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  • 特開-処理システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001878
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】処理システム
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/70 20220101AFI20241226BHJP
【FI】
B09B3/70 ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023101615
(22)【出願日】2023-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】山本 亮平
(72)【発明者】
【氏名】杉山 宏石
【テーマコード(参考)】
4D004
【Fターム(参考)】
4D004AA33
4D004AA36
4D004AA41
4D004AA43
4D004AC04
4D004CB04
4D004CC01
4D004CC03
4D004DA02
4D004DA03
4D004DA20
(57)【要約】
【課題】廃棄物の安定化処理の反応速度を向上させるアルカリ性固体反応物の処理システムを提供すること。
【解決手段】本開示に係る処理システム10は、アルカリ性固体反応物の処理システムであって、廃棄物200を収容する容器100と、水111を貯蔵する貯蔵部110と、貯蔵部に所定のガスを供給するガス供給部120と、所定のガスが供給された水を容器に供給する水供給部130と、を備え、容器は、当該容器の底部に沿って設けられた通気性を有する隔壁101を備えるものである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ性固体反応物の処理システムであって、
廃棄物を収容する容器と、
水を貯蔵する貯蔵部と、
前記貯蔵部に所定のガスを供給するガス供給部と、
前記所定のガスが供給された水を前記容器に供給する水供給部と、を備え、
前記容器は、当該容器の底部に沿って設けられた通気性を有する隔壁を備える
処理システム。
【請求項2】
さらに、前記底部と前記隔壁との間の空間に漏出した水を回収して前記水供給部に戻す水循環部を備える
請求項1に記載の処理システム。
【請求項3】
前記貯蔵部は、前記ガス供給部からのガスを供給するガス入口と、水を通過したガスを回収して前記ガス供給部に戻すガス循環部と、を備える
請求項1に記載の処理システム。
【請求項4】
前記所定のガスは、二酸化炭素、空気、水蒸気、酸素、オゾン、窒素、水素、硫化水素、及び酸性ガスの一種以上を含有するガスである
請求項1~3のいずれか一項に記載の処理システム。
【請求項5】
さらに、制御部を備え、
前記制御部は、前記貯蔵部の水のpHが7未満となる様に前記ガス供給部のガス流量及びガス濃度の少なくとも一方を制御し、
前記容器内において、前記廃棄物に浸漬する水のpHが7未満となる様に前記水供給部の水供給量を制御する
請求項1~3のいずれか一項に記載の処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、処理システムに関し、特に、アルカリ性固体反応物の処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、廃棄物が収容された容器の下方よりガスを供給して廃棄物の炭酸塩化を行う処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-177322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
産業廃棄物などの廃棄物を焼却した際に発生する焼却灰などのアルカリ性固体反応物を、資源として有効活用するために、炭酸化する技術の開発が進んでいる。
【0005】
特許文献1に開示される処理装置は、廃棄物の安定化処理として、廃棄物の炭酸化を行い、廃棄物中のミネラル分(Ca、Mgなど)を不溶化させるものである。一方で、廃棄物とCOを反応させて炭酸塩を生成させる処理は、廃棄物中のミネラル分が雨水と大気中のCOによって炭酸塩化が進むが、反応速度が非常に遅いという問題がある。
