(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025018682
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】機上で真円度測定を行なう偏心ピン測定装置を有する工作機械
(51)【国際特許分類】
B24B 49/02 20060101AFI20250130BHJP
B23Q 17/22 20060101ALI20250130BHJP
B24B 5/42 20060101ALI20250130BHJP
B23B 5/18 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
B24B49/02 A
B23Q17/22 A
B24B5/42
B23B5/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023122613
(22)【出願日】2023-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】593127027
【氏名又は名称】株式会社シギヤ精機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100091719
【弁理士】
【氏名又は名称】忰熊 嗣久
(72)【発明者】
【氏名】山本 優
【テーマコード(参考)】
3C029
3C034
3C043
3C045
【Fターム(参考)】
3C029AA01
3C029AA19
3C034AA01
3C034AA13
3C034BB74
3C034CA01
3C034CA26
3C034CB01
3C034DD01
3C034DD20
3C043AC22
3C043AC23
3C043CC03
3C043DD02
3C043DD04
3C043DD05
3C043DD06
3C045CA12
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ワークを主軸センタと心押センタとの間に挟み込んで支持したまま、真円度測定を行う偏心ピン測定装置を提供すること。
【解決手段】研削盤により、偏心ピンw1を有したワークwを砥石9により研削する。砥石台7には、測定ヘッド15をx軸に直交する垂直方向のy軸方向へ移動可能に支持する偏心ピン測定装置が取り付けられている。位置制御部は、主軸を回転させるとともに、測定ヘッド15が偏心ピンw1に接触した初期の状態のときのピン中心からのx軸方向の距離を維持し、かつピン中心と同じy軸方向の位置に測定ヘッド15が存在するようにy軸方向の位置を制御し、ワークwを回転させる間、x軸方向の位置データとy軸方向の位置データと測定ヘッド15からの測定値と、そのときの回転位相角とを偏心ピンw1の一周に渡って求めて測定形状データを作成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏心した位置にピン中心がある偏心ピンを有するワークを支持し該ワークを回転させる主軸と、
前記ワークを加工する加工具を支持し、前記主軸に直交したx軸方向へ前記加工具を移動する加工具台と、
前記ワークを加工する加工用データを作成して、前記主軸の回転と前記加工具の移動を制御する位置制御部と、
前記加工具台に取り付けられ、測定ヘッドをx軸に直交する垂直方向のy軸方向へ移動可能に支持する偏心ピン測定装置とを有し、
前記位置制御部は、前記主軸を回転させるとともに、前記測定ヘッドの位置を、前記主軸を回転する間において常に偏心ピンのピン中心からのx軸方向の距離が一定であり、かつピン中心からのy軸方向の距離が一定になる位置に制御し、前記ワークを回転させる間、x軸方向の位置データとy軸方向の位置データと前記測定ヘッドからの測定値と、そのときの回転位相角とを前記偏心ピンの一周に渡って求めて測定形状データを作成することを特徴とする工作機械。
【請求項2】
請求項1の工作機械において、測定ヘッドは前記偏心ピンに接触して測定する測定ヘッドであって、
前記測定ヘッドは、前記偏心ピンを間に挟んで測定する一対の測定ヘッドであることを特徴とする工作機械。
【請求項3】
請求項1の工作機械において、前記位置制御部は、理想的形状データに基づいて前記ワークの仕上げ寸法近傍までの加工を実行し、
前記ワークの回転角度とともに規定する測定形状データを作成し、
前記理想的形状データと前記測定形状データとを比較して得られた形状誤差分を加味した修正形状データを作成し、これから修正加工用データを作成して、補正加工を行うことを特徴とする工作機械。
【請求項4】
請求項1の工作機械において、
