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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025018719
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】植物育成装置および植物育成方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 31/00 20180101AFI20250130BHJP
   A01G 7/00 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
A01G31/00 601A
A01G31/00 612
A01G7/00 601A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023122695
(22)【出願日】2023-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】大和田 樹志
(72)【発明者】
【氏名】阿部 亮二
(72)【発明者】
【氏名】松田 僚三
(72)【発明者】
【氏名】田中 浩太
(72)【発明者】
【氏名】大原 明
【テーマコード(参考)】
2B022
2B314
【Fターム(参考)】
2B022DA01
2B314MA17
2B314MA38
2B314PA02
2B314PB02
2B314PD59
(57)【要約】
【課題】収量を減らすことなく、コストを削減する。
【解決手段】人工光により植物を育成する植物育成装置は、植物を育成する育成空間と、育成空間に人工光を照射する少なくとも1つの光源パネルと、植物に与えられる肥料を含む養液である液体肥料を収容し植物の少なくとも根が配置される栽培槽と、植物の吸肥量に対応する量を繰り返して測定する測定装置と、測定装置で測定された量の設定期間内の減少率が閾値より大きい場合、植物の育成環境を植物の光合成を抑圧する環境に変化するよう制御する環境制御装置とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工光により植物を育成する植物育成装置であって、
前記植物を育成する育成空間と、
前記育成空間に人工光を照射する少なくとも1つの光源パネルと、
前記植物に与えられる肥料を含む養液である液体肥料を収容し、前記植物の少なくとも根が配置される栽培槽と、
前記植物の吸肥量に対応する量を繰り返して測定する測定装置と、
前記測定装置で測定された前記量の設定期間内の減少率が閾値より大きい場合、前記植物の育成環境を前記植物の光合成を抑圧する環境に変化するよう制御する環境制御装置とを備える
ことを特徴とする植物育成装置。
【請求項2】
前記測定装置は、前記栽培槽に供給される前記液体肥料の量を繰り返して測定する液量センサと、少なくとも前記液量センサの測定結果から前記量を繰り返して計算する計算部を有し、
前記環境制御装置は、前記量の設定期間内の減少率が閾値より大きい場合、前記植物の育成環境を前記植物の光合成を抑圧する環境に変化するよう制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の植物育成装置。
【請求項3】
前記測定装置は、前記植物または前記植物と同期間に同環境で育成された前記植物と同品種の植物個体内を流れる液体の肥料濃度に対応する電気的特性を繰り返して測定するセンサを有し、
前記環境制御装置は、前記肥料濃度の設定期間内の減少率が閾値より大きい場合、前記植物の育成環境を前記植物の光合成を抑圧する環境に変化するよう制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の植物育成装置。
【請求項4】
前記測定装置は、前記植物または前記植物と同期間に同環境で育成された前記植物と同品種の植物個体から採取されたサンプル中に残存する肥料の量に対応する電気的特性を繰り返して測定し、
前記環境制御装置は、前記肥料の量の設定期間内の減少率が閾値より大きい場合、前記植物の育成環境を前記植物の光合成を抑圧する環境に変化するよう制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の植物育成装置。
【請求項5】
人工光により植物を育成する植物育成装置であって、
前記植物を育成する育成空間と、
前記育成空間に人工光を照射する少なくとも1つの光源パネルと、
前記植物の少なくとも根が配置される栽培槽と、
前記植物の組織中の液体の糖の濃度に対応する電気的特性を非破壊的に繰り返して測定する測定装置と、
前記糖の濃度の設定期間内の減少率が閾値より大きい場合、前記植物の育成環境を前記植物の光合成を抑圧する環境に変化するよう制御する環境制御装置とを備える
ことを特徴とする植物育成装置。
【請求項6】
人工光により植物を育成する植物育成装置であって、
前記植物を育成する育成空間と、
前記育成空間に人工光を照射する少なくとも1つの光源パネルと、
前記植物の少なくとも根が配置される栽培槽と、
前記植物または前記植物と同期間に同環境で育成された前記植物と同品種の植物個体から採取されたサンプル中に残存する肥料の量に対応する電気的特性を繰り返して測定する測定装置と、
前記肥料の量の設定期間内の減少率が閾値より大きい場合、前記植物の育成環境を前記植物の光合成を抑圧する環境に変化するよう制御する環境制御装置とを備える
ことを特徴とする植物育成装置。
【請求項7】
前記環境制御装置は、前記植物の育成環境を前記植物の光合成を抑圧する環境に変化するよう制御することとして、前記人工光の発光量の低下、前記人工光の照射時間の短縮、および前記人工光の青色波長領域の削減の少なくともいずれかを行う
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の植物育成装置。
【請求項8】
前記環境制御装置は、前記植物の育成環境を前記植物の光合成を抑圧する環境に変化するよう制御することとして、前記育成空間内の温度を低下させる
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の植物育成装置。
【請求項9】
前記環境制御装置は、前記植物の育成環境を前記植物の光合成を抑圧する環境に変化するよう制御することとして、前記育成空間内の空気中の二酸化炭素濃度を低下させる
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の植物育成装置。
【請求項10】
前記環境制御装置は、前記植物の育成環境を前記植物の光合成を抑圧する環境に変化するよう制御することとして、追肥量を低下させる
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の植物育成装置。
【請求項11】
前記少なくとも1つの光源パネルが複数の前記植物に側方から人工光を照射する
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の植物育成装置。
【請求項12】
人工光により植物を育成する植物育成方法であって、
前記植物を育成する育成空間に人工光を照射することと、
前記植物の少なくとも根が配置される栽培槽に、前記植物に与えられる肥料を含む養液を供給することと、
前記植物の吸肥量に対応する量を繰り返して測定することと、
測定された前記量の設定期間内の減少率が閾値より大きい場合、前記植物の育成環境を前記植物の光合成を抑圧する環境に変化するよう制御することとを備える
ことを特徴とする植物育成方法。
【請求項13】
人工光により植物を育成する植物育成方法であって、
前記植物を育成する育成空間に人工光を照射することと、
