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特開2025-1886樹脂シートの溶着方法およびそれを行う溶着装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001886
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】樹脂シートの溶着方法およびそれを行う溶着装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/02 20060101AFI20241226BHJP
   B65B 57/00 20060101ALI20241226BHJP
   B65B 51/10 20060101ALI20241226BHJP
   G01M 3/20 20060101ALN20241226BHJP
【FI】
B29C65/02
B65B57/00 D
B65B51/10 210
G01M3/20 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023101637
(22)【出願日】2023-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】松井 祐二
(72)【発明者】
【氏名】守中 廉
(72)【発明者】
【氏名】和田 克彦
(72)【発明者】
【氏名】大森 信哉
(72)【発明者】
【氏名】薄田 晴香
(72)【発明者】
【氏名】菊地 克也
【テーマコード(参考)】
2G067
3E094
4F211
【Fターム(参考)】
2G067AA47
2G067BB02
2G067BB15
2G067BB22
2G067CC01
2G067DD10
3E094AA12
3E094BA20
3E094CA02
3E094CA22
3E094DA06
3E094EA01
3E094GA15
3E094HA08
4F211AA11
4F211AD09
4F211AG01
4F211AG03
4F211AH54
4F211AP17
4F211AQ01
4F211AR07
4F211AR18
4F211TA01
4F211TC08
4F211TD11
4F211TH27
4F211TN22
4F211TQ06
4F211TW39
(57)【要約】      (修正有)
【課題】熱可塑性の樹脂シートを用いて内容物を溶着密封する際、溶着の良否を判定でき、かつ溶着不良が発生した場合にその要因を適切に判定できる溶着方法および装置を提供する。
【解決手段】一方の表面に所定の模様を有しかつ透明度を有する熱可塑性シートを用い、溶着方法は、模様が描かれた面同士を内側にして二層に重ねて溶着予定領域を形成するステップと、溶着予定領域を第一の層の側のみから加熱して被溶着領域を形成する溶着ステップと、被溶着領域の溶着の成否を判定するステップとを有し、溶着成否判定ステップでは、模様の消失/識別可能を判断し、模様が全消失の場合に溶着完了と判定し、模様が識別可能な場合に第一の層の模様の消失/識別可能を判断する加熱側模様判断サブステップに進み、被溶着領域で第一の層の模様が識別可能な場合に加熱不足と判定し、第一の層の模様は消失しているが第二の層の模様は識別可能な場合に密着不良と判定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂シートの溶着方法であって、
前記樹脂シートは、熱可塑性樹脂シートであり、一方の表面に所定の模様を有し、他方の表面から見たときに当該所定の模様が識別可能な透明度を有し、
前記所定の模様は、インクで描かれた模様であり、当該模様が描かれた表面同士を内側にして前記樹脂シートを二層に重ねると第一の層と第二の層とが識別できる形態を有しており、
前記溶着方法は、
前記所定の模様が描かれた表面同士を内側にして前記樹脂シートを重ねるように接触させて溶着予定領域を形成する溶着予定領域形成ステップと、
前記溶着予定領域を前記第一の層の側のみから所定の加熱方法で加熱して被溶着領域を形成する溶着ステップと、
前記被溶着領域の溶着の成否を判定する溶着成否判定ステップとを有し、
前記溶着成否判定ステップでは、
前記被溶着領域で前記所定の模様が消失しているか否かを判断し、
前記被溶着領域で前記所定の模様が全て消失している場合に「溶着完了」と判定し、
前記被溶着領域で前記所定の模様が識別可能な場合に、前記第一の層の前記所定の模様が消失しているか否かを判断する加熱側模様判断サブステップに進み、
前記被溶着領域で前記第一の層の前記所定の模様が識別可能な場合に「加熱不足」と判定し、
前記被溶着領域で前記第一の層の前記所定の模様は消失しているが、前記第二の層の前記所定の模様は識別可能な場合に「密着不良」と判定する、
ことを特徴とする樹脂シートの溶着方法。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂シートの溶着方法において、
前記加熱側模様判断サブステップで「加熱不足」と判定した場合、溶着条件チェックステップに進んで加熱量を増加させるように溶着条件を変更した後、前記溶着ステップに戻る、
ことを特徴とする樹脂シートの溶着方法。
【請求項3】
請求項1に記載の樹脂シートの溶着方法において、
前記加熱側模様判断サブステップで「密着不良」と判定した場合、前記所定の模様が識別可能な領域のサイズを計測する模様残存領域計測サブステップを行い、
前記溶着ステップに戻った後、前記溶着成否判定ステップに進み、
二回目以降の前記溶着成否判定ステップにおいて、
前記被溶着領域で前記所定の模様が全て消失している場合に「溶着完了」と判定し、
前記第二の層の前記所定の模様が識別可能なため「密着不良」と判定した場合に、前記模様残存領域計測サブステップを経由して、今回計測した前記所定の模様の残存領域のサイズが直前の回に計測した前記所定の模様の残存領域のサイズに比して小さくなっているか否かを判断する模様残存領域比較サブステップに進み、