前記位置制御部が前記主軸の回転する間において一定にする距離は、x軸方向の距離が「0」、又は、y軸方向の距離が「0」のいずれかであることを特徴とする工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランクピンなど偏心量の大きな円筒部の加工を行なう工作機械において、ワークを回転可能に支持したまま偏心円筒の真円度を測定する偏心ピン測定装置を有する工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、クランクシャフトはねじり剛性が低く、位相角度ごとに剛性が異なるため、クランクピンを研削すると楕円形状になる傾向があり、高精度な真円度は得られない。よって、研削が終了したワークを取り外し、形状誤差を測定する別の機器に取り付けた後、得られた誤差情報に基づき再度、ワークを工作機械に取り付けて仕上げることが行われている。
【0003】
しかし、プレス機械等に利用される偏心ピンやカム等のワークは重量が重く、このような作業は容易でない。また、特にワークが大型である場合には運搬作業自体に手間がかかり、ワークの大きさや重量制限からそもそも測定装置に設置できないような場合もある。この場合には、作業者は加工した円筒部の直径を決まった角度ごとに測定して真円度を概算するといった作業を行うことになる。
【0004】
偏心ピンのワークの加工途中に主軸からワークを取り外すことなく被加工面を測定し許容誤差範囲内の精度による加工を行うことを可能とする工作機械として、例えば、特許文献1には、砥石台上に接触体とリニアスケールを設置し、リニアスケールを旋回させることにより振り子状に接触体を繰り出して偏心ピンに接触させる技術が開示されている。また、特許文献2には、砥石台に第1アーム、第2アーム上腕、第2アーム下腕を続けて設置し、さらに三点接触式測定器の馬乗りゲージを第2アーム下腕に取り付けて、偏心ピンに接触させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-168837号公報
【特許文献2】特開2007―206086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示されるリニアスケールを旋回させることにより振り子状に接触体を繰り出す技術においては、偏心ピンの偏心量が大きいと接触体が偏心ピンに届かない。また、特許文献2の技術は、馬乗りゲージを用いるものであるが、前提として第1アームに第2アーム上腕、第2アーム下腕の長さを長くすることにより、偏心ピンの中心と真円の中心とを同一視している。しかし、馬乗りゲージ方式では、外径基準で測定するため、楕円形状の場合には測定誤差が大きくなること、そして、真円度補正に必要な位相角度の特定が難しいことなどの理由から、形状補正のための真円度測定には向かない。
【0007】
本発明は、ワークを主軸センタと心押センタとの間に挟み込んで支持したまま、偏心ピンの真円度測定を行う偏心ピン測定装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するため本発明は、偏心した位置にピン中心がある偏心ピンを有するワークを支持し該ワークを回転させる主軸と、
前記ワークを加工する加工具を支持し、前記主軸に直交したx軸方向へ前記加工具を移動する加工具台と、
前記ワークを加工する加工用データを作成して、前記主軸の回転と前記加工具の移動を制御する位置制御部と、
前記加工具台に取り付けられ、測定ヘッドをx軸に直交する垂直方向のy軸方向へ移動可能に支持する偏心ピン測定装置とを有し、
前記位置制御部は、前記主軸を回転させるとともに、測定ヘッドが偏心ピンに接触した初期の状態のときのピン中心からのx軸方向(y軸方向)の距離を維持し、かつピン中心と同じy軸方向(x軸方向)の位置に測定ヘッドが存在するようにx軸方向の位置、y軸方向の位置を制御し、前記ワークを回転させる間、x軸方向の位置データとy軸方向の位置データと前記測定ヘッドからの測定値と、そのときの回転位相角とを前記偏心ピンの一周に渡って求めて測定形状データを作成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、砥石台を移動するx軸モータと、砥石台と一体に移動する偏心ピン測定装置に設けられたy軸モータと、これら2軸に主軸(C軸モータ)とを加えた3軸(x軸、C軸、y軸)を同期制御することで、y軸に搭載した測定ヘッドによって偏心ピンの形状(真円度、外径寸法、偏心量)の測定が可能になる。そして、この測定は、ワークを主軸センタと心押センタとの間に挟み込んで支持したまま行うことが可能である。よって、研削盤とは別の測定装置までの運搬の手間が不要になり、修正加工を実施するためにワークを再度、研削盤に取り付ける際の誤差が発生しない。さらに測定結果から形状補正データを作成して入力するまでを自動的に行うことができ、迅速な修正加工の実施、さらには形状補正データの入力ミスを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施例に係る研削盤を説明する図である。
