(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025018489
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】積層体及び包装材料
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20250130BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20250130BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B32B27/00 H
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023122220
(22)【出願日】2023-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100218855
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 政輝
(72)【発明者】
【氏名】石井 萌
(72)【発明者】
【氏名】武井 遼
(72)【発明者】
【氏名】江島 優希
(72)【発明者】
【氏名】加藤 了嗣
(72)【発明者】
【氏名】山田 幹典
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AA23
3E086AB01
3E086AC07
3E086AD01
3E086BA04
3E086BA13
3E086BA15
3E086BB02
3E086BB05
3E086BB22
3E086BB41
3E086CA01
3E086CA28
4F100AA17D
4F100AA18D
4F100AA19D
4F100AA20D
4F100AK04A
4F100AK04B
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4F100AK04E
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4F100AT00E
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4F100JD02E
4F100JK07A
4F100JK07B
4F100JK07C
4F100JL12E
4F100JL16
(57)【要約】
【課題】ガスバリア層を設ける際の優れた加工安定性と、優れた透明性と、加熱殺菌処理後においてもガスバリア性を維持できる優れた耐熱性と、優れた密着性とを有する積層体を提供すること。
【解決手段】多層ポリエチレンフィルムと、無機酸化物層と、接着剤層と、シーラント層と、をこの順序で備える積層体であって、多層ポリエチレンフィルムが、表層、中間層、及び裏層をこの順序で有し、表層が中間層と無機酸化物層との間に設けられており、表層が、0.926g/cm
3以上の密度を有する中密度ポリエチレン樹脂又は高密度ポリエチレン樹脂で構成されており、表層及び裏層の複合弾性率が1.45GPa以上1.90GPa未満であり、中間層の複合弾性率が1.80GPa以上2.50GPa未満であり、多層ポリエチレンフィルムの分子配向度の絶対値が1.07未満である、積層体。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層ポリエチレンフィルムと、無機酸化物層と、接着剤層と、シーラント層と、をこの順序で備える積層体であって、
前記多層ポリエチレンフィルムが、表層、中間層、及び裏層をこの順序で有し、前記表層が前記中間層と前記無機酸化物層との間に設けられており、
前記表層が、0.926g/cm3以上の密度を有する中密度ポリエチレン樹脂又は高密度ポリエチレン樹脂で構成されており、
前記表層及び前記裏層の複合弾性率が1.45GPa以上1.90GPa未満であり、 前記中間層の複合弾性率が1.80GPa以上2.50GPa未満であり、
前記多層ポリエチレンフィルムの分子配向度の絶対値が1.07未満である、積層体。
【請求項2】
前記積層体におけるポリエチレン樹脂の含有量が、前記積層体の全量を基準として90質量%以上である、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記中間層の厚さが前記多層ポリエチレンフィルムの厚さの33%以上である、請求項1に記載の積層体。
【請求項4】
前記無機酸化物層の前記シーラント層側の表面上にガスバリア性被覆層を更に備える、請求項1に記載の積層体。
【請求項5】
前記接着剤層がガスバリア性接着剤を含む、請求項1に記載の積層体。
【請求項6】
前記多層ポリエチレンフィルムの前記裏層側の表面上に配置された第二の接着剤層と、
前記第二の接着剤層を介して配置された基材と、を更に備える、請求項1に記載の積層体。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の積層体を含む包装材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体及び包装材料に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、医薬品等の包装に用いられる包装材料には、内容物の変質や腐敗等を抑制し、それらの機能や品質を維持するため、内容物を変性させる気体(水蒸気、酸素、その他)の進入を防ぐ性質(ガスバリア性)が求められる。また、包装材料には、ボイル処理等の加熱殺菌処理を施すことがあるため、優れた耐熱性が求められる。そのため、これらの包装材料には、ガスバリア性及び耐熱性を有する積層体が用いられる。
【0003】
このような積層体としては、ガスバリア性を有する材料からなるガスバリア層を樹脂基材の表面に設けたものが知られている。ガスバリア層としては、金属箔、金属蒸着膜、ウェットコート法により形成された被膜等が知られている。樹脂基材としては、ポリエチレンフィルム等のポリオレフィンフィルムが知られている。例えば、特許文献1には、メタロセン触媒を用いることにより製造される直鎖状低密度ポリエチレンからなる厚さ30μm未満の無延伸ポリエチレンフィルムの表面にアルミニウム蒸着膜を有することを特徴とするアルミニウム蒸着ポリエチレンフィルムが記載されている。
【0004】
また、基材として複数の樹脂層を有する基材を用いることにより、積層体の特性を向上させることが検討されている。例えば、特許文献2には、シワが生じることを抑制できるフィルムとして、第1面及び第2面を含む樹脂層と、樹脂層の第2面上に設けられた蒸着層と、を備え、樹脂層は、第1面を構成する第1の層と、第1の層の密度よりも高い密度を有し、且つ、0.934g/cm3以上の密度を有する少なくとも1つの硬質層と、を含み、硬質層の厚みの合計が、樹脂層の全体の厚みの60%以上である、フィルムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-179878号公報
【特許文献2】特開2018-24213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、海洋プラスチックごみ問題等に端を発する環境意識の高まりから、プラスチック材料の分別回収と再資源化のさらなる高効率化が求められており、包装材料においても、モノマテリアル化が求められるようになってきた。
【0007】
しかし、積層体のモノマテリアル化を進めるにあたって本発明者らが検討したところ、ポリエチレンフィルムの各層を構成するポリエチレン樹脂の種類によっては、ポリエチレンフィルムの表面にシワが発生し、ガスバリア層を形成することが困難となる場合や十分な透明性、耐熱性、及び密着性を付与することが困難となる場合があることがわかった。
【0008】
そこで、本発明の一側面は、ガスバリア層を設ける際の優れた加工安定性と、優れた透明性と、加熱殺菌処理後においてもガスバリア性を維持できる優れた耐熱性と、優れた密着性とを有する積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面は、以下の[1]~[7]を含む。
[1] 多層ポリエチレンフィルムと、無機酸化物層と、接着剤層と、シーラント層と、をこの順序で備える積層体であって、
前記多層ポリエチレンフィルムが、表層、中間層、及び裏層をこの順序で有し、前記表層が前記中間層と前記無機酸化物層との間に設けられており、
前記表層が、0.926g/cm3以上の密度を有する中密度ポリエチレン樹脂又は高密度ポリエチレン樹脂で構成されており、
前記表層及び前記裏層の複合弾性率が1.45GPa以上1.90GPa未満であり、 前記中間層の複合弾性率が1.80GPa以上2.50GPa未満であり、
前記多層ポリエチレンフィルムの分子配向度の絶対値が1.07未満である、積層体。
[2] 前記積層体におけるポリエチレン樹脂の含有量が、前記積層体の全量を基準として90質量%以上である、[1]に記載の積層体。
[3] 前記中間層の厚さが前記多層ポリエチレンフィルムの厚さの33%以上である、[1]又は[2]に記載の積層体。
[4] 前記無機酸化物層の前記シーラント層側の表面上にガスバリア性被覆層を更に備える、[1]~[3]のいずれか一つに記載の積層体。
