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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025018501
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】車両の制御装置及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/22 20060101AFI20250130BHJP
   B60H 1/32 20060101ALI20250130BHJP
   B60K 11/08 20060101ALI20250130BHJP
   B60L 7/14 20060101ALI20250130BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20250130BHJP
【FI】
B60H1/22 651C
B60H1/32 623Z
B60K11/08
B60L7/14
B60L3/00 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023122239
(22)【出願日】2023-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸本 真玄
(72)【発明者】
【氏名】前川 耕太
(72)【発明者】
【氏名】楢原 和晃
(72)【発明者】
【氏名】鈴野 浩大
(72)【発明者】
【氏名】金石 純司
(72)【発明者】
【氏名】大住 敏彦
(72)【発明者】
【氏名】岡部 力也
【テーマコード(参考)】
3D038
3L211
5H125
【Fターム(参考)】
3D038AA05
3D038AB01
3D038AC17
3L211AA10
3L211AA11
3L211BA01
3L211EA84
3L211FA09
3L211GA03
3L211GA10
3L211GA24
3L211GA34
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC24
5H125CB03
5H125CD08
5H125EE21
(57)【要約】
【課題】回生発電時に、バッテリが充電できない余剰の発電電力が発生した場合でも電費又は燃費性能の低下を抑制する。
【解決手段】車両の制御装置1は、ジェネレータ21と、バッテリ23と、電動コンプレッサ57を含む冷媒回路56を有する空調装置4と、空調運転の指令に対応した回転数で電動コンプレッサを運転させる第1空調制御を実行する空調コントローラ9と、車両の前面グリルを開閉するグリルシャッター32と、を備え、回生発電時のグリルシャッターの開度は、非回生発電時の開度よりも小であり、空調コントローラは、回生発電時であって、バッテリが充電できない余剰の発電電力が発生した場合に、電動コンプレッサを第1空調制御の実行時における回転数よりも高い回転数で運転させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されかつ、前記車両の減速時に回生発電を行うジェネレータと、
前記ジェネレータに電気的に接続されかつ、前記ジェネレータの発電電力によって充電されるバッテリと、
前記バッテリから電力が供給される電動コンプレッサを含む冷媒回路を有しかつ、前記冷媒回路によって冷却された空気を前記車両の車室に吹き出す空調装置と、
前記空調装置に対し空調運転が指令された場合に、前記電動コンプレッサを、前記空調運転の指令に対応した回転数で運転させる第1空調制御を実行する空調コントローラと、
前記車両の前面グリルを開閉するグリルシャッターと、を備え、
回生発電時の前記グリルシャッターの開度は、非回生発電時の開度よりも小であり、
前記空調コントローラは、前記回生発電時であって、前記バッテリが充電できない余剰の発電電力が発生した場合に、前記電動コンプレッサを前記第1空調制御の実行時における回転数よりも高い回転数で運転させる第2空調制御を実行する、車両の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の制御装置において、
前記前面グリルの後側に位置しかつ、前記車両のパワーユニットの冷却水と走行風との熱交換を行うラジエータと、前記ラジエータの通過風量を増大させるラジエータファンと、をさらに備え、
前記回生発電時の前記ラジエータファンの回転数は、前記非回生発電時の回転数よりも低い、車両の制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の車両の制御装置において、
前記冷媒回路は、エバポレータを含み、
前記空調装置は、前記エバポレータを通過した後に前記車室に吹き出される空気の流量を変更するブロアを有し、
前記空調コントローラは、前記第2空調制御の実行時、前記ブロアを、前記第1空調制御の実行時における回転数よりも高い回転数で運転させる、車両の制御装置。
【請求項4】
請求項1又は3に記載の車両の制御装置において、
前記空調装置は、冷却された空気を前記車室に吹き出す第1吹出口及び第2吹出口を有し、
前記空調コントローラは、前記第1空調制御中に、冷却された空気を吹き出す吹出口を前記第1吹出口に設定し、
前記空調コントローラは、前記第2空調制御中に、冷却された空気を吹き出す吹出口を前記第1吹出口及び前記第2吹出口に設定する、車両の制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載の車両の制御装置において、
前記グリルシャッターは、前記第2空調制御の終了後、小開度を継続し、
前記空調コントローラは、前記第2空調制御の終了後の所定時間、前記電動コンプレッサを前記第1空調制御の実行時における回転数よりも低い回転数で運転させる、車両の制御装置。
【請求項6】
請求項2に記載の車両の制御装置において、
前記ラジエータファンは、前記第2空調制御の終了後、低回転数を維持する、車両の制御装置。
【請求項7】
車両の減速時にジェネレータによって回生発電を行い、
前記ジェネレータの発電電力によってバッテリを充電し、
空調装置に対し空調運転が指令された場合に、冷媒回路の電動コンプレッサを、前記空調運転の指令に対応した回転数で運転し、
回生発電時に、グリルシャッターによって、車両の前面グリルを非回生発電時よりも閉じ、
前記回生発電時であって、前記バッテリが充電できない余剰の発電電力が発生した場合に、前記電動コンプレッサを前記空調運転の指令に対応した回転数よりも高い回転数で運転する、車両の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示する技術は、車両の制御装置及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電動車両の制御方法が記載されている。この従来の制御方法は、電動車両の制動時に、ジェネレータが回生発電を行う。ジェネレータが発電した電力によって、バッテリは充電される。
【0003】