前記植物の少なくとも根が配置される栽培槽に、前記植物に与えられる肥料を供給することと、
前記植物の組織中の液体の糖の濃度に対応する電気的特性を非破壊的に繰り返して測定することと、
前記糖の濃度の設定期間内の減少率が閾値より大きい場合、前記植物の育成環境を前記植物の光合成を抑圧する環境に変化するよう制御することとを備える
ことを特徴とする植物育成方法。
【請求項14】
人工光により植物を育成する植物育成方法であって、
前記植物を育成する育成空間に人工光を照射することと、
前記植物の少なくとも根が配置される栽培槽に、前記植物に与えられる肥料を供給することと、
前記植物または前記植物と同期間に同環境で育成された前記植物と同品種の植物個体から採取されたサンプル中に残存する肥料の量に対応する電気的特性を繰り返して測定することと、
前記肥料の量の設定期間内の減少率が閾値より大きい場合、前記植物の育成環境を前記植物の光合成を抑圧する環境に変化するよう制御することとを備える
ことを特徴とする植物育成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工光により植物を育成する植物育成装置および植物育成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
農作物の増産および安定収穫を実現するための方策として、植物工場が検討されてきている。植物工場においては、人工光源から農作物に照射される光合成のための光の強度や、植物育成空間における温度、湿度、二酸化炭素(CO)濃度、風速といった環境条件、植物成長のための肥料成分といった各パラメータを制御することが可能である。そのため、農作物の周年生産を行うことができ、農作物の生産性を飛躍的に高めることが可能である。
【0003】
特許文献1は、太陽光を用いずにLED(light emitting diode)光源などからの人工光を照射して植物を栽培する閉鎖型植物工場を開示する。この閉鎖型植物工場では、植物体の側面から光を近接照射することで、トマトやキュウリなどの垂直方向に伸長して草丈の高くなる野菜でも栽培することができるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5330162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、屋外の植物は一年の自然環境の変化に対応して成長する。例えば、豆類は日長の変化に応じて、開花し、莢がつく。莢がつく頃には光合成量も減少する。農作物の光合成について、水、光、CO、および肥料は重要な因子である。
【0006】
従来の人工光栽培では、作物の収量を最大化するために、光合成に重要な因子である水、光、CO、および肥料を過剰に供給することが多いと、出願人は考える。
【0007】
そこで、本発明は、収量を減らすことなく、コストを削減することができる植物育成装置および植物育成方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様では、人工光により植物を育成する植物育成装置を提供する。この植物育成装置は、前記植物を育成する育成空間と、前記育成空間に人工光を照射する少なくとも1つの光源パネルと、前記植物に与えられる肥料を含む養液である液体肥料を収容し、前記植物の少なくとも根が配置される栽培槽と、前記植物の吸肥量に対応する量を繰り返して測定する測定装置と、前記測定装置で測定された前記量の設定期間内の減少率が閾値より大きい場合、前記植物の育成環境を前記植物の光合成を抑圧する環境に変化するよう制御する環境制御装置とを備える。
【0009】
本発明の他の態様では、人工光により植物を育成する植物育成装置を提供する。この植物育成装置は、前記植物を育成する育成空間と、前記育成空間に人工光を照射する少なくとも1つの光源パネルと、前記植物の少なくとも根が配置される栽培槽と、前記植物の組織中の液体の糖の濃度に対応する電気的特性を非破壊的に繰り返して測定する測定装置と、前記糖の濃度の設定期間内の減少率が閾値より大きい場合、前記植物の育成環境を前記植物の光合成を抑圧する環境に変化するよう制御する環境制御装置とを備える。
【0010】
本発明の他の態様では、人工光により植物を育成する植物育成装置を提供する。この植物育成装置は、前記植物を育成する育成空間と、前記育成空間に人工光を照射する少なくとも1つの光源パネルと、前記植物の少なくとも根が配置される栽培槽と、前記植物または前記植物と同期間に同環境で育成された前記植物と同品種の植物個体から採取されたサンプル中に残存する肥料の量に対応する電気的特性を繰り返して測定する測定装置と、前記肥料の量の設定期間内の減少率が閾値より大きい場合、前記植物の育成環境を前記植物の光合成を抑圧する環境に変化するよう制御する環境制御装置とを備える。
【0011】
本発明のある態様では、人工光により植物を育成する植物育成方法を提供する。この植物育成方法は、前記植物を育成する育成空間に人工光を照射することと、前記植物の少なくとも根が配置される栽培槽に、前記植物に与えられる肥料を含む養液を供給することと、前記植物の吸肥量に対応する量を繰り返して測定することと、測定された前記量の設定期間内の減少率が閾値より大きい場合、前記植物の育成環境を前記植物の光合成を抑圧する環境に変化するよう制御することとを備える。
【0012】
本発明の他の態様では、人工光により植物を育成する植物育成方法を提供する。この植物育成方法は、前記植物を育成する育成空間に人工光を照射することと、前記植物の少なくとも根が配置される栽培槽に、前記植物に与えられる肥料を供給することと、前記植物の組織中の液体の糖の濃度に対応する電気的特性を非破壊的に繰り返して測定することと、前記糖の濃度の設定期間内の減少率が閾値より大きい場合、前記植物の育成環境を前記植物の光合成を抑圧する環境に変化するよう制御することとを備える。
【0013】
本発明の他の態様では、人工光により植物を育成する植物育成方法を提供する。この植物育成方法は、前記植物を育成する育成空間に人工光を照射することと、前記植物の少なくとも根が配置される栽培槽に、前記植物に与えられる肥料を供給することと、前記植物または前記植物と同期間に同環境で育成された前記植物と同品種の植物個体から採取されたサンプル中に残存する肥料の量に対応する電気的特性を繰り返して測定することと、前記肥料の量の設定期間内の減少率が閾値より大きい場合、前記植物の育成環境を前記植物の光合成を抑圧する環境に変化するよう制御することとを備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明の態様によれば、植物の子実肥大期および/または成熟期に植物の育成環境を植物の光合成を抑圧する環境に変化するよう制御することができる。子実肥大期および/または成熟期に光合成を抑圧しても、植物の種子または地下茎の収量は減らず、コストを削減することができる。したがって、人工光栽培において、収量を減らすことなく、コストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態に係る植物育成装置の概略構成例を示す模式図である。
図2図1の植物育成装置の栽培ユニットの斜視図である。
図3】栽培ユニットの光源パネルの正面図である。
図4図3の光源パネルの縦断面図である。
図5】本発明の実施形態の変形例に係る光源パネルの縦断面図である。
図6】大豆の累積吸肥量の変化を示すグラフである。
図7】大豆の累積吸肥量の変化を示すグラフである。
図8】本発明の第2実施形態に係る植物育成装置の概略構成例を示す模式図である。
図9】本発明の第3実施形態に係る植物育成装置の概略構成例を示す模式図である。
図10】本発明の第4実施形態に係る植物育成装置の概略構成例を示す模式図である。
