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特開2025-18511識別システム、識別方法および作業車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025018511
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】識別システム、識別方法および作業車両
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20250130BHJP
   G06V 10/74 20220101ALI20250130BHJP
   B66F 9/24 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
G06T7/00 C
G06V10/74
G06T7/00 300D
B66F9/24 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023122270
(22)【出願日】2023-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩永 圭弘
【テーマコード(参考)】
3F333
5L096
【Fターム(参考)】
3F333AA02
3F333AB13
3F333AE02
3F333FA27
3F333FD11
3F333FE04
3F333FE05
5L096BA08
5L096CA18
5L096DA02
5L096EA03
5L096EA05
5L096EA35
5L096EA43
5L096FA66
5L096FA69
5L096GA08
5L096GA30
5L096GA51
5L096HA09
(57)【要約】
【課題】3次元データである点群データから対象を適切に識別可能な識別システム、識別方法および作業車両を提供すること。
【解決手段】識別システム1は、作業車両に取り付けられ、作業車両の周辺に存在する物体を検出する3次元センサ11と、コントローラ20とを備える。コントローラ20は、3次元センサ11から物体検出データである点群データを取得し、点群データから対象の外形の少なくとも一部を構成する平面を推定し、推定した平面上に位置する点群を抽出して二値画像を生成し、二値画像から対象を識別する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業車両の周辺に存在する物体から対象を識別するための識別システムであって、
前記作業車両に取り付けられ、前記作業車両の周辺に存在する物体を検出する物体検出センサと、
コントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
前記物体検出センサから物体検出データである点群データを取得し、
前記点群データから対象の外形の少なくとも一部を構成する平面を推定し、
前記推定した平面上に位置する点群を抽出して二値画像を生成し、
前記二値画像から前記対象を識別する、
識別システム。
【請求項2】
前記コントローラは、
生成した前記二値画像の中から、あらかじめ記憶された前記対象の外形のなかで平面部分の形状を示す特徴パターンの二値画像と似ている形状を検出して、前記対象を識別する、
請求項1に記載の識別システム。
【請求項3】
前記対象は、ダンプトラックのベッセルであり、
前記平面は、前記ベッセルの側面であり、
前記特徴パターンは、前記ベッセルの側面の形状を示す、
請求項2に記載の識別システム。
【請求項4】
前記対象は、運搬物のフォーク挿し込み穴であり、
前記平面は、前記運搬物の前面であり、
前記特徴パターンは、前記フォーク挿し込み穴の形状を示し、
前記コントローラは、
前記運搬物の前面を通過した通過点群を、各点を前記物体検出センサと結んだ直線上であって、前記運搬物の前面との交点へ移動し、移動した前記通過点群から、前記通過点群の二値画像を生成する、
請求項2に記載の識別システム。
【請求項5】
作業車両の周辺に存在する物体から対象を識別するための識別方法であって、
前記作業車両に取り付けられ、前記作業車両の周辺に存在する物体を検出する物体検出センサから、物体検出データである点群データを取得し、
前記点群データから対象の外形の少なくとも一部を構成する平面を推定し、
前記推定した平面上に位置する点群を抽出して二値画像を生成し、
前記二値画像から前記対象を識別する、
識別方法。
【請求項6】
作業車両であって、
車体と、