バッテリは受入可能電力に従って充電される。バッテリのSOC(State Of Charge)が高いと、バッテリへの受入可能電力は下がる。ジェネレータが発電した電力が受入可能電力を超える場合、バッテリは、ジェネレータが発電した電力を充電により受け入れることができない。
【0004】
前記従来の制御方法では、ジェネレータが発電した電力が受入可能電力を超える場合、回生発電量が下がると共に、電動車両のグリルシャッターが開く。グリルシャッターを開けることは、車両の空気抵抗を増大させ、制動力を発生させる。回生発電量が低下しても、車両は所望の減速度を実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-2877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記従来の制御方法では、ジェネレータが発電した電力が受入可能電力を超える場合、回生発電量を下げるため、車両の電費又は燃費性能が低下してしまう。
【0007】
ここに開示する技術は、回生発電時に、バッテリが充電できない余剰の発電電力が発生した場合でも、電費又は燃費性能の低下を抑制する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ここに開示する技術は、車両の制御装置に係る。この車両の制御装置は、
車両に搭載されかつ、前記車両の減速時に回生発電を行うジェネレータと、
前記ジェネレータに電気的に接続されかつ、前記ジェネレータの発電電力によって充電されるバッテリと、
前記バッテリから電力が供給される電動コンプレッサを含む冷媒回路を有しかつ、前記冷媒回路によって冷却された空気を前記車両の車室に吹き出す空調装置と、
前記空調装置に対し空調運転が指令された場合に、前記電動コンプレッサを、前記空調運転の指令に対応した回転数で運転させる第1空調制御を実行する空調コントローラと、
前記車両の前面グリルを開閉するグリルシャッターと、を備え、
回生発電時の前記グリルシャッターの開度は、非回生発電時の開度よりも小であり、
前記空調コントローラは、前記回生発電時であって、前記バッテリが充電できない余剰の発電電力が発生した場合に、前記電動コンプレッサを前記第1空調制御の実行時における回転数よりも高い回転数で運転させる第2空調制御を実行する。
【0009】
空調コントローラは、空調装置に対し空調運転が指令された場合に、電動コンプレッサを運転させると共に、冷却された空気を車室へ吹き出させる第1空調制御を実行する。ここでいう空調運転は、いわゆる冷房運転である。冷房運転は、冷媒回路によって冷却された空気を車室に吹き出す運転である。空調コントローラは、電動コンプレッサを、空調運転の指令に対応した回転数で運転させる。空調運転の指令には、例えば、乗員によって設定される車室の設定温度が含まれる。例えば車室の設定温度が低くて、車室の実際の温度との温度差が大きい場合、空調コントローラは、電動コンプレッサの回転数を高め、車室の設定温度が高くて、車室の実際の温度との温度差が小さい場合、空調コントローラは、電動コンプレッサの回転数を下げる。第1空調制御は、空調運転が指令された場合における、空調装置の通常運転に相当する。
【0010】
車両には、減速時に回生発電を行うジェネレータが搭載されている。車両が減速している最中の回生発電時にジェネレータが発電した電力は、バッテリに充電される。車両は、いわゆる電動車であってもよい。ここでいう電動車には、BEV(Battery Electric Vehicle)、PHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、及び、HEV(Hybrid Electric Vehicle)が含まれる。車両は、ジェネレータによる回生制動と、油圧ブレーキによる機械制動との組み合わせによって、必要な制動力を確保してもよい。
【0011】
回生発電時に、前面グリルを開閉するグリルシャッターの開度は、非回生発電時の開度よりも小である。尚、グリルシャッターの開度は、回生発電時に全閉であってもよいし、全閉と全開との間の中間開度であってもよい。小開度のグリルシャッターは、車両の走行抵抗を下げる。所望の制動力を確保するために、ジェネレータの回生発電量を大きくできる。回生発電量の増大は、電費又は燃費性能の向上に有利である。
【0012】
回生発電時に、バッテリが充電できない余剰の発電電力が発生する場合がある。例えばバッテリのSOCが高いため、バッテリをそれ以上に充電できない場合、又は、ジェネレータの発電電流値が高いため、バッテリのハイレート劣化を抑制するために、バッテリの充電が制限される場合、である。余剰の発電電力が発生する場合にジェネレータの回生発電を抑制すると、車両の制動力が低下してしまう。また、回生発電の抑制は、車両の電費又は燃費性能を低下させる。
【0013】
前記の車両の制御装置は、バッテリが充電できない余剰の発電電力が発生した場合、ジェネレータの回生発電を抑制しない。車両の制動力の低下が抑制される。また、車両の電費又は燃費性能の低下が抑制される。
【0014】
回生発電を抑制しない代わりに、空調コントローラは、電動コンプレッサを第1空調制御の実行時における回転数よりも高い回転数で運転させる第2空調制御を実行する。余剰の発電電力は、電動コンプレッサによって消費される。
【0015】
前記車両の制御装置は、前記前面グリルの後側に位置しかつ、前記車両のパワーユニットの冷却水と走行風との熱交換を行うラジエータと、前記ラジエータの通過風量を増大させるラジエータファンと、をさらに備え、
前記回生発電時の前記ラジエータファンの回転数は、前記非回生発電時の回転数よりも低い、としてもよい。
【0016】
ラジエータファンの回転数が下がると、車両の走行抵抗が下がる。回生発電時にラジエータファンの回転数を下げることは、ジェネレータの回生発電量の増大に有利である。尚、ラジエータファンは、停止させてもよい。
【0017】
前記冷媒回路は、エバポレータを含み、
前記空調装置は、前記エバポレータを通過した後に前記車室に吹き出される空気の流量を変更するブロアを有し、
前記空調コントローラは、前記第2空調制御の実行時、前記ブロアを、前記第1空調制御の実行時における回転数よりも高い回転数で運転させる、としてもよい。
【0018】
第2空調制御の実行時に、電動コンプレッサの回転数が高まると、冷媒回路における冷媒の循環量が高まる。エバポレータの温度が下がるため、エバポレータによって冷却される空気の温度が、第1空調制御の実行時よりも低下する。乗員が設定温度を変更しないにもかかわらず、温度が低下した空気が車室に吹き出されると、乗員が違和感を覚える恐れがある。
【0019】
第2空調制御の実行時にブロアの回転数が高くなると、エバポレータを通過する空気の流量が高まる。前述したように、第2空調制御の実行時にエバポレータの温度が下がるものの、エバポレータを通過する空気の流量が高まることによって、エバポレータを通過した後の空気の温度の低下が抑制される。車室に吹き出される空気の温度低下が抑制されるから、第2空調制御の実行時における乗員の違和感が、抑制できる。
【0020】
