IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-車両用ドアハンドル装置 図1
  • 特開-車両用ドアハンドル装置 図2
  • 特開-車両用ドアハンドル装置 図3
  • 特開-車両用ドアハンドル装置 図4
  • 特開-車両用ドアハンドル装置 図5
  • 特開-車両用ドアハンドル装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001855
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】車両用ドアハンドル装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 85/16 20140101AFI20241226BHJP
   E05B 77/36 20140101ALI20241226BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
E05B85/16 D
E05B77/36
B60J5/04 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023101576
(22)【出願日】2023-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000969
【氏名又は名称】弁理士法人中部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横井 悟
【テーマコード(参考)】
2E250
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250HH01
2E250JJ09
2E250PP12
(57)【要約】
【課題】ハンドル部材が突出位置から格納位置に移動した際の、ハンドル部材の上下方向のガタを抑制することができる車両用ドアハンドル装置を提供する。
【解決手段】本発明は、ドアパネル9の表面と面一になる格納位置から、突出位置を介して、ドアが開く開放位置まで回動可能に構成されたハンドル部材2と、ストッパ装置6と、を備える。ハンドル部材2は、長手方向他端部に位置し突出位置においてユーザが把持可能に形成されたグリップ部222と、グリップ部222から車幅方向内側に突出する延長部23と、を備える。ストッパ装置6は、ハンドル部材2が格納位置にある場合に、第1把持部材615及び第2把持部材62により延長部23を上下から挟み込み、ハンドル部材2が格納位置以外の位置にある場合に、第1把持部材615と第2把持部材62とが離間することで延長部23の挟み込みが解除されるように構成されている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向一端部に設けられた回転軸を中心に、ドアパネルの表面と面一になる格納位置から、長手方向他端部が前記ドアパネルから車幅方向外側に突出した突出位置を介して、ドアが開く開放位置まで回動可能に構成されたハンドル部材と、
前記ハンドル部材を前記格納位置から前記突出位置まで回動させる駆動装置と、
前記ドアパネルの車幅方向内側に配置され、前記格納位置にある前記ハンドル部材を収容する収容部材と、
を備え、
前記ハンドル部材は、
長手方向一端部に前記回転軸を保持する軸保持部を有するとともに、長手方向他端部を含む部分に前記突出位置においてユーザが把持可能に形成されたグリップ部を有する本体部と、
前記グリップ部から車幅方向内側に突出する延長部と、
を備え、
前記収容部材内には、第1把持部材及び第2把持部材を有するストッパ装置が設けられ、
前記ストッパ装置は、前記ハンドル部材が前記格納位置にある場合に、前記第1把持部材及び前記第2把持部材により前記延長部を上下から挟み込み、前記ハンドル部材が前記格納位置以外の位置にある場合に、前記第1把持部材と前記第2把持部材とが離間することで前記延長部の挟み込みが解除されるように構成されている、
車両用ドアハンドル装置。
【請求項2】
前記収容部材は、
前記格納位置において、前記本体部を収容する本体収容部と、
前記本体収容部から車幅方向内側に突出し、前記格納位置において前記延長部を収容する延長収容部と、
を備え、
前記ストッパ装置は、前記延長収容部内に設けられている、
