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特開2025-18811マルチビーム半導体レーザ素子、半導体レーザ装置およびその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025018811
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】マルチビーム半導体レーザ素子、半導体レーザ装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/22 20060101AFI20250130BHJP
   H01S 5/02335 20210101ALI20250130BHJP
   H01S 5/0234 20210101ALI20250130BHJP
   H01S 5/042 20060101ALI20250130BHJP
   H01S 5/0237 20210101ALI20250130BHJP
   H01S 5/028 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
H01S5/22 610
H01S5/02335
H01S5/0234
H01S5/042 612
H01S5/0237
H01S5/028
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023122824
(22)【出願日】2023-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】井上 裕隆
(72)【発明者】
【氏名】坂井 繁太
(72)【発明者】
【氏名】反町 進
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173AD05
5F173AK08
5F173AK21
5F173AL03
5F173AL10
5F173AL15
5F173AL21
5F173AP71
5F173AR96
5F173MC12
5F173MC30
5F173MD62
5F173MD63
5F173MD65
5F173MD84
(57)【要約】
【課題】コーティング工程における信頼性の低下を抑制した半導体レーザ素子を提供する。
【解決手段】半導体レーザ素子100は、第1方向に隣接して集積化された3個以上の複数のレーザ共振器200_1~200_4を備える。各レーザ共振器200は、独立した給電用電極150を有し、かつ第2方向を長手とし、端面がコーティングされている。複数の電極パッドPe1~Pe4は、レーザ領域102と第1方向に隣接するパッド領域104,106に形成される。接続用配線Lc1~Lc4は、それぞれが第1方向に伸び、対応するレーザ共振器200の給電用電極150と対応する電極パッドPeを電気的に接続する。厚膜パッド170は、パッド領域104,106に形成され、接続用配線Lc1~Lc4の積層配線構造160よりも高さが高い。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチビーム半導体レーザ素子であって、
単一の半導体基板のレーザ領域に、第1方向に隣接して集積化された3個以上の複数のレーザ共振器であって、各レーザ共振器は、独立した給電用電極を有し、かつ第2方向を長手とし、端面がコーティングされている、複数のレーザ共振器と、
前記レーザ領域と前記第1方向に隣接するパッド領域に形成される、前記複数のレーザ共振器に対応する複数の電極パッドと、
前記複数のレーザ共振器に対応し、それぞれが前記第1方向に伸び、対応する前記レーザ共振器の前記給電用電極と対応する前記電極パッドを電気的に接続する複数の接続用配線であって、前記接続用配線は、前記レーザ共振器と交差する位置において、積層配線構造を有している、複数の接続用配線と、
前記パッド領域に形成され、前記接続用配線の前記積層配線構造よりも高さが高い厚膜パッドと、
を備えることを特徴とするマルチビーム半導体レーザ素子。
【請求項2】
前記厚膜パッドは、前記電極パッドと同じ材料で形成されることを特徴とする請求項1に記載のマルチビーム半導体レーザ素子。
【請求項3】
前記電極パッドの高さは、前記接続用配線の前記積層配線構造の高さよりも高く、前記電極パッドが、前記厚膜パッドであることを特徴とする請求項1に記載のマルチビーム半導体レーザ素子。
【請求項4】
前記厚膜パッドは、前記複数の電極パッドとは別に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のマルチビーム半導体レーザ素子。
【請求項5】
前記給電用電極は、ストライプ状電極であり、前記ストライプ状電極の上には、層間絶縁膜が形成されており、前記接続用配線は、前記層間絶縁膜の上に形成されることを特徴とする請求項1に記載のマルチビーム半導体レーザ素子。
【請求項6】
前記層間絶縁膜はポリイミドであることを特徴とする請求項5に記載のマルチビーム半導体レーザ素子。
【請求項7】
前記厚膜パッドは、前記層間絶縁膜と同じ材料で形成されることを特徴とする請求項5または6に記載のマルチビーム半導体レーザ素子。
【請求項8】
前記複数のレーザ共振器の上に形成され、前記第1方向に伸び、前記厚膜パッドと実質的に同じ高さを有する防止壁をさらに備えることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のマルチビーム半導体レーザ素子。