前記の車両の制御装置は、回生発電時に、バッテリが充電できない余剰の発電電力が発生した場合に、回生発電を継続しながら空調装置が余剰の発電電力を消費する一方で、乗員の違和感を抑制できる。
【0021】
前記空調装置は、冷却された空気を前記車室に吹き出す第1吹出口及び第2吹出口を有し、
前記空調コントローラは、前記第1空調制御中に、冷却された空気を吹き出す吹出口を前記第1吹出口に設定し、
前記空調コントローラは、前記第2空調制御中に、冷却された空気を吹き出す吹出口を前記第1吹出口及び前記第2吹出口に設定する、としてもよい。
【0022】
空調コントローラは、第1空調制御中に、冷却された空気を吹き出す吹出口を前記第1吹出口に設定する。第1吹出口は、例えばセンタベント吹出口及び/又はサイドベント吹出口としてもよい。センタベント吹出口は、インストルメントパネルの車幅方向の中央部に位置している。サイドベント吹出口は、インストルメントパネルの車幅方向の両側部に位置している。センタベント吹出口及びサイドベント吹出口は、乗員の上半身に向けて空気を吹き出す。
【0023】
空調コントローラは、第2空調制御中に、冷却された空気を吹き出す吹出口を第1吹出口及び第2吹出口に設定する。ここで、第2吹出口は、第1空調制御時に、空気を吹き出さない吹出口としてもよい。第2吹出口は、例えばデフロスタ吹出口、サイドデミスタ吹出口及び/又はフット吹出口としてもよい。デフロスタ吹出口は、フロントガラスへ向けて空気を吹き出す。サイドデミスタ吹出口は、サイドウインドウガラスへ向けて空気を吹き出す。デフロスタ吹出口及びサイドデミスタ吹出口は、基本的には、フロントガラス及びサイドウインドウガラスの曇りを取り除くために用いられる。フット吹出口は、乗員の足元に向けて空気を吹き出す。フット吹出口は、基本的には、ヒータによって暖められた空気を吹き出す。
【0024】
第2空調制御において、冷却された空気を吹き出す吹出口の数は、第1空調制御における吹出口の数よりも多い。冷却された空気が分散されて吹き出すため、車室に吹き出される空気の温度が低くても、乗員は違和感を覚えにくい。
【0025】
前記グリルシャッターは、前記第2空調制御の終了後、小開度を継続し、
前記空調コントローラは、前記第2空調制御の終了後の所定時間、前記電動コンプレッサを前記第1空調制御の実行時における回転数よりも低い回転数で運転させる、としてもよい。
【0026】
第2空調制御の実行中は、第1空調制御の実行時よりも冷媒回路における冷媒の循環量が高いため、エバポレータの温度が低下している、また、車室の温度も、第2空調制御の実行中は低下している場合がある。第2空調制御の終了後のしばらくの間は、エバポレータは低温を保つと共に、車室の温度も低いままである。
【0027】
そこで、空調コントローラは、第2空調制御の終了後の所定時間、電動コンプレッサを第1空調制御の実行時における回転数よりも低い回転数で運転させる。電動コンプレッサの回転数が低くても、少なくともエバポレータの温度が低いため、車室に吹き出される空気の温度が大幅に高くなることが抑制される。空調装置の運転能力を一時的に低下させても、車室の温度が設定温度を大きく上回ることが抑制される。
【0028】
また、電動コンプレッサの回転数が低いため、電動コンプレッサの消費電力が抑制される。電動コンプレッサの回転数が低いことは、車両の電費又は燃費性能を向上させる。
【0029】
ここで、第2空調制御の終了には、例えば車両の減速終了に伴い回生発電が終了した場合、及び、回生発電は継続中であるものの、バッテリが充電できるため、発電電力が余剰にならない場合、が含まれる。
【0030】
第2空調制御の終了後も車両の減速中である場合において、小開度のグリルシャッターは、車両の走行抵抗を下げる。ジェネレータによる回生発電量が高まる。車両の電費又は燃費性能の向上に有利である。
【0031】
尚、所定時間は、1分~数分としてもよい。また、所定時間は、第2空調制御の終了後、例えばエバポレータの温度上昇を検知するまでの時間としてもよいし、車室の温度上昇を検知するまでの時間としてもよい。
【0032】
前記ラジエータファンは、前記第2空調制御の終了後、低回転数を維持する、としてもよい。
【0033】
前述したように、第2空調制御の終了後も車両の減速中であれば、ラジエータファンを低回転で運転することは、ジェネレータによる回生発電量を高めるため、車両の電費又は燃費の向上に有利である。
【0034】
ここに開示する技術は、車両の制御方法に係る。この車両の制御方法は、下記のステップを備える。
【0035】
車両の減速時にジェネレータによって回生発電を行い、
前記ジェネレータの発電電力によってバッテリを充電し、
空調装置に対し空調運転が指令された場合に、冷媒回路の電動コンプレッサを、前記空調運転の指令に対応した回転数で運転し、
回生発電時に、グリルシャッターによって、車両の前面グリルを非回生発電時よりも閉じ、
前記回生発電時であって、前記バッテリが充電できない余剰の発電電力が発生した場合に、前記電動コンプレッサを前記空調運転の指令に対応した回転数よりも高い回転数で運転する。
【0036】
回生発電時に、バッテリが充電できない余剰の発電電力が発生した場合でも、グリルシャッターの開度を小開度に維持しかつ、ジェネレータの回生発電を継続することで、車両の電費又は燃費性能を向上できる。
【発明の効果】
【0037】
前述した車両の制御装置及び制御方法によると、回生発電時に、バッテリが充電できない余剰の発電電力が発生した場合に、空調装置が余剰の発電電力を消費しつつ、グリルシャッターの開度を小開度に維持してジェネレータの回生発電量を増大させることで、車両の電費又は燃費性能を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1図1は、車両の制御装置を示している。
図2図2は、空調装置の吹出口を示している。
図3図3は、車両の電源システムを示している。
図4図4は、車両の制御装置のブロック図である。
図5図5は、PCM及び空調コントローラの機能ブロックを示している。
図6図6は、車両の制御方法に係るフローチャートの一部である。
図7図7は、車両の制御方法に係るフローチャートの一部である。
図8図8は、車両の制御方法が実行されることに伴うパラメータの変化を例示するタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、車両の制御装置及び制御方法の実施形態について、図面を参照しながら説明する。ここで説明する制御装置及び制御方法は例示である。
【0040】
(車両の全体構成)
図1は、車両の制御装置1を示している。車両は、いわゆる電動車である。ここで示す電動車は、内燃機関を搭載しないBEVである。尚、電動車は、内燃機関を搭載する、PHEV又はHEVであってもよい。
【0041】
制御装置1は、モータジェネレータ21を備えている。モータジェネレータ21は、車両のパワーユニットの一例である。モータジェネレータ21は、例えば車両の前部のモータルームに設置されている。モータジェネレータ21は、車両が走行するための駆動力を発生する。モータジェネレータ21は、駆動輪22、22に接続されている。モータジェネレータ21の駆動力は、駆動輪22、22に伝達される。
