塗布部の前記塗布流路を形成する壁部において前記吐出口と対向する部分から前記吐出口に向かって伸びるように前記塗布流路に挿入されて、前記駆動部により前記容積調節部の長手方向に往復動作する構成としてもよい。

【0013】

この構成によれば、塗布液の塗布を中断させる際に、吐出口から塗布液が塗布される方向とは反対の方向に塗布液を引き込むことが可能になる。すなわち、容積調節機構による塗布部内の圧力を低減させることによる効果を吐出口に及ぼしやすくなる。

【0014】

また、前記容積調節機構は、前記駆動部により各々の前記容積調節部の挿入量を個別に調節する構成としてもよい。

【0015】

この構成によれば、塗布流路の容積が変化する速度を調節することが可能になるため、塗布部により塗布される塗布液の量を調節することができる。

【0016】

また、前記容積調節機構は、前記塗布部による塗布液の塗布を中断させる際に前記容積調節部の挿入量が少なくなるように前記容積調節部の挿入量を調節する第１の調節モードと、前記塗布部による塗布液の塗布を再開させる際に前記第１の調節モードにおいて調節された前記容積調節部の挿入量を調節前の挿入量に戻すように前記容積調節部の挿入量を調節する第２の調節モードと、を有しており、前記第１の調節モードでは、前記駆動部により各々の前記容積調節部の挿入量を同時に調節し、前記第２の調節モードでは、前記駆動部により各々の前記容積調節部の挿入量を時間差をもたせて調節する構成としてもよい。

【0017】

この構成によれば、容積調節機構は、第１の調節モードにより容積調節部の挿入量が少なくなるように複数の容積調節部の挿入量を同時に調節することによって、塗布流路の容積を急速に大きくし、塗布流路の圧力を急速に低減させることが可能になり、その効果を吐出口により及ぼしやすくなる。これにより、塗布液の塗布を中断させる際に塗布終了部における塗布液の引きずりをより抑制することができる。そして、容積調節機構は、第２の調節モードにより第１の調節モードにおいて調節された容積調節部の挿入量を調節前の挿入量に戻すように複数の容積調節部の挿入量を時間差をもたせて調節することによって、塗布流路の容積が急速に小さくなり塗布流路の圧力が急速に増大することを防ぐことが可能になる。これにより、塗布液の塗布を再開させる際に塗布液が過剰に塗布されることを防ぐことができる。

【0018】

また、前記第２の調節モードでは、前記幅方向において端部側に位置する前記容積調節部から中央部側に位置する前記容積調節部に向かって順番に前記駆動部により各々の前記容積調節部の挿入量を調節する構成としてもよい。

【0019】

この構成によれば、塗布液の塗布を中断させる際に吐出口から塗布される塗布液の塗布量を幅方向に亘って均一にすることができる。

【0020】

また、前記塗布流路は、前記幅方向に長く塗布液を溜める空間であるマニホールドと、前記幅方向に広く前記マニホールドと前記吐出口とを繋ぐスリットと、を有しており、
前記容積調節部は、前記マニホールドに挿入されている構成としてもよい。

【0021】

この構成によれば、容積調節部が、スリットよりも広いマニホールドに挿入されているため、スリットに容積調節部を挿入するよりも塗布液の流れを阻害しにくくなっている。

【0022】

また、前記容積調節部の前記マニホールドに挿入された先端部には、塗布液を撹拌するための撹拌部が設けられている構成としてもよい。

【0023】

この構成によれば、容積調節部の挿入量を調節する際に、マニホールドに溜められた塗布液を撹拌することができる。

【発明の効果】

【0024】

本発明の塗布装置によれば、塗布終了部における塗布液の引きずりを抑制することができる。

【図面の簡単な説明】

【0025】

【図1】本発明の第一実施形態における塗布装置を概略的に示す図であり、塗布液を塗布している状態を示している。

【図2】本発明の第一実施形態における塗布装置を概略的に示す図であり、塗布液の塗布を中断している状態を示している。

【図3】本発明の第一実施形態における容積調節機構を説明するための図であり、（ａ）は、図１のＡ－Ａ矢視断面図を示し、（ｂ）は図２のＢ－Ｂ矢視断面図を示している。

【図4】本発明の第一実施形態における容積調節機構を説明するための図であり、（ａ）および（ｂ）は図１のＡ－Ａ矢視断面図を示している。

【図5】本発明の第一実施形態における塗布装置の塗布動作を説明するための図であり、（ａ）は供給バルブ、回収バルブ、および容積調節部の動作のタイムチャートを示し、（ｂ）は本実施形態における塗布装置により形成された塗膜の状態を示している。

【図6】本発明の第二実施形態における塗布装置を概略的に示す図である。

【図7】本発明の第二実施形態における容積調節部を示す図である。

【図8】従来の塗布装置を示す図である。

【図9】従来の塗布装置により形成された塗膜の状態を示す図である。

【発明を実施するための形態】

【0026】

〔第一実施形態〕
本実施形態における塗布装置１００について図面を参照しながら説明する。図１および図２は、本発明の第一実施形態における塗布装置１００を概略的に示す図であり、図１は塗布液１１を塗布している状態を示し、図２は塗布液１１の塗布を中断している状態を示している。なお、以下の説明では、直交座標系の３軸をＸ、Ｙ、Ｚとし、水平方向をＸ軸方向、Ｙ軸方向と表現し、ＸＹ平面と垂直な方向（つまり、鉛直方向）をＺ軸方向と表現する。

