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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001867
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】内燃機関の排気浄化装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/24 20060101AFI20241226BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
F01N3/24 N
F01N3/08 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023101598
(22)【出願日】2023-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 尚哉
【テーマコード(参考)】
3G091
【Fターム(参考)】
3G091BA04
3G091BA14
3G091CA03
3G091CA17
3G091CA27
3G091EA27
(57)【要約】
【課題】分散板を加熱するための電力を、効率よく消費する。
【解決手段】尿素添加弁から噴射された尿素水を分散する分散板200が、排気通路52に固定されている。分散版200の羽根部201~204には、電力線PLによって直列に接続された電気ヒータH1~H4が設けられるとともに分散板温度センサ115a~115dが設けられる。各電気ヒータH1~H4を迂回するバイパス電力線BL1~BL4には、スイッチSW1~SW4が設けられる。分散板温度センサ115a~115dで検出した温度が所定値以上のとき、対応するスイッチSW1~SW4をON(閉成)して、対応する電気ヒータH1~H4の通電を停止する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気通路に設けられた選択還元触媒と、
前記選択還元触媒の上流に設けられ、前記排気通路に尿素水を供給する尿素供給手段と、
前記尿素供給手段と前記選択還元触媒との間の前記排気通路に設けられ、前記尿素水を分散する分散板と、
前記分散板に設けられた複数の電気式加熱部と、
複数の前記電気式加熱部に対応して前記分散板に設けられ、複数の前記電気式加熱部によって加熱された部位の温度を検出する、複数の温度検出部と、
前記温度検出部によって検出した温度に基づいて、対応する前記電気式加熱部の通電を制御する制御部と、を備えた、内燃機関の排気浄化装置。
【請求項2】
前記電気式加熱部は、抵抗加熱であり、
前記電気式加熱部の各々を迂回するバイパス電力線にスイッチが設けられており、
前記制御部は、前記温度検出部によって検出した温度が所定値以上になったとき、対応する前記電気式加熱部を迂回する前記スイッチを閉成することにより、前記電気式加熱部への通電を停止する、請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項3】
複数の前記電気式加熱部は電気的に直列に接続されている、請求項2に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項4】
複数の前記電気式加熱部を電気的に直列に接続した加熱部群が、電気的に並列に接続されている、請求項2に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項5】
前記温度検出部は、サーミスタから構成される、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内燃機関の排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2020-172912号公報(特許文献1)には、内燃機関の排気通路に尿素添加弁から尿素水を供給し、尿素水が分解されて生成されたアンモニア(NH3)を還元剤として利用し、選択還元触媒によって排気中のNOxを還元浄化することが記載されている。この特許文献1では、尿素添加弁と選択還元触媒との間に、電熱体で加熱可能な分散板を設け、分散板の温度が所定の下限温度より高い温度になるよう、電熱体の通電量を制御している。これにより、尿素添加弁から供給された尿素水をより確実にアンモニアに分解(変換)して、選択還元触媒に供給している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-172912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、電熱体(電気発熱体)によって、分散板の全体を加熱している。尿素添加弁から添加された尿素水が、分散板によって分散されるとき、分散板では、尿素水が衝突した箇所の温度が低下し、下限温度を下回ることがある。分散板の温度が低下すると、尿素水からアンモニアへの分解反応が抑制されるため、尿素水が衝突した箇所の温度を、なるべく早期に下限温度以上に上昇させることが望ましい。