請求項1に記載の車両用ドアハンドル装置。
【請求項3】
前記延長部は、前記突出位置において前記グリップ部の車幅方向内側の端面を覆うように、前記グリップ部の上部から車幅方向内側に延びている、
請求項1に記載の車両用ドアハンドル装置。
【請求項4】
前記ストッパ装置は、把持機構部材を備え、
前記把持機構部材は、第1腕部と、第2腕部と、軸設置部と、クッション部材と、前記第1把持部材と、付勢部材と、を備え、
前記軸設置部には、前記把持機構部材の回転軸であるストッパ回転軸が設置され、
前記第1腕部及び前記第2腕部は、前記軸設置部から互いに交差する方向に延び、
前記付勢部材は、前記第1把持部材と前記第2把持部材とが離間する方向に前記把持機構部材を付勢し、
前記クッション部材は、前記格納位置において前記収容部材に当接すように、前記第1腕部に設けられ、
前記第1把持部材は、前記格納位置において前記第2把持部材に対向するように、前記第2腕部に設けられ、
前記把持機構部材は、
前記ハンドル部材が前記突出位置から前記格納位置に回動する際、前記第1腕部が前記延長部により押圧されて車幅方向内側に移動することで、前記第2腕部が前記ストッパ回転軸を中心に回動して前記第1把持部材を前記延長部に当接させ、
前記ハンドル部材が前記格納位置から前記突出位置に回動する際、前記延長部の車幅方向外側への移動に伴い、前記付勢部材により前記第2腕部が前記ストッパ回転軸を中心に回動して前記第1把持部材を前記延長部から離間させるように構成されている、
請求項1~3の何れか一項に記載の車両用ドアハンドル装置。
【請求項5】
前記第1腕部と前記第2腕部とは、前記軸設置部から互いに直交するように延びている、
請求項4に記載の車両用ドアハンドル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドアハンドル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、例えば特開2017-101488号公報に記載のように、ドアパネルとドアハンドルとを面一にすることができる、いわゆるフラッシュサーフェイス型(あるいはポップアップ型)のドアハンドル装置が開発されている。このようなドアハンドル装置では、ハンドル部材が格納位置から突出位置を介して開放位置まで回動可能に構成されている。フラッシュサーフェイス型のドアハンドル装置によれば、車両の空力性能は向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-101488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ハンドル部材は、例えば車両走行時には、ドアパネルと面一になる格納位置に配置されている。また、例えば鍵を持ったユーザが車両に乗り込もうとしてドアに接近した際、ハンドル部材は、駆動装置により前端部にある回転軸を中心に回動させられる。これにより、ハンドル部材の後端部は、ドアパネルから突出し、突出位置(把持位置ともいえる)まで移動する。ユーザは、ハンドル部材の突出した部分を把持して、さらに外側の開放位置までハンドル部材を回動させることで、ドアを開けることができる。このようなドアハンドルは、片ヒンジタイプのフラッシュドアハンドルとも呼ばれ、車両前方又は後方にヒンジを持ち、回転してドアを展開する。
【0005】
この構成において、ハンドル部材の前端部は、回転軸が配置されているため作動が比較的安定している。しかし、ハンドル部材の後端部は、回転軸から遠いため、作動の精度が前端部に比べて悪化しやすい。例えば、ハンドル部材が格納位置に移動した際の上下方向のガタ(位置ズレ)は、後端部のほうが前端部よりも相対的に大きくなる。ハンドル部材がドアパネル等の他の部材に接触すると、摺動抵抗の増大等により、ハンドル部材の動作不良が発生するおそれがある。したがって、設計者は、ガタの発生を考慮して、ドアパネルとハンドル部材との間の隙間(建付け隙)を設計する必要がある。つまり、ハンドル部材の後端部のガタが、建付け隙の設計に影響を及ぼす。
【0006】