前記模様残存領域比較サブステップにおいて、
今回計測した前記所定の模様の残存領域のサイズが直前の回に計測した前記所定の模様の残存領域のサイズに比して小さくなっている場合、前記溶着ステップに戻り、
今回計測した前記所定の模様の残存領域のサイズが直前の回に計測した前記所定の模様の残存領域のサイズに比して小さくなっていない場合、「溶着不可」と判定する、
ことを特徴とする樹脂シートの溶着方法。
【請求項4】
請求項3に記載の樹脂シートの溶着方法において、
前記模様残存領域比較サブステップで「溶着不可」と判定した場合、前記被溶着領域と異なる他の領域に対して前記溶着ステップに戻る、または前記溶着予定領域と異なる溶着予定領域となるように前記溶着予定領域形成ステップに戻る、
ことを特徴とする樹脂シートの溶着方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の樹脂シートの溶着方法において、
前記溶着予定領域形成ステップは、少なくとも一対の押し具で前記樹脂シートを押すことによって、当該樹脂シートを重ねるように接触させて前記溶着予定領域を形成することを特徴とする樹脂シートの溶着方法。
【請求項6】
請求項5に記載の樹脂シートの溶着方法において、
前記少なくとも一対の押し具が前記樹脂シートの袋形状の高さ方向に段差のある状態で前記樹脂シートを挟む方向に移動することによって、前記溶着予定領域が形成されることを特徴とする樹脂シートの溶着方法。
【請求項7】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の樹脂シートの溶着方法において、
前記所定の加熱方法が、超音波溶着または熱溶着であることを特徴とする樹脂シートの溶着方法。
【請求項8】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の樹脂シートの溶着方法において、
前記所定の模様は、前記樹脂シートの袋形状の高さ方向に平行な軸線に対して非線対称の線描画からなる繰返しパターンを有することを特徴とする樹脂シートの溶着方法。
【請求項9】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の樹脂シートの溶着方法において、
前記インクは、蛍光インクであり、
前記溶着成否判定ステップにおける前記所定の模様の消失または判別可能の判定を、蛍光を励起できる波長の光を照射して行うことを特徴とする樹脂シートの溶着方法。
【請求項10】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の樹脂シートの溶着方法を行う溶着装置であって、
前記樹脂シートを保持する樹脂シート保持機構と、
前記溶着予定領域形成ステップで前記溶着予定領域を形成するための少なくとも一対の押し具およびその駆動機構と、
前記溶着ステップで前記被溶着領域を形成するための加熱手段および受け治具と、
前記溶着成否判定ステップで前記被溶着領域の溶着状態を確認するためのカメラ、その制御装置、および該制御装置に接続されているモニタと、
を具備することを特徴とする樹脂シートの溶着装置。
【請求項11】
請求項10に記載の樹脂シートの溶着装置において、
前記制御装置は、前記所定の模様の残存領域のサイズを計測するための画像処理機構を有することを特徴とする樹脂シートの溶着装置。
【請求項12】
請求項10に記載の樹脂シートの溶着装置において、
前記少なくとも一対の押し具およびその駆動機構は、前記樹脂シートの袋形状の高さ方向に段差のある状態で前記樹脂シートを挟む方向に移動する構成になっていることを特徴とする樹脂シートの溶着装置。
【請求項13】
請求項10に記載の樹脂シートの溶着装置において、
前記溶着成否判定ステップで前記被溶着領域を照らす照明機構を更に具備することを特徴とする樹脂シートの溶着装置。
【請求項14】
請求項10に記載の樹脂シートの溶着装置において、
前記樹脂シートの袋形状の内側に内容物を収容するための移送機構を更に具備することを特徴とする樹脂シートの溶着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂シートの溶着技術に関し、特に、熱可塑性の樹脂シートを用いて内容物を梱包する際に、当該樹脂シートの封止部分にシワ(皺)やヒダ(襞)が発生しても密封を可能にする溶着方法およびそれを行う溶着装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品分野や医療分野で用いられる商業包装において、樹脂製の軟包装容器や成型容器に内容物を収容し、該容器を溶着手段により密封することがしばしばある。一方、樹脂材料の溶着は、溶融接合状態を外観から判別することが難しいため、溶着の密封性を非破壊で確認できる技術が求められていた。
【0003】
そのような要求に対し、例えば特許文献1(特開2021-66529)には、容器であって、一端に形成された開口領域を有する容器本体を備え、前記開口領域の内表面は溶着可能であり、前記開口領域に、前記開口領域を溶着した場合に前記開口領域が封止されているか否かを前記開口領域の外表面側から確認可能な封止確認機構が設けられている容器、が教示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-66529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1によると、開口領域が溶着されたことを破壊的な手段を用いることなく目視で容易に判別することができる、とされている。ただし、特許文献1の技術は、その説明内容から、内容物の容積が比較的小さい容器(大きくても2 L程度以下)を想定していると考えられる。
【0006】
