IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 戸田建設株式会社の特許一覧 ▶ エコモット株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-緊急車両対応システム 図1
  • 特開-緊急車両対応システム 図2
  • 特開-緊急車両対応システム 図3
  • 特開-緊急車両対応システム 図4
  • 特開-緊急車両対応システム 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025018792
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】緊急車両対応システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/087 20060101AFI20250130BHJP
   G08G 1/07 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
G08G1/087
G08G1/07 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023122793
(22)【出願日】2023-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】509042518
【氏名又は名称】エコモット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】杉山 崇
(72)【発明者】
【氏名】一藤 雪乃
(72)【発明者】
【氏名】吉田 勇介
(72)【発明者】
【氏名】小林 修
(72)【発明者】
【氏名】吉村 貴志
(72)【発明者】
【氏名】細川 博之
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA12
5H181CC04
5H181CC11
5H181JJ10
5H181JJ23
5H181JJ26
(57)【要約】
【課題】緊急車両が接近したときに、車両が敷地から退出し道路へ進入するのを確実に止めることができ、緊急車両の走行を阻害しない緊急車両対応システムを提供すること。
【解決手段】緊急車両対応システム1は、敷地Cを含む周辺の状況に関する周辺状況情報を取得するセンサ部2と、出口Bにおいて敷地Cから道路Aへの車両の退場を抑制する車両退場抑制機能を有する退場抑制部4と、センサ部2が取得した周辺状況情報に基づいて緊急車両Dが敷地に近づいたことを推定する緊急車両接近推定部305と、緊急車両接近推定部305の推定に基づいて退場抑制部4に車両退場抑制機能を発揮させる退場抑制制御部306とを備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路に出口を介して接する敷地に用いられ、緊急車両に対応する緊急車両対応システムであって、
前記敷地を含む周辺の状況に関する周辺状況情報を取得するセンサ部と、
前記出口において前記敷地から前記道路への車両の退場を抑制する車両退場抑制機能を有する退場抑制部と、
前記センサ部が取得した前記周辺状況情報に基づいて前記緊急車両が前記敷地に近づいたことを推定する緊急車両接近推定部と、
前記緊急車両接近推定部の推定に基づいて前記退場抑制部に前記車両退場抑制機能を発揮させる退場抑制制御部と、を備える
ことを特徴とする緊急車両対応システム。
【請求項2】
前記周辺状況情報には、前記敷地を含む周辺の音データが含まれることを特徴とする請求項1に記載の緊急車両対応システム。
【請求項3】
前記周辺状況情報と、該周辺状況情報に前記緊急車両に係る情報が含まれているか否かの関係を学習した第1学習モデルを生成する学習部を備え、
前記緊急車両接近推定部は、前記学習部が生成した前記第1学習モデルに基づいて前記緊急車両が前記敷地に近づいたことを推定する
ことを特徴とする請求項2に記載の緊急車両対応システム。
【請求項4】
前記緊急車両接近推定部は、
前記学習部が生成した前記第1学習モデルに基づいて前記音データに前記緊急車両のサイレン音が含まれるか否かを推定する緊急車両音存在推定を行い、
前記音データの周波数成分の時間的変化に基づいて前記緊急車両が前記敷地に接近しているか否かを推定する緊急車両音接近推定を行う
ことを特徴とする請求項3に記載の緊急車両対応システム。
【請求項5】
前記学習部は、前記周辺状況情報と、前記緊急車両が前記敷地に近づいた距離との関係を学習した第2学習モデルを生成し、
