(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025018864
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】水上の上部工の構築方法
(51)【国際特許分類】
E02B 3/06 20060101AFI20250130BHJP
E02B 17/00 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
E02B3/06
E02B17/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023173705
(22)【出願日】2023-10-05
(31)【優先権主張番号】P 2023121374
(32)【優先日】2023-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000219406
【氏名又は名称】東亜建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】網野 貴彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 亮一
(72)【発明者】
【氏名】濱田 洋志
(72)【発明者】
【氏名】小林 雄一
【テーマコード(参考)】
2D118
【Fターム(参考)】
2D118AA28
2D118BA03
2D118BA07
2D118CA03
2D118DA05
2D118FA06
2D118GA07
2D118GA09
2D118HA12
2D118HB06
2D118HD04
(57)【要約】
【課題】水底地盤に立設された支持体に設置したプレキャストブロックの下方での作業を行わずに、効率的に水上の上部工を構築できる水上の上部工の構築方法を提供する。
【解決手段】閉塞枠体8を支持体40に対して上下方向に移動可能な状態で外嵌めして仮配置する。プレキャストブロック2の貫通孔3に支持体40を遊挿してプレキャストブロック2の底面を閉塞枠体8の上面に当接させた状態とし、プレキャストブロック2と閉塞枠体8を所定の設置高さまで下方移動させるとともに、当接維持手段9により閉塞枠体8の上面をプレキャストブロック2の底面に当接させた状態を維持する。支持体40の外周面と貫通孔3の内周面との間に中詰材20を充填して、プレキャストブロック2と固化された中詰材20とを一体化した上部工1を支持体40の上部に固定する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水底地盤に立設されている支持体の上部に固定される上部工を構築する水上の上部工の構築方法において、
平面視で前記支持体の外周面から外側に向かって延在する閉塞枠体を前記支持体に対して上下方向に移動可能な状態で外嵌めして仮配置し、
前記支持体が遊挿可能な上下に貫通する貫通孔を有するプレキャストブロックを、前記支持体の上方から下方移動させて、前記貫通孔に前記支持体を遊挿して前記プレキャストブロックの底面を前記閉塞枠体の上面に当接させた状態とし、その状態から前記プレキャストブロックと前記閉塞枠体を所定の設置高さまで下方移動させるとともに、当接維持手段により前記閉塞枠体の上面を前記プレキャストブロックの底面に当接させた状態を維持し、
前記閉塞枠体により前記支持体の外周面と前記貫通孔の下端との間のすき間を塞いだ状態で、前記支持体の外周面と前記貫通孔の内周面との間に中詰材を充填して固化させることにより、前記プレキャストブロックと固化された前記中詰材とを一体化した前記上部工を前記支持体の上部に固定することを特徴とする水上の上部工の構築方法。
【請求項2】
前記当接維持手段として弾性部材を使用し、
前記閉塞枠体を仮配置する際に、前記閉塞枠体よりも上方に位置する前記支持体の上部と前記閉塞枠体とを前記弾性部材で接続した状態とし、
前記プレキャストブロックと前記閉塞枠体を所定の設置高さまで下方移動させるとともに、伸長した前記弾性部材の弾性力により前記閉塞枠体に対して上向きの力を作用させて、前記閉塞枠体の上面を前記プレキャストブロックの底面に当接させた状態を維持する請求項1に記載の水上の上部工の構築方法。
【請求項3】
前記当接維持手段として浮力体を使用し、
前記閉塞枠体を仮配置する際に、前記浮力体を設けた前記閉塞枠体を水上に浮かべた状態とし、
前記プレキャストブロックと、前記浮力体を設けた前記閉塞枠体を所定の設置高さまで下方移動させるとともに、前記浮力体の水面下に沈められた部分の浮力により前記閉塞枠体に対して上向きの力を作用させて、前記閉塞枠体の上面を前記プレキャストブロックの底面に当接させた状態を維持する請求項1または2に記載の水上の上部工の構築方法。