【請求項9】
前記給電用電極は、ストライプ状電極であり、前記ストライプ状電極の上には、層間絶縁膜が形成されており、前記防止壁は、前記層間絶縁膜と同じ材料で形成されることを特徴とする請求項8に記載のマルチビーム半導体レーザ素子。
【請求項10】
前記厚膜パッドは複数であり、複数の厚膜パッドの高さは実質的に等しいことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のマルチビーム半導体レーザ素子。
【請求項11】
前記複数のレーザ共振器の間隔は100μm以下であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のマルチビーム半導体レーザ素子。
【請求項12】
請求項1から5のいずれかに記載のマルチビーム半導体レーザ素子と、
サポート基板と、
を備え、
前記マルチビーム半導体レーザ素子は、前記サポート基板に対してジャンクションアップ実装されることを特徴とする半導体レーザ装置。
【請求項13】
請求項1から5のいずれかに記載のマルチビーム半導体レーザ素子と、
サポート基板と、
を備え、
前記マルチビーム半導体レーザ素子は、前記サポート基板に対してジャンクションダウン実装されることを特徴とする半導体レーザ装置。
【請求項14】
前記サポート基板は、前記複数のレーザ共振器に対応する複数の基板側電極パッドを備え、各基板側電極パッドは、対応するレーザ共振器の前記接続用配線および前記電極パッドとオーバーラップするように形成されており、
各レーザ共振器の前記接続用配線および前記電極パッドは、対応する基板側電極パッドと、はんだで接合されることを特徴とする請求項13に記載の半導体レーザ装置。
【請求項15】
請求項1に記載のマルチビーム半導体レーザ素子の製造方法であって、
前記給電用電極は、ストライプ状電極であり、
前記接続用配線および前記厚膜パッドを、メッキにより形成するメッキ工程を備え、
前記メッキ工程における給電は、前記ストライプ状電極を介して行われることを特徴とする製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、マルチビーム半導体レーザ素子に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタやヘッドマウントディスプレイ(HMD)などの電子機器には、光源として半導体レーザが用いられる。このような画像を扱う電子機器の高解像度化に対応するため、マルチビーム半導体レーザ素子が採用される。
【0003】
レンズやMEMSミラーを小型化するため、ビームピッチを狭くすることが求められる。ビームピッチがワイヤボンディングのボール径やダイボンディングの半田パターン幅よりも狭くなると、レーザ共振器上面の電極に直接ワイヤボンディングまたはダイボンディングする面積を確保することができなくなり、その結果、電極パッドを、チップ(半導体基板)の端部に寄せて形成する必要がある。この場合、電極パッドとレーザ共振器の間を接続する接続配線(積層配線)は、レーザ共振器を跨ぐこととなる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-135731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、狭ビームピッチのマルチビーム半導体レーザ素子について検討し、以下の課題を認識するに至った。
【0006】
マルチビーム半導体レーザ素子の複数のレーザ共振器の端面は、AR(Anti Reflection)コーティングあるいはHR(High Reflection)コーティングが施される。図1は、コーティング工程を説明する図である。コーティング工程に先立ち、ウェハから、半導体チップ4(ダイ)が、複数個が一体化したダイアレイ(LDバー)6として切り出される。LDバー6は、治具であるスペーサ2によって挟み込まれ、支持・固定される。この状態で、LDバー6の劈開面8に対して、コーティングが施される。コーティング後、ペレタイズ工程によって、LDバー6から複数の半導体チップ4が切り出される。
【0007】
ビームピッチが狭いマルチビーム半導体レーザ素子では、チップ端部にパッド電極が配置される。中央のレーザ共振器の上面に形成される給電用電極(P側電極)とパッド電極を接続する配線(接続配線という)は、隣のレーザ共振器を横切ることとなる。接続配線とレーザ共振器の交差部分に注目すると、接続配線とレーザ電極の給電用電極の間には、絶縁層が挿入され、積層配線構造が形成されている。この積層配線構造は、他の部分に比べて高さ(チップ表面からの距離)が高くなる。そのためコーティング工程において、LDバー6をスペーサ2によって固定する際に、積層配線構造が、スペーサ2と接触することとなり、圧力が集中する。これにより、半導体レーザ素子の信頼性が低下するおそれがある。たとえば積層配線構造の絶縁層にクラックが入ると、隣接するエミッタ間の電気的ショートが発生する。
【0008】
なお、この課題を当業者の一般的な認識として捉えてはならず、さらに言えば、この課題は本発明者らが独自に認識したものである。
【0009】
