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  • 特開-空調用ダクト 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025018470
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】空調用ダクト
(51)【国際特許分類】
   F24F 13/02 20060101AFI20250130BHJP
【FI】
F24F13/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023122192
(22)【出願日】2023-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004673
【氏名又は名称】パナソニックホームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】梅本 大輔
(72)【発明者】
【氏名】高田 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】横山 弘嗣
【テーマコード(参考)】
3L080
【Fターム(参考)】
3L080AD01
3L080AD02
3L080AE01
3L080AE02
(57)【要約】
【課題】 吸音性能を発揮しつつ、ダクトの外表面の内側表面での結露を抑制することが可能な空調用ダクトを提供する。
【解決手段】 空調用ダクト1である。空調用ダクト1は、音通過性を有し、かつ、内部に空気A1を通過させるための空間SPを区画する内周面材2と、内周面材2を囲むように内周面材2の外側に配された断熱防湿層3とを含む。断熱防湿層3は、内周面材2を囲むように内周面材2の外側に配された第1の断熱層4と、第1の断熱層4を囲むように第1の断熱層4の外側に配された第1の防湿層5と、第1の防湿層5を囲むように第1の防湿層5の外側に配された第2の断熱層6と、第2の断熱層6を囲むように第2の断熱層6の外側に配された第2の防湿層7とを含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調用ダクトであって、
音通過性を有し、かつ、内部に空気を通過させるための空間を区画する内周面材と、
前記内周面材を囲むように前記内周面材の外側に配された断熱防湿層とを含み、
前記断熱防湿層は、
前記内周面材を囲むように前記内周面材の外側に配された第1の断熱層と、
前記第1の断熱層を囲むように前記第1の断熱層の外側に配された第1の防湿層と、
前記第1の防湿層を囲むように前記第1の防湿層の外側に配された第2の断熱層と、
前記第2の断熱層を囲むように前記第2の断熱層の外側に配された第2の防湿層とを含む、
空調用ダクト。
【請求項2】
前記第2の断熱層の熱抵抗は、前記第1の断熱層の熱抵抗の0.5倍以上である、請求項1に記載の空調用ダクト。
【請求項3】
前記第1の防湿層は、前記第2の防湿層よりも遮音性能が低い、請求項1に記載の空調用ダクト。
【請求項4】
前記第1の断熱層及び前記第2の断熱層は、無機繊維系の断熱材からなり、
前記第1の断熱層の断熱材密度は、前記第2の断熱層の断熱材密度よりも高い、請求項1に記載の空調用ダクト。
【請求項5】
前記内周面材は、不織布、又は、不織布とダクト形状を保持するためのスパイラル状の芯材とを含む複合体である、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の空調用ダクト。
【請求項6】
前記第1の防湿層は、オレフィン系樹脂で形成されている、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の空調用ダクト。
【請求項7】
前記第2の防湿層は、アルミ蒸着フィルム又はアルミガラスクロスを含む、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の空調用ダクト。
【請求項8】
