(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025018540
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】ソケットおよび回転工具
(51)【国際特許分類】
B25B 13/02 20060101AFI20250130BHJP
B25B 13/46 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
B25B13/02 C
B25B13/46 G
B25B13/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023122330
(22)【出願日】2023-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】503200361
【氏名又は名称】株式会社イチネンアクセス
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】弁理士法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】中川 晃規
(57)【要約】 (修正有)
【課題】全ねじを効率よく回転させることができるソケットおよび回転工具を提供する。
【解決手段】ソケット10は、収容部20を有する第1筒状部12と、収容部20に収容される複数のローラ30と、複数のローラ30を保持する保持部材32と、収容部20の内周面20aと保持部材32の外周面32bとの間に設けられる複数の規制部材34とを有する。内周面20aは複数の湾曲部21aを含む。全ねじに対して第1筒状部12が周方向Yにおける一方側に回転すると、ローラ30が湾曲部21aのうち周方向Yにおける中心よりも他方側の部分と全ねじとに挟まれて、第1筒状部12と全ねじとが固定される。全ねじに対して第1筒状部12が周方向Yにおける他方側に回転すると、規制部材34がローラ30に接触することによって、ローラ30が第1筒状部12に対して周方向Yにおける一方側へ移動することが規制される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空状の収容部を有しかつ全ねじを挿入可能な第1筒状部と、
前記第1筒状部の軸方向に沿って延びるように前記収容部に収容される複数の円柱状のローラと、
前記軸方向に前記全ねじを挿入できるように前記収容部に収容され、かつ前記複数のローラを保持する保持部材と、
前記軸方向に沿って延びるように前記収容部の内周面と前記保持部材の外周面との間に設けられる柱状の規制部材と、を有し、
前記軸方向から見て、前記内周面は、前記第1筒状部の周方向において等間隔で配置されかつ前記第1筒状部の径方向における外側に向かって凸となるように弧状に湾曲する、前記複数のローラと同数の複数の湾曲部を含み、
前記軸方向から見て、前記内周面に内接する仮想円を基準円とした場合に、前記湾曲部は、前記基準円と前記湾曲部の両端部との前記径方向における距離が、前記基準円と前記湾曲部の中心との前記径方向における距離よりも小さくなるように湾曲し、
前記保持部材は、前記複数のローラと前記複数の湾曲部とが前記径方向においてそれぞれ対向するように前記複数のローラを保持し、
前記複数のローラはそれぞれ、前記径方向において前記保持部材の内側および外側に突出するように、かつ前記保持部材に対して前記周方向および前記径方向に移動できるように、前記保持部材に保持され、
前記規制部材は、前記複数の湾曲部のうちのいずれかの湾曲部と前記保持部材の前記外周面との間において、前記周方向における前記ローラの一方側に設けられ、
前記軸方向から見て、前記全ねじに対して前記第1筒状部が前記周方向における一方側に回転するに際して、各前記ローラが前記湾曲部のうち前記中心よりも前記周方向における他方側の部分と前記全ねじとに挟まれることによって、前記第1筒状部と前記全ねじとが固定され、
前記軸方向から見て、前記全ねじに対して前記第1筒状部が前記周方向における前記他方側に回転するに際して、前記規制部材が前記一方側から前記ローラに接触することによって、当該ローラが前記第1筒状部に対して前記周方向における前記一方側へ移動することが規制され、
前記第1筒状部と前記全ねじとが固定された状態における前記ローラよりも、前記規制部材によって前記一方側への移動が規制された状態の前記ローラは、前記径方向における外側に移動できる、ソケット。
【請求項2】
前記複数の湾曲部それぞれに対して、前記規制部材が設けられる、請求項1に記載のソケット。
【請求項3】
前記収容部に収容される前記ローラの数は3である、請求項1または2に記載のソケット。
【請求項4】
前記規制部材は、円柱形状を有し、かつ弧状に湾曲している、請求項1または2に記載のソケット。
【請求項5】
前記規制部材は、楕円柱形状または角柱形状を有している、請求項1または2に記載のソケット。
【請求項6】
前記第1筒状部の前記軸方向における端部に接続され、かつ前記軸方向において前記第1筒状部とは反対側の端部に第1ソケット孔を有する第2筒状部と、
前記第2筒状部に対して前記軸方向に移動できるように前記第2筒状部に挿入され、前記軸方向において前記第1筒状部とは反対側の端部に第2ソケット孔を有する第3筒状部と、をさらに備える、請求項1または2に記載のソケット。
【請求項7】
