(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025018544
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】風向調整装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/34 20060101AFI20250130BHJP
F24F 13/14 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
B60H1/34 611Z
F24F13/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023122337
(22)【出願日】2023-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】塚原 晋
【テーマコード(参考)】
3L081
3L211
【Fターム(参考)】
3L081AA02
3L081FA01
3L081HA01
3L081HB01
3L081HB02
3L211BA05
3L211DA14
(57)【要約】
【課題】低コストで構成でき、短時間で風向調整可能な風向調整装置を提供する。
【解決手段】風向調整装置1は、互いに交差する方向に回動可能に通気路に配置された一及び他のフィン10,11と、回動可能な一の回動体32と、往復動作により一のフィン10を回動させるためのリンク33と、を有し、一の回動体32の回動をリンク33の往復動作に変換する変換機構30と、一の回動体32の回動に応じて他のフィン11とともに回動する他の回動体50と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに交差する方向に回動可能に通気路に配置された一及び他のフィンと、
回動可能な一の回動体と、往復動作により前記一のフィンを回動させるためのリンクと、を有し、前記一の回動体の回動を前記リンクの往復動作に変換する変換機構と、
前記一の回動体の回動に応じて前記他のフィンとともに回動する他の回動体と、
を備えることを特徴とする風向調整装置。
【請求項2】
変換機構は、カム溝を備える立体カムである一の回動体と、前記カム溝に挿入される突起部を備える従動節であるリンクと、を有するカム装置である
ことを特徴とする請求項1記載の風向調整装置。
【請求項3】
一の回動体と同軸に連結されたギヤを備え、
他の回動体は、前記ギヤに歯合される歯合部を有する
ことを特徴とする請求項1または2記載の風向調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに交差する方向に回動可能な一及び他のフィンを備える風向調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの車両に用いられる空調装置において、吹き出す風向を調整する風向調整装置がある。風向調整装置は、空調風吹出装置、エアアウトレット、ベンチレータ、レジスタなどとも呼ばれ、例えばインストルメントパネルやセンタコンソール部などの車両の各部に設置されて、冷暖房による快適性能の向上に寄与している。
【0003】
例えば、風向調整装置を電動化するにあたり、縦フィンと横フィンとを別個にモータにより回動させることが考えられる。この場合、二つのモータが必要となることから、大型化及びコスト増を招く。
【0004】
そこで、一つのモータの正回転と逆回転とを利用し、正回転時には縦フィンまたは横フィンを回動させ、逆回転時には横フィンまたは縦フィンを回動させるものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-29186号公報 (第5-13頁、
図1-3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の構成は、モータと縦フィン及び横フィンとを連動させる機構が複雑化することにより、かえってコスト増を招くおそれがあるとともに、縦フィンと横フィンとの一方ずつしか動かすことができないため、狙った風向に調整するのに時間を要する。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、低コストで構成でき、短時間で風向調整可能な風向調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の風向調整装置は、互いに交差する方向に回動可能に通気路に配置された一及び他のフィンと、回動可能な一の回動体と、往復動作により前記一のフィンを回動させるためのリンクと、を有し、前記一の回動体の回動を前記リンクの往復動作に変換する変換機構と、前記一の回動体の回動に応じて前記他のフィンとともに回動する他の回動体と、を備えるものである。
