(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001871
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】熱管理システム
(51)【国際特許分類】
B60W 20/00 20160101AFI20241226BHJP
B60W 10/26 20060101ALI20241226BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20241226BHJP
B60W 20/15 20160101ALI20241226BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20241226BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20241226BHJP
B60L 58/27 20190101ALI20241226BHJP
【FI】
B60W20/00 900
B60W10/26 900
B60W10/06 900
B60W20/15 ZHV
B60L50/16
B60L50/60
B60L58/27
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023101603
(22)【出願日】2023-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉原 寛之
【テーマコード(参考)】
3D202
5H125
【Fターム(参考)】
3D202BB08
3D202BB22
3D202BB58
3D202CC43
3D202DD22
3D202DD46
5H125AA01
5H125AC08
5H125AC12
5H125CD09
5H125FF27
(57)【要約】
【課題】ハイブリッド車両に搭載される熱管理システムにおいて、エネルギー効率よくバッテリを暖機する。
【解決手段】熱管理システム1は、エンジン回路2と、電気ヒータ35を含むバッテリ回路3と、熱交換器4と、バッテリ32を暖機する複数のモードを切り替え可能に構成された切替弁23,33と、モードを選択するECU5とを備える。エンジン廃熱モードは、電気ヒータ35を停止させる一方でエンジン22を動作させることによって熱媒体を暖めるモードである。電気ヒータモードは、電気ヒータ35を動作させることによって熱媒体を暖めるモードである。ECU50は、エンジン22を流通する熱媒体の温度がエンジンの暖機温度よりも高い場合、エンジン廃熱モードを選択し、エンジン22を流通する熱媒体の温度が暖機温度よりも低い場合、電気ヒータモードを選択する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンおよびバッテリを含む車両に搭載される熱管理システムであって、
前記エンジンを流通可能な第1熱媒体を循環させるように構成されたエンジン回路と、
前記バッテリを流通可能な第2熱媒体を循環させるように構成され、前記第2熱媒体を加熱するヒータを含むバッテリ回路と、
前記第1熱媒体と前記第2熱媒体との間で熱交換を行う熱交換器と、
前記バッテリを暖機する複数のモードを切り替え可能に構成された切替弁と、
前記複数のモードのうちのいずれかのモードを選択するプロセッサとを備え、
前記複数のモードは、
前記第1熱媒体および前記第2熱媒体の両方を循環させながら、前記ヒータを停止させる一方で前記エンジンを駆動させることによって前記第2熱媒体を暖めるエンジン廃熱モードと、
前記第1熱媒体の循環を停止する一方で前記第2熱媒体を循環させながら、前記ヒータを動作させることによって前記第2熱媒体を暖めるヒータモードとを含み、
前記プロセッサは、
前記エンジンを流通する前記第1熱媒体の温度が前記エンジンの暖機温度よりも高い場合、前記エンジン廃熱モードを選択し、
前記エンジンを流通する前記第1熱媒体の温度が前記暖機温度よりも低い場合、前記ヒータモードを選択する、熱管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱管理システムに関し、より特定的には、エンジンおよびバッテリを含むハイブリッド車両に搭載される熱管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2013-38998号公報(特許文献1)に開示されたプラグインハイブリッド車両には、エンジンと、エンジンに連結されるとともにエンジンの廃熱と熱交換し、エンジンを冷却する冷却水が循環する冷却液循環路と、冷却液循環路に設けられるラジエータと、二次電池と、二次電池に充電された電力によって駆動される走行モータと、が搭載されている。冷却液循環路の一部は二次電池に連結され、二次電池と冷却水との熱交換により二次電池を温度調節可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
たとえばプラグインハイブリッド車両をプラグイン充電する場合などには、バッテリの温度が低いとバッテリ保護のために充電電力が制限されるため、バッテリが暖機される。エネルギー効率よくバッテリを暖機することに対する要求が存在する。
