(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025018623
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】設備構造推定装置及び設備構造推定プログラム
(51)【国際特許分類】
G06T 7/521 20170101AFI20250130BHJP
【FI】
G06T7/521
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023122499
(22)【出願日】2023-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000213297
【氏名又は名称】中部電力株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】八尾 健一朗
(72)【発明者】
【氏名】松本 浩
(72)【発明者】
【氏名】重田 考徳
(72)【発明者】
【氏名】今井 隆輔
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096FA12
5L096FA16
5L096FA64
(57)【要約】
【課題】本体及び幅広部を有する構造物の三次元モデルを作成する際、その作成に要する作業量を少なく抑えられるようにする。
【解決手段】コンピュータの中央処理装置は、上に延びる本体から幅方向に突出する幅広部を有する構造物を対象とし、その構造物を表した三次元点群における各点の三次元座標に基づき、上記構造物をフレーム化した三次元モデルを作成する。中央処理装置は、上記三次元モデルを作成する処理として、抽出処理、データ変換処理、特徴点推定処理、データ復元処理、及びフレーム化処理を順に実行する。こうして作成される三次元モデルは、本体に対応する本体フレーム及び幅広部に対応する突出フレームを有するフレーム化されたものである。上記構造物をフレーム化した三次元モデルの作成については、上記構造物を表した三次元点群のデータが膨大であるとしても、そのデータに基づき上記各処理を通じて作業量を少なく抑えつつ行うことができる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上に延びる本体から幅方向に突出する幅広部を有する構造物を対象とし、その構造物を表した三次元点群における各点の三次元座標に基づき、前記構造物をフレーム化した三次元モデルを作成する制御部を備え、
前記制御部は、抽出処理、データ変換処理、特徴点推定処理、データ復元処理、及びフレーム化処理を順に実行するものであり、
前記抽出処理は、前記構造物を表した前記三次元点群のうち、前記幅広部及び前記本体における前記幅広部に対応する箇所である抽出箇所を表す各点を抽出し、
前記データ変換処理は、前記抽出箇所を表す前記各点を、高さを除いた二次元座標系の各点に変換し、
前記特徴点推定処理は、前記二次元座標系の前記各点を用いて、それら各点で表される前記抽出箇所の外形における屈曲点である複数の特徴点を推定し、
前記データ復元処理は、前記構造物を表した三次元点群における各点の三次元座標に基づき前記抽出箇所における前記幅広部の高さを求め、その求めた高さを複数の前記特徴点の高さ情報として付与することによって複数の前記特徴点の二次元座標を三次元座標とし、
前記フレーム化処理は、前記特徴点の三次元座標、及び、前記構造物を表した三次元点群のうち前記構造物の上端に対応する点の三次元座標に基づき、前記構造物の三次元モデルとして、前記上端に対応する点から前記本体の外形に沿って延びる本体フレームと、その本体フレームから前記幅広部の前記本体に対する突出端まで前記本体の幅方向に延びる突出フレームと、を有する三次元モデルを作成するものである設備構造推定装置。
【請求項2】
前記構造物は、送電鉄塔であって、
前記送電鉄塔は、四角柱状の前記本体を備えるとともに、その本体の幅方向に突出する複数段の腕金を前記幅広部として備えており、
前記抽出処理は、前記送電鉄塔を表した前記三次元点群のうち、複数段の前記腕金に対応した前記抽出箇所毎に、それら抽出箇所を表す各点を抽出し、
前記特徴点推定処理は、前記特徴点として、前記抽出箇所における前記本体の四つ角にそれぞれ対応する特徴点、及び、前記抽出箇所における前記腕金の前記本体に対する突出端に対応する特徴点を推定し、