請求項1または2に記載のソケットを備えた回転工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全ねじを回転させることができるソケットおよび回転工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インパクトレンチ等の電動工具に装着可能な種々のソケットが提案されている。例えば、特許文献1には、電動工具に接続して使用される電動レンチ用ソケットが開示されている。特許文献1の電動レンチ用ソケットの本体の一端部には、電動工具に接続するための接続部が設けられている。また、本体の他端部側には、ナットを回転させるための第1の凹所とねじ部を回転させるための第2の凹所とが順に設けられている。
【0003】
第1の凹所は、ナットに着脱自在に嵌合できるように構成されている。第2の凹所は、本体が回転した際にねじ部を本体に固定してねじ部を回転させる機構を収容している。このような構成により、第1の凹所にナットを嵌合して、電動工具によって本体を回転駆動することによって、ナットを回転させることができる。また、第2の凹所にホームタイ(登録商標)等のねじ部を挿入し、電動工具によって本体を回転駆動することによって、ねじ部を回転させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示された電動レンチ用ソケットは、電動工具に接続して利用することを前提としているが、全ねじを回転させるための手動式の回転工具にも特許文献1に開示された構成を採用することができる。例えば、特許文献1の電動レンチ用ソケットの第2の凹所内に設けられた機構を、手動式のソケットレンチのソケット内に設けることによって、手動で全ねじを回転させることができる。
【0006】
ところで、特許文献1の電動レンチ用ソケットでは、第2の凹所内に設けられた機構は、電動工具の回転方向にかかわらず、全ねじを回転させることができるように構成されている。すなわち、電動工具が正回転するときだけでなく、電動工具が逆回転するときにも、全ねじを本体に固定することができるように構成されている。
【0007】
一方で、手動式のソケットレンチを用いる場合には、全ねじを一方向に回転させる際には、全ねじを中心としてソケットレンチを一方向に繰り返し回転させる必要がある。このため、全ねじに対してソケットレンチを一方向に回転させる際にはソケットから全ねじに回転を伝達し、全ねじに対してソケットレンチを逆方向に回転させる際にはソケットから全ねじに回転が伝達されないように、ソケットレンチを構成する必要がある。しかしながら、特許文献1に開示された構成をそのまま採用すると、ソケットレンチを逆方向に回転させる際にも、ソケットの回転が全ねじに伝達されてしまう。
【0008】
そこで、例えば、ソケットレンチのハンドル部とソケットとの間にラチェット機構を設けることが考えられる。この場合、全ねじに対してソケットレンチを一方向に回転させる際にはソケットが一方向に回転し、全ねじに対してソケットレンチを逆方向に回転させる際にはソケットが逆方向に回転しないように、ソケットレンチを構成することができる。これにより、全ねじに対してソケットレンチを逆方向に回転させる際に、ソケットレンチから全ねじへの回転伝達を遮断することができる。
【0009】
しかしながら、特許文献1の構成では、全ねじとソケットとが固定されるまでの遊びが大きい。電動工具によってソケットを回転させることによって全ねじを回転させる場合には、全ねじとソケットとが回転されるまでの遊びが大きくても問題はないが、手動でソケットレンチを繰り返し回転させることによって全ねじを回転させる際には、上記遊びが大きいと作業効率が大きく低下する。
【0010】
そこで、本発明は、全ねじを効率よく回転させることができるソケットおよび回転工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、下記のソケットおよび回転工具を要旨とする。
【0012】
(1)中空状の収容部を有しかつ全ねじを挿入可能な第1筒状部と、
前記第1筒状部の軸方向に沿って延びるように前記収容部に収容される複数の円柱状のローラと、
前記軸方向に前記全ねじを挿入できるように前記収容部に収容され、かつ前記複数のローラを保持する保持部材と、
前記軸方向に沿って延びるように前記収容部の内周面と前記保持部材の外周面との間に設けられる柱状の規制部材と、を有し、
前記軸方向から見て、前記内周面は、前記第1筒状部の周方向において等間隔で配置されかつ前記第1筒状部の径方向における外側に向かって凸となるように弧状に湾曲する、前記複数のローラと同数の複数の湾曲部を含み、
前記軸方向から見て、前記内周面に内接する仮想円を基準円とした場合に、前記湾曲部は、前記基準円と前記湾曲部の両端部との前記径方向における距離が、前記基準円と前記湾曲部の中心との前記径方向における距離よりも小さくなるように湾曲し、
前記保持部材は、前記複数のローラと前記複数の湾曲部とが前記径方向においてそれぞれ対向するように前記複数のローラを保持し、
前記複数のローラはそれぞれ、前記径方向において前記保持部材の内側および外側に突出するように、かつ前記保持部材に対して前記周方向および前記径方向に移動できるように、前記保持部材に保持され、
前記規制部材は、前記複数の湾曲部のうちのいずれかの湾曲部と前記保持部材の前記外周面との間において、前記周方向における前記ローラの一方側に設けられ、
前記軸方向から見て、前記全ねじに対して前記第1筒状部が前記周方向における一方側に回転するに際して、各前記ローラが前記湾曲部のうち前記中心よりも前記周方向における他方側の部分と前記全ねじとに挟まれることによって、前記第1筒状部と前記全ねじとが固定され、
前記軸方向から見て、前記全ねじに対して前記第1筒状部が前記周方向における前記他方側に回転するに際して、前記規制部材が前記一方側から前記ローラに接触することによって、当該ローラが前記第1筒状部に対して前記周方向における前記一方側へ移動することが規制され、