【0042】
制御装置1は、高電圧バッテリ23を備えている。高電圧バッテリ23は、モータジェネレータ21の力行運転時に、モータジェネレータ21へ電力を供給する。
【0043】
モータジェネレータ21は、車両の減速時に回生運転する。モータジェネレータ21の発電電力によって、高電圧バッテリ23は充電される。
【0044】
モータルームの前部には、前面グリル31が設けられている。車両の走行時に、前面グリル31を通じてモータルームに走行風が流入する。前面グリル31は、グリルシャッター32を有している。グリルシャッター32は、前面グリル31を開閉する。グリルシャッター32が前面グリル31を開けると、前面グリル31を通じてモータルームに走行風が流入する。グリルシャッター32が前面グリル31を閉じると、前面グリル31を通じた走行風の流入が阻止される。グリルシャッター32の開度は、全閉、全開、又は、全閉と全開との間の中間開度に変更される。
【0045】
グリルシャッター32は、グリルシャッターアクチュエータ33を有している。グリルシャッターアクチュエータ33は、グリルシャッター32の開度が全閉、全開、又は、中間開度に変更されるよう、グリルシャッター32を動かす。
【0046】
前面グリル31の後には、ラジエータ34とラジエータファン35とが設置されている。ラジエータ34は、走行風とモータジェネレータ21の冷却水との間で熱交換を行う。ラジエータファン35は、ラジエータ34を通過する風量を増大させることにより、走行風と冷却水との間の熱交換を促進する。
【0047】
ラジエータ34は、冷却水回路36に接続されている。冷却水回路36は、図1において一点鎖線の矢印で示される。矢印の向きは、冷却水が流れる方向を示している。冷却水は、モータジェネレータ21とラジエータ34と、後述する空調装置4のヒータコア60との間において循環する。モータジェネレータ21において受熱した冷却水は、ヒータコア60において放熱した後、ラジエータ34において放熱する。ヒータコア60は、車室42(図2参照)に吹き出される空気を暖める。ウォーターポンプ37は、冷却水回路36において、冷却水を循環させる。ウォーターポンプ37は、電動ウォーターポンプである。
【0048】
冷却水回路36は、バイパス流路38とサーモスタットバルブ39とを有している。バイパス流路38は、ラジエータ34をバイパスする。サーモスタットバルブ39は、バイパス流路38を開閉する。冷却水の温度が低い場合、サーモスタットバルブ39は、バイパス流路38を開ける。冷却水は、モータジェネレータ21とヒータコア60との間で循環する。空調装置4に対して車室42の暖房が要求されている場合にラジエータ34をバイパスすることは、冷却水の速やかな温度上昇に有利である。冷却水の温度が高い場合、サーモスタットバルブ39は、バイパス流路38を閉じる。冷却水は、モータジェネレータ21とヒータコア60とラジエータ34との間で循環する。ラジエータ34が冷却水を冷却するから、モータジェネレータ21の温度が過剰に高くなることが抑制される。
【0049】
(空調装置の構成)
制御装置1は、空調装置4を備えている。図2は、空調装置4が設置された車両のインストルメントパネル41を示している。インストルメントパネル41は、車室42の前端部に位置している。
【0050】
空調装置4は、図1に示すように、ケース40を有している。図1に例示しているケース40は、導入部43と温度調節部44と分配部45とを有している。
【0051】
導入部43は、内気導入口47と、外気導入口48とを有している。内気導入口47は、車室42内に開口している。内気導入口47は、車室42内の空気をケース40内に導入する。外気導入口48は、車室42外に連通するダクトに接続されている。外気導入口48は、車室42外の空気をケース40内に導入する。
【0052】
導入部43は、切替ドア49を有している。切替ドア49は、内気導入口47及び外気導入口48の一方の導入口を開き、他方の導入口を閉じる。切替ドア49は、内外気切替アクチュエータ96に接続されている(図4参照)。内外気切替アクチュエータ96は、切替ドア49を動かす。
【0053】
導入部43はまた、エアフィルタ50とブロア51とを有している。エアフィルタ50は、ケース40内に導入された空気を濾過する。ブロア51は、ケース40内に空気を導入すると共に、後述する吹出口65、66、67、68、69から空気を吹き出す。ブロア51は、遠心式のファン52とファン52を回転させるブロアモータ53とを有している。
【0054】
温度調節部44は、ケース40における空気の流れ方向について、導入部43の下流に位置している。温度調節部44は、エバポレータ54を有している。エバポレータ54は、例えばチューブアンドフィンタイプの熱交換器である。エバポレータ54は、ケース40の内部を横切るように位置している。ケース40内を流れる空気は、エバポレータ54のフィン間を通過する。エバポレータ54のチューブには冷媒が供給される。エバポレータ54は、空気を冷却する。エバポレータ54は、温度センサ55を有している。温度センサ55は、エバポレータ54の表面温度を検出する。
【0055】
エバポレータ54は、冷媒回路56に接続されている。冷媒回路56は、冷凍サイクルを実行する。冷媒回路56は、図1において破線の矢印で示される。矢印の向きは、冷媒が流れる方向を示している。冷媒は冷媒回路56を循環する。
【0056】
冷媒回路56は、電動コンプレッサ57を有している。電動コンプレッサ57は、エバポレータ54を通過した冷媒を圧縮する。電動コンプレッサ57は、後述するように、高電圧バッテリ23から電力供給を受ける。
【0057】
冷媒回路56は、コンデンサ58を有している。コンデンサ58は、前面グリル31の後に位置している。コンデンサ58は、高温高圧のガス状冷媒を走行風によって冷却して、低温高圧の液状冷媒へ変化させる。
【0058】
冷媒回路56は、膨張弁59を有している。膨張弁59は、冷媒回路56において、エバポレータ54とコンデンサ58との間に位置している。膨張弁59は、低温高圧の液状冷媒を膨張させ、低温低圧の霧状冷媒へ変化させる。低温低圧の霧状冷媒は、エバポレータ54において気化する。このときの気化熱により、エバポレータ54を通過する空気は、冷却される。
【0059】
温度調節部44は、ヒータコア60を有している。ヒータコア60は、温度調節部44においてエバポレータ54の下流に位置している。ヒータコア60は、例えばチューブアンドフィンタイプの熱交換器である。ヒータコア60は、前述したように、冷却水回路36に接続されている。ヒータコア60には、モータジェネレータ21によって昇温された冷却水が供給される。ヒータコア60のフィン間を通過する空気が、チューブ内を流れる冷却水と熱交換することにより、空気の温度が高まる。
【0060】
温度調節部44は、ミックスドア61を有している。ミックスドア61は、図1に二点鎖線で示すように、その開度を変更することによって、ヒータコア60を通過する空気量と、ヒータコア60を通過しない空気量との比率を変更する。ミックスドア61は、ミックスドアアクチュエータ97に接続されている(図4参照)。ミックスドアアクチュエータ97は、ミックスドア61の開度を変更する。