図11】本発明の第5実施形態に係る植物育成装置の概略構成例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付の図面を参照しながら本発明に係る様々な実施形態を説明する。図面の縮尺は必ずしも正確ではなく、一部の特徴は誇張または省略されることもある。
【0017】
実施形態に係る植物育成装置は、植物工場内に配置される。
図1に示すように、第1実施形態に係る植物育成装置1は、植物を育成するための多数の栽培ユニット2が配置されている。育成される植物は、例えば豆類のような農作物であるが、光合成を行う他の植物であってもよい。
実施形態に係る植物育成装置1が配置される植物工場には、空調システム20が設けられている。空調システム20は、植物が育成される領域の環境を、植物の育成に適した温度、湿度、二酸化炭素(CO)濃度に調整する。
【0018】
図1および図2に示すように、第1実施形態に係る植物育成装置1の栽培ユニット2は、上部10と、上部10の下方に配置された栽培槽12と、栽培槽12の上端に取り付けられた支持パネル14を有する。上部10は、植物200の茎および葉が成長する(すなわち植物を育成する)育成空間30を有する。
【0019】
栽培槽12には、植物200の少なくとも根(主根、側根を含む)が配置され、ここで根が成長する。植物200の茎の下部も栽培槽12に配置されている。支持パネル14は植物200を支持する。
【0020】
栽培槽12は、植物200の根に与えられる肥料を含む養液(液体肥料すなわち液肥)16を収容する容器である。栽培槽12には養液供給システム18が接続されており、養液供給システム18は栽培槽12へ養液16を供給する。
【0021】
栽培ユニット2の上部10は、育成空間30に人工光Liを照射する少なくとも1つの光源パネル32を有する。光源パネル32は植物200に側方から人工光Liを照射する。この実施形態では、上部10は、2つの光源パネル32を備え、これらの光源パネル32は鉛直に配向され、互いに平行に配置されている。このように、2つの光源パネル32が対向しており、育成空間30が2つの光源パネル32の間に介在し、2つの光源パネル32が植物200に両側方から人工光Liを照射する。
【0022】
図2に示すように、光源パネル32は、植物200の成長高さの上限よりも大きい高さXを有し、互いに間隔をおいて植えられた複数の植物200にほぼ均等かつ十分に人工光Liを当てることが可能な幅Yを有する。
2つの光源パネル32の間の間隔Zは、植物200の各葉にほぼ均等かつ十分に人工光Liを当てることが可能なように大きく設定されている。また、間隔Zは、光源パネル32からの放熱により植物200に損傷を与えないように大きく設定されている。但し、間隔Zは、幅Yをn+1で除算した商よりも小さい(nは育成空間30内の植物200の数である)。したがって、間隔Zは、1つの植物200に対応する光源パネル32の発光領域の幅Wよりも小さい。発光領域とは、後述するLEDチップが実装された領域である。
【0023】
光源パネル32の光源は、例えば、複数の蛍光灯、複数の冷陰極蛍光ランプ、複数のOLED(organic light-emitting diode)素子であってもよい。しかし、実施形態においては、発熱量が少ない複数のLED(light-emitting diode)チップが使用される。
図3および図4に示すように、光源パネル32は、支持体である平坦な基板33と、基板33上に並べられた複数のLEDチップ34を有する。これらのLEDチップ34は、同じタイプである。したがって、同じ電流と電圧が与えられると、これらのLEDチップ34は同じ光量子束密度の人工光Liを放出する。LEDチップ34は、規則的に(具体的にはマトリックス状に)、縦横に等間隔をおいて配置されている。
LEDチップ34は、光源パネル32のうち、高さX1、幅Y1の発光領域に実装されている。
【0024】
基板33には、これらのLEDチップ34を点灯するための配線(図示せず)が設けられている。光源パネル32の外部には、これらのLEDチップ34の発光を同時に制御する発光制御装置44(図1参照)が設けられている。
【0025】
基板33の発光領域には、複数の通気孔35が形成されている。通気孔35は貫通孔である。これらの通気孔35を通じて、空調システム20で管理された空気が育成空間30に供給され、光源パネル32からの放熱によって植物200が過熱されることが防止されている(なお、空調システム20で管理された空気は育成空間30に直接供給されてもよい)。通気孔35は互いに同じサイズを有し、規則的に(具体的にはマトリックス状に)、縦横に等間隔をおいて配置されている。但し、通気孔35は、互いに異なるサイズを有していてもよいし、不規則的に配置されていてもよい。
光源パネル32を冷却するため、通気孔35に加えてあるいは通気孔35に代えて、他の方策を用いてもよい。例えば、基板33のLEDチップ34と反対側の面に放熱部材、水冷管または空冷管を接触させてもよい。
【0026】
育成空間30内での人工光Liの利用効率を高めるため、基板33のLEDチップ34側の面は、光の反射率が高いことが好ましい。基板33は、光を反射する部材(例えば、表面が平滑な金属)から形成されていることが好ましい。基板33のLEDチップ34側の面を光反射塗料でコートしてもよい。
【0027】
図3および図4に示される光源パネル32は例に過ぎない。LEDチップ34のサイズ、数、および間隔は図示に限定されず、通気孔35のサイズ、数、および間隔も図示に限定されない。
【0028】
植物200ひいては育成空間30に対する光源パネル32の位置は限定されず、例えば、光源パネル32を育成空間30の上方に配置して、光源パネル32が上方から人工光Liを育成空間30に放出するようにしてもよい。
【0029】
しかし、育成空間30で照度をなるべく均一にするには、葉の茂り方を考慮すべきである。育成空間30の上方から人工光Liが放出される場合には、植物200が多くの葉を持つ生育段階では、上の葉によって人工光Liが遮られ、育成空間30の下部では照度が低くなり、光合成効率が劣る。また、植物200が密生する場合には、植物の個体によって成長がばらつく。
【0030】
そこで、この実施形態では、光源パネル32が植物200に側方から人工光Liを照射するように、育成空間30の側方に光源パネル32が配置されている。したがって、植物200の生育段階、特に葉の茂り方にかかわらず、育成空間30の上部と下部で照度をなるべく均一にすることができる。また、植物200が密生する場合でも、植物の個体に均等に人工光Liを供給できるので、個体による成長のばらつきを抑制することができる。
【0031】
光源パネル32の数は1つでもよい。しかし、植物200の両側において照度をなるべく均一にするため、この実施形態では、図1および図2に示すように、2つの光源パネル32が対向しており、育成空間30が2つの光源パネル32の間に介在し、2つの光源パネル32が植物200に両側方から人工光Liを照射するようになっている。このように、2つの光源パネル32を設けることが好ましく、この場合、植物200の両側において照度をなるべく均一にし、光合成効率を向上させることができる。
【0032】
2つの光源パネル32に加えて、これらの光源パネル32の長手方向(幅Yの方向)の両端にさらに2つの光源パネル32を設けてもよい。すなわち、4つの光源パネル32を育成空間30の周囲に設けて、4つの光源パネル32が育成空間30に人工光Liを放出するようにしてもよい。しかし、この場合、育成空間30の長手方向(幅Yの方向)の端部付近に配置された植物200が、育成空間30の長手方向中央に配置された植物200よりも多くの人工光Liを受けることになる。この場合、LEDチップ34の1個あたりから発せられる人工光Liの量が多いと、育成空間30の長手方向端部付近に配置された植物200の葉が光合成飽和光強度より高い強度の光を受け、光エネルギーが無駄になるおそれがある。また、植物の個体によって成長がばらつく。したがって、この実施形態のように、2つの光源パネル32のみを設けることが好ましい。