本開示のある態様はかかる課題に鑑みてなされたものであり、その例示的な目的のひとつは、コーティング工程における信頼性の低下を抑制した半導体レーザ素子の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示のある態様は、マルチビーム半導体レーザ素子に関する。マルチビーム半導体レーザ素子は、単一の半導体基板のレーザ領域に、第1方向に隣接して集積化された3個以上の複数のレーザ共振器を備える。各レーザ共振器は、独立した給電用電極を有し、かつ第2方向を長手とし、端面がコーティングされている。レーザ領域と第1方向に隣接するパッド領域には、複数のレーザ共振器に対応する複数の電極パッドが形成される。対応するレーザ共振器の給電用電極と、対応する電極パッドとの間は、複数の接続用配線によって電気的に接続される。接続用配線は、レーザ共振器と交差する位置において、積層配線構造を有している。マルチビーム半導体レーザ素子は、パッド領域に形成され、接続用配線の積層配線構造よりも高さが高い厚膜パッドをさらに備える。
【0011】
なお、以上の構成要素を任意に組み合わせたもの、本開示の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【発明の効果】
【0012】
本開示のある態様によれば、マルチビーム半導体レーザのコーティング工程において、接続用配線の積層配線構造に圧力が集中するのを防止でき、信頼性を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】コーティング工程を説明する図である。
図2】実施形態1に係る半導体レーザ素子の斜視図である。
図3図2の半導体レーザ素子の断面図である。
図4図2の半導体レーザ素子に対するコーティング工程を説明する図である。
図5】半導体レーザ素子を備えるレーザ装置の断面図である。
図6】半導体レーザ素子を備えるレーザ装置の断面図である。
図7】半導体レーザ素子を備えるレーザ装置の断面図である。
図8】実施形態2に係る半導体レーザ素子の斜視図である。
図9】実施形態3に係る半導体レーザ素子の斜視図である。
図10】実施形態4に係る半導体レーザ素子の斜視図である。
図11】実施形態5に係る半導体レーザ素子の斜視図である。
図12】実施形態6に係る半導体レーザ素子の斜視図である。
図13】実施形態7に係る半導体レーザ素子の斜視図である。
図14】変形例に係る半導体レーザ素子の斜視図である。
図15】実施形態8に係る半導体レーザ素子の斜視図である。
図16】実施形態9に係る半導体レーザ素子の平面図である。
図17】実施形態10に係る半導体レーザ素子の平面図である。
図18】実施形態11に係る半導体レーザ素子の平面図である。
図19】実施形態12に係る半導体レーザ素子の平面図である。
図20】実施形態13に係る半導体レーザ素子の斜視図である。
図21図20の半導体レーザ素子の一実施例を示す平面図である。
図22図21の半導体レーザ素子の断面図である。
図23】実施形態14に係る半導体レーザ素子の斜視図である。
図24】半導体レーザ素子の製造方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施形態の概要)
本開示のいくつかの例示的な実施形態の概要を説明する。この概要は、後述する詳細な説明の前置きとして、または、実施形態の基本的な理解を目的としている。同概要は、1つまたは複数の実施形態のいくつかの概念を簡略化して説明するものであり、発明あるいは開示の広さを限定するものではない。またこの概要は、考えられるすべての実施形態の包括的な概要ではなく、実施形態の欠くべからざる構成要素を限定するものではない。便宜上、「一実施形態」は、本明細書に開示するひとつの実施形態(実施例や変形例)または複数の実施形態(実施例や変形例)を指すものとして用いる場合がある。
【0015】
一実施形態に係るマルチビーム半導体レーザ素子は、単一の半導体基板のレーザ領域に、第1方向に隣接して集積化された3個以上の複数のレーザ共振器(レーザ導波路)であって、各レーザ共振器は、独立した給電用電極を有し、かつ第2方向を長手とし、端面がコーティングされている、複数のレーザ共振器と、レーザ領域と第1方向に隣接するパッド領域に形成される、複数のレーザ共振器に対応する複数の電極パッドと、複数のレーザ共振器に対応し、それぞれが第1方向に伸び、対応するレーザ共振器の給電用電極と対応する電極パッドを電気的に接続する複数の接続用配線であって、接続用配線は、レーザ共振器と交差する位置において、積層配線構造を有している、複数の接続用配線と、パッド領域に形成され、接続用配線の積層配線構造よりも高さが高い厚膜パッドと、を備える。
【0016】
この構成によると、コーティング工程において、複数の半導体レーザ素子からなるLDバーをスペーサによって挟み込んで固定する際に、厚膜パッドに圧力が集中することとなる。これにより、積層配線構造にかかる力を低減することができ、半導体レーザ素子の信頼性を高めることができる。
【0017】
一実施形態において、厚膜パッドは、電極パッドと同じ材料で形成されてもよい。
【0018】
一実施形態において、電極パッドの高さは、接続用配線の積層配線構造の高さよりも高く、電極パッドが、厚膜パッドであってもよい。この場合、コーティング工程において、厚膜パッド(電極パッド)の表面が、スペーサと接触することとなるため、電極パッドの表面に、コーティングの材料が付着しない。そのため、後の組み立て工程において、ボンディングワイヤやはんだ付けの密着度を高めることができる。