本発明の目的は、ハンドル部材が突出位置から格納位置に移動した際の、ハンドル部材の上下方向のガタを抑制することができる車両用ドアハンドル装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車両用ドアハンドル装置は、ハンドル部材と、駆動装置と、収容部材と、を備えている。前記ハンドル部材は、長手方向一端部に設けられた回転軸を中心に、ドアパネルの表面と面一になる格納位置から、長手方向他端部が前記ドアパネルから車幅方向外側に突出した突出位置を介して、ドアが開く開放位置まで回動可能に構成されている。前記駆動装置は、前記ハンドル部材を前記格納位置から前記突出位置まで回動させる。前記収容部材は、前記ドアパネルの車幅方向内側に配置され、前記格納位置にある前記ハンドル部材を収容する。前記ハンドル部材は、本体部と、延長部と、を備える。前記本体部は、長手方向一端部に前記回転軸を保持する軸保持部を有するとともに、長手方向他端部を含む部分に前記突出位置においてユーザが把持可能に形成されたグリップ部を有する。前記延長部は、前記グリップ部から車幅方向内側に突出している。前記収容部材内には、第1把持部材及び第2把持部材を有するストッパ装置が設けられている。前記ストッパ装置は、前記ハンドル部材が前記格納位置にある場合に、前記第1把持部材及び前記第2把持部材により前記延長部を上下から挟み込み、前記ハンドル部材が前記格納位置以外の位置にある場合に、前記第1把持部材と前記第2把持部材とが離間することで前記延長部の挟み込みが解除されるように構成されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ハンドル部材が格納位置にある場合、回転軸から離間した長手方向他端部に位置する延長部は、第1把持部材及び第2把持部材によって上下から挟まれて位置決めされる。これにより、上下方向のガタが発生しやすいハンドル部材の長手方向他端部は、格納位置において一定の位置に配置される。ハンドル部材が格納位置以外の位置にある場合、第1把持部材及び第2把持部材が離間しているため、延長部はストッパ装置に引っかかることなく、スムーズに移動することができる。本発明によれば、ハンドル部材が突出位置から格納位置に移動した際の、ハンドル部材の上下方向のガタを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態の格納位置にある車両用ドアハンドル装置の概念図である。
図2】本実施形態の開放位置にある車両用ドアハンドル装置の概念図である。
図3図1のIII-III線断面図(概念図)である。
図4図1のIV-IV線断面図(概念図)である。
図5】本実施形態の全開状態のストッパ装置の断面を示す概念図である。
図6】本実施形態の把持状態のストッパ装置の断面を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態として、本発明の一実施形態である車両用ドアハンドル装置(以下、「ドアハンドル装置」と略称する)1を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、本発明は、下記実施例の他、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の形態で実施することができる。本実施形態のドアハンドル装置1は、車両前方にヒンジを持つ片ヒンジタイプのフラッシュドアハンドルである。
【0011】
図1及び図2に示すように、ドアハンドル装置1は、車両のドア(サイドドア)90の外側に設けられている。ドア90の表面は、ドアパネル9で形成されている。ドアハンドル装置1のハンドル部材2は、駆動装置3の駆動力により、ドアパネル9から突出する。具体的に、図3及び図4に示すように、ドアハンドル装置1は、ハンドル部材2と、駆動装置3と、収容部材4と、クッション部材5と、ストッパ装置6と、を備えている。
【0012】
ハンドル部材2は、長手方向一端部(前端部)に設けられた回転軸2aを中心に、格納位置から突出位置を介して開放位置まで回動可能に構成されている。格納位置は、ドアパネル9の表面と面一になる位置である。突出位置は、ドアパネル9から車幅方向外側に突出した位置である。開放位置は、ドア90が開く位置である。開放位置は、ドア90が開錠される位置ともいえる。ハンドル部材2とドアパネル9との為す角度は、格納位置、突出位置、開放位置の順に大きくなる。ハンドル部材2は、格納位置から突出位置まで駆動装置3により回動させられる。ハンドル部材2は、突出位置から開放位置までユーザの力により回動させられる。ハンドル部材2は、ハンドルレバーとも呼ばれ、主に金属で形成されている。ハンドル部材2の位置について、図1の位置が格納位置を表し、図2の位置が開放位置を表している。突出位置は、格納位置と開放位置との間に存在する。ハンドル部材2は、格納位置と開放位置との間を回動可能に構成されている。
