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特開2025-18752ガラス板保持用連結部材及び複層ガラスユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025018752
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】ガラス板保持用連結部材及び複層ガラスユニット
(51)【国際特許分類】
   E06B 3/96 20060101AFI20250130BHJP
   C03C 27/06 20060101ALI20250130BHJP
   E06B 3/62 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
E06B3/96 Z
C03C27/06 101Z
E06B3/62 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023122736
(22)【出願日】2023-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004008
【氏名又は名称】日本板硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】正影 道裕
(72)【発明者】
【氏名】北添 敏昭
【テーマコード(参考)】
2E016
2E035
4G061
【Fターム(参考)】
2E016AA01
2E016BA03
2E016CA01
2E016CB01
2E016CC02
2E016DA06
2E016DB03
2E016DC01
2E035AA02
2E035BA01
2E035CA03
2E035CB06
2E035DB02
2E035DC04
4G061AA09
4G061BA01
4G061CB02
4G061CD02
4G061CD27
(57)【要約】
【課題】生産工場以外の場所でグレイジングチャンネルの交換を可能にするガラス板保持用連結部材及び複層ガラスユニットを提供する。
【解決手段】ガラス板保持用連結部材30は、ガラス板11の第1外縁部11aを保持する第1保持部材21と、第1外縁部11aに角部12を介して隣接するガラス板11の第2外縁部11bを保持する第2保持部材22との密着状態を維持するために、第1保持部材21の第1外面21f及び第2保持部材22の第2外面22fに亘って接着される。ガラス板保持用連結部材30は、第1保持部材21及び第2保持部材22の残留応力による変形に対抗する密着部32と、密着部32に接触して積層され、第1保持部材21と第2保持部材22との密着状態を維持する密着維持部34と、を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス板の第1外縁部を保持する第1保持部材と、前記第1外縁部に角部を介して隣接する前記ガラス板の第2外縁部を保持する第2保持部材との密着状態を維持するために、前記第1保持部材の第1外面及び前記第2保持部材の第2外面に亘って接着されるガラス板保持用連結部材であって、
前記第1保持部材及び前記第2保持部材の残留応力による変形に対抗する密着部と、前記密着部に接触して積層され、前記第1保持部材と前記第2保持部材との密着状態を維持する密着維持部と、を備えたガラス板保持用連結部材。
【請求項2】
前記密着部は、前記第1保持部材及び前記第2保持部材と前記密着維持部との間に配置されている請求項1に記載のガラス板保持用連結部材。
【請求項3】
前記密着部は弾性を有する軟質材料からなり、
前記密着維持部は前記軟質材料よりも弾性限界が小さい硬質材料からなる請求項2に記載のガラス板保持用連結部材。
【請求項4】
前記密着維持部の前記第1外面及び前記第2外面と対向する面積は、それぞれ1cm以上である請求項3に記載のガラス板保持用連結部材。
【請求項5】
前記密着部の前記第1外面及び前記第2外面と対向する面積は、それぞれ1cm以上である請求項3に記載のガラス板保持用連結部材。
【請求項6】
前記密着部の積層方向の厚さは30μm以上4mm以下である請求項3に記載のガラス板保持用連結部材。
【請求項7】
前記密着部のショアA硬度は50度から100度未満であり、前記密着維持部のショアD硬度は50度以上である請求項3に記載のガラス板保持用連結部材。
【請求項8】