前記第1筒状部と前記全ねじとが固定された状態における前記ローラよりも、前記規制部材によって前記一方側への移動が規制された状態の前記ローラは、前記径方向における外側に移動できる、ソケット。
【0013】
(2)前記複数の湾曲部それぞれに対して、前記規制部材が設けられる、上記(1)に記載のソケット。
【0014】
(3)前記収容部に収容される前記ローラの数は3である、上記(1)または(2)に記載のソケット。
【0015】
(4)前記規制部材は、円柱形状を有し、かつ弧状に湾曲している、上記(1)から(3)のいずれかに記載のソケット。
【0016】
(5)前記規制部材は、楕円柱形状または角柱形状を有している、上記(1)から(3)のいずれかに記載のソケット。
【0017】
(6)前記第1筒状部の前記軸方向における端部に接続され、かつ前記軸方向において前記第1筒状部とは反対側の端部に第1ソケット孔を有する第2筒状部と、
前記第2筒状部に対して前記軸方向に移動できるように前記第2筒状部に挿入され、前記軸方向において前記第1筒状部とは反対側の端部に第2ソケット孔を有する第3筒状部と、をさらに備える、上記(1)から(5)のいずれかに記載のソケット。
【0018】
(7)上記(1)から(6)のいずれかに記載のソケットを備えた回転工具。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、全ねじを効率よく回転させることができるソケットおよび回転工具が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るソケットおよびそれを備えた回転工具を示す概略斜視図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係るソケットを示す図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係るソケットを示す図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係るソケットを示す図である。
【
図5】
図5は、第1筒状部、第2筒状部および第3筒状部の形状を説明するための図である。
【
図6】
図6は、第3筒状部の動作を説明するための図である。
【
図7】
図7は、収容部の内周面と、複数のローラと、保持部材と、複数の規制部材と、全ねじとの位置関係を示す概略図である。
【
図8】
図8は、収容部の内周面と、複数のローラと、保持部材と、複数の規制部材と、全ねじとの位置関係を示す概略図である。
【
図10】
図10は、ソケットの他の変形例およびそれを備えた回転工具を示す図である。
【
図11】
図11は、ソケットのその他の変形例を示す図である。
【
図12】
図12は、ソケットのさらに他の変形例を示す図である。
【
図15】
図15は、湾曲部の形状の変形例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態に係るソケットおよびそれを備えた回転工具について図面を用いて説明する。
【0022】
(ソケットの構成)
図1は、本発明の一実施形態に係るソケットおよびそれを備えた回転工具を示す概略斜視図である。
図1に示すように、回転工具100は、ハンドル部101と、本発明の一実施形態に係るソケット10とを備えている。ソケット10は、ハンドル部101のヘッド部102に取り付けられている。本実施形態では、回転工具100は、ラチェットレンチである。後述するように、ヘッド部102に設けられた爪部103を操作することによって、ハンドル部101に対してソケット10が回転できる方向を切り替えることができる。なお、本実施形態に係るソケット10は、ラチェットレンチのソケットとしての利用に限定されず、ハンドル部に固定されて利用されてもよい。以下、ソケット10について詳細に説明する。
【0023】
図2~
図4は、本実施形態に係るソケットを示す図である。具体的には、
図2(a)は、ソケットの外観図であり、
図2(b)は、
図2(a)に示すソケットの左側面図であり、
図2(c)は、
図2(a)に示すソケットの右側面図である。
図3(a)は、ソケットの内部構造を示す断面図であり、
図3(b)は、
図3(a)のb-b部分を示す拡大断面図である。また、
図4は、ソケットの分解斜視図である。
【0024】
図2~
図4に示すように、ソケット10は、第1筒状部12、第2筒状部14および第3筒状部16を備えている。本実施形態では、第1筒状部12、第2筒状部14および第3筒状部16は、同軸上に設けられている。すなわち、本実施形態では、第1筒状部12、第2筒状部14および第3筒状部16の軸心は、互いに一致している。以下、ソケット10(第1筒状部12、第2筒状部14および第3筒状部16)の軸方向を、軸方向Xと記載する。本明細書では、軸方向Xにおいて第2筒状部14に対して第1筒状部12が位置する側を、軸方向Xにおける一方側とし、その反対側を軸方向Xにおける他方側とする。また、以下においては、ソケット10(第1筒状部12、第2筒状部14および第3筒状部16)の軸心を通りかつ当該軸心に直交する方向を、ソケット10(第1筒状部12、第2筒状部14および第3筒状部16)の径方向とする。また、第1筒状部12の周方向を、周方向Y(
図3(b)参照)と記載する。
【0025】
図2(a)に示すように、第1筒状部12、第2筒状部14および第3筒状部16はそれぞれ、棒状の全ねじ200を挿入可能に構成されている。本実施形態では、ソケット10を軸方向Xに貫通するように全ねじ200をソケット10に挿入することができる。
【0026】