【0005】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであり、本開示の目的の1つは、ハイブリッド車両に搭載される熱管理システムにおいて、エネルギー効率よくバッテリを暖機することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある局面に係る熱管理システムは、エンジンおよびバッテリを含むハイブリッド車両に搭載される。熱管理システムは、エンジンを流通可能な第1熱媒体を循環させるように構成されたエンジン回路と、バッテリを流通可能な第2熱媒体を循環させるように構成され、第2熱媒体を加熱するヒータを含むバッテリ回路と、第1熱媒体と第2熱媒体との間で熱交換を行う熱交換器と、バッテリを暖機する複数のモードを切り替え可能に構成された切替弁と、複数のモードのうちのいずれかのモードを選択するプロセッサとを備える。複数のモードは、エンジン廃熱モードと、ヒータモードとを含む。エンジン廃熱モードは、第1熱媒体および第2熱媒体の両方を循環させながら、ヒータを停止させる一方でエンジンを動作させることによって第2熱媒体を暖めるモードである。ヒータモードは、第1熱媒体の循環を停止する一方で第2熱媒体を循環させながら、ヒータを動作させることによって第2熱媒体を暖めるモードである。プロセッサは、エンジンを流通する第1熱媒体の温度がエンジンの暖機温度よりも高い場合、エンジン廃熱モードを選択し、エンジンを流通する第1熱媒体の温度が暖機温度よりも低い場合、ヒータモードを選択する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ハイブリッド車両に搭載される熱管理システムにおいて、エネルギー効率よくバッテリを暖機できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の実施の形態に係る熱管理システムの全体構成の一例を示す図である。
【
図2】本実施の形態における複数のバッテリ暖機モードを説明するための図である。
【
図3】本実施の形態におけるバッテリ暖機制御の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0010】
<システム構成>
図1は、本開示の実施の形態に係る熱管理システムの全体構成の一例を示す図である。熱管理システム1は、プラグインハイブリッド車両(PHEV)またはハイブリッド車両(HEV)に搭載され、エンジン回路2と、バッテリ回路3と、熱交換器4と、電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)5とを備える。
【0011】
エンジン回路2は、ウォータポンプ(W/P)21と、エンジン22と、三方弁23と、ラジエータ24と、エンジン水温センサ25とを含む。ウォータポンプ21は、ECU5からの制御指令に従って、エンジン回路2内で第1熱媒体(冷却液)を循環させる。エンジン22は、ECU5からの制御指令に従って始動/停止される。三方弁23は、ECU5からの制御指令に従って、ラジエータ24と熱交換器4とのうちの一方に第1熱媒体を選択的に流通させることが可能に構成されている。ラジエータ24は、エンジン22の廃熱を外気に放出する。エンジン水温センサ25は、エンジン22を流通した後の第1熱媒体の温度であるエンジン水温Tengを検出し、その検出値をECU5に出力する。
【0012】
バッテリ回路3は、ウォータポンプ31と、バッテリ32と、三方弁33と、ラジエータ34と、電気ヒータ35と、バッテリ温度センサ36と、バッテリ水温センサ37とを含む。ウォータポンプ31は、ECU5からの制御指令に従って、バッテリ回路2内で第2熱媒体(冷却液)を循環させる。バッテリ32は、組電池(図示せず)を含み、車両のプラグイン充電時には充電されたり、車両の走行時には放電したりする。三方弁33は、ECU5からの制御指令に従って、ラジエータ34と、電気ヒータ35および熱交換器4のうちの一方とに第2熱媒体を選択的に流通させることが可能に構成されている。ラジエータ34は、高温になったバッテリ32の熱を外気に放出する。電気ヒータ35は、ECU5からの制御指令に従って第2熱媒体を加熱する。バッテリ温度センサ36は、バッテリ32の内部温度(組電池の温度)であるバッテリ温度TBを検出し、その検出値をECU5に出力する。バッテリ水温センサ37は、バッテリ32を流通した後の第2熱媒体の温度であるバッテリ水温Tbatを検出し、その検出値をECU5に出力する。
【0013】
熱交換器4は、エンジン回路2を循環する第1熱媒体と、バッテリ回路3を循環する第2熱媒体との間で熱交換を行う。
【0014】
ECU5は、プロセッサおよびメモリを含む。ECU5は、上記各センサの検出値に基づいて制御指令を生成し、生成された制御指令を熱管理システム1内の対応する機器に出力することによって、熱管理システム1を制御する。ECU5は、車両のプラグイン充電時等にバッテリ32を暖機するための複数の「バッテリ暖機モード」を有する。
【0015】
<バッテリ暖機モード>
図2は、本実施の形態における複数のバッテリ暖機モードを説明するための図である。複数のバッテリ暖機モードは、電気ヒータモードと、エンジン廃熱モードと、併用モードとを含む。
【0016】
電気ヒータモードとは、エンジン回路2における第1熱媒体の循環を停止する一方でバッテリ回路3において第2熱媒体を循環させながら、電気ヒータ35を動作させることによって、第2熱媒体を暖めるモードである。エンジン22は、駆動していてもよいし、停止していてもよい。電気ヒータモードでは、ウォータポンプ31-熱交換器4-電気ヒータ35(動作)-三方弁33-バッテリ32-ウォータポンプ31の順に第2熱媒体が流通する経路が形成される。