前記密着部は、前記第1外面又は前記第2外面と直交する方向に沿って見たときに、いずれも矩形状である請求項3に記載のガラス板保持用連結部材。
【請求項9】
前記密着部は、全体が前記密着維持部に接触している請求項1に記載のガラス板保持用連結部材。
【請求項10】
前記第1保持部材の前記第1外面及び前記第2保持部材の前記第2外面の線膨張係数と、前記密着維持部の線膨張係数との差は1×10-5/℃未満である請求項1に記載のガラス板保持用連結部材。
【請求項11】
前記第1保持部材の前記第1外面及び前記第2保持部材の前記第2外面と前記密着維持部とは同じ材料である請求項10に記載のガラス板保持用連結部材。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載のガラス板保持用連結部材と、
外縁が密封された中空層を有する一対の前記ガラス板と、
一対の前記ガラス板を保持する前記第1保持部材と、
一対の前記ガラス板を保持する前記第2保持部材と、を備えた複層ガラスユニット。
【請求項13】
一対の前記ガラス板はいずれも矩形状であり、
前記ガラス板保持用連結部材は、前記ガラス板の四隅のそれぞれに配置されている請求項12に記載の複層ガラスユニット。
【請求項14】
前記ガラス板保持用連結部材における前記密着維持部の前記ガラス板の板厚方向に沿う幅は、前記中空層の幅以上である請求項13に記載の複層ガラスユニット。
【請求項15】
前記ガラス板保持用連結部材における前記密着維持部の前記ガラス板の板厚方向に沿う幅は、複数の前記ガラス板の総幅以上である請求項13に記載の複層ガラスユニット。
【請求項16】
前記ガラス板保持用連結部材に塗布された接着剤は、少なくとも前記第1保持部材及び前記第2保持部材の境界と対向する領域に存在している請求項12に記載の複層ガラスユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板保持用連結部材及び複層ガラスユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
窓枠に嵌め込まれて使用されるサッシ等において、枠体(框)にガラス板を装着する場合、ガラス板の周縁部にグレイジングチャンネルが嵌合装着されることが一般的である。このグレイジングチャンネルは、ガラス板の保持、ガラス板と枠体との接触防止、及びガラスと枠体との隙間を埋めることによる室内の気密性及び水密性の確保のために用いられる。
【0003】
特許文献1には、角部(特許文献1ではコーナー部)で突き合わされるビード本体及び鍔部の端面がそれぞれ隙間を生じることなく密着するビードが装着されたガラスパネルが開示されている。特許文献1に記載されたビードにおいては、断面略溝形のビード本体の両側縁部に軟質材料からなる鍔部を設け、対向する端面を突き合わせて角部を形成している。そのために、ビード本体に側面から見て斜めに切断した端面を形成すると共に、鍔部に上面から見て長手方向に略直角に切断した端面を形成し、端面同士を対向させて隙間を生じないように突き合わせて密着させている。このとき、突き合わされた端面同士が外れないように、接着や溶着等の方法により、一方のビード本体の端部に形成された舌片部を他方のビード本体の端部に接合し、その上から粘着テープを貼付して補強している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-221960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常、ガラス板へのグレイジングチャンネルやビード(以下、グレイジングチャンネル等ともいう)の装着は、生産工場で行われる。しかし、発注ミスや施工ミスにより、枠体を組み付ける工場や施工現場においてグレイジングチャンネル等の交換を行う場合がある。その場合、特許文献1のような方法では新たなビードの端面同士を隙間が生じないように突き合わせて角部を形成することは難しい。
【0006】
そこで、生産工場以外の場所でグレイジングチャンネルの交換を可能にするガラス板保持用連結部材及び複層ガラスユニットが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るガラス板保持用連結部材の一つの実施形態は、ガラス板の第1外縁部を保持する第1保持部材と、前記第1外縁部に角部を介して隣接する前記ガラス板の第2外縁部を保持する第2保持部材との密着状態を維持するために、前記第1保持部材の第1外面及び前記第2保持部材の第2外面に亘って接着されるガラス板保持用連結部材であって、前記第1保持部材及び前記第2保持部材の残留応力による変形に対抗する密着部と、前記密着部に接触して積層され、前記第1保持部材と前記第2保持部材との密着状態を維持する密着維持部と、を備えている。