前記車体に取り付けられ、前記作業車両の周辺に存在する物体を検出する物体検出センサと、
コントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
前記物体検出センサから物体検出データである点群データを取得し、
前記点群データから対象の外形の少なくとも一部を構成する平面を推定し、
前記推定した平面上に位置する点群を抽出して二値画像を生成し、
前記二値画像から前記対象を識別する、
作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、識別システム、識別方法および作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ダンプトラック、ホイールローダ、ショベル、フォークリフトなどの作業車両により正確な荷取り作業を行うためには、作業車両による作業対象の識別性能を向上させる必要がある。特許文献1に開示されているような、掘削対象物を掘削し、掘削物を積み込み対象に積み込む一連の処理を自動的に行う自動掘削機に関する技術が知られている。特許文献1に記載の技術では、ステレオカメラが撮影した画像を用いて、掘削機に対する積み込み対象の相対位置及び積み込み対象に対する掘削機の相対姿勢を演算する。特許文献2に開示されているような、3次元距離データから観測点群を抽出し、抽出された観測点群に荷役対象の前面を表す特徴が含まれている場合に、特徴を抽出して、荷役対象の位置、方向及び幅を特定する荷役車両に関する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-088625号公報
【特許文献2】特開2016-210586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
画像を用いて対象の識別処理を行う場合、画像の撮影時の明るさなどの撮影条件によっては、対象を識別しにくいことがある。3次元センサによって検出された物体の3次元データを用いて、対象の識別処理を行う場合、処理負荷が大きくなり、実時間での計算が困難になるおそれがある。
【0005】
本開示の態様は、3次元データである点群データから対象を適切に識別可能な識別システム、識別方法および作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の態様に従えば、作業車両に取り付けられ、作業車両の周辺に存在する物体を検出する物体検出センサと、コントローラとを備える、作業車両の周辺に存在する物体から対象を識別するための識別システムが提供される。コントローラは、物体検出センサから物体検出データである点群データを取得し、点群データから対象の外形の少なくとも一部を構成する平面を推定し、推定した平面上に位置する点群を抽出して二値画像を生成し、二値画像から対象を識別する。
【0007】
本開示の態様に従えば、作業車両に取り付けられ、作業車両の周辺に存在する物体を検出する物体検出センサから、物体検出データである点群データを取得するステップと、点群データから対象の外形の少なくとも一部を構成する平面を推定するステップと、推定した平面上に位置する点群を抽出して二値画像を生成するステップと、二値画像から対象を識別するするステップと、を備える、作業車両の周辺に存在する物体から対象を識別するための識別方法が提供される。
【0008】
本開示の態様に従えば、車体と、車体に取り付けられ、前記作業車両の周辺に存在する物体を検出する物体検出センサと、コントローラと、を備える、作業車両が提供される。コントローラは、物体検出センサから物体検出データである点群データを取得し、点群データから対象の外形の少なくとも一部を構成する平面を推定し、推定した平面上に位置する点群を抽出して二値画像を生成し、二値画像から対象を識別する。
【発明の効果】
【0009】
本開示の態様によれば、3次元データである点群データから対象を適切に識別可能な識別システムおよび作業車両が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1実施形態に係る作業車両を示す側面図である。
図2図2は、第1実施形態に係る識別システムを示す機能ブロック図である。
図3図3は、第1実施形態に係るコンピュータシステムを示すブロック図である。
図4図4は、第1実施形態に係る作業車両の動作を示す模式図である。
図5図5は、対象を示す点群の一例を示す図である。
図6図6は、対象の識別処理の一例を説明する模式図である。
図7図7は、対象の二値画像の一例を示す図である。