【0013】
ハンドル部材2は、所定のタイミングで、後述するスプリング2bの力により、突出位置から格納位置に戻る。また、例えば無人で停止している車両に対して、その車両の鍵を持ったユーザが車両に接近すると、鍵から出力される無線信号により駆動装置3が作動する。これにより、格納位置にあるハンドル部材2は、突出位置まで回動する。ユーザが突出位置にあるハンドル部材2を把持して開放位置まで回動させると、ラッチ機構(図示略)が作動し、ドア90が開く状態となる。乗車後、ユーザがドアを閉めると、駆動装置3の力がなくなり、ハンドル部材2は、スプリング2bの力により格納位置に戻される。
【0014】
ハンドル部材2は、表面部21と、本体部22と、延長部23と、を備えている。表面部21は、ハンドル部材2の表面(外面)を形成している部分である。表面部21は、板状部材であって、ハンドル部材2が格納位置にある際に、ドアパネル9と面一になる部分である。格納位置において、表面部21の外縁とドアパネル9との間には、所定の隙間が形成されている。この隙間は、作動用の隙間であって、ドアパネル9がハンドル部材2の回動の妨げにならないように設計されている。図4には上下方向の隙間(建付け隙)が表されている。表面部21は、本体部22の車幅方向外側に連結されている。
【0015】
本体部22は、表面部21の車幅方向内側に配置されている。本体部22と表面部21とは一体的に連動する。本体部22の長手方向一端部には、回転軸2aが配置されている。換言すると、回転軸2aは、本体部22のうち前方部分に配置されている。本実施形態において、長手方向は車両の前後方向に相当する。つまり、長手方向一方側は前方に相当し、長手方向他方側は後方に相当する。本体部22の前後方向の幅は、表面部21の前後方向の幅に対応している。
【0016】
回転軸2aは、上下方向に延び、例えばドア90内の構造物(図示略)に保持されている。回転軸2aには、ハンドル部材2を格納位置に向けて付勢するスプリング2bが設けられている。スプリング2bは、例えばトーションスプリングである。スプリング2bは、図3において、回転軸2aを中心に、反時計回りに本体部22を付勢(押圧)する。
【0017】
本体部22は、軸保持部221、グリップ部222、及び中央部223を備えている。軸保持部221は、長手方向一端部(前端部)に位置し、回転軸2aを保持する部分である。このように、車両前方側にヒンジが設けられている。グリップ部222は、長手方向他端部(後端部)に位置し、突出位置においてユーザが把持可能に形成されている。中央部223は、長手方向中央部に位置し、軸保持部221とグリップ部222とを接続している部分である。
【0018】
グリップ部222の車幅方向の長さは、軸保持部221及び中央部223の車幅方向の長さよりも小さい。グリップ部222の車幅方向内側の端面222aは、中央部223の車幅方向内側の壁部223aよりも車幅方向外側に位置している。これにより、ハンドル部材2が突出位置にある際に、ユーザはグリップ部222に指を引っ掛けることができる。なお、中央部223の前後直交断面は、車幅方向外側に開口した溝形状となっている(図4参照)。前後直交断面は、前後方向に直交する面で対象物を切断した断面である。
【0019】
軸保持部221には、回転軸2aから車幅方向内側に延びるように、レバー状の伝達部材24が設けられている。伝達部材24は、回転軸2aの径方向に延びている。伝達部材24が回転軸2aを中心に回動すると、それに連動してハンドル部材2が回転軸2aを中心に回動する。図3において、駆動装置3により機構部31が右側に移動すると、伝達部材24及びハンドル部材2は時計回りに回動する。このように、本体部22は、長手方向一端部に回転軸2aを保持する軸保持部221を有するとともに、長手方向他端部を含む部分に突出位置においてユーザが把持可能に形成されたグリップ部222を有する。
【0020】