前記データ復元処理は、前記送電鉄塔を表した三次元点群における各点の三次元座標に基づき前記抽出箇所毎に前記腕金の高さを求め、そうして求めた高さを同高さに対応する前記抽出箇所における複数の前記特徴点の高さ情報として付与することにより、複数の前記特徴点の二次元座標を三次元座標とするものである請求項1に記載の設備構造推定装置。
【請求項3】
上に延びる本体から幅方向に突出する幅広部を有する構造物を対象とし、その構造物を表した三次元点群における各点の三次元座標に基づき、前記構造物をフレーム化した三次元モデルを作成する処理として、コンピュータに抽出処理、データ変換処理、特徴点推定処理、データ復元処理、及びフレーム化処理を順に実行させ、
前記抽出処理は、前記構造物を表した前記三次元点群のうち、前記幅広部及び前記本体における前記幅広部に対応する箇所である抽出箇所を表す各点を抽出し、
前記データ変換処理は、前記抽出箇所を表す前記各点を、高さを除いた二次元座標系の各点に変換し、
前記特徴点推定処理は、前記二次元座標系の前記各点を用いて、それら各点で表される前記抽出箇所の外形における屈曲点である複数の特徴点を推定し、
前記データ復元処理は、前記構造物を表した三次元点群における各点の三次元座標に基づき前記抽出箇所における前記幅広部の高さを求め、その求めた高さを複数の前記特徴点の高さ情報として付与することによって複数の前記特徴点の二次元座標を三次元座標とし、
前記フレーム化処理は、前記特徴点の三次元座標、及び、前記構造物を表した三次元点群のうち前記構造物の上端に対応する点の三次元座標に基づき、前記構造物の三次元モデルとして、前記上端に対応する点から前記本体の外形に沿って延びる本体フレームと、その本体フレームから前記幅広部の前記本体に対する突出端まで前記本体の幅方向に延びる突出フレームとを有する三次元モデルを作成するものである設備構造推定プログラム。
【請求項4】
前記構造物は、送電鉄塔であって、
前記送電鉄塔は、四角柱状の前記本体を備えるとともに、その本体の幅方向に突出する複数段の腕金を前記幅広部として備えており、
前記抽出処理は、前記送電鉄塔を表した前記三次元点群のうち、複数段の前記腕金に対応した前記抽出箇所毎に、それら抽出箇所を表す各点を抽出し、
前記特徴点推定処理は、前記特徴点として、前記抽出箇所における前記本体の四つ角にそれぞれ対応する特徴点、及び、前記抽出箇所における前記腕金の前記本体に対する突出端に対応する特徴点を推定し、
前記データ復元処理は、前記送電鉄塔を表した三次元点群における各点の三次元座標に基づき前記抽出箇所毎に前記腕金の高さを求め、そうして求めた高さを同高さに対応する前記抽出箇所における複数の前記特徴点の高さ情報として付与することにより、複数の前記特徴点の二次元座標を三次元座標とするものである請求項3に記載の設備構造推定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設備構造推定装置及び設備構造推定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
構造物として、上に延びる本体と、その本体から幅方向に突出する幅広部と、を有するものがある。こうした構造物としては例えば送電鉄塔があげられる。
上記構造物では、ドローン等の飛行体を用いて次のように点検が行われる場合がある。すなわち、構造物の周辺に定められた所定の飛行経路に沿って上記飛行体を移動させながら、その飛行体に搭載されたカメラで構造物を撮影する。そして、上記カメラで撮影された構造物の映像に基づき、構造物に異常が生じていないかどうか点検する。また、上記構造物の点検として、構造物の周辺の樹木等の物体に対し、構造物との間に適切な離隔距離が確保されているか否か確認する場合もある。
【0003】