【0027】

塗布装置１００は、図１に示すように、基材１を搬送する搬送機構２と、基材１に塗布液１１を塗布する塗布部３と、塗布液１１が貯留されたタンク４と、タンク４から塗布液１１を塗布部３に供給する供給機構５と、塗布部３に形成されたマニホールド３４の容積を調節する容積調節機構６と、を備えている。そして、搬送機構２により搬送される基材１に対して塗布部３による塗布液１１の塗布と塗布の中断を繰り返すことによって、基材１上に塗膜１２を間欠的に形成する。ここでいう、塗布液１１を間欠的に塗布するとは、図５（ｂ）に示すように、基材１の搬送方向において形成する各々の塗膜１２間に任意の間隔が空くように基材１上に塗布液１１を連続的に塗布することである。

【0028】

基材１は、リチウムイオン電池の電池用極板となる金属箔であり、正極を構成する場合はアルミニウム箔などが用いられ、負極を構成する場合は銅箔などが用いられる。この基材１は、一方向に長い帯状のシートであり、搬送機構２により連続的に搬送される。

【0029】

塗布液１１は、たとえば、活物質、バインダー、導電助剤を溶剤により混合させたスラリーのことであり、リチウムイオン電池の電池用極板の材料（所謂、電極材料）として用いられる。この塗布液１１を塗布部３により基材１に塗布することで、塗膜１１が形成される。

【0030】

搬送機構２は、基材１を搬送するためのものであり、複数のロールが回転することにより基材１を搬送するロールツーロール方式を採用している。この搬送機構２による基材１の搬送速度は、図示しない制御部により制御される。この制御部はたとえば、汎用のコンピューターであり、以下の説明でも同様に扱う。なお、本実施形態では、塗布液１１を塗布する場所に基材１を案内する塗布ロール２１のみを図示している。そして、塗布ロール２１は、塗布部３と対向し、塗布部３により塗布液１１を塗布するときに吐出口３６と所定の間隔を空けるよう配置される。そのため、塗布部３と一定の間隔を保ちながら基材１を搬送することができる。

【0031】

塗布部３は、搬送される基材１に塗布液１１を塗布して塗膜１２を形成するためのものであり、基材１の搬送方向と直交する幅方向（図１におけるＹ軸方向）に沿って長く形成されている。なお、以下の説明では、基材１の搬送方向と直交する幅方向を単に幅方向と呼ぶ。

【0032】

この塗布部３は、図１に示すように、先細り形状である第１のリップ３１ａを有する第１の分割体３１と、先細り形状である第２のリップ３２ａを有する第２の分割体３２とを、これらの間にシム板３３を挟んで、組み合わせることによって形成されている。そして、塗布部３の内部には、幅方向に長く塗布液１１を溜める空間であるマニホールド３４と、このマニホールド３４と繋がった幅方向に広いスリット３５とが形成され、第１のリップ３１ａと第２のリップ３２ａとの間には、スリット３５の開放端であり幅方向においてスリット３５と同じ長さで開口する吐出口３６が形成されている。すなわち、マニホールド３４と吐出口３６はスリット３５を経由して繋がっている。

【0033】

スリット３５は、マニホールド３４と同様に幅方向に長く形成されている。このスリット３５の幅方向寸法は、シム板３３の内寸によって決定されており、スリット３５の幅方向寸法と略同一の幅方向寸法の塗布液１１を、基材１上に塗布することができるようになっている。また、スリット３５の隙間寸法（高さ寸法）は、たとえば０．１～１０ｍｍである。なお、本実施形態では、スリット３５の隙間方向が上下方向（図１におけるＺ軸方向）であり、幅方向が水平方向となる姿勢で塗布部３が設置されている。すなわち、マニホールド３４とスリット３５が水平方向に並んで配置される姿勢で塗布部３が設置され、マニホールド３４に溜められている塗布液１１がスリット３５を経由して吐出口３６を通じて吐出される方向は水平方向になる。

【0034】

なお、本実施形態においては、塗液１１が吐出口３６を通じて基材１へと流れる方向を水平方向としたが、必ずしもこれに限定されず任意の方向に適宜変更してもよい。たとえば、上方向としてもよいし、下方向としてもよい。

【0035】

そして、吐出口３６は、塗布ロール２１と基材１を挟んで対向している。すなわち、吐出口３６は基材１の表面側で基材１と対向している。これにより、吐出口３６と基材１との間隔を一定に保った状態で、基材１の表面側に塗布液１１を塗布することができる。

【0036】

また、図１および図３（ａ）に示すように、塗布部３の幅方向の中央部には、流入部３７が設けられている。流入部３７は、塗布部３の外部からマニホールド３４に繋がる貫通孔であり、この流入部３７を通じて供給機構５によりマニホールド３４に塗布液１１が供給されるようになっている。なお、本実施形態では、流入部３７はマニホールド３４の底部に繋がっている。

【0037】

供給機構５は、タンク４に貯留された塗布液１１を塗布部３に供給するためのものである。本実施形態における供給機構５は、図１に示すように、塗布部３とタンク４とを連結する供給路５１と、供給路５１の開閉状態を切り替える供給バルブ５２と、供給路５１とタンク４とを連結する回収路５３と、回収路５３の開閉状態を切り替える回収バルブ５４と、タンク４から塗布部３に向かって塗布液１１を送液する図示しないポンプと、を有している。