[5] 前記接着剤層がガスバリア性接着剤を含む、[1]~[4]のいずれか一つに記載の積層体。
[6] 前記多層ポリエチレンフィルムの前記裏層側の表面上に配置された第二の接着剤層と、
前記第二の接着剤層を介して配置された基材と、を更に備える、[1]に記載の積層体。
[7] [1]~[6]のいずれか一つに記載の積層体を含む包装材料。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一側面によれば、ガスバリア層を設ける際の優れた加工安定性と、優れた透明性と、加熱殺菌処理後においてもガスバリア性を維持できる優れた耐熱性と、優れた密着性とを有する積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る積層体の断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の他の一実施形態に係る積層体の断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の他の一実施形態に係る積層体の断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の他の一実施形態に係る積層体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態について詳細に説明する。なお、図面は模式的なものであり、例えば、厚さと平面寸法との関係、各層の厚さの比率は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本開示の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本開示の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造等が下記のものに限定されるものではない。
【0013】
[積層体]
図1は、本発明の一実施形態に係る積層体の断面図である。積層体100は、多層ポリエチレンフィルム10と、無機酸化物層21と、ガスバリア性被覆層22と、接着剤層30と、シーラント層40と、を備える。
【0014】
積層体100におけるポリエチレン樹脂の含有量は、モノマテリアル化を実現し、リサイクル性が優れる観点から、積層体100の全量を基準として、90質量%以上、又は95質量%以上であってもよい。
【0015】
積層体100の厚さは、特に制限されるものではなく、コストや用途に応じて適宜決定できる。積層体100の厚さは、50μm以上、60μm以上、又は70μm以上であってもよく、300μm以下、250μm以下、又は200μm以下であってもよい。
【0016】
<多層ポリエチレンフィルム>
多層ポリエチレンフィルム10は、表層11、中間層12、及び裏層13をこの順序で備える。表層11は、中間層12と無機酸化物層21との間に設けられている。表層11及び裏層13は、それぞれ、多層ポリエチレンフィルム10の最外層である。
【0017】
多層ポリエチレンフィルム10におけるポリエチレン樹脂の含有量は、モノマテリアル化を実現し、リサイクル性が優れる観点から、多層ポリエチレンフィルム10の全量を基準として、90質量%以上、又は95質量%以上であってもよい。
【0018】
多層ポリエチレンフィルム10の密度は、シワがより発生しにくくなり、加工安定性がより優れる観点、及び加熱殺菌処理後においてもガスバリア性及び密着性をより維持しやすく、耐熱性がより優れる観点から、0.935g/cm3以上、0.940g/cm3以上、0.945g/cm3以上、0.950g/cm3以上、又は0.955g/cm3以上であってもよい。多層ポリエチレンフィルム10の密度は、0.980g/cm3以下、0.975g/cm3以下、0.970g/cm3以下、0.965g/cm3以下、又は0.960g/cm3以下であってもよい。
【0019】
多層ポリエチレンフィルム10は未延伸であってもよい。多層ポリエチレンフィルム10が未延伸であるとは、多層ポリエチレンフィルムの分子配向度の絶対値が1.07未満であることを意味する。多層ポリエチレンフィルム10が未延伸である(分子配向度の絶対値が1.07未満である)ことにより、多層ポリエチレンフィルム10の表層11近傍でガスバリア層20が剥がれにくくなり、ガスバリア層20との密着性が優れる傾向がある。分子配向度の絶対値は、マイクロ波方式分子配向計(例えば、王子計測器株式会社製のMOA-5012A)を用いて、マイクロ波偏波電界中で多層ポリエチレンフィルムを回転させて測定される多層ポリエチレンフィルム面内の分子鎖の分子配向度の絶対値を意味する。
【0020】
多層ポリエチレンフィルム10の厚さは、特に制限されるものではなく、包装材料としての適性、及び他の層との積層適性を考慮しつつ、コストや用途に応じて適宜決定できる。多層ポリエチレンフィルム10の厚さは、3μm以上、5μm以上、6μm以上、又は10μm以上であってもよく、200μm以下、120μm以下、100μm以下、又は40μm以下であってもよい。
【0021】
(表層)
表層11は、0.926g/cm3以上の中密度ポリエチレン樹脂又は高密度ポリエチレン樹脂で構成されている層である。表層11が、0.926g/cm3以上の中密度ポリエチレン樹脂又は高密度ポリエチレン樹脂で構成されていることにより、多層ポリエチレンフィルム10の耐熱性が優れる。本明細書において、高密度ポリエチレン樹脂とは、密度が0.942g/cm3以上のポリエチレン樹脂を意味する。以下、表層11を構成するポリエチレン樹脂を第一のポリエチレン樹脂ともいう。
【0022】
表層11における第一のポリエチレン樹脂の含有量は、表層11の全量を基準として、90質量%以上、95質量%以上、又は98質量%以上であってもよく、100質量%(表層11が実質的に第一のポリエチレン樹脂からなる態様)であってもよい。表層11が複数のポリエチレン樹脂(例えば、平均分子量、密度等が異なる複数のポリエチレン樹脂)で構成されている場合は、複数のポリエチレン樹脂の混合物を第一のポリエチレン樹脂とする。
【0023】
表層11は、シワがより発生しにくくなり、加工安定性がより優れる観点、及び加熱殺菌処理後においてもガスバリア性をより維持しやすく、耐熱性がより優れる観点から、以下の範囲の密度を有する第一のポリエチレン樹脂で構成されていてもよい。第一のポリエチレン樹脂の密度は、0.930g/cm3以上、0.935g/cm3以上、又は0.940g/cm3以上であってもよい。第一のポリエチレン樹脂の密度は、0.970g/cm3以下、0.965g/cm3以下、又は0.960g/cm3以下であってもよい。特に、第一のポリエチレン樹脂の密度が0.960g/cm3以下であることにより、多層ポリエチレンフィルム10の表面が荒れること、及び樹脂粉が発生することを抑制でき、優れたガスバリア性を実現しやすくなる。
【0024】
表層11の複合弾性率は、1.45GPa以上1.90GPa未満である。表層11の複合弾性率が1.45GPa以上1.90GPa未満であることにより、多層ポリエチレンフィルム10の透明性及びガスバリア性が優れる。表層11の複合弾性率は、ナノインデンテーション法により測定することができ、具体的には後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
【0025】
表層11の複合弾性率は、1.50GPa以上、1.55GPa以上、又は1.60GPa以上であってもよく、1.85GPa以下、1.80GPa以下、又は1.75GPa以下であってもよい。
【0026】
第一のポリエチレン樹脂の190℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレートMFR1は、特に限定されるものではなく、第一のポリエチレン樹脂を製造する方法によって適宜調整することができる。第一のポリエチレン樹脂の190℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレートMFR1は、5g/10min以下、3g/10min以下、又は1.5g/10min以下であってもよい。第一のポリエチレン樹脂のMFR1は、0.1g/10min以上又は0.3g/10min以上であってもよい。本明細書においてメルトフローレートは、JIS K6921-2に準拠して測定される値を意味する。
【0027】
表層11の厚さは、特に制限されるものではなく、製造方法や装置に由来する適性、及び他の層との積層適性を考慮しつつ、コストや用途に応じて適宜決定できる。表層11の厚さは、実用上の観点から、1μm以上、2μm以上、3μm以上、4μm以上、又は5μm以上であってもよく、50μm以下、30μm以下、20μm以下、又は10μm以下であってもよい。
【0028】
(中間層)
中間層12は、ポリエチレン樹脂を含有する層である。以下、中間層12を構成するポリエチレン樹脂を第二のポリエチレン樹脂ともいう。中間層12における第二のポリエチレン樹脂の含有量は、中間層12の全量を基準として、90質量%以上、95質量%以上、又は98質量%以上であってもよく、100質量%(中間層12が実質的に第二のポリエチレン樹脂からなる態様)であってもよい。中間層12が複数のポリエチレン樹脂(例えば、平均分子量、密度等が異なる複数のポリエチレン樹脂)で構成されている場合は、複数のポリエチレン樹脂の混合物を第二のポリエチレン樹脂とする。