上記飛行体の飛行経路を定めたり、構造物の周辺の物体との離隔距離を確認したりする際には、構造物の三次元モデルを用いることが考えられる。こうした三次元モデルを作成するため、構造物を三次元点群で表したデータが用いられる。特許文献1には、構造物を表す三次元点群の取得について記載されている。このように取得した三次元点群のデータに基づき構造物の三次元モデルを作成すれば、その三次元モデルを用いて上記飛行体の飛行経路を定めたり、構造物の周辺の物体との離隔距離を確認したりすることが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、本体及び幅広部を有する上記構造物を表した三次元点群のデータは膨大であるため、そのデータを一つずつ確認しながら同データに基づき三次元モデルを作成しようとすると、三次元モデルを作成する際の作業量が多くなる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決する設備構造推定装置は、上に延びる本体から幅方向に突出する幅広部を有する構造物を対象とし、その構造物を表した三次元点群における各点の三次元座標に基づき、上記構造物をフレーム化した三次元モデルを作成する制御部を備える。制御部は、抽出処理、データ変換処理、特徴点推定処理、データ復元処理、及びフレーム化処理を順に実行する。抽出処理は、上記構造物を表した三次元点群のうち、幅広部及び本体における幅広部に対応する箇所である抽出箇所を表す各点を抽出する。データ変換処理は、抽出箇所を表す各点を、高さを除いた二次元座標系の各点に変換する。特徴点推定処理は、二次元座標系の各点を用いて、それら各点で表される抽出箇所の外形における屈曲点である複数の特徴点を推定する。データ復元処理は、上記構造物を表した三次元点群における各点の三次元座標に基づき抽出箇所における幅広部の高さを求め、その求めた高さを複数の上記特徴点の高さ情報として付与することによって複数の上記特徴点の二次元座標を三次元座標とする。フレーム化処理は、上記特徴点の三次元座標、及び、上記構造物を表した三次元点群のうち構造物の上端に対応する点の三次元座標に基づき、以下のような構造物の三次元モデルを作成する。すなわち、構造物の三次元モデルとして、上記上端に対応する点から本体の外形に沿って延びる本体フレームと、その本体フレームから幅広部の本体に対する突出端まで本体の幅方向に延びる突出フレームと、を有する三次元モデルを作成する。
【0007】
上記構成によれば、本体及び幅広部を有する構造物を表した三次元点群のデータが膨大であるとしても、そうしたデータに基づき構造物の三次元モデルが作業量を少なく抑えつつ作成される。すなわち、作成される上記三次元モデルは、抽出処理、データ変換処理、特徴点推定処理、データ復元処理、及びフレーム化処理を通じて、本体フレーム及び突出フレームを有するフレーム化されたものである。上記構造物をフレーム化した三次元モデルの作成については、上記構造物を表した三次元点群のデータが膨大であるとしても、そのデータに基づき上記各処理を通じて作業量を少なく抑えつつ行うことができる。従って、本体及び幅広部を有する構造物の三次元モデルを作成する際、その作成に要する作業量を少なく抑えることができる。
【0008】
上記設備構造推定装置が三次元モデルを作成する対象である構造物は、送電鉄塔とされる。送電鉄塔は、四角柱状の前記本体を備えるとともに、その本体の幅方向に突出する複数段の腕金を幅広部として備える。そして、抽出処理は、送電鉄塔を表した三次元点群のうち、複数段の腕金に対応した抽出箇所毎に、それら抽出箇所を表す各点を抽出する。特徴点推定処理は、上記特徴点として、抽出箇所における本体の四つ角にそれぞれ対応する特徴点、及び、抽出箇所における腕金の本体に対する突出端に対応する特徴点を推定する。データ復元処理は、送電鉄塔を表した三次元点群における各点の三次元座標に基づき抽出箇所毎に腕金の高さを求める。更に、データ復元処理は、そうして求めた高さを同高さに対応する抽出箇所における複数の特徴点の高さ情報として付与することにより、複数の特徴点の二次元座標を三次元座標とする。
【0009】
上記構成によれば、四角柱状の本体から幅方向に突出する幅広部が複数段の腕金である送電鉄塔について、その送電鉄塔の三次元モデルが上記各処理を通じてフレーム化したものとして作成される。従って、複数段の腕金を有する送電鉄塔を表した三次元点群のデータが膨大になるとしても、そのデータに基づき送電鉄塔の三次元モデルを作成する際、その作成に要する作業量を少なく抑えることができる。
【0010】