【0038】

供給路５１は、図１に示すように、塗布部３とタンク４とを連結し、ポンプによりタンク４から塗布部３へ塗布液１１が送液される流路である。本実施形態では、供給路５１は流入部３７と繋がっており、ポンプによりタンク４から送液された塗布液１１が供給路５１と流入路３７を通じてマニホールド３４に供給される。そして、マニホールド３４に供給された塗布液１１は、スリット３５を経由して吐出口３６から吐出される。これにより、基材１上に塗布液１１が塗布されて塗膜１２が形成される。

【0039】

供給バルブ５２は、塗布液１１の流路を形成する開状態と塗布液１１の流路を遮断する閉状態との２つの状態に供給路５１の状態を切り替えるためのものである。この供給バルブ５２は、供給路５１の途中に設けられている。具体的には、図１に示すように、供給バルブ５２の塗布液１１の入口部は回収バルブ５４の塗布液１１の入口部を介して供給路５１と連結され、供給バルブ５２の塗布液１１の出口部は供給路５１を介して塗布部３と連結されている。すなわち、ポンプによりタンク４から送液された塗布液１１が、供給路５１と回収バルブ５４の入口部を通じて供給バルブ５２の入口部から供給バルブ５２に供給され、供給バルブ５２の出口部から供給路５１を通じて塗布部３に供給されるようになっている。

【0040】

また、図１に示すように、供給バルブ５２は内部に弁体５２ａを有し、弁体５２ａの位置を変化させることによって供給路５１の開閉状態を切り替えるようになっている。具体的には、図１に示すように、弁体５２ａは駆動源である弁体駆動部５２ｂ（たとえば、エアシリンダーや電動モータ）と接続されており、弁体駆動部５２ｂにより弁体５２ａと繋がるシャフト５２ｃを供給路５１の開閉方向に移動させることによって、弁体５２ａにより供給路５１を開閉する。なお、弁体駆動部５２ｂの制御は、前述の制御部により行う。

【0041】

そして、供給機構５は、図１に示すように供給バルブ５２により供給路５１を開状態に切り替えることによって塗布部３へ塗布液１１を供給し、図２に示すように供給バルブ５２により供給路５１を閉状態に切り替えることによって塗布部３への塗布液１１の供給を停止する。そして、供給バルブ５２による供給路５１の開閉状態の切り替えを繰り返し行うことによって、塗布部３による塗布液１１の塗布と塗布の中断が繰り返し行われ、搬送機構２により搬送される基材１に対して塗布液１１が間欠的に塗布される。

【0042】

回収路５３は、図１に示すように、回収バルブ５４の出口部を介して塗布液１１の流路において供給バルブ５２よりも上流側に位置する供給路５１とタンク４を連結している。すなわち、供給路５１を流れる塗布液１１が、回収バルブ５４の入口部から回収バルブ５４に供給され、回収バルブ５４の出口部から回収路５３を通じてタンク４に回収されるようになっている。

【0043】

回収バルブ５４は、塗布液１１の流路を形成する開状態と塗布液１１の流路を遮断する閉状態との２つの状態に回収路５３の状態を切り替えるためのものである。この回収バルブ５４は、図１に示すように、弁体５４ａを有しており、弁体５４ａの位置を変化させることによって回収路５３の開閉状態を切り替えるようになっている。具体的には、図１に示すように、弁体５４ａは駆動源である弁体駆動部５４ｂ（たとえば、エアシリンダーや電動モータ）と接続されており、弁体駆動部５４ｂにより弁体５４ａと繋がるシャフト５４ｃを回収路５３の開閉方向に移動させることによって、弁体５４ａにより回収路５３を開閉する。なお、弁体駆動部５４ｂの制御は前述の制御部により行う。

【0044】

そして、供給機構５は、図２に示すように回収バルブ５４により回収路５３を開状態に切り替えることによってタンク４に塗布液１１を回収させ、図１に示すように回収バルブ５４により回収路５３を閉状態に切り替えることによってタンク４への塗布液１１の回収を停止する。

【0045】

ここで、図５（ａ）に示すように、供給機構５は、回収バルブ５４による回収路５３の開閉状態の切り替え動作を、供給バルブ５２による供給路５１の開閉状態の切り替え動作に合わせて行うようになっている。具体的には、図１および図２に示すように回収バルブ５４は、供給バルブ５２により供給路５１を開状態に切り替えるときに回収路５３を閉状態に切り替え、供給バルブ５２により供給路５１を閉状態に切り替えるときに回収路５３を開状態に切り替える。

【0046】

これにより、図２に示すように、供給バルブ５２により供給路５１を閉状態に切り替えて塗布部３への塗布液１１の供給を停止する際に、供給バルブ５２よりも上流に位置する供給路５１内の塗布液１１を回収路５３を通じてタンク４に回収させることができるため、供給バルブ５２よりも上流側に位置する供給路５１内の圧力が高くなることを防ぐことができる。これにより、供給バルブ５２により供給路５１を開状態に切り替えたときに、塗布液１１が塗布部３に過剰に供給されることを防ぐことができる。