【0019】
一実施形態において、厚膜パッドは、複数の電極パッドとは別に設けられていてもよい。
【0020】
一実施形態において、給電用電極は、ストライプ状電極であり、ストライプ状電極の上には、層間絶縁膜が形成されており、接続用配線は、層間絶縁膜の上に形成されてもよい。
【0021】
一実施形態において、層間絶縁膜はポリイミドであってもよい。ポリイミドは下地の凹凸を埋めることができ、表面が平坦となりやすいため、接続用配線を平坦化でき、膜のカバレッジを良くするという効果が得られる。
【0022】
一実施形態において、厚膜パッドは、層間絶縁膜と同じ材料で形成されてもよい。
【0023】
一実施形態において、マルチビーム半導体レーザ素子は、複数のレーザ共振器を横切り、少なくともレーザ領域全体にわたって形成され、厚膜パッドと実質的に同じ高さを有する防止壁をさらに備えてもよい。この構造によれば、レーザ共振器の一方の端面をコーティングしているときに、反対側の端面にコーティングの材料が付着するのを防止でき、コーティング膜の性能低下を抑制できる。
【0024】
一実施形態において、給電用電極は、ストライプ状電極であってもよい。ストライプ状電極の上には、層間絶縁膜が形成されており、防止壁は、層間絶縁膜と同じ材料で形成されてもよい。
【0025】
一実施形態において、厚膜パッドは複数形成されており、複数の厚膜パッドの高さは実質的に等しくてもよい。これによりコーティング工程において、スペーサを半導体基板と平行に支持することができ多数のLDバーとスペーサを安定して積層することができる。実質的に等しいとは、この効果が得られる程度に等しいことをいう。
【0026】
一実施形態において、複数のレーザ共振器の間隔は100μm以下であってもよい。
【0027】
一実施形態に係る半導体レーザ装置は、上述のいずれかに記載のマルチビーム半導体レーザ素子と、サポート基板と、を備える。マルチビーム半導体レーザ素子は、サポート基板に対してジャンクションアップ実装される。
【0028】
一実施形態に係る半導体レーザ装置は、上述のいずれかに記載のマルチビーム半導体レーザ素子と、サポート基板と、を備える。マルチビーム半導体レーザ素子は、サポート基板に対してジャンクションダウン実装され、複数の電極パッドとサポート基板の上の複数のパッドは、はんだで接続される。
【0029】
一実施形態において、サポート基板は、複数のレーザ共振器に対応する複数の基板側電極パッドを備えてもよい。各基板側電極パッドは、対応するレーザ共振器の接続用配線および電極パッドとオーバーラップするように形成されてもよい。各レーザ共振器の接続用配線および電極パッドは、対応する基板側電極パッドと、はんだで接合されてもよい。この構成によれば、放熱性を高めることができる。
【0030】
一実施形態に係るマルチビーム半導体レーザ素子の製造方法は、接続用配線および厚膜パッドを、メッキにより形成するメッキ工程を備えてもよい。メッキ工程における給電は、ストライプ状電極およびストライプ電極と接続配線の交差部を介して行われてもよく、層間絶縁膜に開口部が設けられている場合は、開口部を介して行われてもよい。
【0031】
(実施形態)
以下、本開示を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、開示を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも開示の本質的なものであるとは限らない。
【0032】
図面に記載される各部材の寸法(厚み、長さ、幅など)は、理解の容易化のために適宜、拡大縮小されている場合がある。さらには複数の部材の寸法は、必ずしもそれらの大小関係を表しているとは限らず、図面上で、ある部材Aが、別の部材Bよりも厚く描かれていても、部材Aが部材Bよりも薄いこともあり得る。
【0033】
(実施形態1)
図2は、実施形態1に係る半導体レーザ素子100の斜視図である。半導体レーザ素子100は、端面発光型の半導体レーザ素子であり、複数m個(m≧3)のエミッタを有するマルチビーム半導体レーザである。本実施形態においてエミッタの個数は4である。
【0034】
半導体レーザ素子100は、N型半導体基板110と、N型半導体基板110上に形成される積層成長層120を備える。積層成長層120は、N型クラッド層122、発光層130、P型クラッド層124、P型コンタクト層(不図示)を含み、N型半導体基板110の上に順に積層されている。発光層130は、N型ガイド層(下部ガイド層)、量子井戸層からなる活性層、P型ガイド層(上部ガイド層)を含む。N型半導体基板110および積層成長層120の材料は、必要な発振波長に応じて選択すればよく、本開示において特に限定されない。
【0035】
半導体レーザ素子100は、中央のレーザ領域102と、パッド領域104、106を有する。レーザ領域102には、第1方向(x方向)に隣接するm個(m≧3)のレーザ共振器200が形成される。各レーザ共振器200は、第1方向(x方向)と直交する第2方向(y方向)に伸びるストライプ構造を有する。
【0036】
積層成長層120には、光を閉じ込めるための導波路構造が形成され、この導波路構造の両端の劈開面がミラーとなり、ファブリーペロー型のレーザ共振器200をなしている。この例では4個のレーザ共振器200_1~200_4が形成されており、出射端面からy方向にビームが放射される。各レーザ共振器の端面には、所望の反射率を与えるためにコーディングが施される。
