(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025018610
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】スポットブラスト装置
(51)【国際特許分類】
B24C 9/00 20060101AFI20250130BHJP
B24C 5/04 20060101ALI20250130BHJP
B24C 1/00 20060101ALI20250130BHJP
B24C 3/06 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
B24C9/00 G
B24C5/04 B
B24C1/00 Z
B24C9/00 L
B24C3/06 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023122476
(22)【出願日】2023-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】520381218
【氏名又は名称】株式会社Splice-Lab
(71)【出願人】
【識別番号】511211368
【氏名又は名称】株式会社特殊高所技術
(71)【出願人】
【識別番号】518208978
【氏名又は名称】極東メタリコン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】片山 英資
(72)【発明者】
【氏名】山本 正和
(72)【発明者】
【氏名】中田 直人
(72)【発明者】
【氏名】小寺 悟史
(72)【発明者】
【氏名】小寺 健史
(57)【要約】
【課題】構造物の表面の防食被膜のあらゆる部位に発生した局部的な腐食部位を完全に密閉化した状態でブラスト処理及びブラスト処理で腐食部位に発射される研削材や発生する防食被膜の粉塵を回収することができるスポットブラスト装置を提供する。
【解決手段】箱型の筐体に開口面を有し、開口面の対向面にブラストホース挿入部とバキュームホース接続部とを設け、筐体の対向する二側面を左右2枚のサイドプレートで筐体を所定角度の範囲内で回動自在に挟持し、開口面で構造物表面に発生した局部的な腐食部位を囲繞して設置されるスポットブラスト装置であって、筐体の内部空間は、ブラスト処理を行うブラスト空間と、バキュームホースにより、研削材や粉塵を一緒に筐体の外部に排出するバキューム空間と、に内部仕切り板により区画されていることを特徴とするスポットブラスト装置とした。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱型の筐体に開口面を有し、前記開口面の対向面にブラストホース挿入部とバキュームホース接続部とを設け、前記筐体の対向する二側面を左右2枚のサイドプレートで前記筐体を所定角度の範囲内で回動自在に挟持し、前記開口面で構造物表面に発生した局部的な腐食部位を囲繞して設置されるスポットブラスト装置であって、
前記筐体の内部空間は、内部仕切り板により
前記ブラストホース挿入部に挿入されたブラストホースの先端部から高速で噴出された研削材により前記腐食部位のブラスト処理を行うブラスト空間と、
前記バキュームホース接続部に接続されたバキュームホースにより、前記ブラスト空間に噴出された研削材、前記腐食部位から剥離された錆びや防食被膜の欠片からなる粉塵を一緒に筐体外に排出するバキューム空間と、に区画されていることを特徴とするスポットブラスト装置。
【請求項2】
前記ブラストホース挿入部に前記筐体内部に外気を吸気するための吸気手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載のスポットブラスト装置。
【請求項3】
前記開口面が前記腐食部位へ密着するように、前記開口面の四辺に弾性体よりなる吸着シートを配設したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のスポットブラスト装置。
【請求項4】
前記開口面にブラスト処理をする範囲を制限する制限プレートを着脱自在としたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のスポットブラスト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポットブラスト装置に関し、詳しくは、構造物の表面の防食被膜の補修作業において、防食皮膜に局部的に発生している腐食部位の素地調整処理を行うためのスポットブラスト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路や鉄道などの橋梁の主要部(特に橋桁部分)の構造物は、I型、H型や箱型の鋼材が強度、加工性、経済性に優れるという特性を有するため、鉄筋コンクリートと組みあわせて建造されている。このような構造物の表面(露出面)は、防食や防錆のために各種樹脂製(エポキシ樹脂、フッ素樹脂等)塗料による塗装や金属(亜鉛、アルミニウム、マグネシウム、およびそれらの合金等)の被膜を形成する金属溶射により防食被膜が形成されている。
【0003】