一方、環境や人体に悪影響を及ぼす可能性のある内容物(例えば、汚染廃棄物等)を密封しようとする場合、作業効率・運搬効率・保管効率の観点から大容積(少なくとも20 Lペール缶程度以上、望ましくは200 Lドラム缶程度以上)の内容物を一括で密封した方が望ましい。また、そのような内容物の密封作業は、作業者への悪影響を避けるため遠隔操作で行うことが好ましい。
【0007】
しかしながら、そのような大容積の内容物を、樹脂シートを用いてかつ遠隔操作で梱包しようとすると、樹脂シートの封止部分にシワやヒダ(以後、シワと総称する)が発生し易く、シワ部分が溶着不良となる問題が懸念される。
【0008】
なお、大容積の内容物であっても、当該内容物の容積よりも遙かに大きい容積(例えば、2倍程度以上)を有する袋状シートを利用することによって、封止部分のシワ発生を抑制することができるが、収容に寄与しない無駄な空間の増大および溶着装置の肥大化という別の問題が生じる。言い換えると、樹脂シートを用いて必要最小限の容積で大容積の内容物を密封する場合、樹脂シートの封止部分にシワが発生する可能性が非常に高い。
【0009】
本発明者等は、樹脂シートの封止部分にシワが発生しても密封を可能にする溶着方法について鋭意研究を行った。当該研究の中で、溶着を行った際にその溶着が良好であるか否かを適切かつ簡単に判定できること、および溶着不良が発生した場合にその要因を適切に判定できることが非常に重要であることを見出した。これは、溶着不良の要因によって対応方法が異なるためである。
【0010】
本発明は、樹脂シートの封止部分のシワ発生による溶着不良を解決するためになされたものであり、第一義の目的は、熱可塑性の樹脂シートを用いて内容物を溶着密封する際に、その溶着が良好であるか否かを適切かつ簡単に判定でき、かつ溶着不良が発生した場合にその要因を適切に判定できる溶着方法およびそれを行う溶着装置を提供することにある。また、第二義の目的は、熱可塑性の樹脂シートを用いて内容物を溶着密封する際に、当該樹脂シートの封止部分にシワが発生しても密封を可能にする溶着方法およびそれを行う溶着装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(I)本発明の一態様は、樹脂シートの溶着方法であって、
前記樹脂シートは、熱可塑性樹脂シートであり、一方の表面に所定の模様を有し、他方の表面から見たときに当該所定の模様が識別可能な透明度を有し、
前記所定の模様は、インクで描かれた模様であり、当該模様が描かれた表面同士を内側にして前記樹脂シートを二層に重ねると第一の層と第二の層とが識別できる形態を有しており、
前記溶着方法は、
前記所定の模様が描かれた表面同士を内側にして前記樹脂シートを重ねるように接触させて溶着予定領域を形成する溶着予定領域形成ステップと、
前記溶着予定領域を前記第一の層の側のみから所定の加熱方法で加熱して被溶着領域を形成する溶着ステップと、
前記被溶着領域の溶着の成否を判定する溶着成否判定ステップとを有し、
前記溶着成否判定ステップでは、
前記被溶着領域で前記所定の模様が消失しているか否かを判断し、
前記被溶着領域で前記所定の模様が全て消失している場合に「溶着完了」と判定し、
前記被溶着領域で前記所定の模様が識別可能な場合に、前記第一の層の前記所定の模様が消失しているか否かを判断する加熱側模様判断サブステップに進み、
前記被溶着領域で前記第一の層の前記所定の模様が識別可能な場合に「加熱不足」と判定し、
前記被溶着領域で前記第一の層の前記所定の模様は消失しているが、前記第二の層の前記所定の模様は識別可能な場合に「密着不良」と判定する、
ことを特徴とする樹脂シートの溶着方法、を提供するものである。
【0012】
本発明は、上記の樹脂シートの溶着方法(I)において、以下のような改良や変更を自由に組み合わせながら加えることができる。
(i)前記加熱側模様判断サブステップで「加熱不足」と判定した場合、溶着条件チェックステップに進んで加熱量を増加させるように溶着条件を変更した後、前記溶着ステップに戻る。
(ii)前記加熱側模様判断サブステップで「密着不良」と判定した場合、前記所定の模様が識別可能な領域のサイズを計測する模様残存領域計測サブステップを行い、
前記溶着ステップに戻った後、前記溶着成否判定ステップに進み、
二回目以降の前記溶着成否判定ステップにおいて、
前記被溶着領域で前記所定の模様が全て消失している場合に「溶着完了」と判定し、
前記第二の層の前記所定の模様が識別可能なため「密着不良」と判定した場合に、前記模様残存領域計測サブステップを経由して、今回計測した前記所定の模様の残存領域のサイズが直前の回に計測した前記所定の模様の残存領域のサイズに比して小さくなっているか否かを判断する模様残存領域比較サブステップに進み、
前記模様残存領域比較サブステップにおいて、
今回計測した前記所定の模様の残存領域のサイズが直前の回に計測した前記所定の模様の残存領域のサイズに比して小さくなっている場合、前記溶着ステップに戻り、
今回計測した前記所定の模様の残存領域のサイズが直前の回に計測した前記所定の模様の残存領域のサイズに比して小さくなっていない場合、「溶着不可」と判定する。
(iii)前記模様残存領域比較サブステップで「溶着不可」と判定した場合、前記被溶着領域と異なる他の領域に対して前記溶着ステップに戻る、または前記溶着予定領域と異なる溶着予定領域となるように前記溶着予定領域形成ステップに戻る。
(iv)前記溶着予定領域形成ステップは、少なくとも一対の押し具で前記樹脂シートを押すことによって、当該樹脂シートを重ねるように接触させて前記溶着予定領域を形成する。
(v)前記少なくとも一対の押し具が前記樹脂シートの袋形状の高さ方向に段差のある状態で前記樹脂シートを挟む方向に移動することによって、前記溶着予定領域が形成される。
(vi)前記所定の加熱方法が、超音波溶着または熱溶着である。
(vii)前記所定の模様は、インクで描かれた模様であり、前記樹脂シートの袋形状の高さ方向に平行な軸線に対して非線対称の線描画からなる繰返しパターンを有する。