前記緊急車両接近推定部は、
前記学習部が生成した前記第1学習モデルに基づいて前記音データに前記緊急車両のサイレン音が含まれるか否かを推定する緊急車両音存在推定を行い、
前記学習部が生成した前記第2学習モデルに基づいて前記緊急車両が前記敷地に接近しているか否かを推定する緊急車両音接近推定を行う
ことを特徴とする請求項3に記載の緊急車両対応システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路に出口を介して接する工事現場、駐車場等の敷地に用いられ、道路を走行する緊急車両に対応する緊急車両対応システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、工事現場等の敷地は道路に隣接しており、工事関係車両等の車両は、定まった出入口を通して道路と敷地の間を出入りしている。
例えば、特許文献1に記載されているように出入口では、警備員が配備されていることが多い。
【0003】
一方、道路を走行する緊急車両が敷地に近づくと、緊急車両の走行を阻害しないように、敷地から車両が退場して道路に進入するのを確実に止める必要がある。
特に、病院や消防署には頻繁に緊急車両が出入りし、このような施設に近い敷地から車両が道路に進入して緊急車両に接触すると人命にかかわるため、緊急車両が近づいた時の車両の退場は避ける必要がある。
【0004】
近づく緊急車両に対して車両の敷地からの退場を防ぐために、警備員や退場車両の運転手などが、判断して対応する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-60893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
警備員や運転手など人による判断は、工事音等の音により緊急車両の接近に気づかない、警備員や運転手が緊急車両の敷地からの距離を把握しにくい、或いは、警備員や運転手による判断に個人差がある等の問題が発生しやすい。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、緊急車両が接近したときに、車両が敷地から退出して道路へ進入するのを確実に止めることができ、緊急車両の走行を阻害しない緊急車両対応システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
手段1は、道路に出口を介して接する敷地に用いられ、緊急車両に対応する緊急車両対応システムであって、前記敷地を含む周辺の状況に関する周辺状況情報を取得するセンサ部と、前記出口において前記敷地から前記道路への車両の退場を抑制する車両退場抑制機能を有する退場抑制部と、前記センサ部が取得した前記周辺状況情報に基づいて前記緊急車両が前記敷地に近づいたことを推定する緊急車両接近推定部と、前記緊急車両接近推定部の推定に基づいて前記退場抑制部に前記車両退場抑制機能を発揮させる退場抑制制御部と、を備えることを特徴とする緊急車両対応システムである。
【0009】
手段2は、前記周辺状況情報には、前記敷地を含む周辺の音データが含まれることを特徴とする請求項1に記載の緊急車両対応システムである。
【0010】
手段3は、前記周辺状況情報と、該周辺状況情報に前記緊急車両に係る情報が含まれているか否かの関係を学習した第1学習モデルを生成する学習部を備え、前記緊急車両接近推定部は、前記学習部が生成した前記第1学習モデルに基づいて前記緊急車両が前記敷地に近づいたことを推定することを特徴とする請求項2に記載の緊急車両対応システムである。
【0011】
手段4は、前記緊急車両接近推定部は、前記学習部が生成した前記第1学習モデルに基づいて前記音データに前記緊急車両のサイレン音が含まれるか否かを推定する緊急車両音存在推定を行い、前記音データの周波数成分の時間的変化に基づいて緊急車両が敷地に接近しているか否かを推定する緊急車両音接近推定を行うことを特徴とする請求項3に記載の緊急車両対応システムである。
【0012】
手段5は、前記学習部は、前記周辺状況情報と、緊急車両が敷地に近づいた距離との関係を学習した第2学習モデルを生成し、前記緊急車両接近推定部は、前記学習部が生成した前記第1学習モデルに基づいて前記音データに前記緊急車両のサイレン音が含まれるか否かを推定する緊急車両音存在推定を行い、前記学習部が生成した前記第2学習モデルに基づいて前記緊急車両が前記敷地に接近しているか否かを推定する緊急車両音接近推定を行うことを特徴とする請求項3に記載の緊急車両対応システムである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の緊急車両対応システムによれば、センサ部が取得した周辺状況情報により緊急車両が敷地に近づいたと推定されると、自動的に退場抑制部が車両退場抑制機能を発揮するので、緊急車両が接近した時は敷地から車両が退場するのを確実に止めることができ、緊急車両の走行の阻害を防止できる。