図8図8は、対象の特徴パターンの一例を示す図である。
図9図9は、第1実施形態に係る対象の識別方法の処理の一例を示すフローチャートである。
図10図10は、第2実施形態に係る作業車両を示す斜視図である。
図11図11は、第2実施形態に係る作業車両の動作を示す模式図である。
図12図12は、対象の識別処理の他の例を説明する模式図であり、斜視図である。
図13図13は、対象の識別処理の他の例を説明する模式図であり、平面図である。
図14図14は、対象の識別処理の他の例を説明する図である。
図15図15は、対象の二値画像の他の例を示す図である。
図16図16は、対象の特徴パターンの一例を示す図である。
図17図17は、第2実施形態に係る対象の識別方法の処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本開示はこれに限定されない。以下で説明する各実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0012】
[第1実施形態]
<作業車両>
作業車両は、作業現場において、作業車両の周辺に存在する物体から対象を識別する。作業車両は、例えば、ホイールローダやフォークリフトなどである。
【0013】
図1は、第1実施形態に係る作業車両を示す側面図である。本実施形態では、作業車両100は、ホイールローダである。作業車両100は、運転者の運転操作によって稼働する有人車両でもよいし、無人で稼働する無人車両でもよい。ホイールローダ100は、作業機110によって取り上げた運搬物を積み込む積込作業を行う。
【0014】
本実施形態では、ホイールローダ100が識別する対象は、ダンプトラックのベッセルである。
【0015】
図1に示すように、ホイールローダ100は、車体102と、走行装置104と、作業機110とを備える。
【0016】
車体102は、車体前部102Fと、車体前部102Fよりも後方に配置される車体後部102Rとを含む。車体前部102Fと車体後部102Rとは、関節機構109を介して屈曲可能に連結される。
【0017】
走行装置104は、車体102を支持して地面RSを走行する。走行装置104は、動力源104Aと、操舵装置104Bと、車輪106と、動力伝達装置108とを有する。
【0018】
動力源104Aは、ホイールローダ100を駆動するための動力を発生する。動力源104Aは、例えば、電動モータである。
【0019】
操舵装置104Bは、ホイールローダ100を操舵するために、関節機構109に設けられる。操舵装置104Bが作動することにより、車体後部102Rに対して車体前部102Fが屈曲する。車体後部102Rに対して車体前部102Fが屈曲することにより、ホイールローダ100の走行方向が調整される。操舵装置104Bは、例えば、油圧シリンダである。
【0020】
車輪106は、車体前部102Fに回転可能に支持される2つの前輪106Fと、車体後部102Rに回転可能に支持される2つの後輪106Rとを含む。
【0021】
実施形態において、左右方向は、ホイールローダ100が直進状態で走行するときの前輪106F及び後輪106Rの回転軸に平行な方向である。上下方向は、前輪106F及び後輪106Rの接地面に直交する方向である。前後方向は、左右方向及び上下方向のそれぞれに直交する方向である。
【0022】
動力伝達装置108は、動力源104Aの駆動力を車輪106に伝達する。動力伝達装置108は、動力源104Aからの出力を変更させることにより、ホイールローダ100は加速又は減速する。動力伝達装置108は、車輪106の回転方向を切り換えることにより、ホイールローダ100は前進又は後進する。
【0023】
作業機110は、車体前部102Fに支持される。作業機110の少なくとも一部は、車体前部102Fよりも前方に配置される。作業機110は、ブーム111と、バケット112と、ベルクランク113と、リンク114と、ブームシリンダ115と、バケットシリンダ116とを有する。
【0024】
ブーム111は、車体前部102Fに回動可能に連結される。ベルクランク113は、リンク114を介してバケット112に連結される。バケット112は、ブーム111の先端部に回動可能に連結される。バケット112は、刃先を含む先端部112Bを有する作業部材である。バケット112は、前タイヤ106Fよりも前方に配置される。
【0025】
ブームシリンダ115は、ブーム111を作動させる動力を発生する油圧シリンダである。ブームシリンダ115が伸縮することにより、ブーム111は上げ動作又は下げ動作する。
【0026】