【請求項4】
前記プレキャストブロックと前記閉塞枠体を所定の設置高さまで下方移動させた後に、前記閉塞枠体と前記プレキャストブロックとを吊り部材で接続して、張った状態の前記吊り部材により前記閉塞枠体を支持した状態とし、その後、前記支持体の外周面と前記貫通孔の内周面との間に前記中詰材を充填する請求項1または2に記載の水上の上部工の構築方法。
【請求項5】
前記プレキャストブロックと前記閉塞枠体を所定の設置高さまで下方移動させた後に、前記閉塞枠体と前記支持体の上部とを吊り部材で接続して、張った状態の前記吊り部材により前記閉塞枠体を支持した状態とし、その後、前記支持体の外周面と前記貫通孔の内周面との間に前記中詰材を充填する請求項1または2に記載の水上の上部工の構築方法。
【請求項6】
前記閉塞枠体の内周側に柔軟性を有するすき間埋め部材を平面視で環状に設けておき、前記プレキャストブロックと前記閉塞枠体を所定の設置高さまで下方移動させる際に、前記支持体の外周面に前記すき間埋め部材の内周側の先端部が当接した状態を維持させる請求項1または2に記載の水上の上部工の構築方法。
【請求項7】
前記支持体の外周面または前記閉塞枠体の内側面の少なくともいずれかに、前記支持体の外周面と前記閉塞枠体の内側面との間のすき間を埋める介在部材を設ける請求項1または2に記載の水上の上部工の構築方法。
【請求項8】
前記介在部材を、前記支持体の外周面と前記閉塞枠体の内側面との間の摩擦を低減する部材で構成する請求項7に記載の水上の上部工の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水上の上部工の構築方法に関し、さらに詳しくは、水底地盤に立設された杭や矢板などの支持体に設置したプレキャストブロックの下方での作業を行わずに、効率的に水上の上部工を構築できる水上の上部工の構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水底地盤に立設された杭や矢板などの支持体に支持される桟橋や護岸等の水上の上部工を構築する方法としては、例えば、水上または水中において鉄筋を配筋した後に型枠を設置して、施工現場で型枠内に生コンクリートを打設して固化させる方法がある。このような上部工の構築方法では、水上または水中に仮設足場や支保工を設置し、鉄筋を組み立てた後に型枠などの設置やコンクリートの打ち込み等を行って構築する必要があり、水上での煩雑な作業も多いため、施工効率を向上させるには限界がある。
【0003】
そこで、水上構造物(上部工)の構築方法として、杭が挿通する杭孔を有するプレキャストコンクリート版を地上で形成しておき、プレキャストコンクリート版の杭孔に杭の頭部を遊挿した状態で杭に対してプレキャストコンクリート版を固定し、プレキャストコンクリート版の外回りに足場を取付ける構築方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この構築方法では、プレキャストコンクリート版の杭孔と杭の外周面との間のすき間を、プレキャストコンクリート版の下方に設けた漏れ止め板で塞いだ状態にして、前述したすき間に無収縮モルタルを充填することで、プレキャストコンクリート版を杭の頭部に固定している。しかしながら、特許文献1で提案されている構築方法では、プレキャストコンクリート版の杭孔と杭の外周面との間のすき間を漏れ止め板で塞ぐ作業を、杭に設置したプレキャストコンクリート版の下方から行う必要があるため、水上足場を設置することや、潜水士などの作業者がプレキャストコンクリート版の下に入って煩雑な作業を行う必要がある。それ故、水上の上部工を構築する施工効率や作業者の安全性を向上させるには改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、水底地盤に立設された杭や矢板などの支持体に設置したプレキャストブロックの下方での作業を行わずに、効率的に水上の上部工を構築できる水上の上部工の構築方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための本発明の水上の上部工の構築方法は、水底地盤に立設されている支持体の上部に固定される上部工を構築する水上の上部工の構築方法において、平面視で前記支持体の外周面から外側に向かって延在する閉塞枠体を前記支持体に対して上下方向に移動可能な状態で外嵌めして仮配置し、前記支持体が遊挿可能な上下に貫通する貫通孔を有