【0008】
本実施形態によると、密着部と密着維持部とを有するガラス板保持用連結部材を第1外面から第2外面に亘って接着することにより、第1保持部材と第2保持部材とを接合している。そのため、残留応力による第1保持部材と第2保持部材の変形に対抗しつつ、第1保持部材と第2保持部材との密着状態を維持することができる。つまり、ガラス板保持用連結部材を第1外面から第2外面に亘って接着するといった簡便な方法により、生産工場以外の場所でグレイジングチャンネルを簡単に交換することが可能となる。
【0009】
本発明に係るガラス板保持用連結部材の他の一つの実施形態において、密着部は、前記第1保持部材及び前記第2保持部材と前記密着維持部との間に配置されている。
【0010】
本実施形態によると、密着部が、第1保持部材及び第2保持部材と、密着維持部との間に配置されているため、接着をより確実に実施する事ができ、残留応力により第1保持部材と第2保持部材が変形したとしても、密着部が第1保持部材と第2保持部材の変形に対抗することができる。
【0011】
本発明に係るガラス板保持用連結部材の他の一つの実施形態において、密着部は弾性を有する軟質材料からなり、前記密着維持部は前記軟質材料よりも弾性限界が小さい硬質材料からなる。
【0012】
本実施形態によると、残留応力により第1保持部材と第2保持部材が変形したとしても、硬質材料からなる密着維持部は変形に追従することはないので、第1保持部材と第2保持部材の密着状態を維持することができる。
【0013】
本発明に係るガラス板保持用連結部材の他の一つの実施形態において、前記密着維持部の前記第1外面及び前記第2外面と対向する面積は、それぞれ1cm以上である。
【0014】
本実施形態によると、密着維持部の第1外面及び第2外面と対向する面積が、それぞれ1cm以上であれば、残留応力により第1保持部材と第2保持部材が変形したとしても、第1保持部材と第2保持部材の密着状態を維持することができる。
【0015】
本発明に係るガラス板保持用連結部材の他の一つの実施形態において、前記密着部の前記第1外面及び前記第2外面と対向する面積は、それぞれ1cm以上である。
【0016】
本実施形態によると、密着部の第1外面及び第2外面と対向する面積が、それぞれ1cm以上であれば、密着部が残留応力による第1保持部材と第2保持部材の変形に対抗することができる。
【0017】
本発明に係るガラス板保持用連結部材の他の一つの実施形態において、前記密着部の積層方向の厚さは30μm以上4mm以下である。
【0018】
本実施形態によると、密着部の積層方向の厚さが30μm未満であれば、密着部が薄すぎるため、密着部が残留応力による1保持部材と第2保持部材の変形に対抗することができないおそれがある。また、密着部の積層方向の厚さが4mmを超えると、密着部が厚すぎるため、第1保持部材と第2保持部材の密着維持において密着維持部よりも密着部が支配的になるおそれがある。その場合、密着部が残留応力による1保持部材と第2保持部材の変形に過剰に対抗してしまい、第1保持部材と第2保持部材の密着状態を維持することが困難になる。よって、密着部の積層方向の厚さが30μm以上4mm以下であれば、第1保持部材と第2保持部材の密着状態を良好に維持することができる。
【0019】
本発明に係るガラス板保持用連結部材の他の一つの実施形態において、密着部のショアA硬度は50度から100度未満であり、前記密着維持部のショアD硬度は50度以上である。
【0020】
本実施形態によると、密着部のショアA硬度が50度未満であれば、密着部が柔らかすぎるため、ガラス板保持用連結部材の第1保持部材及び第2保持部材への接着時に密着部が潰れてしまって弾性力を発揮できなくなる。その結果、密着部が残留応力による1保持部材と第2保持部材の変形に対抗することができないおそれがある。また、密着部のショアA硬度が100度以上になると、密着部が硬すぎるため、密着部が残留応力による第1保持部材と第2保持部材の変形に対抗することができないおそれがある。さらに、密着維持部のショアD硬度が50度未満であれば、密着維持部が柔らかすぎるため、残留応力により第1保持部材と第2保持部材が変形したときに、第1保持部材と第2保持部材の密着状態を維持することができないおそれがある。よって、密着部のショアA硬度が50度から100度未満であり、密着維持部のショアD硬度が50度以上であれば、第1保持部材と第2保持部材の密着状態を良好に維持することができる。