【0029】
中間層12は、シワがより発生しにくくなり、加工安定性がより優れる観点、加熱殺菌処理後においてもガスバリア性をより維持しやすく、耐熱性がより優れる観点から、以下の範囲の密度を有する第二のポリエチレン樹脂で構成されていてもよい。第二のポリエチレン樹脂の密度は、0.940g/cm3以上、0.945g/cm3以上、又は0.950g/cm3以上であってもよい。第二のポリエチレン樹脂の密度は、0.980g/cm3以下、0.975g/cm3以下、0.970g/cm3以下、又は0.965g/cm3以下であってもよい。
【0030】
中間層12の複合弾性率は、1.80GPa以上2.50GPa未満である。中間層12の複合弾性率が1.80GPa以上2.50GPa未満であることにより、多層ポリエチレンフィルム10にシワが発生しにくくなると共に、透明性及びガスバリア性が優れる。中間層12の複合弾性率は、ナノインデンテーション法により測定することができ、具体的には後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
【0031】
中間層12の複合弾性率は、1.90GPa以上、2.00GPa以上、2.05GPa以上、2.10GPa以上、又は2.15GPa以上であってもよく、2.40GPa以下、2.35GPa以下、又は2.30GPa以下であってもよい。
【0032】
第二のポリエチレン樹脂の190℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレートMFR2は、特に限定されるものではなく、第二のポリエチレン樹脂を製造する方法によって適宜調整することができる。第二のポリエチレン樹脂の190℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレートMFR2は、5g/10min以下、3g/10min以下、2g/10min以下、又は1.5g/10min以下であってもよい。第二のポリエチレン樹脂のMFR2は、0.1g/10min以上、0.5g/10min以上、又は0.8g/10min以上であってもよい。
【0033】
中間層12の厚さは、特に制限されるものではなく、製造方法や装置に由来する適性、及び他の層との積層適性を考慮しつつ、コストや用途に応じて適宜決定できる。中間層12の厚さは、実用上の観点から、5μm以上、8μm以上、10μm以上、12μm以上、又は15μm以上であってもよく、80μm以下、50μm以下、40μm以下、又は30μm以下であってもよい。
【0034】
中間層12の厚さが大きいほど、より優れた耐熱性を実現することができる。中間層12の厚さは、加熱殺菌処理後においてもガスバリア性をより維持しやすく、耐熱性がより優れる観点から、多層ポリエチレンフィルム10の厚さの30%以上、33%以上、40%以上、50%以上、55%以上、又は60%以上であってもよい。中間層12の厚さは、多層ポリエチレンフィルム10の厚さの80%以下、77%以下、又は75%以下であってもよい。
【0035】
加熱殺菌処理後においてもガスバリア性を維持しやすく、耐熱性が優れる観点から、表層11及び裏層13の合計の厚さに対する中間層12の厚さの比は、0.5以上、1以上、1.2以上、1.4以上、又は1.5以上であってもよい。表層11及び裏層13の合計の厚さに対する中間層12の厚さの比は、3以下、2.5以下、又は2以下であってもよい。
【0036】
中間層12の厚さは、加熱殺菌処理後においてもガスバリア性をより維持しやすく、耐熱性がより優れる観点から、表層11の厚さ及び/又は裏層13の厚さよりも大きくてもよい。中間層12の厚さは、加熱殺菌処理後においてもガスバリア性をより維持しやすく、耐熱性がより優れる観点から、表層11の厚さ及び/又は裏層13の厚さの1倍以上、1.5倍以上、2倍以上、2.5倍以上、又は3倍以上であってもよい。中間層12の厚さは、表層11の厚さ及び/又は裏層13の厚さの8倍以下、7倍以下、6.5倍以下、又は6倍以下であってもよい。
【0037】
(裏層)
裏層13は、ポリエチレン樹脂を含有する層である。以下、裏層13を構成するポリエチレン樹脂を第三のポリエチレン樹脂ともいう。裏層13における第三のポリエチレン樹脂の含有量は、裏層13の全量を基準として、90質量%以上、95質量%以上、又は98質量%以上であってもよく、100質量%(裏層13が実質的に第三のポリエチレン樹脂からなる態様)であってもよい。裏層13が複数のポリエチレン樹脂(例えば、平均分子量、密度等が異なる複数のポリエチレン樹脂)で構成されている場合は、複数のポリエチレン樹脂の混合物を第三のポリエチレン樹脂とする。
【0038】
裏層13は、シワがより発生しにくくなり、加工安定性がより優れる観点、及び加熱殺菌処理後においてもガスバリア性及び密着性をより維持しやすく、耐熱性がより優れる観点から、以下の範囲の密度を有する第三のポリエチレン樹脂で構成されていてもよい。第三のポリエチレン樹脂の密度は、0.920g/cm3以上、0.926g/cm3以上、0.930g/cm3以上、0.935g/cm3以上、又は0.940g/cm3以上であってもよい。第三のポリエチレン樹脂の密度は、0.970g/cm3以下、0.965g/cm3以下、又は0.960g/cm3以下であってもよい。第三のポリエチレン樹脂の密度が0.960g/cm3以下であることにより、多層ポリエチレンフィルム10の表面が荒れること、及び樹脂粉が発生することを抑制できる。樹脂粉が発生することを抑制することにより、多層ポリエチレンフィルム10をロール巻取りしたときに、多層ポリエチレンフィルム10の表層11側の表面に樹脂粉が付着することを抑制でき、優れたガスバリア性を実現しやすくなる。
【0039】
裏層13の複合弾性率は、1.45GPa以上1.90GPa未満である。裏層13の複合弾性率が1.45GPa以上1.90GPa未満であることにより、多層ポリエチレンフィルム10の透明性及びガスバリア性が優れる。裏層13の複合弾性率は、ナノインデンテーション法により測定することができ、具体的には後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
【0040】
裏層13の複合弾性率は、1.50GPa以上、1.55GPa以上、又は1.60GPa以上であってもよく、1.85GPa以下、1.80GPa以下、又は1.75GPa以下であってもよい。
【0041】
第三のポリエチレン樹脂の190℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレートMFR3は、特に限定されるものではなく、第三のポリエチレン樹脂を製造する方法によって適宜調整することができる。第三のポリエチレン樹脂の190℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレートMFR3は、5g/10min以下、3g/10min以下、又は1.5g/10min以下であってもよい。第三のポリエチレン樹脂のMFR3は、0.1g/10min以上又は0.3g/10min以上であってもよい。
【0042】
裏層13の厚さは、特に制限されるものではなく、製造方法や装置に由来する適性、及び他の層との積層適性を考慮しつつ、コストや用途に応じて適宜決定できる。裏層13の厚さは、実用上の観点から、1μm以上、2μm以上、3μm以上、4μm以上、又は5μm以上であってもよく、50μm以下、30μm以下、20μm以下、又は10μm以下であってもよい。
【0043】
裏層13は、表層11と同様の構成であってもよい。すなわち、多層ポリエチレンフィルム10は、中間層12に対して対称構造を有していてもよい。多層ポリエチレンフィルム10が対称構造を有することにより、多層ポリエチレンフィルム10の製造時にカールすることを抑制でき、多層ポリエチレンフィルム10を安定して製造することができる。
【0044】
表層11、中間層12、及び裏層13は、リサイクル性を損なわない範囲で適宜ポリエチレン樹脂以外の樹脂を含んでもよい。このような樹脂としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-αオレフィン共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、ホモポリプロピレン樹脂(PP)、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-αオレフィン共重合体、ポリブテン等のオレフィン系樹脂、ポリアミド、ポリエチレンビニルアルコール、ポリエステル、各種改質用樹脂などが挙げられる。また、それぞれ独立に、添加剤を1種又は2種以上含有してもよい。添加剤としては、例えば、架橋剤、酸化防止剤、アンチブロッキング剤、滑剤(スリップ剤)、紫外線吸収剤、光安定剤、充填材、補強剤、帯電防止剤、顔料が挙げられる。
【0045】
中間層12は、単層であってもよく、複数の層で形成されていてもよい。例えば、
図2に示すように、積層体200における多層ポリエチレンフィルム50は、表層51と、中間層52と、裏層53とを有し、中間層52は、樹脂層52a、52b、及び52cを有する。このとき、樹脂層52a、52b、及び52cは、いずれも同一の組成を有する。中間層52が、複数の層を有することは、多層ポリエチレンフィルム50の断面を光学顕微鏡又は電子顕微鏡で観察することにより確認することができる。