前記第2の防湿層は、ダクトの最も外側に配置されている、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の空調用ダクト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調用ダクトに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、空調用グラスウール製ダクトが記載されている。このダクトは、筒状に形成されたグラスウール製ダクトと、その内表面に設けられた飛散防止層とを含む。前記飛散防止層は、金属箔や不織布とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-210584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記ダクトは、ダクト流路内での吸音性能が低い、又は、湿度の高い空気が流入する場合には、ダクトの外表面の内側表面で結露が発生しやすい等の問題があった。
【0005】
本発明は、以上のような問題点に鑑み案出なされたもので、吸音性能を発揮しつつ、ダクトの外表面の内側表面での結露を抑制することが可能な空調用ダクトを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、空調用ダクトであって、音通過性を有し、かつ、内部に空気を通過させるための空間を区画する内周面材と、前記内周面材を囲むように前記内周面材の外側に配された断熱防湿層とを含み、前記断熱防湿層は、前記内周面材を囲むように前記内周面材の外側に配された第1の断熱層と、前記第1の断熱層を囲むように前記第1の断熱層の外側に配された第1の防湿層と、前記第1の防湿層を囲むように前記第1の防湿層の外側に配された第2の断熱層と、前記第2の断熱層を囲むように前記第2の断熱層の外側に配された第2の防湿層とを含む、空調用ダクトである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の空調用ダクトは、上記の構成を採用したことにより、吸音性能を発揮しつつ、ダクトの外表面の内側表面での結露を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】空調用ダクトの断面図である。
図2】空調用ダクトの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。図面は、発明の内容の理解を助けるために、誇張表現や、実際の構造の寸法比とは異なる表現が含まれることが理解されなければならない。さらに、実施形態及び図面に表された具体的な構成は、本発明の内容理解のためのものであって、本発明は、図示されている具体的な構成に限定されるものではない。
【0010】
[空調用ダクト]
本実施形態の空調用ダクトは、断熱機能を備えており、空気調和機(図示省略)で空調された空気の温度を維持しながら目的の場所まで搬送することができる。本実施形態の空調用ダクトは、例えば、空気調和機とともに建物(図示省略)内に設けられる。
【0011】
図1は、空調用ダクト1の断面図である。図2は、空調用ダクト1の斜視図である。図1及び図2に示されるように、本実施形態の空調用ダクト1は、筒状に形成されている。空調用ダクト1の内部には、空気A1を通過させるための流路として利用される空間SPが区画されている。本実施形態の空調用ダクト1は、円筒状に形成されているが、例えば、角筒状に形成されていてもよい。
【0012】
空調用ダクト1の一端は、例えば、空気調和機で空調された空気A1を取り込み可能に設けられる。一方、空調用ダクト1の他端は、建物の各居室等に連通するように設けられる。これにより、空調用ダクト1は、空気調和機で空調された空気A1を、その温度を保ちながら建物の各居室等に搬送することができる。
【0013】
空調用ダクト1は、内周面材2と、断熱防湿層3とを含む。
【0014】
[内周面材]
内周面材2は、空調用ダクト1の内部に空気A1を通過させるための空間SPを区画している。本実施形態の内周面材2は、円筒状に形成されているが、例えば、角筒状に形成されていてもよい。
【0015】
内周面材2は、音通過性を有している。本明細書において、ある対象物が「音通過性」を有するとは、空気が対象物の中を通過することで、音が対象物の一方から他方へ伝搬する性質のことをいう。したがって、音通過性を有する内周面材2は、空間SP内の音(例えば、空気調和機の音等)を内周面材2の外側に伝えることができる。