上記課題を解決する設備構造推定プログラムは、上に延びる本体から幅方向に突出する幅広部を有する構造物を対象とし、その構造物を表した三次元点群における各点の三次元座標に基づき、上記構造物をフレーム化した三次元モデルを作成する処理として、コンピュータに抽出処理、データ変換処理、特徴点推定処理、データ復元処理、及びフレーム化処理を順に実行させる。抽出処理は、上記構造物を表した三次元点群のうち、幅広部及び本体における幅広部に対応する箇所である抽出箇所を表す各点を抽出する。データ変換処理は、抽出箇所を表す各点を、高さを除いた二次元座標系の各点に変換する。特徴点推定処理は、二次元座標系の各点を用いて、それら各点で表される抽出箇所の外形における屈曲点である複数の特徴点を推定する。データ復元処理は、上記構造物を表した三次元点群における各点の三次元座標に基づき抽出箇所における幅広部の高さを求め、その求めた高さを複数の上記特徴点の高さ情報として付与することによって複数の上記特徴点の二次元座標を三次元座標とする。フレーム化処理は、上記特徴点の三次元座標、及び、上記構造物を表した三次元点群のうち構造物の上端に対応する点の三次元座標に基づき、以下のような構造物の三次元モデルを作成する。すなわち、構造物の三次元モデルとして、上記上端に対応する点から本体の外形に沿って延びる本体フレームと、その本体フレームから幅広部の本体に対する突出端まで本体の幅方向に延びる突出フレームと、を有する三次元モデルを作成する。
【0011】
上記構成によれば、本体及び幅広部を有する構造物を表した三次元点群のデータが膨大であるとしても、そうしたデータに基づき構造物の三次元モデルが作業量を少なく抑えつつ作成される。すなわち、作成される上記三次元モデルは、抽出処理、データ変換処理、特徴点推定処理、データ復元処理、及びフレーム化処理を通じて、本体フレーム及び突出フレームを有するフレーム化されたものである。上記構造物をフレーム化した三次元モデルの作成については、上記構造物を表した三次元点群のデータが膨大であるとしても、そのデータに基づき上記各処理を通じて作業量を少なく抑えつつ行うことができる。従って、本体及び幅広部を有する構造物の三次元モデルを作成する際、その作成に要する作業量を少なく抑えることができる。
【0012】
上記設備構造推定プログラムによって三次元モデルを作成する対象である構造物は、送電鉄塔とされる。送電鉄塔は、四角柱状の前記本体を備えるとともに、その本体の幅方向に突出する複数段の腕金を幅広部として備える。そして、抽出処理は、送電鉄塔を表した三次元点群のうち、複数段の腕金に対応した抽出箇所毎に、それら抽出箇所を表す各点を抽出する。特徴点推定処理は、上記特徴点として、抽出箇所における本体の四つ角にそれぞれ対応する特徴点、及び、抽出箇所における腕金の本体に対する突出端に対応する特徴点を推定する。データ復元処理は、送電鉄塔を表した三次元点群における各点の三次元座標に基づき抽出箇所毎に腕金の高さを求める。更に、データ復元処理は、そうして求めた高さを同高さに対応する抽出箇所における複数の特徴点の高さ情報として付与することにより、複数の特徴点の二次元座標を三次元座標とする。
【0013】
上記構成によれば、四角柱状の本体から幅方向に突出する幅広部が複数段の腕金である送電鉄塔について、その送電鉄塔の三次元モデルが上記各処理を通じてフレーム化したものとして作成される。従って、複数段の腕金を有する送電鉄塔を表した三次元点群のデータが膨大になるとしても、そのデータに基づき送電鉄塔の三次元モデルを作成する際、その作成に要する作業量を少なく抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】送電鉄塔の三次元モデルを示す側面図である。
【
図3】
図2の送電鉄塔の三次元モデルを示す平面図である。
【
図4】
図1のコンピュータによって実行される設備構造推定プログラムの実行手順を示すフローチャートである。
【
図5】三次元点群によって表された送電鉄塔を示す側面図である。
【
図6】
図5の送電鉄塔における抽出箇所を示す拡大図である。
【
図7】
図6の抽出箇所における三次元点群を二次元化したときの点群を示す平面図である。
【
図9】
図7の点群における点Nの評価についての説明図である。
【
図10】
図7の点群における点N1の評価についての説明図である。
【
図11】
図7の点群に基づき仮推定された特徴点E,F,M,Nを示す平面図である。
【
図12】
図11の特徴点M,Nに基づく特徴点A,B,C,Dの仮推定についての説明図である。
【
図13】
図12の特徴点A,B,C,Dの補正についての説明図である。
【
図14】