【0061】
分配部45は、ケース40における空気の流れ方向について、温度調節部44の下流に位置している。分配部45は、ベントダクト62、ヒートダクト63、及び、デフロスタダクト64を有している。ベントダクト62、ヒートダクト63、及び、デフロスタダクト64はそれぞれ、ケース40に接続されている。
【0062】
ベントダクト62は、センタベント吹出口65及びサイドベント吹出口66を有している。センタベント吹出口65は、図2に例示するように、インストルメントパネル41の車幅方向の中央部に位置している。サイドベント吹出口66は、インストルメントパネル41の車幅方向の両側部に位置している。センタベント吹出口65及びサイドベント吹出口66はそれぞれ、乗員の上半身に向けて空気を吹き出す。センタベント吹出口65及びサイドベント吹出口66は、基本的には、空調装置4の冷房運転時に、エバポレータ54によって冷却された空気を吹き出す。
【0063】
ヒートダクト63は、フット吹出口67を有している。ヒートダクト63は、インストルメントパネル41から車室42の内方へ延びている。フット吹出口67は、図2に例示するように、前席乗員の足元及び後席乗員の足元の付近に位置している。フット吹出口67は、乗員の足元に向けて空気を吹き出す。フット吹出口67は、基本的には、空調装置4の暖房運転時に、ヒータコア60によって暖められた空気を吹き出す。
【0064】
デフロスタダクト64は、デフロスタ吹出口68及びサイドデミスタ吹出口69を有している。デフロスタ吹出口68は、図2に例示するように、インストルメントパネル41の上面に位置している。デフロスタ吹出口68は、フロンドガラスへ向けて空気を吹き出す。サイドデミスタ吹出口69は、インストルメントパネル41の車幅方向の両側部に位置している。サイドデミスタ吹出口69は、サイドウインドウガラスへ向けて空気を吹き出す。デフロスタ吹出口68及びサイドデミスタ吹出口69は、基本的には、フロントガラス及びサイドウインドウガラスの曇りを取り除くために用いられる。
【0065】
ベントダクト62、ヒートダクト63及びデフロスタダクト64はそれぞれ、吹出口ドア70によって、個別に開閉される。各吹出口ドア70は、吹出口ドアアクチュエータ98に接続されている(図4参照)。吹出口ドアアクチュエータ98は、各吹出口ドア70の開閉を通じて、空気を吹き出す吹出口を選択する。
【0066】
空調装置4は、操作スイッチ90を備えている。操作スイッチ90は、図2に示すように、インストルメントパネル41に設けられている。操作スイッチ90は、乗員が操作するスイッチである。
【0067】
図4に示すように、操作スイッチ90には、A/Cスイッチ91が含まれる。A/Cスイッチ91は、空調装置4に空調運転(つまり、冷房運転)を実行させるスイッチである。操作スイッチ90には、ファンスイッチ92が含まれる。ファンスイッチ92は、吹出口が吹き出す空気の風量を変更するスイッチである。操作スイッチ90には、温度設定スイッチ93が含まれる。温度設定スイッチ93は、車室42の設定温度を決定するスイッチである。
【0068】
(車両の電源システムの構成)
図3は、車両の電源システム2を例示している。前述したように、電動車である車両は、高電圧バッテリ23を備えている。高電圧バッテリ23は、走行用の電力を蓄積する。高電圧バッテリ23は、例えばリチウムイオン電池である。高電圧バッテリ23は、リレー24を介してハーネス線25に電気的に接続されている。
【0069】
モータジェネレータ21は、インバータ26を介してハーネス線25に電気的に接続されている。インバータ26は、複数のスイッチング素子を含むインバータ回路を有している。インバータ26は、スイッチング素子のオン/オフを制御することにより、直流/交流の変換を行う。
【0070】
前述したように、モータジェネレータ21は、高電圧バッテリ23からの電力供給を受けて力行運転する。モータジェネレータ21はまた、車両1の減速時に発電運転をする。インバータ26は、モータジェネレータ21の回生電力を、高電圧バッテリ23に供給する。高電圧バッテリ23は、モータジェネレータ21の回生電力によって充電される。
【0071】
電源システム2は、充電プラグ27を備えている。充電プラグ27は、リレー24を介してハーネス線25に接続されている。充電プラグ27は、外部電源に接続される。高電圧バッテリ23は、外部電源から供給される電力によっても、充電される。
【0072】
前述した空調装置4の電動コンプレッサ57は、ハーネス線25に接続されている。電動コンプレッサ57は、高電圧バッテリ23からの電力供給を受けて運転する。電動コンプレッサ57はまた、後述するように、モータジェネレータ21の発電運転時に、モータジェネレータ21の回生電力を受けて運転する場合がある。
【0073】
電源システム2は、低電圧バッテリ28を備えている。低電圧バッテリ28は、DC/DCコンバータ29を介してハーネス線25に接続されている。DC/DCコンバータ29は、ハーネス線25と低電圧バッテリ28との間において、直流電流の電圧を変換する。低電圧バッテリ28は、図3においては、空調装置4のブロア51と、冷却水回路36のラジエータファン35とに電力を供給する。
【0074】
(車両の制御装置の構成)
図4は、車両の制御装置1のブロック図である。制御装置1は、PCM(Power Control Module)80と、空調コントローラ9とを備えている。図5は、PCM80及び空調コントローラ9それぞれの機能ブロックを例示している。
【0075】
PCM80は、プロセッサとメモリを有するマイクロコンピュータを備えている。PCM80は、マイクロコンピュータによって、後述する機能を実現する。
【0076】
制御装置1は、BCM(Battery Control Module)81を備えている。BCM81には、電圧センサ82、電流センサ83及び温度センサ84が電気的に接続されている。電圧センサ82は、高電圧バッテリ23の電圧信号をBCM81へ出力する。電流センサ83は、高電圧バッテリ23の電流信号をBCM81へ出力する。温度センサ55は、高電圧バッテリ23の温度に関連する信号をBCM81へ出力する。BCM81は、電圧信号、電流信号及び温度信号に基づいて、高電圧バッテリ23のSOCを算出すると共に、高電圧バッテリ23の充電を許容する充電レートを算出する。充電レートは、高電圧バッテリ23のハイレート劣化を抑制するために定められるレートである。BCM81は、PCM80に電気的に接続されている。BCM81は、SOC及び充電レートに関する信号をPCM80へ出力する。
【0077】
制御装置1は、DMCM(Drive Motor Control Module)85を備えている。DMCM85は、PCM80に電気的に接続されている。DMCM85は、PCM80からの制御信号を受け、インバータ26を通じてモータジェネレータ21の力行運転及び発電運転を制御する。
【0078】