【0021】
本発明に係るガラス板保持用連結部材の他の一つの実施形態において、密着部は、前記第1外面又は前記第2外面と直交する方向に沿って見たときに、いずれも矩形状である。
【0022】
本実施形態によると、第1保持部材と第2保持部材の密着状態を確実に維持することができる。しかも、密着部が矩形状であれば製造が容易である。
【0023】
本発明に係るガラス板保持用連結部材の他の一つの実施形態において、密着部は、全体が前記密着維持部に接触している。
【0024】
本実施形態によると、密着部の全体が密着維持部に接触しているので、第1保持部材と第2保持部材の密着状態を長期に亘って維持することができる。
【0025】
本発明に係るガラス板保持用連結部材の他の一つの実施形態において、前記第1保持部材の前記第1外面及び前記第2保持部材の前記第2外面の線膨張係数と、前記密着維持部の線膨張係数との差は1×10-5/℃未満である。
【0026】
本実施形態によると、第1保持部材の第1外面及び第2保持部材の第2外面の線膨張係数と、密着維持部の線膨張係数との差が1×10-5/℃未満であるので、残留応力による第1保持部材と第2保持部材の変形に密着維持部が追従し難く、第1保持部材と第2保持部材の密着状態を維持することができる。
【0027】
本発明に係るガラス板保持用連結部材の他の一つの実施形態において、前記第1保持部材の前記第1外面及び前記第2保持部材の前記第2外面と前記密着維持部とは同じ材料である。
【0028】
本実施形態によると、第1保持部材の第1外面及び第2保持部材の第2外面と密着維持部とは同じ材料であるので、第1保持部材と第2保持部材の密着状態をより確実に維持することができる。
【0029】
本発明に係る複層ガラスユニットの一つの実施形態は、上記のいずれかに記載されたガラス板保持用連結部材と、外縁が密封された中空層を有する一対の前記ガラス板と、一対の前記ガラス板を保持する前記第1保持部材と、一対の前記ガラス板を保持する前記第2保持部材と、を備えている。
【0030】
本実施形態によると、密着部と密着維持部とを有するガラス板保持用連結部材を第1保持部材の第1外面から第2保持部材の第2外面に亘って接着することにより、外縁が密封された中空層を有する一対のガラス板に対して、第1保持部材と第2保持部材の密着状態を長期間維持できるように接合して取り付けることができる。そのため、生産工場以外の場所で、一対のガラス板に第1保持部材と第2保持部材を取り付けた場合であっても、長期間に亘って美観を損ねることなく、気密性、水密性が低下しない複層ガラスユニットを提供することができる。
【0031】
本発明に係る複層ガラスユニットの他の一つの実施形態において、一対の前記ガラス板はいずれも矩形状であり、前記ガラス板保持用連結部材は、前記ガラス板の四隅のそれぞれに配置されている。
【0032】
本実施形態によると、矩形状のガラス板のいずれの角部においても第1保持部材と第2保持部材の密着状態を長期間維持できるので、複層ガラスユニットは、長期間に亘って美観を損ねることなく、気密性、水密性が低下しない。
【0033】
本発明に係る複層ガラスユニットの他の一つの実施形態において、前記ガラス板保持用連結部材における前記密着維持部の前記ガラス板の板厚方向に沿う幅は、前記中空層の幅以上である。
【0034】
本実施形態によると、ガラス板保持用連結部材における密着維持部のガラス板の板厚方向に沿う幅が、中空層の幅以上であるので、第1保持部材と第2保持部材の密着状態を長期間維持できると共に、中空層に対して気密性が担保され、一対のガラス板を確実に保持することができる。
【0035】
本発明に係る複層ガラスユニットの他の一つの実施形態において、前記ガラス板保持用連結部材における前記密着維持部の前記ガラス板の板厚方向に沿う幅は、複数の前記ガラス板の総幅以上である。
【0036】
本実施形態によると、ガラス板保持用連結部材における密着維持部のガラス板の板厚方向に沿う幅が、複数のガラス板の総幅以上であるので、第1保持部材と第2保持部材の密着状態を長期間維持できると共に、中空層に対して気密性を確実に担保して、一対のガラス板を更に確実に保持することができる。
【0037】
本発明に係る複層ガラスユニットの他の一つの実施形態において、前記ガラス板保持用連結部材に塗布された接着剤は、少なくとも前記第1保持部材及び前記第2保持部材の境界と対向する領域に存在している。