ところが、構造物の表面の防食被膜は経年劣化により腐食や錆による腐食部位が発生し、この腐食部位が防食被膜の全体に広がり、防食被膜の機能が低下するため定期的な補修作業が必要となる。また、構造物の表面の防食被膜の腐食部位の補修作業では、構造物の表面に発生した腐食部位を含む防食被膜を全て除去した後、再塗装や再金属溶射をすることで補修作業を行うことが一般的であった。このため、構造物全体の下部に縦横の鋼管や足場板から形成された大掛かりな足場を設置し、この足場板上で作業者が構造物の表面の防食被膜の補修作業を行っていた。
【0004】
ところが、構造物の表面に形成されている防食被膜の全体が完全に経年劣化して腐食部位となっているケースは少なく、健全な防食被膜のなかに局部的(スポット的)に腐食部位が発生している場合も多い。この場合は、局部的に発生した腐食部位のみ補修作業を行うことで、構造物の表面全体の防食被膜を健全に保つことができる。つまり、従来のように大掛かりな足場を設置する必要はなく、腐食部位のみの補修作業が行える環境を整えるだけでよい。一般に、構造物の表面(露出面)の防食被膜の補修作業は、まず、代表的な素地調整処理として、防食被膜の腐食部位に研削材を高速で吹き付けて清浄(錆や劣化した被膜の除去)するブラスト処理(素地調整処理)を行い、その後、ブラスト処理で清浄した後の構造物の表面に再塗装や再金属溶射をすることで行われる。
【0005】
このとき、ブラスト処理によって構造物の表面の腐食部位に高速で吹き付けられた研削材やこの研削材で剥がされた腐食部の錆びや防食被膜の粉塵が大量に飛散する。この飛散する粉塵(塗料や金属)には有害物質(例えば、鉛等)が含有されている場合があり、作業者の安全や周囲の環境保全に配慮する必要がある。また、近年では、一度ブラスト処理で使用された研削材を錆びや剥離された防食被膜からなる粉塵と一緒に回収し、研削材と粉塵とを分離した後、回収した研削材を再利用(リサイクル)することが資源保護のために行われている。
【0006】
このため、ブラストホースの先端のノズルヘッドに、研掃材の噴射ノズルとバキュームホースとを一体に構成し、噴射ノズルから研掃材を噴射して構造物表面を研掃すると同時に、噴射された研掃材と構造物表面から剥離した粉塵を、バキュームホースにより回収して研掃材と粉塵等を分離した後、回収した研掃材を再利用(リサイクル)可能とした構造物表面の研掃システムが開示されている。(特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の構造物表面の研掃システムによれば、構造物の平面に発生した腐食部位においては、ノズルヘッドで腐食部位を密閉してブラスト作業とブラスト作業後における研削材や粉塵の回収を同時に行うことができる。しかしながら、腐食部位は必ずしも構造物の平面に発生するとは限らない。例えば、構造物の角部や構造物の幅の狭い厚みの箇所にも腐食部位が発生する場合がある。このような箇所に発生した腐食部位は、特許文献1に記載のノズルヘッドでは腐食部位を完全に密閉することができず、非密閉状態でブラスト処理を行うと、研削材や粉塵がノズルヘッドから漏れて周囲に飛散する恐れがある。これでは、作業員の安全や周囲の環境保全を担保することができない。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために、構造物の表面の防食被膜のあらゆる部位に発生した局部的な腐食部位を完全に密閉した状態でブラスト処理及びブラスト処理で腐食部位に発射される研削材や発生する防食被膜の粉塵を回収することができるスポットブラスト装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、箱型の筐体に開口面を有し、前記開口面との対向面にブラストホース挿入部とバキュームホース接続部とを設け、前記筐体の対向する二側面を左右2枚のサイドプレートで前記筐体を所定角度の範囲内で回動自在に挟持し、前記開口面で構造物表面に発生した局部的な腐食部位を囲繞して設置されるスポットブラスト装置であって、前記筐体の内部空間は、内部仕切り板により、前記ブラストホース挿入部に挿入されたブラストホースの先端部から高速で噴出された研削材により前記腐食部位のブラスト処理を行うブラスト空間と、前記バキュームホース接続部に接続されたバキュームホースにより、前記ブラスト空間に噴出された研削材、前記腐食部位から剥離された錆びや防食被膜の欠片からなる粉塵を一緒に前記筐体の外部に排出するバキューム空間と、に区画されていることを特徴とするスポットブラスト装置とした。
【0011】
また、前記ブラストホース挿入部に前記筐体内部に外気を吸気するための吸気手段を備えたことを特徴とする。
【0012】
また、前記開口面が前記腐食部位へ密着するように、前記開口面の四辺に弾性体よりなる吸着シートを配設したことを特徴とする。
【0013】
また、前記開口面にブラスト処理をする範囲を制限する制限プレートを着脱自在としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、箱型の筐体に開口面を有し、前記開口面との対向面にブラストホース挿入部とバキュームホース接続部とを設け、前記筐体の対向する二側面を左右2枚のサイドプレートで前記筐体を所定角度の範囲内で回動自在に挟持し、前記開口面で構造物表面に発生した局部的な腐食部位を囲繞して設置されるスポットブラスト装置であって、前記筐体の内部空間は、内部仕切り板により、前記ブラストホース挿入部に挿入されたブラストホースの先端部から高速で噴出された研削材により前記腐食部位のブラスト処理を行うブラスト空間と、前記バキュームホース接続部に接続されたバキュームホースにより、前記ブラスト空間に噴出された研削材、前記腐食部位から剥離された錆びや防食被膜の欠片からなる粉塵を一緒に前記筐体の外部に排出するバキューム空間と、に区画されていることを特徴とするスポットブラスト装置である。