制御装置1は、電動コンプレッサ制御ユニット86を備えている。電動コンプレッサ制御ユニット86は、PCM80に電気的に接続されている。図4に示す車両の制御装置1において電動コンプレッサ制御ユニット86は、PCM80からの制御信号を受け、電動コンプレッサ57の運転を制御する。
【0079】
PCM80には、アクセル開度センサ87が電気的に接続されている。アクセル開度センサ87は、乗員によるアクセルペダルの踏み量に対応する信号を、PCM80へ出力する。
【0080】
PCM80には、ブレーキセンサ88が電気的に接続されている。ブレーキセンサ88は、乗員によるブレーキペダルの踏み量に対応する信号を、PCM80へ出力する。
【0081】
PCM80には、車速センサ89が電気的に接続されている。車速センサ89は、車両の速度に対応する信号を、PCM80へ出力する。
【0082】
PCM80は、図5に示すように、機能ブロックとして、要求駆動力算出部801、要求電力算出部802、回生発電量算出部803、及び、余剰発電量算出部804を有している。要求駆動力算出部801は、アクセル開度センサ87の信号に基づいて、車両の走行のために要求される駆動力を算出する。要求電力算出部802は、算出した要求駆動力、及び、その他のパラメータに基づいて、高電圧バッテリ23に要求される出力電力を算出する。回生発電量算出部803は、アクセル開度センサ87及びブレーキセンサ88の信号に基づいて、車両に要求される制動力から、車両の減速時にモータジェネレータ21に要求される発電電力を算出する。尚、車両は、モータジェネレータ21による回生制動と、油圧ブレーキによる機械制動との組み合わせによって、必要な制動力を確保する。余剰発電量算出部804は、回生発電時に、高電圧バッテリ23が充電できない発電電力を算出する。具体的に余剰発電量算出部804は、BCM81から提供された高電圧バッテリ23のSOCに基づき、SOCが高いため、高電圧バッテリ23をそれ以上に充電できない場合に、回生発電量算出部803が算出した発電電力に基づいて、余剰発電量を算出する。余剰発電量算出部804はまた、モータジェネレータ21の発電電流値が、許容される充電レートを超える場合に、回生発電量算出部803が算出した発電電力に基づいて、余剰発電量を算出する。
【0083】
図4に示すように、PCM80は、車両の走行状態及び/又はモータジェネレータ21の運転状態に基づいて、グリルシャッターアクチュエータ33へ制御信号を出力すると共に、ラジエータファン35へ制御信号を出力する。
【0084】
空調コントローラ9は、プロセッサとメモリを有するマイクロコンピュータを備えている。空調コントローラ9は、マイクロコンピュータによって、後述する機能を実現する。空調コントローラ9は、PCM80に電気的に接続されている。空調コントローラ9とPCM80とは、後述するように、車両の減速時に、協調制御を実行する場合がある。
【0085】
空調コントローラ9には、前述した操作スイッチ90が電気的に接続されている。空調コントローラ9にはまた、室温センサ94が電気的に接続されている(図2も参照)。室温センサ94は、車室42の温度に対応する信号を、空調コントローラ9へ出力する。
【0086】
空調コントローラ9には、前述した温度センサ55が電気的に接続されている。温度センサ55は、エバポレータ54の温度に対応する信号を、空調コントローラ9へ出力する。
【0087】
空調コントローラ9には、冷媒圧力センサ95が電気的に接続されている。冷媒圧力センサ95は、冷媒回路56にける冷媒の圧力に対応する信号を、空調コントローラ9へ出力する。
【0088】
空調コントローラ9には、前述したブロア51、内外気切替アクチュエータ96、ミックスドアアクチュエータ97、及び、吹出口ドアアクチュエータ98が電気的に接続されている。空調コントローラ9は、ブロア51、内外気切替アクチュエータ96、ミックスドアアクチュエータ97、及び、吹出口ドアアクチュエータ98へ制御信号を出力する。
【0089】
空調コントローラ9は、図5に示すように、機能ブロックとして、コンプレッサ回転数設定部901、ブロア回転数設定部902、及び、吹出口設定部903を有している。コンプレッサ回転数設定部901は、電動コンプレッサ57の回転数を設定する。電動コンプレッサ57の回転数が高いと、冷媒回路56における冷媒の循環量が高まるため、エバポレータ54を通過した空気の温度が下がる。コンプレッサ回転数設定部901は、設定温度、車室42の温度、冷媒の圧力、エバポレータ54の温度、及び、設定された空気の吹出量に基づいて、電動コンプレッサ57の回転数を設定する。
【0090】
ブロア回転数設定部902は、ファンスイッチ92からの信号に基づいてブロア51の回転数を設定する。ブロア51の回転数が高いと、エバポレータ54を通過する空気の流量が高まると共に、吹出口を通じて車室42に吹き出される空気の吹出量が高まる。吹出口設定部903は、空気を吹き出す吹出口を設定する。例えば乗員がA/Cスイッチ91を操作することにより冷房運転の実行が指令された場合、吹出口設定部903は、空気を吹き出す吹出口を、センタベント吹出口65及びサイドベント吹出口66に設定する。
【0091】
(車両の制御方法)
図6は、車両の制御方法に係るフローチャートの一部である。図7は、車両の制御方法に係るフローチャートの残りの一部である。図6及び7のフローチャートは、PCM80と空調コントローラ9とが協調して実行する。以下において、PCM80及び空調コントローラ9を総称して、コントローラと呼ぶ。
【0092】
先ずステップS61において、コントローラは、各種信号を読み込む。続くステップS62において、コントローラは、A/Cスイッチ91の信号に基づいて、乗員が空調運転を要求しているか否かを判断する。ステップS62の判断がYesであれば、コントローラは、続くステップS63において、車室42の設定温度、車室42の実際の温度、及び、ファンスイッチ92により設定された風量を含む各種のパラメータに基づいて、電動コンプレッサ57の回転数、ブロア51の回転数、及び、冷却された空気の吹出口を設定する。空調運転の実行時に設定される吹出口は、原則的に、センタベント吹出口65及びサイドベント吹出口66である。ステップS62の判断がNoであれば、プロセスはステップS61に戻る。
【0093】
ステップS64において、コントローラは、アクセル開度センサ87及びブレーキセンサ88の信号を含む各種のパラメータに基づいて、車両が減速回生中であるか否かを判断する。ステップS64の判断がNoの場合、つまり、モータジェネレータ21が回生発電を行っていない場合、プロセスはステップS71へ進む(図7参照)。ステップS64の判断がYesの場合、つまり、モータジェネレータ21が回生発電を行っている場合、プロセスはステップS65へ進む。
【0094】
ステップS65において、コントローラは、グリルシャッター32の開度を、非減速回生時の開度よりも小さくする。コントローラはまた、ラジエータファン35の回転数を、非減速回生時の開度よりも下げる。グリルシャッター32の小開度及びラジエータファン35の低回転は、車両の走行抵抗を下げる。車両の走行抵抗の低下は、モータジェネレータ21の回生発電電力を増大させる。車両の電費又は燃費性能が向上する。