するプレキャストブロックを、前記支持体の上方から下方移動させて、前記貫通孔に前記支持体を遊挿して前記プレキャストブロックの底面を前記閉塞枠体の上面に当接させた状態とし、その状態から前記プレキャストブロックと前記閉塞枠体を所定の設置高さまで下方移動させるとともに、当接維持手段により前記閉塞枠体の上面を前記プレキャストブロックの底面に当接させた状態を維持し、前記閉塞枠体により前記支持体の外周面と前記貫通孔の下端との間のすき間を塞いだ状態で、前記支持体の外周面と前記貫通孔の内周面との間に中詰材を充填して固化させることにより、前記プレキャストブロックと固化された前記中詰材とを一体化した前記上部工を前記支持体の上部に固定することを特徴とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、閉塞枠体を支持体に対して上下方向に移動可能な状態で外嵌めして仮配置し、貫通孔を有するプレキャストブロックを、支持体の上方から下方移動させて、貫通孔に支持体を遊挿してプレキャストブロックの底面を閉塞枠体の上面に当接させた状態にする。その状態からプレキャストブロックと閉塞枠体を所定の設置高さまで下方移動させるとともに、当接維持手段により閉塞枠体の上面をプレキャストブロックの底面に当接させた状態を維持することで、支持体に設置したプレキャストブロックの下方での作業を行わずに、閉塞枠体によって支持体の外周面とプレキャストブロックの貫通孔の下端との間のすき間を塞いだ状態にできる。その後、支持体の外周面とプレキャストブロックの貫通孔の内周面との間に中詰材を充填して固化させることで、支持体に設置したプレキャストブロックの下方での作業を行わずに、水上の上部工を効率的に構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の水上の上部工の構築方法で支持体の上部に構築した上部工を側面視で例示する説明図である。
【
図2】支持体に仮配置した状態の当接維持手段として弾性部材を設けた閉塞枠体と、プレキャストブロックとをそれぞれ断面視で例示する説明図である。
【
図4】
図2および
図3の状態からプレキャストブロックを支持体に設置した状態を断面視で例示する説明図である。
【
図6】
図4および
図5の状態から支持体の外周面とプレキャストブロックの貫通孔の内周面との間に中詰材を充填して固化させた状態を断面視で例示する説明図である。
【
図8】当接維持手段として浮力体を設けた閉塞枠体を水上に浮かべた状態で支持体に仮配置した状態を断面視で例示する説明図である。
【
図9】
図8の状態からプレキャストブロックを支持体に設置した状態を断面視で例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の水上の上部工の構築方法を図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0010】
図1に例示するように、本発明は、水底地盤WBに打設された杭や矢板などの支持体40の上部に固定される桟橋や護岸等の水上の上部工1を構築する方法である。支持体40としては、例えば、鋼管杭やコンクリート杭などの杭や、鋼管矢板などの矢板が例示できる。以下に説明する
図1~
図7に例示する実施形態では、支持体40が杭である場合を例示する。
【0011】
図1~
図7に例示する実施形態では、1本の支持体40の上部に固定される上部工1を構築する場合を例示するが、本発明では2本以上の支持体40の上部に固定される上部工1を構築することもできる。本発明における水上の上部工1は、常に水面上に位置する上部工1に限らず、潮位変動などにより一時的に水中に一部が没する上部工1も含んでいる。
【0012】
図2および
図3に例示するように、本発明では、陸上や船上などで予め作製したプレキャストブロック2と閉塞枠体8と当接維持手段9とを用いて上部工1を構築する。プレキャストブロック2は、例えば、プレキャストコンクリートやプレストレスコンクリート、樹脂などで形成される。プレキャストブロック2は、例えば、プレキャストコンクリートやプレストレスコンクリートに鉄筋(または鉄骨)が埋設された鉄筋コンクリート(鉄骨鉄筋コンクリート)構造にしてもよいし、プレキャストコンクリートやプレストレスコンクリートに鉄筋等が埋設されていない構造にすることもできる。
【0013】
プレキャストブロック2は、支持体40が遊挿可能な上下に貫通する貫通孔3を有している。この実施形態では、プレキャストブロック2の中央の1ヶ所に貫通孔3が形成されている。この実施形態のプレキャストブロック2は、プレキャストコンクリートで形成されていて貫通孔3が形成されているブロック体4と、貫通孔3に内嵌めされた上下に延在する鞘管5と、平面視で貫通孔3の内側に張り出した梁部材6と、吊金具7とを有して構成されている。