【0014】
加えて、緊急車両の接近に係る判断を緊急車両接近推定部が推定するので、個人差による判断のバラつきなくし緊急車両の接近を正確に推定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る敷地周辺の概略図である。
図2】本発明の実施形態を示す緊急車両対応システムの概略図である。
図3】本発明の実施形態を示す緊急車両対応システムのブロック図である。
図4】本発明の実施形態に係る機械学習処理のフローチャートである。
図5】本発明の実施形態に係る緊急車両対応処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態につき図1乃至図5を参照する等して説明する。
なお、本発明は、実施形態に限定されないことはいうまでもない。
【0017】
図1は実施形態に係る敷地周辺の概略図であり、図2は、実施形態を示す緊急車両対応システムの概略図であり、図3は実施形態を示す緊急車両対応システムのブロック図であり、図4は実施形態に係る機械学習処理のフローチャートであり、図5は実施形態に係る緊急車両対応処理のフローチャートである。
【0018】
図1及び図2に示すように、緊急車両対応システム1は、道路Aに出口Bを介して接する敷地Cに用いられ、道路Aを走行する緊急車両Dに対応する。
本実施形態では、敷地Cは仮囲いCaで区画された工事現場である。出口Bは入口も兼ね、工事関係車両が出入りする。
【0019】
緊急車両Dは、救急車、消防車、警察車両のようなサイレン音を発しながら走行する車両である。
本実施形態では、緊急車両Dとして救急車、敷地Cは救急車の到着地点である病院に近接するような工事現場での適用例を説明する。
【0020】
緊急車両対応システムは、センサ部2と、情報処理装置3、退場抑制部4とを備える。
【0021】
センサ部2は、敷地Cを含む周辺の状況に関する情報である周辺状況情報を取得(収集)するものである。特に、センサ部2は道路Aを走行する車両の状況についての周辺状況情報を収集できる。
【0022】
情報処理装置3は、センサ部が収集した周辺状況情報に基づいて、緊急車両が敷地Cに近づいているか否か判断し、当該判断に基づいて、退場抑制部4に車両退場抑制機能を発揮させる。
【0023】
退場抑制部4は、出口において敷地から道路への車両の退場を抑制する車両退場抑制機能を備えており、情報処理装置3の推定・判断に基づいて、車両退場抑制機能を発揮する。
【0024】
センサ部2は、出口Bの近傍において敷地Cの内部に立設されたセンサ用支柱20の上部に設置され、道路A上の出口Bから所定方向に向けて撮影する撮像手段であるカメラ21と、出口Bの周辺の音を拾う収音手段であるマイクロフォン22とを含む。
【0025】
カメラ21により取得した静止画、動画などの映像データ、及び、マイクロフォン22により収音した音データが周辺状況情報に含まれる。
周辺状況情報には、収音・撮像した時間情報や位置情報などを含めるようにしても良い。
【0026】
マイクロフォン22及びカメラ21は工事現場である敷地Cの内側に設けるので、設置許可が必要な道路とは異なり、設置許可をとる必要がない。したがって、長期間にわたって設置することができ、後述する学習モデルを生成するための周辺状況情報を安定的に取得する。
【0027】
マイクロフォン22で取得される音は、地形による反射や吸収、工事の騒音によるノイズ等の設置状況によって影響を受けることになるが、実際の現場で取得した音を用いるので、後述する学習モデルを精度よく生成することができる。
【0028】
情報処理装置3は、センサ用支柱20に設けられた筐体に収納されており、センサ部2、退場抑制部4と電気的に接続されている。
【0029】
情報処理装置3は、データの転送処理、演算処理等を実行するプロセッサ、データを記憶するメモリ等の各種の記憶部、各種のインターフェース等のハードウェアを備える、いわゆるコンピュータである。記憶部にはソフトウェアのデータが記憶され、ソフトウェアに基づいてハードウェアが特定の処理を実行することにより、後述する機能部として機能する。
【0030】
情報処理装置3は、単一のコンピュータであるがこれに限られない。各機能を複数のコンピュータで構成しても良い。