【0047】

また、供給機構５は、供給バルブ５２により供給路５１を閉状態に切り替えて塗布部３による塗布液１１の塗布を中断させる際に、図２に示すように弁体駆動部５２ｂにより弁体５２ａと繋がるシャフト５２ｃを供給路５１の閉方向に移動させて、塗布部３内の圧力を低減させることによって、吐出口３６から供給路５１に向かって塗布液１１を引き込んでいる。これにより、塗布装置１００は、塗布部３による塗布液１１の塗布を中断するときに吐出口３６による液切りを行っている。

【0048】

ここで、塗布装置１００は、吐出口３６と離れた位置に設けられた供給バルブ５２の弁体５２ａの動作によって、塗布部３内の圧力を低減させているため、その効果が吐出口３６に及びにくくなっていた。そのため、吐出口３６における液切りを十分に行うことができず、塗膜１２の終端部であると塗布終了部１４（図５（ｂ）を参照）において塗布液１１の引きずり（図９（ａ）に示す引きずり９３３）が生じる場合があった。そこで、本実施形態における塗布装置１００は、塗布終了部１４における塗布液１１の引きずりを抑制するため、容積調節機構６によって供給バルブ５２よりも吐出口３６に近い位置で塗布部３内の圧力を低減させている。

【0049】

以下、容積調節機構６について説明する。

【0050】

容積調節機構６は、塗布流路の容積を変化させるためのものである。ここでいう、塗布流路とは、塗布部３に形成された塗布液１１を吐出口３６に供給するための流路のことであり、本実施形態ではマニホールド３４とスリット３５のことをいう。この容積調節機構６は、図１に示すように、塗布流路に挿入された容積調節部６１と、容積調節部６１の挿入量を調節する駆動部６２と、を有している。

【0051】

容積調節部６１は、図３（ａ）に示すように、一方向に長く形成された棒状形状を有しており、マニホールド３４に挿入されている。具体的には、図１および図３（ａ）に示すように、容積調節部６１が、塗布部３の塗布流路を形成する壁部において吐出口３６と対向する部分から吐出口３６に向かって伸びるようにマニホールド３４に挿入されている。このように本実施形態では、容積調節部６１が、スリット３５よりも広いマニホールド３４に挿入されているため、スリット３５に容積調節部６１を挿入するよりも塗布液１１の流れを阻害しにくくなっている。

【0052】

また、容積調節部６１を挿入する壁部から塗布液１１が漏れることを防ぐため、容積調節部６１の外周部には図示しないリング状のパッキンが取り付けている。

【0053】

駆動部６２は、容積調節部６１の挿入量を調節するための駆動源（たとえば、エアシリンダーや電動モータ）であり、図１に示すように容積調節部６１と接続されている。この駆動部６１は、容積調節部６１を容積調節部６１の長手方向に往復動作させることによって、塗布流路の容積を調節するようになっている。

【0054】

具体的には、駆動部６２により容積調節部６１をマニホールド３４から引き出すように動作させることによって塗布流路の容積を大きくして塗布流路の圧力を低減させ、駆動部６２により容積調節部６１をマニホールド３４に押し入れるように動作させることによって塗布流路の容積を小さくして塗布流路の容積を増大させている。また、駆動部６２の動作は前述の制御部により制御される。

【0055】

なお、駆動部６２により容積調節部６１をマニホールド３４に押し入れるように動作させるときは、図１に示すように容積調節部６１のほぼすべてをマニホールド３４に挿入するように容積調節部６１を動作させる。この動作の後の容積調節部６１の位置を、以下の説明では第１の位置と呼ぶ。また、駆動部６２により容積調節部６１をマニホールド３４から引き出すように動作させるときは、図２に示すように容積調節部６１の少なくとも先端部とその近傍がマニホールド３４に残るように容積調節部６１を動作させる。この動作の後の容積調節部６１の位置を、以下の説明では第２の位置と呼ぶ。

【0056】

ここで、本実施形態における容積調節機構６は、塗布部３による塗布液１１の塗布を中断させる際に容積調節部６１の挿入量が少なくなるように駆動部６２により容積調節部６１の挿入量を調節する第１の調節モードと、塗布部３による塗布液１１の塗布を再開させる際に第１の調節モードにおいて調節された容積調節部６１の挿入量を調節前の挿入量に戻すように駆動部６２により容積調節部６１の挿入量を調節する第２の調節モードと、を有している。なお、第１の調節モードと第２の調節モードの２つのモードは、前述の制御部により切り替えられる。

【0057】

具体的に説明する。容積調節機構６は、第１の調節モードにおいて、図１に示す第１の位置から図２に示す第２の位置に容積調節部６１を移動させるように、駆動部６２により容積調節部６１をマニホールド３４から引き出すように動作させることによって、塗布流路の容積を大きくして塗布流路の圧力を低減させている。すなわち、容積調節機構６は、塗布部３内に挿入された容積調節部６１を動作させることによって、塗布部３内の圧力を低減させている。これにより、吐出口３６に近い位置で塗布部３内の圧力を低減させることが可能になるため、その効果を吐出口３６に及ぼしやすくなる。これにより、塗布部３による塗布液１１の塗布を中断させる際に吐出口３６における液切りを十分に行うことが可能になり、塗布終了部１４における塗布液１１の引きずりを抑制することができる。