【0038】
本実施形態によると、少なくとも第1保持部材及び第2保持部材の境界と対向する領域に接着剤が存在するので、第1保持部材と第2保持部材の密着状態を長期間維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本実施形態に係る複層ガラスユニットを表す分解斜視図である。
図2】複層ガラスユニットから枠体を分離した状態を表す正面図である。
図3】複層ガラスの4辺にグレイジングチャンネルとガラス板保持用連結部材が取り付けられた状態を表す正面図である。
図4図3のIV-IV線矢視断面図である。
図5】本実施形態に係るガラス板保持用連結部材を表す斜視図である。
図6】他の実施形態に係るガラス板保持用連結部材を表す斜視図である。
図7】他の実施形態に係るガラス板保持用連結部材を表す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明に係るガラス板保持用連結部材及び複層ガラスユニットの実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に記載される実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこれらの実施形態にのみ限定するものではない。したがって、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、様々な形態で実施することができる。
【0041】
本発明に係るガラス板保持用連結部材30(以下、連結部材30ともいう)及び複層ガラスユニット100の実施形態について、図1図5に基づいて説明する。複層ガラスユニット100は、複層ガラス10と、グレイジングチャンネル20と、ガラス板保持用連結部材30と、枠体40と、を備える。
【0042】
複層ガラス10は、図1に示されるように、矩形状の2枚のガラス板11、及び2枚のガラス板11の間に配置された封止材13を含んで構成されている。封止材13は、2枚のガラス板11の間であって外縁の全周に設けられ、2枚のガラス板11を保持し、またガラス板11の間の中空層5に封入された乾燥空気又は不活性ガス等が漏出するのを防止する、又は、中空層5の真空状態が維持される。2枚のガラス板11のそれぞれは、平行な2辺である一対の第1外縁部11a(外縁の一例)と、第1外縁部11aに直交する平行な2辺である一対の第2外縁部11b(外縁の一例)を有している。第1外縁部11aと第2外縁部11bとは、角部12を介して隣接している。以下、複層ガラス10について説明するときに、複層ガラス10を構成する2枚のガラス板11のそれぞれの第1外縁部11aを総称して第1外縁部11aという場合がある。また、複層ガラス10を構成する2枚のガラス板11のそれぞれの第2外縁部11bを総称して第2外縁部11bという場合がある。
【0043】
グレイジングチャンネル20は、矩形状の複層ガラス10の4つの外縁の全周に亘って装着されており、4つの外縁のそれぞれに装着される直線状の4部品の端部がそれぞれ接合されて枠状に構成されている(図3参照)。具体的には、グレイジングチャンネル20は、複層ガラス10の一対の第1外縁部11aを保持する対向する一対の第1チャンネル21(第1保持部材の一例)と、複層ガラス10の一対の第2外縁部11bを保持する一対の第2チャンネル22(第2保持部材の一例)とを有しており、互いに隣接する第1チャンネル21の第1端部21aと第2チャンネル22の第2端部22aとが密着した状態で接合されて、枠状に構成されている。第1チャンネル21と第2チャンネル22は、2枚のガラス板11の外縁近傍の板面を挟み込んで複層ガラス10に装着されている(図4参照)。
【0044】
図1図2に示されるように、第1チャンネル21は、第1チャンネル本体21bと一対の第1シール部21cとを有している。第2チャンネル22は、第2チャンネル本体22bと一対の第2シール部22cとを有している。第1チャンネル本体21bと第2チャンネル本体22bは、ポリ塩化ビニルやポリプロピレン等の硬質材料からなる。第1チャンネル本体21bは、第1底部21dと第1底部21dの両端から立設した一対の第1側部21eとを有しており、延出方向に垂直な断面がU字状(カタカナのコ字状)を有している(図4も参照)。第2チャンネル本体22bは、第2底部22dと第2底部22dの両端から立設した一対の第2側部22eとを有しており、延出方向に垂直な断面がU字状(カタカナのコ字状)を有している。