延長部23は、グリップ部222から車幅方向内側に突出している。延長部23は、グリップ部222の上壁部が車幅方向内側に延長されたように、形成されている。つまり、延長部23は、グリップ部222の上壁部から連続して車幅方向内側に延びている。本実施形態の延長部23は、本体部22の一部からも車幅方向内側に延びている。延長部23は、グリップ部222を含む部分に形成されている。延長部23の車幅方向の内端部は、中央部223の車幅方向内側の壁部223aよりも車幅方向内側に位置している。延長部23の車幅方向の内端部は、後述する本体収容部41の車幅方向内側の壁部41aよりも車幅方向内側に位置している。延長部23は、車幅方向及び前後方向に延びる平板状に形成されている。
【0021】
延長部23は、突出位置において、グリップ部222の車幅方向内側の端面222aを覆うように、グリップ部222の上部から車幅方向内側に突出している。延長部23は、突出位置においてユーザが上方からグリップ部222の端面222aを目視できないように、端面222aを隠す機能を備えている。これにより、ハンドル部材2が突出位置にある際、ユーザは、ハンドル部材2を上方からでなく下方から把持するように促される。つまり、グリップ部222は、ユーザによりハンドル部材2の下方から把持されるようになる。
【0022】
この構成により、例えば、ユーザがハンドル部材2を上方から握りながらドア90を閉めることが防がれ、機構部31に大きな負荷が加わることが防がれる。また、延長部23が存在することで、突出位置にあるハンドル部材2に、通行人のカバン等が引っかかることを抑制することができる。
【0023】
駆動装置3は、ハンドル部材2を格納位置から突出位置まで回動させる装置である。駆動装置3は、例えば電気モータである。駆動装置3は、機構部31を介して伝達部材24に動力を付与する。駆動装置3は、伝達部材24を回動させ、ハンドル部材2を回動させる。駆動装置3は、機構部31に上記とは反対の力を加えることで、ハンドル部材2を突出位置から格納位置まで回動させることもできる。
【0024】
機構部31は、例えば複数のギヤを含んで構成されており、駆動装置3の動力を伝達部材24に伝達する。機構部31と伝達部材24とは、係合している。機構部31が駆動装置3により図3の右方に移動することで、伝達部材24の先端部が右方に移動し、ハンドル部材2が格納位置から突出位置まで回動する。駆動装置3は、制御装置7からの指令に基づいて、ハンドル部材2を格納位置と突出位置との間で移動させる。制御装置7は、例えばECUであって、鍵の無線信号を受信するように構成されている。駆動装置3が機構部31に力を付与しないことで、ハンドル部材2は、スプリング2bにより格納位置に戻される。ハンドル部材2を突出位置から格納位置まで移動させる際、制御装置7は、例えば、駆動装置3への電力供給を停止する。
【0025】
収容部材4は、ドアパネル9の車幅方向内側に配置され、格納位置にあるハンドル部材2を収容する。収容部材4は、板状部材により、車幅方向外側に開口した容器状に形成されている。収容部材4は、ドアパネル9の溝形成部ともいえる。収容部材4は、ハンドル部材2から離間している。収容部材4は、格納位置において、ハンドル部材2の本体部22及び延長部23を全体的に覆うように構成されている。収容部材4は、本体収容部41と、延長収容部42と、を備えている。
【0026】
本体収容部41は、ハンドル部材2の本体部22を収容する部分である。本体収容部41のうち伝達部材24に対応する部分には、伝達部材24が前後方向に移動できるように、貫通窓が形成されている。本体収容部41の車幅方向内側の壁部41aには、クッション部材5が設置されている。クッション部材5は、衝撃を吸収する弾性部材であって、本実施形態ではゴム部材である。クッション部材5は、収容部材4に設けられ、格納位置にあるハンドル部材2に当接して、ハンドル部材2を位置決めする。クッション部材5は、壁部41aに設けられた貫通孔に嵌合されている。ハンドル部材2の中央部223は、格納位置において、クッション部材5と当接する。本体収容部41の後端部には、車幅方向内側に延びるように配置されたキーシリンダ8が設置されている。
【0027】
延長収容部42は、本体収容部41から車幅方向内側に突出し、ハンドル部材2の延長部23を収容する部分である。延長収容部42は、壁部41aの上端部から車幅方向内側に延びている。延長収容部42は、車幅方向外側に開口がある容器状に形成されている。延長収容部42の内部空間と本体収容部41の内部空間とは連通している。本体部22と延長部23とは、収容部材4内を一体的に移動する。