(viii)前記インクは、蛍光インクであり、
前記溶着状態判定ステップおよび/または溶着状態再判定ステップにおける前記所定の模様の消失または判別可能の判定を、蛍光を励起できる波長の光を照射して行う。
【0013】
(II)本発明の他の一態様は、上記の樹脂シートの溶着方法を行う溶着装置であって、
前記樹脂シートを保持する樹脂シート保持機構と、
前記溶着予定領域形成ステップで前記溶着予定領域を形成するための少なくとも一対の押し具およびその駆動機構と、
前記溶着ステップで前記被溶着領域を形成するための加熱手段および受け治具と、
前記溶着成否判定ステップで前記被溶着領域の溶着状態を確認するためのカメラ、その制御装置、および該制御装置に接続されているモニタと、
を具備することを特徴とする樹脂シートの溶着装置、を提供するものである。
【0014】
本発明は、上記の樹脂シートの溶着装置(II)において、以下のような改良や変更を自由に組み合わせながら加えることができる。
(ix)前記制御装置は、前記模様残存領域計測サブステップで前記所定の模様の残存領域のサイズを計測するための画像処理機構を有する。
(x)前記少なくとも一対の押し具およびその駆動機構は、前記樹脂シートの袋形状の高さ方向に段差のある状態で前記樹脂シートを挟む方向に移動する構成になっている。
(xi)前記溶着成否判定ステップで前記被溶着領域を照らす照明機構を更に具備する。
(xii)前記樹脂シートの袋形状の内側に内容物を収容するための移送機構を更に具備する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、熱可塑性の樹脂シートを用いて内容物を梱包する際に、その溶着が良好であるか否かを適切かつ簡単に判定でき、かつ溶着不良が発生した場合にその要因を適切に判定できる溶着方法およびそれを行う溶着装置を提供することができる。その結果、熱可塑性の樹脂シートを用いて内容物を溶着密封する際に、当該樹脂シートの封止部分にシワが発生しても密封を可能にする溶着方法およびそれを行う溶着装置を提供することができる。上述以外の課題、構成および効果については、下述する実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明で用いる樹脂シートの表面に描かれた模様の一例を示す平面模式図である。
図2】本発明における溶着時の状況と溶着状態の判定との関係を示す概略模式図である。
図3】本発明に係る樹脂シートの溶着方法の一例を示すフローチャートである。
図4】本発明に係る樹脂シートの溶着装置の一例を示す正面模式図および側面模式図である。
図5】本発明で用いる樹脂シートに描かれる模様の他の一例である。
図6】本発明で用いる樹脂シートに描かれる模様の他の一例である。
図7】シワが発生している箇所を溶着する場合における溶着ステップおよび模様残存領域計測サブステップ時の様子を示す模式図であり、(a)溶着ステップ中の断面図、(b)一回目の溶着ステップ後の断面図、(c)二回目以降の溶着ステップ後の断面図、(d)一回目の模様残存領域計測サブステップ時の平面図、および(e)二回目以降の模様残存領域計測サブステップ時の平面図である。
図8】本発明に係る樹脂シートの溶着装置の他の一例を示す側面模式図である。
図9】第2実施形態における溶着ステップの様子を示す拡大側面模式図である。
図10】第3実施形態における内容物収容ステップの様子を示す斜視模式図である。
図11A】第3実施形態における溶着ステップの様子を示す斜視模式図である。
図11B】第3実施形態における溶着ステップの様子を示す斜視模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る実施形態について、図面を参照しながら説明する。各図面は、説明の理解を助けるために誇張して描いてある。同義・同様の部位や構造やステップに対しては同じ符号を付して、重複する説明を省略する。また、本発明は、記載した具体的な実施形態に限定されることはなく、発明の技術的思想を逸脱しない範囲で、公知技術と適宜組み合わせたり公知技術に基づいて改良したりすることが可能である。
【0018】
(本発明の基本思想)
従来技術においては、樹脂シートを用いて内容物を溶着密封する際、封止部分にシワが発生した製品は出荷不可の不良品として判定されると考えられ、シワ自体を発生させないようにすることが前提と考えられる。これに対し、本発明では、封止部分にシワが発生することを許容する。すなわち、本発明は少なくともこの点において従来技術と大きく異なる。
【0019】
図1図2を参照しながら本発明の基本思想を説明する。図1は、本発明で用いる樹脂シートの表面に描かれた模様の一例を示す平面模式図である。図2は、本発明における溶着時の状況と溶着状態の判定との関係を示す概略模式図である。
【0020】
本発明で用いる樹脂シート1は、内容物を密封するための樹脂シートであり、図1に示したように一方の表面に所定の模様2が描かれており、裏返して他方の表面から見た時に当該模様2が目視で識別可能な透明度を有している熱可塑性樹脂シート(例えば、ポリプロピレンシート)である。
【0021】
なお、樹脂シート1は、初めから袋形状を有していてもよいし、円筒形状を有した樹脂シートに対して底に相当する部分を溶着して袋形状にしたものであってもよいし、一枚の樹脂シートを二つ折りにして脇に相当する部分を溶着して袋形状にしたものであってもよい。
【0022】
模様2は、インクで描かれた模様であり、樹脂シート1の袋形状の高さ方向に平行な軸線に対して非線対称の線描画からなる繰返しパターンを有することが好ましい。そのような模様が描かれた表面同士を内側にして樹脂シート1を二層になるように重ねて外側から見ると、一方の樹脂シート1の模様2のパターンが反転するため、第一の層1aと第二の層1bとを容易に識別することができる。
【0023】