【0037】
導波路構造は、たとえば埋込型のリッジ導波路とすることができる。
【0038】
あるいは導波路構造は、導波路に沿ってN型半導体基板110に溝を形成し、溝部分におけるN型クラッド層122の厚さが相対的に厚くなっているCSP(Channeled Substrate Planer)構造であってもよい。
【0039】
埋込型リッジ構造やCPS構造は、屈折率分布を利用した導波路構造であるが、本開示はそれに限定されず、利得分布を利用した利得導波路構造を利用してもよい。これらの構造は、光閉じ込め構造であるとともに、電流狭窄構造と把握することも可能である。
【0040】
レーザ共振器200の上面には、給電用電極(P側電極)150が形成される。レーザ共振器200を独立に駆動可能とするために、給電用電極150は電気的に互いに絶縁され、P型半導体部は各エミッタ間に電気抵抗を有しており、電気的に独立に駆動可能となっている。本実施形態において、給電用電極150は、レーザ共振器200の上面に、y方向に沿って伸びるストライプ状電極である。
【0041】
レーザ共振器200への給電のために、複数のレーザ共振器200_1~200_4に対応して、複数のチップ側電極パッド(以下、単に電極パッドという)Pe1~Pe4および複数の接続用配線Lc1~Lc4が設けられる。
【0042】
複数の電極パッドPe1~Pe4は、レーザ領域102とx方向に隣接するパッド領域104,106に形成されている。電極パッドPe1~Pe4には、ジャンクションアップ実装の場合にはボンディングワイヤが接続され、ジャンクションダウン実装の場合には、はんだが接続される。
【0043】
各接続用配線Li(i=1,2,3,4)は、対応するレーザ共振器200_iの給電用電極150と、対応する電極パッドPiを電気的に接続する。
【0044】
複数のレーザ共振器200_1~200_4のうち、内側の2つ(200_2,200_3)については、接続用配線Lc2,Lc3が、外側のレーザ共振器を横切ることとなる。具体的には接続用配線Lc2は、レーザ共振器200_1を横切っている。接続用配線Lc2は、レーザ共振器200_1と交差する位置において、積層配線構造160を有している。積層配線構造160は、接続配線Lc2と給電用電極150の間に形成された層間絶縁膜162を含む。
【0045】
同様に、接続用配線Lc3は、レーザ共振器200_4を横切っている。接続用配線Lc4は、レーザ共振器200_4と交差する位置において、積層配線構造160を有している。
【0046】
層間絶縁膜162の材料としては、SiOなどの無機材料やポリイミドなどの有機材料を用いることができる。SiOは薄膜化が容易であるため、放熱性の観点から有利である。ポリイミドは、下地の凹凸を埋めることができ、表面が平坦となりやすいため、接続用配線Lcを平坦化でき、膜のカバレッジを良くするという利点があるが、薄く形成することが難しいため、劈開やペレタイズがし難くなる。
【0047】
本実施形態において、半導体レーザ素子100は、厚膜パッド170を備える。厚膜パッド170は、パッド領域104、106に形成され、接続用配線Lc2、Lc3の積層配線構造160よりも高さが高い。高さは、z軸と直交する基準面からの距離と把握することができ、たとえばN型半導体基板110の表面あるいは裏面を基準面にとることができる。好ましくは、厚膜パッド170の高さと積層配線構造160の高さの差Δhは、1μmより大きいことが好ましく、より好ましくは5μm以上とするとよい。
【0048】
本実施形態において厚膜パッド170は、電極パッドPe1~Pe4を兼ねており、金属材料である。言い換えると、電極パッドPe1~Pe4が、厚膜パッド170として機能するように、通常の電極パッドよりも厚く形成される。
【0049】
図3は、図2の半導体レーザ素子100の断面図である。この断面図は、接続配線Lc2,Lc3が形成される位置におけるxz平面の半導体レーザ素子100の断面を表す。隣接するレーザ共振器200の間は例えばイオン打ち込みなどによる高電気抵抗領域204が形成される。積層成長層120の上には、コンタクト用絶縁膜154が形成されており、コンタクト用絶縁膜154は、給電用電極の下面において開口される。コンタクト用絶縁膜154は、たとえばSiOなどの材料で形成される。
【0050】
P型クラッド層124の上には、P型コンタクト層126が形成され、P型コンタクト層126の上に、給電用電極150が形成される。レーザ共振器200_1の給電用電極150_1の上には、層間絶縁膜162_1が形成される。この層間絶縁膜162_1の上を横切って、接続配線Lc2が形成される。またレーザ共振器200_4の給電用電極150_4の上には、層間絶縁膜162_4が形成される。この層間絶縁膜162_4の上を横切って、接続配線Lc3が形成される。
【0051】
以上が半導体レーザ素子100の構成である。続いてその利点を説明する。
【0052】
図4は、図2の半導体レーザ素子100に対するコーティング工程を説明する図である。ウェハから、半導体レーザ素子100を複数個含むLDバー6が切り出される。LDバー6は、スペーサ2によって挟まれ、支持・固定される。この状態で、各半導体レーザ素子100の端面に、コーティング処理が施される。
【0053】