【0006】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであり、廃棄物の安定化処理の反応速度を向上させるアルカリ性固体反応物の処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る処理システムは、アルカリ性固体反応物の処理システムであって、廃棄物を収容する容器と、水を貯蔵する貯蔵部と、前記貯蔵部に所定のガスを供給するガス供給部と、前記所定のガスが供給された水を前記容器に供給する水供給部と、を備え、前記容器は、当該容器の底部に沿って設けられた通気性を有する隔壁を備えるものである。このようにすることで、廃棄物の安定化処理の反応速度を向上させるアルカリ性固体反応物の処理システムを提供することができる。
【0008】
また、本開示に係る処理システムは、さらに、前記底部と前記隔壁との間の空間に漏出した水を回収して前記水供給部に戻す水循環部を備えてもよい。このようにすることで、処理コストを低減することができる。
【0009】
また、本開示に係る処理システムの前記貯蔵部は、前記ガス供給部からのガスを供給するガス入口と、水を通過したガスを回収して前記ガス供給部に戻すガス循環部と、を備えてもよい。このようにすることで、未反応のガスの外部への排出を抑制することができる。
【0010】
また、本開示に係る処理システムの前記所定のガスは、二酸化炭素、空気、水蒸気、酸素、オゾン、窒素、水素、硫化水素、及び酸性ガスの一種以上を含有するガスであってもよい。このようにすることで、使用するガスの種類を増やすことができる。
【0011】
また、本開示に係る処理システムは、さらに、前記貯蔵部の水のpHが7未満となる様に前記ガス供給部のガス流量及びガス濃度の少なくとも一方を制御する第1制御部と、前記容器内において、前記廃棄物に浸漬する水のpHが7未満となる様に前記水供給部の水供給量を制御する第2制御部と、を備えてもよい。このようにすることで、廃棄物の安定化処理の反応速度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本開示により、廃棄物の安定化処理の反応速度を向上させるアルカリ性固体反応物の処理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示に係る処理システムの概略図である。
図2】本開示に係る廃棄物の飽和溶解度及び反応速度を示す図である。
図3】本開示に係る処理システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本開示について説明する。図1は、本開示に係る処理システムの概略図である。処理システム10は、容器100、貯蔵部110、ガス供給部120、水供給部130を少なくとも備える。処理システム10は、さらに、水循環部140を備えてもよい。これらの構成要素の詳細は後述する。
【0015】
容器100は、廃棄物200を収容する構成であり、金属、例えば、鉄板や鋼鉄、ステンレスなどで形成される。また、容器100は、当該容器の底部に沿って設けられた隔壁101を備える。隔壁101は、多孔性で通気性を有する。隔壁101を設けることにより、容器100の底部と隔壁101との間に空間が設けられ、廃棄物200は、隔壁101上に載せられて容器100に充填され、水及びガスは、当該空間に漏出する(漏出水201)。さらに、容器100は、水圧送ライン102と噴霧ノズル103を備え、これらによって水供給部130を介して貯蔵部110からの水を廃棄物200に噴霧する。廃棄物200は、例えば、焼却施設で発生する焼却灰やスラグ、汚染土壌等や鉄鋼スラグ、廃コンクリート、尾鉱廃棄物などのアルカリ性固体反応物が挙げられる。
【0016】
貯蔵部110は、水111を貯蔵する構成であり、例えば、給水タンクや水道などであり、給水タンクは、雨水を回収するタンクであってもよい。
【0017】
ガス供給部120は、ポンプ124を用いて、ガス入口121から供給される所定のガスを、ガス供給ライン122を介して貯蔵部110内の水111に供給する(バブリング)。所定のガスは、二酸化炭素、空気、水蒸気、酸素、オゾン、窒素、水素、硫化水素、及び酸性ガスの一種以上を含有するガスである。このようにすることで、使用するガスの種類を増やすことができる。
【0018】
所定のガスは、特に二酸化炭素(CO)が好ましい。廃棄物とCOを反応させ、炭酸塩を生成させる処理は、廃棄物中のミネラル分(Ca、Mgなど)が雨水と大気中のCOによって炭酸塩化が進むが、反応速度が遅いことが課題であった。炭酸塩の生成には、廃棄物中のミネラル分が水と反応して水酸化物が生成する第1の反応と、水酸化物が電離した後のミネラル分の陽イオンとCO(CO 2-)が結びつき炭酸塩として析出する第2の反応に分けることができる。
【0019】