【0015】
すなわち、本発明のスポットブラスト装置は、構造物の表面(露出面)の防食被膜に発生した局部スポット的な腐食部位を、箱型の筐体の開口面により囲繞するように覆って設置される。ブラストホース挿入部には、研削材を腐食部位に噴出するブラストホースが挿入され、バキュームホース接続部には、ブラストホースから腐食部位に高速で吹き付けられる研削材と、この研削材によるブラスト処理で剥離される腐食部位の錆びや防食被膜の欠片からなる粉塵とを一緒に回収するバキュームホースが連結される。
【0016】
そして、ブラスト処理を行う場合は、ブラストヘッドの先端からスポットブラスト装置の筐体の開口面で囲繞された腐食部位に圧縮空気とともに研削材が高速で吹き付けられて、腐食部位のブラスト処理(素地調整処理)が行われる。また、バキュームホースによる吸引も同時に作動し、腐食部位に吹き付けられた研削材やこの研削材で剥がされた腐食部の錆びや防食被膜からなる粉塵がバキュームホースで吸引されてスポットブラスト装置の外部に排出される。そして、バキュームホースで回収された粉塵を含む研削材は、研削材に付着している粉塵を分離した後再利用(リサイクル)される。
【0017】
構造物がH形鋼であり、上下フランジとこの上下フランジを連結するウェブとの連結部に発生したスポット的な腐食部位に対してブラスト処理を行う場合、仮に、下フランジとウェブとの連結部に腐食部位が発生したとすると、スポットブラスト装置の筐体を挟持している左右2枚のサイドプレートの下面を下フランジに設置し、サイドプレートの一側面をウェブに当接するように設置し、スポットブラスト装置の開口面が下フランジとウェブとの連結部と対向するように所定角度(例えば、45度)回動させる。これにより、筐体内に挿入されたブラストホースの先端(ブラストヘッド)と下フランジとウェブの連結部(角部)に発生した腐食部位とが対向した状態でスポットブラスト装置を設置することができ、下フランジとウェブの連結部(角部)に発生した腐食部位を効果的に研削してブラスト処理を行うことができる。
【0018】
上記構成により、構造物の表面に発生したスポット的な腐食部位が、平面だけではなく構造物の連結部(角部)に発生した場合でも、ブラストホースの先端部から筐体内に射出される高速の研削材や研削材で剥がされた腐食部位の錆びや防食被膜の欠片からなる粉塵を周囲に飛散させることなく、密閉された筐体内でブラスト処理を行うことができる。つまり、構造物の表面に発生した局部的な腐食部位の補修作業を行う場合に、構造物の表面のあらゆる個所(平面、角部等)に発生した局部的な腐食部位に着脱が容易であり、さらに、ブラスト処理を行う箇所を完全密閉化できるスポットブラスト装置とすることができる。
【0019】
スポットブラスト装置の筐体の内部空間は、内部仕切り板により、ブラストホース挿入部に挿入されたブラストホースの先端部から高速で噴出された研削材により腐食部位のブラスト処理(素地調整処理)を行うブラスト空間と、バキュームホース接続部に接続されたバキュームホースにより、ブラスト空間に噴出された研削材及び腐食部位から剥離された錆びや防食被膜の欠片からなる粉塵を一緒にブラスト装置の筐体外に排出するバキューム空間とに区画されている。ブラスト空間で腐食部位に吹き付けられた研削材やこの研削材で剥がされた腐食部の錆びや防食被膜からなる粉塵は、バキュームホースで吸引されて筐体の外部に排出される。このように、内部仕切り板で筐体内部をブラスト空間とバキューム空間とに区画することで、ブラスト空間において、腐食部位に高速で吹き付けられる研削材の勢いをバキュームホースの吸引力で削ぐことなく、腐食部位のブラスト処理(素地調整処理)が確実に行えるようにしている。
【0020】
また、ブラストホース挿入部には、筐体の内部に外気を吸気できる吸気手段を備えている。これにより、腐食部位へのブラスト処理(素地調整処理)後に筐体内部空間の真空状態を解除してスポットブラスト装置を次の腐食部位に容易に移動させることができる。
【0021】
本発明では、ブラストホースを介して筐体内に高速で射出される研削材の噴出圧力よりも、バキュームホースを介して筐体外に排出される研削材や粉塵の吸引圧力の方が若干高圧に設定されている。これにより、ブラスト処理中の筐体内部は負圧状態となり、筐体の開口面が構造物の腐食部位に密着する。そして、そのままでは筐体の内部が外部より負圧であるため、筐体の開口面の構造物への密着状態が維持され、ブラスト処理終了後にスポットブラスト装置を次の腐食部位に容易に移動させることができない。このため、ブラストホース挿入部に筐体の内部に外気を吸気するための吸気手段を設けることで、筐体内部の負圧状態を解消して、次の腐食部位へのスポットブラスト装置の移動を容易とすることができる。
【0022】