【0014】
この実施形態では、ブロック体4の外形が直方体形状に形成されている場合を例示しているが、ブロック体4の外形は直方体形状に限らず他の形状にすることもできる。この実施形態では、ブロック体4の中央の1ヶ所に貫通孔3が形成されている。
【0015】
プレキャストブロック2に鞘管5は任意に設けることができ、鞘管5を有さないプレキャストブロック2を用いることもできる。鞘管5としては、繊維強化プラスチック(FRP)などで形成された樹脂製の管状部材を用いることもできるし、鋼管などの金属製の管状部材を用いることもできる。この実施形態では、鞘管5の上端は、プレキャストブロック2の上端面よりも低い位置に配置されている。即ち、プレキャストブロック2の貫通孔3の上部には、鞘管5が設けられていない部分がある。
【0016】
本発明では、プレキャストブロック2の鞘管5が設けられている範囲においては、鞘管5の内周面を貫通孔3の下部の内周面とする。プレキャストブロック2の鞘管5が設けられていない範囲においては、貫通孔3の内側のコンクリート面を貫通孔3の内周面とする。
【0017】
貫通孔3の内寸(この実施形態では、鞘管5の内寸)は、支持体40が遊挿可能な寸法に設定されている。貫通孔3の内寸は、平面視で貫通孔3の中心位置と支持体40の中心位置とを一致させた状態で貫通孔3に支持体40を挿入した場合に、貫通孔3の内周面と支持体40の外周面との間に例えば、5cm以上20cm以下、より好ましくは10cm以上15cm以下のすき間(クリアランス)ができる寸法に設定するとよい。
【0018】
梁部材6は、H形鋼や溝形鋼などの型鋼や樹脂製の棒状部材などで構成される。この実施形態では、梁部材6としてH形鋼を用いている。梁部材6は水平方向に延在していて、平面視で貫通孔3(鞘管5)の内側に梁部材6が張り出している。梁部材6の少なくとも一部は、平面視で貫通孔3の外側まで延在している。
図2および
図3に例示するように、この実施形態では、平面視で十字に交差するように梁部材6が配設されていて、梁部材6は貫通孔3を横断して架け渡されている。
【0019】
図2に例示するように、梁部材6は例えば、鞘管5の上部、または、鞘管5の上に配置される。この実施形態では、鞘管5の上部にそれぞれの梁部材6を嵌込む溝が形成されていて、その溝に梁部材6が嵌め込まれた状態になっている。例えば、梁部材6は鞘管5の上に載置した状態にすることもできる。梁部材6の貫通孔3の内側に位置する部分が露出していて、梁部材6の貫通孔3の外側に位置する部分がブロック体4を構成するプレキャストコンクリートに埋設された構造になっている。梁部材6の上端は、プレキャストブロック2の上端面よりも低い位置に配置されている。
【0020】
ブロック体4の上部には、プレキャストブロック2をクレーンなどで吊り上げる際に使用する複数の吊金具7が設けられている。この実施形態では、ブロック体4の上部の四隅にそれぞれ吊金具7が配設されている。吊金具7の下部はブロック体4を構成するプレキャストコンクリートに埋設されていて、吊金具7はブロック体4に一体化されている。なお、プレキャストブロック2に吊金具7は任意に設けることができる。吊金具7を用いない別の方法でプレキャストブロック2を吊上げる場合には、吊金具7を有さないプレキャストブロック2を用いることもできる。この実施形態では示していないが、上部工1に係船柱などの付帯物を設ける場合には、プレキャストブロック2(ブロック体4)に係船柱などの付帯物を一体化しておくこともできる。
【0021】
図2および
図3に例示するように、閉塞枠体8は、プレキャストブロック2を支持体40に設置する以前に、支持体40に対して仮配置される。閉塞枠体8は、支持体40に対して上下方向に移動可能な状態で外嵌めされる。閉塞枠体8は、平面視において支持体40の外周面から外側に向かって延在している。閉塞枠体8は、平面視でプレキャストブロック2の貫通孔3よりも外側に延在している。閉塞枠体8は、例えば、金属製や樹脂製、木製などの板状部材で構成される。この実施形態では、平面視での外形が円形状の閉塞枠体8を例示しているが、平面視での閉塞枠体8の外形は多角形状などの他の形状にすることもできる。
【0022】