【0016】
[断熱防湿層]
断熱防湿層3は、内周面材2を囲むように内周面材2の外側に配されている。本実施形態では、断熱防湿層3は、例えば、断熱防湿層3の内表面S1が、内周面材2の外表面S2に接するように配されて、内周面材2の軸方向に延びている。一方、断熱防湿層3の外表面S3は、例えば、空調用ダクト1の外表面S4を構成している。
【0017】
断熱防湿層3は、第1の断熱層4と、第1の防湿層5と、第2の断熱層6と、第2の防湿層7とを含む。
【0018】
[第1の断熱層]
第1の断熱層4は、断熱防湿層3の最内周部を構成しており、内周面材2を囲むように内周面材2の外側に配されている。本実施形態では、第1の断熱層4は、例えば、第1の断熱層4の内表面S5(内表面S1)が、内周面材2の外表面S2に接するように環状に連続して配されている。
【0019】
本実施形態の第1の断熱層4は、空調用ダクト1の内部を通過する空気A1と、空調用ダクト1の外部の空気A2との間で、熱が出入りするのを遮断する機能を有する。第1の断熱層4は、例えば、内部の隙間に空気A1を保持することで断熱機能を発揮する。また、このような第1の断熱層4は、内部の隙間に音が入り込みやすいため、吸音機能をも発揮することができる。
【0020】
[第1の防湿層]
第1の防湿層5は、第1の断熱層4を囲むように第1の断熱層4の外側に、環状に連続して配されている。本実施形態では、第1の防湿層5は、その内表面S6が第1の断熱層4の外表面S7に接するように配されている。
【0021】
本実施形態の第1の防湿層5は、第1の断熱層4と、後述する第2の断熱層6との間で、水蒸気(湿気)が行き来するのを遮断する機能(防湿機能)を有する。空気の分子は、水蒸気の分子よりも大きいため、本実施形態の第1の防湿層5は、第1の断熱層4と、第2の断熱層6との間で、空気が行き来するのも遮断することができる。すなわち、本実施形態の第1の防湿層5は、遮音性を有する。
【0022】
[第2の断熱層]
第2の断熱層6は、第1の防湿層5を囲むように第1の防湿層5の外側に環状に連続して配されている。本実施形態では、例えば、第2の断熱層6は、その内表面S8が、第1の防湿層5の外表面S9に接するように配されている。
【0023】
本実施形態の第2の断熱層6は、第1の断熱層4と同様、空調用ダクト1の内部を通過する空気A1と、空調用ダクト1の外部の空気A2との間で、熱が出入りするのを遮断する機能を有する。第2の断熱層6は、例えば、第1の断熱層4と同様、内部の隙間に空気を保持することで断熱機能を発揮することができる。また、このような第2の断熱層6は、内部の隙間に音が入り込みやすいため、吸音機能をも発揮することができる。第2の断熱層6としては、第1の断熱層4と同様の材料が採用されても良い。
【0024】
[第2の防湿層]
第2の防湿層7は、第2の断熱層6を囲むように第2の断熱層6の外側に、環状に連続して配されている。本実施形態では、第2の防湿層7は、その内表面S10が、第2の断熱層6の外表面S11に接するように配されている。第2の防湿層7の外表面S12は、例えば、断熱防湿層3の外表面S3(空調用ダクト1の外表面S4)を構成している。
【0025】
本実施形態の第2の防湿層7は、第2の断熱層6と、空調用ダクト1の外部との間で、水蒸気(湿気)が行き来するのを遮断する機能(防湿機能)を有する。空気の分子は、水蒸気の分子よりも大きいため、本実施形態の第2の防湿層7は、第2の断熱層6と、空調用ダクト1の外部との間で、空気が行き来するのも遮断することができる。すなわち、本実施形態の第2の防湿層7も、遮音性を有する。本実施形態の第2の防湿層7は、例えば、第1の防湿層5と同様に構成されても良い。
【0026】
以上のような本実施形態の空調用ダクト1は、音通過性を有し、かつ、内部に空気A1を通過させるための空間SPを区画する内周面材2を含んでいる。これにより、空調用ダクト1の内部の空間SPを伝わる音(例えば、上流側の空気調和機のファン音等)は、内周面材2を通過して、断熱防湿層3に伝わり、断熱防湿層3内の第1の断熱層4で吸収される。さらに、前記音は、第1の防湿層5で反射し、第1の断熱層4内でさらに吸収され得る。それでも、前記音の一部が、第1の防湿層5を振動させることで、第2の断熱層6に伝わった場合、当該音は、第2の断熱層6で吸収される。さらに、前記音の一部は、第2の防湿層7で反射し、第2の断熱層6内でさらに吸収される。したがって、本実施形態の空調用ダクト1は、優れた吸音性能を発揮することができる。