【0095】
続くステップS66において、コントローラは、高電圧バッテリ23のSOC、許容される充電レート、及び、モータジェネレータ21の回生運転の状態に基づいて、高電圧バッテリ23に充電できない、余剰の発電電力があるか否かを判断する。ステップS66の判断がYesの場合、プロセスはステップS67へ進む。ステップS66の判断がNoの場合、プロセスはステップS69へ進む。
【0096】
ステップS67において、コントローラは、余剰発電量が電動コンプレッサ57の消費電力を超えるか否かを判断する。ここにおける電動コンプレッサ57の消費電力は、ステップS63において設定された回転数で電動コンプレッサ57が運転する場合の消費電力である。ステップS67の判断がYesの場合、プロセスはステップS68へ進む。ステップS67の判断がNoの場合、つまり、余剰発電量が、電動コンプレッサ57の通常運転によって消費でき、後述する第2空調制御が不要な場合、プロセスはステップS69へ進む。
【0097】
ステップS68において、コントローラは、第2空調制御を実行する。具体的にコントローラは、電動コンプレッサ57の回転数を、ステップS63で設定した回転数よりも増大させる。電動コンプレッサ57の回転数が増大するため、余剰の発電電力が電動コンプレッサ57によって消費される。
【0098】
コントローラは、エバポレータ54の温度を考慮して、電動コンプレッサ57の回転数を増大させてもよい。例えばエバポレータ54に霜が付着しない温度を最低温度として、エバポレータ54が最低温度を下回らない限度において、コントローラは、電動コンプレッサ57の回転数を増大させてもよい。
【0099】
また、コントローラは、エバポレータ54の温度の考慮に加えて、又は、エバポレータ54の温度の考慮に代えて、車室42に吹き出される空気の温度を考慮して、電動コンプレッサ57の回転数を増大させてもよい。例えば、車室42に吹き出される空気の温度と、車室42の設定温度との温度差であって、第2空調制御時において許容される最大の温度差を予め設定しておき、車室42に吹き出される空気の温度と車室42の設定温度との温度差が最大の温度差を超えない限度において、コントローラは、電動コンプレッサ57の回転数を増大させてもよい。尚、最大の温度差は、例えば5℃以下の適宜の温度に設定してもよい。
【0100】
また、コントローラは、エバポレータ54の温度の考慮及び車室42に吹き出される空気の温度の考慮に加えて、又は、エバポレータ54の温度の考慮及び車室42に吹き出される空気の温度の考慮に代えて、車室42の温度を考慮して、電動コンプレッサ57の回転数を増大させてもよい。例えば、車室42の温度と、車室42の設定温度との温度差であって、第2空調制御時において許容される最大の温度差を予め設定しておき、車室42の温度と車室42の設定温度との温度差が最大の温度差を超えない限度において、コントローラは、電動コンプレッサ57の回転数を増大させてもよい。尚、最大の温度差は、例えば5℃以下の適宜の温度に設定してもよい。
【0101】
コントローラはまた、ステップS68において、ブロア51の回転数を、ステップS63で設定した回転数よりも増大させる。ブロア51の回転数の増大により、エバポレータ54を通過する空気の流量が高まる。電動コンプレッサ57の回転数の増大により、冷媒回路56における冷媒の循環流量が高まって、エバポレータ54の温度が低下するものの、エバポレータ54を通過する空気の流量が高まることによって、エバポレータ54を通過した後の空気の温度の低下が抑制される。吹出口から車室42へ吹き出される空気の温度が、設定温度に比べて大幅に低くならない。乗員が操作スイッチ90を操作しないにもかかわらず、車室42へ吹き出される空気の温度が下がってしまうことが抑制されるから、乗員は違和感を覚えにくい。
【0102】
ステップS68において、コントローラは、冷却された空気の吹出口の数を、ステップS63において設定した吹出口の数よりも増やす。ステップS63において設定された吹出口がセンタベント吹出口65及びサイドベント吹出口66である場合、コントローラは、例えばセンタベント吹出口65及びサイドベント吹出口66に加えて、フット吹出口67、デフロスタ吹出口68、及び/又は、サイドデミスタ吹出口69を、冷却された空気の吹出口に設定する。吹出口の増加によって、冷却された空気が分散されて吹き出す。また、追加される吹出口は、乗員の上半身に向かって空気を吹き出さない。これらの要因により、仮に車室42に吹き出す空気の温度が下がったとしても、乗員は違和感を覚えにくい。
【0103】
ステップS68において、コントローラは、モータジェネレータ21の回生発電を抑制しない。車両の制動力の低下が抑制される。また、車両の電費又は燃費性能の低下が抑制される。
【0104】
ステップS69において、コントローラは、第2空調制御の終了直後であるか否かを判断する。ステップS69の判断がYesの場合、プロセスはステップS72へ進む(図7参照)。高電圧バッテリ23を充電できない余剰の発電電力があって第2空調制御を開始した後、例えば車両の減速度の低下に伴い、モータジェネレータ21の発電電流値が、許容される充電レートを下回るように変化すれば、ステップS68の第2空調制御が終了しかつ、ステップS69の判断がYesになる。この場合、第2空調制御は終了するものの、モータジェネレータ21は、回生発電を継続する。
【0105】
ステップS69の判断がNoの場合、空調装置4は、ステップS70において、通常制御を実行する。具体的には、ステップS63において設定された電動コンプレッサ57の回転数、ブロア51の回転数、及び、吹出口に従って、空調装置4は、空調運転を行う。この通常制御は、第1空調制御に相当する。
【0106】
図7のステップS71において、コントローラは、第2空調制御の終了直後であるか否かを判断する。ステップS71の判断がYesの場合、プロセスはステップS72へ進む。ステップS71の判断がNoの場合、プロセスはステップS74へ進む。
【0107】
第2空調制御の実行中は、電動コンプレッサ57の回転数が高くて冷媒回路56における冷媒の循環流量が高いため、エバポレータ54の温度が第1空調制御時よりも低下している。また、車室42に吹き出される空気の温度が相対的に低下していて、車室42の温度が設定温度よりも低下していることも起こり得る。
【0108】
第2空調制御の終了直後のステップS72において、コントローラは、電動コンプレッサ57の回転数を、ステップS63で設定された回転数よりも低減する。電動コンプレッサ57の回転数の低減は、冷媒回路56における冷媒の循環流量を下げるものの、エバポレータ54の温度が低いため、車室42に吹き出される空気の温度は、直ぐには高くならない。また、車室42の温度が設定温度よりも低下していれば、車室42の温度が、設定温度を大きく上回ることにはならない。つまり、第2空調制御の終了後のしばらくの間、空調装置4の運転能力を低下させても、車室42の温度は設定温度に維持される。一方、電動コンプレッサ57の回転数の低減は、電動コンプレッサ57の消費電力を低減させるため、車両の電費及び/又は燃費性能を向上できる。
【0109】