第1筒状部12と第2筒状部14とは、取り外し可能に構成されている。第3筒状部16は、軸方向Xに移動可能に第2筒状部14内に挿入されている。
図5は、第1筒状部12、第2筒状部14および第3筒状部16の形状を説明するための図である。なお、
図5(a)には、第1筒状部12を第2筒状部14から取り外した状態の第1筒状部12、第2筒状部14および第3筒状部16を示している。
図5(b)は、
図5(a)のb-b部分を示す拡大断面図であり、
図5(c)は、
図5(a)のc-c部分を示す拡大断面図である。
【0027】
図3~
図5に示すように、第1筒状部12は、軸方向Xにおける一方側の端面および他方側の端面が開口した中空形状を有している。本実施形態では、第1筒状部12は、収容部20と、抜け止め部22と、連結部24とを有している。本実施形態では、収容部20は、軸方向Xに直交する断面において、非円形状の内周面20aを有している。また、収容部20は、内周面20aの軸方向Xにおける他方側の縁から第1筒状部12の径方向における内側に延びる環状のフランジ面20bを有している。
【0028】
図3(b)に示すように、軸方向Xから見て、内周面20aは、複数の湾曲部21aを有している。複数の湾曲部21aは、第1筒状部12の周方向において等間隔で配置されかつ第1筒状部12の径方向における外側に向かって凸となるように弧状に湾曲している。内周面20aは、軸方向Xから見て、多角形の各頂点に対応する部分に湾曲部21aが設けられた形状を有している。本実施形態では、内周面20aは、軸方向Xから見て、三角形の各頂点に対応する部分に湾曲部21aが設けられた形状を有している。したがって、内周面20aは、3つの湾曲部21aを有している。
【0029】
図3(b)に一点鎖線で示すように、軸方向Xから見て、内周面20aに内接する仮想円を基準円21bとする。軸方向Xから見て、各湾曲部21aは、第1筒状部12の径方向における基準円21bと湾曲部21aの両端部(周方向Yにおける両端部)との距離が、上記径方向における基準円21bと湾曲部21aの中心(周方向Yにおける中心)との距離よりも小さくなるように湾曲している。本実施形態では、第1筒状部12の径方向における基準円21bと湾曲部21aとの距離は、周方向Yにおいて湾曲部21aの中心から離れるほど小さくなる。
【0030】
図3(a),(b)に示すように、収容部20には、複数のローラ30、保持部材32、および複数の規制部材34が収容されている。本実施形態では、3本のローラ30が収容部20に収容されている。各ローラ30は、円柱形状を有し、軸方向Xに沿って延びるように設けられている。
【0031】
保持部材32は、円筒形状を有し、全ねじ200(
図2(a)参照)を軸方向Xに挿入できるように収容部20に収容されている。保持部材32には、複数の切欠き部32aが形成されている。複数の切欠き部32aは、保持部材32の周方向に等間隔で形成されている。各切欠き部32aは、軸方向Xにおける保持部材32の一方側の端部から他方側へ向かって延びるように形成されている。本実施形態では、保持部材32には、ローラ30と同数の切欠き部32aが形成されている。具体的には、保持部材32には、3つの切欠き部32aが形成されている。
【0032】
複数のローラ30は、保持部材32に保持されている。本実施形態では、各切欠き部32aに、ローラ30が嵌め込まれている。保持部材32は、複数のローラ30と複数の湾曲部21aとが、第1筒状部12の径方向においてそれぞれ対向するように、複数のローラ30を保持している。
【0033】
なお、
図3(b)に示すように、本実施形態では、第1筒状部12の径方向において、ローラ30が保持部材32から中心側へ抜け落ちないように、切欠き部32aが形成されている。本実施形態では、各ローラ30は、第1筒状部12の径方向において、保持部材32の内側および外側に突出するように、かつ保持部材32に対して第1筒状部12の周方向および径方向に移動できるように、保持部材32に保持されている。また、
図3(a)に示すように、本実施形態では、軸方向Xにおいて、各ローラ30の中心が、保持部材32の中心よりも一方側(抜け止め部22側)に位置するように、各ローラ30が保持部材32に保持されている。
【0034】
図3(a),(b)に示すように、各規制部材34は、柱状に形成され、軸方向Xに沿って延びるように、収容部20の内周面20aと保持部材32の外周面32bとの間に設けられている。本実施形態では、各規制部材34は、円柱形状を有し、かつ弧状に湾曲している。本実施形態では、ローラ30と同数の規制部材34が設けられている。具体的には、3つのローラ30にそれぞれ対応するように、3つの規制部材34が設けられている。各規制部材34は、収容部20の内周面20aの湾曲部21aと保持部材32の外周面32bとの間に設けられている。このように、本実施形態では、湾曲部21aごとに、ローラ30および規制部材34が設けられている。各規制部材34は、第1筒状部12の周方向において、対応するローラ30の一方側に設けられている。
【0035】
図3(a)、
図4および
図5に示すように、抜け止め部22は、軸方向Xにおいて収容部20の一方側に設けられる。抜け止め部22は、軸方向Xにおける第1筒状部12の一方側の端面から他方側に向かって延びる円筒状の内周面22aと、軸方向Xにおける内周面22aの他方側の縁から第1筒状部12の径方向における内側に延びる環状のフランジ面22bを有している。軸方向Xにおける内周面22aの中央部には、第1筒状部12の径方向外側に向かって凹むように、溝22cが形成されている。
【0036】
図2(b)、
図3(a)、および