【0058】

また、容積調節機構６は、第２の調節モードにおいて、図２に示す第２の位置から図１に示す第１の位置に容積調節部６１の位置を戻すように、駆動部６２により容積調節部６１をマニホールド３４に押し入れるように動作させることによって、塗布流路の容積を小さくして塗布流路の圧力を増大させている。これにより、塗布液１１が塗布流路から吐出口３６に向かって押し出され、吐出口３６から吐出される。

【0059】

また、本実施形態では、図３（ａ）に示すように、同じ構造の容積調節部６１が６つ設けられており、幅方向に沿って配列されるように容積調節部６１ａ、容積調節部６１ｂ、容積調節部６１ｃ、容積調節部６１ｄ、容積調節部６１ｅ、容積調節部６１ｆが順番に並べられている。すなわち、複数の容積調節部６１がマニホールド３４に挿入されている。そして、複数の容積調節部６１のそれぞれに対して駆動部６２が１つずつ設けられており、本実施形態では駆動部６２により各々の容積調節部６１の挿入量を個別に調節するようになっている。

【0060】

具体的に説明する。容積調節機構６は、第１の調節モードにおいて、図３（ａ）に示す第１の位置から図３（ｂ）に示す第２の位置に容積調節部６１を移動させるように、駆動部６２により各々の容積調節部６１をマニホールド３４から同時に引き出すように動作させることによって、塗布流路の容積を急速に大きくしている。これにより、塗布流路の圧力を急速に低減させることが可能になり、その効果を吐出口３６により及ぼしやすくなる。これにより、塗布終了部１４における塗布液１１の引きずりを抑制することができる。

【0061】

また、容積調節機構６は、第２の調節モードにおいて、各々の容積調節部６１が図３（ｂ）に示すように第１の調節モードにおいて動作した後の第２の位置から図３（ａ）に示す第１の位置に戻すように、駆動部６２により各々の容積調節部６１を時間差をもたせてマニホールド３４に押し入れるように動作させる。すなわち、各々の容積調節部６１の挿入量を時間差を持たせて調節することによって、塗布流路の容積が急速に小さくなり塗布流路の圧力が急速に増大することを防いでいる。そのため、各々の容積調節部６１の挿入量を同時に調節して塗布流路の容積を小さくするよりも塗布液１１が吐出口３６に向かって押し出される力を低減することができる。これにより、塗布液１１の塗布を再開する際に塗布液１１が吐出口３６から過剰に塗布されることを防ぎ、塗膜１２の始端である塗布開始部１３（図５（ｂ）を参照）において塗膜１２が盛り上がる（図９（ｂ）の盛り上がり９３４）ことを防ぐことができる。

【0062】

以下に本実施形態における塗布装置１００の動作について具体的に説明する。

【0063】

なお、以下の説明では、図５（ａ）に示すように供給機構５による塗布部３への塗布液１１の供給が行われておらず、塗布液１１の塗布を行っていない状態から説明する。すなわち、図２に示すように、供給バルブ５２により供給路５１が閉状態になり、回収バルブ５４により回収路５３が開状態になっている状態から説明を始める。なお、ポンプによるタンク４から塗布部３への塗布液１１の送液は、塗布部３による塗布液１１の塗布を完全に停止させるまでの間は常に行われているものとする。

【0064】

まず、塗布装置１００により塗布液１１の塗布を開始するときの動作を説明する。塗布装置１００は、図１および図５（ａ）に示すように、供給バルブ５２により供給路５１を閉状態から開状態に切り替え、回収バルブ５４により回収路５３を開状態から閉状態に切り替える。これにより、塗布液１１が、ポンプによりタンク４から供給路５１を通じてマニホールド３４に供給される。そして、マニホールド３４に供給された塗布液１１がスリット３５を経由して吐出口３６から吐出される。これにより、図５（ｂ）に示すように搬送機構２により搬送される基材１上に塗布開始部１３が形成される。この塗布装置１００により塗布液１１の塗布を開始するときの一連の動作は、塗布液１１の塗布を中断した後、塗布液１１の塗布を再開するときにも行われるようになっている。

【0065】

また、塗布装置１００により塗布液１１の塗布を開始するときは、図３（ａ）に示すように各々の容積調節部６１は第１の位置に位置している。

【0066】

そして、塗布装置１００は、供給バルブ５２、回収バルブ５３、および容積調節部６１の状態を維持しながら塗布部３による塗布液１１の塗布を続けることによって、図５（ｂ）に示すように搬送機構２により搬送される基材１上に塗膜１２を形成する。

【0067】

次に、塗布装置１００により塗布液１１の塗布を中断するときの動作を説明する。塗布装置１００は、図２および図５（ａ）に示すように、供給バルブ５２により供給路５１を開状態から閉状態に切り替え、回収バルブ５４により回収路５３を閉状態から開状態に切り替える。これにより、マニホールド３４への塗布液１１の供給が停止されて塗布部３による塗布液１１の塗布が中断され、図５（ｂ）に示すように搬送機構により搬送される基材１上に塗膜１２の終端である塗布終了部１４が形成される。