また、情報処理装置3は、各機能の少なくとも一部をコンピュータ資源の集合であるクラウド上で作動させる一又は複数の仮想的なものであってもよい。例えば、敷地に配置される情報処理装置に送受信部を設け、学習部や記憶部をクラウド上で作動させるようにしても良い。
【0031】
図3に示すように、情報処理装置3は、情報処理部30と記憶部31とを備える。
情報処理部30と記憶部31とはデータをやり取りするようになっており、情報処理部30は、記憶部31にデータを記憶させたり、記憶部31からデータを読み出したりする。
【0032】
情報処理部30は、センサ部2、退場抑制部4、入出力装置5に電気的に接続されている。
【0033】
情報処理部30は、取得部301、音声解析部302、学習部303、入出力部304、緊急車両接近推定部305、退場抑制制御部306を備える。
【0034】
取得部301は、センサ部2が取得した周辺状況情報を取得する。具体的には、取得部301は、カメラ21が送信する映像データ、マイクロフォン22が送信する音データを取得する。
【0035】
取得部301は、周辺状況情報として、収音・撮像した時間情報や位置情報、気温情報、天候情報なども取得するようにしても良い。これらの情報は、カメラ21、マイクロフォン22ではないセンサから取得しても良いし、接続可能な外部のネットワークから取得するようにしても良い。
【0036】
取得部301は、取得した周辺状況情報のうち音データ以外のものを紐づけ可能に記憶部31に格納する。
【0037】
音声解析部302は、取得部301が取得した音データを所定の周波数帯別に分け、周波数帯と振幅とを数値化した周波数成分の音データに変換する。
【0038】
音声解析部302は、変換した音データを他のデータと紐づけ可能に記憶部31に格納する。
なお、音データは、周波数成分に変換しないものも記憶部31に格納するようにしても良い。
【0039】
学習部303は、記憶部31に格納された周辺状況情報を取得し、これに基づいて機械学習し学習モデルM1を生成し、記憶部31に格納する。
【0040】
生成する学習モデルM1は、周辺状況情報と、該周辺状況情報に緊急車両Dに係る情報が含まれているか否かの関係を学習したもの、すなわち、周波数成分に変換した音データを入力することにより緊急車両のサイレン音が含まれるか否かの情報を出力するものである。学習モデルM1は本発明の第1学習モデルに相当する。
【0041】
学習部303は、映像データやその他の周辺状況の情報を参考に周波数成分に変換した音データをはじめとするデータを少なくとも含むものを教師データとして機械学習し学習モデルM1を生成する。なお、教師データに例えば、さらに映像データも含まれるようにしても良い。
【0042】
映像データには緊急車両が含まれているか否かが確認できる教師データとして相応しく、例えば教師データの映像データを目視しながら学習させることができるので緊急車両の存在が確認しやすく正確な学習が可能となる。
【0043】
学習部303のよる学習モデルM1は、例えばニューラルネットワークで、学習処理は、例えば、誤差逆伝播法が用いられるが、これに限られない。
【0044】
学習部303は、周波数成分に変換した音データ及び映像データの他の周辺状況情報として、収音・撮像した時間情報や位置情報、気温情報、天候情報なども教師データとして学習モデルM1を生成するようにしても良い。
【0045】
図4に示すように、機械学習処理が行われる。
【0046】
ステップ1において、取得部301が、センサ部2が取得した周辺状況情報を取得する。具体的には、取得部301が、カメラ21が送信する映像データ、マイクロフォン22が送信する音データを取得する(S1)。
【0047】
ステップ2において、音声解析部302が、取得部301が取得した音データを所定の周波数帯別に分け、周波数帯と振幅とを数値化した周波数成分の音データに変換する(S2)。
【0048】
ステップ3において、記憶部31が、取得した周辺状況情報のうち音データ以外の特に映像データ、及び周波数成分に変換された音データを記憶する(S3)。
【0049】
ステップ4において、学習部303が、記憶部31に格納されて蓄積された周辺状況情報を取得し、これに基づいて機械学習を行う(S4)。
【0050】
ステップ5において、学習部303が、周波数成分に変換した音データを入力することにより緊急車両のサイレン音が含まれるか否かの情報を出力する学習モデルM1を生成する(S5)。
【0051】
ステップ6において、学習部303が、生成した学習モデルM1を記憶部31に格納する(S6)。