尚、ステップS71において、コントローラは、(1)第2空調制御の終了直後でありかつ、(2)エバポレータ54の温度が所定温度よりも低下しているか否か、を判断してもよい。
【0110】
また、ステップS72において、コントローラは、ブロア51の回転数を、ステップS63で設定された回転数よりも低減する。車室42への空気の吹出量が低下するものの、少なくともエバポレータ54の温度が低ければ、車室42の温度は大きく上昇しない。ブロア51の回転数の低減は、ブロア51の消費電力を低減させるため、車両の電費及び/又は燃費性能を向上させる。
【0111】
ステップS72において、コントローラは、グリルシャッター32の開度を、ステップS65において設定した小開度のままにする。車両の減速中であれば、車両の走行抵抗が下がる分、車両の制動力を高めるべく、モータジェネレータ21による回生発電量が高まる。車両の電費又は燃費性能の向上に有利である。
【0112】
ステップS72において、コントローラは、ラジエータファン35の回転数を、ステップS65において設定した低回転数のままにする。車両の減速中であれば、車両の走行抵抗が下がる分、車両の制動力を高めるべく、モータジェネレータ21による回生発電量が高まる。車両の電費又は燃費性能の向上に有利である。
【0113】
尚、ステップS72において、モータジェネレータ21が非回生発電中であれば、グリルシャッター32及びラジエータファン35に関する制御を中止し、グリルシャッター32を開けかつ、ラジエータファン35の回転数を高めてもよい。
【0114】
ステップS73において、コントローラは、ステップS72の制御を開始してから所定時間が経過したか否かを判断する。所定時間は、例えば1分~数分としてもよい。ステップS73の判断がNoの場合、コントローラは、ステップS72の制御を継続する。ステップS73の判断がYesの場合、コントローラは、ステップS72の制御を終了し、プロセスはステップS74へ進む。
【0115】
尚、ステップS73において、コントロ-ラは、所定時間が経過したかを判断することに加えて、又は、所定時間が経過したかを判断することに代えて、エバポレータ54の温度が所定温度以上になったか否かを判断してもよい。またコントローラは、エバポレータ54の温度に代えて、車室42の温度が設定温度以上になったか否かを判断してもよい。
【0116】
ステップS74において、コントローラは、電動コンプレッサ57を、ステップS63で設定した回転数で運転すると共に、ブロア51を、ステップS63で設定した回転数で運転する。また、コントローラは、グリルシャッター32の開度を、車両の走行状態に対応する開度に設定する。コントローラは、ラジエータファン35の回転数を、車両の走行状態に対応する回転数に設定する。
【0117】
つまり、ステップS74において、空調装置4、グリルシャッター32及びラジエータファン35は、通常制御に復帰する。
【0118】
図8は、図6及び7のフローチャートに従って車両の制御が実行されることに伴う、(1)電動コンプレッサ57の回転数、(2)ブロア51の回転数、(3)ベントダクト62の開閉、(4)ヒートダクト63の開閉、(5)デフロスタダクト64の開閉、(6)グリルシャッター32の開度、及び、(7)ラジエータファン35の回転数、それぞれの変化を例示するタイムチャートである。
【0119】
時刻t0からt1までの期間は、車両が減速せずに走行している期間である。空調装置4は、空調運転を行っており、電動コンプレッサ57の回転数は、r1-1であり、ブロア51の回転数は、r2-1である。ベントダクト62は開いており、ヒートダクト63及びデフロスタダクト64は共に閉じている。グリルシャッター32は開いている。グリルシャッター32は、全開でもよい。ラジエータファン35の回転数は、r3-1である。
【0120】
時刻t1からt2までの期間は、車両の減速中の期間である。電動コンプレッサ57の回転数は、r1-1のままでありブロア51の回転数は、r2-1のままである。ベントダクト62は開、ヒートダクト63及びデフロスタダクト64は閉のままである。モータジェネレータ21が回生発電を行うため、グリルシャッター32は開から閉に変化し、ラジエータファン35の回転数は、r3-1からr3-2に変化する(ステップS65参照)。車両の走行抵抗が低下し、モータジェネレータ21の発電電力が増大する。
【0121】
時刻t2からt3までの期間は、高電圧バッテリ23が充電できない余剰の発電電力が発生している期間である。電動コンプレッサ57の回転数は、r1-1からr1-2へ高まり、ブロア51の回転数は、r2-1からr2-2へ高まる(ステップS68参照)。ベントダクト62は開のままであるのに対し、ヒートダクト63及びデフロスタダクト64は、閉から開へ変化する(ステップS68参照)。第2空調制御の実行中、グリルシャッター32は閉を継続し、ラジエータファン35の回転数は、r3-2の低回転のままである。
【0122】
時刻t3からt4までの期間は、車両の減速中であるものの、余剰の発電電力が発生していない期間である。時刻t3からt4までの期間はまた、第2空調制御の終了直後の期間である。電動コンプレッサ57の回転数は、r1-2からr1-3(<r1-1)へ低下し、ブロア51の回転数は、r2-2からr2-3(<r2-1)へ低下する(ステップS72参照)。ベントダクト62は開のままであるのに対し、第2空調制御が終了したため、ヒートダクト63及びデフロスタダクト64は、開から閉へ変化する。グリルシャッター32は閉を維持し、ラジエータファン35の回転数は、r3-2のままである(ステップS72参照)。
【0123】
時刻t4において車両の減速が終了し、t4以降の期間は、非回生発電の期間である。電動コンプレッサ57の回転数は、r1-3からr1-1へ復帰し、ブロア51の回転数は、r2-3からr2-1へ復帰する(ステップS74参照)。ベントダクト62は開のままであり、ヒートダクト63及びデフロスタダクト64は閉のままである。グリルシャッター32は閉から開へ変化し、ラジエータファン35の回転数は、r3-2からr3-1へ復帰する(ステップS74参照)。
【0124】
尚、ステップS68におけるブロア51の回転数の増大、及び、吹出口の追加は省略することができる。また、ステップS72及びS73も、省略することが可能である。
【0125】
図6及び図7のフローチャートにおいて、可能な範囲において、ステップを入れ替えたり、ステップを省略したり、別のステップを追加したりできる。
【符号の説明】
【0126】
21 モータジェネレータ(ジェネレータ、パワーユニット)
23 高電圧バッテリ
31 前面グリル
32 グリルシャッター
34 ラジエータ
35 ラジエータファン
4 空調装置
51 ブロア
54 エバポレータ
56 冷媒回路
65 センタベント吹出口(第1吹出口)
66 サイドベント吹出口(第1吹出口)
67 フット吹出口(第2吹出口)
68 デフロスタ吹出口(第2吹出口)
69 サイドデミスタ吹出口(第2吹出口)
9 空調コントローラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8