【0017】
エンジン廃熱モードとは、エンジン回路2における第1熱媒体およびバッテリ回路3における第2熱媒体の両方を循環させながら、電気ヒータ35を停止させる一方でエンジン22を駆動させることによって、第2熱媒体を暖めるモードである。エンジン廃熱モードでは、ウォータポンプ21-エンジン22(駆動)-三方弁23-熱交換器4-ウォータポンプ21の順に第1熱媒体が流通する経路が形成されるとともに、ウォータポンプ31-熱交換器4-電気ヒータ35(停止)-三方弁33-バッテリ32-ウォータポンプ31の順に第2熱媒体が流通する経路が形成される。
【0018】
併用モードとは、エンジン回路2における第1熱媒体およびバッテリ回路3における第2熱媒体の両方を循環させながら、電気ヒータ35を動作させ、かつエンジン22を駆動させることによって、第2熱媒体を暖めるモードである。併用モードでは、ウォータポンプ21-エンジン22(駆動)-三方弁23-熱交換器4-ウォータポンプ21の順に第1熱媒体が流通する経路が形成されるとともに、ウォータポンプ31-熱交換器4-電気ヒータ35(動作)-三方弁33-バッテリ32-ウォータポンプ31の順に第2熱媒体が流通する経路が形成される。
【0019】
<処理フロー>
図3は、本実施の形態におけるバッテリ暖機制御の処理手順の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、予め定められた条件の成立時(たとえば予め定められた周期ごと)にECU5によって実行される。以下、ステップをSと略す。
【0020】
S1において、ECU5は、バッテリ温度センサ36により検出されたバッテリ温度TBが予め定められた閾値温度TH(たとえば0℃)よりも低いかどうかを判定する。バッテリ温度TBが閾値温度TH以上である場合(S1においてNO)、電気ヒータ35は停止され、バッテリ32の暖機は非実行とされる(S9)。バッテリ温度TBが閾値温度THよりも低い場合(S1においてYES)、ECU5は処理をS2に進める。
【0021】
S2において、ECU5は、車両(この例ではプラグインハイブリッド車両)が充電中であるかどうかを判定する。車両が充電中である場合(S2においてYES)、ECU5は、処理をS3に進め、バッテリ水温センサ37により検出されたバッテリ水温Tbatが、エンジン水温センサ25により検出されたエンジン水温Tengよりも高いかとうかを判定する。
【0022】
バッテリ水温Tbatがエンジン水温Tengよりも高い場合(S3においてYES)、ECU5は電気ヒータモードを選択する(S6)。一方、バッテリ水温Tbatがエンジン水温Teng以下である場合(S3においてNO)、ECU5は併用モードを選択する(S7)。
【0023】
S2にて車両が充電中でない場合(S2においてNO)、たとえば車両が走行中である場合、ECU5は、処理をS4に進め、エンジン22が駆動されているかどうかを判定する。エンジン22が駆動されている場合(S4においてYES)、ECU5は、エンジン22の暖機が完了しているかどうかを判定する(S5)。エンジン22の暖機が完了しているかどうかは、たとえばエンジン水温Tengに基づいて判定され得る。エンジン22の暖機が完了している場合(S5においてYES)、ECU5はエンジン廃熱モードを選択する(S8)。
【0024】
エンジン22が停止している場合(S4においてNO)、および、エンジン22が始動されていてもエンジン22の暖機途中などであって暖機が未完了である場合(S5においてNO)には、ECU5は、処理をS6に進め、電気ヒータモードを選択する。
【0025】
以上のように、本実施の形態におけるエンジン廃熱モードおよび併用モードでは、エンジン回路2において発生したエンジン22の廃熱を熱交換機4を介してバッテリ回路3へと移動させることによって、エンジン22の廃熱をバッテリ32の暖機に利用できる。これにより、エンジン22の廃熱を利用しない場合と比べて、電気ヒータ35の消費電力量を低減可能である。よって、本実施の形態によれば、エネルギー効率よくバッテリ32を暖機できる。
【0026】
なお、
図1および
図2に記載した熱管理システム1の構成は例示に過ぎない。図示しないが、たとえば、バッテリ回路3において、三方弁33およびラジエータ34が設けられていなくてもよい(他の実施例1)。バッテリ回路3において、ラジエータ34に代えてチラーが設けられるとともに、冷凍サイクルの他の構成要素であるコンプレッサおよび空冷コンデンサが設けられていてもよい(他の実施例2)。また、バッテリ回路3のラジエータ34に代えてチラーが設けられ、かつ、エンジン回路2との間で熱交換する水冷コンデンサと、コンプレッサとが設けられていてもよい(他の実施例3)。
【0027】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0028】
1 熱管理システム、2 エンジン回路、21 ウォータポンプ、22 エンジン、23 三方弁、24 ラジエータ、25 エンジン水温センサ、3 バッテリ回路、31 ウォータポンプ、32 バッテリ、33 三方弁、34 ラジエータ、35 電気ヒータ、36 バッテリ温度センサ、37 バッテリ水温センサ、4 熱交換器、5 ECU。