【0005】
尿素水が衝突した箇所の温度を上昇させるため、電気発熱体への通電量を増大すると、分散板の全体の温度が上昇する。このため、尿素水が衝突していない箇所では、温度が過剰に上昇して、電気発熱体へ供給する電力が有効に消費されない懸念がある。
【0006】
本開示の目的は、分散板を加熱するための電力を、効率よく消費することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の内燃機関の排気浄化装置は、排気通路に設けられた選択還元触媒と、選択還元触媒の上流に設けられ排気通路に尿素水を供給する尿素供給手段と、尿素供給手段と選択還元触媒との間の排気通路に設けられ尿素水を分散する分散板と、分散板に設けられた複数の電気式加熱部と、複数の電気式加熱部に対応して分散板に設けられ、複数の電気式加熱部によって加熱された部位の温度を検出する複数の温度検出部と、温度検出部によって検出した温度に基づいて、対応する電気式加熱部の通電を制御する制御部と、を備える。
【0008】
この構成によれば、尿素供給手段と選択還元触媒との間の排気通路に設けられた分散板によって、尿素水が分散され選択還元触媒に流入する。分散板には、複数の電気式加熱部が設けられている。電気式加熱部によって、分散板が加熱され、分散板の温度が上昇する。分散板の熱により、尿素水の微粒化および分解が促進される。分散板では、尿素水が衝突した箇所の温度が低下する。
【0009】
温度検出部は、複数の電気式加熱部によって加熱された部位の温度を検出する。制御部は、温度検出部によって検出した温度に基づいて、対応する電気式加熱部の通電を制御する。これにより、尿素水が衝突し温度が低下した部位に対応する電気式加熱部の通電を制御することができるので、分散板を加熱するための電力を、効率よく消費することが可能になる。
【0010】
好ましくは、電気式加熱部は抵抗加熱であり、電気式加熱部の各々を迂回するバイパス電力線にスイッチが設けられており、制御部は、温度検出部によって検出した温度が所定値以上になったとき、対応する電気式加熱部を迂回するスイッチを閉成することにより、電気式加熱部への通電を停止するようにしてもよい。
【0011】
この構成によれば、電気式加熱部として、ジュール熱により発熱する抵抗加熱が用いられる。電気式加熱部の各々には、バイパス電力線にスイッチが設けられている。スイッチが閉成されると、電気式加熱部に供給されていた電流がバイパス電力線に流れ、電気式加熱部への通電が停止される。したがって、温度検出部によって検出した温度が所定値以上になったとき、対応する電気式加熱部を迂回するスイッチを閉成することにより、電気式加熱部への通電が停止する。
【0012】
好ましくは、複数の電気式加熱部は電気的に直列に接続されていてもよい。
この構成によれば、電気式加熱部は、電気的に直列に接続されているので、電気式加熱部の合成抵抗は、各電気式加熱部の抵抗を加算した値になる。電気式加熱部を迂回するスイッチが閉成されると、当該電気式加熱部の抵抗分だけ、合成抵抗が小さくなる。これにより、スイッチが閉成されていない電気式加熱部に流れる電流が大きくなり、発熱量(ジュール熱)が大きくなるので、分散板において、温度が所定値を下回っている部位の温度上昇が促進される。
【0013】
好ましくは、複数の電気式加熱部を電気的に直列に接続した加熱部群が、電気的に並列に接続されるようにしてもよい。
【0014】
直列に接続される電気式加熱部の数が多くなると、合成抵抗が大きくなり、電気式加熱部を流れる電流が小さくなるので、各電気式加熱部で発生するジュール熱が小さくなる。この構成によれば、分散板に設けた電気式加熱部の数が多い場合であっても、加熱部群に含まれる電気式加熱部の数を適宜設定することにより、各電気式加熱部で発生するジュール熱が小さくなることを抑制できる。
【0015】
好ましくは、温度検出部はサーミスタから構成されるようにしてもよい。