【0052】
この学習部303による機械学習は、周辺状況情報が記憶部31に相当程度の蓄積されるに応じて行われ、学習モデルM1が生成されて記憶される。また、周辺状況情報が適宜記録されるごとに応じて機械学習が行われ、学習モデルM1が更新されて記憶される。
【0053】
図3の説明に戻る。
【0054】
入出力部304は、入出力装置5を制御し、各機能部の処理結果などを入出力装置5に出力したり、入出力装置5から入力された各種設定や操作などを受け付ける。
【0055】
緊急車両接近推定部305は、学習モデルを用いて、現在取得された音データに基づいて緊急車両が工事現場の出口に接近しているか否かを推定する。
【0056】
緊急車両接近推定部305は、上述した敷地Cにおいて学習部303が機械学習し生成し記憶部31に記憶した学習モデルM1を取得しておく。
また、更新された学習モデルM1がある場合には、更新されたものを取得する。
【0057】
緊急車両接近推定部305は、当該敷地C以外で機械学習され生成され記憶部31に格納された学習モデルM2についても取得しておく。
【0058】
この学習モデルM2は、例えば、他の工事現場で機械学習され生成されたものや試験場など比較的ノイズが含まれないような環境下で機械学習され生成されたものであって、周波数成分に変換した音データを入力することにより緊急車両のサイレン音が含まれるか否かの情報を出力するものである。
【0059】
学習モデルM2は、例えば、入出力装置5から入出力部304を介して入力され記憶部31に格納される。
【0060】
緊急車両接近推定部305は、学習モデルM1及び学習モデルM2を用いて、現在取得された音データに緊急車両Dのサイレン音が含まれるか否かを推定する緊急車両音存在推定を行う。
【0061】
緊急車両接近推定部305は、例えば、学習モデルM1及び学習モデルM2のいずれか一方の緊急車両音存在推定について、緊急車両Dのサイレン音が含まれると推定されれば、現在取得された音データに緊急車両のサイレン音が含まれると推定する。
【0062】
緊急車両のサイレン音は、所定の周波数成分が含まれるので、周波数成分への変換は有効で正答率が比較的に高い学習モデルが生成できる。
【0063】
学習モデルM2を用いるのは、周辺状況情報の蓄積が少なく当該敷地Cにおける学習モデルM1による推定の正答率が低い場合などに効果的である。
【0064】
なお、状況に応じて、学習モデルM1、学習モデルM2の少なくともいずれかを用いて推定するようにしても良い。例えば、当該敷地Cにおける周辺状況情報の蓄積が少ないときには学習モデルM2だけを用い、その後学習モデルM1を併用し、相当数の蓄積となったときに学習モデルM1だけを用いて推定を行うようにしても良い。
【0065】
緊急車両接近推定部305は、現在取得され周波数成分に変換された音データを取得する。
周波数成分に変換された音データの取得は、記憶部31から取得しても良いし、音声解析部302から直接取得しても良い。
【0066】
緊急車両接近推定部305は、緊急車両音存在推定において現在取得され周波数成分に変換された音データのうち緊急車両Dのサイレン音が含まれると推定したものについて、周波数成分の時間的変化から緊急車両Dが敷地Cに接近しているか否かを推定する緊急車両音接近推定を行う。
【0067】
例えば、緊急車両接近推定部305は、緊急車両音存在推定において現在取得され周波数成分に変換された音データのうち緊急車両Dのサイレン音が含まれると推定したものについて、所定の周波数成分(例えば、サイレン音に近似する高い周波数成分)の時間的変化を監視し、当該周波数成分の増加傾向が設定した閾値を超えたときに緊急車両Dが敷地Cの出口Bから所定距離(例えば、100m)に近づいたと推定する。
【0068】
緊急車両Dが接近したことを推定するための所定距離として、100m程度にすると、緊急車両Dの通常の速度から出口Bに達するまでに7秒~8秒程度要するので、退場抑制部4が車両退場抑制機能を発揮させるための十分な時間を確保でき、また、敷地Cから退場しようとする車両を待たせすぎる心配もないので好ましい。
【0069】
なお、緊急車両接近推定部305は、緊急車両音接近推定について、緊急車両音存在推定と同様に、機械学習によって生成された学習モデルに基づいて推定するようにしても良い。
【0070】
この場合も、学習部303は、記憶部31に格納された周辺状況情報を取得し、これに基づいて機械学習し学習モデルM3を生成し、記憶部31に格納する。
【0071】