模様2は、樹脂シート1の一方の表面の全面に描かれる必然性はないが、溶着予定領域の全面に描かれていることが好ましい。また、模様2を描くインクは、樹脂シートと同等の耐薬品性(耐水性を含む)を有していることが好ましいが、それ以外に特段の限定はない。
【0024】
樹脂シートの溶着は、基本的に「樹脂分子の軟化・流動 → 樹脂分子の再配列・硬化」というプロセスからなる。本発明において、被溶着表面に描かれた模様2のインクは「樹脂分子の軟化・流動」に伴って樹脂分子と一緒に流動・拡散するため、「樹脂分子の再配列・硬化」の際に模様2の原形を維持することができない。そこで、本発明では、模様2が原形を維持できていない状態を「消失」と定義する。言い換えると、模様2は、樹脂シート1の溶着によって消失する性状を有している。
【0025】
なお、模様2を描くインクとして、所定の温度(例えば、溶着温度)で退色するインクを用いてもよい。それにより、被溶着表面が所望の温度まで上昇したか否かを判断することができる。また、模様2を描くインクとして、蛍光インクを用いてもよい。溶着ステップを経た被溶着領域に対して蛍光を励起できる波長の光を照射することにより、インクが流動・拡散したか否か(樹脂シートの溶着が起きたか否か)を判断し易くなる。
【0026】
つぎに、二層に重なった樹脂シート1(1a、1b)に対して片側加熱での溶着ステップを想定する。例えば図2に示したように、加熱手段14と受け治具15とで二層に重なった樹脂シート1(1a、1b)を挟み、第一の層1aの側のみから加熱手段14で加熱する。言い換えると、本発明では、加熱側の層を第一の層と称することにする。
【0027】
図2(a)は、二層に重なった樹脂シート1(1a、1b)が適切に密着しており、かつ加熱量も適切な場合を示している。この場合、第一の層1aと第二の層1bとが良好に溶着すると被溶着領域1dの模様2が全て消失する。言い換えると、被溶着領域1dの模様2が全て消失している場合、溶着が良好に完了した(溶着完了)と容易に判定することができる。
【0028】
図2(b)は、二層に重なった樹脂シート1(1a、1b)が適切に密着しているが、加熱量が不足している場合を示している。この場合、第一の層1aと第二の層1bとの溶着が起こらないため、被溶着領域1dでそれぞれの層の模様2が残存して識別可能となる。言い換えると、被溶着領域1dでそれぞれの層の模様2が残存している場合、溶着のための加熱が不足している(加熱不足)と判定することができる。
【0029】
図2(c)は、加熱量は適切であるが、二層に重なった樹脂シート1(1a、1b)間の密着が不十分な場合を示している。被溶着領域1dにシワが発生している場合、シワ部分でこのような状態になりやすい。この場合、加熱側の樹脂シート1(ここでは第一の層1a)の被溶着領域1dは溶着可能温度まで上昇する(溶着可能な状態まで軟化する)ため第一の層1aの模様2は消失するが、非加熱側の樹脂シート1(ここでは第二の層1b)への熱伝導が不足して溶着可能温度まで上昇しないため第二の層1bの被溶着領域1dの模様2は残存する。言い換えると、被溶着領域1dにおいて、加熱側の樹脂シート1の模様2は消失しているが、非加熱側の樹脂シート1の模様2が残存している場合、溶着のための密着が不良である(密着不良)と判定することができる。
【0030】
上述したように、本発明では、樹脂シート1の溶着の可否を容易に判定でき、かつ溶着不良の要因を適切に判定することができる。溶着不良の要因が明確になることにより、それぞれの要因に対して適切な対応が可能となる。その結果、樹脂シート1の封止部分にシワが発生しても密封することが可能になる。溶着不良の要因ごとの対応方法の詳細は後述する。
【0031】
(第1実施形態)
第1実施形態では、汚染廃棄物等の内容物を袋形状の樹脂シートに直接投入して密封する場合を例として説明する。なお、本発明では、前述したように、作業者への悪影響を避けるため遠隔操作で行うことを前提とする。
【0032】
図3は、本発明に係る樹脂シートの溶着方法の一例を示すフローチャートである。図4は、本発明に係る樹脂シートの溶着装置の一例を示す正面模式図および側面模式図である。図4中に、樹脂シート1の袋形状の方向の名称を定義した。
【0033】
まず、溶着装置100の台座10の上に袋形状の樹脂シート1を配置し、樹脂シート保持機構11を用いて樹脂シート1を保持しながら、図示しない移送機構(例えばロボットアーム等)を利用して袋形状の内側に内容物5を収容する(内容物収容ステップS1)。
【0034】
このとき、収容量確認用のカメラ12等を利用して内容物5の嵩高さ/容積をチェックしながら行うことは好ましい。カメラ12は図示しない制御装置(例えば、コンピュータ)と接続されており、作業者は該制御装置に接続しているモニタ(図示せず)の画面でカメラ画像を視認できることが好ましい。なお、カメラ12は、後述する溶着状態確認用のカメラ16で代用してもよいし(溶着状態確認用のカメラ16と共用であってもよいし)、収容量確認用として別個設置してもよい。
【0035】
つぎに、少なくとも一対の押し具13(13a、13b)(図4中では二対の押し具)で袋形状の樹脂シート1を押すことによって、樹脂シート1を重ねるように接触させて溶着予定領域1cを形成する(溶着予定領域形成ステップS2)。
【0036】
押し具13で押す位置は、内容物5を挟まないようにする必要があるが、内容物5のできるだけ近くで設定されることが好ましい。言い換えると、押し具13が押す位置のできるだけ近くであるが、内容物5が挟まれないように内容物収容ステップS1で内容物5の嵩高さ/容積を調整することが好ましい。
【0037】
図1図2で示したように、本発明で用いる樹脂シート1は、一方の表面に所定の模様2が描かれており、他方の表面から当該模様2が目視で識別可能な透明度を有している。模様2は、樹脂シート1の袋形状の高さ方向に平行な軸線に対して非線対称の線描画からなる繰返しパターンを有しているため、模様2が描かれた表面同士を内側にして樹脂シート1を二層になるように重ねると、第一の層1aと第二の層1bとを識別することができる。言い換えると、模様2は袋形状の内面側に描かれている。