サーミスタは、抵抗値が大きく変化する温度領域を、組成(材料成分)を調製することにより設定可能である。この構成によれば、温度検出部はサーミスタから構成されるので、サーミスタの抵抗値が大きく変化する温度領域を、電気式加熱部の通電を制御する温度(たとえば、所定値)に設定することにより、精度よく、電気式加熱部の通電を制御することが可能になる。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、分散板を加熱するための電力を、効率よく消費することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施の形態に係る内燃機関の排気浄化装置の全体構成を概略的に示す図である。
図2】本実施の形態における分散板の概略構成図である。
図3】本実施の形態において、ECUで実行される電気ヒータ制御の処理の一例を示すフローチャートである。
図4】サーミスタからなる分散板温度センサにおける、温度と抵抗の関係を示す図である。
図5】変形例1に係る分散板の概略構成図である。
図6】変形例2における、電気ヒータの接続例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0019】
図1は、本実施の形態に係る内燃機関の排気浄化装置の全体構成を概略的に示す図である。図1を参照して、エンジン(内燃機関)1は、排気浄化装置70を備えた圧縮着火式内燃機関(ディーゼルエンジン)である。エンジン1は、たとえば、車両の駆動源として用いられる。エンジン1は、エンジン本体10のシリンダ(気筒)12に形成された燃焼室に、燃料噴射弁(インジェクター)14から燃料を噴射し、圧縮自着火を行う内燃機関である。本実施の形態において、エンジン1は4気筒である。エンジン1の吸気通路20には、エアクリーナ22、インタークーラ24、および絞り弁(ディーゼルスロットル弁)26が設けられており、エアクリーナ22で異物が除去された新気(空気)は、ターボ過給器30のコンプレッサ32で過給(圧縮)され、インタークーラ24で冷却されて、吸気マニホールド28に供給され、吸気ポートから各燃焼室に供給される。
【0020】
燃料タンク40には、燃料が貯留されている。燃料タンク40内の燃料は、フィードポンプ41によって高圧燃料ポンプ42へ供給され、高圧燃料ポンプ42から吐出された高圧の燃料が燃料通路43を介してコモンレール44に圧送される。コモンレール44に蓄えられた高圧の燃料が、インジェクター14から燃焼室(筒内)に噴射される。
【0021】
燃焼室から排出される排気(排ガス)は、排気マニホールド50に集められ、排気通路52を介して、外気に放出される。また、排気の一部は、EGR(Exhaust Gas Recirculation)通路60を介して、吸気マニホールド28に還流される。EGR通路60には、EGRクーラ62とEGR弁64が設けられる。
【0022】
排気通路52には、ターボ過給器30のタービン34が設けられ、タービン34の下流に、排気浄化装置70として、酸化触媒71、DPF(Diesel Particulate Filter)72、選択還元触媒(以下、SCR(Selective Catalytic Reduction)触媒とも称する)73、および酸化触媒74が設けられている。酸化触媒71は、排ガスに含まれるCO(一酸化炭素)、HC(炭化水素)、SOF(Soluble Organic Fraction:可溶性有機成分)を酸化して、浄化する。また、酸化触媒71は、DPF72に捕集したパティキュレート・マター(PM)を燃焼除去する際に、供給されたHCを燃焼(酸化)して排ガス温度を上昇させる。
【0023】
DPF72の下流の排気通路52には、SCR触媒73が配置されている。SCR触媒73は、たとえば、セラミック担体に銅(Cu)イオン交換ゼオライトを触媒として担持したものであり、アンモニア(NH3)を還元剤として用いることにより、高いNOx浄化率を示すものである。還元剤として利用するアンモニアは、SCR触媒73の上流の排気通路52に供給した尿素水を加水分解および熱分解することにより生成する。SCR触媒73の上流の排気通路には、尿素添加弁(尿素水噴射インジェクター)80が設けられ、尿素水タンク81からポンプ82によって圧送される尿素水を、尿素添加弁80から、SCR触媒73の上流の排気通路52に噴射する。なお、尿素添加弁80が、本開示の「尿素供給手段」の一例に相当する。
【0024】
SCR触媒73の下流の排気通路52には、酸化触媒74が設けられており、SCR触媒73から排出された(スリップした)アンモニアを酸化して浄化する。