【0009】
請求項2記載の風向調整装置は、請求項1記載の風向調整装置において、変換機構は、カム溝を備える立体カムである一の回動体と、前記カム溝に挿入される突起部を備える従動節であるリンクと、を有するカム装置であるものである。
【0010】
請求項3記載の風向調整装置は、請求項1または2記載の風向調整装置において、一の回動体と同軸に連結されたギヤを備え、他の回動体は、前記ギヤに歯合される歯合部を有するものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の風向調整装置によれば、一の回動体の回動に伴って、一のフィンと他のフィンとを同時に回動させることができるため、例えば一のフィンを回動させるための駆動装置と他のフィンを回動させるための駆動装置とを別個に設ける構成などと比較して、低コストで構成できるとともに、一のフィンと他のフィンとの同時回動によって、短時間で風向調整可能となる。
【0012】
請求項2記載の風向調整装置によれば、請求項1記載の風向調整装置の効果に加えて、変換機構を安価でコンパクトに構成できる。
【0013】
請求項3記載の風向調整装置によれば、請求項1または2記載の風向調整装置の効果に加えて、簡素な構成で一の回動体の回動に応じて他の回動体を容易に回動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施の形態の風向調整装置を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0016】
図1ないし
図4において、1は風向調整装置である。風向調整装置1は、エアアウトレット、ベンチレータ、レジスタなどとも呼ばれ、空調装置などからの風の吹き出し方向を調整するものである。以下、説明をより明確にするために、風向調整装置1は、風が吹き出す側である風下側を前側、正面側または手前側とし、その反対側、つまり風を受け入れる側である風上側を後側、背後側または奥側として、前側から見て左右方向である両側方向または幅方向、及び、上下方向を規定する。本実施の形態において、風向調整装置1は、自動車などの車両用の空調装置に適用される。風向調整装置1は、任意の位置に配置されていてよいが、図面においては、矢印FR側を前側、矢印RR側を後側、矢印L側を左側、矢印R側を右側、矢印U側を上側、矢印D側を下側とするように配置されているものとする。これらの方向は、あくまで一例として図示されるものであって、風向調整装置1の設置位置や設置向きによって適宜変更されるものとする。
【0017】
風向調整装置1は、ケース体3を備える。ケース体3は、ダクトとも呼ばれる。ケース体3は、筒状に形成されている。本実施の形態において、ケース体3は、前後方向に筒状に形成されている。図示される例では、ケース体3は、角筒状に形成されている。ケース体3により、内部に通気路5が囲まれている。ケース体3の中心軸に平行な方向が通気路5の通気方向である。本実施の形態において、通気路5の通気方向は、前後方向であり、後方から前方に向かって通気される。すなわち、通気路5において、後側は通気方向の上流側、前側は通気方向の下流側である。通気路5は、通気方向に対して直交する断面が四角形状である。
【0018】
ケース体3の後端部に、通気路5に空気すなわち空調風を受け入れる受入口6が形成され、ケース体3の前端部に、通気路5から空調風を排出する吹出口7が形成されている。受入口6と吹出口7との間にこれらを連通する通気路5が形成されている。受入口6から吹出口7へと空調風が通過する。なお、ケース体3は、一体的に形成されていてもよいし、複数の部材を組み合わせて形成されていてもよい。また、ケース体3は、風向調整装置1の被設置部に少なくとも一部が一体的に形成されていてもよい。
【0019】
ケース体3の内部、すなわち通気路5には、一のフィン10と他のフィン11とが回動可能に配置されている。一及び他のフィン10,11は、それぞれルーバなどとも呼ばれ、ケース体3に対して回動することで、その回動に応じて吹出口7から吹き出される空調風の風向を調整する。一及び他のフィン10,11は、それぞれ一主面及び他主面が整流面となる板状に形成されている。一のフィン10は、通気路5において上流側に位置し、他のフィン11は、通気路5において下流側に位置する。図示される例では、他のフィン11は、吹出口7に臨んで位置する。
【0020】