図4に示すように、抜け止め部22内に、軸方向Xにおける一方側から、蓋材36および抜け止め材38が嵌め込まれる。蓋材36は、全ねじ200(
図2)を挿入できるように、中空円板形状を有している。抜け止め材38は、内周面22aの溝22cに嵌め込まれている。本実施形態では、抜け止め材38として、Cリングが用いられる。本実施形態では、軸方向Xにおける蓋材36の一方側への移動は、抜け止め材38によって規制され、軸方向Xにおける蓋材36の他方側への移動は、フランジ面22bによって規制される。また、複数のローラ30、保持部材32および複数の規制部材34が、第1筒状部12の軸方向Xにおける一方側から抜け落ちることは、蓋材36によって防止される。さらに、保持部材32および複数の規制部材34が、第1筒状部12の軸方向Xにおける他方側から抜け落ちることは、フランジ面20bによって防止される。
【0037】
図3(a)、
図4および
図5に示すように、連結部24は、収容部20から軸方向Xにおける他方側に延びるように設けられている。本実施形態では、連結部24は、軸方向Xに直交する断面において多角形状の外周面を有している。
【0038】
第2筒状部14は、軸方向Xにおける一方側の端面および他方側の端面が開口した中空形状を有している。本実施形態では、第2筒状部14は、アウターソケット部40と、連結部42とを有している。アウターソケット部40において、軸方向Xにおける一方側の端部の外周面には、複数の歯(外歯)からなる歯部40aが形成されている。
図1を参照して、歯部40a(
図3参照)は、ハンドル部101の爪部103に接触するように、ヘッド部102に取り付けられている。回転工具100では、爪部103を操作することによって、爪部103に対して歯部12aが回転できる方向を切り替えることができる。これにより、ハンドル部101に対してソケット10が回転できる方向を切り替えることができる。なお、ソケット10をヘッド部102に取り付けるための構成およびソケット10の回転方向を切り替えるための構成としては、公知のラチェットレンチの構成を利用できるので詳細な説明は省略する。
【0039】
図5(a)に示すように、アウターソケット部40の内面は、ソケット孔41a、係止面41b、円筒面41c、係止面41dおよび円筒面41eを含む。ソケット孔41aは、軸方向Xにおいてアウターソケット部40の他方側の端部に設けられている。ソケット孔41aは、軸方向Xから見て多角形状を有している。本実施形態では、ソケット孔41aが第1ソケット孔として機能する。
図5(b)に示すように、本実施形態では、ソケット孔41aは、軸方向Xから見て六角形状を有している。本実施形態では、ソケット孔41aによって、図示しない締め付け部材(ボルト、ナット等)を保持することができる。
【0040】
図5(a)に示すように、円筒面41cは、軸方向Xにおいてソケット孔41aの一方側に設けられている。
図5(b)に示すように、軸方向Xから見て、円筒面41cは、ソケット孔41aに外接する円と略同一の直径を有するように形成されている。
【0041】
係止面41bは、ソケット孔41aと円筒面41cとを接続するように設けられている。
図5(b)に示すように、本実施形態では、ソケット孔41aと円筒面41cとを接続するように、6つの係止面41bが設けられている。本実施形態では、軸方向Xから見て、各係止面41bは弓形状を有している。
【0042】
図5(a)に示すように、円筒面41eは、軸方向Xにおいて円筒面41cの一方側に設けられている。軸方向Xに直交する断面において、円筒面41eの直径は、円筒面41cの直径よりも小さい。係止面41dは環状に形成され、円筒面41cと円筒面41eとを接続している。
【0043】
連結部42は、軸方向Xにおいて、アウターソケット部40の一方側に設けられる。連結部42の内周面は、連結部24の外周面に対応した形状を有している。上述したように、本実施形態では、連結部24の外周面は、軸方向Xに直交する断面において多角形状を有している。したがって、連結部42の内周面も、軸方向Xに直交する断面において多角形状を有している。
【0044】
図3および
図5に示すように、第3筒状部16は、軸方向Xにおける一方側の端面および他方側の端面が開口した中空形状を有している。
図3および
図6に示すように、第3筒状部16は、軸方向Xに移動できるように第2筒状部14内に挿入されている。
図3~
図6に示すように、本実施形態では、第3筒状部16は、インナーソケット部60と、ガイド部62と、係止部64とを有している。
【0045】
図3(a)、
図5および
図6に示すように、インナーソケット部60の外周面60aは、アウターソケット部40のソケット孔41aに対応する多角形状を有している。インナーソケット部60の外径(外周面60aに外接する仮想円の直径)は、ソケット孔41aの口径(ソケット孔41aに外接する仮想円の直径)よりも小さい。本実施形態では、ソケット孔41aと外周面60aとが互いに係止されることによって、第2筒状部14と第3筒状部16とが一体回転する。
【0046】
インナーソケット部60の内周面60bは、軸方向Xに直交する断面において多角形状を有している。本実施形態では、内周面60bが第2ソケット孔として機能する。以下、内周面60bをソケット孔60bと記載する。ソケット孔60bは、軸方向Xにおいてインナーソケット部60の他方側の端部に設けられている。本実施形態では、ソケット孔60bは、軸方向Xから見て六角形状を有している。本実施形態では、ソケット孔60bによって、図示しない締め付け部材(ボルト、ナット等)を保持することができる。
【0047】