この実施形態では、閉塞枠体8の内周側に柔軟性を有するすき間埋め部材8aを平面視で環状に設けている。すき間埋め部材8aの後端部は閉塞枠体8に接合されていて、支持体40の外周面にすき間埋め部材8aの内周側の先端部が当接している。すき間埋め部材8aは例えば、ゴム製の板状部材やスポンジなどの柔軟性や追従性、密閉性を有する部材で構成するとよい。この実施形態では、すき間埋め部材8aとしてゴム製の板状部材を用いた場合を例示している。すき間埋め部材8aは一つの環状の部材で構成することもできるし、複数の分割部材を組み合わせて環状に形成することもできる。
【0023】
この実施形態では、さらに、支持体40の外周面に当接する閉塞枠体8の内側面に、支持体40の外周面と閉塞枠体8の内側面との間のすき間を埋める介在部材8bが設けられている。支持体40の外周面と閉塞枠体8の内側面との間のすき間を埋める介在部材8bは例えば、支持体40の外周面に設けることもできる。介在部材8bは、例えば、ゴムなどの弾性部材で構成する。介在部材8bは、一般的なパッキンで使用されている高弾力ゴム材を使用すればよく、中実体と中空体のいずれも使用できるが、中実体がより好ましい。支持体40の外径と介在部材8bの内径は実質的に同じ寸法にすることが好ましい。介在部材8bの幅(径方向の厚さ)は、例えば、5mm以上15mm以下、より好ましくは8mm以上12mm以下に設定するとよい。介在部材8bは、例えば、フッ素樹脂などの支持体40の外周面と閉塞枠体8の内側面との間の摩擦を低減する部材で構成することもできる。支持体40の外周面と閉塞枠体8の内側面との間の摩擦を低減する方法としては、例えば、支持体40の外周面や閉塞枠体8の内側面に潤滑剤を塗布することもできる。例えば、支持体40の外周面と閉塞枠体8の内側面との間の摩擦を低減する部材として、閉塞枠体8の内側面に車輪やベアリングなどを設けることもできる。なお、介在部材8bは支持体40の外周面と閉塞枠体8の内側面との間の摩擦を低減する効果を有していない部材で構成することもできる。
【0024】
この実施形態の閉塞枠体8は、平面視で放射状に分割された複数の分割部材で構成されている。この実施形態の閉塞枠体8は2つの分割部材で構成されている。2つの分割部材のそれぞれの一方側はヒンジ部8cで連結されていて、2つの分割部材の他方側にそれぞれ連結部8dが設けられている。それぞれの分割部材を支持体40に外嵌めし、一対の分割部材の連結部8dどうしを例えばボルト締めなどで連結することで、閉塞枠体8を支持体40に外嵌する構成になっている。閉塞枠体8は、例えば、3つ以上の分割部材で構成することもできる。閉塞枠体8は、例えば、平面視で環状の1つの部材で構成することもできる。その場合には、閉塞枠体8を支持体40の上方から下方移動させて外嵌する。閉塞枠体8を平面視で環状の1つの部材で構成すると、閉塞枠体8を非常に簡素に構成できるというメリットがある。
【0025】
図4および
図5に例示するように、当接維持手段9は、閉塞枠体8によって支持体40の外周面とプレキャストブロック2の貫通孔3の下端との間のすき間を塞いだ状態にする際に、閉塞枠体8の上面をプレキャストブロック2の底面に当接させた状態を維持する手段である。この実施形態では、当接維持手段9として弾性部材9aを使用している。弾性部材9aとしては、例えば、ゴム製の紐状部材や帯状部材、バネ部材などを用いる。
【0026】
図2および
図3に例示するように、この実施形態では、閉塞枠体8よりも上方に位置する支持体40の上部に固定部11を固定していて、固定部11と閉塞枠体8の上端部とを複数箇所で弾性部材9aによって接続している。平面視で閉塞枠体8の内側の挿通孔を囲むように複数の弾性部材9aを配設している。この実施形態では、平面視で円環形状の固定部11を支持体40に外嵌めした状態で固定している。より詳しくは、この実施形態の固定部11は2つの分割部材で構成されている。2つの分割部材のそれぞれの一方側はヒンジ部11aで連結されていて、2つの分割部材の他方側にそれぞれ連結部11bが設けられている。それぞれの分割部材を支持体40に外嵌めし、分割部材の連結部11bどうしを例えばボルト締めなどで連結することで、固定部11を支持体40に外嵌して固定する構成になっている。
【0027】
固定部11は、例えば、平面視で環状の1つの部材で構成することもできる。その場合には、固定部11を支持体40の上方から下方移動させて外嵌する。固定部11を平面視で環状の1つの部材で構成すると、固定部11を非常に簡素に構成できるというメリットがある。固定部11は例えば、その他の方法で支持体40に固定することもできる。また、この実施形態では、1つの固定部11に複数の弾性部材9aの上端部を固定しているが、例えば、それぞれの弾性部材9a毎に別々の固定部11を支持体40に設けることもできる。例えば、固定部11を設けずに、それぞれの弾性部材9aの上端部を支持体40に直接接合した構成にすることもできる。