【0038】
模様2は、図1図2に例示したような単純斜線に限定されるものではなく、例えば、図5図6に示したような幾何学模様であってもよい。図5および図6は、それぞれ本発明で用いる樹脂シートに描かれる模様の他の一例である。
【0039】
必須のステップではないが、第一の層1aの模様2と第二の層1bの模様2との両方が識別可能であるか否かを確認する溶着予定領域確認サブステップS2aを行ってもよい。識別可能を確認できた場合は次のステップに進み、確認できなかった場合は溶着予定領域形成ステップS2をやり直すことが好ましい。
【0040】
ここで、溶着予定領域形成ステップS2においては、内容物5の嵩高さ/容積と押し具13の押す位置との相対関係や、内容物5の収容量による袋形状の厚さに起因して、溶着予定領域1cにシワが発生することがある。ただし、本発明は、溶着予定領域1cにシワが発生すること許容する。
【0041】
つぎに、加熱手段14と受け治具15とで溶着予定領域1cを挟み、加熱手段14の側のみから加熱して樹脂シート1を溶着する(溶着ステップS3)。これにより、被溶着領域1dが形成される。
【0042】
加熱手段14に特段の限定はないが、例えば、超音波溶着や熱溶着を好適に利用できる。また、加熱手段14および受け治具15の長さ(袋形状の幅方向に平行な長さ)にも特段の限定はない。例えば、加熱手段14や受け治具15の長さが樹脂シート1の袋形状の幅方向長さに比して短い場合(図4参照)、加熱手段14や受け治具15を移動させながら溶着すればよい。
【0043】
樹脂シートを適切に溶着させるためには、被溶着領域1dを樹脂シート1の軟化点以上の温度に加熱する必要がある。一例として、樹脂シート1にポリプロピレンを利用する場合、軟化点が100~110℃であることから、被溶着領域1dが110℃程度以上となるように加熱することが好ましい。
【0044】
つぎに、溶着状態確認用のカメラ16等を利用して被溶着領域1dの溶着の成否および溶着状態を判定する(溶着成否判定ステップS4)。カメラ16は図示しない制御装置(例えば、コンピュータ)と接続されており、作業者は該制御装置に接続しているモニタ(図示せず)の画面でカメラ画像を視認できることが好ましい。
【0045】
溶着成否判定ステップS4は、溶着ステップS3が終了した後に行ってもよいが、加熱手段14を移動させながら溶着ステップS3を行う場合は、加熱手段14が通過した領域に対して逐次行ってもよい。
【0046】
照明17は、必須の構成ではないが、模様2の消失/判別可能が判断し易くなるように必要に応じて適宜設置すればよい。一方、模様2を蛍光インクで描いた場合は、照明17を利用して蛍光を励起できる波長の光を照射することは好ましい。
【0047】
溶着成否判定ステップS4について、より具体的に説明する。
【0048】
まず、被溶着領域1dで樹脂シート1の模様2が全て消失しているか否かを判断する。被溶着領域1dの模様2が全て消失している場合、溶着が良好に完了したと判定し、溶着作業が終了となる。
【0049】
被溶着領域1dの模様2が一部でも消失していない場合(一部でも識別可能な場合)、加熱側の樹脂シート1(ここでは第一の層1a)の模様2が消失しているか否かを判断する加熱側模様判断サブステップS4aを行う。加熱側の樹脂シート1の模様2が消失していない場合(識別可能な場合)、加熱不足と判定する。
【0050】
加熱側模様判断サブステップS4aで加熱不足と判定した場合、溶着条件をチェックし必要に応じて変更する溶着条件チェックステップS5(例えば、加熱量を増加させるように、加熱手段14の出力や、加熱保持時間や、加熱手段14と受け治具15との押圧力を変更する)を経て、溶着ステップS3に戻り、その後、溶着成否判定ステップS4に進む。
【0051】
なお、溶着ステップS3および溶着条件チェックステップS5において、樹脂シート1の融点近傍以上の温度まで加熱すると樹脂シート1が過変形したり穴が開いたりして密封不能になる可能性があるため、溶着温度には上限を設定する必要がある。溶着温度の上限は、例えば、樹脂シート1の融点に対して20~30℃低い温度に設定することが好ましい。一例として、樹脂シート1に融点160~170℃のポリプロピレンを利用する場合、溶着温度の上限を140℃程度に設定することが好ましい。
【0052】
二回目以降の溶着成否判定ステップS4において、被溶着領域1dの模様2が全て消失している場合、溶着が良好に完了したと判定し、溶着作業が終了となる。
【0053】
一方、二回目以降の溶着成否判定ステップS4においても加熱不足と判定された場合、溶着条件チェックステップS5、溶着ステップS3、溶着成否判定ステップS4のサイクルを繰り返す。
【0054】
これらに対し、一回目および二回目以降の加熱側模様判断サブステップS4aにおいて、加熱側の樹脂シート1(ここでは第一の層1a)の模様2が消失しているが、非加熱側の樹脂シート1(ここでは第二の層1b)の模様2が消失していない(残存している)場合、密着不良と判定する。その場合、模様2が残存している領域のサイズを計測する模様残存領域計測サブステップS4bを行う。
【0055】
模様2の残存領域のサイズの計測方法に特段の限定はなく、例えば、カメラ16で取り込んだ画像データに対して、制御装置の画像処理機構を利用して当該領域の面積を直接計測してもよいし、模様2の残存領域の長さ(袋形状の幅方向に平行な長さ)を計測してもよい(加熱手段14のサイズは既知なので、長さが判れば面積を概算できるため)。
【0056】
つぎに、模様残存領域サイズの計測が一回目か否かを判断する計測回数判断サブステップS4cを行う。模様残存領域の計測が一回目の場合、溶着条件チェックステップS5を経由して溶着ステップS3に戻り、溶着成否判定ステップS4へ進む。