【0028】
延長収容部42と延長部23とは、互いに接触しないように設計されている。つまり、延長部23と延長収容部42とは、延長部23の位置によらず、離間している。なお、図示されていないが、ハンドル部材2の各部、及び収容部材4の各部は、互いに接続されている。
【0029】
(ストッパ装置)
ストッパ装置6は、収容部材4の延長収容部42内に設けられている。図5及び図6に示すように、ストッパ装置6は、第1把持部材615を含む把持機構部材61と、第2把持部材62と、を備えている。ストッパ装置6は、ハンドル部材2が格納位置にある場合に、第1把持部材615及び第2把持部材62により延長部23を上下から挟み込むように構成されている。ストッパ装置6は、ハンドル部材2が格納位置以外の位置にある場合に、第1把持部材615と第2把持部材62とが離間することで延長部23の挟み込みが解除されるように構成されている。つまり、ハンドル部材2が格納位置以外の位置にある場合に、第1把持部材615と第2把持部材62とは延長部23から離間し、延長部23は開放される。本実施形態において、第1把持部材615と第2把持部材62との離間距離は、ハンドル部材2が格納位置から突出位置に向かうにつれて大きくなる。
【0030】
本実施形態の把持機構部材61は、全体として、L字状に形成されている。把持機構部材61は、車幅方向に延びる回転軸(「ストッパ回転軸」に相当する)61aを中心に、回転可能に構成されている。回転軸61aは、L字状の把持機構部材61の角部分に設けられている。把持機構部材61は、第1腕部611と、第2腕部612と、軸設置部613と、クッションゴム614と、第1把持部材615と、スプリング616と、を備えている。
【0031】
軸設置部613は、第1腕部611と第2腕部612とを接続している。軸設置部613には、把持機構部材61の回転軸61aが設置されている。第1腕部611と第2腕部612とは、軸設置部613から互いに交差する方向に延びている。本実施形態では、第1腕部611と第2腕部612とは、軸設置部613から直交するように延びている。第1腕部611、第2腕部612、及び軸設置部613によりL字状が形成されている。
【0032】
概して、第1腕部611は回転軸61aから下方に延び、第2腕部612は回転軸61aから車幅方向外側に延びている。第1腕部611は、第2腕部612に対して、下方且つ車幅方向内側に位置している。第1腕部611及び第2腕部612は、軸設置部613に設置された回転軸61aを中心に、一体的に回動する。
【0033】
第1腕部611は、板状に形成されている。第1腕部611の一方面は、車幅方向外側を向いている。第1腕部611の他方面には、板状のクッションゴム614が固定されている。クッションゴム614は、延長収容部42(壁部42a)に対向するように第1腕部611に設けられている。クッションゴム614は、ハンドル部材2が格納位置にある場合、延長収容部42の車幅方向内側の壁部42aに当接する。つまり、クッションゴム614は、格納位置において延長収容部42に当接すように、第1腕部611に設けられている。クッションゴム614は、衝撃を吸収する弾性部材、すなわちクッション部材の一例である。
【0034】
第2腕部612は、板状に形成されている。第2腕部612の一方面は、ハンドル部材2が格納位置にある場合、下方を向いている。第1把持部材615は、第2腕部612の一方面から突出している。第1把持部材615は、ハンドル部材2が格納位置にある場合、延長部23の上面に当接している。第1腕部611、第2腕部612、軸設置部613、及び第1把持部材61は、例えば、1つの金属部材又は樹脂部材であって、一体成型されている。
【0035】
スプリング616は、第1把持部材615と第2把持部材62とが離間する方向に、把持機構部材61を付勢している。スプリング616は、付勢部材(電力不要)の一例である。スプリング616は、図5及び図6における反時計方向に把持機構部材61を付勢している。スプリング616は、例えばトーションスプリングであり、回転軸61aに対して設けられている。
【0036】
