(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001876
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】車両の充電方法
(51)【国際特許分類】
B60L 53/30 20190101AFI20241226BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20241226BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20241226BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
B60L53/30
H01M10/44 Q
H01M10/48 301
H02J7/00 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023101611
(22)【出願日】2023-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 大尭
【テーマコード(参考)】
5G503
5H030
5H125
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA10
5G503CB11
5G503DA04
5G503FA06
5G503GD03
5G503GD06
5H030AS08
5H030BB01
5H030FF22
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC22
5H125BC19
5H125BC21
5H125BE02
5H125CD01
5H125DD03
5H125EE25
5H125EE27
(57)【要約】
【課題】車両の充電におけるユーザにとっての利便性を向上させる。
【解決手段】車両1は、バッテリの電力を用いてバッテリの温度を調整可能に構成されている。車両1の充電方法は、複数の充電器2の各々について、車両1が当該充電器に到着するまでの間にバッテリの温度調整に使用可能な電力量に基づいて、車両が当該充電器に到着したときのバッテリの温度を推定するステップと、推定された温度と、当該充電器の充電性能とに基づいて、当該充電器によるバッテリの充電時間および充電電力量のうちの少なくとも一方を推定するステップとを含む。充電方法は、さらに、複数の充電器2のうち、推定された充電時間が最短である充電器と、推定された充電電力量が最大である充電器とのうちの少なくとも一方を、バッテリを充電するための充電器として車両1のユーザに提案するステップを含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリが搭載された車両の充電方法であって、
前記車両は、前記バッテリの電力を用いて前記バッテリの温度を調整可能に構成され、
前記充電方法は、
複数の充電器の各々について、
前記車両が当該充電器に到着するまでの間に前記バッテリの温度調整に使用可能な電力量に基づいて、前記車両が当該充電器に到着したときの前記バッテリの温度を推定するステップと、
推定された温度と、当該充電器の充電性能とに基づいて、当該充電器による前記バッテリの充電時間および充電電力量のうちの少なくとも一方を推定するステップとを含み、さらに、
前記複数の充電器のうち、推定された充電時間が最短である充電器と、推定された充電電力量が最大である充電器とのうちの少なくとも一方を、前記バッテリを充電するための充電器として前記車両のユーザに提案するステップを含む、車両の充電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は車両の充電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2020-39226号公報(特許文献1)は、バッテリを効率的且つ効果的に冷却制御することを可能にするバッテリの冷却制御システムを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両の充電において、ユーザにとっての利便性向上に対する要求が常に存在する。
本開示は上記課題を解決するためになされたものであり、本開示の目的の1つは、車両の充電におけるユーザにとっての利便性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示のある局面に係る車両の充電方法は、バッテリが搭載された車両の充電方法である。車両は、バッテリの電力を用いてバッテリの温度を調整可能に構成されている。充電方法は、複数の充電器の各々について、車両が当該充電器に到着するまでの間にバッテリの温度調整に使用可能な電力量に基づいて、車両が当該充電器に到着したときのバッテリの温度を推定するステップと、推定された温度と、当該充電器の充電性能とに基づいて、当該充電器によるバッテリの充電時間および充電電力量のうちの少なくとも一方を推定するステップとを含む。充電方法は、さらに、複数の充電器のうち、推定された充電時間が最短である充電器と、推定された充電電力量が最大である充電器とのうちの少なくとも一方を、バッテリを充電するための充電器として車両のユーザに提案するステップを含む。
【0006】
上記方法においては、車両が充電器に到着するまでの間にバッテリの温度調整に使用可能な電力量に基づいて、車両が充電器に到着したときのバッテリの温度が推定される。この温度推定は機械学習により実現されてもよい。そして、推定されたバッテリの温度に基づいて、充電時間および充電電力量のうちの少なくとも一方が推定される。バッテリの温度を考慮することによって充電時間または充電電力量を高精度に推定でき、ユーザは、高精度な推定結果に基づく充電器の提案を受けることができる。よって、上記方法によれば、充電時間を短縮したり充電電力量を増加させたりすることが可能になるため、ユーザにとっての利便性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、車両の充電において、ユーザにとっての利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の実施の形態における車両の充電状況の一例を説明するための図である。