本発明者らは、これらの反応を解析し、第1の反応である水酸化物の生成によって全体の反応が律速していることを発見した。本開示に係る処理システムは、予めCOを溶解させた水を供給させることにより、廃棄物の安定化処理の全体の反応速度を格段に向上させることが可能となる。
【0020】
また、ガス供給部120は、さらに、水111を通過したガスを回収してガス供給部120に戻すガス循環部(図示なし)を備えてもよい。この時、回収されたガスは、ガス循環ライン123及びポンプ124を介して、再びガス供給ライン122から貯蔵部110に供給される。
【0021】
廃棄物200の炭酸化、即ち、廃棄物中のミネラル分(Ca、Mgなど)を不溶化させる反応において、ガスの量や濃度によっては、未反応のガスが大量に発生し、外部へ排出することになる。したがって、ガス循環部を備えることにより、未反応のガスの外部への排出を抑制することができる。
【0022】
水供給部130は、所定のガスが供給された水111を容器100に供給する構成であり、ポンプ131及びバルブ132を少なくとも備える。
【0023】
水循環部140は、容器100の底部と隔壁101との間の空間に漏出した水及びガス(漏出水201)を貯蔵部110に送る構成である。水循環部140は、水循環ライン141、ポンプ142、及びバルブ143を少なくとも備える。また、水循環部140は、廃棄物などの混在を防ぐために、フィルターなどを備えてもよい。
【0024】
本開示に係る廃棄物の飽和溶解度及び反応速度を図2(a)、(b)にそれぞれ示す。図2(a)は、廃棄物中のミネラル分の例としてCaである場合の飽和溶解度のpHによる変化を示している。Ca、Mgなどのアルカリ金属は、溶媒である水のpHが低い、即ち、酸性であるほど溶解度が増加する。図2(b)は、廃棄物を中性(pH7)、pH6、pH4の水にそれぞれ浸漬した際のCaの溶出速度を示す。中性の水に浸漬した場合に比べて、水のpHが酸性であるほど反応速度が向上することが分かる。
【0025】
図2(b)のCaの反応速度は、下記式(1)に示されるNoyes-Whitney式、及び下記式(2)、(3)に示される反応速度式により求められる。
ν=kS(C-C) …(1)
τ=k[Ca][HO] …(2)
k=Aexp(-E/RT) …(3)
ここで、ν:溶解速度、k:溶解速度定数、S:界面面積、C:飽和濃度(飽和溶解度)、C:溶解濃度、τ:反応速度、E:活性化エネルギー、A:頻度因子、R:気体定数、T:温度、である。
式(1)より、飽和溶解度が高いほど溶解速度も上がり、式(2)、(3)より、反応物の濃度増加と、頻度因子増加に伴う反応速度定数の増加によって反応速度が向上する。
【0026】
また、本開示に係る処理システムは、制御部を備えてもよい。図3(a)、(b)を用いて、制御部150を備える処理システム10について説明する。図3(a)に示される処理システム10に設けられた制御部150は、貯蔵部110に備えられたpHセンサ151をモニターし、貯蔵部110の水のpHが7未満となる様にガス供給部120のガス流量及びガス濃度の少なくとも一方を制御する構成である。
【0027】
また、図3(b)に示される処理システム10に設けられた制御部150は、容器100に備えられたpHセンサ152をモニターし、容器100内において、廃棄物に浸漬する水のpHが7未満となる様に水供給部130の水供給量を制御する構成である。
【0028】
pHセンサ151、152を備える制御部150を設けることにより、容器100に供給する水、及び廃棄物に浸漬する水を酸性に維持することが容易となり、廃棄物の安定化処理の反応速度を向上させることができる。
【0029】
このようにして、廃棄物の安定化処理の反応速度を向上させるアルカリ性固体反応物の処理システムを提供することができる。
【0030】
なお、本開示は上記に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、ガスを2種類使用する場合において、2種類のガスを予め混合した状態にて貯蔵部に供給してもよいし、異なる貯蔵部にガスを1種類ずつ供給し、得られた2種類の水を水供給部において混合させてもよい。
【符号の説明】
【0031】
10 処理システム
100 容器
101 隔壁
102 水圧送ライン
103 噴霧ノズル
110 貯蔵部
111 水
120 ガス供給部
121 ガス入口
122 ガス供給ライン
123 ガス循環ライン
124 ポンプ
130 水供給部
131 ポンプ
132 バルブ
140 水循環部
141 水循環ライン
142 ポンプ
143 バルブ
150 制御部
151、152 pHセンサ
200 廃棄物
201 漏出水
図1
図2
図3