【0046】
多層ポリエチレンフィルム10は、表層11、中間層12、及び裏層13の3層以外の層を備えていてもよい。例えば、
図3に示すように、積層体300における多層ポリエチレンフィルム60は、表層61と、中間層62と、裏層63とを有し、表層61と中間層62との間に樹脂層64を有し、中間層62と裏層63との間に樹脂層65を有する。樹脂層64は、例えば、ポリエチレン樹脂を含有し、表層61及び中間層62とは異なる組成を有する層である。樹脂層65は、例えば、ポリエチレン樹脂を含有し、中間層62及び裏層63とは異なる組成を有する層である。多層ポリエチレンフィルムは、例えば、3層、5層、7層、又はそれ以上であってもよい。
【0047】
多層ポリエチレンフィルム10の各層は、シワがより発生しにくくなり、加工安定性がより優れる観点、加熱殺菌処理後においてもガスバリア性をより維持しやすく、耐熱性がより優れる観点から、以下の範囲の密度を有するポリエチレン樹脂で構成されていてもよい。ポリエチレン樹脂の密度は、0.930g/cm3以上、0.940g/cm3以上、0.945g/cm3以上、又は0.950g/cm3以上であってもよい。ポリエチレン樹脂の密度は、0.980g/cm3以下、0.975g/cm3以下、0.970g/cm3以下、又は0.965g/cm3以下であってもよい。
【0048】
多層ポリエチレンフィルム10を製造する方法は、特に制限されるものではなく、空冷インフレーション法、水冷インフレーション法、Tダイキャスト法等の公知の方法で製造することができる。汎用性の観点から、多層ポリエチレンフィルム10は、インフレーション法で製造してもよく、空冷インフレーション法で製造してもよい。空冷インフレーション法とは、押出機の先端にリングダイス(又はクロスヘッドダイ)と呼ばれる環状のリップを持つ金型を設置し、チューブ状に材料を押し出して連続的に成型する方法である。より具体的には、リングダイスの中央に空気孔が設置されており、空気孔から圧搾空気を吹き込んでチューブを膨張させ、ピンチロールと呼ばれるローラーで引っ張りながら冷却してフィルムを巻き取ることによって、多層ポリエチレンフィルム10を製造することができる。
【0049】
得られた多層ポリエチレンフィルム10には、必要に応じて後工程の適性を向上する表面改質処理が施されてもよい。例えば、印刷適性の向上や、積層時のラミネート適性の向上のために、多層ポリエチレンフィルム10の表面に対して改質処理を行ってもよい。改質処理としては、コロナ放電処理、プラズマ処理、フレーム処理等のフィルム表面を酸化させることにより官能基を生じさせる処理や、コーティングにより易接着層を形成するウェットプロセスによる改質処理等が挙げられる。
【0050】
<ガスバリア層>
ガスバリア層20は、水蒸気や酸素に対するガスバリア性を向上させる観点から多層ポリエチレンフィルム10上に設けられる層である。ガスバリア層20は、透明性を有する層であることが好ましい。ガスバリア層20は、無機酸化物層21及びガスバリア性被覆層22を有する。ガスバリア層20は、無機酸化物層21及びガスバリア性被覆層22の両方を有していてもよく、無機酸化物層21のみを有していてもよい。
【0051】
(無機酸化物層)
無機酸化物層21は、無機酸化物を含む。無機酸化物としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化錫、酸化マグネシウム、及びこれらの混合物が挙げられる。加熱殺菌処理後においてもガスバリア性及び密着性をより維持しやすく、耐熱性がより優れる観点、及び透明性がより優れる観点から、無機酸化物層21は、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、及び酸化マグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでもよい。
【0052】
無機酸化物層21の厚さは、5~150nmであってよい。無機酸化物層21の厚さが5nm以上であれば、均一で十分な膜厚を有する層を形成しやすく、十分なガスバリア性を実現することができる。無機酸化物層21の厚さが150nm以下であれば、無機酸化物層21に柔軟性を付与することができ、無機酸化物層21を形成した後に折り曲げや引っ張り等の外的負荷が加わったとしても、無機酸化物層21に亀裂が生じることを抑制することができる。無機酸化物層21の厚さは、6nm以上、又は8nm以上であってもよく、100nm、又は50nm以下であってもよい。
【0053】
無機酸化物層21は、通常の真空蒸着法により形成することができる。また、その他の薄膜形成方法であるスパッタリング法やイオンプレーティング法、プラズマ気相成長法(CVD)等により形成することもできる。無機酸化物層21は、生産性が優れる観点から、真空蒸着法により形成されてもよい。
【0054】
真空蒸着法の加熱手段としては、電子線加熱方式、抵抗加熱方式、及び誘導加熱方式のいずれかの方式を用いることができる。真空蒸着法は、蒸発材料の選択性の幅広さの観点から、電子線加熱方式であってもよい。多層ポリエチレンフィルム10と無機酸化物層21との密着性、及び無機酸化物層21の緻密性を向上させる観点から、プラズマアシスト法、イオンビームアシスト法等により蒸着してもよい。無機酸化物層21の透明性を向上させる観点から、反応蒸着により蒸着してもよい。
【0055】
(ガスバリア性被覆層)
ガスバリア性被覆層22は、無機酸化物層21を保護し、ガスバリア性を補完する目的で設けられる層である。積層体100は、ガスバリア性被覆層22を備えていなくてもよい。
【0056】
ガスバリア性被覆層22は、水溶性高分子と、金属アルコキシド、その加水分解物、及びこれらの反応生成物からなる群より選ばれる少なくとも一種と、を含んでもよく、シランカップリング剤、その加水分解物、及びこれらの反応生成物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでもよい。
【0057】
水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。水溶性高分子は、ガスバリア性が優れる観点から、ポリビニルアルコール(PVA)であってもよい。
【0058】
金属アルコキシドとしては、例えば、下記の一般式で表される化合物が挙げられる。
M(OR11)m(R12)n-m …(1)
上記式(1)中、R11及びR12は、それぞれ独立に炭素数1~8の1価の有機基である。R11及びR12は、それぞれ独立にメチル基、エチル基等のアルキル基であってもよい。Mは、Si、Ti、Al、Zr等のn価の金属原子を示す。mは、1~nの整数である。なお、R11及びR12が複数存在する場合、R11同士又はR12同士は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0059】
金属アルコキシドとしては、テトラエトキシシラン〔Si(OC2H5)4〕、トリイソプロポキシアルミニウム〔Al(O-2’-C3H7)3〕等が挙げられる。金属アルコキシドは、加水分解後に、水系の溶媒中において比較的安定である観点から、テトラエトキシシラン又はトリイソプロポキシアルミニウムであってもよい。
【0060】
シランカップリング剤としては、例えば、下記の一般式で表される化合物が挙げられる。
Si(OR21)p(R22)3-pR23 …(2)
上記式(2)中、R21は、メチル基、エチル基等のアルキル基を示し、R22は、アルキル基、アラルキル基、アリール基、アルケニル基、アクリロキシ基で置換されたアルキル基、又は、メタクリロキシ基で置換されたアルキル基等の1価の有機基を示し、R23は、1価の有機官能基を示し、pは、1~3の整数を示す。なお、R21又はR22が複数存在する場合、R21同士又はR22同士は、同一であってもよく、異なっていてもよい。R23で示される1価の有機官能基としては、グリシジルオキシ基、エポキシ基、メルカプト基、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子で置換されたアルキル基、及びイソシアネート基を含有する1価の有機官能基が挙げられる。シランカップリング剤は、上述したシランカップリング剤の二量体、三量体等の多量体であってもよい。
【0061】
シランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0062】
ガスバリア性被覆層22は、水溶性高分子を水、又は水/アルコール混合溶媒で溶解させた後、金属アルコキシド、シランカップリング剤、又はこれらの加水分解物と混合して混合溶液を得て、無機酸化物層21の表面に混合溶液を塗布して、加熱乾燥させることにより形成することができる。混合溶液には、イソシアネート化合物、分散剤、安定化剤、粘度調整剤、着色剤等の添加剤を添加してもよい。
【0063】
水溶性高分子がPVAである場合、混合溶液中のPVAの含有量は、混合溶液の全固形分量を基準として、20~50質量%、又は25~40質量%であってもよい。PVAの含有量が20質量%以上であることにより、ガスバリア性被覆層22を形成しやすくなる。PVAの含有量が50質量%以下であることにより、ガスバリア性が優れる。