バケットシリンダ116は、バケット112を作動させる動力を発生する油圧シリンダである。バケットシリンダ116が伸縮することにより、バケット112はダンプ動作又はチルト動作する。バケット112がチルト動作することにより、バケット112は掘削物をすくい取る。バケット112がダンプ動作することにより、バケット112に保持されている掘削物がバケット112から排出される。
【0027】
<作業車両の識別システム>
図2は、第1実施形態に係る識別システムを示す機能ブロック図である。ホイールローダ100の識別システム1は、3次元センサ(物体検出センサ)11、出力部19、及びコントローラ20を備える。3次元センサ11、出力部19及びコントローラ20は、無線又は有線によりデータを通信可能に接続されている。
【0028】
3次元センサ11は、ホイールローダ100に取り付けられている。実施形態では、3次元センサ11は、ホイールローダ100の前部に取り付けられている。3次元センサ11の数は特に限定されるものではなく、例えば、ホイールローダ100に複数の3次元センサ11が配置されていてもよい。3次元センサ11は、ホイールローダ100の周辺に存在する物体を検出する物体検出センサである。実施形態では、3次元センサ11は、ホイールローダ100の前方に存在する物体を検出する物体検出センサである。3次元センサ11は、例えば、数10[m]程度の範囲を検出可能である。3次元センサ11は、検出した物体検出データをコントローラ20へ送信する。
【0029】
3次元センサ11は、物体の3次元データを取得する。物体の3次元データは、物体の表面に規定される複数の検出点からなる点群を含む。点群は、3次元センサ11と物体の表面に規定される複数の検出点のそれぞれとの相対距離及び相対位置を示す。3次元センサ11として、レーザ光を射出することにより物体を検出するレーザセンサ(LiDAR:Light Detection and Ranging)が例示される。なお、3次元センサ11は、赤外光を射出することにより物体を検出する赤外線センサ又は電波を射出することにより物体を検出するレーダセンサ(RADAR:Radio Detection and Ranging)などの他の非接触センサでもよい。
【0030】
出力部19は、識別結果を出力する。出力部19は、例えば、モニタ、ランプ、ブザーなどである。出力部19は、出力制御部29の制御によって識別結果を出力する。
【0031】
<コントローラ>
コントローラ20は、ホイールローダ100の周辺の物体を識別する。コントローラ20は、物体検出センサとしての3次元センサ11から物体検出データを取得可能である。コントローラ20は、CPU(Central Processing Unit)のような数値演算装置(プロセッサ)を含む。
【0032】
図3は、第1実施形態に係るコンピュータシステムを示すブロック図である。コントローラ20は、コンピュータシステム1000を含む。コンピュータシステム1000は、CPUのようなプロセッサ1001と、ROM(Read Only Memory)のような不揮発性メモリ及びRAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリを含むメインメモリ1002と、ストレージ1003と、入出力回路を含むインターフェース1004とを有する。上述のコントローラ20の機能は、プログラムとしてストレージ1003に記憶されている。プロセッサ1001は、プログラムをストレージ1003から読み出してメインメモリ1002に展開し、プログラムに従って上述の処理を実行する。なお、プログラムは、ネットワークを介してコンピュータシステム1000に配信されてもよい。
【0033】
実施形態では、コントローラ20は、センサデータ取得部21と、記憶部22と、識別部25と、出力制御部29とを備える。
【0034】
センサデータ取得部21は、3次元センサ11から物体検出データを取得する。センサデータ取得部21が取得した物体検出データは、例えば、複数の検出点からなる点群である。以下、物体検出データを点群データという。
【0035】
記憶部22は、RAM、ROM、フラッシュメモリ、及びハードディスクドライブの少なくとも一つを含む。記憶部22は、コントローラ20の処理で使用するデータ等を記憶する。
【0036】
記憶部22は、対象が存在すると推測される範囲である探索範囲を記憶する。記憶部22は、対象を識別するための対象の特徴パターンを記憶する。
【0037】