【0033】
実施形態においては、光源パネル32の基板33は平板であるが、図5に示すように、基板33は波板であってもよい。図5図4と同様に見た光源パネル32の縦断面図である。波板からは、平板よりもLEDチップ34で発生する熱をより多く放出することができる。
【0034】
栽培ユニット2内の植物200を冷却するため、養液供給システム18または栽培槽12を冷却装置で冷却してもよい。
【0035】
図1に示すように、植物育成装置1は、吸肥量測定装置40と環境制御装置42をさらに有する。
吸肥量測定装置40は、栽培ユニット2内の植物200の吸肥量を、単位期間おきに(例えば毎日)繰り返して測定する。この実施形態では、吸肥量測定装置40は、センサ40aと液量センサ40bと吸肥量計算部40cを有する。
【0036】
センサ40aは、栽培槽12内の養液16の肥料濃度を繰り返して(例えば毎日)測定する。肥料濃度として、センサ40aは植物200のエネルギー成分であるアデノシン三リン酸を形成するリン酸濃度を測定してもよいし、植物200のタンパク質を形成する窒素の濃度を測定してもよい。あるいは、センサ40aは、リン酸の濃度を測定するセンサと、窒素の濃度を測定するセンサの組み合わせであってもよい。
あるいは、センサ40aは、栽培槽12内の養液16の電気伝導率を測定してもよい。後述する吸肥量計算部40cは、電気伝導率から、例えば換算式を用いて、栽培槽12内の養液16の肥料濃度を計算することができる。
【0037】
液量センサ40bは、養液供給システム18から栽培槽12に供給される養液16の量を、単位期間おきに(例えば毎日)繰り返して測定する。液量センサ40bは、例えば流量計であってよい。あるいは、液量センサ40bは、栽培槽12内の養液16の液面の高さを測定する液面計であってもよく、この場合、養液16の減少量を養液供給システム18に報告し、養液供給システム18が養液16の液面の高さを一定に維持するのであってもよい。
【0038】
吸肥量計算部40cは、コンピュータプロセッサである。吸肥量計算部40cは、センサ40aの測定結果と液量センサ40bの測定結果から、播種から現在までの植物の累積吸肥量(植物200が吸収した肥料成分の量)を単位期間おきに(例えば毎日)繰り返して計算する。あるいは、吸肥量計算部40cは、センサ40aの測定結果と液量センサ40bの測定結果から、単位期間(例えば1日)あたりの植物200の吸肥量を単位期間おきに(例えば毎日)計算してもよい。
吸肥量計算部40cは、植物200が吸収したリン酸の量を計算してもよいし、植物200が吸収した窒素量を計算してもよいし、両方を計算してもよい。
【0039】
肥料濃度が一定の場合、累積吸肥量は、センサ40aの測定結果から得られた養液16の肥料濃度に、液量センサ40bの測定結果から得られた植物200の累積吸収液体量を乗算することにより、計算される。肥料濃度が一定の場合、単位期間あたりの吸肥量は、センサ40aの測定結果から得られた養液16の肥料濃度に、液量センサ40bの測定結果から得られた単位期間あたりの植物200の吸収液体量を乗算することにより、計算される。
【0040】
肥料濃度が変化する場合、累積吸肥量Aは下式によって計算される。
A=(C*L)-(C*L
ここで、Cは最初の養液16の肥料濃度であり、Lは最初の養液16の量である。Cは最後の養液16の肥料濃度であり、Lは最後の養液16の量である。
肥料濃度が変化する場合、単位期間あたりの吸肥量も上式に準じて計算される。
【0041】
栽培槽12内の肥料の濃度が常に既知であれば、センサ40aはなくてもよく、吸肥量計算部40cは液量センサ40bの測定結果から累積吸肥量または単位期間あたりの吸肥量を計算することができる。
【0042】
吸肥量測定装置40で測定された吸肥量は、環境制御装置42に通知される。環境制御装置42は、コンピュータプロセッサである。環境制御装置42は、測定された吸肥量の変化に基づいて、空調システム20、発光制御装置44および養液供給システム18の少なくともいずれかを制御する。
【0043】
図6および図7のグラフを参照し、吸肥量の変化に基づく環境制御の方針を説明する。
図6に示す曲線は、いずれも大豆(品種:初だるま)を植物工場で栽培した場合の累積吸肥量の変化を示す。縦軸は、4株あたりまたは1株あたりの累積吸肥量の換算値である。
曲線aは、育成空間30内の5株の大豆に対して1つの光源パネル32で側方から人工光Liを当てた栽培ユニット2で育成した場合の吸肥量の変化を示す。
曲線bは、育成空間30内の2株の大豆に対して1つの光源パネル32で上方から人工光Liを当てた栽培ユニット2で育成した場合の吸肥量の変化を示す。曲線bの場合、吸肥量が曲線aの場合より少ない。これは、上記の通り、上方から人工光Liを当てた場合、上の葉によって人工光Liが遮られ、下の葉の光合成効率が劣るためである。
【0044】
光合成を行う植物の成熟までの生育段階は、栄養成長前期、栄養成長中期、開花・莢数決定期、子実肥大期、成熟期に分類することができる。
栄養成長前期には、植物は盛んに光合成を行うとともに吸肥し、枝葉が繁茂する。大豆の場合、栄養成長中期は、花芽分化の期間であり、開花・莢数決定期には、花芽を生成し莢ができる。屋外環境では、大豆の開花・莢数決定期は、条件によって異なるが、一般に播種からおよそ70日までである。また、栄養成長中期および開花・莢数決定期は、栄養成長と生殖成長が同時に進行する期間でもある。 子実肥大期には、光合成で生成された光合成産物(糖)が、種子または地下茎に転流されるので、種子または地下茎が肥大する。大豆の子実肥大期は、条件によって異なるが、一般に播種後70日から110日の期間である。成熟期には、種子または地下茎が完熟する。大豆の場合には成熟期に種子が乾燥する。屋外環境では、大豆の成熟期は、条件によって異なるが、一般に播種後110日から150日の期間である。
【0045】
植物工場での栽培環境では、通常、屋外環境よりも植物の発育が早い。図6において、曲線aの場合、播種から44日目で累積吸肥量の増加が鈍化し、播種から50日目で累積吸肥量の増加がさらに鈍化した。すなわち、播種から44日目で1日あたりの吸肥量が減少し、播種から50日目で1日あたりの吸肥量が減少した。曲線aの場合、播種から50日目で大豆が成熟期に入った。大豆に上方から人工光Liを当てた場合に相当する吸肥量が少ない曲線bの場合、光合成が抑制されたため、曲線aより早く同様の吸肥量の変化が観察された。
【0046】
図7に示す曲線は、いずれも大豆(品種:サチユタカ)を植物工場で栽培した場合の累積吸肥量の変化を示す。縦軸は、4株あたりまたは1株あたりの累積吸肥量の換算値である。
曲線cは、継続的に一定の温度で大豆を育成した場合の吸肥量の変化を示す。曲線dは、12時間ごとに温度を切り替えて、昼夜を模擬して大豆を育成した場合の吸肥量の変化を示す。いずれの場合も大豆に上方から人工光Liを当てた。
【0047】
曲線cの場合、播種から50日目で累積吸肥量の増加が鈍化し、播種から70日目で累積吸肥量の増加がさらに鈍化した。曲線cの場合、播種から70日目で成熟期に入った。曲線dの場合、播種から48日目で累積吸肥量の増加が鈍化し、播種から73日目で累積吸肥量の増加がさらに鈍化した。曲線dの場合、播種から73日目で成熟期に入った。
【0048】
したがって、育成環境に応じて子実肥大期に入る時点は異なるが、大豆は子実肥大期には栄養成長前期、栄養成長中期、開花・莢数決定期よりも吸肥量(換言すれば必要とされる肥料の量)が顕著に少ない。吸肥量の変化(累積吸肥量の増加の鈍化すなわち単位期間あたりの吸肥量の減少)を監視することにより、大豆が子実肥大期に入ったことを認識することができる。他の光合成を行う植物についても同じことが当てはまると考えられる。