【0064】
ガスバリア性被覆層22は、ポリカルボン酸系重合体のカルボキシ基と、多価金属化合物との反応生成物であるポリカルボン酸の多価金属塩を含む被膜(ポリカルボン酸の多価金属塩被膜)であってもよい。ポリカルボン酸の多価金属塩被膜は、無機酸化物層21の表面にポリカルボン酸系重合体と多価金属化合物との混合溶液を塗布し、加熱乾燥させることにより形成することができる。また、無機酸化物層21の表面にポリカルボン酸系重合体を主成分とする塗液を塗布、乾燥させて被膜を形成した後、当該被膜上に多価金属化合物を主成分とする塗液を塗布、乾燥させて被膜を形成して、これらの被膜間で架橋反応させることにより、ポリカルボン酸の多価金属塩被膜を形成してもよい。
【0065】
ポリカルボン酸系重合体とは、分子内に2個以上のカルボキシ基を有する重合体である。ポリカルボン酸系重合体としては、例えば、エチレン性不飽和カルボン酸の重合体;エチレン性不飽和カルボン酸と他のエチレン性不飽和単量体との共重合体;アルギン酸、カルボキシメチルセルロース、ペクチン等の分子内にカルボキシル基を有する酸性多糖類が挙げられる。
【0066】
エチレン性不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等が挙げられる。エチレン性不飽和カルボン酸と共重合可能なエチレン性不飽和単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル等の飽和カルボン酸ビニルエステル類、アルキルアクリレート類、アルキルメタクリレート類、アルキルイタコネート類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、スチレン、アクリルアミド、アクリロニトリル等が挙げられる。ポリカルボン酸系重合体は、1種又は2種以上であってもよい。
【0067】
エチレン性不飽和カルボン酸の重合体としては、ガスバリア性が優れる観点から、アクリル酸、マレイン酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、及びクロトン酸からなる群から選ばれる少なくとも一種の単量体から誘導される構成単位を含む重合体であることが好ましく、アクリル酸、マレイン酸、メタクリル酸、及びイタコン酸からなる群から選ばれる少なくとも一種の単量体から誘導される構成単位を含む重合体がより好ましい。
【0068】
エチレン性不飽和カルボン酸の重合体において、アクリル酸、マレイン酸、メタクリル酸、及びイタコン酸からなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体に由来する構成単位の割合は、重合体の単量体全量を基準として、80mol%以上であることが好ましく、90mol%以上であることがより好ましい。
【0069】
ポリカルボン酸系重合体の数平均分子量は、2,000~10,000,000であることが好ましく、5,000~1,000,000であることがより好ましい。数平均分子量が2,000以上であることにより、積層体が十分な耐水性を有するようになり、水分によるガスバリア性、透明性の悪化及び白化の発生を抑制することができる。数平均分子量が10,000,000以下であることにより、ガスバリア性被覆層22を形成する際の塗液の粘度が高くなり過ぎず、被膜を形成しやすくなる。
【0070】
ポリカルボン酸系重合体を主成分とする塗液を塗布、乾燥させて被膜を形成した後に、多価金属化合物を主成分とする塗液の被膜を形成する場合、ポリカルボン酸系重合体は、カルボキシ基の一部が予め塩基性化合物で中和されていてもよい。ポリカルボン酸系重合体の有するカルボキシ基の一部を予め中和することにより、耐水性及び耐熱性をより向上させることができる。塩基性化合物としては、多価金属化合物、一価金属化合物、及びアンモニアからなる群から選択される少なくとも一種の塩基性化合物であってもよい。多価金属化合物としては、後述する多価金属化合物として例示される化合物が挙げられる。一価金属化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
【0071】
ポリカルボン酸系重合体を主成分とする塗液は、架橋剤、硬化剤、レベリング剤、消泡剤、アンチブロッキング剤、静電防止剤、分散剤、界面活性剤、柔軟剤、安定剤、膜形成剤、増粘剤等の添加剤を含有してもよい。
【0072】
ポリカルボン酸系重合体を主成分とする塗液に用いる溶媒は、水性媒体が好ましい。水性媒体としては、水、水溶性又は親水性の有機溶剤、及びこれらの混合物が挙げられる。水性媒体は、水を主成分として含むものである。水性媒体中の水の含有量は、70質量%以上、又は80質量%以上であってもよい。水溶性又は親水性の有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトニトリル等のニトリル類;セロソルブ類、カルビトール類等が挙げられる。
【0073】
多価金属化合物は、ポリカルボン酸系重合体のカルボキシル基と反応してポリカルボン酸の多価金属塩を形成する化合物であれば特に限定されず、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、マグネシウムメトキシド、酸化銅、炭酸カルシウム等が挙げられる。多価金属化合物は、ガスバリア性が優れる観点から、酸化亜鉛であってもよい。多価金属化合物は、1種又は2種以上を用いてもよい。
【0074】
酸化亜鉛は紫外線吸収性能を有する無機材料である。酸化亜鉛が粒子の場合、酸化亜鉛粒子の平均粒子径は、ガスバリア性、透明性、及び塗膜の形成性の観点から、5μm以下、1μm以下、又は0.1μm以下であってもよい。
【0075】
多価金属化合物を主成分とする塗液を塗布、乾燥させて被膜を形成する場合、塗液は、多価金属化合物(例えば、酸化亜鉛粒子)に加えて、溶媒、溶媒に可溶又は分散可能な樹脂、分散剤、柔軟剤、安定剤、膜形成剤、増粘剤等を含有してもよい。
【0076】
溶媒に可溶又は分散可能な樹脂としては、例えば、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、イソシアネート樹脂等が挙げられる。塗液がこれらの樹脂を含有することにより、塗工性及び製膜性が向上する。
【0077】
分散剤としては、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤を用いることができる。界面活性剤としては、(ポリ)カルボン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルスルフォコハク酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、芳香族リン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、アルキルアリル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ソルビタンアルキルエステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン等が挙げられる。これらの界面活性剤は1種又は2種以上を用いてもよい。
【0078】
多価金属化合物を主成分とする塗液が添加剤を含む場合、多価金属化合物と添加剤との質量比(多価金属化合物:添加剤)は、30:70~99:1、又は50:50~98:2であってもよい。
【0079】
多価金属化合物を主成分とする塗液に用いる溶媒としては、例えば、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、n-ペンチルアルコール、ジメチルスルフォキシド、ジメチルフォルムアミド、ジメチルアセトアミド、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸ブチル等が挙げられる。溶媒は、塗工性の観点から、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、及び水からなる群より選ばれる少なくとも一種であってもよく、製膜性の観点から、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、及び水からなる群より選ばれる少なくとも一種であってもよい。溶媒は1種又は2種以上を用いてもよい。
【0080】
塗液の塗布方法としては、例えば、キャスト法、ディッピング法、ロールコート法、グラビアコート法、スクリーン印刷法、リバースコート法、スプレーコート法、キットコート法、ダイコート法、メタリングバーコート法、チャンバードクター併用コート法、カーテンコート法等が挙げられる。
【0081】
上述したガスバリア性被覆層22は、加熱殺菌処理後においても、優れたガスバリア性を維持することができる。そのため、積層体100を加熱殺菌処理用の包装材料として用いる場合、包装材料は、加熱殺菌処理後においても優れた密着性を有する。また、上述したガスバリア性被覆層22は、十分な透明性、耐屈曲性、及び耐延伸性を有し、ダイオキシン等の有害物質を発生させるリスクもないため好ましい。
【0082】