【0025】
尿素添加弁80とSCR触媒73との間の排気通路52には、分散板200が配置されている。分散板200は、通電を行うことにより発熱する電気ヒータが設けられている。分散板200の電気ヒータには、スイッチSW0を介して、バッテリ(直流電源)90の電力が供給される。バッテリ90は、車両の補機バッテリであってよく、その電圧は、12ボルトであってよく、24ボルト、あるいは、48ボルトであってもよい。分散板200の詳細は、後述する。
【0026】
ECU(Electronic Control Unit)100は、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)からなるメモリ102、各種信号を入出力するための入出力ポート(図示せず)等を含み、メモリ102に記憶された情報、各種センサからの情報に基づいて所定の演算処理を実行し、インジェクター14、絞り弁26、尿素添加弁80、スイッチSW0、等を制御する。ECU100は、本開示の「制御装置」の一例に相当する。
【0027】
ECU100に入力される各種センサとしては、たとえば、エンジン回転速度センサ111、アクセルペダルセンサ112、エアフローメータ113、SCR温度センサ114、分散板温度センサ115a~115d、等である。エンジン回転速度センサ111は、エンジン1の回転速度NEを検出する。アクセルペダルセンサ112は、ユーザによるアクセルペダル操作量(以下「アクセル開度」ともいう)APを検出する。エアフローメータ113は、吸気通路20に設けられ、エンジン1の吸気量(吸入空気量)Gaを検出する。SCR温度センサ114は、SCR触媒73の温度(たとえば、触媒床温)Tcを検出する。分散板温度センサ115a~115dについては、後述する。
【0028】
ECU100は、たとえば、アクセル開度APとエンジン回転速度NEとから燃料噴射量Fpを算出し、燃料噴射量Fpの燃料が燃焼室に噴射されるよう、インジェクター14を制御する。ECU100は、燃料噴射量Fp(あるいは、アクセル開度AP)とエンジン回転速度NEから、エンジン1から排出されるNOx量を推定し、NOx量に応じて添加量Fuを算出し、添加量Fuの尿素水が排気通路52に供給されるよう、尿素添加弁80を制御する。なお、エンジン1から排出されるNOx濃度を検出し、NOx濃度に基づいて、添加量Fuを算出するようにしてもよい。
【0029】
尿素添加弁80から供給された尿素水は、分散板200によって分散されるとともに微粒化される。また、尿素水は、分散板200(および排気熱)によって加熱される。これにより、尿素添加弁80から供給された尿素水の一部が加熱分解および加水分解され、アンモニア(NH3)が生成する。そして、生成されたアンモニアは、SCR触媒73へ流入する。また、分解されなかった尿素水は、SCR触媒73に流入し、SCR触媒73内部で熱分解および加水分解されアンモニアを生成する。
【0030】
図2は、本実施の形態における分散板200の概略構成図である。図2は、排気通路52の上流側から視た図である。本実施の形態において、分散板200は、スクリュー形状(プロペラ形状)であり、排気通路52に固定されている。分散板200は、4枚の羽根部201,202,203,204を有する。羽根部201には、電気ヒータH1が設けられている。羽根部201が導電性を有する部材の場合、電気ヒータH1は、絶縁部材を介して羽根部201に固定される。電気ヒータH1は、ジュール熱によって熱を発生する抵抗加熱のヒータである。電気ヒータH1は、ニッケル-クロム系等からなる金属系の発熱体であってよく、炭化ケイ素等からなる非金属系の発熱体であってよい。同様に、羽根部202,203,204には、電気ヒータH2,H3,H4が設けられている。電気ヒータH1,H2,H3,H4は、本開示の「電気式加熱部」の一例に相当する。
【0031】
電気ヒータH1,H2,H3,H4は、電力線PLによって、電気的に直列に接続されている。電力線PLは、スイッチSW0を介してバッテリ90に接続される。図2に示すように、電気ヒータH1を迂回するバイパス電力線BL1が設けられており、バイパス電力線BL1には、スイッチSW1が設けられている。同様に、電気ヒータH2,H3,H4を迂回するバイパス電力線BL2,BL3,BL4には、スイッチSW2,SW3,SW4が設けられている。スイッチSW0~SW4は、同様の構成であり、閉成(ON)することにより電流を通電し、開成(OFF)することにより電流を遮断する。
【0032】