子実肥大期には、植物の光合成速度は鈍化するため、光合成の因子である光、CO、および肥料の必要量は減少する。したがって、上記の環境制御装置42(図1参照)は、吸肥量の変化が植物の子実肥大期に対応する場合、空調システム20、発光制御装置44および養液供給システム18の少なくともいずれかを制御し、植物200の育成環境を植物200の光合成を抑圧する環境に変化させる。子実肥大期に光合成を抑圧しても、植物の種子または地下茎の収量は減らず、コストを削減することができる。
【0049】
環境制御装置42がこのように育成環境を光合成を抑圧する環境に変化させる契機(植物が子実肥大期に入ったと判断する契機)は、累積吸肥量の単位期間(例えば1日)での増分の設定期間内の減少率が閾値より大きい場合である(すなわち、単位期間あたりの吸肥量の設定期間内の減少率が閾値より大きい場合である)。ここで「減少率」は減少率の絶対値であり、「閾値」は正の値である。「閾値」は、植物の子実肥大期に対応しており、植物の種類および品種ならびに育成環境によって異なり、植物の育成経験に基づいて決定される。「設定期間」とは、始期があらかじめ定められているのではなく、時間長さを意味する。「設定期間」は、測定誤差を考慮すると、単位期間(例えば1日)よりも長く設定されている。
また、植物の吸肥量は、月の満ち欠けすなわち月が地球に及ぼす引力に応じて変化することが知られている。したがって、環境制御装置42は、月相に応じて、閾値と設定期間の少なくとも一方を補正することが好ましい。
【0050】
単位期間あたりの吸肥量の設定期間内の減少率が閾値より大きい場合、環境制御装置42は、発光制御装置44を制御して、人工光Liの発光量の低下、人工光Liの照射時間の短縮、および人工光Liの青色波長領域の削減の少なくともいずれかを行ってよい。すなわち、植物200の育成環境を植物200の光合成を抑圧する環境に変化させることは、人工光Liの発光量の低下、人工光Liの照射時間の短縮、および人工光Liの青色波長領域の削減の少なくともいずれかであってよい。人工光Liの発光量の低下は、各発光源(例えばLEDチップ34)に供給する電力を低下により実施してもよいし、点灯する発光源の数の減少により実施してもよい。
この場合、環境制御装置42は、発光制御装置44に指令信号を与え、発光制御装置44はその指令信号に従って光源パネル32を制御する。発光量の低下により、コストを削減することができる。また、照射時間の短縮により、コストを削減することができる。
【0051】
さらに、人工光Liの青色波長領域の削減により、コストを削減することができる。光合成に寄与する光の波長範囲は400~700nmである。光子1個のエネルギー量は、短波長の光ほど大きい。つまり、同じ光子数の場合、短波長の光はエネルギー量が高く、長波長の光はエネルギー量が低い。しかし、光合成量は、光のエネルギー量ではなく、植物に当たった光子数と相関がある。したがって、同じ光子数の場合、長波長の光の方が短波長の光よりも光合成に関するエネルギー効率が高い。そして、エネルギー量が高い短波長の光を発生させるのに要する消費電力は、長波長の光を発生させるのに要する消費電力より大きい。したがって、人工光Liの青色波長領域の削減によって、消費電力を削減することができる。
【0052】
また、植物の光受容体には、フィトクロム、クリプトクロム、フォトトロピンの3種が知られている。フィトクロムは主に赤色光および遠赤色光に応答して光合成を行い、クリプトクロムとフォトトロピンは主に青色光に応答して光合成を行う。人工光Liの青色波長領域の削減により、クリプトクロムとフォトトロピンによる光合成が抑圧され、植物の育成環境を植物の光合成を抑圧する環境に変化させることができる。
人工光Liの青色波長領域を削減するため、発光制御装置44は、使用される光源パネル32を他の光源パネルに交換してもよい。あるいは、光源パネル32が異なる発光波長領域を有するLEDチップ34を有する場合、発光制御装置44は、青色波長領域で発光するLEDチップ34の発光を停止し、長波長領域(例えば赤色波長領域)で発光するLEDチップ34を発光継続または新たに発光開始してもよい。あるいは、光源パネル32が異なる発光波長領域を有するOLED素子を有する場合、発光制御装置44は、青色波長領域で発光するOLED素子の発光を停止し、長波長領域で発光するOLED素子を発光継続または新たに発光開始してもよい。但し、青色波長領域で発光するすべての発光源の発光を完全に停止する必要は必ずしもなく、それらの発光源に供給する電力を低下させてもよいし、点灯する発光源の数を減少させてもよい。
【0053】
単位期間あたりの吸肥量の設定期間内の減少率が閾値より大きい場合、環境制御装置42は、発光制御装置44の上記の制御に代えて、あるいはこれに加えて、空調システム20を制御して、育成空間30内の温度を低下させてもよい。すなわち、植物200の育成環境を植物200の光合成を抑圧する環境に変化させることは、育成空間30内の温度を低下させることであってよい。
この場合、環境制御装置42は、空調システム20に指令信号を与え、空調システム20はその指令信号に従って温度を低下させる。温度の低下により、コストを削減することができる。
【0054】
単位期間あたりの吸肥量の設定期間内の減少率が閾値より大きい場合、環境制御装置42は、発光制御装置44および/または温度の制御に代えて、あるいはこれに加えて、空調システム20を制御して、育成空間30内の空気中のCOの濃度を低下させてもよい。すなわち、植物200の育成環境を植物200の光合成を抑圧する環境に変化させることは、育成空間30内の空気中のCOの濃度を低下させることであってよい。
この場合、環境制御装置42は、空調システム20に指令信号を与え、空調システム20はその指令信号に従って空気中のCOの濃度を低下させる。COの濃度の低下により、コストを削減することができる。
【0055】
単位期間あたりの吸肥量の設定期間内の減少率が閾値より大きい場合、環境制御装置42は、発光制御装置44および/または空調システム20の制御に代えて、あるいはこれに加えて、養液供給システム18を制御して、追肥量を低下させてもよい。すなわち、植物200の育成環境を植物200の光合成を抑圧する環境に変化させることは、追肥量を低下させることであってよい。
この場合、環境制御装置42は、養液供給システム18に指令信号を与え、養液供給システム18はその指令信号に従って追肥量を低下させる。養液供給システム18は、例えば、養液16中の肥料の濃度を低下させる。追肥量の低下により、コストを削減することができる。
【0056】
第1実施形態では、単位期間あたりの吸肥量の設定期間内の減少率が閾値より大きい場合を契機に、環境制御装置42が育成環境を光合成を抑圧する環境に変化させる。しかし、単位期間内に養液供給システム18から栽培槽12に供給される養液16の量と養液16の電気伝導率の積を、吸肥量測定装置40が単位期間おきに(例えば毎日)繰り返して計算し、当該積の設定期間内の減少率が閾値より大きい場合を契機に、環境制御装置42が育成環境を光合成を抑圧する環境に変化させてもよい。
【0057】
次に、図8を参照しながら、本発明の第2実施形態に係る植物育成装置1Aを説明する。植物育成装置1Aは、吸肥量測定装置40に代えて、植物内肥料濃度測定装置50を有する。植物内肥料濃度測定装置50は、実際に育成されている植物200の内部の液体の肥料濃度を測定する。
この実施形態では、植物内肥料濃度測定装置50は、センサ50aと植物内肥料濃度計算部50bを有する。
【0058】
センサ50aは、図示しない支持ブラケットに取り付けられており、栽培ユニット2内の植物200に近接して配置されている。センサ50aは、植物200内を流れる液体の肥料濃度に対応する電気的特性を単位期間おきに(例えば毎日)繰り返して測定する。