また、開口面と構造物の表面との密着度を高めるために、開口面の四辺を囲繞するように弾性体よりなる吸着シートを設けている。上述したように、ブラスト処理中の筐体の内部は負圧となるため、この負圧により開口面は構造物の表面に押し付けられるように密着する。このとき、開口面を囲繞するように配設された吸着シートが変形し、さらに開口面と構造物の表面との密着度を高めることができ、筐体外部への研削材や研削材で剥がされた腐食部位の錆びや防食被膜の欠片からなる粉塵が漏れることを防止することができる。
【0023】
また、筐体の開口面にブラスト処理をする範囲を制限する制限プレートを着脱自在としている。構造物がH形鋼で上下フランジは所定厚みがあり、さらに、この上下フランジの厚みの部位にスポット的な腐食部位が発生する場合がある。この場合は、筐体の開口面に上下フランジの厚みの部位だけ開放した制限プレートを設置する。そして、この制限プレートを取付けた開口面を、上下フランジの厚みの部位に発生した腐食部位に設置してブラスト処理を行う。このように、上下フランジの厚みの部位だけ開放した制限プレートを用いてブラスト処理を行うことで、上下フランジの厚みの部位に発生した腐食部のみに研削材が発射され、その他の部位は制限プレートで覆われているため、筐体外部への研削材や研削材で剥がされた腐食部位の錆びや防食被膜の欠片からなる粉塵が漏れることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本実施形態のスポットブラスト装置の構成を説明する斜視図である。
【
図2】本実施形態のスポットブラスト装置へのサイドプレートの取り付けを示す斜視図である。
【
図3】本実施形態のスポットブラスト装置の構成及び設置状態を説明する斜視図である。
【
図4】本実施形態のスポットブラスト装置の
図3におけるA-A断面図である。
【
図5】本実施形態のスポットブラスト装置の回動を説明する斜視図である。
【
図6】本実施形態のスポットブラスト装置の
図5におけるB-B断面図である。
【
図7】本実施形態のスポットブラスト装置への吸着シートの取り付けを説明する図である。
【
図8】本実施形態のスポットブラスト装置のブラストホース挿入部の吸気口の開口・閉止を説明する図である。
【
図9】本実施形態のスポットブラスト装置の上下フランジ端部への取り付けを説明する図である。
【
図10】本実施形態のスポットブラスト装置の制限プレートを説明する図である。
【
図11】本実施形態のスポットブラスト装置の制限プレートの他の実施形態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、箱型の筐体に開口面を有し、前記開口面との対向面にブラストホース挿入部とバキュームホース接続部とを設け、前記筐体の対向する二側面を左右2枚のサイドプレートで前記筐体を所定角度の範囲内で回動自在に挟持し、前記開口面で構造物表面に発生した局部的な腐食部位を囲繞して設置されるスポットブラスト装置であって、前記筐体の内部空間は、内部仕切り板により、前記ブラストホース挿入部に挿入されたブラストホースの先端部から高速で噴出された研削材により前記腐食部位のブラスト処理を行うブラスト空間と、前記バキュームホース接続部に接続されたバキュームホースにより、前記ブラスト空間に噴出された研削材、前記腐食部位から剥離された錆びや防食被膜の欠片からなる粉塵を一緒に筐体外に排出するバキューム空間と、に区画されていることを特徴とするスポットブラスト装置に関するものである。
【0026】
以下、
図1~
図11を参照して、本発明におけるスポットブラスト装置の構成の実施形態の一例を説明する。
【0027】
本実施形態のスポットブラスト装置は、橋梁の主要部(特に橋桁部分)を構成する構造物の補修作業において、構造物の経年劣化により露出面(表面)の防食被膜に局部的に発生した腐食部位のブラスト処理(素地調整処理)に好適に用いられる。このブラスト処理は、ブラストホースから高速で噴出される研削材により腐食部位を清浄する処理(素地調整処理)である。なお、橋梁の主要部(特に橋桁部分)は、鋼材(例えば、H形鋼、I形鋼等)以外にも鉄筋コンクリートで構成されている場合もある。そして、このコンクリートも防食(防錆も含む)のために樹脂製(エポキシ樹脂、フッ素樹脂等)塗料による塗装が行われており、この防食塗装の表面に発生したスポット的な腐食部位の素地調整処理においても本実施形態のスポットブラスト装置を用いることができる。
【0028】
図1及び
図2に示すように、本実施形態のスポットブラスト装置1は、箱型の筐体10で構成され、筐体10の底面10Bを開口面とし、筐体10の上面10Aには、ブラストホース挿入部11が設けられ、上面10Aと連結する前面10Cとの連結角部には、バキュームホース接続部12が設けられている。筐体10の前面10Cを除く対向する側面10R、10Lは、左右2枚のサイドプレート20R、20Lによりそれぞれ挟持されている。なお、以下の説明では、前面10Cと対向する一側面を後面10Dとする。なお、箱型の筐体10は、素材として軽量の木材の板体、アクリル、プラスチック等が好適に用いられる。
【0029】
スポットブラスト装置1は、