【0045】
一対の第1シール部21cのそれぞれは、一対の第1側部21eのそれぞれの先端(第1底部21dから遠い側の端部)に一体成形により取り付けられている。一対の第2シール部22cのそれぞれは、一対の第2側部22eのそれぞれの先端(第2底部22dから遠い側の端部)に一体成形により取り付けられている。第1シール部21c及び第2シール部22cは、ゴムやエラストマ等の弾性を有する軟質材料からなる。一対の第1シール部21cは、複層ガラス10の2枚のガラス板11の第1外縁部11a近傍の外側の板面に密着し、複層ガラス10を挟持する。一対の第2シール部22cは、複層ガラス10の2枚のガラス板11の第2外縁部11bの近傍の外側の板面に密着し、複層ガラス10を挟持する(図4参照)。
【0046】
第1チャンネル21の両側の第1端部21aは第1底部21dに対して45度傾斜し、第2チャンネル22の両側の第2端部22aは第2底部22dに対して45度傾斜している(図2参照)。具体的には、第1端部21aのうち第1チャンネル本体21bの部分は、45度を超えない範囲で45度に近い角度で傾斜している。第1端部21aの第1シール部21cの部分は、45度を超えた角度(例えば50度)で傾斜している。また、第2端部22aのうち第2チャンネル本体22bの部分は、45度を超えない範囲で45度に近い角度で傾斜している。第2端部22aの第2シール部22cの部分は、45度を超えた角度(例えば50度)で傾斜している。
【0047】
これは、第1シール部21cと第2シール部22cは軟質材料からなるため、第1チャンネル21と第2チャンネル22を複層ガラス10に装着したときに、第1端部21aの第1シール部21cと第2端部22aの第2シール部22cとが互いに干渉し弾性変形して密着するためである。これにより、グレイジングチャンネル20が第1チャンネル21と第2チャンネル22を密着させて接合することができ、接合部分の気密性、水密性を確保することができる。
【0048】
連結部材30は、第1チャンネル21と第2チャンネル22とを接合して、第1端部21aと第2端部22aとの密着性を維持するために用いられる。連結部材30は、第1チャンネル21の第1外面21fから第1端部21aと第2端部22aとが密着している部位を経由して第2チャンネル22の第2外面22fに亘って延出している。すなわち、連結部材30は、ガラス板11の板面に垂直な方向に沿って見たときにL字状を有している(図2図3参照)。なお、第1外面21fは、第1チャンネル21の第1底部21dの複層ガラス10と対向していない面であり、第2外面22fは、第2チャンネル22の第2底部22dの複層ガラス10と対向していない面である。本実施形態の複層ガラス10において、連結部材30は4つ用いられている。具体的には、連結部材30は、複層ガラス10に装着された第1チャンネル21と第2チャンネル22とが密着している矩形状のガラス板11の四隅にそれぞれ配置され、接着剤39(図5参照)により第1チャンネル21と第2チャンネル22とに固定されている(図3参照)。連結部材30の詳細については後述する。
【0049】
図1図2に示されるように、連結部材30により第1チャンネル21と第2チャンネル22とが接合されたグレイジングチャンネル20は、複層ガラス10に装着された状態で、枠体40に嵌め込まれて固定される。枠体40は、アルミニウム等の金属、又は、アルミ樹脂複合材料からなる矩形の枠状を有しており、矩形の辺に垂直な断面はU字状(カタカナのコ字状)の凹部42を有している。グレイジングチャンネル20は、連結部材30と共に枠体40の凹部42に嵌め込まれる。グレイジングチャンネル20が枠体40に嵌め込まれた状態では、グレイジングチャンネル20のうち第1シール部21cと第2シール部22cの一部が枠体40から露出している。
【0050】
連結部材30は、図5に示されるように、板状の密着部32と板状の密着維持部34とを含んで構成されている。連結部材30において、密着部32と密着維持部34はいずれも延出方向の板面の中央の連結角部35で90度に曲げられたL字状を有しており、密着維持部34がL字の外側で密着部32がL字の内側に位置するようにL字状の角部を重ねて接触した状態で積層されている。密着部32の板面の面積は、密着維持部34の板面の面積よりも小さい。密着部32と密着維持部34とは、一体成形品として形成されることにより密着させているが、接着剤等により接着して密着させてもよい。なお、密着部32の板面の面積と、密着維持部34の板面の面積とが同じであってもよい。