生成する学習モデルM3は、周辺状況情報と、緊急車両Dが敷地Cの出口Bに近づいた距離との関係を学習したもの、すなわち、周波数成分に変換した音データを入力することにより緊急車両Dが敷地Cの出口Bから所定距離に近づいたか否かを示す情報、例えば、出口Bから距離とその向きを出力するものである。学習モデルM3は本発明の第2学習モデルに相当する。
【0072】
学習部303は、映像データやその他の周辺状況の情報を参考に周波数成分に変換した音データをはじめとするデータを少なくとも含むものを教師データとして機械学習し学習モデルM3を生成する。
【0073】
映像データには緊急車両Dが出口Bから所定距離に近づいたか否かが確認できる教師データとして相応しく、例えば教師データの映像データに映り込んでおり出口Bからの距離が既知である特定の標識や家屋などの不動物を目視しながら学習させることができるので距離の把握がしやすく正確な学習が可能となる。
【0074】
また、緊急車両音存在推定の当該敷地C以外で機械学習され生成され記憶部31に格納された学習モデルM2と同様の学習モデルM4を取得し、学習モデルM3及び学習モデルM4を用いて、出口Bから所定距離に近づいているか否かを推定して緊急車両音接近推定を行うようにしても良い。
【0075】
退場抑制制御部306は、緊急車両接近推定部305が緊急車両音接近推定において緊急車両Dが工事現場の出口Bに接近していると推定した場合に、退場抑制部4に緊急車両Dが工事現場の出口Bに接近していることを示す接近信号を送る。すなわち、退場抑制制御部306は、緊急車両接近推定部305の推定に基づいて退場抑制部4に車両退場抑制機能を発揮させることを示す指令を発する。
【0076】
具体的には、退場抑制制御部306は、退場抑制部4の制御盤42に、緊急車両が工事現場の出口Bに接近していることを示す接近信号を送信する。
退場抑制制御部306は、退場抑制部4の制御盤42に退場抑制部4が車両退場抑制機能を発揮させるように指令する。
【0077】
退場抑制制御部306は、緊急車両接近推定部305が緊急車両音接近推定において緊急車両Dが工事現場の出口Bに接近していると推定した場合であって緊急車両Dが出口Bを通過したか否かを判断し、緊急車両Dが出口Bを通過したと判断した場合に、退場抑制部4に緊急車両Dが工事現場の出口Bを通過したことを示す離脱信号を送る。すなわち、退場抑制制御部306は、退場抑制部4に車両退場抑制機能を停止させることを示す指令を発する。
【0078】
退場抑制制御部306は、例えば、退場抑制部4の制御盤42に、緊急車両が工事現場の出口Bに接近していることを示す接近信号を送信した後、所定時間が経過したことをもって、緊急車両Dが出口Bを通過したと判断するようにしても良い。所定時間は、例えば、緊急車両音接近推定において設定された出口Bから所定の距離と設定される緊急車両Dの速度との関係から設定されるようにしても良い。
【0079】
また、退場抑制制御部306は、センサ部2のカメラ21の映像データに基づいて緊急車両Dが出口Bを通過したと判断するようにしても良い。
【0080】
さらに、退場抑制制御部306は、センサ部2のマイクロフォンで取得した音が強度のピークを超えた時、或いは、ドップラー効果により周波数が変化した時に、緊急車両Dが出口Bを通過したと判断するようにしても良い。
【0081】
図1及び図2に示すように、退場抑制部4は、出口Bを開閉可能な遮断機40、及び、出口B付近で光と音で警告を発する警報機41、制御盤42を備える。
警報機41は、出口Bの一側に隣接して立設された支柱41aの頂部に設置される。
【0082】
制御盤42は、支柱41aに設けられた筐体に収納されており、遮断機40及び警報機41と電気的に接続されている。
【0083】
制御盤42は、情報処理装置3と電気的に接続されており(図3)、退場抑制制御部306からの車両の退場を抑制するための信号を受信し、指令信号を生成して遮断機40の閉鎖及び警報機41を作動させる。
【0084】
制御盤42は、退場抑制制御部306からの車両の退場の抑制を解除するための信号を受信し、指令信号を生成して遮断機40の開放及び警報機41を停止させる。
【0085】
退場抑制部4は、制御盤42が生成した指令信号で遮断機40を閉鎖し、警報機41を作動させて発光及び発音することにより、出口Bからの車両の退場を抑制する車両退場抑制機能を発揮する。
【0086】
退場抑制部4は、制御盤42が生成した指令信号で遮断機40を開放し、警報機41を停止させることにより、出口Bからの車両の退場を抑制する車両退場抑制機能を停止する。
【0087】
入出力装置5は、入出力部304からの制御によりタッチパネル、キーボード、USBメモリなどの各種入出力のためのデバイスであり、各種設定や操作の入力や演算結果の表示などできる。