【0057】
なお、ここでの溶着条件チェックステップS5では、溶着条件を何も変更しなくてもよい。これは、加熱側模様判断サブステップS4aにおいて加熱側の樹脂シート1の模様2が消失していることを確認していることから、溶着ステップS3における加熱手段14の出力に大きな問題はないと判断できるためである。言い換えると、溶着条件チェックステップS5は、何も変更しないことを含むものとする。
【0058】
なお、溶着条件チェックステップS5で溶着条件を変更する場合は、例えば、加熱保持時間や、加熱手段14と受け治具15との押圧力を主に変更すればよい。当然のことながら、許容される溶着温度の範囲内で加熱手段14の出力を変更してもよい。
【0059】
二回目以降の溶着成否判断ステップS4において、被溶着領域1dの模様2が全て消失している場合、溶着が良好に完了したと判定し、溶着作業が終了となる。
【0060】
一方、二回目以降の加熱側模様判断サブステップS4aにおいても密着不良と判定された場合、模様残存領域計測サブステップS4bに進んで模様2が残存している領域のサイズを計測し、計測回数判断サブステップS4cで二回目以降(一回目ではない)と判断された後、今回計測した模様2の残存領域のサイズが前回(直前の回)の計測結果に比して小さくなっているか否かを判断する模様残存領域比較サブステップS4dを行う。
【0061】
図7は、シワが発生している箇所を溶着する場合における溶着ステップおよび模様残存領域計測サブステップ時の様子を示す模式図であり、(a)溶着ステップ中の断面図、(b)一回目の溶着ステップ後の断面図、(c)二回目以降の溶着ステップ後の断面図、(d)一回目の模様残存領域計測サブステップ時の平面図、および(e)二回目以降の模様残存領域計測サブステップ時の平面図である。
【0062】
図7(a)に示したように、シワが発生している箇所を溶着しようとすると、シワ部分が加熱手段14と受け治具15とに挟まれて折り畳まれたヒダ状になる場合がある。この状態で加熱手段14から加熱すると、加熱側の樹脂シート1(ここでは第一の層1a)と非加熱側の樹脂シート1(ここでは第二の層1b)のヒダ状になっていない正常部分とが合わさった部分、および第二の層1bのヒダ状部分の一部(例えば、根元近傍)に対して、樹脂分子の軟化・流動・浸潤が生じて溶着する(すなわち、一体化する)。
【0063】
しかしながら、第二の層1bのヒダ状部分の空隙3の近傍では、当該部分への熱伝導が不十分になるため溶着が完了せず空隙3が残ることがある(図7(a)、(b)参照)。その結果、図7(d)に示したように、模様残存領域計測サブステップS4bにおいて、空隙3に起因する模様2の残存領域が確認・計測される。
【0064】
そこで、溶着条件チェックステップS5を経由した後(例えば、加熱手段14と受け治具15との押圧力を増加させた後)、溶着ステップS3を再度行うと、一回目で溶着した部分は十分に熱伝導するため、第二の層1bのヒダ状部分にも熱伝導し易くなって該ヒダ状部分の一部で溶着が生じて、未溶着のヒダ状部分が減少する(図7(c)参照)。その結果、図7(e)に示したように、二回目以降の模様残存領域計測サブステップS4bにおいて、第二の層1bの模様2の残存領域サイズが減少する。
【0065】
模様残存領域比較サブステップS4dにおいて、計測した模様2の残存領域のサイズが前回の計測結果に比して小さくなっていると判断した場合、溶着完了ではないが、溶着が進行していると判断できることから、このサイクルを繰り返すことによって、溶着完了に到達することができる。
【0066】
一方、模様残存領域比較サブステップS4dにおいて、計測した模様2の残存領域のサイズが前回の計測結果に比して小さくなっていないと判断した場合、その被溶着領域1dでは溶着が進行せず、溶着完了に到達しない(溶着不可)と判定する。その場合、溶着予定領域1c内の別の箇所に対して溶着ステップS3に戻る、または溶着予定領域形成ステップS2に戻ってやり直すことが好ましい。
【0067】
(第2実施形態)
第2実施形態では、汚染廃棄物等が収容された容器全体を内容物として袋形状の樹脂シートで密封する場合を例として説明する。ここでは、大容積(少なくとも20 Lペール缶程度以上、望ましくは200 Lドラム缶程度以上)の容器を想定している。
【0068】
以下では、図3図8図9を参照しながら第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。図8は、本発明に係る樹脂シートの溶着装置の他の一例を示す側面模式図である。図9は、第2実施形態における溶着ステップの様子を示す拡大側面模式図である。なお、第1実施形態と異なる部分を強調するために、第1実施形態と共通する部分は図においても省略した。
【0069】
まず、溶着装置200の台座10の上に袋形状の樹脂シート1を配置し、樹脂シート保持機構11を用いて袋形状の樹脂シート1を保持しながら、図示しない移送機構(例えばクレーン等)を利用して袋形状の樹脂シート1の内側に内容物6(汚染廃棄物等が収容された容器)を収容する(内容物収容ステップS1)。
【0070】
つぎに、少なくとも一対の押し具21(21a、21b)(図8中では一対の押し具)で袋形状の樹脂シート1を押すことによって、樹脂シート1を重ねるように接触させて溶着予定領域1cを形成する(溶着予定領域形成ステップS2)。
【0071】
ここで、本実施形態のように、汚染廃棄物等が収容された容器全体を内容物6として密封する場合、第1実施形態の図4のように一対の押し具13(13a、13b)で内容物のできるだけ近くを挟もうとすると、内容物6の端部(特に容器の端部)で樹脂シート1が破れてしまう可能性がある。これは、内容物6の外形が樹脂シート1からの押圧力程度では実質的に変形せず、逆に樹脂シート1に対して局所的な張力が掛かることに起因する。
【0072】