【0027】
また、空調用ダクト1で搬送される空調された空気A1の一部は、水蒸気(湿気)とともに内周面材2を通過して、第1の断熱層4に移動する。第1の断熱層4に移動した水蒸気の大部分は、第1の防湿層5の防湿機能により、第1の断熱層4内にとどまる。それでも、水蒸気の一部が第1の防湿層5を通過して第2の断熱層6に移動した場合、そのような水蒸気は、空調用ダクト1内外の温度差により、第2の防湿層7の外表面S11の内側表面(内表面S10)で結露することもあり得る。しかしながら、第1の防湿層5は、第1の断熱層4と、第2の断熱層6との間で、空気が行き来するのを遮断することができることから、その内表面S6での温度を高く保つことができる。水蒸気は、温度が高く保たれた内表面S6側にとどまり、内表面S6側より温度が低い第2の防湿層7の内表面S10側への移動が抑制される。これにより、第2の防湿層7の内表面S10(ダクトの外表面S4の内側表面)での結露を大幅に抑制することができる。
【0028】
また、第2の防湿層7の防湿機能により、空調用ダクト1外部の空気A2に含まれる水蒸気(湿気)の大部分は、第2の防湿層7を通過して第2の断熱層6に移動することができない。これによっても、第2の防湿層7の内表面S10(ダクトの外表面S4の内側表面)での結露を抑制することができる。
【0029】
以下、本実施形態の空調用ダクト1の好ましい態様等が説明されるが、本発明は、以下の態様に限定されるものではない。
【0030】
本実施形態の空調用ダクト1は、例えば、住宅の全館空調用の空調ダクトとしては、外径D1が150~400mm、内径D2が50~200mmであるのが好ましい。本実施形態の空調用ダクト1は、外径D1が240~310mm、内径D2が65~85mm程度で構成されていても良い。
【0031】
第1の断熱層4及び第2の断熱層6は、例えば、無機繊維系の断熱材から形成されているのが好ましい。無機繊維系の断熱材としては、例えば、グラスウール又はロックウールを採用することができる。本実施形態の第1の断熱層4及び第2の断熱層6は、例えば、グラスウールの断熱材で形成されている。グラスウールの密度としては、例えば、20K、24K又は32Kのものが好適に用いられる。第1の断熱層4及び第2の断熱層6が、無機繊維系の断熱材から形成されていれば、蟻害を防止し、コストを抑制することができる。加えて、第1の断熱層4の断熱材密度は、第2の断熱層6の断熱材密度よりも高いのがより好ましい。このような第1の断熱層4及び第2の断熱層6は、第1の断熱層4の断熱材密度が第2の断熱層6の断熱材密度に等しい場合に比べると、合計熱抵抗が小さいにもかかわらず、同等の断熱性能が確保される。したがって、より少ない断熱材の量で、第2の防湿層7の内表面S10(ダクトの外表面S4の内側表面)での結露を抑制することができる。
【0032】
吸音性能を発揮させるという観点から、本実施形態の第1の断熱層4の厚さt1及び第2の断熱層6の厚さt2は、25mm以上であるのが好ましい。吸音性能をより効果的に発させるという観点から、厚さt1及び厚さt2は、40mm以上であるのがより好ましい。本実施形態では、第2の断熱層6の厚さt2は、第1の断熱層4の厚さt1と等しくなるように形成されている。
【0033】
第2の断熱層6の熱抵抗は、第1の断熱層4の熱抵抗の0.5倍以上であるのが好ましい。第2の断熱層6の熱抵抗が、第1の断熱層4の熱抵抗の0.5倍以上であれば、第2の断熱層6での断熱効果が十分確保されるので、第2の防湿層7の内表面S10(ダクトの外表面S4の内側表面)での結露をさらに抑制することができる。
【0034】
内周面材2は、不織布8、又は、不織布8とダクト形状を保持するためのスパイラル状の芯材9とを含む複合体10であるのが好ましい。不織布は繊維が結合されて形成されており、本実施形態の不織布8は、例えば、天然繊維、合成繊維、金属繊維がその材料として採用されうる。本実施形態の内周面材2の不織布8は、例えば、合成繊維で形成されているのが好ましく、ポリエステルで形成されているのがより好ましい。本実施形態の内周面材2は、不織布8を含んで構成されているため、音通過性を十分有し、その内部に空気A1を十分通過させることができる。