ガイド部62は、インナーソケット部60から軸方向Xにおける一方側に延びるように設けられている。本実施形態では、ガイド部62は、円筒形状を有している。ガイド部62の外径は、インナーソケット部60の外径よりも小さい。係止部64は、第3筒状部16の径方向において、ガイド部62から外側に突出している。本実施形態では、ガイド部62の先端は、係止部64よりも軸方向Xにおける一方側に突出している。
【0048】
図5に示すように、係止部64の外周面64aは、インナーソケット部60の外周面60aと同様の形状を有している。具体的には、係止部64の外周面64aは、ソケット孔41aに対応する多角形状を有している。
【0049】
アウターソケット部40内において、複数の係止面41bと係止部64との間に抜け止め材50が設けられている。本実施形態では、抜け止め材50として、Cリングが用いられている。本実施形態では、係止部64が抜け止め材50を介して複数の係止面41bに係止されることによって、第3筒状部16が第2筒状部14に対して軸方向Xにおける他方側に移動することが規制される。また、
図6に示すように、係止部64が係止面41dに係止されることによって、第3筒状部16が第2筒状部14に対して軸方向Xにおける一方側に移動することが規制される。
【0050】
なお、本実施形態では、第3筒状部16を第2筒状部14に挿入する際には、まず、抜け止め材50を、ガイド部62の外側に嵌める。具体的には、ガイド部62のうち、係止部64よりも軸方向Xにおける他方側の部分に抜け止め材50を取り付ける。次に、第3筒状部16のガイド部62および係止部64をアウターソケット部40内に挿入する。この際、抜け止め材50を第2筒状部14の径方向内側に向かって縮めながら(本実施形態では、縮径しながら)、抜け止め材50をアウターソケット部40内に押し込む。
図6に示すように、係止部64が係止面41dに係止される位置まで第3筒状部16を押し込むことによって、抜け止め材50が、複数の係止面41b(
図5参照)よりも軸方向Xにおける一方側に移動する。これにより、抜け止め材50が、第2筒状部14から軸方向Xにおける他方側に抜け落ちることが防止される。
【0051】
図3~
図6に示すように、第2筒状部14(アウターソケット部40)内に、付勢部材52が設けられている。本実施形態では、付勢部材52として、コイルばねが用いられている。付勢部材52の軸方向Xにおける他方側の端部は、係止部64に支持されるようにガイド部62の先端部に嵌められている。
【0052】
付勢部材52の軸方向Xにおける一方側の端部を支持するように、第1筒状部12の連結部24が、第2筒状部14の連結部42に挿入されている。本実施形態では、第3筒状部16を軸方向Xにおける他方側に向かって付勢するように、第1筒状部12の連結部24と第3筒状部16の係止部64とによって付勢部材52が支持されている。
図2および
図4に示すように、本実施形態では、固定部材56によって、連結部24(
図4参照)と連結部42とが固定されている。
【0053】
(ソケットの使用方法)
まず、第2筒状部14および第3筒状部16によって締め付け部材(ボルト、ナット等)を回転させる場合について説明する。なお、ハンドル部101に対してソケット10が回転できる方向は、締め付け部材を回転させる方向に応じて適宜切り替えればよい。全ねじ200を回転させる場合も同様である。
【0054】
本実施形態に係るソケット10では、第3筒状部16に対して外部から力が加えられていない場合には、
図3に示すように、第3筒状部16は、係止部64が抜け止め材50を介して係止面41bに係止される位置に位置付けられる。この状態では、インナーソケット部60の一部がアウターソケット部40から突出し、アウターソケット部40のソケット孔41aは露出していない。このため、アウターソケット部40のソケット孔41aおよびインナーソケット部60のソケット孔60bのうち、ソケット孔60bのみの使用が可能となる。この状態で、ソケット孔60bにボルト、ナット等の締め付け部材を嵌め込んで、当該締め付け部材を回転させることができる。
【0055】
一方、
図6に示すように、第3筒状部16を軸方向Xにおける一方側に押し込むことによって、アウターソケット部40のソケット孔41aを露出させることができる。これにより、アウターソケット部40のソケット孔41aの使用が可能になる。この場合、ソケット孔41aにボルト、ナット等の締め付け部材を嵌め込んで、当該締め付け部材を回転させることができる。このように、本実施形態に係るソケット10では、第3筒状部16を軸方向Xに移動させることによって、アウターソケット部40のソケット孔41aおよびインナーソケット部60の外周面60aを選択的に使用することができる。
【0056】
次に、全ねじ200を回転させる場合について説明する。
図2に示すように、ソケット10によって全ねじ200を回転させる際に、まず、ソケット10に全ねじ200を挿入する。
【0057】
図7および
図8は、全ねじ200が挿入されたソケット10における、収容部20の内周面20aと、複数のローラ30と、保持部材32と、複数の規制部材34と、全ねじ200との位置関係を示す概略図である。なお、
図7および
図8には、軸方向Xにおける一方側から見た、内周面20a、複数のローラ30、保持部材32および複数の規制部材34を示している。また、
図7および
図8においては、周方向Yに沿ってローラ30からそのローラ30に対応する規制部材34を見た側を、周方向Yにおける一方側とし、その反対側を他方側とする。
【0058】