図11の点群に基づき推定された特徴点A,B,C,D,E,Fを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、設備構造推定装置及び設備構造推定プログラムの一実施形態について、
図1~
図14を参照して説明する。
図1に示すコンピュータ11は、構造物の三次元モデルを作成する設備構造推定装置として機能する。上記構造物として、上に延びる本体と、その本体から幅方向に突出する幅広部と、を有するものがある。例えば送電鉄塔は、四角柱状の上記本体を備えるとともに、その本体の幅方向に突出する複数段の腕金を幅広部として備える構造物である。
【0016】
コンピュータ11は、中央処理装置12と、記憶部13と、通信部14と、を備えている。中央処理装置12は、コンピュータ11における記憶部13及び通信部14といった各種の機器を制御するとともに、各種データに基づく演算処理等を行うためのものである。記憶部13は、各種データを記憶するためのものである。通信部14は、コンピュータ11の外部とのデータのやり取りを行うためのものである。
【0017】
中央処理装置12は、上記構造物、すなわち送電鉄塔を表した三次元点群における各点の三次元座標に基づき、上記送電鉄塔をフレーム化した三次元モデルを作成する制御部としての役割を担う。このように作成された送電鉄塔の三次元モデルを
図2及び
図3に示す。
図2は送電鉄塔の三次元モデルを側方から見た状態を示しており、
図3は上記三次元モデルを上方から見た状態を示している。
【0018】
図1に示すコンピュータ11の中央処理装置12は、上記三次元モデルを作成するための設備構造推定プログラムを実行する。この設備構造推定プログラムは、コンピュータ11に抽出処理、データ変換処理、特徴点推定処理、データ復元処理、及びフレーム化処理を順に実行させることにより、上記送電鉄塔を表した三次元点群における各点の三次元座標に基づき上記送電鉄塔の三次元モデルを作成する。
【0019】
図4のフローチャートは、設備構造推定プログラムの実行手順を示している。
中央処理装置12は、上記フローチャートにおけるステップ101(S101)の処理として、上記送電鉄塔を表す三次元点群のデータ、詳しくは三次元点群における各点の三次元座標を取り込む。上記三次元点群のデータは、ドローン等の飛行体を用いて送電鉄塔をレーザー測量することによって取得することが可能である。なお、それ以外の方法で、上記三次元点群のデータを取得してもよい。
【0020】
こうした三次元点群のデータは、予めコンピュータ11の記憶部13に記憶しておくことが考えられる。この場合、中央処理装置12は、記憶部13から三次元点群のデータを取り込む。中央処理装置12は、飛行体から通信部14を介して直接的に上記三次元点群のデータを取り込むことも可能である。上記三次元点群のデータがサーバー等に記憶されている場合もある。この場合、中央処理装置12は、通信部14によるネットワーク接続により、そのネットワークを介してサーバーに記憶された三次元点群のデータを取り込むものとすることが考えられる。
【0021】
上記フローチャートにおけるS102の処理、S103の処理、S104の処理、S105の処理、及びS106の処理はそれぞれ、上述した抽出処理、データ変換処理、特徴点推定処理、データ復元処理、及びフレーム化処理に相当する。以下、これらの処理について個別に詳しく説明する。
【0022】
<抽出処理>
図5は、上記送電鉄塔を表した三次元点群を示している。中央処理装置12は、S102の抽出処理として、上記三次元点群のうち、送電鉄塔における腕金及び本体における腕金に対応する箇所である抽出箇所A1,A2,A3を表す各点を抽出する。詳しくは、中央処理装置12は、送電鉄塔における複数段の腕金に対応した抽出箇所A1,A2,A3毎に、それら抽出箇所A1,A2,A3を表す各点を抽出する。
【0023】
中央処理装置12は、次のように抽出箇所A1,A2,A3を定める。すなわち、中央処理装置12は、上記送電鉄塔を表した三次元点群を鉛直方向において所定の間隔で区切る。中央処理装置12は、各区間の三次元点群の水平方向への広がりに基づいて、各区間の三次元点群が腕金を表す各点を含むか否かを判定する。こうした判定に基づき、中央処理装置12は、複数の腕金を表す各点を含む抽出箇所A1,A2,A3を定める。そして、中央処理装置12は、抽出箇所A1の各点、抽出箇所A2の各点、及び抽出箇所A3の各点をそれぞれ、腕金を表す点を含む各点として抽出する。