一のフィン10と他のフィン11とは、互いに交差、例えば直交する方向に回動可能となっている。本実施の形態では、一のフィン10が通気路5において左右方向に長手状に配置されて、一の方向である上下方向に回動可能となっており、他のフィン11が通気路5において上下方向に長手状に配置されて、一の方向と交差または直交する他の方向である左右方向に回動可能となっている。すなわち、図示される例では、一のフィン10の回動軸線が左右方向、他のフィン11の回動軸線が上下方向となっている。なお、一のフィン10を左右方向に回動可能とし、他のフィン11を上下方向に回動可能としてもよいし、その他、風向調整装置1の配置姿勢などに応じて一のフィン10の回動方向と他のフィン11の回動方向とは、互いに交差すれば、それぞれ任意方向に設定されていてよい。
【0021】
一のフィン10は、回動部14を有する。回動部14が、回動受け部15に回動可能に保持される。回動部14と回動受け部15とは、一方が軸部、他方が穴部または凹部である。本実施の形態においては、回動部14が軸部、回動受け部15が丸穴状の穴部または凹部である。回動受け部15は、軸受け部16にそれぞれ形成されている。各軸受け部16は、ケース体3の左右の側壁部と一体でもよいし、ケース体3と別体でもよい。本実施の形態において、軸受け部16は、ケース体3とは別体のスペーサであり、通気路5内においてケース体3の左右の側壁部にそれぞれ保持されている。
【0022】
同様に、他のフィン11は、回動部20を有する。回動部20が、回動受け部21に回動可能に保持される。回動部20と回動受け部21とは、一方が軸部、他方が穴部または凹部である。本実施の形態においては、回動部20が軸部、回動受け部21が丸穴状の穴部または凹部である。回動受け部21は、軸受け部22にそれぞれ形成されている。各軸受け部22は、ケース体3の上下の端壁部と一体でもよいし、ケース体3と別体でもよい。本実施の形態において、軸受け部22は、ケース体3とは別体のスペーサであり、通気路5内においてケース体3の上下の端壁部にそれぞれ保持されている。
【0023】
本実施の形態では、一のフィン10は、通気路5の上下方向の中央部に一枚設定され、他のフィン11は、通気路5の左右方向の中央部に一枚設定されている。これに限らず、一及び他のフィン10,11は、それぞれリンク体によって互いに同方向に回動するように連結された複数枚で構成されていてもよい。つまり、一及び他のフィン10,11は、それぞれ枚数を問わない。
【0024】
そして、一及び他のフィン10,11は、連動装置25により互いに連動して回動される。連動装置25は、ケース体3の外部すなわち通気路5の外部に配置されている。連動装置25は、モータなどの一つの駆動装置により電動動作されてもよいし、手動により動作されてもよい。
【0025】
本実施の形態において、連動装置25は、一のフィン10を回動させるための変換機構30を有する。変換機構30は、回動可能な一の回動体32と、往復動作可能なリンク33と、を有する。そして、変換機構30は、一の回動体32が回動されると、その一の回動体32の回動が一のフィン10を往復回動させるためのリンク33の往復運動に変換されるように構成されている。
【0026】
変換機構30は、スライダクランク機構など、任意の機構としてよいが、本実施の形態では、カム装置が用いられる。
【0027】
一の回動体32は、カム装置の原動節である立体カムであって、特に図示される例では、円柱カムまたは円筒カムである。一の回動体32は、円柱状または円筒状に形成されている。一の回動体32は、中心軸上に回動部34を有する。回動部34が、回動受け部35に回動可能に保持される。回動部34と回動受け部35とは、一方が軸部、他方が穴部または凹部である。本実施の形態においては、回動部34が穴部、回動受け部35がケース体3に形成された軸部である。本実施の形態において、一の回動体32は、ケース体3の一端壁部である上側の端壁部から上方に突設され、他のフィン11の回動軸線と平行または略平行な方向に回動軸線を有する。図示される例では、一の回動体32は、上下方向に沿って回動軸線を有する。
【0028】
一の回動体32の外周面には、リンク33の動作を規制するためのカム溝37が形成されている。カム溝37は、一の回動体32の外周面に、全周に亘り連なって形成されている。カム溝37は、一の回動体32の周方向において、リンク33の往復方向に蛇行するように形成されている。本実施の形態では、カム溝37は、正弦波状に形成されている。図示される例では、カム溝37は、一の回動体32の一周に対し上下方向に複数回、例えば四回往復するように設定されている。つまり、カム溝37の往復周期は、一の回動体32の一回動周期に対して、1/4に設定されている。したがって、一の回動体32の一回転に対し、リンク33が四回往復動作することにより一のフィン10が四回往復回動するようになっている。なお、一の回動体32の一回動周期に対するカム溝37の往復周期は、任意に設定してよい。
【0029】