探索範囲は、物体検出データである点群データから対象を識別する処理に用いる平面抽出用点群を抽出する範囲である。点群データは、3次元センサ11の測定距離及び視野角の点群を含む。
【0038】
対象の特徴パターンは、対象の外形のなかで平面部分の形状を示す画像である。本実施形態では、特徴パターンは、ダンプトラックのベッセルの側面の二値画像である。
【0039】
識別部25は、3次元センサ11の物体検出データから対象を識別する。より詳しくは、識別部25は、センサデータ取得部21が取得した点群データから対象の外形の少なくとも一部を構成する平面を推定し、推定した平面上に位置する点群を抽出して二値画像を生成し、二値画像から対象を識別する。
【0040】
識別部25は、点群データを投影面に投影し、投影面上において点群密度が高い部分を3次元に復元して前記対象の平面を推定する。
【0041】
識別部25は、生成した二値画像の中から、あらかじめ記憶された対象の外形のなかで平面部分の形状を示す特徴パターンの二値画像と似ている形状を検出して、対象を識別する。
【0042】
図4は、第1実施形態に係る作業車両の動作を示す模式図である。ホイールローダ100は、作業機110によって取り上げた運搬物を積み込むために、積込対象となるダンプトラック200を識別する。ホイールローダ100は、3次元センサ11から取得した物体検出データに基づいて、ダンプトラック200のベッセルBEを識別する。
【0043】
図5ないし図8を用いて、識別部25による対象の識別処理について説明する。図5は、対象を示す点群の一例を示す図である。図6は、対象の識別処理の一例を説明する模式図である。図7は、対象の二値画像の一例を示す図である。図8は、対象の特徴パターンの一例を示す図である。点群は、図5に示すように、物体の表面に規定される複数の検出点で構成されている。まず、識別部25は、図6に示すように、点群データから対象を構成する平面を推定する。図6(a1)に示すように、識別部25は、点群データから、探索範囲内の点群を抽出して、識別対象の点群を取得する。そして、図6(a2)に示すように、識別部25は、平面抽出用点群をz軸が地面平面と直交する座標系のxy平面に射影する。図6(a3)は、xy平面に射影された点群を示す。xy平面上の破線で囲んだ点群は、ダンプトラックの破線で囲んだ、xy平面と直交する側面上の点群に対応する。ダンプトラックのxy平面と直交する平面上にあった点群は、一本の線分上に集約されて高密度になる。そして、図6(a4)に示すように、識別部25は、xy平面上で点群密度が高くなっている破線で囲んだ部分を残して、元の3次元位置に変換する。このようにして、識別部25は、対象を構成する平面上の点群である平面上点群を抽出することにより、対象を構成する平面を推定する。この例では、平面上点群は、ベッセル側面上の点群である。
【0044】
図7に示すように、識別部25は、抽出した平面上点群をもとに、二値画像を生成する。識別部25は、推定した平面周辺の点群である平面周辺点群を二値画像生成用の点群としてクロップして、二値画像を生成する。識別部25は、生成した二値画像の中に、図8に示す、ベッセルの形状を示す特徴パターンと似ている形状を検出する。似ている形状が検索された場合、識別部25は、検出位置及び特徴パターンのベッセルの形状を基準にして、ダンプトラックの全体の形状を識別する。
【0045】
出力制御部29は、識別部25による識別結果を、出力部19を介して出力するよう制御する。出力制御部29は、例えば、対象が識別された場合、識別された対象を示す映像をモニタに表示させる映像信号を出力する。出力制御部29は、例えば、対象が識別された場合、ランプを点灯させる制御信号を出力する。出力制御部29は、例えば、対象が識別された場合、でブザーを鳴動させる制御信号を出力する。
【0046】
<コントローラによる処理>
ホイールローダ100の起動中に、対象の識別処理が開始されると、図9に示す処理が実行される。図9は、第1実施形態に係る対象の識別方法の処理の一例を示すフローチャートである。図9に示すフローチャートの処理は、対象の識別処理である。なお、ステップST19からステップST21までの処理は、必須の処理ではない。
【0047】
コントローラ20は、点群を取得する(ステップST11)。より詳しくは、コントローラ20は、センサデータ取得部21によって、3次元センサ11から点群データを受信する。コントローラ20は、ステップST12へ進む。
【0048】
コントローラ20は、平面抽出用点群をクロップする(ステップST12)。より詳しくは、コントローラ20は、識別部25によって、点群データから対象が存在すると推定される探索範囲に含まれる点群を平面抽出用点群として抽出する。コントローラ20は、ステップST13へ進む。