例えば、センサ50aは、植物の茎に刺されるプローブ針(図示せず)を有し、茎に刺されたプローブ針を用いて、植物の維管束内を流れる液体の電気的特性(例えば、電気伝導率またはインピーダンス)を測定してよい。プローブ針を刺す植物の個体を時々変更してもよい。電気的特性は植物の維管束内を流れる液体の肥料濃度に対応する。植物の茎にプローブ針を刺すことは、植物にとって侵襲的(破壊的)であり、植物の生育に悪影響を及ぼし、場合によっては植物を枯らすかもしれない。したがって、環境制御装置42が育成環境を変化させて光合成を抑圧する対象となる植物の個体は、プローブ針が刺される個体とは異なることもありうる。つまり、光合成を抑圧する対象となる植物とは異なるが、それと同期間に同環境で育成された同品種の植物内を流れる液体の電気的特性を、センサ50aは測定してもよい。
あるいは、センサ50aは、有機電気化学トランジスタを有していてもよく、有機電気化学トランジスタを用いて、植物の維管束内を流れる液体の電気的特性(例えば、電気伝導率、静電容量またはインピーダンス)を非破壊的(非侵襲的)に測定してもよい。この場合、電気的特性は、植物の維管束組織中の液体の糖(セルロースおよびスクロース)の濃度に対応し、吸肥量にも対応する。植物にとって非破壊的(非侵襲的)なこの方策を用いることにより、植物の生育に悪影響を及ぼさない。したがって、なんらかの理由で測定対象の植物の個体が枯れない限り、環境制御装置42が育成環境を変化させて光合成を抑圧する対象となる植物の個体は、測定対象の個体と同じである。
【0059】
植物内肥料濃度計算部50bは、コンピュータプロセッサである。植物内肥料濃度計算部50bは、センサ50aで測定された液体の電気的特性から液体の肥料濃度を単位期間おきに(例えば毎日)繰り返して計算する。
【0060】
植物内肥料濃度計算部50bで計算された肥料濃度は、環境制御装置42に通知される。環境制御装置42は、測定された肥料濃度の変化に基づいて、肥料濃度の設定期間内の減少率が閾値より大きい場合、空調システム20、発光制御装置44および養液供給システム18の少なくともいずれかを制御する。
「減少率」は減少率の絶対値であり、「閾値」は正の値である。「閾値」は、植物の子実肥大期に対応しており、植物の種類および品種ならびに育成環境によって異なり、植物の育成経験に基づいて決定される。「設定期間」とは、始期があらかじめ定められているのではなく、時間長さを意味する。「設定期間」は、測定誤差を考慮すると、単位期間(例えば1日)よりも長く設定されている。
環境制御装置42は、月相に応じて、閾値と設定期間の少なくとも一方を補正することが好ましい。
【0061】
第1実施形態と同様に、環境制御装置42は、発光制御装置44を制御して、人工光Liの発光量の低下、人工光Liの照射時間の短縮、および人工光Liの青色波長領域の削減の少なくともいずれかを行ってよい。環境制御装置42は、発光制御装置44の上記の制御に代えて、あるいはこれに加えて、空調システム20を制御して、育成空間30内の温度と空気中のCOの濃度の少なくとも一方を低下させてもよい。環境制御装置42は、発光制御装置44および/または空調システム20の制御に代えて、あるいはこれに加えて、養液供給システム18を制御して、追肥量を低下させてもよい。
この実施形態によれば、実際に植物内を流れる液体の肥料濃度の設定期間内の減少率が閾値より大きい場合、植物の育成環境を植物の光合成を抑圧する環境に変化させることができる。
【0062】
次に、図9を参照しながら、本発明の第3実施形態に係る植物育成装置1Bを説明する。植物育成装置1Bは、吸肥量測定装置40および植物内肥料濃度測定装置50に代えて、残存肥料量測定装置60を有する。残存肥料量測定装置60は、栽培ユニット2で育成されている植物200から採取されたサンプル61中に残存する肥料の量を測定する。
この実施形態では、残存肥料量測定装置60は、センサ60aと残存肥料量計算部60bを有する。
【0063】
センサ60aは、サンプル61中に残存する肥料の量に対応する電気的特性(例えば、電気伝導率またはインピーダンス)を単位期間おきに(例えば毎日)繰り返して測定する。サンプル61中は、栽培ユニット2で育成されている植物200の葉と茎の少なくとも一方を有する。サンプル61中に残存する肥料の量は、吸肥量に対応する。植物からサンプル61を採取することは、植物にとって侵襲的(破壊的)であり、植物の生育に悪影響を及ぼし、場合によっては植物を枯らすかもしれない。したがって、環境制御装置42が育成環境を変化させて光合成を抑圧する対象となる植物の個体は、サンプル61が採取される個体とは異なることもありうる。つまり、光合成を抑圧する対象となる植物とは異なるが、それと同期間に同環境で育成された同品種の植物から採取されたサンプル61中の電気的特性を、センサ60aは測定してもよい。
【0064】
残存肥料量計算部60bはコンピュータプロセッサである。残存肥料量計算部60bは、センサ60aで測定されたサンプル61の電気的特性からサンプル61中に残存する肥料の量を単位期間おきに(例えば毎日)繰り返して計算する。
【0065】
残存肥料量計算部60bで計算された肥料の量は、環境制御装置42に通知される。環境制御装置42は、測定された肥料の量の変化に基づいて、肥料の量の設定期間内の減少率が閾値より大きい場合、空調システム20、発光制御装置44および養液供給システム18の少なくともいずれかを制御する。
「減少率」は減少率の絶対値であり、「閾値」は正の値である。「閾値」は、植物の子実肥大期に対応しており、植物の種類および品種ならびに育成環境によって異なり、植物の育成経験に基づいて決定される。「設定期間」とは、始期があらかじめ定められているのではなく、時間長さを意味する。「設定期間」は、測定誤差を考慮すると、単位期間(例えば1日)よりも長く設定されている。
環境制御装置42は、月相に応じて、閾値と設定期間の少なくとも一方を補正することが好ましい。
【0066】
第1実施形態と同様に、環境制御装置42は、発光制御装置44を制御して、人工光Liの発光量の低下、人工光Liの照射時間の短縮、および人工光Liの青色波長領域の削減の少なくともいずれかを行ってよい。環境制御装置42は、発光制御装置44の上記の制御に代えて、あるいはこれに加えて、空調システム20を制御して、育成空間30内の温度と空気中のCOの濃度の少なくとも一方を低下させてもよい。環境制御装置42は、発光制御装置44および/または空調システム20の制御に代えて、あるいはこれに加えて、養液供給システム18を制御して、追肥量を低下させてもよい。
この実施形態によれば、植物から採取されたサンプル中の肥料の量の設定期間内の減少率が閾値より大きい場合、植物の育成環境を植物の光合成を抑圧する環境に変化させることができる。
【0067】
次に、図10を参照しながら、本発明の第4実施形態に係る植物育成装置1Cを説明する。植物育成装置1Cは、第2実施形態(図8)の植物育成装置1Aと類似するが、栽培ユニット2と養液供給システム18に代えて、栽培ユニット2Aと肥料供給システム78を有する。栽培ユニット2Aは、栽培ユニット2と同じ上部10と支持パネル14を有し、養液16を収容する栽培槽12の代わりに、培土76を収容する栽培槽72を有する。
肥料供給システム78は栽培槽72内の培土76に肥料を供給する。肥料供給システム78が供給する肥料は液体肥料でもよいし、粉末肥料でもよいし、粒状肥料でもよい。
さらに植物育成装置1Cは水供給システム79を有する。水供給システム79は、栽培槽72内の培土76に定期的に水を供給する。
【0068】
植物育成装置1Cは、植物内糖度測定装置70を有する。植物内糖度測定装置70は、実際に育成されている植物200の内部の液体の糖の濃度を測定する。
この実施形態では、植物内糖度測定装置70は、センサ70aと植物内糖度計算部70bを有する。
【0069】