第2把持部材62は、延長収容部42の下壁部42bから上方に突出している。第2把持部材62は、ハンドル部材2が格納位置にある際、延長部23を介して第1把持部材615に対向する位置に形成されている。第2把持部材62は、直方体状に形成されている。ハンドル部材2が格納位置にある際、第2把持部材62は、延長部23と当接している。格納位置において、第1把持部材615が延長部23の上下方向の一方面(上面)に当接し、第2把持部材62が延長部23の上下方向の他方面(下面)に当接する。
【0037】
第2把持部材62の上面は、ハンドル部材2が突出位置にある際の延長部23の下面の位置よりも下方にある。この位置関係は、ハンドル部材2の上下方向のガタをある程度許容するように設計されている。これにより、延長部23が移動する場面において、第2把持部材62が延長部23の移動の妨げになることが抑制される。
【0038】
(ストッパ装置の動作)
図5に示すように、延長部23が第1腕部611に当接していない状態では、スプリング616によって、第2腕部612は延長収容部42の上面に押し当てられている。この状態を全開状態とも称する。全開状態において、第1把持部材615の突出端面は、下方及び車幅方向外側を向いている。全開状態において、第1把持部材615の突出端面は、延長部23の上面よりも上方に位置している。全開状態において、第2把持部材62の上面は、延長部23の下面よりも下方に位置している。全開状態において、第1把持部材615と第2把持部材62とは、最も離間した状態となる。全開状態において、第1把持部材615及び第2把持部材62は、延長部23と接触しないように設計されている。全開状態において、延長部23、第1把持部材615、及び第2把持部材62のそれぞれの上下方向の位置は、ハンドル部材2の上下方向のガタを考慮して設計されている。このように、全開状態において、延長部23とストッパ装置6との間には、作動隙が形成されている。
【0039】
ハンドル部材2が少なくとも突出位置から開放位置までにある場合、ストッパ装置6は全開状態となる。例えば、ハンドル部材2が格納位置から突出位置に向かう途中で、延長部23と第1腕部611とが離間し、ストッパ装置6は全開状態となる。
【0040】
ハンドル部材2が突出位置から格納位置に移動する際、延長部23は、全開状態の第1把持部材615と第2把持部材62との間を通りながら車幅方向内側に移動する。ハンドル部材2の格納位置への移動に伴い、延長部23は、把持機構部材61の第1腕部611に当接し、第1腕部611を車幅方向内側に押圧する。これにより、把持機構部材61は、スプリング616の付勢力に逆らって、回転軸61aを中心に回転する。つまり、把持機構部材61は、第1把持部材615が第2把持部材62に接近する方向(以下、「把持方向」ともいう)に回転する。把持機構部材61は、図5及び図6における時計回りに回転する。回転軸61aは、車幅方向に延び、延長収容部42に保持されている。
【0041】
把持機構部材61の把持方向への回転により、第1把持部材615が延長部23に当接する。さらに延長部23が第1腕部611を押圧することで、第1把持部材615が延長部23を下方に押圧し、延長部23が第2把持部材62とも当接する。これにより、延長部23が第1把持部材615と第2把持部材62とにより挟まれて固定される。この状態を把持状態ともいう。
【0042】
延長部23は第1把持部材615の押圧により若干下方に移動するため、把持状態においてハンドル部材2は若干傾く。ハンドル部材2は、回転軸2aと軸保持部221との隙間等により、若干傾斜することができる。このハンドル部材2の傾きを考慮して、格納位置においてハンドル部材2がドアパネル9と面一になるように、ハンドル部材2の位置等が設計されている。
【0043】
把持状態において、クッションゴム614は、延長収容部42の壁部42aに当接している。延長部23は、第1腕部611を押圧してクッションゴム614を潰すように力を加える。本実施形態において、クッションゴム614は、把持状態になる少し手前で、壁部42aに当接する。延長部23は、クッションゴム614の変形に伴い、第1把持部材615と第2把持部材62とにより挟まれる。これにより、延長部23を含むハンドル部材2は、所定の位置に位置決めされる。ストッパ装置6は、位置決め装置ともいえる。
【0044】