【0035】
本実施形態の内周面材2は、前記複合体10で構成されている。複合体10に含まれる芯材9の材料としては、例えば、鋼線又は樹脂線が採用されうる。鋼線の材料としては、炭素鋼線や合金鋼線を採用することができ、合金鋼線としては、亜鉛メッキ鋼線又はステンレス鋼線が好適に採用される。一方、樹脂線の材料としては、PET又はポリエステルが好適に用いられる。本実施形態の内周面材2は、芯材9が不織布8の外側に内周面材2の軸方向へスパイラル状に巻かれているため、空調用ダクト1の形状が保持され、空調用ダクト1に可撓性が与えられる。したがって、本実施形態の内周面材2は、音通過性を十分有し、その内部に空気A1を十分通過させることができるとともに、空気A1を通過させるための空間SPを確実に確保することができる。
【0036】
第1の防湿層5は、第2の防湿層7よりも遮音性能が低いのが好ましい。このような観点から、第1の防湿層5と第2の防湿層7とが同じ材料で形成されている場合、第1の防湿層5の厚さは、第2の防湿層7の厚さよりも小さいのが好ましい。第1の防湿層5が、第2の防湿層7よりも遮音性能が低いと、第1の断熱層4で吸音されなかった音が第2の断熱層6により伝わりやすくなる。当該音は、第1の防湿層5よりも遮音性能が高い第2の防湿層7で反射され、第2の断熱層6でより吸収されやすくなる。したがって、本実施形態の空調用ダクト1は、吸音性能を十分発揮することができる。
【0037】
第1の防湿層5は、樹脂材料で形成されているのが好ましいが、防湿機能を有するオレフィン系樹脂で形成されているのがより好ましく、防湿機能が高いポリプロピレンで形成されているのがさらに好ましい。本実施形態の第1の防湿層5は、例えば、ポリプロピレンフィルムで形成されている。ポリプロピレンフィルムの厚さは、例えば、2~200μmであるのが好ましいが、10~50μmであるのがより好ましい。第1の防湿層5がオレフィン系樹脂で形成されている場合も、第1の防湿層5の厚さは、例えば、2~200μmであるのが好ましく、10~50μmであるのがより好ましい。このような第1の防湿層5は、同じ厚さのアルミ蒸着フィルムで形成されている場合に比べて、遮音性能を低くすることができる。これにより、第1の断熱層4で吸音されなかった音が第2の断熱層6により伝わりやすくなる。当該音は、第2の防湿層7で反射され、第2の断熱層6で吸収されるため、本実施形態の空調用ダクト1は、吸音性能を十分発揮することができる。
【0038】
第2の防湿層7は、アルミ蒸着フィルム又はアルミガラスクロスを含むのが好ましい。本実施形態の第2の防湿層7は、例えば、アルミニウム蒸着PETフィルムで形成されている。アルミニウム蒸着PETフィルムの厚さは、例えば、5~100μmであるのが好ましいが、10~50μmであるのがより好ましい。第2の防湿層7がアルミガラスクロスを含んでいる場合も、第2の防湿層7の厚さは、例えば、5~100μmであるのが好ましく、10~50μmであるのがより好ましい。このような第2の防湿層7は、同じ厚さのポリプロピレンを含む樹脂材料で形成されている場合に比べて、第2の防湿層7の遮音性能を高くすることができる。これにより、第2の断熱層6に伝わった音が、第2の防湿層7で反射されやすくなり、第2の断熱層6でより吸収される。したがって、本実施形態の空調用ダクト1は、吸音性能を十分発揮することができる。
【0039】
第2の防湿層7は、ダクトの最も外側に配置されているのが好ましい。第2の防湿層7が、ダクトの最も外側に配置されていると、第2の防湿層7の外表面S12を空調用ダクト1の外表面S4として構成することができる。これにより、第2の防湿層7の内表面S10(ダクトの外表面S4の内側表面)での結露をより効果的に抑制することができる。
【0040】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【実施例0041】