図3に示すように、構造物40(例えば、H鋼)の露出面の防食被膜に発生したスポット的な腐食部位Fを、箱型の筐体10の開口面である底面10Bにより囲繞するように設置される。そして、ブラストホース挿入部11には、研削材を腐食部位に噴出するブラストホースBHの先端部のブラストヘッドBaが挿入され、バキュームホース接続部12には、腐食部位Fに圧縮空気とともに高速で吹き付けられた研削材Aと、この研削材Aで剥離された腐食部位の錆びや防食被膜の欠片からなる粉塵と一緒に筐体10の外部に排出するバキュームホースVHが連結される。このバキュームホースVHは、ダクト用固定バンドであるBバンドでバキュームホース接続部12の先端を外嵌することにより取り付けられている。
【0030】
ブラストホースBHの基端は、ブラストホースBHに圧縮空気を供給するエアコンプレッサCに連結され、この基端近傍で研削材Aを収容したブラストタンクT1から所定量の研削材AがブラストホースBHの圧縮空気に混入される。バキュームホースVHの基端は、筐体10内の腐食部位Fに吹き付けられた研削材Aと、研削材Aでブラスト処理された粉塵(剥離された腐食部位Fの錆びや防食被膜の欠片)を筐体10の外部に排出するための真空ポンプPが連結されている。バキュームホースVHで回収された粉塵を含む研削材Aは、回収タンクT2に貯留され、貯留された研削材Aは付着している粉塵を分離した後、再度ブラストタンクT1に供給されて再利用される。
【0031】
本実施形態のスポットブラスト装置1は、構造物40(例えば、H鋼)の露出面に発生したスポット的な腐食部位Fを筐体10の開口面である底面10Bにより覆って設置した後、作動スイッチ(図示せず)により作動させると、ブラストホースBHの先端部のブラストヘッドBaから腐食部位Fに研削材Aを噴出し、腐食部位Fのブラスト処理(素地調整処理)が行われる。そして、筐体10内の研削材Aとブラスト処理で発生した粉塵(剥離された腐食部位Fの錆びや防食被膜の欠片)は、バキュームホースVHにより筐体10の外部に排出されて回収される。すなわち、本実施形態のスポットブラスト装置1は、構造物40の防食被膜が施されている露出面に発生した局部的な腐食部位Fのブラスト処理を行うために用いられるものである。
【0032】
図2に示すように、サイドプレート20R、20Lは、一対のボルト21aとナット21bからなる中心軸21によりそれぞれ筐体10の対向する側面10R、10Lに取り付けられている。なお、中心軸21は、サイドプレート20R、20Lを側面10R、10Lに対して所定角度(例えば、45度)に回動自在に連結している。また、筐体10の対向する側面10R、10Lの略中央部には、一対のボルト22aとナット22bからなる可動軸22を突設している。可動軸22は、サイドプレート20R、20Lにそれぞれ設けられた可動溝23の摺動孔23aにボルト22aを挿通し、ボルト22aの先端部をナット22bと螺合することで筐体10の側面10R、10Lに固定される。摺動孔23aは、中心軸21の同心円状に所定幅を有する円弧状にサイドプレート20R、20Lを貫通して形成されている。摺動孔23aの幅は、ボルト22aの軸径より若干大きく形成されており、可動軸22は、ボルト22aとナット22bの螺合状態を緩めると、摺動孔23aに沿って可動できる。これにより、サイドプレート20R、20Lは、筐体10の側面10R、10Lに沿って垂直方向に所定角度(例えば、45度)変位可能としている。
【0033】
上記構成により、
図3又は
図6に示すような構造物40がH形鋼であって下フランジLFとウェブWとの連結部(角部)に発生した腐食部位Fのブラスト処理を行う場合、筐体10を挟持する左右2枚のサイドプレート20R、20Lの下面を下フランジLFに、サイドプレート20R、20Lの一側面をウェブWに当接するように設置し、筐体10の底面10Bの開口面が下フランジFLとウェブWの連結部と対向するように、筐体10を所定角度(例えば、45度)回動させる。これにより、ブラストヘッドBaから筐体10内に射出される研削材が、下フランジLFとウェブWの連結部(所謂、角部)に発生した腐食部位Fを効果的に研削してブラスト処理を行うことができる。
【0034】
また、
図4及び
図6に示すように、スポットブラスト装置1の筐体10の内部は、ブラストホース挿入部11とバキュームホース接続部12との間に内部仕切り板10Pが設けられている。この内部仕切り板10Pは、筐体10の内部空間をブラストホース挿入部11の下部のブラスト空間KBと、バキュームホース接続部12の下部のバキューム空間KVとに区画するための仕切り板である。内部仕切り板10Pは、筐体10の内部の上面10Aから底面10Bに垂直に、なおかつ、筐体10の対向する側面10R、10Lに接して設けられている。また、内部仕切り板10Pの垂直方向の下端は、筐体10の内部のブラスト空間KBとバキューム空間KVを連通するように、底面10Bから所定距離上方に設置されてブラスト空間KBとバキューム空間KVとの連通部KCを形成している。
【0035】
図4及び
図6に示すように、上記構成の筐体10の内部のブラスト空間KBにおいて、ブラストヘッドBaの先端から腐食部位Fに研削材Aが圧縮空気とともに高速で吹き付けられて、腐食部位Fのブラスト処理(素地調整処理)が行われる。ブラスト空間KBで腐食部位Fに吹き付けられた研削材Aやこの研削材Aで剥がされた腐食部位Fの錆びや防食被膜の破片等からなる粉塵は、内部仕切り板10Pの下部のバキューム空間KVへの連通部KCを経由して、バキュームホースVHで吸引されて筐体10の外部に排出される。このように、内部仕切り板10Pで筐体10の内部空間をブラスト空間KBとバキューム空間KVとに区画することで、ブラスト空間KBにおいて、腐食部位Fに高速で吹き付けられる研削材Aの勢いをバキュームホースVHの吸引力で削ぐことがない。つまり、内部仕切り板10Pにより、筐体10の内部をブラスト空間KBとバキューム空間KVに区画することで、腐食部位Fに高速で吹き付けられる研削材Aが腐食部位Fに到達する前にバキュームホースVHで筐体10の外部に排出されることを防止でき、確実な腐食部位Fのブラスト処理(素地調整処理)が実施できる。