そこで、本実施形態では、一対の押し具21(21a、21b)は、樹脂シート1の袋形状の高さ方向に段差のある状態で樹脂シート1を挟む方向に移動するように構成されている。これにより、内容物6によって樹脂シート1に掛かる局所張力を緩和することができるため、樹脂シート1が破れる危険性を回避することができる。
【0073】
必須のステップではないが、第1実施形態と同様に、溶着予定領域1cに対して溶着予定領域確認サブステップS2aを行ってもよい。
【0074】
つぎに、図9に示したように、加熱手段14と受け治具15とで溶着予定領域1cを挟み、加熱手段14の側のみから加熱して樹脂シート1を溶着する(溶着ステップS3)。これにより、被溶着領域1dが形成される。
【0075】
以降は、第1実施形態と同様である。
【0076】
本実施形態では、大容積の内容物6の外形が実質的に変形しないことにより、溶着予定領域形成ステップS2において、第1実施形態の場合よりも樹脂シート1にシワが発生し易い傾向がある。ただし、本発明は、溶着予定領域1cにシワが発生すること許容することから、大容積の容器全体を袋形状の樹脂シート1で封止する場合であっても、良好に密封することができる。
【0077】
(第3実施形態)
第3実施形態では、密封しようとする内容物を袋形状の樹脂シートに直接投入すると樹脂シートが破れる恐れがある場合、または密封しようとする内容物が通常形状の容器への収容に適さない形状を有する場合(例えば、長い棒形状、大きい板形状など)を例として説明する。
【0078】
第1~第2実施形態では袋形状の樹脂シートの一辺に対して溶着封止を行うが、本実施形態は、一枚の樹脂シートを二つ折りにして三辺に対して溶着封止を行う点で第1~第2実施形態と異なる。
【0079】
以下では、図3図10図11A図11Bを参照しながら第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。図10は、第3実施形態における内容物収容ステップの様子を示す斜視模式図である。図11Aおよび図11Bは、それぞれ第3実施形態における溶着ステップの様子を示す斜視模式図である。なお、第1実施形態と異なる部分を強調するために、第1実施形態と共通する部分は図においても省略した。
【0080】
まず、図10に示したように、溶着装置の台座10の上に一枚の樹脂シート1を配置し、図示しない移送機構(例えばロボットアーム等)を利用して樹脂シート1の上に内容物7を載せた後、図示しない樹脂シート保持機構を用いて樹脂シート1を二つ折りにして内容物7を覆う(内容物収容ステップS1)。
【0081】
つぎに、図11Aに示したように、少なくとも一対の押し具31(31a、31b)で二つ折りの一方の脇に相当する部分の樹脂シート1を押すことによって、樹脂シート1を重ねるように接触させて溶着予定領域1cを形成する(溶着予定領域形成ステップS2)。
【0082】
必須のステップではないが、第1実施形態と同様に、溶着予定領域1cに対して溶着予定領域確認サブステップS2aを行ってもよい。
【0083】
つぎに、加熱手段14と台座10とで溶着予定領域1cを挟み、加熱手段14の側のみから加熱して樹脂シート1を溶着する(溶着ステップS3)。これにより、第一の被溶着領域1eが形成される。本実施形態においては、台座10が加熱手段14の受け治具を兼ねている。
【0084】
つぎに、第一の被溶着領域1eに対して溶着成否判定ステップS4を行い、第1実施形態と同様のプロセスによって第一の被溶着領域1eが溶着完了と判定されるまで各ステップを行う。
【0085】
つぎに、二つ折りの他方の脇に相当する部分に対して、溶着予定領域形成ステップS2および溶着ステップS3を行って第二の被溶着領域1fを形成する(図11A参照)。
【0086】
つぎに、第二の被溶着領域1fに対して溶着成否判定ステップS4を行い、第1実施形態と同様のプロセスによって第二の被溶着領域1fが溶着完了と判定されるまで各ステップを行う。
【0087】
つぎに、図11Bに示したように、袋形状の口に相当する部分に対して、溶着予定領域形成ステップS2および溶着ステップS3を行って第三の被溶着領域1g(図示せず)を形成する。
【0088】
つぎに、第三の被溶着領域1gに対して溶着成否判定ステップS4を行い、第1実施形態と同様のプロセスによって第三の被溶着領域1gが溶着完了と判定されるまで各ステップを行う。
【0089】
上記の説明では、第一の被溶着領域1e、第二の被溶着領域1f、第三の被溶着領域1gの順で溶着封止を行ったが、本実施形態は、その順序に限定されるものではなく、最終的に密封できれば、どの順序で行ってもよい。
【0090】
本実施形態では、密封しようとする内容物を袋形状の樹脂シートに直接投入すると樹脂シートが破れる恐れがある場合、または密封しようとする内容物が通常形状の容器への収容に適さない形状を有する場合であっても、良好に密封することができる。
【0091】
上述した実施形態は、本発明の理解を助けるために説明したものであり、本発明は、記載した具体的な構成のみに限定されるものではない。例えば、実施形態の構成の一部を当業者の技術常識の構成に置き換えることが可能であり、また、実施形態の構成に当業者の技術常識の構成を加えることも可能である。すなわち、本発明は、本明細書の実施形態の構成の一部について、発明の技術的思想を逸脱しない範囲で、削除・他の構成に置換・他の構成の追加をすることが可能である。
【符号の説明】
【0092】
1…樹脂シート、1a…第一の層、1b…第二の層、1c…溶着予定領域、1d…被溶着領域、
1e…第一の被溶着領域、1f…第二の被溶着領域、1g…第三の被溶着領域、
2…模様、3…空隙、5,6,7…内容物、
10…台座、11…樹脂シート保持機構、12…カメラ、13…押し具、
14…加熱手段、15…受け治具、16…カメラ、17…照明、21…押し具、31…押し具、
100,200,300…溶着装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B