半導体レーザ素子100は、最も高さが高い厚膜パッド170においてスペーサ2と接触し、積層配線構造160はスペーサ2とは接触しない。そのため、積層配線構造160に加わる圧力を低減でき、半導体レーザ素子100の信頼性の低下を防止できる。
【0054】
続いて半導体レーザ素子100の実装の例を説明する。
【0055】
図5は、半導体レーザ素子100を備える半導体レーザ装置300の断面図である。半導体レーザ装置300は、サポート基板(サブマウントともいう)310および半導体レーザ素子100を備える。半導体レーザ素子100は、サポート基板310に対してジャンクションアップ実装、すなわち、N側電極152がサポート基板310側となる向きで実装される。
【0056】
電極パッドPe2,Pe3は、ボンディングワイヤ320_2,320_3を介して、図示しないパッケージのリード(アノード)もしくは駆動回路のアノードと接続される。またN側電極152は、はんだ322を介してサポート基板310に形成された電極312と接続される。電極312は、ボンディングワイヤ324を介して、図示しないパッケージのリード(カソード)あるいは駆動回路のカソードと接続される。
【0057】
図6は、半導体レーザ素子100を備えるレーザ装置の断面図である。レーザ装置400は、サポート基板410および半導体レーザ素子100を備える。半導体レーザ素子100は、サポート基板410に対してジャンクションダウン実装、すなわち、給電用電極150がサポート基板410側となる向きで実装される。
【0058】
サポート基板410には、複数のレーザ共振器200_1~200_4に対応する複数の基板側電極パッド412_1~412_4が形成される。図6の断面図には、2つの基板側電極パッド412_2~412_3のみが示される。電極パッドPe2,Pe3は、はんだ420_2,420_3を介して、サポート基板410に形成された基板側電極パッド(以下単に電極パッドという)412_2,412_3と接続される。電極パッド412_2,412_3はそれぞれ、ボンディングワイヤ422_2,422_3を介して図示しないパッケージのリード(アノード)あるいは駆動回路のアノードと接続される。またN側電極152は、ボンディングワイヤ424を介して図示しないパッケージのリード(カソード)あるいは駆動回路のカソードと接続される。
【0059】
図6に示す様に、厚膜パッドである電極パッドPe3,Pe4は、ジャンクションダウン実装する際にも、積層配線構造160とサポート基板410が接触するのを防止する役割を果たす。
【0060】
図7は、半導体レーザ素子100を備えるレーザ装置の断面図である。図7は、図6と同様にジャンクションダウンの実装例である。図7では、各レーザ共振器200_2に対応する基板側電極パッド412_2が、対応するレーザ共振器の電極パッドPe2ならびに接続配線Lc2とオーバーラップするようにして形成されている。そして接続配線Lc2および電極パッドPe2が、はんだ420_2を介して、基板側電極パッド412_2と接続される。接続配線Lc3側についても同様である。
【0061】
図7の構成によれば、図6の構成に比べて、放熱性を高めることができる。
【0062】
(実施形態2)
図8は、実施形態2に係る半導体レーザ素子100Aの斜視図である。実施形態1では、電極パッドPe1~Pe4が、厚膜パッド170を兼ねていた。これに対して、図8では、厚膜パッド170Aは、電極パッドPe1~Pe4とは独立して形成される。この構成では、厚膜パッド170Aは金属であってもよいし、絶縁体であってもよい。厚膜パッド170Aを絶縁体で形成する場合、層間絶縁膜162と同じ材料を用いて、同じ成膜プロセスで形成することができる。
【0063】
厚膜パッド170Aの機能は、コーティング工程において、積層配線構造160をスペーサと接触させないことであり、LDバーの状態でこの機能が奏されればよい。図8に示す様に、片側のパッド領域104にのみ厚膜パッド170Aを形成した場合、隣接する他のチップに同様に形成される厚膜パッド170Aとともに、この機能が奏される。
【0064】
当然のことながら、追加の厚膜パッド170Aを形成してもよい。
【0065】
(実施形態3)
図9は、実施形態3に係る半導体レーザ素子100Bの斜視図である。半導体レーザ素子100Bにおいて、パッド領域104はチップの片側にのみ設けられており、レーザ領域102は反対側に寄せて設けられている。4個の電極パッドPe1~Pe4はすべて、パッド領域104に形成されている。
【0066】
接続配線Lc2は、給電用電極150_1との交差箇所に、積層配線構造160を有している。接続配線Lc3は、給電用電極150_2,150_3との交差箇所に、積層配線構造160を有している。接続配線Lc4は、給電用電極150_2,150_3,150_4との交差箇所に、積層配線構造160を有している。
【0067】
(実施形態4)
図8の半導体レーザ素子100Aや、図9の半導体レーザ素子100Bは、ジャンクションダウン実装すると、片持ち梁構造となるため、チップの横幅が広い場合には、構造的に不安定である。実施形態4では、ジャンクションダウン実装にも適した構造を説明する。
【0068】
図10は、実施形態4に係る半導体レーザ素子100Cの斜視図である。半導体レーザ素子100Cは、図9の半導体レーザ素子100Bに、さらに厚膜パッド170である電極パッドPe1’~Pe4’を追加したものである。電極パッドPei’(i=1,2,3,4)は、電極パッドPeiとx方向に隣接し、電気的に接続されている。