ガスバリア性被覆層22の厚さは、ガスバリア性が優れる観点から、0.05μm以上、又は0.1μm以上であってもよい。ガスバリア性被覆層22の厚さは、均一な塗工面を形成しやすい観点、乾燥による負荷を軽減する観点、及び製造コストの観点から、1μm以下、又は0.5μm以下であってもよい。
【0083】
(アンカーコート層)
多層ポリエチレンフィルム10とガスバリア層20との密着性を向上させる観点から、多層ポリエチレンフィルム10とガスバリア層20との間にアンカーコート層(図示せず)を設けてもよい。アンカーコート層を設けることにより、加熱殺菌処理後においてもガスバリア性及び密着性を維持しやすくなる。
【0084】
アンカーコート層は、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂等の樹脂を含む塗液により形成することができる。アンカーコート層は、耐熱性及び層間接着強度の観点から、アクリルウレタン樹脂、又はポリエステル系ポリウレタン樹脂を含む塗液で形成されてもよい。
【0085】
アンカーコート層を形成する塗液を塗工する方法は、公知の塗工方法であってよく、浸漬法(ディッピング法);スプレー、コーター、印刷機、刷毛等を用いる方法が挙げられる。また、これらの方法に用いられるコーター及び印刷機の種類並びにそれらの塗工方式としては、ダイレクトグラビア方式、リバースグラビア方式、キスリバースグラビア方式、オフセットグラビア方式等のグラビアコーター、リバースロールコーター、マイクログラビアコーター、チャンバードクター併用コーター、エアナイフコーター、ディップコーター、バーコーター、コンマコーター、ダイコーター等を挙げることができる。
【0086】
アンカーコート層を乾燥させる方法としては、特に限定されないが、自然乾燥による方法や、所定の温度に設定したオーブン中で乾燥させる方法、コーター付属の乾燥機、例えばアーチドライヤー、フローティングドライヤー、ドラムドライヤー、赤外線ドライヤー等を用いる方法を挙げることができる。乾燥の条件としては、乾燥させる方法により適宜選択することができ、例えば、オーブン中で乾燥させる方法においては、60~100℃で1秒間~2分間程度乾燥させてもよい。
【0087】
アンカーコート層の厚さは、層間の十分な密着性を得やすい観点から、0.01μm以上、0.03μm以上、又は0.05μm以上であってもよい。アンカーコート層の厚さは、ガスバリア性が優れる観点から、5μm以下、3μm以下、又は2μm以下であってもよい。
【0088】
<接着剤層>
接着剤層30は、少なくとも1種類の接着剤を含有した層であり、ガスバリア層20とシーラント層40との間に設けられて両者を接合する層である。接着剤層30は、公知の接着剤を用いて形成することができる。接着剤は、例えば、ドライラミネート用接着剤であってもよい。ドライラミネート用接着剤は、特に限定されず、例えば、エステル系接着剤、エーテル系接着剤、及びウレタン系接着剤が挙げられる。これらの接着剤は、1液硬化型であってもよく、2液硬化型であってもよい。
【0089】
接着剤層30は、ガスバリア性が優れる観点から、ガスバリア接着剤を用いて形成されていてもよい。また、無機酸化物層21、ガスバリア性被覆層22に微小な割れが生じた場合であっても、割れの隙間にガスバリア性接着剤が入り込んで補完することができるため、積層体100のガスバリア性の低下を抑制することができる。
【0090】
ガスバリア性接着剤は、硬化後にガスバリア性を発現し得る接着剤である。ガスバリア性接着剤としては、エポキシ系接着剤、ポリエステル・ポリウレタン系接着剤等が挙げられる。ガスバリア性接着剤の具体例としては、三菱ガス化学社製の「マクシーブ」、DIC社製の「Paslim」等が挙げられる。
【0091】
ガスバリア性接着剤の酸素透過度は、例えば、150cc/m2・day・atm以下であることが好ましく、100cc/m2・day・atm以下であることがより好ましく、80cc/m2・day・atm以下であることが更に好ましく、50cc/m2・day・atm以下であることが特に好ましい。酸素透過度が上記の範囲内であることで、積層体100のガスバリア性を十分に向上させることができる。
【0092】
接着剤層30は、例えば、バーコート法、ディッピング法、ロールコート法、グラビアコート法、リバースコート法、エアナイフコート法、コンマコート法、ダイコート法、スクリーン印刷法、スプレーコート法、グラビアオフセット法等により接着剤を塗布することで塗膜を形成した後、塗膜を乾燥及び硬化させることにより形成することができる。接着剤層30は、無機酸化物層21の割れることを抑制する観点から、無機酸化物層21又はガスバリア性被覆層22の表面上に直接形成されていることが好ましい。すなわち、接着剤層30は、接着剤を無機酸化物層21又はガスバリア性被覆層22の表面上に直接塗布して、乾燥及び硬化させることにより形成されていることが好ましい。
【0093】
塗膜を乾燥させるときの温度は、例えば、30~200℃であってもよく、50~180℃であることが好ましい。塗膜を硬化させるときの温度は、例えば、20~70℃であってもよく、30~60℃であることが好ましい。乾燥及び硬化時の温度を上記の範囲内とすることで、無機酸化物層21及び接着剤層30にクラックが発生することを抑制でき、積層体100のガスバリア性を十分に向上させることができる。
【0094】
接着剤層30の厚さは、0.1~20μmであることが好ましく、0.5~10μmであることがより好ましく、1~5μmであることが更に好ましい。接着剤層30の厚さが0.1μm以上であることで、外部からの衝撃を緩和するクッション性を得ることができるため、無機酸化物層21が割れることを抑制しやすくなり、且つ、積層体100のガスバリア性をより向上させることができる。接着剤層の厚さが20μm以下であることで、積層体100の柔軟性を十分に保持できる傾向がある。
【0095】
接着剤層30の厚さは、無機酸化物層21の厚さの50倍以上であることが好ましい。接着剤層30の厚さが無機酸化物層21の厚さの50倍以上であることで、外部からの衝撃を緩和するクッション性を得ることができるため、無機酸化物層21が割れることを抑制しやすくなり、且つ、積層体100のガスバリア性をより向上させることができる。接着剤層30の厚さは、無機酸化物層21の厚さの300倍以下であることが好ましい。接着剤層30の厚さが無機酸化物層21の厚さの300倍以下であることで、積層体100の柔軟性及び加工適性が優れ、且つコストを削減することができる。
【0096】
<シーラント層>
シーラント層40は、例えば、ポリエチレン樹脂により構成されている層である。シーラント層40は、積層体100を用いて包装袋等の包装材料を形成する際に熱融着(ヒートシール)により接合される層である。シーラント層40を構成するポリエチレン樹脂は、ヒートシール性がすぐれる観点から、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、及び超低密度ポリエチレン樹脂(VLDPE)であってもよい。環境負荷の観点から、シーラント層40は、バイオマス由来のポリエチレン樹脂、又はリサイクルされたポリエチレン樹脂により構成されていてもよい。シーラント層40は、例えば、無延伸ポリエチレンフィルムにより構成されていてよい。
【0097】
低密度ポリエチレンとしては、密度が0.900g/cm3以上0.925g/cm3未満のポリエチレンを使用することができる。直鎖状低密度ポリエチレンとしては、密度が0.900g/cm3以上0.925g/cm3未満のポリエチレンを使用することができる。超低密度ポリエチレンとしては、密度が0.900g/cm3未満のポリエチレンを使用することができる。
【0098】
シーラント層40は、ポリエチレン樹脂以外の樹脂を含んでもよい。ポリエチレン樹脂以外の樹脂としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-αオレフィン共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、ホモポリプロピレン樹脂(PP)、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-αオレフィン共重合体、ポリブテン等のオレフィン系樹脂が挙げられる。シーラント層40は、酸化防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0099】
シーラント層40の厚さは、例えば、20μm以上、40μm以上、又は50μm以上であってもよい。シーラント層40の厚さが20μm以上であることにより、十分なヒートシール強度を達成することができる。シーラント層40の厚さは、例えば、200μm以下、170μm以下、又は150μm以下であってもよい。シーラント層40の厚さが200μm以下であることにより、加工適性が優れる。
【0100】
図4に示されるように、積層体400は、多層ポリエチレンフィルム10のシーラント層40側とは反対側の表面に第二の接着剤層70と、第二の接着剤層70を介して配置された基材80とを備えていてもよい。
【0101】
<第二の接着剤層>