【0024】
<データ変換処理>
中央処理装置12は、
図4におけるS103のデータ変換処理として、抽出箇所A1,A2,A3を表す各点を、抽出箇所A1,A2,A3毎に高さを除いた二次元座標系の各点に変換する。
図6は抽出箇所A1を表す各点を示しており、
図7は上記二次元座標系への変換後の上記各点を示している。このように抽出箇所A1を表す各点を上記二次元座標系の各点に変換することにより、上記二次元座標系上における各点の密度を高めることができる。
【0025】
<特徴点推定処理>
中央処理装置12は、
図4におけるS104の特徴点推定処理として、上記二次元座標系の各点を用いて、それら各点で表される抽出箇所A1,A2,A3の外形における屈曲点である複数の特徴点を推定する。詳しくは、中央処理装置12は、上記特徴点として、抽出箇所A1,A2,A3における送電鉄塔における本体の四つ角にそれぞれ対応する特徴点A~D、及び、抽出箇所A1,A2,A3における腕金の上記本体に対する突出端に対応する特徴点E,Fを推定する。これら特徴点A~Fを
図3に示す。
【0026】
特徴点A~Fを推定するに際には、まず抽出箇所A1,A2,A3毎に、抽出箇所A1,A2,A3の上記二次元座標系上での外形を菱形として近似したときの特徴点E,F,M,Nを仮推定する。これら特徴点E,F,M,Nも
図3に示す。特徴点E,F,M,Nの仮推定は、以下の(手順1)~(手順3)を通じて行われる。
【0027】
(手順1)抽出箇所A1,A2,A3毎に、それら抽出箇所A1,A2,A3に対応する二次元座標系の各点からランダムに4点を選択する。
図7に示される各点のうち、点M,N,E,Fは、このように選択された4点を示している。
【0028】
(手順2)上記点M,N,E,Fのうちの一つを入替候補として選択するとともに、二次元座標系の各点のうちの上記点M,N,E,F以外の一つを代替候補として選択する。例えば、
図8に示すように、点Nを上記入替候補として選択するとともに、点N1を上記代替候補として選択する。
【0029】
(手順3)入替候補である点Nと代替候補である点N1とのうち、どちらが上記特徴点E,F,M,Nのうちの一つとして適正なのかを評価する。詳しくは、点Nに関する評価値と点N1に関する評価値とをそれぞれ算出した後、点Nと点N1とのうちの評価値の大きい方を最新の点Nとする。
【0030】
点Nに関する評価値は、次のように算出される。点M,N,E,Fのうちの点N以外の一つ、例えば点Mを選択する。そして、
図9に示すように、点Mと点Nとを線分MNに対し直交する方向に予め定められた所定量ずらすことにより、点MA,点MB、点NA、点NBの4点を定める。これら点MA,点MB、点NA、点NBで囲まれた範囲の内側に存在する点の数を点Nの評価値とする。
【0031】
点N1に関する評価値も、点Nに関する評価値の算出と同じ仕方で算出される。すなわち、
図10に示すように、点Mと点N1とを線分MN1に対し直交する方向に予め定められた所定量ずらすことにより、点MA,点NB、点N1A、点N1Bの4点を定める。これら点MA,点MB、点N1A、点N1Bで囲まれた範囲の内側に存在する点の数を点N1の評価値とする。
【0032】
上述した(手順2)及び(手順3)を所定回数、例えば1000回繰り返すことにより、点M,N,E,Fが
図11に示すように定められる。このときの点M,N,E,Fが特徴点M,N,E,Fとして仮推定される。
【0033】
特徴点M,N,E,Fが仮推定された後、特徴点M,Nに基づき、特徴点A,B,C,Dの仮推定が行われる。詳しくは、
図12に示すように、特徴点Mを線分MNに対し直交する方向に線分MNの1/2の距離ずらした位置に点A,Dを置くとともに、特徴点Nを線分MNに対し直交する方向に線分MNの1/2の距離ずらした位置に点B、Cを置く。その後、点A,B,C,Dを次のように補正する。
【0034】
すなわち、点A,B,C,Dのうちから補正の対象となる一つを選択する。例えば点Dを補正の対象として選択した場合には、線分DA、線分DB、及び線分DCの平均長さALを求める。この平均長さALを