【0069】
この構成によれば、ジャンクション実装した場合に、電極パッドPeに加えて、電極パッドPe’によって、半導体レーザ素子100を支えることができるため、構造的な強度を高めることができる。
【0070】
(実施形態5)
図11は、実施形態5に係る半導体レーザ素子100Dの斜視図である。電極パッドPeの横幅(x方向の幅)が、図9の電極パッドPeに比べて広がっている。これは図10の電極パッドPeとPe’を連続して一体に形成したものと把握することもできる。この構成によれば、ジャンクション実装した場合に、幅広の電極パッドPeによって、半導体レーザ素子100を支えることができるため、構造的な強度を高めることができる。
【0071】
(実施形態6)
図12は、実施形態6に係る半導体レーザ素子100Eの斜視図である。半導体レーザ素子100Eは、図9の半導体レーザ素子100Bに、複数の厚膜パッド170Eを追加したものである。複数の厚膜パッド170Eは、パッド領域106に形成される。厚膜パッド170Eは、電極パッドであり、ジャンクションダウン実装したときに、サポート基板に対してはんだ付けされる。ただし、厚膜パッド170Eは、半導体レーザ素子100の駆動には寄与しないため、レーザ共振器200_1~200_4とは電気的に接続する必要はない。
【0072】
この構造によれば、ジャンクションダウン実装したときに、片持ち梁構造とならないため、構造的な強度を高めることができる。
【0073】
(実施形態7)
図13は、実施形態7に係る半導体レーザ素子100Fの斜視図である。半導体レーザ素子100Fは、6ビーム(6エミッタ)であり、6個のレーザ共振器200_1~200_6と、6個の電極パッドPe1~Pe6を備える。電極パッドPe1~Pe6は厚膜パッド170であり、2列に配置される。この構成によれば、図10の半導体レーザ素子100cと同様に、ジャンクションダウン実装した場合に、2列の電極パッドPeによって片持ち梁を支えることとなるため、構造的な強度を高めることができる。図13の構成は、共振器長、すなわちチップのy方向の長さが短い場合に有効である。
【0074】
図14は、変形例に係る半導体レーザ素子100aの斜視図である。ひとつの接続配線Lcに対して、3個以上の電極パッドPeを設けてもよい。この例では、接続配線Lc6に対して、3個の電極パッドPe6が設けられている。複数の電極パッドPe6は、x方向に並んでいてもよいし、y方向に並んでいてもよい。
【0075】
(実施形態8)
図15は、実施形態8に係る半導体レーザ素子100Gの斜視図である。半導体レーザ素子100Gでは、6個の電極パッドPe1~Pe6が、3列に配置されている。この構成によれば、ジャンクションダウン実装したときの強度をさらに高めることができる。また、共振器長、すなわちチップのy方向の長さが短い場合に有効である。
【0076】
なおこれまでの実施形態1~7では、接続配線Lcごとに、層間絶縁膜162が独立して形成されていたが、図15に示す様に、層間絶縁膜162を連続的に形成してもよい。
【0077】
層間絶縁膜162の形成範囲について、いくつかの例を説明する。
【0078】
(実施形態9)
図16は、実施形態9に係る半導体レーザ素子100Hの平面図である。層間絶縁膜162は、接続配線Lcが給電用電極150と交差し、絶縁が必要な箇所にだけ設けられている。この構成では、層間絶縁膜162はSiO、ポリイミドのいずれで形成してもよい。
【0079】
(実施形態10)
図17は、実施形態10に係る半導体レーザ素子100Iの平面図である。層間絶縁膜162は、複数の接続配線Lcが形成される範囲にわたって広く形成され、電極パッドに掛からない領域に形成されている。ただし層間絶縁膜162は、共振器端面近傍には形成されておらず、劈開、ペレタイズし易い構成になっている。この構成では、層間絶縁膜162は、レーザ領域102のほぼ全域を覆っており、給電用電極150_i間の電気的ショートを防止することができる。狭ピッチのマルチビームレーザの製造工程や組立工程における導電性の異物付着による電気的ショートの防止にも有効である。また、層間絶縁膜そのものによる放熱および、その上に設ける接続配線の面積を広く取れることによる接続配線への放熱効果を得ることができる。層間絶縁膜162は、接続配線Lc_i(i=1,2,3,4)と給電用電極150_iを接続すべき箇所において、開口164_iを有している。この構成では、層間絶縁膜162はSiO、ポリイミドのいずれで形成してもよい。
【0080】
(実施形態11)
図18は、実施形態11に係る半導体レーザ素子100Jの平面図である。層間絶縁膜162は、電極パッドPe1~Pe4を含む広い範囲にわたって形成され、層間絶縁膜162上に接続配線Lcおよび電極パッドPeが形成されている。ただしN型半導体基板110の外周部には形成されておらず、劈開、ペレタイズし易い構成になっている。この構成では、レーザ領域とパッド領域の間に層間絶縁膜162の境界がないため、境界段差での接続配線Lcのカバレッジ低下を防止することができる。この構成では、層間絶縁膜162はSiO、ポリイミドのいずれで形成してもよい。
【0081】
(実施形態12)