図7に示すように、本実施形態では、全ねじ200に対して第1筒状部12を周方向Yにおける一方側に回転させると、各ローラ30が、湾曲部21aのうち周方向Yにおける中心よりも他方側の部分と全ねじ200とに挟まれる。これにより、第1筒状部12と全ねじ200とが固定される。その結果、第1筒状部12の回転に連動して、全ねじ200が回転する。したがって、本実施形態では、第1筒状部12を周方向Yにおける一方側に回転させることによって、全ねじ200を回転させることができる。
【0059】
一方、
図8に示すように、全ねじ200に対して第1筒状部12を周方向Yにおける他方側に回転させると、各規制部材34が、周方向Yにおける一方側からローラ30に接触する。本実施形態では、各規制部材34は、ローラ30のうち、第1筒状部12の径方向においてローラ30の中心よりも外側の部分に接触する。これにより、第1筒状部12に対してローラ30が周方向Yにおける一方側に移動することが防止される。
【0060】
本実施形態では、規制部材34がローラ30に接触することによって、ローラ30は、湾曲部21aの周方向Yにおける中心部に対向する位置に位置付けられる。これにより、
図7に示す状態(複数のローラ30を介して、第1筒状部12と全ねじ200とが固定された状態)に比べて、各ローラ30は、第1筒状部12の径方向外側に移動できる。この場合、全ねじ200と各ローラ30との間に隙間を形成することができるので、第1筒状部12がローラ30を介して全ねじ200に固定されることを防止できる。その結果、全ねじ200に対して第1筒状部12を周方向Yにおける他方側に回転させることができる。すなわち、第1筒状部12を空転させることができ、ソケット10から全ねじ200に回転が伝達されることを防止することができる。
【0061】
したがって、作業者は、回転工具100のハンドル部101を持って、ソケット10を周方向Yにおける一方側および他方側に繰り返し回転させることによって、全ねじ200を一方向に回転させることができる。
【0062】
(ソケットの効果)
本実施形態に係るソケット10では、上述したように、全ねじ200に対して第1筒状部12(ソケット10)を周方向Yにおける他方側に回転させる際(全ねじ200に対して第1筒状部12を空転させる際)に、各規制部材34が、周方向Yにおける一方側からローラ30に接触する。これにより、第1筒状部12に対してローラ30が周方向Yにおける一方側に移動することが防止されるので、第1筒状部12に対するローラ30の周方向Yにおける移動範囲を小さくすることができる。その結果、全ねじ200に対して第1筒状部12を周方向Yにおける一方側に回転させる際に、ローラ30が、湾曲部21aと全ねじ200とに挟まれるまでに要する時間が短縮される。すなわち、全ねじ200とソケット10とが固定されるまでの遊びを小さくできる。これにより、全ねじ200を効率よく回転させることができる。
【0063】
また、本実施形態では、各規制部材34は、弧状に湾曲した形状を有している。この場合、第1筒状部12と保持部材32との間で規制部材34が周方向Yに転がることを抑制することができる。これにより、規制部材34を適切な位置に位置付けることができ、全ねじ200に対して第1筒状部12(ソケット10)を周方向Yにおける他方側に回転させる際に、規制部材34が第1筒状部12と保持部材32との間に噛み込むことを十分に防止することができる。その結果、第1筒状部12を全ねじ200に対して周方向Yにおける一方側および他方側に回転させる際に、ローラ30を適切な位置に確実に位置付けることができ、第1筒状部12から全ねじ200への回転の伝達および遮断をより円滑に行うことができる。
【0064】
(変形例)
上述の実施形態では、
図3に示したように、軸方向Xにおいて、各ローラ30の中心が、保持部材32の中心よりも一方側(抜け止め部22側)に位置付けられているが、ローラ30と保持部材32との位置関係は上述の例に限定されない。具体的には、例えば、
図9に示すように、軸方向Xにおいて、各ローラ30の中心が、保持部材32の中心よりも他方側(第3筒状部16側)に位置するように、各ローラ30が保持部材32に保持されてもよい。なお、
図9に示すソケット10では、軸方向Xにおける保持部材32の向きは、
図3に示すソケット10における保持部材32の向きと反対である。
図9に示す構成では、
図3に示す構成に比べて、全ねじ200をソケット10に挿入した際に、ソケット10の軸方向Xにおける中心側で、複数のローラ30が全ねじ200に接触する。この場合、ソケット10内において全ねじ200が傾くことを十分に防止できるので、全ねじ200をより円滑に回転させることができる。
【0065】
上述の実施形態では、ソケット10が、全ねじ200に加えて、ボルトおよびナット等の締め付け部材を保持できるように構成されていたが、ソケットが、締め付け部材を回転させるための構成を備えていなくてもよい。
図10は、変形例に係るソケット10aおよびそれを備えた回転工具100aを示す概略図である。
図10に示すソケット10aが上述のソケット10と異なるのは、第2筒状部14、第3筒状部16、抜け止め材50および付勢部材52を備えていない点である。本実施形態では、第1筒状部12の連結部24が、ハンドル部101aのヘッド部102aに固定されている。本実施形態においても、作業者は、ソケット10aに全ねじ200を挿入し、回転工具100aのハンドル部101aを持って、ソケット10aを繰り返し回転させることによって、全ねじ200を一方向に回転させることができる。
【0066】
本実施形態に係るソケット10aにおいても、上述のソケット10と同様に、規制部材34(
図8参照)がローラ30(
図8参照)に接触することによって、第1筒状部12を全ねじに対して空転させることができる。このため、ハンドル部101aにラチェット機構が設けられていなくても、作業者は、ハンドル部101aを持って、ソケット10aを周方向Y(