リンク33は、カム装置の従動節であり、一のフィン10の回動方向である上下方向に往復動作可能となっている。リンク33は、ケース体3の一側壁部に対向して位置する。本実施の形態において、リンク33は、ケース体3の一側壁部に形成されたガイド部38を受けるガイド受け部39を備え、ガイド部38により、上下方向に移動可能にガイドされる。本実施の形態では、ガイド部38はケース体3の一側壁部に直線リブ状に形成され、ガイド受け部39は、リンク33に溝状に形成されている。これに限らず、リンク33は、別部品を設けたり、ケース体3に他の形状を設けたりすることでガイドされるようにしてもよい。
【0030】
リンク33は、一のフィン10と連結されるフィン側連結部40と、一の回動体32と連結される回動体側連結部41と、を一体的に有する。フィン側連結部40と回動体側連結部41とは、互に交差または直交する方向に延びている。本実施の形態では、フィン側連結部40は、前後方向に延び、回動体側連結部41は上下方向に延びている。そのため、リンク33は、側方から見てL字状に形成されている。
【0031】
フィン側連結部40には、一のフィン10に形成された連結軸部43が挿入される穴部44が形成されている。連結軸部43は、接続ピンなどとも呼ばれ、一のフィン10において、回動部14すなわち回動軸線に対して離れた位置に、回動軸線と平行または略平行に形成されている。本実施の形態では、連結軸部43は、一のフィン10の一側部において、後端の位置から一側方に突設されている。連結軸部43は、ケース体3に形成された挿入穴部45に挿入されて、ケース体3の外部すなわち通気路5の外部へと突出している。
【0032】
挿入穴部45は、一のフィン10の回動軸線を中心として円弧状に延びて形成されている。本実施の形態では、挿入穴部45は、一のフィン10の回動軸線を中心として上下に円弧状に延びている。そのため、一のフィン10の回動に伴い、連結軸部43が挿入穴部45に沿って上下に移動するようになっている。
【0033】
穴部44には、連結軸部43が回動可能に挿入されている。穴部44は、リンク33の往復方向に対して交差または直交する方向に長穴状に形成されている。すなわち、本実施の形態では、穴部44は、前後方向に長穴状に形成されている。そのため、リンク33の往復動作に応じて回動される一のフィン10の連結軸部43が挿入穴部45に沿って移動する際に、リンク33の往復方向に対して穴部44の内部で前後にスライドするように構成されている。穴部44の長さは、連結軸部43の前後方向の可動幅、すなわち挿入穴部45の前端部と後端部との間の幅以上に設定されている。
【0034】
回動体側連結部41には、一の回動体32のカム溝37に挿入される突起部47が形成されている。突起部47は、接続ピンなどとも呼ばれ、回動体側連結部41から一の回動体32の外周面に向かって突出している。本実施の形態では、突起部47は、左右方向に延びている。一の回動体32の回動に伴い突起部47がカム溝37に沿って移動することにより、リンク33が往復動作するようになっている。
【0035】
また、連動装置25は、他のフィン11を回動させるための他の回動体50を有する。他の回動体50は、他のフィン11と連結され、他のフィン11と一体的に回動可能となっている。本実施の形態において、他の回動体50は、他のフィン11の回動部20と一体的に形成されている。図示される例では、他の回動体50は、ケース体3の上部に位置している。
【0036】
他の回動体50は、一の回動体32の回動に応じて回動される。本実施の形態では、他の回動体50は、一の回動体32と一体的に回動するギヤ52と歯合される歯合部53を有するギヤ部である。ギヤ52は、減速ギヤであり、一の回動体32と同軸に配置されている。ギヤ52は、一の回動体32とケース体3との間に位置する。本実施の形態において、ギヤ52は、一の回動体32の下部にて一の回動体32とケース体3の上側の端壁部との間に位置する。
【0037】
他の回動体50は、扇形状に形成され、その外周縁部にギヤ歯状の歯合部53を有している。ギヤ52の円半径と他の回動体50の円半径とは、所定の比率に設定されている。この比率つまりギヤ52による減速比は、任意に設定してよいが、例えば一の回動体32の一回動周期とカム溝37の往復周期との比率と相関を有する。本実施の形態では、ギヤ52の円半径と他の回動体50の円半径との比率は、1:4に設定されている。そのため、ギヤ52の一回転つまり一周期に対して、他の回動体50はその1/4、すなわち90°回動するようになっている。したがって、ギヤ52の一回転に対し、他の回動体50が90°回動することにより、他のフィン11が一の回動端から他の回動端まで90°回動するようになっている。
【0038】