【0088】
図5に示すように、緊急車両対応システム1は、緊急車両対応処理を行う。
【0089】
緊急車両対応処理がスタートすると、ステップ11において、緊急車両接近推定部305は、敷地Cにおいて学習部303が機械学習し生成し記憶部31に記憶した学習モデルM1を取得しておく。更新された学習モデルM1がある場合には、更新されたものを取得する(S11)。
【0090】
また、ステップ11において、緊急車両接近推定部305は、当該敷地C以外で機械学習され生成され記憶部31に格納された学習モデルM2についても取得しておく(S11)。
【0091】
次に、ステップ12において、取得部301は、センサ部2が取得したものを含む周辺状況情報を取得する。具体的には、取得部301は、カメラ21が送信する映像データ、マイクロフォン22が送信する音データを含む周辺状況情報を取得する(S12)。
【0092】
次に、ステップ13において、取得部301は、取得した周辺状況情報のうち音データ以外のものを紐づけ可能に記憶部31に格納し、取得した周辺状況情報のうち音データを音声解析部302に受け渡す(S13)。
なお、記憶部31に格納された音データ以外の周辺状況情報は、学習部303によって機械学習のためのデータとして用いられる(図4のステップ3(S3)、ステップ4(S4))。
【0093】
次に、ステップ14において、音声解析部302は、受け渡された音データを所定の周波数帯別に分け、周波数帯と振幅とを数値化した周波数成分の音データに変換する(S14)。
【0094】
次に、ステップ15において、音声解析部302は、変換した音データを他のデータと紐づけ可能に記憶部31に受け渡す(S15)。
【0095】
また、ステップ15において、音声解析部302は、変換した音データを緊急車両接近推定部305に受け渡す(S15)。
【0096】
次に、ステップ16において、記憶部31は、音声解析部302から受け渡された変換された音データを他のデータと紐づけ可能に記憶する(S16)。
なお、記憶部31が記憶した音データの周辺状況情報は、学習部303によって機械学習のためのデータとして用いられる(図4のステップ3(S3)、ステップ4(S4))。
【0097】
次に、ステップ17において、緊急車両接近推定部305は、音声解析部302から変換された音データを推定の対象として取得する(S17)。
【0098】
次に、ステップ18において、緊急車両接近推定部305は、取得した学習モデルM1及び学習モデルM2を用いて、現在取得され変換された音データに緊急車両Dのサイレン音が含まれるか否かを推定する緊急車両音存在推定を行う(S18)。
【0099】
ステップ18の緊急車両音存在推定において、音データに緊急車両Dのサイレン音が含まれていない(NO)と推定されれば終了し、音データに緊急車両Dのサイレン音が含まれている(YES)と推定されればステップ19へ進む。
【0100】
次に、ステップ19において、緊急車両接近推定部305は、緊急車両音存在推定において現在取得され周波数成分に変換された音データのうち緊急車両Dのサイレン音が含まれると推定したもの(ステップ18の推定がYES)について、周波数成分の時間的変化から緊急車両Dが敷地Cに接近しているか否かを推定する緊急車両音接近推定を行う(S19)。
【0101】
ステップ19の緊急車両音接近推定において、緊急車両Dが敷地Cに接近していない(NO)と推定されれば終了し、緊急車両Dが敷地Cに接近している(YES)と推定されればステップ20へ進む。
【0102】
次に、ステップ20において、退場抑制制御部306は、緊急車両接近推定部305が緊急車両音接近推定において緊急車両Dが工事現場の出口Bに接近していると推定した場合(ステップ19の推定がYES)に、退場抑制部4に緊急車両Dが工事現場の出口Bに接近していることを示す接近信号を送る(S20)。
【0103】
次に、ステップ21において、退場抑制制御部306からの近接信号を受信した退場抑制部4の制御盤42は、遮断機40を閉鎖し、警報機41を作動させる。すなわち、退場抑制部4は、出口Bからの車両の退場を抑制する車両退場抑制機能を発揮する(S21)。
【0104】
次に、ステップ22において、退場抑制制御部306は、緊急車両Dが出口Bを通過したか否かを判断する緊急車両通過判断を行う(S22)。
【0105】
ステップ22の緊急車両通過判断において、緊急車両Dが敷地Cの出口Bを通過していない(NO)と判断されればステップ22の前に戻り、緊急車両Dが敷地Cの出口Bを通過した(YES)と判断されればステップ23へ進む。