【0051】
連結部材30においては、密着部32が、接着剤39により第1チャンネル21の第1外面21fと第2チャンネル22の第2外面22fに密着している(図2図4参照)。つまり、密着部32は、第1チャンネル21及び第2チャンネル22と密着維持部34との間に配置されている。接着剤39は、密着部32の少なくとも連結角部35に塗布される。すなわち、第1チャンネル21と第2チャンネル22との境界である、第1端部21aと第2端部22aとの境界に対向する領域に塗布される。本実施形態においては、接着剤39は、密着部32の連結角部35、第1外面21fに対向する領域、及び第2外面22fに対向する領域に塗布される。これにより、密着部32の全体が、第1外面21f及び第2外面22fに密着する。
【0052】
連結部材30の密着部32は、樹脂やゴムやエラストマ等の弾性を有する軟質材料からなり、例えば軟質のポリ塩化ビニルが挙げられる。密着部32の第1外面21f及び第2外面22fに対向(密着)している面は、それぞれ面積が1cm以上の矩形状であり、面積が3cm以上であれば好ましく、5cm以上であれば更に好ましい。密着部32の厚さは30μm以上4mm以下であり、50μm以上3mm以下であれば好ましく、100μm以上2mm以下であれば更に好ましい。
【0053】
密着部32のショアA硬度は50度から100度未満であり、60度から90度未満であれば好ましく、70度から80度未満であれば更に好ましい。密着部32の線膨張係数は、5×10-5/℃から10×10-5/℃である。
【0054】
連結部材30の密着維持部34は、硬質のポリ塩化ビニルやポリプロピレン等の硬質材料からなる。密着維持部34に使用される硬質材料の弾性限界は、密着部32に使用される軟質材料の弾性限界よりも小さい。密着維持部34の第1外面21f及び第2外面22fに対向している面は、それぞれ面積が1cm以上の矩形状であり、面積が3cm以上であれば好ましく、5cm以上であれば更に好ましい。密着維持部34の厚さは0.3mm以上4mm以下であり、0.5mm以上3mm以下であれば好ましく、0.8mm以上2mm以下であれば更に好ましい。
【0055】
密着維持部34のショアD硬度は50度以上であり、60度以上であれば好ましく、70度以上であれば更に好ましい。密着維持部34の線膨張係数は、10×10-5/℃未満である。密着維持部34の線膨張係数と、グレイジングチャンネル20の第1チャンネル本体21b及び第2チャンネル本体22bの線膨張係数との差は、1×10-5/℃未満である。なお、密着維持部34の材料は、グレイジングチャンネル20の第1チャンネル本体21b及び第2チャンネル本体22bと同じ材料であってもよい。
【0056】
図4に示されるように、連結部材30における密着維持部34のガラス板11の板厚方向に沿う幅d1は、中空層5の幅d2以上である。なお、幅d1は、2枚のガラス板11の総幅d3以上である方が好ましい。
【0057】
次に、生産工場以外の場所で、複層ガラス10にグレイジングチャンネル20を取り付ける方法について説明する。まず、矩形状の複層ガラス10の一対の第1外縁部11aに第1チャンネル21をそれぞれ嵌め込み、一対の第2外縁部11bに第2チャンネル22をそれぞれ嵌め込む。第1チャンネル21及び第2チャンネル22は、第1シール部21c及び第2シール部22cをそれぞれ有しているので、第1シール部21cと第2シール部22cの弾性力により、複層ガラス10を挟持することができる。これにより、複層ガラス10の4つの角部12のそれぞれにおいて、第1チャンネル21の第1端部21aと第2チャンネル22の第2端部22aとが接触する状態になる。
【0058】
次に、連結部材30の密着部32の連結角部35、第1外面21fに対向する領域、及び第2外面22fに対向する領域に接着剤39を塗布する。接着剤39は例えばシアノアクリレート系瞬間接着剤である。そして、第1端部21aと第2端部22aとを押し付けて密着させた状態で、連結角部35を第1チャンネル21と第2チャンネル22の境界に合わせて連結部材30をグレイジングチャンネル20に載置し、第1チャンネル21の第1外面21fから第2チャンネル22の第2外面22fに亘って連結部材30を押し付けて密着させる。接着剤39は瞬時に接着できるので、連結部材30をグレイジングチャンネル20に押し付けることで接着剤39を介して、第1チャンネル21と第2チャンネル22とが接合される。これを4回繰り返して隣接する第1チャンネル21と第2チャンネル22とを接合する。