【0049】
コントローラ20は、平面抽出用点群をダウンサンプルする(ステップST13)。より詳しくは、コントローラ20は、識別部25によって、点群データのダウンサンプリング手法の一例であるボクセルダウンサンプリングを用いて、平面抽出用点群をダウンサンプルする。コントローラ20は、ステップST14へ進む。
【0050】
コントローラ20は、平面上点群を抽出し、平面を推定する(ステップST14)。より詳しくは、コントローラ20は、識別部25によって、ダウンサンプルされた平面抽出用点群から、ベッセル側面上の点群である平面上点群を抽出して、平面であるベッセル側面を推定する。コントローラ20は、ステップST15へ進む。
【0051】
コントローラ20は、二値画像生成用の点群をクロップする。(ステップST15)。より詳しくは、コントローラ20は、識別部25によって、推定した平面周辺の点群である平面周辺点群を二値画像生成用の点群としてクロップする。コントローラ20は、ステップST16へ進む。
【0052】
コントローラ20は、平面周辺点群の二値画像を生成する(ステップST16)。より詳しくは、コントローラ20は、識別部25によって、クロップした平面周辺点群をもとに、推定した平面の法線ベクトルがx軸の方向と一致する座標系のyz平面で二値画像化する。yz平面は、推定した平面を含む平面である。コントローラ20は、ステップST17へ進む。
【0053】
コントローラ20は、二値画像から対象の特徴を検出する(ステップST17)。より詳しくは、コントローラ20は、識別部25によって、二値画像の中に、特徴パターンと似ている形状を検出する。コントローラ20は、ステップST18へ進む。
【0054】
コントローラ20は、3次元位置へ復元する(ステップST18)。より詳しくは、コントローラ20は、識別部25によって、二値画像中の検出位置及び特徴パターンのベッセルの形状を基準にして、ダンプトラックの全体の位置、姿勢及び形状を識別する。コントローラ20は、ステップST19へ進む。
【0055】
コントローラ20は、センサの有効視野内か確認する(ステップST19)。より詳しくは、コントローラ20は、識別部25によって、ダンプトラックの全体の位置が、3次元センサ11の有効視野内であるかを確認する。3次元センサ11の視野の境界周辺は、識別性能が低下するため、識別性能が保証されることを確認するためである。
【0056】
コントローラ20は、予測値との整合性を確認する(ステップST20)。より詳しくは、コントローラ20は、識別部25によって、前回の推定結果から予測される対象の予測位置と、今回推測した対象の位置とを比較して、差分が閾値以下であるかを確認する。
【0057】
コントローラ20は、点群識別の分散、尤度を計算する(ステップST21)。
【0058】
このようにして、コントローラ20は、点群データから、対象であるダンプトラックのベッセルを識別する。
【0059】
<効果>
以上説明したように、本実施形態では、点群データから対象の外形の平面を推定し、推定した平面上に位置する点群を抽出して二値画像を生成し、二値画像から対象を識別する。これらにより、本実施形態は、点群データをそのまま識別処理に用いる場合に比べて、処理負荷を軽減できる。本実施形態は、処理負荷が軽減されるので、識別処理の遅延など、識別性能が低下することを抑えることができる。このように、本実施形態によれば、3次元データである点群データから対象を適切に識別できる。
【0060】
本実施形態では、点群データを投影面に投影し、投影面上において点群密度が高い部分を3次元に復元して対象の平面を推定する。本実施形態によれば、点群データのノイズを除去して、平面を高精度に推定できる。
【0061】
本実施形態では、生成した二値画像の中から、あらかじめ記憶された特徴パターンの二値画像と似ている形状を検出して、対象を識別する。本実施形態によれば、二値画像を用いることにより、処理負荷を軽減できる。
【0062】
このようにして、本実施形態によれば、ダンプトラックのベッセルを適切に識別できる。
【0063】
[第2実施形態]
図10ないし図17を用いて、第2実施形態について説明する。図10は、第2実施形態に係る作業車両を示す斜視図である。第2実施形態では、作業車両100は、荷役車両の一種であるフォークリフトである。コントローラ20の識別部25における処理が、第1実施形態と異なる。第1実施形態と同様の構成には、同一の又は対応する符号を付して説明を省略する。