図13に矢印で示す。そして、平均長さALに基づき、以下のように位置P1、位置P2、及び位置P3を定める。位置P1は、点Dから点Aに向かう方向に平均長さAL離れた位置に定められる。位置P2は、点Dから点Bに向かう方向に平均長さAL離れた位置に定められる。位置P3は、点Dから点Cに向かう方向に平均長さAL離れた位置に定められる。その後、こうして定められた位置P1,P2,P3がそれぞれ点A,B,Cに近づくよう点Dが補正される。
【0035】
こうした点A,B,C,Dの補正を所定回数、例えば1000回繰り返すことにより、点A、B、C、Dが
図14に示すように定められる。このときの点A,B,C,Dが特徴点A,B,C,Dとして仮推定される。
【0036】
特徴点A~Fの仮推定が行われた後、以下の(手順5)及び(手順6)を所定回数、例えば3000回繰り返すことにより、本格的な特徴点A~Fの推定が行われる。(手順5)特徴点A~Fのうちの一つを入替候補として選択するとともに、二次元座標系の各点のうちの上記特徴点A~F以外の一つを代替候補として選択する。(手順6)上記入替候補と上記代替候補とのうち、どちらが上記特徴点A~Fのうちの一つとして適正なのかを上述した(手順3)と同じ手法で評価し、その評価に基づく評価値の高い方を最新の特徴点として採用する。
【0037】
<データ復元処理>
中央処理装置12は、
図4におけるS105のデータ復元処理として、上記推定された特徴点A~Fに高さ情報を付与することにより、特徴点A~Fの二次元座標を三次元座標とする。詳しくは、送電鉄塔を表した三次元点群における各点の三次元座標に基づき、抽出箇所A1~A3毎に腕金の高さを求める。すなわち、抽出箇所A1~A3に対しそれぞれ、
図6に示すように高さ位置の異なる複数の水平面H1,H2,H3,・・・を設定する。
図6には、抽出箇所A1に設定された水平面H1,H2,H3,・・・が示されている。そして、複数の水平面H1,H2,H3,・・・のうち、最も点の数が多い水平面H1,H2,H3,・・・の高さを腕金の高さとする。この腕金の高さを二次元座標系における特徴点A~Fに対し高さ情報として付与することにより、特徴点A~Fの二次元座標を三次元座標とする。
【0038】
<フレーム化処理>
中央処理装置12は、
図4におけるS106のフレーム化処理として、特徴点A~Fの三次元座標、及び、送電鉄塔を表した三次元点群のうち送電鉄塔の上端に対応する点の三次元座標に基づき、
図2及び
図3に示す送電鉄塔の三次元モデルを作成する。詳しくは、中央処理装置12は、上記三次元モデルとして、送電鉄塔の上記上端に対応する点から送電鉄塔の本体の外形に沿って延びる本体フレーム15と、その本体フレーム15から複数段の腕金の本体に対する突出端まで本体の幅方向に延びる複数段の突出フレーム16~18と、を有する三次元モデルを作成する。
【0039】
以上詳述した本実施形態によれば、以下に示す作用効果が得られるようになる。
四角柱状の本体と幅広部としての複数段の腕金とを有する構造物である送電鉄塔を表した三次元点群のデータが膨大であるとしても、そうしたデータに基づき上記送電鉄塔の三次元モデルが作業量を少なく抑えつつ作成される。すなわち、作成される上記三次元モデルは、抽出処理、データ変換処理、特徴点推定処理、データ復元処理、及びフレーム化処理を通じて、本体フレーム15及び突出フレーム16~18を有するフレーム化されたものである。上記送電鉄塔をフレーム化した三次元モデルの作成については、上記送電鉄塔を表した三次元点群のデータが膨大であるとしても、そのデータに基づき上記各処理を通じて作業量を少なく抑えつつ行うことができる。従って、本体及び幅広部としての複数段の腕金を有する構造物である送電鉄塔の三次元モデルを作成する際、その作成に要する作業量を少なく抑えることができる。
【0040】
なお、上記実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・データ復元処理において、上記推定された特徴点A~Fに付与する高さ情報は、鉄塔の設計図面から取得される各腕金の高さであってもよい。
【0041】
・送電鉄塔における腕金の数は三つ以外の値であってもよい。
・本体と幅広部とを有する構造物は、送電鉄塔以外の構造物であってもよい。そうした構造物としては、例えばロープウェイの支柱があげられる。
【符号の説明】
【0042】
11…コンピュータ
12…中央処理装置
13…記憶部
14…通信部
15…本体フレーム
16~18…突出フレーム