羽根部201には、分散板温度センサ115aが設けられている。本実施の形態では、電気ヒータH1が設けられている面(表面)と反対側の面(裏面)に、分散板温度センサ115aが設けられている。分散板温度センサ115aは、電気ヒータH1によって加熱された羽根部201の温度Tpaを検出する。同様に、羽根部202,203,204には、分散板温度センサ115b,115c、115dが設けられており、羽根部202,203,204の温度Tpb,Tpc、Tpdを検出する。本実施の形態において、分散板温度センサ115a~115dは、サーミスタである。
【0033】
図3は、本実施の形態において、ECU100で実行される電気ヒータ制御の処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートは、イグニッションスイッチがONになりエンジン1が始動されたあと、SCR触媒73の暖機が完了し、SCR触媒73の触媒床温Tcが活性化温度に達すると、処理が開始される。なお、触媒床温Tcが活性化温度に達すると、尿素添加弁80から尿素水の噴射が開始される。ステップ(以下、ステップを「S」と略す)10では、スイッチSW0をON(閉成)するとともに、スイッチSW1~SW4をOFF(開成)する。これにより、バッテリ90から電気ヒータH1~H4に電流が供給され、電気ヒータH1~H4の発熱により、分散板200の羽根部201~204が加熱され、分散板200(羽根部201~204)の温度が上昇する。
【0034】
続くS11では、分散板温度センサ115aで検出した羽根部201の温度Tpaが、所定値α以上であるか否かを判定する。図4は、サーミスタからなる分散板温度センサ115a~115dにおける、抵抗値と温度の関係を示す図である。図4において、実線は、CTR(Critical Temperature Resistor)サーミスタの特性であり、破線は、PTC(Positive Temperature Coefficient)サーミスタの特性である。分散板温度センサ115a~115dは、CTRサーミスタ、あるいは、PTCサーミスタのいずれであってもよい。本実施の形態では、分散板温度センサ115a~115dは、図4に示すように、所定値αの温度領域において抵抗値が大きく変化する特性になるよう、その組成(材料成分)が調製されている。これにより、分散板温度センサ115a~115dで検出した温度が所定値α以上になったことを、比較的精度よく検出できる。NCTサーミスタの場合、抵抗値が閾値A以下であるとき、温度が所定値α以上であると判定し、PTCサーミスタの場合、抵抗値が閾値値B以上であるとき、温度が所定値α以上であると判定する。
【0035】
S11では、温度Tpaが所定値α以上の場合、肯定判定されS12へ進み、温度TPaが所定値α未満の場合、否定判定されS13へ進む。S12では、スイッチSW1をONにするとともにフラグF1を1に設定し、S14へ進む。これにより、バイパス電力線BL1に電流が流れ、電気ヒータH1の通電が停止され、電気ヒータH1の発熱が停止する。S13では、スイッチSW1をOFFにする(OFFであった場合は、OFFを継続する)とともに、フラグF1を0に設定し、S14へ進む。
【0036】
S14では、分散板温度センサ115bで検出した羽根部202の温度Tpbが、所定値α以上であるか否かを判定する。温度Tpbが所定値α以上の場合、肯定判定されS15へ進み、温度TPbが所定値α未満の場合、否定判定されS16へ進む。S15では、スイッチSW2をONにするとともにフラグF2を1に設定し、S17へ進む。これにより、バイパス電力線BL2に電流が流れ、電気ヒータH2の通電が停止され、電気ヒータH2の発熱が停止する。S16では、スイッチSW2をOFFにする(OFFであった場合は、OFFを継続する)とともに、フラグF2を0に設定し、S17へ進む。
【0037】
S17では、分散板温度センサ115cで検出した羽根部203の温度Tpcが、所定値α以上であるか否かを判定する。温度Tpcが所定値α以上の場合、肯定判定されS18へ進み、温度TPcが所定値α未満の場合、否定判定されS19へ進む。S18では、スイッチSW3をONにするとともにフラグF3を1に設定し、S20へ進む。これにより、バイパス電力線BL3に電流が流れ、電気ヒータH3の通電が停止され、電気ヒータH3の発熱が停止する。S19では、スイッチSW3をOFFにする(OFFであった場合は、OFFを継続する)とともに、フラグF3を0に設定し、S20へ進む。
【0038】