センサ70aは、図示しない支持ブラケットに取り付けられており、栽培ユニット2内の植物200に近接して配置されている。センサ70aは、植物200の維管束組織中の液体の糖(セルロースおよびスクロース)の濃度に対応する電気的特性を非破壊的に繰り返して測定する。センサ70aは、第2実施形態のセンサ50aの例のうち有機電気化学トランジスタを有する例と同じでよい。具体的には、センサ70aは有機電気化学トランジスタを用いて、植物の維管束内を流れる液体の電気的特性(例えば、電気伝導率、静電容量またはインピーダンス)を非破壊的(非侵襲的)に測定する。この場合、電気的特性は、植物の維管束組織中の液体の糖(セルロースおよびスクロース)の濃度に対応し、吸肥量にも対応する。植物にとって非破壊的(非侵襲的)なこの方策を用いることにより、植物の生育に悪影響を及ぼさない。したがって、なんらかの理由で測定対象の植物の個体が枯れない限り、環境制御装置42が育成環境を変化させて光合成を抑圧する対象となる植物の個体は、測定対象の個体と同じである。
【0070】
植物内糖度計算部70bは、コンピュータプロセッサである。植物内糖度計算部70bは、センサ70aで測定された液体の電気的特性から液体の糖の濃度を単位期間おきに(例えば毎日)繰り返して計算する。
【0071】
植物内糖度計算部70bで計算された糖の濃度は、環境制御装置42に通知される。環境制御装置42は、測定された糖の濃度の変化に基づいて、糖の濃度の設定期間内の減少率が閾値より大きい場合、空調システム20、発光制御装置44、肥料供給システム78および水供給システム79の少なくともいずれかを制御する。
「減少率」は減少率の絶対値であり、「閾値」は正の値である。「閾値」は、植物の子実肥大期に対応しており、植物の種類および品種ならびに育成環境によって異なり、植物の育成経験に基づいて決定される。「設定期間」とは、始期があらかじめ定められているのではなく、時間長さを意味する。「設定期間」は、測定誤差を考慮すると、単位期間(例えば1日)よりも長く設定されている。
環境制御装置42は、月相に応じて、閾値と設定期間の少なくとも一方を補正することが好ましい。
【0072】
第1実施形態と同様に、環境制御装置42は、発光制御装置44を制御して、人工光Liの発光量の低下、人工光Liの照射時間の短縮、および人工光Liの青色波長領域の削減の少なくともいずれかを行ってよい。環境制御装置42は、発光制御装置44の上記の制御に代えて、あるいはこれに加えて、空調システム20を制御して、育成空間30内の温度と空気中のCOの濃度の少なくとも一方を低下させてもよい。環境制御装置42は、発光制御装置44および/または空調システム20の制御に代えて、あるいはこれに加えて、肥料供給システム78を制御して、追肥量を低下させてもよい。
環境制御装置42は、発光制御装置44、空調システム20および/または肥料供給システム78の制御に代えて、あるいはこれに加えて、水供給システム79を制御して、培土76への水の供給量を低下させてもよい。
この実施形態によれば、実際に植物内を流れる液体の糖の濃度の設定期間内の減少率が閾値より大きい場合、植物の育成環境を植物の光合成を抑圧する環境に変化させることができる。センサ70aは、植物にとって非破壊的(非侵襲的)であるので、植物の生育に悪影響を及ぼさない。
【0073】
次に、図11を参照しながら、本発明の第5実施形態に係る植物育成装置1Dを説明する。植物育成装置1Dは、第3実施形態(図9)の植物育成装置1Bと類似するが、栽培ユニット2と養液供給システム18に代えて、栽培ユニット2Aと肥料供給システム78を有する。栽培ユニット2Aは、栽培ユニット2と同じ上部10と支持パネル14を有し、養液16を収容する栽培槽12の代わりに、培土76を収容する栽培槽72を有する。
肥料供給システム78は栽培槽72内の培土76に肥料を供給する。肥料供給システム78が供給する肥料は液体肥料でもよいし、粉末肥料でもよいし、粒状肥料でもよい。
さらに植物育成装置1Dは水供給システム79を有する。水供給システム79は、栽培槽72内の培土76に定期的に水を供給する。
【0074】
第3実施形態(図9)の植物育成装置1Bと同様に、植物育成装置1Dは残存肥料量測定装置60を有する。残存肥料量測定装置60は、栽培ユニット2で育成されている植物200から採取されたサンプル61中に残存する肥料の量を測定する。
残存肥料量測定装置60の残存肥料量計算部60bで計算された肥料の量は、環境制御装置42に通知される。第3実施形態と同様に、環境制御装置42は、測定された肥料の量の変化に基づいて、肥料の量の設定期間内の減少率が閾値より大きい場合、空調システム20、発光制御装置44、肥料供給システム78および水供給システム79の少なくともいずれかを制御する。
第1実施形態と同様に、環境制御装置42は、発光制御装置44を制御して、人工光Liの発光量の低下、人工光Liの照射時間の短縮、および人工光Liの青色波長領域の削減の少なくともいずれかを行ってよい。環境制御装置42は、発光制御装置44の上記の制御に代えて、あるいはこれに加えて、空調システム20を制御して、育成空間30内の温度と空気中のCOの濃度の少なくとも一方を低下させてもよい。環境制御装置42は、発光制御装置44および/または空調システム20の制御に代えて、あるいはこれに加えて、肥料供給システム78を制御して、追肥量を低下させてもよい。
環境制御装置42は、発光制御装置44、空調システム20および/または肥料供給システム78の制御に代えて、あるいはこれに加えて、水供給システム79を制御して、培土76への水の供給量を低下させてもよい。
この実施形態によれば、植物から採取されたサンプル中の肥料の量の設定期間内の減少率が閾値より大きい場合、植物の育成環境を植物の光合成を抑圧する環境に変化させることができる。
【0075】
以上、本発明の好ましい実施形態を参照しながら本発明を図示して説明したが、当業者にとって特許請求の範囲に記載された発明の範囲から逸脱することなく、形式および詳細の変更が可能であることが理解されるであろう。このような変更、改変および修正は本発明の範囲に包含されるはずである。
【0076】
例えば、上記実施形態では、測定された量の低下率が植物の子実肥大期に対応する場合、環境制御装置42が植物の育成環境を光合成を抑圧する環境に制御する。しかし、測定された量の低下率が植物の成熟期に対応する場合、環境制御装置42が植物の育成環境を光合成を抑圧する環境に制御してもよい。成熟期に光合成を抑圧しても、植物の種子または地下茎の収量は減らず、コストを削減することができる。
【0077】
吸肥量計算部40c、植物内肥料濃度計算部50b、残存肥料量計算部60b、植物内糖度計算部70bおよび環境制御装置42は、コンピュータプロセッサに限定されない。これらのすべてまたは一部は、プロセッサの代わりに、ハードウェアで実行してもよいし、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array),DSP(Digital Signal Processor)等のプログラマブルロジックデバイスで実行してもよい。
上記実施形態は、矛盾しない限り、組み合わせてもよい。
【0078】
本発明の態様は、下記の番号付けされた条項にも記載される。
条項1. 人工光により植物を育成する植物育成装置であって、
前記植物を育成する育成空間と、
前記育成空間に人工光を照射する少なくとも1つの光源パネルと、
前記植物に与えられる肥料を含む養液である液体肥料を収容し、前記植物の少なくとも根が配置される栽培槽と、
前記植物の吸肥量に対応する量を繰り返して測定する測定装置と、
前記測定装置で測定された前記量の設定期間内の減少率が閾値より大きい場合、前記植物の育成環境を前記植物の光合成を抑圧する環境に変化するよう制御する環境制御装置とを備える
ことを特徴とする植物育成装置。