【
図4】制御プログラムから測定開始信号が出力された場合のフローを示す図である。
【
図5】研削における処理を示す全体のフローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明が適用される工作機械として研削盤を例として説明する。
[実施例1]
まず図面を参照して研削盤100の機械構成について説明する。
図1Aにおいて、研削盤100は、機械台1と、作業テーブル2と、z軸モータ3と、主軸台4と、C軸モータ5と、心押台6と、砥石台7と、x軸モータ8と、加工具としての砥石9と、砥石用の駆動モータ10とを具備している。研削盤100において、左右方向がz軸方向であり、前後方向がx軸方向である。そして、x軸方向とz軸方向に垂直な方向がy軸方向である。
【0012】
機械台1は、床面に据え付けられている。この機械台1上面の手前側(
図1Aの下方)に、作業テーブル2がz軸方向に移動可能に支持されている。作業テーブル2の移動は、機械台1に取り付けられたz軸モータ3の駆動により行われる。z軸モータ3にはz軸エンコーダ3aが取り付けられている。主軸台4は、作業テーブル2上の
図1Aの左側に載置されてあって、主軸4a中心軸回りに回転可能なC軸を備えている。主軸4aの回転は、主軸台4に取り付けられたC軸モータ5の駆動により行われる。
【0013】
心押台6は、主軸台4に対向するように作業テーブル2上の
図1Aの右側に載置されている。そして、主軸センタ4cと心押センタ6aとにより、ワークwを挟み付け支持する。砥石台7は、機械台1の上面のうち後方(
図1Aの上方)に設けられている。砥石台7は、機械台1に取り付けられたx軸モータ8により、x軸方向に移動可能にx軌道11上に支持されている。x軸モータ8には、x軸エンコーダ8aが取り付けられている。そして、砥石台7の左側には砥石9が、砥石軸9a回りに回転可能に支持されている。ここで、砥石軸9aの回転中心c1は、主軸中心e1に平行である。また、砥石9は円盤形状である。この砥石9は、ベルトを介して、砥石9用の駆動モータ10により回転される。
【0014】
加工具台(砥石台7)上には、偏心ピン測定装置12が取り付けられており、砥石台7と偏心ピン測定装置12は、一体としてx軸モータによりx軸方向に移動する。
図1Bにおいて、偏心ピン測定装置12は、一対の測定ヘッド15と、一対の測定ヘッド15をx軸に直交する垂直方向のy軸方向に移動可能に支持するy軌道13と、y軸モータ14及びy軸エンコーダ14aを具備する。
【0015】
一対の測定ヘッド15は、夫々が変位計であり、偏心ピンw1を回転させて変位量を検出するものである。本実施例においては、一対の測定ヘッド15は、x軸方向に対向し、両者の間隔はマスターゲージなどで理想の偏心ピン寸法に初期時に較正され、偏心ピンw1に接触した状態で偏心ピンw1を挟み込むように設定される。測定ヘッド15の位置を、主軸(C軸)4aを回転する間において常に偏心ピンw1のピン中心e2からのx軸方向の距離を一定に、かつy軸方向をピン中心e2と同じく制御することで、測定ヘッド15のそれぞれは偏心ピンw1に接触して、ワークの回転位相角度における変位(理想の偏心ピンw1の形状との形状誤差)を測定する。測定ヘッド15を一対としているのは、y軌道13によるy軸方向の移動距離を短くするためである。つまり、偏心ピンw1が180度回転する間の変位量を一対の測定ヘッド15で測定することにより、形状誤差(1周分)に換算することができるのである。片側一方の測定ヘッドを用いる場合には、主軸(C軸)4aを1回転する間において偏心ピンw1のピン中心e2から、偏心ピンw1の半径だけx軸方向に離れた同じy軸方向の位置に片側一方の測定ヘッドが存在するように制御する。
【0016】
図2は、偏心ピンw1の形状の測定方法を示す図である。図では、x軸方向の主軸中心e1の位置を原点として説明している。以下、同様とする。砥石9の回転中心c1、主軸中心e1および偏心ピンw1のピン中心e2が同一線上にあるとき、砥石に対して反対側にある測定ヘッドが偏心ピンに接触したときのx軸方向の位置は、-R-rである(