S20では、分散板温度センサ115dで検出した羽根部204の温度Tpdが、所定値α以上であるか否かを判定する。温度Tpdが所定値α以上の場合、肯定判定されS21へ進み、温度TPdが所定値α未満の場合、否定判定されS22へ進む。S21では、スイッチSW4をONにするとともにフラグF4を1に設定し、S23へ進む。これにより、バイパス電力線BL4に電流が流れ、電気ヒータH4の通電が停止され、電気ヒータH4の発熱が停止する。S22では、スイッチSW4をOFFにする(OFFであった場合は、OFFを継続する)とともに、フラグF4を0に設定し、S23へ進む。
【0039】
S23では、フラグF1~F4のすべてが、1であるか否かを判定する。フラグF1~F4のすべてが1であるときには、肯定判定されS24へ進む。フラグF1~F4の少なくともひとつが、0である場合は、否定判定されS25へ進む。
【0040】
S24では、スイッチSW0をOFF(開成)したあと、S26へ進む。フラグF1~F4のすべてが1であり、スイッチSW1,SW2,SW3,SW4のすべてがONのとき、スイッチSW0をOFFとすることにより、バッテリ90の短絡が抑制される。S25では、スイッチSW0をONにして(ONである場合は、ONを継続して)、S26へ進む。
【0041】
S26では、イグニッションスイッチがOFFであるか否かを判定する。イグニッションスイッチがONである場合は、否定判定されS11へ戻る。イグニッションスイッチがOFFとなり、エンジン1が停止した場合には、肯定判定され、今回のルーチンを終了する。
【0042】
本実施の形態によれば、尿素添加弁80とSCR触媒73との間の排気通路52に設けられた分散板200によって、尿素水が分散されSCR触媒73に流入する。分散板200には、複数の電気ヒータH1~H4が設けられている。電気ヒータH1~H4によって、分散板200が加熱され、分散板200の温度が上昇する。分散板200の熱により、尿素水の微粒化および分解が促進される。
【0043】
分散板200では、尿素水が衝突した箇所の温度が低下する。分散板温度センサ115a~115dは、電気ヒータH1~H4が設けられた羽根部201~204に対応して設けられており、電気ヒータH1~H4によって加熱された羽根部201~204の温度Tpa~Tpdを検出する。ECU100は、分散板温度センサ115a~115dによって検出した温度Tpa~Tpdに基づいて、対応する電気ヒータH1~H4の通電を制御する。これにより、尿素水が衝突し温度が低下した羽根部201~204に対応する電気ヒータH1~H4の通電を制御することができるので、分散板200を加熱するための電力を、効率よく消費することができる。
【0044】
本実施の形態では、電気ヒータH1~H4の各々を迂回するバイパス電力線BL1~PL4にスイッチSW1~SW4が設けられており、温度Tpa~Tpdのいずれが所定値以上になったとき、対応する電気ヒータH1~H4を迂回するスイッチSW1~SW4を閉成することにより、電気ヒータに流れていた電流がバイパス電力線に流れ、電気ヒータへの通電が停止する。また、電気ヒータH1~H4は、電力線PLによって、電気的に直列に接続されているので、電気ヒータの合成抵抗は、電気ヒータH1~H4の抵抗を加算した値になる。電気ヒータH1~H4を迂回するスイッチSW1~SW4が閉成されると、当該電気ヒータの抵抗分だけ、合成抵抗が小さくなる。これにより、スイッチが閉成されていない電気ヒータに流れる電流が大きくなり、ジュール熱が大きくなる。したがって、分散板200において、温度が所定値αを下回っている羽根部201~204の温度上昇が促進される。
【0045】
<変形例1>
図5は、変形例1に係る分散板200aの概略構成図である。変形例1において、分散板200aは、4枚の羽根部201a,202a,203a,204aをする。羽根部201a~204aは、絶縁部材である軸部材220に固定されるとともに、排気通路52に、図示しない絶縁部材を介して固定されている。羽根部201a~204aは、たとえば、セラミック発熱体から形成されており、通電によって、羽根部201a~204aが発熱する。羽根部201a~204aは、上記実施の形態と同様に、電力線PLにより、電気的に直列に接続されている。また、上記実施の形態と同様に、羽根部201a~204aを迂回するバイパス電力線BL1~BL4が設けられており、バイパス電力線BL1~BL4には、スイッチSW1~SW4が設けられている。
【0046】