【0064】
<作業車両>
フォークリフト100は、荷役作業を行う。荷役作業は、所定の保管位置に置かれている運搬物を取り上げる荷取り作業を含む。本実施形態では、作業車両が識別する対象は、運搬物である。運搬物は、荷物を積載する荷役台や容器である。運搬物は、例えば、パレットやスキッド、コンテナである。運搬物は、一対のフォーク挿し込み穴を有する。本実施形態では、作業車両が識別する対象は、例えば、箱形状のパレットである。
【0065】
本実施形態では、特徴パターンは、パレットの前面のフォーク挿し込み穴の二値画像である。
【0066】
図10に示すように、フォークリフト100は、車体102と、車体102の前方に配置される作業機104と、車体102を支持する車輪105と、3次元センサ11と、カメラ12とを備える。
【0067】
車体102は、カウンタウエイト120と、フェンダ108とを含む。カウンタウエイト120は、車体102の後部に配置される。カウンタウエイト120は、フォークリフト100が運搬物を取り上げた際に、フォークリフト100の前後方向の重量バランスをとるために車体102の後部に取り付けられる。フェンダ108は、車体102の前部に配置される。フェンダ108は、車体102の左側及び右側のそれぞれに配置される。
【0068】
作業機104は、荷役作業の少なくとも一部を行う。作業機104は、車体102の前方に配置される。作業機104は、車体102に支持される。作業機104は、マスト141と、ブラケット142と、フォーク143とを有する。
【0069】
マスト141は、車体102の前部に傾動可能に支持される。マスト141は、上下方向に長い。ブラケット142は、フォーク143を支持する。ブラケット142は、マスト141に支持される。ブラケット142は、マスト141に沿って上下方向に移動可能である。フォーク143は、運搬物を支持する。フォーク143は、ブラケット142を介してマスト141に支持される。
【0070】
フォーク143は、一対設けられる。フォーク143は、第1のフォーク143Aと、第1のフォーク143Aよりも右側に配置される第2のフォーク143Bとを含む。ブラケット142は、第1のフォーク143Aと第2のフォーク143Bとを支持する。
【0071】
車輪105は、車体102を支持する。車輪105の少なくとも一部は、車体102よりも下方に配置される。車輪105は、前輪105Fと後輪105Rとを有する。前輪105Fは、後輪105Rよりも前方に配置される。前輪105Fは、車体102の左側及び右側のそれぞれに配置される。後輪105Rは、車体102の左側及び右側のそれぞれに配置される。前輪105F及び後輪105Rのそれぞれは、回転軸を中心に回転可能である。前輪105F及び後輪105Rの一方又は両方が操舵輪である。実施形態において、後輪105Rが操舵輪である。なお、前輪105Fが操舵輪でもよいし、前輪105F及び後輪105Rの両方が操舵輪でもよい。
【0072】
実施形態において、左右方向は、フォークリフト100が直進状態で走行するときの前輪105F及び後輪105Rの回転軸に平行な方向である。上下方向は、前輪105F及び後輪105Rの接地面に直交する方向である。前後方向は、左右方向及び上下方向のそれぞれに直交する方向である。
【0073】
フェンダ108は、前輪105Fの少なくとも一部を覆うように配置される。フェンダ108の少なくとも一部は、前輪105Fよりも上方に配置される。フェンダ108の少なくとも一部は、前輪105Fよりも後方に配置される。フェンダ108は、車体102の左側及び右側のそれぞれに配置される。左側のフェンダ108は、左側の前輪105Fの少なくとも一部を覆うように配置される。右側のフェンダ108は、右側の前輪105Fの少なくとも一部を覆うように配置される。
【0074】
図11は、第2実施形態に係る作業車両の動作を示す模式図である。フォークリフト100は、荷役作業を行うために、荷取り作業の対象となるパレット300を識別する。フォークリフト100は、3次元センサ11から取得した物体検出データに基づいて、パレット300を識別する。
【0075】
図12ないし図16を用いて、識別部25における識別処理について説明する。図12は、対象の識別処理の他の例を説明する模式図であり、斜視図である。図13は、対象の識別処理の他の例を説明する模式図であり、平面図である。図14は、対象の識別処理の他の例を説明する図である。図15は、対象の二値画像の他の例を示す図である。図15は、対象の特徴パターンの一例を示す図である。識別部25は、第一実施形態と同様にして、平面としてパレット前面を推定して、パレット前面の二値画像を生成する。