図19は、実施形態12に係る半導体レーザ素子100Kの平面図である。層間絶縁膜162は、N型半導体基板110の全体にわたり形成される。この構成において、層間絶縁膜162をポリイミドで形成すると、劈開およびペレタイズが難しくなるため、層間絶縁膜162の材料はSiOなどの薄膜化が可能な材料を選択するとよい。
【0082】
(実施形態13)
図4を参照して説明したように、厚膜パッド170を設けることで、積層配線構造160とスペーサ2との衝突を防ぐことができるが、その反面、半導体レーザ素子100の表面とスペーサ2の表面のギャップが広くなる。したがって、半導体レーザ素子100の一端面をコーティングしているときに、このギャップを通ってコーティングの材料が、反対側の端面に回り込み、付着する可能性がある。反対側の端面に、意図しないコーティングの材料が付着すると、製造ばらつきの原因となり、あるいは設計通りの反射特性を得ることができなくなるおそれがある。実施形態13では、この問題を解決するための技術を説明する。
【0083】
図20は、実施形態13に係る半導体レーザ素子100Lの斜視図である。半導体レーザ素子100Lは、厚膜パッド170に加えて、防止壁180を備える。防止壁180は、複数のレーザ共振器200_1~200_4を、x方向に横切り、少なくともレーザ領域102全体にわたって形成される。防止壁180は、厚膜パッド170と実質的に同じ高さを有する。防止壁180は、金属であってもよいし、絶縁体であってもよい。防止壁180が金属の場合、防止壁180と給電用電極150の間には、絶縁層が挿入される。また防止壁180は、厚膜パッド170と同じ材料であってもよいし、異なる材料であってもよい。
【0084】
この半導体レーザ素子100Lによれば、コーティング工程において、防止壁180とスペーサ6が接触することとなるため、コーティングの材料の回り込みを防止することができる。
【0085】
図21は、図20の半導体レーザ素子100Lの一実施例を示す平面図である。層間絶縁膜162は、図18の半導体レーザ素子100Jと同様に、N型半導体基板110の外周を除いた広範囲に形成される。
【0086】
この実施例において防止壁180は、電極パッドPe1~Pe4と同じ金属である。防止壁180を形成すべき領域には、接続配線Lcと同じ材料、同じプロセスで下地となる配線層182が形成される。配線層182の上に電極パッドPeと同じ材料、同じプロセスで、防止壁180が形成される。
【0087】
図22は、図21の半導体レーザ素子100Lの断面図である。図22の上段は、図21のA-A線断面図であり、下段は、図21のB-B線断面図である。
【0088】
(実施形態14)
図23は、実施形態14に係る半導体レーザ素子100Mの斜視図である。防止壁180は、複数の電極パッドPe1~Pe4のひとつ、あるいはいくつか(この例では電極パッドPe1)と連続的に一体に形成される。
【0089】
(製造方法)
続いて、電極パッドPeが厚膜パッド170を兼ねている半導体レーザ素子100の製造方法を説明する。この製造方法は、メッキによって厚膜パッド170を形成するメッキ工程を含む。
【0090】
図24は、半導体レーザ素子100の製造方法を説明する図である。半導体レーザ素子100の給電用電極150は、隣接する半導体レーザ素子100の給電用電極150と連続しており、ウェハ500の外周に設けられたメッキ給電ピン502,504と電気的に接続されている。
【0091】
メッキ工程では、ウェハ500の上にフォトレジストが塗布される。フォトレジストは、メッキ成膜領域において開口される。例えば、厚膜パッドをメッキ成膜する場合は、厚膜パッド170の形成箇所すなわち電極パッドPe1~Pe4の箇所において開口される。ウェハ500はメッキ液に浸潤され、メッキ給電ピン502,504に外部から給電される。これにより、電極パッドPeに対して、給電用電極150および接続配線Lcを介して給電され、電極パッドPeの上に、メッキ成膜され、厚膜パッド170を形成することができる。つまり、厚膜パッドに給電するための別の給電電極配線を設けたり、メッキ成膜後に不要な給電電極配線を除去する工程を省略することができ、製造コストを低減することができる。この製造方法は、接続配線部の膜厚を増すためにメッキ成膜したい場合にも同様に用いることができる。この場合、フォトレジストは接続配線部において開口され、給電用電極150を介して、あらかじめ蒸着等で薄く成膜された接続配線部に給電され、接続配線部にメッキが成膜される。
【0092】
図23の半導体レーザ素子100Mでは、このメッキ方法によって、電極パッドPeと防止壁180の下地の配線層182に対して給電されるため、防止壁180を電極パッドPeと同時に形成することができる。
【0093】
実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0094】
100 半導体レーザ素子
102 レーザ領域
104,106 パッド領域
110 N型半導体基板
120 積層成長層
122 N型クラッド層
124 P型クラッド層
130 発光層
Pe 電極パッド
Lc 接続配線
150 給電用電極
152 N側電極
154 コンタクト用絶縁膜
160 積層配線構造
162 層間絶縁膜
170 厚膜パッド
180 防止壁
200 レーザ共振器
300 半導体レーザ装置
310 サポート基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24