【0036】
さらに、内部仕切り板10Pは、筐体10の前面10C側又は後面10D側にスライド自在に構成することもできる。これにより、ブラスト空間KB及びバキューム空間KVの空間の大きさを適宜拡大縮小することができる。つまり、ブラスト空間KBにおいてブラストヘッドBaの先端から腐食部位Fに噴出される研削材Aの噴出圧力やバキューム空間KVのバキュームホースVHによる吸引圧力に応じて、ブラスト空間KB及びバキューム空間KVを最適な大きさに調整できる。
【0037】
図1~
図4に示すように、本実施形態のスポットブラスト装置1の筐体10の底面10Bは、筐体10の前面10Cの下端部、後面10Dの下端部、対向する側面10R、10Lに取り付けられたサイドプレート20R、20Lの下端部を四辺として開口面が形成されている。そして、開口面である底面10Bの四辺を形成する筐体10の前面10Cの下端部、後面10Dの下端部、対向する側面10R、10Lに取り付けられたサイドプレート20R、20Lの下端部、および後面10D側の一側端部の外表面に抑え金物13により弾性体よりなる吸着シート14がビス止めされて取り付けられている。また、
図7(a)に示すように、側面10R、10Lおよびサイドプレート20R、20Lの下端部に取り付けられた吸着シート14の先端は、底面10Bの四辺に筐体10から離反する方向に伸延しており、先端部を側面10R、10Lの下端部よりも下方に位置するように設けられている。そして、上述したように、ブラスト処理中の筐体10の内部は負圧となるため、この負圧により底面10Bの四辺下端部は構造物40の表面に押し付けられるように密着する。このとき、底面10Bの四辺下端部に配設された吸着シート14は、
図7(b)に示すように、吸着シート14の先端部が変形し、底面10Bの四辺下端部に形成された収納スペースSに折り畳まれて収納されることで、開口面を形成する底面10Bの四辺下端部と構造物40の露出面40aとの密着度を高めることができ、筐体10の内部に噴出された研削材や研削材で剥がされた腐食部位の錆びや防食被膜の欠片からなる粉塵が筐体10の外部へ漏れることを防止できる。
【0038】
また、サイドプレート20R、20Lには、後面10D側の一側端部外側に抑え金物13によりビス止めされて弾性体よりなる吸着シート14が取り付けられている。これは、上述したように、構造物40の下フランジLFとウェブWの連結部(所謂、角部)に発生した腐食部位Fのブラスト処理を行う場合に、
図6に示すように、サイドプレート20R、20Lを筐体10の側面10R、10Lに沿って鉛直面に対し所定角度(例えば、45度)変位させ、構造物40の露出面40aに筐体10を設置した場合に、筐体10の開口面である底面10Bは、筐体10の前面10Cの下端部、後面10Dの下端部、対向する側面10R、10Lに取り付けられたサイドプレート20R、20Lの下端部及び後面10D側の一側端部により覆われて密閉されるため、筐体10の内部に噴出された研削材や研削材で剥がされた腐食部位の錆びや防食被膜の欠片からなる粉塵が筐体10の外部に漏れることを防ぐことができる。
【0039】
図1及び
図4に示すように、ブラストホース挿入部11は、円筒状に形成された内円筒11aと、この内円筒11aの下部の外周に当該内円筒11aと同心円状に、かつ、水平方向に回動自在に外嵌した外円筒11bとで構成された吸気手段を有する。ブラストホース挿入部11の中央部は、筐体10の上面10Aを貫通して開口部11cが形成されている。内円筒11a上部には、垂直方向に所定間隔を空けて上下二枚のゴム板15、15が配設されている。上下二枚のゴム板15、15の中央部には、ブラストホースBHのブラストヘッドBaを差し込むための円形のブラストホース挿入口15aが形成されている。上下二枚のゴム板15は、内円筒11aと略同径の板状の円盤であり、その中央に形成された円形のブラストホース挿入口15aの開口径はブラストヘッドBaの外周と略同径としている。これにより、ブラストホース挿入口15aに上部からブラストヘッドBaを挿入した場合に、ブラストヘッドBaの外周とブラストホース挿入口15aに隙間が生じることがなく、ブラストヘッドBaの先端から筐体10の内部に噴出された研削材がブラストホース挿入口15aから外部に漏れ出さないようにしている。
なお、本実施形態において、ゴム板15の形態を内円筒11aと略同径の板状の円盤として説明したが、ゴム板15の形態は、これに限定されることなく、例えば、平面視において略U字状や略コ字状など、ブラストホース挿入口15aに挿通したブラストヘッドBaの外周とブラストホース挿入口15aとの間に隙間が生じることなくブラストヘッドBaの先端から筐体10の内部に噴出された研削材がブラストホース挿入口15aから外部に漏れださない形態であればどのように構成されていてもよい。
【0040】