第二の接着剤層70は、少なくとも1種類の接着剤を含有した層であり、多層ポリエチレンフィルム10と基材80との間に設けられて両者を接合する。第二の接着剤層70に用いる接着剤は、1液硬化型接着剤であってもよく、2液硬化型接着剤であってもよい。接着剤としては、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、シリコーン系接着剤等が挙げられる。第二の接着剤層は、上述した接着剤層30を形成するために用いられる接着剤を用いてもよい。
【0102】
第二の接着剤層70の厚さは、例えば、0.5μm以上、0.8μm以上、又は1μm以上であってもよく、6μm以下、5μm以下、又は4.5μm以下であってもよい。
【0103】
<基材>
基材80は、積層体400の最外層であり、積層体400を保護する目的で設けられる層である。基材80は、例えば、ポリエチレン樹脂を含有する層であってよく、ポリエチレンフィルムであってよい。基材80は、ポリエチレン樹脂以外にも酸化防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0104】
基材80とシーラント層40との熱融着温度の差は10℃以上であってもよい。基材80とシーラント層40との熱融着温度の差が10℃以上であることにより、積層体400を包装材料として用いて包装袋を作製する際に、包装袋を成形しやすくなる。
【0105】
基材80の厚さは、例えば、10μm以上、20μm以上、又は30μm以上であってもよく、200μm以下、150μm以下、又は100μm以下であってもよい。
【0106】
積層体100は、更に印刷層(図示せず)を備えていてもよい。印刷層は、内容物に関する情報の表示、内容物の識別、又は包装袋の意匠性を向上させることを目的として、積層体100の外側から見える位置に設けられる。印刷層は、例えば、積層体100の無機酸化物層21の表面上、ガスバリア性被覆層22の表面上、又はシーラント層40の表面上に設けられていてもよい。
【0107】
印刷層の形成方法は特に制限されず、既知の印刷方法及び印刷インキを適用することができる。印刷方法及び印刷インキは、例えば、積層体100の各層への印刷適性、色調等の意匠性、密着性、食品容器としての安全性などを考慮して適宜選択される。
【0108】
印刷方法としては、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、グラビアオフセット印刷法、フレキソ印刷法、及びインクジェット印刷法が挙げられる。これらの中でも、グラビア印刷法は、生産性や絵柄の高精細度の観点から好ましい。
【0109】
印刷層の密着性を高める観点から、印刷層を形成する層の表面には、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理等の前処理を行ってもよく、易接着層等のコート層を設けてもよい。
【0110】
<包装材料>
積層体100は、包装袋等を構成する包装材料として用いることができる。具体的には、平袋、三方袋、合掌袋、ガゼット袋、スタンディングパウチ、スパウト付きパウチ、ビーク付きパウチ等の包装材料として用いることができる。
【0111】
積層体100は、包装材料以外にも電子デバイス用フィルム、太陽電池用フィルム、燃料電池用フィルム、基板フィルム等として用いることができる。
【実施例0112】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。但し、本発明は下記の実施例のみに限定されるものではない。
【0113】
<ポリエチレン樹脂>
・樹脂A:密度0.963g/cm3、MFR1.35g/10min、DSC融点134℃。
・樹脂B:密度0.944g/cm3、MFR0.45g/10min、DSC融点131℃。
・樹脂C:密度0.950g/cm3、MFR1.1g/10min、DSC融点130℃。
・樹脂D:密度0.958g/cm3、MFR1g/10min、DSC融点133℃。
・樹脂E:密度0.960g/cm3、MFR1g/10min、DSC融点135℃。
・樹脂F:密度0.920g/cm3、MFR0.85g/10min、DSC融点124℃。
・樹脂G:密度0.941g/cm3、MFR1.3g/10min、DSC融点129℃。
・樹脂H:密度0.962g/cm3、MFR0.85g/10min、DSC融点134℃。
・樹脂I:密度0.926g/cm3、MFR0.85g/10min、DSC融点123℃。
【0114】
<ポリエチレンフィルムの作製>
(実施例1~13、16~22、比較例1~10)
表層、中間層、及び裏層を構成する樹脂として表1、2、4~6に示す樹脂をそれぞれ押出機に投入し、190℃で溶融混練した後、3層用ダイスよりポリエチレン樹脂を導入し、空冷インフレーション法により多層ポリエチレンフィルムを作製した。各実施例及び各比較例で作製した多層ポリエチレンフィルム全体の厚さは25~40μmの範囲内であった。各実施例及び各比較例において作製した多層ポリエチレンフィルムにおけるポリエチレン樹脂の含有量は、いずれも90質量%以上であった。
【0115】
(実施例14)
層1~層5を構成する樹脂として表3に示す樹脂をそれぞれ押出機に投入し、190℃で溶融混練した後、5層用ダイスよりポリエチレン樹脂を導入し、空冷インフレーション法により、層1が表層、層2~4が中間層、層5が裏層である多層ポリエチレンフィルムを作製した。作製した多層ポリエチレンフィルムにおけるポリエチレン樹脂の含有量は、90質量%以上であった。
【0116】
(実施例15)
層1~層7を構成する樹脂として表3に示す樹脂をそれぞれ押出機に投入し、190℃で溶融混練した後、7層用ダイスよりポリエチレン樹脂を導入し、空冷インフレーション法により、層1が表層、層2~6が中間層、層7が裏層である多層ポリエチレンフィルムを作製した。作製した多層ポリエチレンフィルムにおけるポリエチレン樹脂の含有量は、90質量%以上であった。
【0117】
<積層体の作製>
各実施例及び各比較例で作製した多層ポリエチレンフィルムの表層側の表面をコロナ処理した。次いで、後述の方法により、多層ポリエチレンフィルムの表面に、アンカーコート層、無機酸化物層、ガスバリア性被覆層、接着剤層、及びシーラント層を表1~6に示す構成となるように形成し、多層ポリエチレンフィルム/アンカーコート層/無機酸化物層/ガスバリア性被覆層/接着剤層/シーラント層の順に積層した後、40℃で4日間エージングして積層体を得た。各実施例及び各比較例で作製した積層体におけるポリエチレン樹脂の含有量は、90質量%以上であった。
【0118】
実施例19~22で作製した多層ポリエチレンフィルムの裏層側の表面をコロナ処理した。次いで、後述の方法により、多層ポリエチレンフィルムの表面に、アンカーコート層、無機酸化物層、ガスバリア性被覆層、接着剤層、及びシーラント層を表4に示す構成となるように形成した。次いで、下記のウレタン系接着剤、又はエポキシ系接着剤のうちのいずれかの接着剤をドライラミネート法にて、あるいはノンソル系接着剤を無溶剤型接着剤用ラミネーターにて多層ポリエチレンフィルムのシーラント層とは反対側の表面に塗工し、第二の接着剤層を形成した。次いで、第二の接着剤層に表基材として未延伸ポリエチレン(厚さ30μm)又は延伸ポリエチレン(厚さ25μm)を貼り合わせて、40℃で1日エージングして積層体を得た。各実施例及び各比較例で作製した積層体におけるポリエチレン樹脂の含有量は、90質量%以上であった。
ウレタン系接着剤:タケラックA525(三井化学社製)100質量部に対して、タケネートA52(三井化学社製)11質量部、及び酢酸エチル84質量部を混合して、ウレタン系接着剤を得た。
エポキシ系接着剤:酢酸エチルとメタノールとを質量比で1:1となるように混合した溶媒23質量部に、マクシーブC93T(三菱ガス化学社製)16質量部と、マクシーブM-100(三菱ガス化学社製)5質量部を混合して、エポキシ系接着剤を得た。
ノンソル系接着剤:ポリイソシアネート成分としてLA7735(ヘンケルジャパン株式会社製)とポリオール成分としてLA6159(ヘンケルジャパン株式会社製)とを質量比100:45で、2液混合供給装置において混合して、2液硬化型のウレタン系接着剤を得た。ウレタン系接着剤の無溶剤型接着剤用ラミネーターによる塗工は、加工速度100m/min、ドクターロール、及びコーティングロール温度60℃の条件で、接着剤の塗布量が2.1g/m2になるようにして行った。
【0119】
<アンカーコート層>
アクリルポリオール(DIC社製、アクリディックCL-1000)と、イソシアネート系化合物(東ソー社製、TDIタイプ硬化剤コロネート2030)とを固形分質量比で6:4となるよう混合した。次いで、固形分が2質量%になるように酢酸エチルを加えて希釈し、アンカーコート層形成用塗液を得た。各実施例及び各比較例の多層ポリエチレンフィルムの表層側の表面に片面コロナ処理を施した後、グラビア印刷機を用いてコロナ処理を施した表面にアンカーコート層形成用塗液を塗工して塗膜を形成し、60℃のオーブンで10秒間乾燥させることで厚さ0.1μmのアンカーコート層を形成した。
【0120】
<無機酸化物層>
無機酸化物が酸化ケイ素である場合、電子線加熱方式による真空蒸着装置により、厚さ30nmの酸化ケイ素からなる透明な無機酸化物層(酸化ケイ素膜)を形成した。酸化ケイ素膜は、O/Si比が1.8であった。
無機酸化物が酸化アルミニウムである場合、電子線加熱方式による真空蒸着装置により、厚さ15nmの酸化アルミニウムからなる透明な無機酸化物層(酸化アルミニウム膜)を形成した。酸化アルミニウム膜は、O/Al比が1.5であった。