図2A)。ワークが回転角度θだけ回転したときのx軸方向の位置は、-Rcosθ-rである(
図2B)。ワークが180度回転すると、R-rになる(
図2C)。砥石側にある測定ヘッドが偏心ピンに接触したときのx軸方向の位置は、-R+r(
図2A)である。ワークが回転角度θだけ回転したときのx軸方向の位置は、-Rcosθ+rである(
図2B)。ワークが180度回転すると、R+rになる(
図2C)。
【0017】
図3は研削盤100の制御ブロック構成を示す図である。研削盤100はコンピュータ数値制御装置(CNC)であって、位置制御部200としてCPU16、記憶部17を有している。
【0018】
記憶部17は、理想的形状データ、測定形状データ、修正形状データ、修正加工用データ及びCPU16で実行される制御プログラム17aを記憶する。理想的形状データは偏心ピンw1の目標形状データである。測定された形状データは研削された被加工面を測定して得られた主軸(C軸)4aの回転位相角ごとのデータであり、修正形状データは理想的形状データと測定された形状データとを比較して得られた形状誤差分を加味したデータであり、修正加工用データは修正形状データから作成された加工用のデータである。
【0019】
x軸とC軸の同期制御による実際の偏心円筒の加工では、ワークの回転に伴って加工点が砥石9の外周面に沿って上下に移動するため、この加工点の移動を計算に入れて作成された加工用の制御プログラムによって加工が行われる。一方、本発明に係る測定方法では、常に偏心ピンの直径を測定するように制御プログラム17aは、x軸、C軸、y軸の3軸の同期制御を使用するため、測定した形状データから得られる形状誤差を直接修正加工用のデータとして読み替えることができない。このため、理想的形状データと測定形状データとを比較して得られた形状誤差分を加味した修正形状データを作成し、これから修正加工用データを作成するという手順が必要になる。
【0020】
制御プログラム17aをCPU16により実行することにより、位置制御部200は、例えば、理想的形状データに基づいて加工データを作成し、この加工データによりモータ駆動部18を制御する。このとき、最初の研削加工では理想的形状データに基づく加工データによってモータ駆動部18を制御する。位置検出部19は、位置データを位置制御部200にフィードバックする。また位置制御部200は、モータ駆動部18を用いてx軸モータ8とy軸モータ14により、測定ヘッド15の位置を制御する。
【0021】
モータ駆動部18は、x軸モータ8及びx軸エンコーダ8a、z軸モータ3及びz軸エンコーダ3a、y軸モータ14及びy軸エンコーダ14a、及び、C軸モータ5及びC軸エンコーダ5aに接続されている。モータ駆動部18は、z軸モータ3、C軸モータ5及びx軸モータ8を駆動する。制御プログラム17aにおいてワークwを研削加工するために加工用データによる位置制御が実行されている場合には、モータ駆動部18は、作業テーブル2のz軸方向位置、主軸(C軸)4aの回転角度、主軸(C軸)4aと砥石台7との相対位置を制御する。また制御プログラム17aにおいて研削加工結果の測定が実行されている場合には、モータ駆動部18は、測定ヘッド15が偏心ピンw1に接触した初期の状態のときのピン中心e2からのx軸方向の距離を維持し、かつピン中心e2と同じy軸方向の位置に測定ヘッド15が存在するようにC軸モータ5、x軸モータ8、y軸モータ14を制御する。一対の測定ヘッド15を有する本実施例の場合には、一対の測定ヘッド15が偏心ピンw1を挟むように制御する。
【0022】
位置検出部19は、z軸エンコーダ3aから作業テーブル2のz軸方向位置を検出し、x軸エンコーダ8aから砥石台7のx軸方向位置を検出し、C軸エンコーダ5aから主軸(C軸)4aの回転角度を検出し、y軸エンコーダ14aから測定ヘッド15のy軸方向の位置を検出する。この位置データは、測定形状データとして制御プログラム17aへ送られる。
【0023】
図4は、制御プログラム17aから測定開始信号が出力された場合のフローである。
x軸モータ8及びy軸モータ14により、偏心ピン測定装置12の一対の測定ヘッド15の間に偏心ピンw1と接触して挟むように配置する。主軸(C軸)4aは、原点の位置(本例では、偏心ピンw1が砥石9から最も遠くなった回転位相角を0とした)に移動されている。その時点で測定した測定ヘッド15の測定値、x軸方向の位置、y軸方向の位置、主軸(C軸)4aの回転位相角と関連付けて記憶部17に記憶する(s1)。
【0024】