【0068】

ここで、容積調節機構６は、供給バルブ５２と回収バルブ５４の動作と同時に、第１の調節モードにおける動作を実行する。具体的には、容積調節機構６は、容積調節部６１を図３（ａ）および図５（ａ）に示す第１の位置から、図３（ｂ）および図５（ａ）に示す第２の位置に各々の容積調節部６１を移動させるように、駆動部６２により各々の容積調節部６１をマニホールド３４から同時に引き出すように動作させることによって、吐出口３６における液切りを行う。

【0069】

次に、塗布装置１００により塗布液１１の塗布を再開するときの動作を説明する。なお、容積調節機構６の動作以外は、塗布液１１の塗布を開始するときの動作と同様なため、説明を省略する。

【0070】

容積調節機構６は、供給バルブ５２と回収バルブ５４の動作と同時に、第２の調節モードにおける動作を実行する。具体的には、容積調節機構６は、図３（ｂ）および図５（ａ）に示す第２の位置から図３（ａ）および図５（ａ）に示す第１の位置に各々の容積調節部６１を移動させるように、駆動部６２により各々の容積調節部６１をマニホールド３４に時間差を持たせて押し入れるように動作させることによって、塗布流路の容積を小さくして塗布流路の圧力を増大させている。これにより、塗布部３による塗布液１１の塗布が再開され、塗布開始部１３が形成される。

【0071】

ここで、本実施形態では、容積調節機構６は、幅方向において端部側に位置する容積調節部６１から中央部側に位置する容積調節部６１に向かって順番に駆動部６２により各々の容積調節部６１の挿入量を調節するようになっている。

【0072】

具体的に説明する。容積調節機構６は、第２の調節モードにおいて、最初に図４（ａ）、図４（ｂ）および図５（ａ）に示すように、幅方向において最も端部側に位置する容積調節部６１ａと容積調節部６１ｆを第２の位置から第１の位置に戻すように動作させる。次に、図４（ｂ）および図５（ａ）に示すように、容積調節部６１ａと容積調節部６１ｆを動作させてから時間差Ｔ_１をもたせて幅方向において最も端部側に位置する容積調節部６１ａと容積調節部６１ｆのそれぞれと隣接する容積調節部６１ｂと容積調節部６１ｅを第２の位置から第１の位置に戻すように動作させる。次に、図３（ａ）および図５（ａ）に示すように、容積調節部６１ｂと容積調節部６１ｅを動作させてから時間差Ｔ_２をもたせて幅方向において最も中央部側に位置する容積調節部６１ｃと容積調節部６１ｄを第２の位置から第１の位置に戻すように動作させる。

【0073】

これにより、塗布装置１００は、塗布液１１の塗布を再開して塗布開始部１３を形成する際に、吐出口３６から吐出する塗布液１１の量を幅方向で均一にすることができる。具体的に説明する。塗布装置１００は、塗布開始部１３を形成するときに、供給バルブ５２により供給路５１を開状態に、回収バルブ５４により回収路５３を閉状態に切り替えることによって、塗布部３に塗布液１１を供給して塗布液１１を基材１に塗布している。このとき、マニホールド３４に供給された塗布液１１がスリット３５の幅方向の中央部から端部に向かって広がりながら吐出口３６へ送液されている。そのため、スリット３５の幅方向の中央部を流れる塗布液１１が幅方向の端部を流れる塗布液１１よりも吐出口３６に早く到達してしまい、基材１１に塗布されてしまう。これにより、塗布開始部１３が弓形の形状（図９（ａ）に示す弓形の形状９３５）に形成されてしまう。

【0074】

これに対して、本実施形態における塗布装置１００では、容積調節機構６によって、幅方向において端部側に位置する容積調節部６１から中央部側に位置する容積調節部６１に向かって順番に駆動部６２により各々の容積調節部６１の挿入量を調節しているため、マニホールド３４に供給された塗布液１１を、幅方向における端部から中央部の順番に吐出口３６に向かって押し出すことができる。そのため、スリット３５の幅方向の中央部と端部を流れる塗布液１１が吐出口３６に到達するタイミングを揃えることができる。これにより、塗布部３による塗布液１１の塗布を再開する際に、スリット３５における塗布液１１の流量を幅方向で均一にすることが可能になるため、吐出口３６から吐出される塗布液１１が幅方向で均一になり、塗布開始部１３が弓形の形状に形成されることを防ぐことができる。

【0075】

以上より、塗布部３による塗布液１１の塗布が再開され、幅方向に均一な形状を有する塗布開始部１３が形成される。そして、塗布装置１００は、以上の動作を図５（ａ）に示すように繰り返し行うことによって、図５（ｂ）に示すように基材１に塗布液１１を間欠的に塗布する。

【0076】

このように上記実施形態における塗布装置１００によれば、容積調節機構６が容積調節部６１と駆動部６２を有し、駆動部６２によって塗布部３に形成された塗布流路に挿入された容積調節部の挿入量を調節することにより塗布流路の容積を大きくし、塗布流路の圧力を低減させ、塗布液１１を吐出口３６から塗布流路に引き込ませることが可能になる。すなわち、容積調節機構は、塗布部３内に挿入された容積調節部３１の挿入量を調節することによって、塗布部３１内の圧力を低減させている。これにより、吐出口３６に近い位置で塗布部３内の圧力を低減させることが可能になるため、その効果を吐出口３６に及ぼしやすくなる。これにより、塗布部３による塗布液１１の塗布を中断させる際に吐出口３６における液切りを十分に行うことが可能になり、塗布終了部１４における塗布液１１の引きずりを抑制することができる。また、複数の容積調節部６１が幅方向に配列されるように塗布流路に挿入されているため、塗布流路の圧力を幅方向に亘って低減させることが可能になり、その効果を吐出口３６の幅方向に亘って及ぼすことができる。これにより、塗布終了部１４における塗布液１１の引きずりを幅方向に亘って抑制することができる。