図8に示すように、内円筒11aの下部と、この内円筒11aの下部に水平方向に回動自在に外嵌された外円筒11bには、筐体10の内部に外気を吸気する複数(図中は3箇所)の同じ大きさの吸気口11dがそれぞれ垂直方向の同じ高さに所定間隔で形成されている。
図8(a)に示すように、吸気口11dは、内円筒11a及び外円筒11bの中心から所定角度(約60度)隔てて設けられている。そして、
図8(b)に示すように、内円筒11aの外周面に沿って外円筒11bを水平方向に回動して、内円筒11a及び外円筒11bに設けた吸気口11dの水平方向の位置を合わせることで、筐体10の内部に開口部11cを介して外気を吸気できる。
【0041】
上述したように、本実施形態においては、筐体10内に、ブラストヘッドBaの先端から筐体10の内部に噴出される研削材の供給圧力よりも、ブラストホースBHにより筐体10の外部に排出される研削材や粉塵の吸引圧力が若干高圧になるように設定されている。このため、ブラスト処理中の筐体10の内部は外部よりも負圧となり、筐体10の開口面である底面10Bが構造物の表面に密着(吸着)した状態となり、ブラスト処理が終了しても次の腐食部位Fへの筐体10の移動が容易でない場合がある。このため、ブラスト処理終了後には、外円筒11bを内円筒11aに沿って水平方向に回動して各円筒の吸気口11dの位置を合わせることにより、筐体10の内部空間が外部と連通して筐体10内部の負圧が解消される。これにより、筐体10の開口面である底面10Bと構造物40の露出面40aとの密着状態が解消されて次の腐食部位Fに筐体10を移動させることができる。
【0042】
また、吸気口11dから筐体10の内部空間に開口部11cを介して外気が吸気される場合に、吸気口11dが開口状態であると、作業現場の外気が直接筐体10の内部空間に吸気されることになる。このとき、作業現場の空気が清浄な空気でないと、筐体10の内部空間にゴミや異物が混入する。これを防止するために、少なくとも外円筒11bに設けられた吸気口11dには、細かい網目の網や、吸気する空気から異物を取り除くことができるスポンジ等を設置し、筐体10の内部空間に吸気される空気からゴミや異物等を除去する構成とすることが望ましい。なお、本実施形態において、筐体10の内部空間の真空状態を開放する吸気手段として、ブラストホース挿入部11に内円筒11aと内円筒11aに水平方向に回動自在に外嵌した外円筒11bを備え、各円筒に設けられた吸気口11d,11dを外円筒11bを回動して位置合せすることにより筐体10の内部と外部を連通状態とする構成を一例として記載したが、本発明における吸気手段はこれに限定されることなく、ブラスト処理後の筐体10内部の真空状態を解消できる手段であればどのように構成されていてもよい。
【0043】
図9に示すように、筐体10の開口面である底面10Bには、ブラスト処理の範囲を制限する制限プレート30を着脱自在としている。この制限プレート30は、構造物40がH形鋼で上下フランジUF、LFには所定厚みがあり、さらに、この上下フランジUF、LFの厚みの部位に発生した局部的な腐食部位Fのブラスト処理を行う場合に、制限プレート30により筐体10の底面10Bの開口面の大きさ(ブラスト空間KBの範囲)を限定するためのものである。
【0044】
制限プレート30は、
図10に示すように、筐体10の開口面である底面10Bの全面を覆う蓋状体としており、この制限プレート30には、構造物40の上下フランジUF、LFと同じ厚みの切欠き部31が水平方向に設けられている。これにより、制限プレート30は、上下フランジUF、LFと同じ厚みの開口31aを有することになる。そして、
図9に示すように、筐体10の底面10Bを、上下フランジUF、LFの厚み分だけ開放した開口31aを有する制限プレート30で覆った状態で、スポットブラスト装置1を構造物40に設置して、上下フランジUF、LFの厚みの部位に発生した腐食部位Fのブラスト処理を行う。このように、上下フランジUF、LFの厚みと同じ幅だけの開口31aを有する制限プレート30を用いてブラスト処理を行うことで、上下フランジUF、LFの厚みの部位に発生した腐食部位Fのみに研削材が発射され、その他の部位は制限プレート30で覆われているため、筐体10の外部への研削材や研削材で剥がされた腐食部位の錆びや防食被膜の欠片からなる粉塵が漏れることを防止することができる。
【0045】
また、底面10Bの全面を覆う蓋状体としての制限プレート30´は、
図11(a)、(b)に示すように、一定の厚みを有する矩形板状に形成した2枚の板状体32、32を併設し、板状体32の長手方向両端部近傍に設けた移動ガイド棒34に沿って2枚の板状体32、32を平行状態を維持しつつ近接離反可能とする構成でもよい。
【0046】
板状体32は、底面10Bと接触する裏面側の略中央部に凹状に設けられた嵌合溝部32aと、長手方向の両端部近傍にそれぞれ設けた矩形板状のブラケット32bを有する。
【0047】
嵌合溝部32aは、平面視略矩形状の凹部構造であり、弾性体よりなる挟持体33を嵌合している。挟持体33は、嵌合溝部32aと略同一形態に形成した嵌合部33aと、嵌合部33aの端部から直角に屈曲して板状体32の厚み分だけ伸延した挟持部33bとを有する。嵌合部33aおよび挟持部33bは、それぞれ矩形板状に形成されており、挟持体33は、嵌合部33aと挟持部33bとで略“L”字状に形成している。これにより、嵌合溝部32aに嵌合部33aを固定した挟持体33は、板状体32のいずれかの長側面を挟持部33bで覆うこととなる。本実施形態においては、平行に設置された板状体32、32の長手側面のうち対向する側面に挟持部33bが位置するように設けられている。