【0121】
<ガスバリア性被覆層>
(有機無機複合被膜)
ポリビニルアルコール樹脂(PVA、クラレ社製ポバールPVA-105、けん化度98~99%、重合度500)を溶解した水溶液、テトラエトキシシラン(TEOS)、及びγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS、信越化学工業社製KBM-403)を、それぞれ0.02mol/Lの塩酸で加水分解した水溶液を用意した。次いで、PVA、TEOS、及びGPTMSを加水分解する前の質量比で、PVA:TEOS:GPTMSが40:50:10となるように3つの水溶液を混合した。次いで、混合した水溶液における水と、イソプロピルアルコールの質量比が90:10となるようにイソプロピルアルコールを加えて希釈し、有機無機複合被膜形成用塗液(固形分:5質量%)を得た。
無機酸化物層上に、グラビア印刷機を用いて、有機無機複合被膜用混合液を塗工して塗膜を形成し、60℃のオーブンで10秒間乾燥させることで厚さ0.3μmの有機無機複合被膜からなるガスバリア性被覆層を形成した。
【0122】
(ポリカルボン酸の多価金属塩被膜)
ポリアクリル酸水溶液(東亞合成社製アロンA-10H、数平均分子量200000、固形分濃度25質量%)20質量部に蒸留水58.9質量部を加えて希釈した。次いで、アミノプロピルトリメトキシシラン(APTMS、アルドリッチ社製)0.44質量部を加えて撹拌し、ポリカルボン酸系重合体を主成分とする均一なA被膜用混合液を得た。
酸化亜鉛微粒子水分散液(住友大阪セメント社製、ZE143)100質量部と、硬化剤(Henkel社製、Liofol HAERTER UR 5889-21)2質量部とを混合し、多価金属化合物を主成分とするB被膜用混合液を得た。
無機酸化物層上に、グラビア印刷機を用いて後述のA被膜用混合液を塗工して塗膜を形成し、60℃のオーブンで10秒間乾燥させることで厚さ0.2μmのA被膜を形成した。さらに、グラビア印刷機を用いてB被膜用混合液を塗工して塗膜を形成し、60℃のオーブンで10秒間乾燥させることで厚さ0.2μmのB被膜を形成した。これにより、ポリカルボン酸の多価金属塩被膜からなる酸素バリア性被膜を形成した。
【0123】
<接着剤層>
(ウレタン系接着剤)
タケラックA525(三井化学社製)100質量部に対して、タケネートA52(三井化学社製)11質量部、及び酢酸エチル84質量部を混合して、ウレタン系接着剤を得た。
【0124】
(ガスバリア性接着剤)
酢酸エチルとメタノールとを質量比で1:1となるように混合した溶媒23質量部に、マクシーブC93T(三菱ガス化学社製)16質量部と、マクシーブM-100(三菱ガス化学社製)5質量部を混合して、ガスバリア性接着剤を得た。
【0125】
<複合弾性率>
多層ポリエチレンフィルムを可視光硬化性樹脂D-800に包埋させた。次いで、ウルトラミクロトーム Leica EM UC7を用いてダイヤモンドナイフ マイクロスター LHにて、多層ポリエチレンフィルムを積層方向に対して垂直に切断した。現れた断面に対し、切削厚 Feed 100nm、切削速度 Speed 1mm/sの条件にて仕上げ処理を行い、測定試料とした。
測定には、測定装置としてブルカージャパン株式会社製のHysitron TI-Premier(商品名)を、圧子としてブルカージャパン株式会社製のバーコビッチ型ダイヤモンド圧子を用いた。測定条件は以下のとおりとした。
温度:常温(25℃)。
モード:荷重制御モード。
押込み及び除荷:押し込み速度1.5μN/秒にて荷重15μNまで押し込みを行った後、最大荷重にて5秒間保持後、1.5μN/秒の速度にて除荷。
測定箇所:圧子によって試料表面を走査する測定装置の形状測定機能によって、測定試料断面の形状像を取得し、形状像から測定試料の断面上を1μm以上の間隔で20点指定。
複合弾性率の算出に際しては、標準試料として溶融石英を用いて、圧子と試料の接触深さと接触投影面積の関係を予め校正した。その後、除荷時の最大荷重に対して60~95%領域の除荷曲線を、Oliver-Pharr法にて解析し、測定試料の複合弾性率を算出した。測定結果を表1~6に示す。
【0126】
<分子配向度>
マイクロ波方式分子配向計(王子計測器株式会社、商品名MOA-5012A)を用いて、マイクロ波偏波電界中で多層ポリエチレンフィルムを回転させることにより、多層ポリエチレンフィルム面内の分子鎖の分子配向度を測定した。測定結果を表1~6に示す。
【0127】
[評価]
<加工安定性>
ガスバリア性被覆層を形成後(ガスバリア性被覆層を形成しない実施例、比較例については無機酸化物層を形成後)のガスバリア性フィルムの外観を目視で確認し、下記の評価基準に基づいて加工安定性を評価した。評価結果を表1~6に示す。
A:ガスバリア性フィルムの外観にシワが見られなかった。
B:ガスバリア性フィルムの外観に軽微なシワが見られた。
C:ガスバリア性フィルムの外観に多数のシワが見られた。
【0128】
<透明性>
各実施例及び各比較例で作製したガスバリア性フィルムのガスバリア性被覆層側の表面に絵柄を印刷し、マルチコーターTM-MC(HIRANO TECSEED製)を用いて、上述したウレタン系接着剤又は上述したガスバリア性接着剤をドライラミネートした後、40℃で3日間養生して接着剤層を形成した。養生後、接着剤層にLLDPE(ポリエチレンフィルム、三井化学東セロ製、TUX MC-S、厚さ60μm)を貼り合せ、ガスバリア性フィルム/接着剤/LLDPEがこの順序で積層した積層体を作製した。多層ポリエチレンフィルム側から印刷した絵柄を目視で確認し、下記の評価基準に基づいて透明性を評価した。評価結果を表1~6に示す。
A:絵柄が鮮明である。
C:絵柄が不鮮明である。
【0129】
<ガスバリア性>
作製した積層体について、酸素透過度測定装置(商品名OXTRAN-2/20、MOCON社製)を用いて、JIS K-7126-2 B法に準拠して、30℃、70%RHの雰囲気下において、作製した積層体の酸素透過度(cm3/(m2・day・atm))を測定し、下記の評価基準に基づいてガスバリア性を評価した。評価結果を表1~6に示す。
(酸素透過度の評価基準)
A+:酸素透過度が2cm3/(m2・day・atm)未満である。
A:酸素透過度が2cm3/(m2・day・atm)以上、5cm3/(m2・day・atm)未満である。
A-:酸素透過度が5cm3/(m2・day・atm)以上、10cm3/(m2・day・atm)未満である。
B+:酸素透過度が10cm3/(m2・day・atm)以上、20cm3/(m2・day・atm)未満である。
B:酸素透過度が20cm3/(m2・day・atm)以上、50cm3/(m2・day・atm)未満である。
B-:酸素透過度が50cm3/(m2・day・atm)以上、100cm3/(m2・day・atm)未満である。
C:酸素透過度が100cm3/(m2・day・atm)以上である。
【0130】
<ボイル処理後のガスバリア性>
作製した積層体を15cm×10cmのサイズに2枚切り出し、切り出した2枚の積層体を、互いのシーラント層が対向するように重ねて、パウチ状に三辺インパルスシールした。パウチ内に内容物として150mLの水を入れ、残り一辺をインパルスシールして、四辺がシールされたパウチ(包装袋)を作製した。作製したパウチをボイル処理装置にて95℃で30分間ボイル処理を行った。ボイル処理後、パウチを開封して内容物を除去し、十分に乾燥させた後、上述した方法で酸素透過度を測定し、ガスバリア性を評価した。評価結果を表1~6に示す。
【0131】
<屈曲後のガスバリア性>
作製した積層体を、縦295mm×横210mmの大きさに切り出して評価用サンプルとした。このサンプルを、テスター産業社製のゲルボフレックステスター(商品名:BE-1005)の固定ヘッドに、直径87.5mm×210mmの円筒状になるよう取り付けた。サンプルの両端を保持し、初期把持間隔175mmとし、ストローク87.5mmで440度のひねりを加え、この動作の繰り返し往復運動を速度40回/分で10回行い、屈曲した。屈曲後のサンプルについて、上述した方法で酸素透過度を測定し、ガスバリア性を評価した。評価結果を表1~6に示す。
【0132】
<密着性>
作製した積層体から15mm巾短冊状試験片を切り出した。オリエンテック社テンシロン万能試験機RTC-1250を用いて、ヒートシール層と多層ポリエチレンフィルムとを剥離させ、JIS Z1707に準拠してラミネート強度を測定した。ラミネート強度の測定は、90°剥離(常態90°剥離)、180°剥離(常態180°剥離)に加えて、剥離界面を水で濡らした状態で、90°剥離(湿潤90°剥離)、180°剥離(湿潤180°剥離)を行い、以下の評価基準に基づいて密着性を評価した。評価結果を表1~6に示す。
A:ラミネート強度が2N/15mm以上
B:ラミネート強度が2N/15mm未満
【表1】
【0133】
【0134】
【0135】
【0136】
【0137】
10,50,60…多層ポリエチレンフィルム、11,51,61…表層、12,52,62…中間層、13,53,63…裏層、20…ガスバリア層、21…無機酸化物層、22…ガスバリア性被覆層、30…接着剤層、40…シーラント層、70…第二の接着剤層、80…基材、100,200,300,400…積層体。