【0106】
次に、ステップ23において、退場抑制制御部306が緊急車両通過判断において緊急車両Dが敷地Cの出口Bを通過したと判断した場合(ステップ22の判断がYES)に、退場抑制制御部306は、退場抑制部4に緊急車両Dが工事現場の出口Bを通過したことを示す離脱信号を送る(S23)。
【0107】
次に、ステップ24において、退場抑制制御部306からの離脱信号を受信した退場抑制部4の制御盤42は、遮断機40を開放し、警報機41を停止させる。すなわち、退場抑制部4は、出口Bからの車両の退場を抑制する車両退場抑制機能を解除し(S24)、終了する。
【0108】
なお、ステップ22の緊急車両通過判断は、緊急車両接近推定部305が行っても良い。
この場合には、緊急車両接近推定部305が緊急車両通過判断において緊急車両Dが敷地Cの出口Bを通過したと判断したことを受けて、退場抑制制御部306は、退場抑制部4に緊急車両Dが工事現場の出口Bを通過したことを示す離脱信号を送る。
【0109】
〔その他の変形例〕
本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。例えば以下のようなものも含まれる。
【0110】
本実施形態では、退場抑制部4に遮断機40及び警報機41を用いたが、これに限られずいずれか一方でも良い。
また、出口Bからの車両の退場を抑制する車両退場抑制機能を発揮するものであれば他の手段でも良い。
例えば、LEDによって停止表示を行う表示板や赤色と青色とを切り替える信号機を出口に設けるようにしても良い。
例えば、出入口に配備された警備員が備える無線受信機に警告音などの抑制信号が送信されて、この指令に基づいて、警備員が車両の退場を抑制するよう合図を行うように構成しても良い。
【0111】
本実施形態では、退場抑制部4に遮断機40及び警報機41の複数の手段を採用し、緊急車両接近推定部305の推定が肯定されたときに、同時に複数の手段の車両退場抑制機能を発揮させるようにしたが、これに限られず、段階的に車両退場抑制機能を発揮させるようにしても良い。
段階的に車両退場抑制機能を発揮させることで、敷地内への報知回数を増やし、退場しようとする運転手や警備員への注意を促し、心構えを促すことができる。特に、例えば、警報機、遮断機の順のように車両退場抑制機能が弱いものから順に作動させれば、その効果は顕著となる。
【0112】
例えば、緊急車両接近推定部305による緊急車両音接近推定において、緊急車両Dが敷地Cの出口Bから第1の所定距離(例えば、150m)に近づいたと推定したときに警報機41を作動させ、第1の所定距離より短い第2の所定距離(例えば、100m)に近づいたと推定したときに遮断機40を閉鎖するようにしても良い。
【0113】
また、例えば、緊急車両接近推定部305による緊急車両音接近推定において、緊急車両Dが敷地Cの出口Bから第1の所定距離(例えば、150m)に近づいたと推定したときに警報機41を弱く作動(例えば、黄色で発光)させ、第1の所定距離より短い第2の所定距離(例えば、100m)に近づいたと推定したときに警報機41を強く作動(例えば、赤色で発光)させるようにしても良い。さらに加えて、第2の所定距離より短い第3の所定距離(例えば、50m)に近づいたと推定したときに遮断機40を閉鎖するようにしても良い。
【0114】
また、例えば、緊急車両接近推定部305による緊急車両音存在推定において、取得された音データに緊急車両Dのサイレン音が含まれると推定したときに警報機41を作動させ、緊急車両接近推定部305による緊急車両音接近推定において、緊急車両Dが敷地Cの出口Bからの所定距離に近づいたと推定したときに遮断機40を閉鎖するようにしても良い。
【0115】
本実施形態では、周辺状況情報として音を集音し取得した音データに基づいて緊急車両音の接近を推定したが、これに限られず、周辺状況情報として取得した映像データに基づいて緊急車両の接近を推定するものであっても良い。
【0116】
いずれの実施形態(変形例を含む。以下同じ)における各技術的事項を他の実施形態に適用して実施例としても良い。
【0117】
A 道路
B 出口
C 敷地
D 緊急車両
1 緊急車両対応システム
2 センサ部
20 センサ用支柱
21 カメラ
22 マイクロフォン
3 情報処理装置
30 情報処理部
31 記憶部
301 取得部
302 音声解析部
303 学習部
304 入出力部
305 緊急車両接近推定部
306 退場抑制制御部
4 退場抑制部
40 遮断機
41 警報機
42 制御盤
5 入出力装置
図1
図2
図3
図4
図5