反対に、ハンドル部材2が格納位置から突出位置に移動する際、延長部23は車幅方向外側に移動する。第1腕部611は、スプリング616の力により、延長部23に追従して車幅方向外側に移動する。把持機構部材61は、スプリング616により、第1把持部材615と第2把持部材62とが離間する方向に回転する。延長部23は、車幅方向外側及び若干上方に移動しつつ、第1把持部材615及び第2把持部材62から離間する。図5に示すように、延長部23の車幅方向外側への移動に伴い、延長部23が第1腕部611から離間し、第2腕部612が延長収容部42の上面に当接する。
【0045】
把持機構部材61は、ハンドル部材2が突出位置から格納位置に回動する際、第1腕部611が延長部23により押圧されて車幅方向内側に移動することで、第2腕部612が回転軸61aを中心に回動して第1把持部材615を延長部23に接近させるように構成されている。また、把持機構部材61は、ハンドル部材2が格納位置から突出位置に回動する際、延長部23の車幅方向外側への移動に伴い、スプリング616により第2腕部612が回転軸61aを中心に回動して第1把持部材615を延長部23から離間させるように構成されている。
【0046】
本実施形態によれば、ハンドル部材2が格納位置にある場合、後端部に位置する延長部23は、第1把持部材615及び第2把持部材62によって挟まれて位置決めされる。これにより、上下方向のガタが発生しやすいハンドル部材2の後端部は、格納位置において一定の位置に配置される。ハンドル部材2が格納位置以外の位置にある場合、把持機構部材61及び第2把持部材62が離間しているため、延長部23はストッパ装置6に引っかかることなく、スムーズに移動することができる。本実施形態によれば、ハンドル部材2が突出位置から格納位置に移動した際の、ハンドル部材2の上下方向のガタを抑制することができる。第1把持部材615と第2把持部材62とが延長部23を上下から挟むことで、ハンドル部材2の上下方向のズレを直接的に抑制することができる。
【0047】
本実施形態のストッパ装置6は、把持機構部材61を備えているため、スプリング616の力で全開状態になり、延長部23の押圧により把持状態となる。このため、ストッパ装置6に対して電力供給及び制御の必要がなく、本構成は、省電力化及び構成のシンプル化の面で有利である。また、第1腕部611及び第2腕部612が互いに直交するように延びているため、ストッパ装置6のコンパクト化が可能となる。
【0048】
(その他)
本発明は、上記実施形態に限られない。例えば、延長部23は、グリップ部222の下部(下壁部)から車幅方向内側に突出してもよい。また、延長部23は、例えば、グリップ部222の上下方向の中央部分から車幅方向内側に突出してもよい。また、第1把持部材615及び第2把持部材62の少なくとも一方は、電力により作動するように構成されてもよい。例えば、第1把持部材615及び第2把持部材62の少なくとも一方は、電力で作動する駆動源(例えばモータ等)により、上下方向に移動可能に構成されてもよい。この場合、駆動源は、制御装置7により制御されてもよい。例えば第1把持部材615に対して駆動源が設けられた場合、第1把持部材615は、制御装置7の指令により、格納位置において第2把持部材62に接近し、ハンドル部材2が格納位置から突出位置に移動する際には、第2把持部材62から離間する。このように、ストッパ装置6は、電動式であってもよい。
【0049】
また、ストッパ装置6は、図5及び図6に対して上下反対に配置されてもよい。また、ハンドル部材2の回転軸2a(ヒンジ)は、本体部22の後端部に配置されてもよい。この場合、グリップ部222は、本体部22の前端部を構成する。また、本実施形態の説明で用いられた用語において、例えば、「回動」、「回転」、「移動」は、概ね同様の意味であり、適宜置換することができる。
【符号の説明】
【0050】
1…車両用ドアハンドル装置、2…ハンドル部材、21…表面部、22…本体部、221…軸保持部、222…グリップ部、223…中央部、23…延長部、2a…回転軸、3…駆動装置、4…収容部材、41…本体収容部、42…延長収容部、6…ストッパ装置、61…把持機構部材、611…第1腕部、612…第2腕部、613…軸設置部、614…クッションゴム(クッション部材)、615…第1把持部材、616…スプリング(付勢部材)、61a…回転軸(ストッパ回転軸)、62…第2把持部材、9…ドアパネル、90…ドア。
図1
図2
図3
図4
図5
図6