【
図2】本実施の形態における充電器提案処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図3】調整温度を推定するためのマップの一例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0010】
[実施の形態]
<外部充電状況>
図1は、本開示の実施の形態における車両の充電状況の一例を説明するための図である。車両1は、走行用のバッテリ(図示せず)が搭載された電動車両である。車両1は、典型的にはBEV(Battery Electric Vehicle)であるが、PHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)などであってもよい。車両1に搭載されたバッテリは、車両外部から供給される電力により外部充電(プラグイン充電、非接触充電など)される。
【0011】
加えて、車両1は、バッテリの電力を用いてバッテリの温度を調整可能に構成されている。より具体的には、いずれも図示しないが、車両1は、バッテリを昇温するための電気ヒータを含んでもよいし、バッテリを冷却するための冷却ファンを含んでもよいし、バッテリの昇温および冷却の両方が可能な熱管理システム(たとえば熱媒体を用いた冷凍サイクル)を含んでもよい。
【0012】
車両1の走行予定ルート上または走行予定ルート近傍には複数の充電器が設置されている。ユーザが車両1の外部充電を希望した場合などに、複数の充電器の中から、バッテリの充電に用いられる充電器を提案するための「充電器提案処理」が実行される。この例では、3台の充電器2A~2Cが候補として抽出される。なお、以下では充電器を互いに区別しない場合には「充電器2」と記載する。
【0013】
車両1は、サーバ3との双方向通信が可能に構成されている。サーバ3は、車両1のメーカにより管理されるサーバであってもよいし、充電器2の管理者(充電サービス事業者など)により管理されるサーバであってもよい。サーバ3は、充電器2の位置情報を車両1に提供可能であるとともに、充電器2の充電性能(最大供給電力、最大供給電流など)に関する情報を車両1に提供可能である。
【0014】
一般に、車両の外部充電において、ユーザにとっての利便性向上に対する要求が常に存在する。たとえば、充電時間の短縮することによって、外部充電のためのユーザの待ち時間を短縮できる。また、充電電力量を増大させることによって、次回の外部充電までの間隔が長くなるため、外部充電の回数を削減できる。
【0015】
バッテリの保護(劣化抑制、長寿命化など)の観点から定められるバッテリの入力特性(充電可能な最大電力など)がバッテリの温度に応じて異なるところ、前述のように、車両1は、バッテリの電力を用いてバッテリの温度を調整可能に構成されている。そこで、本実施の形態においては、バッテリの温度調整機能を考慮して、各充電器2による充電時間および充電電力量が算出される。より具体的には、車両1のECU(Electronic Control Unit)は、充電器2ごとに、車両1が当該充電器に到着したときのバッテリの温度を推定し、その温度に基づいて充電時間および充電電力量を算出する。そして、ECUは、充電時間が短い充電器および/または充電電力量が大きい充電器による外部充電を車両1のユーザに提案する。以下、この充電器提案処理について詳細に説明する。
【0016】
<処理フロー>
図2は、本実施の形態における充電器提案処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、予め定められた条件の成立時(車両1のユーザが車両1の外部充電を希望した場合、バッテリの残容量が基準量を下回った場合など)に実行される。各ステップは、車両1のECUによるソフトウェア処理により実現されるが、ECU内に配置されたハードウェア(電気回路)により実現されてもよい。以下、ステップをSと略す。
【0017】
S1において、ECUは、複数の充電器2の中から、車両1が到達可能な充電器を抽出する。たとえば、ECUは、複数の充電器2の中から、車両1の走行予定ルート上(またはその近傍)に設置された2以上の充電器を抽出する。その上で、ECUは、バッテリの残容量を考慮して、車両1の現在地から車両1の走行可能距離(航続距離)よりも手前の範囲内に位置する2以上の充電器を抽出する。
図1の例では3台の充電器2A~2Cが抽出される。
【0018】
以下のS2~S7の処理は、S1にて抽出された2以上の充電器の各々について実行される。すなわち、
図1の例では、充電器2A,2B,2Cについて別々に実行される。
【0019】
S2において、ECUは、充電器2への到着時におけるバッテリの残容量(残存電力量)Pを推定する。1つの具体例として、ECUは、車両1および/または他の車両(たとえば同型車両)の走行履歴に基づいて、車両1の現在地から充電器2までの走行に伴う消費電力量を算出する。そして、ECUは、現在地における残容量から消費電力量を差し引くことによって残容量Pを推定する。
【0020】
S3において、ECUは、車両1が現在地から充電器2に到着するまでの車両1の所要時間Δtをカーナビゲーションシステム(図示せず)から取得する。所要時間Δtは、カーナビゲーションシステムに実装された公知のルート探索技術を用いて算出され得る。
【0021】
S4において、ECUは、バッテリの使用可能容量を算出する。使用可能容量とは、S2にて算出された残容量Pと、残容量の下限値PLLとの差分(P-PLL)である。残容量の下限値PLLとは、バッテリの劣化の進行(過放電など)からバッテリを保護する目的および/またはある程度以上の航続距離を残す目的で予め設定された既知の値である。
【0022】