【0048】
ブラケット32bは、板状体32の裏面側に突設した矩形状の板体であり、略中央部に移動用ガイド孔部32cを有する。板状体32は、ブラケット32bの移動用ガイド孔部32cに移動ガイド棒34を遊嵌することにより、平行状態を維持しつつ移動ガイド棒34に沿って移動自在としている。
【0049】
本実施形態において移動ガイド棒34は、周面に雄ネジが螺刻されており、板状体32、32は、挟持部33bが配設されていない長手側面側に設けたブラケット32b,32bの外側面位置の移動ガイド棒34に蝶ナット35を螺合することで位置を固定している。また、板状体32は、蝶ナット35を移動ガイド棒34に対して締め付ける、または緩める方向に回動することで移動ガイド棒34に沿って移動可能に構成している。つまり、2つの板状体32、32は、蝶ナット35によりその間隔を変位自在としている。
【0050】
これにより、底面10Bを閉塞する制限プレート30´は、上下フランジUF、LFに応じて2つの板状体32、32の間に形成される開口32dを調整できる。すなわち、制限プレート30´は、2枚の板状体32、32を移動ガイド棒34に沿って平行状態を維持しつつ近接離反可能とする構成により、どのような厚みの上下フランジUF、LFにも開口32dを対応させることができる。
【0051】
このように、上下フランジUF、LFの厚みに応じて開口32dの幅を調整可能な制限プレート30´を用いてブラスト処理を行うことで、上下フランジUF、LFの厚みの部位に発生した腐食部位Fのみに研削材が発射され、その他の部位は制限プレート30´で覆われているため、筐体10の外部に研削材や研削材で剥がされた腐食部位の錆びや防食被膜の欠片からなる粉塵が漏れることを防止することができる。
なお、本実施形態において、制限プレート30´の開口32dを制御する手段として移動ガイド棒34を寸切ボルトとし、移動ガイド棒34に螺合した蝶ナット35を締め付け、または緩める動作により、2つの板状体32、32の間隔を調整して開口32dを変化できる構成を説明したが、制限プレート30´の開口32dの調整方法は、上述した手段に限定されることなく、2枚の板状体32、32が平行状態を維持しつつ近接離反動作できる態様であればどのように構成されていてもよい。
【0052】
上述してきたように、本実施形態におけるスポットブラスト装置1によれば、スポットブラスト装置1の開口面である底面10Bで囲繞することができる構造物40の平面に発生した局部的な腐食部位Fだけではなく、構造物40のあらゆる場所(角部、極小部位等)に発生した局部的な腐食部位Fの補修作業において、施工現場での設置作業が容易であり、かつ、ピンポイントで局部的な腐食部位Fのブラスト処理を、研削材や研削材で剥がされた腐食部位の錆びや防食被膜の欠片からなる粉塵が周囲に漏れることなく行うことができるので、作業者の安全を図り効率よく腐食部位Fのブラスト処理を行うことができる。そして、ブラスト処理の後に局部的に防食被膜の再塗装や再金属溶射により防食被膜を再生することで、防食被膜の補修作業の工期の短縮や経費の低減を図ることができ、補修作業における経済的な効果が大きい。
【0053】
なお、本技術は、以下のような構成を取ることができる。
(1)
箱型の筐体に開口面を有し、前記開口面の対向面にブラストホース挿入部とバキュームホース接続部とを設け、前記筐体の対向する二側面を左右2枚のサイドプレートで前記筐体を所定角度の範囲内で回動自在に挟持し、前記開口面で構造物表面に発生した局部的な腐食部位を囲繞して設置されるスポットブラスト装置であって、
前記筐体の内部空間は、内部仕切り板により、
前記ブラストホース挿入部に挿入されたブラストホースの先端部から高速で噴出された研削材により前記腐食部位のブラスト処理を行うブラスト空間と、
前記バキュームホース接続部に接続されたバキュームホースにより、前記ブラスト空間に噴出された研削材、前記腐食部位から剥離された錆びや防食被膜の欠片からなる粉塵を一緒に筐体外に排出するバキューム空間と、に区画されていることを特徴とするスポットブラスト装置。
(2)
前記ブラストホース挿入部に前記筐体内部に外気を吸気するための吸気手段を備えたことを特徴とする前記(1)に記載のスポットブラスト装置。
(3)
前記開口面が前記腐食部位へ密着するように、前記開口面の四辺に弾性体よりなる吸着シートを配設したことを特徴とする前記(1)又は前記(2)に記載のスポットブラスト装置。
(4)
前記開口面にブラスト処理をする範囲を制限する制限プレートを着脱自在としたことを特徴とする(1)~(3)のいずれか1つに記載のスポットブラスト装置。
【0054】
以上、本発明の好ましい各種実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 スポットブラスト装置
10 筐体
11 ブラストホース挿入部
12 バキュームホース接続部
13 抑え金物
14 吸着シート
20R、20L サイドプレート
30、30´ 制限プレート
40 建造物
F 腐食部位