【0077】

また、上記実施形態では、容積調節部６１が、一方向に長く形成され、塗布部３の塗布流路を形成する壁部において吐出口３６と対向する部分から吐出口３６に向かって伸びるようにマニホールド３４に挿入されて、駆動部６２により容積調節部６１の長手方向に往復動作するため、塗布部３による塗布液１１の塗布を中断させる際に、吐出口３６から塗布液１１が塗布される方向とは反対の方向に塗布液１１を引き込むことが可能になる。すなわち、容積調節機構６により塗布部３内の圧力を低減させることによって生じる効果を吐出口３６により及ぼしやすくなる。これにより、塗布終了部１４における塗布液１１の引きずりをより抑制することができる。

【0078】

また、上記実施形態における塗布装置１００によれば、吐出口３６から吐出する塗布液１１の量が幅方向でばらつくことを抑制することができるようになっている。具体的には、マニホールド３４の幅方向の端部では、流入部３７から位置が離れているため、流入部３７の近傍よりも塗布液１１の流れが遅くなっている。そのため、塗布液１１に含まれる活物質などの粒子が沈降して滞留してしまい、この沈降した粒子により塗布液１１の流れが阻害され吐出口３６から吐出する塗布液１１の量が幅方向でばらつく場合があった。

【0079】

これに対して、上記実施形態における塗布装置１００は、容積調節機構６によって、マニホールド３４に容積調節部６１出し入れさせるように動作させているため、マニホールド３４において塗布液１１を撹拌することができる。これにより、マニホールド３４において塗布液１１に含まれる粒子が沈降、滞留することを抑制することができるため、幅方向において吐出口３６から吐出する塗布液１１の量が幅方向にばらつくことを抑制することができる。

【0080】

〔第二実施形態〕
次に、本発明の第二実施形態における塗布装置１００について図６および図７を用いて説明する。本実施形態における塗布装置１００は、塗布部３による塗布液１１の塗布を開始する前に塗布液１１の撹拌を行う点と、塗布部３に流出部３８が設けられている点と、容積調節部６１の先端部に撹拌部８１が設けられている点で第一の実施形態と異なっている。なお、以下の説明では、第一実施形態と同様の点について具体的説明は省略し、相反する部分を中心に説明する。

【0081】

図６は、本実施形態における塗布装置１００を概略的に示す図である。図７は、本実施形態における容積調節部６１を示す図である。

【0082】

本実施形態における塗布装置１００は、塗布部３による塗布液１１の塗布を開始する前は、駆動部６２による各々の容積調節部６１の往復動作を絶えず行わせるようになっている。そのため、第一実施形態における塗布装置１００のように塗布部３による塗布液１１の塗布を中断させる際と再開させる際のみに駆動部６２により各々の容積調節部６１を動作させるよりも、マニホールド３４において生じる塗布液１１の流れを大きくすることができるため、塗布液１１をより撹拌することができる。これにより、塗布部３により塗布液１１を塗布する際に、幅方向において吐出口３６から吐出する塗布液１１の量が幅方向にばらつくことをより抑制することができる。

【0083】

また、塗布部３には、図６に示すように、マニホールド３４の塗布液１１を流出させるための流出部３８が設けられている。流出部３８は、塗布部３の外部からマニホールド３４に繋がる貫通孔であり、この流出部３８を通じてマニホールド３４から塗布液１１を流出させるようになっている。なお、本実施形態では、流出部３８はマニホールド３４の天部に繋がっており、流出路７１によりタンク４に連結されている。

【0084】

流出路７１は、流出部３８を通じてマニホールド３４から流出された塗布液１１をタンク４に送液させるための流路である。この流出路７１には、図示しないポンプと図示しないバルブが設けられており、これらポンプとバルブにより送液と送液の停止が行われる。本実施形態では、駆動部６２により各々の容積調節部６１の往復動作を絶えず行わせて塗布液１１を撹拌する際に、流出部３８と流入路７１を通じて塗布液１１をタンク４に送液するようになっている。そのため、塗布液１１を撹拌する際に、塗布液１１を流出部３８と流出路７１を通じてタンク４に送液することができるため、マニホールド３４において沈降、滞留していた塗布液１１に含まれる粒子を塗布部３外に排出することができる。これにより、塗布部３により塗布液１１を塗布する際に、幅方向において吐出口３６から吐出する塗布液１１の量が幅方向にばらつくことをより抑制することができる。なお、塗布液１１を撹拌する際に、吐出口３６から塗布液１１を吐出させてもよい。この場合、マニホールド３４において沈降、滞留していた塗布液１１に含まれる粒子を吐出口３６からも排出させることができる。