羽根部201a~204aには、上記実施の形態と同様な、分散板温度センサ115a~115dが設けられており、羽根部201a~201dの温度Tpa~Tpdを検出する。この変形例1においても、図3のフローチャートで説明した、電気ヒータ制御が実行される。
【0047】
この変形例1によれば、分散板200の羽根部201a~204aの全体をジュール熱によって加熱できるので、尿素水の分解をより促進することができる。
【0048】
<変形例2>
上記実施の形態では、分散板200の羽根部は4枚であり、直列に接続した4個の電気ヒータH1~H4を設けていた。羽根部の数が増えた場合、たとえば、8枚の羽根部を有する分散板に、直列に接続した8個の電気ヒータを設けた場合、電気ヒータの合成抵抗は、8個の電気ヒータの抵抗を加算した値になる。電気ヒータの合成抵抗が大きいと、流れる電流が小さくなるので、電気ヒータのジュール熱が小さくなり、分散板(羽根部)の昇温が遅くなる懸念がある。
【0049】
図6は、変形例2における、電気ヒータの接続例を示す図である。変形例2では、8個の電気ヒータを備える。たとえば、8枚の羽根部を有する分散板において、各羽根部に電気ヒータを設けた場合である。図6に示すように、電気ヒータは、バッテリ90に並列接続された、経路Aと経路Bによって接続される。経路Aは、バッテリ90に、スイッチSW0aを介して直列に接続された加熱群である、電気ヒータH1a,H2a、H3a,H4aを有する。経路Bは、スイッチSW0bを介して直列に接続された加熱群である、電気ヒータH1b,H2b、H3b,H4bを有する。経路Aおよび経路Bの加熱群の各電気ヒータH1a~H4bを迂回するバイパス電力線には、スイッチSW1a~SW4bが設けられている。
【0050】
電気ヒータH1a~H4bに対応する羽根部には、分散板温度センサが設けられる。分散板温度センサで検出した温度に基づいて、上記実施の形態と同様に、スイッチSW1a~SW4b、および、スイッチSW0a、SW0bの開閉が制御される。
【0051】
この変形例2によれば、電気ヒータを直列に接続した加熱部群(経路A、経路B)を、並列に接続しているので、電気ヒータの数が多い場合であっても、直列の接続される電気ヒータの数を少なくすることができる。これにより、合成抵抗を小さくでき、電気ヒータで発生するジュール熱が小さくなることを抑制でき、分散板(羽根部)を早期に昇温することが可能になる。
【0052】
上記実施の形態では、複数の羽根部を有するスクリュー形状(プロペラ形状)の分散板を用いていたが、分散板の形状、形態はこれらに限られない。たとえば、板状部材に複数の孔を形成した、パンチングプレートを分散板として用いてもよい。この場合、パンチングプレートの表面を複数の区画に分け、各区画に電気ヒータを設けるとともに、各区画の裏面に分散板温度センサを設けるようにしてよい。
【0053】
上記実施の形態では、分散板温度センサとして、サーミスタを用いていたが、たとえば、熱電対等、他のタイプの温度センサであってよい。
【0054】
上記実施の形態では、電気ヒータを迂回するバイパス電力線に設けたスイッチを開閉することにより、電気ヒータの通電を制御していた。しかし、スイッチを介して各電気ヒータをバッテリ90に並列に接続し、当該スイッチを開閉することにより、各電気ヒータの通電を制御するようにしてもよい。
【0055】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0056】
1 エンジン、10 エンジン本体、12 シリンダ、14 インジェクター、20 吸気通路、22 エアクリーナ、24 インタークーラ、26 絞り弁、28 吸気マニホールド、30 ターボ過給器、32 コンプレッサ、34 タービン、40 燃料タンク、41 フィードポンプ、 42 高圧燃料ポンプ、43 燃料通路、44 コモンレール、45 燃料通路、50 排気マニホールド、52 排気通路、60 EGR通路、62 EGRクーラ、64 EGR弁、70 排気浄化装置、71 酸化触媒、72 DPF、73 選択還元触媒(SCR触媒)、74 酸化触媒、80 尿素添加弁、81 尿素タンク、82 ポンプ、90 バッテリ、91 バッテリ、100 ECU、101 CPU、102 メモリ、111 エンジン回転速度センサ、112 アクセルペダルセンサ、113 エアフローメータ、114 SCR温度センサ、115a~115d 分散板温度センサ、200 分散板、201~204 羽根部、BL1~BL4 バイパス電力線、H1~H4 電気ヒータ、PL 電力線、SW0~SW4 スイッチ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6