【0059】
第1チャンネル21と第2チャンネル22とを有するグレイジングチャンネル20は、生産時に発生した残留応力の影響により、経時的に第1底部21d、第2底部22dが収縮(変形)する。これにより、第1チャンネル21と第2チャンネル22には、第1端部21aと第2端部22aとの境界が離間する方向の力が作用する。生産工場でグレイジングチャンネル20を取り付けた場合には、第1チャンネル21と第2チャンネル22との密着力が強いため、第1端部21aと第2端部22aとの境界は離間しにくい。しかし、生産工場以外の場所で、複層ガラス10にグレイジングチャンネル20を取り付けた場合であって、第1チャンネル21と第2チャンネル22との密着が不充分な場合には、第1端部21aと第2端部22aとの境界が離間するおそれがある。第1端部21aと第2端部22aとの境界が離間すると、複層ガラスユニット100の美観を損ねると共に、気密性、水密性が低下して、グレイジングチャンネル20としての機能を果たすことができなくなる。
【0060】
しかし、本実施形態では、密着部32と密着維持部34とを有する連結部材30を第1チャンネル21の第1外面21fから第2チャンネル22の第2外面22fに亘って接着することにより、第1端部21aと第2端部22aとを接合している。そのため、残留応力により第1チャンネル21と第2チャンネル22が収縮したとしても、密着部32が第1チャンネル21と第2チャンネル22の収縮に対抗する。一方、密着部32に接触して積層され、密着部32よりも弾性限界が小さい効率材料からなる密着維持部34は、収縮に追従することはないので、第1端部21aと第2端部22aとの境界の離間を抑制することができる。したがって、生産工場以外の場所で、複層ガラス10にグレイジングチャンネル20を取り付けた場合であっても、第1チャンネル21の第1端部21aと第2チャンネル22の第2端部22aとの密着状態を維持することができる。つまり、連結部材30を第1外面21fから第2外面22fに亘って接着するといった簡便な方法により、生産工場以外の場所でグレイジングチャンネル20(第1チャンネル21、第2チャンネル22)を簡単に交換することが可能となる。
【0061】
〔その他の実施形態〕
次に、本発明のその他の実施形態に係るガラス板保持用連結部材30について説明する。本実施形態においては、ガラス板保持用連結部材30の形状が上記実施形態と異なる。それ以外は上記実施形態と同様の構成を有している。そのため、本実施形態の説明においては、上記実施形態と同様の構成の箇所については同じ符号を付し、同様の構成に関する詳細な説明を省略する。
【0062】
(1)上記実施形態においては、密着部32及び密着維持部34の第1外面21f及び第2外面22fに対向している面は、いずれも矩形状であったが、図6に示されるように、台形状であってもよい。このとき、図6に示されるように、連結角部35の幅が両端部の幅よりも狭くてもよいし、逆に連結角部35の幅が両端部の幅よりも広くてもよい。
【0063】
(2)密着部32及び密着維持部34の第1外面21f及び第2外面22fに対向している面は、図7に示されるように、三角形状であってもよい。このとき、両端部が湾曲するようにR形状を有していてもよい。
【0064】
(3)上記実施形態の矩形状の密着部32及び密着維持部34において、両端部のそれぞれの角がR面取り形状や、C面取り形状であってもよい。また、両端部が半円形状であってもよい。ガラス板保持用連結部材30の形状は、第1チャンネル21の第1端部21aと第2チャンネル22の第2端部22aの密着状態を維持することができる限りにおいて、任意の形状を採ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、ガラス板保持用連結部材及び複層ガラスユニットに利用可能である。
【符号の説明】
【0066】
5 :中空層
11 :ガラス板
11a :第1外縁部
11b :第2外縁部
12 :角部
21 :第1チャンネル(第1保持部材)
21f :第1外面
22 :第2チャンネル(第2保持部材)
22f :第2外面
30 :ガラス板保持用連結部材
32 :密着部
34 :密着維持部
39 :接着剤
d1 :幅
d2 :幅
d3 :総幅

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7