図8参照)における一方側および他方側に繰り返し回転させることによって、全ねじを一方向のみに円滑に回転させることができる。
【0067】
なお、ソケット10,10aにおいては、上記のように、規制部材34によってローラ30の移動を規制することによって、全ねじに対して第1筒状部12を空転させることができる。このため、第1筒状部12を空転させる(第1筒状部12に対するローラ30の周方向Yへの移動を規制する)ために、第1筒状部12の収容部20(
図8参照)の内周面20a(
図8参照)を複雑な形状に加工する必要がない。本実施形態では、収容部20の内周面20aの形状を、電動工具に取り付けて使用される全ねじ回転用の従来のソケットの内周面と同様の形状とすることができる。具体的には、軸方向から見て、収容部20の内周面20aを、多角形の各頂点に対応する部分に湾曲部を設けた単純な形状とすることができる。このように、本実施形態に係るソケット10,10aにおいては、電動工具に取り付けて使用される全ねじ回転用の従来のソケットの単純な構成を利用することができるので、加工コストを抑制することができる。
【0068】
上述の実施形態では、規制部材34が円柱形状を有する場合について説明したが、規制部材34の形状は上述の例に限定されない。例えば、
図11に示すように、規制部材34が楕円柱形状を有していてもよく、
図12に示すように、規制部材34が多角柱形状(
図12においては、四角柱形状)を有していてもよい。これらの場合も、第1筒状部12と保持部材32との間で規制部材34が周方向Y(
図8参照)に転がることを抑制することができる。
【0069】
また、
図13に示すように、規制部材34の両端部が扁平形状を有していてもよい。なお、
図13において(a)は、規制部材を示す正面図であり、(b)は規制部材を示す右側面図である。
図13に示す規制部材34を用いた場合には、扁平形状を有する両端部によって、規制部材34が第1筒状部12に対して周方向Yに転がることを抑制することができる。なお、
図13に示す規制部材34は、例えば、円柱状の部材の両端部を押し潰すことによって製造することができる。また、例えば、断面円形の線材を切断することによって複数の規制部材34を製造する際に、バリ等を含む切断部の形状をそのまま残してもよい。この場合も、切断部は扁平な形状となるので、当該切断部によって、規制部材34が第1筒状部12に対して周方向Yに転がることを抑制することができる。また、例えば、
図14に示すように、規制部材34の端部(
図14に示す例では両端部)が鉤状に屈曲していてもよい。この場合も、屈曲した端部によって、規制部材34が第1筒状部12に対して周方向Yに転がることを抑制することができる。以上のように、規制部材34の少なくとも一部に、断面が非円形となる部分(楕円部、多角柱部、扁平部等)、屈曲部または湾曲部を設けることによって、規制部材34が第1筒状部12に対して周方向Yに転がることを抑制することができる。
【0070】
上述の実施形態では、湾曲部21a(ローラ30)ごとに規制部材34が設けられていたが、少なくとも一つの湾曲部21a(ローラ30)に対して規制部材34が設けられていればよく、いずれかの湾曲部21a(ローラ30)に対して規制部材34が設けられていなくてもよい。ただし、各ローラ30を適切な位置に位置付けるためには、湾曲部21a(ローラ30)ごとに規制部材34が設けられることが好ましい。また、上述の実施形態では、第1筒状部12の収容部20の内周面20aに3つの湾曲部21aが設けられる場合について説明したが、収容部の内周面に4つ以上の湾曲部が設けられてもよい。すなわち、収容部の内周面が、第1筒状部の軸方向から見て、四角形以上の多角形の各頂点に対応する部分に湾曲部が設けられた形状を有していてもよい。この場合も、上述の実施形態と同様に、湾曲部ごとにローラが設けられ、湾曲部(ローラ)ごとに規制部材が設けられることが好ましい。
【0071】
上述の実施形態では、第1筒状部12の径方向における基準円21bと湾曲部21aとの距離が、第1筒状部12の周方向Yにおいて湾曲部21aの中心から離れるほど小さくなる場合について説明したが、湾曲部21aの形状は上述の例に限定されない。
図15に湾曲部の形状の他の例を示す。
図15には、軸方向X(
図3(a)参照)から見て、収容部20の内周面20aに外接する仮想円21cが二点鎖線で示されている。仮想円21cは、基準円21bの同心円である。
図15に示す例では、湾曲部21aの中央部(周方向Yにおける中心を含む所定の長さの領域)は、仮想円21cに重なる円弧形状を有している。この場合、第1筒状部12の径方向における基準円21bと湾曲部21aとの距離は、湾曲部21aの中央部では一定となり、周方向Yにおいて湾曲部21aの中央部から離れるほど小さくなる。このように湾曲部21aが構成される場合でも、上述の実施形態と同様の効果が得られる。
【0072】
上述の実施形態では、ソケットとハンドル部とが別個の部材である場合について説明したが、ソケットの第1筒状部がハンドル部と一体的に形成されていてもよい。また、第1筒状部12の周方向Yにおいて、ローラ30と規制部材34との位置関係は、
図3(b)に示した位置関係と反対であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明によれば、全ねじを効率よく回転させることができるソケットおよび回転工具が得られる。
【符号の説明】
【0074】
10,10a ソケット
12 第1筒状部
14 第2筒状部
16 第3筒状部
20 収容部
30 ローラ
32 保持部材
34 規制部材
100,100a 回転工具
200 全ねじ