図1及び図2に示した基本構造を有する空調用ダクトの構成材の物性値が、一般社団法人住宅性能評価・表示協会の内部結露計算シートに入力された(実施例)。また、比較のために、実施例の第1の防湿層を除いて、実施例と同一構造を有する空調用ダクトの構成材の物性値が、上記内部結露計算シートに入力された(比較例)。
【0042】
実施例及び比較例について、第2の防湿層の内表面(ダクトの外表面の内側表面)での相対湿度がそれぞれ計算された。さらに、実施例について、第1の防湿層の内表面での相対湿度も計算された。これらの相対湿度は、以下の共通仕様に基づいて、上記内部結露計算シートの計算プログラムが実施されることで取得された。結果が、表1に示される。
・空調用ダクト外部
・温度:6.2℃
・相対湿度:70%RH
・表面熱伝達率:6.8W/m2・K
・空調用ダクト内部
・温度:15℃
・相対湿度:60%RH
・表面熱伝達率:29W/m2・K
・断熱層
・材料:グラスウール24K
・熱伝導率:0.038W/m・K
・透湿比抵抗:0.00588msPa/ng
・不織布
・熱伝導率:∞
・透湿抵抗:0.082m2sPa/ng
・防湿シート
・熱伝導率:∞
・透湿抵抗:0.00019m2sPa/ng
【0043】
【表1】
【0044】
テストの結果、実施例の第2の防湿層の内表面(ダクトの外表面の内側表面)での相対湿度は、水蒸気(湿気)の一部が第1の防湿層を通過して第2の断熱層に移動するため、実施例の第1の防湿層の内表面での相対湿度よりも大きくなった。それでも、水蒸気の大部分は、温度が高く保たれた第1の防湿層の内表面側にとどまり、第1の防湿層の内表面側より温度が低い第2の防湿層の内表面側への移動が抑制された。これにより、実施例の第2の防湿層の内表面(ダクトの外表面の内側表面)での相対湿度は、第1の防湿層による防湿効果により、比較例の第2の防湿層の内表面(ダクトの外表面の内側表面)での相対湿度よりも小さくできた。また、比較例の第2の防湿層の内表面(ダクトの外表面の内側表面)での相対湿度は、100%RHであったため、当該内表面で結露が発生した。これに対し、実施例の第2の防湿層の内表面(ダクトの外表面の内側表面)での相対湿度は、84%RHであったため、当該内表面で結露は発生しなかった。したがって、実施例は、吸音性能を発揮しつつ、第2の防湿層の内表面(ダクトの外表面の内側表面)での結露を抑制できることが確認できた。
【0045】
[付記]
本発明は以下の態様を含む。
【0046】
[本発明1]
空調用ダクトであって、
音通過性を有し、かつ、内部に空気を通過させるための空間を区画する内周面材と、
前記内周面材を囲むように前記内周面材の外側に配された断熱防湿層とを含み、
前記断熱防湿層は、
前記内周面材を囲むように前記内周面材の外側に配された第1の断熱層と、
前記第1の断熱層を囲むように前記第1の断熱層の外側に配された第1の防湿層と、
前記第1の防湿層を囲むように前記第1の防湿層の外側に配された第2の断熱層と、
前記第2の断熱層を囲むように前記第2の断熱層の外側に配された第2の防湿層とを含む、
空調用ダクト。
[本発明2]
前記第2の断熱層の熱抵抗は、前記第1の断熱層の熱抵抗の0.5倍以上である、本発明1に記載の空調用ダクト。
[本発明3]
前記第1の防湿層は、前記第2の防湿層よりも遮音性能が低い、本発明1又は2に記載の空調用ダクト。
[本発明4]
前記第1の断熱層及び前記第2の断熱層は、無機繊維系の断熱材からなり、
前記第1の断熱層の断熱材密度は、前記第2の断熱層の断熱材密度よりも高い、本発明1ないし3のいずれかに記載の空調用ダクト。
[本発明5]
前記内周面材は、不織布、又は、不織布とダクト形状を保持するためのスパイラル状の芯材とを含む複合体である、本発明1ないし4のいずれかに記載の空調用ダクト。
[本発明6]
前記第1の防湿層は、オレフィン系樹脂で形成されている、本発明1ないし5のいずれかに記載の空調用ダクト。
[本発明7]
前記第2の防湿層は、アルミ蒸着フィルム又はアルミガラスクロスを含む、本発明1ないし6のいずれかに記載の空調用ダクト。
[本発明8]
前記第2の防湿層は、ダクトの最も外側に配置されている、本発明1ないし7のいずれかに記載の空調用ダクト。
【符号の説明】
【0047】
1 空調用ダクト
2 内周面材
3 断熱防湿層
4 第1の断熱層
5 第1の防湿層
6 第2の断熱層
7 第2の防湿層
A1 空気
SP 空間
図1
図2