【0076】
識別部25は、パレットの前面を通過した通過点群を、各点を3次元センサ11と結んだ直線上であって、パレットの前面との交点へ移動し、移動した通過点群から、通過点群の二値画像を生成する。図12図13に示すように、推定したパレット前面を通過し、推定したパレット前面より後側に位置する点群を、平面通過点群という。識別部25は、推定したパレット前面を通過した平面通過点群の各点と、3次元センサ11の位置とを結ぶ直線と、パレット前面との交点を算出する。図13において、推定したパレット前面を破線で示す。図13では、推定したパレット前面より上方に点群が表れている。楕円で囲んだ点群は、推定したパレット前面を通過した点群を示す。言い換えると、楕円で囲んだ点群は、運搬物のフォーク挿し込み穴を通過した点群である。識別部25は、図14に示すように、平面通過点群を、算出した交点の位置へ移動させる。すなわち、識別部25は、平面通過点群を、パレット前面上に移動させる。図14(a1)は、推定したパレット前面と、パレット前面を通過した点群と3次元センサ11の座標系基準とを結ぶ直線との交点を求めた図である。図14(a2)は、(a1)で求めた交点の位置に点群を補完した図である。このようにして、識別部25は、平面通過点群の各点が、平面を通過した位置を算出する。
【0077】
識別部25は、図15に示すように、平面通過点群から二値画像を生成する。識別部25は、生成した二値画像と、図16に示すフォーク挿し込み穴の特徴パターンでフィルタリングして、類似度を算出する。識別部25は、二値画像の中でフォーク挿し込み穴パターンと似たパターンがあるかを検索する。図16に示す例では、領域P11は、フォーク挿し込み穴が位置する確率が高い領域である。領域P12は、フォーク挿し込み穴が位置する確率が低い領域である。領域P13は、フォーク挿し込み穴が位置する確率が領域P11と領域P12と間である。Cは、フォーク挿し込み穴の中間点を示す。
【0078】
図17は、第2実施形態に係る対象の識別方法の処理の一例を示すフローチャートである。ステップST31からステップST36まで、ステップST38からステップST42は、図9に示すフローチャートのステップST11からステップST16まで、ステップST17からステップST21までと同様の処理を行う。
【0079】
コントローラ20は、平面通過点群の二値画像を生成する(ステップST37)。より詳しくは、コントローラ20は、識別部25によって、推定したパレット前面を通過した平面通過点群の二値画像を生成する。
【0080】
このようにして、コントローラ20は、点群データから、対象であるパレットのフォーク挿し込み穴を識別する。
【0081】
<効果>
以上説明したように、本実施形態では、推定したパレットの前面を通過した通過点群を、各点を3次元センサ11と結んだ直線上であって、推定したパレットの前面との交点へ移動し、移動した通過点群から、通過点群の二値画像を生成する。本実施形態では、上述したように、点群を平面に投影することにより、平面上の点が線分上に集約されて高密度になる。本実施形態では、高密度になることによりノイズが除去される。本実施形態によれば、3次元センサ11と対象との距離が離れて、点群密度が疎であっても、フォーク挿し込み穴を高精度に識別できる。
【0082】
これに対して、従来の技術では、3次元センサ11と対象との距離が離れると、点群密度が疎になり、点群からフォーク挿し込み穴の位置を特定することは困難になる。
【0083】
このようにして、本実施形態によれば、パレットのフォーク挿し込み穴を適切に識別できる。
【符号の説明】
【0084】
1…識別システム、11…3次元センサ(物体検出センサ)、19…出力部、20…コントローラ、21…センサデータ取得部、22…記憶部、25…識別部、29…出力制御部、100…ホイールローダ(作業車両)、102…車体、102F…車体前部、102R…車体後部、104…走行装置、104A…動力源、104B…操舵装置、106…車輪、106F…前輪、106R…後輪、109…関節機構、110…作業機、111…ブーム、112…バケット、112B…先端部、113…ベルクランク、114…リンク、115…ブームシリンダ、116…バケットシリンダ、000…コンピュータシステム、1001…プロセッサ、1002…メインメモリ、1003…ストレージ、1004…インターフェース。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17