【0085】

また、容積調節部６１のマニホールド３４に挿入された先端部には、図６および図７に示すように塗布液１１を撹拌するための撹拌部８１が設けられている。撹拌部８１は、図６および図７に示すように、容積調節部６１のマニホールド３４に挿入された先端部の径方向外側に向かって環状に広がるように形成されている。そのため、撹拌部８１を容積調節部６１の先端部に設けない場合よりも塗布液１１と接触する面積が大きくなるため、撹拌部８１が設けられた容積調節部６１を駆動部６２により動作させる際に、マニホールド３４において生じる塗布液１１の流れをより大きくすることができる。これにより、塗布液１１をより撹拌することができる。

【0086】

以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、各実施形態における構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。たとえば、上記実施形態では、供給バルブ５２と回収バルブ５４により供給路５１と回収路５３の開閉状態を切り替えることによって塗布部３による塗布液１１の塗布と塗布の中断を行っていたが、容積調節機構６によって行ってもよい。すなわち、塗布装置１００は、供給バルブ５２と回収バルブ５４を備えていなくてもよい。

【0087】

また、上記実施形態では、容積調節部６１が、塗布部３の塗布流路を形成する壁部において吐出口３６と対向する部分から吐出口３６に向かって伸びるようにマニホールド３４に挿入されている例について説明したが、これに限られない。たとえば、塗布部３の塗布流路を形成する壁部において上部若しくは下部から鉛直方向に向かって伸びるように容積調節部６１をマニホールド３４に挿入させる構成としてもよい。

【0088】

また、上記実施形態では、容積調節部６１をマニホールド３４に挿入する例について説明したが、塗布流路のいずれかに挿入すればよく、たとえばスリット３５に挿入してもよい。

【0089】

また、上記実施形態において、第１の調節モードでは駆動部６２により各々の容積調節部６１の挿入量を同時に調節し、第２の調節モードでは幅方向において端部側に位置する容積調節部６１から中央部側に位置する容積調節部６１に向かって順番に駆動部６２により各々の容積調節部６１の挿入量を調節する例について説明したが、塗膜１２の塗布開始部１３および塗布終了部１４を任意の形状に形成するために、各調節モードにおいて各々の容積調節部６１の挿入量を調節するタイミングを適宜変更してもよい。ここでいう、塗膜１２の塗布開始部１３および塗布終了部１４を任意の形状に形成するとは、たとえば、塗膜１２の塗布開始部１３および塗布終了部１４が、前述の図９（ａ）に示す弓形の形状９３５のような凸状の弓形の形状や、図９（ａ）に示す弓形の形状９３５が搬送方向において反対の方向に凸となるような凹状の弓形の形状（不図示）、幅方向において均一となる形状のことである。たとえば、塗膜１２の塗布開始部１３および塗布終了部１４を前述の凸状の弓形の形状に形成する場合は、第１の調節モードでは幅方向において端部側に位置する容積調節部６１から中央部側に位置する容積調節部６１に向かって順番に駆動部６２により各々の容積調節部６１の挿入量を調節し、第２の調節モードでは駆動部６２により各々の容積調節部６１の挿入量を同時に調節するとよい。

【0090】

また、上記実施形態において、第１の調節モードでは駆動部６２により各々の容積調節部６１の挿入量を同時に調節する例について説明したが、幅方向において中央部側に位置する容積調節部６１から端部側に位置する容積調節部６１に向かって順番に駆動部６２により各々の容積調節部６１の挿入量を調節してもよい。上記実施形態のように、第１の調節モードで駆動部６２により各々の容積調節部６１の挿入量を同時に調節すると、スリット３５の幅方向の端部を流れる塗布液１１が幅方向の中央部を流れる塗布液１１よりも早く吐出口３６から供給路５１に向かって引き込まれる可能性がある。これにより、塗布終了部１４が前述の凸状の弓形の形状に形成されてしまう場合がある。これに対して、第１の調節モードで幅方向において中央部側に位置する容積調節部６１から端部側に位置する容積調節部６１に向かって順番に駆動部６２により各々の容積調節部６１の挿入量を調節することによって、スリット３５の幅方向の中央部と端部を流れる塗布液１１が吐出口３６から供給路５１に向かって引き込まれるタイミングを揃え、スリット３５における塗布液１１の流量を幅方向で均一にすることが可能になる。これにより、吐出口３６から吐出される塗布液１１が幅方向で均一にすることができるため、塗布終了部１４が前述の凸状の弓形の形状に形成されることを防ぐことができる。

【符号の説明】

【0091】

１００ 塗布装置
１ 基材
１１ 塗布液
１２ 塗膜
１３ 塗布開始部
１４ 塗布終了部
２ 搬送機構
２１ 塗布ロール
３ 塗布部
３１ 第１の分割体
３１ａ 第１のリップ
３２ 第２の分割体
３２ａ 第２のリップ
３３ シム板
３４ マニホールド
３５ スリット
３６ 吐出口
３７ 流入部
３８ 流出部
４ タンク
５ 供給機構
５１ 供給路
５２ 供給バルブ
５２ａ 弁体
５２ｂ 弁体駆動部
５２ｃ シャフト
５３ 回収路
５４ 回収バルブ
５４ａ 弁体
５４ｂ 弁体駆動部
５４ｃ シャフト
６ 容積調節機構
６１ 容積調節部
６１ａ 容積調節部
６１ｂ 容積調節部
６１ｃ 容積調節部
６１ｄ 容積調節部
６１ｅ 容積調節部
６１ｆ 容積調節部
６２ 駆動部
７１ 流出路
８１ 撹拌部

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】