また、本実施の形態では、他の回動体50とケース体3との間には、他の回動体50を円滑に回動させるためのガイド部54が位置する。ガイド部54は、例えばケース体3の上側の端壁部上に、他の回動体50の回動軸線を中心とする円弧リブ状に形成され、他の回動体50の回動に伴い他の回動体50の下部と摺接し、他の回動体50を線支持するようになっている。
【0039】
なお、ケース体3の内部、すなわち通気路5には、ケース体3に対して回動することでその回動に応じて通気路5を開閉するシャットバルブが設けられていてもよい。
【0040】
そして、風向調整装置1は、連動装置25の変換機構30において、一の回動体32を回動させると、この一の回動体32の外周面に形成されているカム溝37に対して突起部47が挿入されているリンク33が、カム溝37の蛇行に応じて突起部47がカム溝37に沿ってガイドされることにより、ガイド部38にガイドされつつ往復動作する。このリンク33の往復動作に伴い、リンク33の穴部44に挿入されている一のフィン10の連結軸部43がリンク33の往復方向、本実施の形態では上下方向に押されることで、連結軸部43がケース体3の挿入穴部45に沿って移動するように一のフィン10が上下方向に往復回動する。
【0041】
同時に、一の回動体32と同軸に配置されているギヤ52が一の回動体32と同方向に同角度回動することにより、ギヤ52に対して歯合部53が歯合されている他の回動体50が、一の回動体32及びギヤ52の回動方向とは反対方向に回動され、他の回動体50と一体的に連結されている他のフィン11が、他の回動体50とともに左右いずれかの方向に回動する。例えば、本実施の形態では、上方から見て、一の回動体32を時計回り方向に回動させると、他の回動体50が反時計回り方向に回動され、他のフィン11が右方向に回動され、上方から見て、一の回動体32を反時計回り方向に回動させると、他の回動体50が時計回り方向に回動され、他のフィン11が左方向に回動される。
【0042】
そのため、一の回動体32が一回転する間に、他のフィン11が左右方向に90°回動すると同時に一のフィン10が上下方向に複数回、本実施の形態では四回往復回動する。そのため、一のフィン10と他のフィン11との整流により、吹出口7から吹き出す空調風の風向が、
図1の仮想線Aに示すように、正面から見て正弦波状に調整されることとなる。
【0043】
このように、一実施の形態によれば、変換機構30により、一の回動体32の回動を一のフィン10を回動させるためのリンク33の往復動作に変換するとともに、一の回動体32の回動に応じて他の回動体50を他のフィン11とともに回動させることで、一の回動体32の回動に伴って、一のフィン10と他のフィン11とを同時に回動させることができる。そのため、例えば一の回動体32を回動させるモータなどの駆動装置を一つ用いるだけで一のフィン10と他のフィン11との同時回動が可能になるので、一のフィン10を回動させるための駆動装置と他のフィン11を回動させるための駆動装置とを別個に設ける構成などと比較して、低コストで構成できるとともに、一のフィン10と他のフィン11との同時回動によって、短時間で素早く風向調整可能となる。したがって、所望の風向に調整できるまでに時間を要することに起因する乗員などの使用者のストレスの緩和も可能となる。
【0044】
変換機構30を、カム溝37を備える立体カムである一の回動体32と、カム溝37に挿入される突起部47を備える従動節であるリンク33と、を有するカム装置とすることで、変換機構30を安価でコンパクトに構成できる。
【0045】
また、一の回動体32と同軸に連結されたギヤ52に対し、他の回動体50に形成した歯合部53を歯合させることで、簡素な構成で一の回動体32の回動に応じて他の回動体50を容易に回動させることができる。
【0046】
そのため、一の回動体32を回動させるための駆動装置としてモータなどを用いることにより、風向調整装置1を安価でコンパクトに電動化することも可能になる。
【0047】
また、カム溝37を正弦波状に形成することで、突起部47によってカム溝37と連結されるリンク33を円滑に往復動作させることができる。
【0048】
なお、一実施の形態において、風向調整装置1は、自動車用のものに限らず、その他の任意の用途に用いてよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、例えば自動車の空調用の風向調整装置として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0050】
1 風向調整装置
5 通気路
10 一のフィン
11 他のフィン
30 変換機構
32 一の回動体
33 リンク
37 カム溝
47 突起部
50 他の回動体
52 ギヤ
53 歯合部