さらに、ECUは、バッテリの温度調整可能電力量を算出する。温度調整可能電力量は、温度調整可能な最大電力Wmaxと、S3にて算出された所要時間Δtとの積(Wmax×Δt)(言い換えると電力の時間積分)である。最大電力Wmaxは、電気ヒータ、冷却ファン、熱管理システムなどのバッテリ温度調整に使用される装置の消費電力の仕様(特に最大電力)に応じて定められる既知の値である。
【0023】
そして、ECUは、下記式(1)に示すように、上記差分(P-PLL)と上記時間積分(Wmax×Δt)とのうちの小さい方を、車両1がバッテリの温度調整に使用可能な電力量Pavaとして算出する。
【0024】
Pava=min(P-PLL,Wmax×Δt) ・・・(1)
S5において、ECUは、S4にて算出された電力量Pavaに基づいて、車両1が充電器2に到着した場合の温度調整後の温度(走行中に昇温/冷却されたバッテリ温度)を推定する。以下、この温度を「調整温度Tadj」と記載する。この推定には、たとえば以下のようなマップが用いられる。
【0025】
図3は、調整温度Tadjを推定するためのマップの一例を示す概念図である。マップは、たとえば、車両1の現在地におけるバッテリの温度(現在温度)Tpreと、電力量Pavaと、調整温度Tadjとを含む3次元マップである。当該マップは、事前の測定結果に基づいて準備されてECUのメモリに格納されている。現在温度Tpreとは、バッテリ温度センサ(図示せず)により検出される温度の現在値である。このようなマップを参照することによって、現在温度Tpreおよび電力量Pavaから調整温度Tadjを推定可能である。
【0026】
なお、
図3にはバッテリの昇温時におけるマップが示されている。バッテリの冷却時についても同様のマップが準備され得る。
【0027】
図2を再び参照して、S6において、ECUは、S5にて推定された調整温度Tadjと、充電器2の充電性能(出力特性)とに基づいて、充電器2によるバッテリの充電時間を推定する。一般に、バッテリが極低温または極高温の場合にはバッテリの最大受入電力が低いのに対し、その間の温度範囲ではバッテリの最大受入電力が相対的に高い。ECUは、たとえば、充電器2への到着時におけるバッテリの残容量P(S2の推定値)と、調整温度Tadjに応じたバッテリの最大受入電力(既知の値)と、充電器2の最大供給電力(サーバ3から取得した値)とに基づいて、充電器2によるバッテリの充電時間を推定することができる。
【0028】
S7において、ECUは、S5にて推定された調整温度Tadjと、充電器2の充電性能とに基づいて、充電器2によるバッテリの充電電力量を推定する。たとえば、ECUは、所望の目標時刻までに車両1が目的地に到着することを条件に充電器2による外部充電に費やすことが可能な時間を推定する。ECUは、調整温度Tadjに応じたバッテリの最大受入電力と、充電器2の最大供給電力とに基づき、上記時間内に充電器2により充電可能な電力量を算出する。あるいは、ECUは、充電器2の1回あたりの規定充電時間を取得し、調整温度Tadjに応じたバッテリの最大受入電力と、充電器2の最大供給電力とに基づき、上記時間内に充電器2により充電可能な電力量を算出する。
【0029】
S8において、ECUは、S1にて抽出された2以上の充電器の中から、S6にて推定された充電時間が最も短いもの、または、S7にて推定された充電電力量が最も大きいものを、バッテリの充電に適した充電器の候補としてユーザに提案(たとえばHMI(Human Machine Interface)に表示)する。ECUは、上記2つの充電器のうちのいずれか一方のみを提案してもよいし、両方を提案してもよい。これにより、充電時間が最短の充電器または充電電力量が最大の充電器をユーザが選択することが可能になる。
【0030】
以上のように、本実施の形態においては、車両1が充電器2に到着するまでの間にバッテリの温度調整に使用可能な電力量(Wmax×Δt)に基づいて、車両1が充電器2に到着したときのバッテリの温度が推定される。そして、推定されたバッテリの温度に基づいて充電時間および充電電力量が推定される。バッテリの温度を考慮することによって充電時間および充電電力量を高精度に推定でき、ユーザは、高精度な推定結果に基づく充電器2の提案を受けることができる。よって、本実施の形態によれば、充電時間を短縮したり充電電力量を増加させたりすることが可能になるため、ユーザにとっての利便性を向上させることができる。
【0031】
なお、本実施の形態では、充電器提案処理が車両1により実行されると説明した。しかし、充電器提案処理は、車両1の外部機器(たとえば
図1のサーバ3)により実行されてもよい。
【0032】
充電器提案処理と充電予約システムとを組み合わせてもよい。充電予約システムは、充電器提案処理を行う車両1(またはサーバ3)と連携して、充電時間が最短の充電器および充電電力量が最大の充電器のうちユーザにより選択された充電器を予約してもよい。
【0033】
また、他の車両による充電器の予約状況を考慮することで、ECUは、ユーザに提案すべき充電器をより適切に抽出できる。たとえば、ECUは、既に使用中または充電予約済みの充電器については提案の対象から除外できる。
【0034】
加えて、本実施の形態によれば、バッテリの充電時間および/または充電電力量が高精度に推定されるため、車両1の外部充電のために充電器2を確保しなければならない時間帯を正確に判断できる。そのため、車両1の走行予定ルートに沿って適切な位置に設置され、かつ適切な時間帯に予約可能な充電器をユーザに提案することが可能になる。そのような充電器2を予約することによって、車両1の目的地までの到着時間を短縮できる。さらに、車両1のための予約時間を過度に長く設定することを抑制できるので、車両1の外部充電の終了後の充電器2を他の車両が速やかに使用することが可能になる。つまり、充電器2の空き時間を短縮し、充電器2の使用率を向上させることができる。
【0035】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0036】
1 車両、2(2A~2C) 充電器、3 サーバ。