主軸(C軸)4aを回転させる一方、x軸方向の位置、y軸方向の位置、主軸(C軸)4aの回転位相角を制御して、常に偏心ピンw1のピン中心e2を挟み込むよう制御する。測定ヘッド15のそれぞれは、偏心ピンw1に接触してワークの回転位相角度における偏心ピンw1を測定する(s2)。主軸(C軸)4aが180度回転したかを判定し、180度回転するまでステップs2を継続する(s3)。一対の測定ヘッド15により得られた変位量により、偏心ピンw1の1周分の変位量が得られる。
【0025】
測定形状データは、x軸方向の位置、y軸方向の位置、主軸(C軸)4aの回転位相角、測定ヘッド15の測定値を含んでいる。制御プログラム17aは、測定形状データと、理想的形状データとを比較して、主軸(C軸)4aの各回転位相角に対応する被加工面箇所の形状誤差を求め、主軸(C軸)4aの各回転位相角とこれに対応する形状誤差からなる修正形状データを作成し、記憶部17に記憶させる。
【0026】
制御プログラム17aは、修正形状データから、z軸モータ3、C軸モータ5、x軸モータ8を制御する修正加工用データを作成し、記憶部17に記憶させる。
【0027】
図5は、研削における処理を示す全体のフローを示す図である。
ワークwは、主軸(C軸)4aの主軸センタ4cと心押台6の心押しセンタ6aの間に把持され、研削盤100上にて主軸(C軸)4a回りに回転可能とされる。
【0028】
ワークの形状データ、及び機械条件についてのデータなどを入力部20から入力し記憶部17に記憶する(s21)。機械条件についてのデータとしては、ワークwに対する切込み量k1、砥石9の径(砥石径)である。
【0029】
入力部20からの加工開始操作により、制御プログラム17aは、第1研削工程の必要なデータ処理を開始する。ここに第1研削工程とは、理想的形状データにより規定されるワークwの仕上げ寸法近傍までの加工を実行する工程である(s22)。
【0030】
予定のワークwの仕上げ寸法近傍に達したら、位置制御部200は第1研削工程を中断する。そして、砥石台7をワークwから離れる側(後側)に移動させる(s23)。第1研削工程の中断時における偏心ピンw1の外周面の直径は必要な仕上げ代分大きい状態である。
【0031】
制御プログラム17aは、測定工程を開始する。この処理は、
図4により説明した処理である。測定工程が終了すると、位置制御部200は修正加工用データを読み込み、修正加工を実行する(s26)。この修正加工の後、スパークアウトを行い、加工誤差が許容値内である否か確認し、加工誤差が許容値内でない場合に再び補正加工を行うなどといったことは必要に応じ任意に行えばよい。
【0032】
研削箇所として断面円形状の偏心ピンw1を有するワークwの加工については既述したが、研削箇所の他のポリゴン形状として、真円形ではなく、例えば曲率が連続的に変化する歪円形、曲率が不連続となる箇所を生じさせる直線箇所又は曲線箇所を有する歪円形、又は、三角形や四角形などの多角形であっても、加工すべき表面の形状が理想的形状データとして定義されていれば、それらについて測定し、修正形状データを作成して修正加工することが可能である。
【0033】
上記した本実施例によれば、測定ヘッド15を水平方向に偏心ピンw1に当接している。測定ヘッド15の当接面がy軸方向に長さを持った面であれば、y軸モータ14による位置決め誤差の影響を最小化できる。よって、y軸モータ14による位置決め制御は、研削盤100のC軸モータ5とx軸モータ8が備えている高精度な位置決め制御よりも低い精度のもので良く、低コストで偏心ピンw1の位相角度ごとの真円度と偏心量を測定できる。
【0034】
上記した本実施例によれば、砥石台7を移動するx軸モータ8と、砥石台7と一体に移動する偏心ピン測定装置12に設けられたy軸モータ14と、これら2軸にC軸モータ5とを加えた3軸(x軸、C軸、y軸)を同期制御することで、y軸に搭載した測定ヘッド15によって偏心ピンの真円度、外径寸法、偏心量の測定が可能になる。このため、ワークwを主軸センタ4cと心押センタ6aとの間に挟み込んで支持したまま、偏心ピンの形状測定が可能になる。よって、研削盤100とは別の測定装置までの運搬の手間が不要になり、修正加工を実施するためにワークwを再度、研削盤100に取り付ける際の誤差が発生しない。さらに測定結果から形状補正データを作成して入力するまでを自動的に行うことができ、迅速な修正加工の実施、さらには形状補正データの入力ミスを防ぐことができる。
【0035】
上記実施例においては、1対の測定ヘッド15を用いたが、測定ヘッド15を2つ用いるため、偏心ピン測定装置12の占有スペースが大きくなる。そこで、測定ヘッド15を1つにして測定しても良い。この場合、偏心ピンの形状データを得るためにはワークwを360度1回転させて、測定ヘッド15をy軸方向に2Rだけ移動する必要はあるが、測定ヘッドの占有スペースを小さくすることができる。先の例と同様に、偏心ピンの形状はポリゴン形状であっても測定可能である。