【0079】
条項2. 前記測定装置は、前記栽培槽に供給される前記液体肥料の量を繰り返して測定する液量センサと、少なくとも前記液量センサの測定結果から前記量を繰り返して計算する計算部を有し、
前記環境制御装置は、前記量の設定期間内の減少率が閾値より大きい場合、前記植物の育成環境を前記植物の光合成を抑圧する環境に変化するよう制御する
ことを特徴とする条項1に記載の植物育成装置。
この場合、液体肥料の量の変化から吸肥量または吸肥量に対応する量を計算し、量の設定期間内の減少率が閾値より大きい場合、植物の育成環境を植物の光合成を抑圧する環境に変化させることができる。
【0080】
条項3. 前記測定装置は、前記植物または前記植物と同期間に同環境で育成された前記植物と同品種の植物個体内を流れる液体の肥料濃度に対応する電気的特性を繰り返して測定するセンサを有し、
前記環境制御装置は、前記肥料濃度の設定期間内の減少率が閾値より大きい場合、前記植物の育成環境を前記植物の光合成を抑圧する環境に変化するよう制御する
ことを特徴とする条項1に記載の植物育成装置。
この場合、実際に植物内を流れる液体の肥料濃度の設定期間内の減少率が閾値より大きい場合、植物の育成環境を植物の光合成を抑圧する環境に変化させることができる。
【0081】
条項4. 前記測定装置は、前記植物または前記植物と同期間に同環境で育成された前記植物と同品種の植物個体から採取されたサンプル中に残存する肥料の量に対応する電気的特性を繰り返して測定し、
前記環境制御装置は、前記肥料の量の設定期間内の減少率が閾値より大きい場合、前記植物の育成環境を前記植物の光合成を抑圧する環境に変化するよう制御する
ことを特徴とする条項1に記載の植物育成装置。
この場合、植物から採取されたサンプル中の肥料の量の設定期間内の減少率が閾値より大きい場合、植物の育成環境を植物の光合成を抑圧する環境に変化させることができる。
【0082】
条項5. 人工光により植物を育成する植物育成装置であって、
前記植物を育成する育成空間と、
前記育成空間に人工光を照射する少なくとも1つの光源パネルと、
前記植物の少なくとも根が配置される栽培槽と、
前記植物の組織中の液体の糖の濃度に対応する電気的特性を非破壊的に繰り返して測定する測定装置と、
前記糖の濃度の設定期間内の減少率が閾値より大きい場合、前記植物の育成環境を前記植物の光合成を抑圧する環境に変化するよう制御する環境制御装置とを備える
ことを特徴とする植物育成装置。
この場合、実際に植物内を流れる液体の糖の濃度の設定期間内の減少率が閾値より大きい場合、植物の育成環境を植物の光合成を抑圧する環境に変化させることができる。
【0083】
条項6. 人工光により植物を育成する植物育成装置であって、
前記植物を育成する育成空間と、
前記育成空間に人工光を照射する少なくとも1つの光源パネルと、
前記植物の少なくとも根が配置される栽培槽と、
前記植物または前記植物と同期間に同環境で育成された前記植物と同品種の植物個体から採取されたサンプル中に残存する肥料の量に対応する電気的特性を繰り返して測定する測定装置と、
前記肥料の量の設定期間内の減少率が閾値より大きい場合、前記植物の育成環境を前記植物の光合成を抑圧する環境に変化するよう制御する環境制御装置とを備える
ことを特徴とする植物育成装置。
この場合、植物から採取されたサンプル中の肥料の量の設定期間内の減少率が閾値より大きい場合、植物の育成環境を植物の光合成を抑圧する環境に変化させることができる。
【0084】
条項7. 前記環境制御装置は、前記植物の育成環境を前記植物の光合成を抑圧する環境に変化するよう制御することとして、前記人工光の発光量の低下、前記人工光の照射時間の短縮、および前記人工光の青色波長領域の削減の少なくともいずれかを行う
ことを特徴とする条項1から6のいずれか1項に記載の植物育成装置。
発光量の低下により、コストを削減することができる。また、照射時間の短縮により、コストを削減することができる。
【0085】
条項8. 前記環境制御装置は、前記植物の育成環境を前記植物の光合成を抑圧する環境に変化するよう制御することとして、前記育成空間内の温度を低下させる
ことを特徴とする条項1から7のいずれか1項に記載の植物育成装置。
この場合、温度の低下により、コストを削減することができる。
【0086】
条項9. 前記環境制御装置は、前記植物の育成環境を前記植物の光合成を抑圧する環境に変化するよう制御することとして、前記育成空間内の空気中の二酸化炭素濃度を低下させる
ことを特徴とする条項1から8のいずれか1項に記載の植物育成装置。
この場合、二酸化炭素濃度の低下により、コストを削減することができる。
【0087】
条項10. 前記環境制御装置は、前記植物の育成環境を前記植物の光合成を抑圧する環境に変化するよう制御することとして、追肥量を低下させる
ことを特徴とする条項1から9のいずれか1項に記載の植物育成装置。
この場合、追肥量の低下により、コストを削減することができる。
【0088】
条項11. 前記少なくとも1つの光源パネルが複数の前記植物に側方から人工光を照射する
ことを特徴とする条項1から10のいずれか1項に記載の植物育成装置。
この場合、植物の個体に均等に人工光を供給できるので、個体による成長のばらつきを抑制することができる。
【0089】
条項12. 人工光により植物を育成する植物育成方法であって、
前記植物を育成する育成空間に人工光を照射することと、
前記植物の少なくとも根が配置される栽培槽に、前記植物に与えられる肥料を含む養液を供給することと、
前記植物の吸肥量に対応する量を繰り返して測定することと、
測定された前記量の設定期間内の減少率が閾値より大きい場合、前記植物の育成環境を前記植物の光合成を抑圧する環境に変化するよう制御することとを備える
ことを特徴とする植物育成方法。
【0090】
条項13. 人工光により植物を育成する植物育成方法であって、
前記植物を育成する育成空間に人工光を照射することと、
前記植物の少なくとも根が配置される栽培槽に、前記植物に与えられる肥料を供給することと、
前記植物の組織中の液体の糖の濃度に対応する電気的特性を非破壊的に繰り返して測定することと、
前記糖の濃度の設定期間内の減少率が閾値より大きい場合、前記植物の育成環境を前記植物の光合成を抑圧する環境に変化するよう制御することとを備える
ことを特徴とする植物育成方法。
【0091】
条項14. 人工光により植物を育成する植物育成方法であって、
前記植物を育成する育成空間に人工光を照射することと、
前記植物の少なくとも根が配置される栽培槽に、前記植物に与えられる肥料を供給することと、
前記植物または前記植物と同期間に同環境で育成された前記植物と同品種の植物個体から採取されたサンプル中に残存する肥料の量に対応する電気的特性を繰り返して測定することと、
前記肥料の量の設定期間内の減少率が閾値より大きい場合、前記植物の育成環境を前記植物の光合成を抑圧する環境に変化するよう制御することとを備える
ことを特徴とする植物育成方法。
【符号の説明】
【0092】
1,1A,1B,1C,1D…植物育成装置、2,2A…栽培ユニット、12…栽培槽、16…養液、18…養液供給システム、20…空調システム、200…植物、30…育成空間、32…光源パネル、40…吸肥量測定装置、42…環境制御装置、40a…センサ、40b…液量センサ、40c…吸肥量計算部、44…発光制御装置、50…植物内肥料濃度測定装置、50a…センサ、50b…植物内肥料濃度計算部、60…残存肥料量測定装置、60a…センサ、60b…残存肥料量計算部、61…サンプル、72…栽培槽、76…培土、78…肥料供給システム、79…水供給システム、70…植物内糖度測定装置、70a…センサ、70b…植物内糖度計算部、Li…人工光
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