【0036】
[実施例2]
図6に他の実施例2を示す。これらの実施例は、偏心ピン測定装置12の一部の変更と、制御プログラム17aの一部修正で実現される。他の構成は、実施例1と同じなので説明は省略する。尚、レーザセンサ15aを使用しているので、実施例1で使用した一般的な変位測定器の場合よりも、偏心ピンから離れて測定することができる。
【0037】
図6において、実施例1では、一対の測定ヘッド15はx軸方向に対向して設けられ、接触により測定するセンサであったが、本例では
図6Aに示すように一対の測定ヘッド15は、y軸方向に対向して設けられたレーザセンサ15aであり、位置制御部200は、x軸モータ8を動かして偏心ピンw1をレーザセンサ15aの光源の間に挟むように駆動する。レーザセンサ15aは、上下の外表面にレーザを照射して外径寸法と真円度を測定する。
【0038】
モータ駆動部18は、初期の状態のときのピン中心e2からレーザセンサ15aまでのy軸方向の距離を維持し、かつピン中心e2と同じx軸方向の位置にレーザセンサ15aが存在するようにC軸モータ5、x軸モータ8、y軸モータ14を制御する。一対のレーザセンサ15aを有する場合には、一対のレーザセンサ15aが偏心ピンw1を挟むように制御する。
【0039】
本例では、y軸方向のy軸モータとy軸エンコーダの精度は、実施例1のものよりは高いものを使用する。一方で、レーザセンサ15aの測定範囲が広く、偏心ピンから離れても測定できることから、初期状態で上下のレーザセンサ15aの中央をピンw1の中心に厳密に合わせる必要はない。
【0040】
図6Bにレーザセンサ15aの仕様を示す。測定範囲の異なる2つのタイプの変位センサを示した。例えば変位センサNo.1では、中心から190mm離れた位置にセンサ面を設置すると、半径85mm~半径125mmの偏心ピンの外周面を測定できる。このため、偏心ピン径が変わっても許容径差範囲内であれば段取り替え作業は不要である。
【0041】
リニアリティーは、40mmの測定範囲で40×0.00015=0.006mmであるが、マスターゲージで較正すれば誤差がキャンセルされるため、精度的には問題ないと思われる。y軸の位置決め精度は±1μm程度が想定される。したがって、上側レーザセンサと下側レーザセンサの出力を演算処理して偏心ピンの外径寸法とし、これに基づいて真円度を評価する。
【0042】
実施例1では、位置制御部200は、主軸(C軸)4aを回転させるとともに、測定ヘッド15の初期の状態のときのピン中心e2から測定ヘッド15までのx軸方向の距離を維持し、かつピン中心e2と同じy軸方向の位置に測定ヘッド15が存在するようにx軸方向の位置、y軸方向の位置を制御した。すなわち、y軸方向についてみれば、距離を「0」に維持している。一方、また、実施例2では、位置制御部200は、主軸(C軸)4aを回転させるとともに、初期の状態のとき測定ヘッド15までのピン中心e2からのy軸方向の距離を維持し、かつピン中心e2と同じx軸方向の位置に測定ヘッド15が存在するようにx軸方向の位置、y軸方向の位置を制御した。すなわち、x軸方向についてみれば、距離を「0」に維持している。
【0043】
このように、いずれの実施例においても、初期の状態のときのピン中心からのx軸方向の距離と、初期の状態のときのピン中心と同じy軸方向の距離が、主軸(C軸)4aが回転している間において、維持するように測定ヘッド15のx軸方向、y軸方向の位置を制御している。例えば、測定ヘッド15が偏心ピンw1に接触した初期の状態のときにピン中心e2に対して任意の角度の位置に測定ヘッド15が存在したとすれば、主軸(C軸)4aの回転中も、初期におけるピン中心からのx軸方向の距離とy軸方向の距離を維持することで一般化できる。
【符号の説明】
【0044】
1 機械台
2 作業テーブル
3 z軸モータ
3a z軸エンコーダ
4 主軸台
4a 主軸(C軸)
4c 主軸センタ
5 C軸モータ
5a C軸エンコーダ
6 心押台
6a 心押センタ
7 砥石台
8 x軸モータ
8a x軸エンコーダ
9 砥石
9a 砥石軸
10 駆動モータ
11 x軌道
12 偏心ピン測定装置
13 y軌道
14 y軸モータ
14a y軸エンコーダ
15 測定ヘッド
15a レーザセンサ
16 CPU
17 記憶部
17a 制御プログラム
18 モータ駆動部
19 位置検出部
20 入力部
100 研削盤
200 位置制御部
c1 回転中心
e1 主軸中心
e2 ピン中心
k1 切込み量
w ワーク
w1 偏心ピン
θ 回転角度