【0028】
図2および
図3に例示するように、この実施形態では、プレキャストブロック2を支持体40に対して設置する以前に、閉塞枠体8よりも上方に位置する支持体40の上部に設けた固定部11と閉塞枠体8とを複数の弾性部材9aで接続した状態にすることで、閉塞枠体8を支持体40に対して仮配置する。即ち、支持体40に対して上下移動可能な閉塞枠体8を、複数の弾性部材9aによって吊り持ちした状態にする。弾性部材9aによって閉塞枠体8を吊り持ちした状態にできる構成であれば、弾性部材9aの設置数や配置は、この実施形態に限定されず、他にも様々な構成にすることができる。なお、弾性部材9aは、長手方向の全ての範囲が弾性を有する材料で形成されている場合に限らず、弾性部材9aの長手方向の少なくとも一部が弾性を有する材料で形成されていればよい。即ち、弾性部材9aの一部は弾性を有さない材料で形成されていてもよい。
【0029】
この実施形態では、さらに、閉塞枠体8に複数の吊り部材10を設けている。吊り部材10としては、例えば、金属製や樹脂製の紐状部材や索状部材などを使用する。樹脂製の吊り部材10は例えば、繊維強化プラスチック(FRP)で形成するとよい。この実施形態では、平面視で閉塞枠体8の内側の挿通孔を囲むように複数の吊り部材10が配設されている。閉塞枠体8の上端部に複数の下側接続部8eが設けられていて、それぞれの下側接続部8eに吊り部材10の下端が接続されている。
図3に例示するように、この実施形態では、梁部材6にそれぞれの吊り部材10の上部を接続可能な上側接続部6aが複数箇所に設けられている。
【0030】
以下、本発明の上部工1の構築方法の具体的な作業手順を説明する。
【0031】
図2および
図3に例示するように、上部工1を構築する支持体40のサイズに合わせて、前述した構成のプレキャストブロック2と閉塞枠体8を陸上や船上などで予め作製しておく。そして、プレキャストブロック2と閉塞枠体8を支持体40が立設されている施工水域まで搬送する。この実施形態では、支持体40のサイズに合わせて前述した構成の固定部11も陸上や船上などで予め作製しておき、施工水域まで搬送する。この実施形態では、閉塞枠体8と固定部11とを予め複数の弾性部材9aによって接続した状態とし、閉塞枠体8の上端部に設けられている複数の下側接続部8eにそれぞれ吊り部材10の下端を接続した状態で、その一体物を施工水域に搬送している。
【0032】
上部工1を構築する施工水域の作業では、支持体40の上端から所定深さの位置に、支持体40の内部を上下に隔離する仕切板30を設けておく。仕切板30の外寸は支持体40の内寸と略同一に設定する。仕切板30を支持体40の内部に設置する方法は特に限定されないが、例えば、支持体40の上端部から吊り下げたワイヤなどの吊材で仕切板30を支持した状態にすることで、仕切板30を支持体40の内部に固定する。
【0033】
また、
図2および
図3に例示するように、閉塞枠体8を支持体40に対して上下方向に移動可能な状態で外嵌めして仮配置する。この実施形態では、閉塞枠体8を構成するそれぞれの分割部材を支持体40に外嵌めし、それぞれの分割部材に設けられている連結部8dどうしを連結することで閉塞枠体8を支持体40に対して外嵌めする。この実施形態では、閉塞枠体8の内周側に予めすき間埋め部材8aを設けておき、閉塞枠体8とともにすき間埋め部材8aを支持体40に対して外嵌めしている。支持体40の外周面にすき間埋め部材8aの内周側の先端部を当接させた状態とし、支持体40の外周面とすき間埋め部材8aの先端部との間にすき間が生じない状態にする。
図2に例示するように、すき間埋め部材8aの先端部を支持体40の外周面に押し付けた状態とし、すき間埋め部材8aの先端側を湾曲させた状態にするとよい。
【0034】
次いで、閉塞枠体8よりも上方に位置する支持体40の上部に固定部11を固定する。この実施形態では、固定部11を構成するそれぞれの分割部材を支持体40に外嵌めし、それぞれの分割部材に設けられている連結部11bどうしを連結することで、固定部11を支持体40に対して外嵌めして固定する。そして、支持体40に対して上下移動可能な閉塞枠体8を、複数の弾性部材9aによって吊り持ちした状態にすることで、閉塞枠体8を支持体40に対して仮配置した状態にする。この実施形態では、閉塞枠体8を水面位置WLよりも上方に仮配置している。それぞれ吊り部材10の上端部は、支持体40の上部に引っ掛けておく。
【0035】
次いで、プレキャストブロック2に設けられているそれぞれの吊金具7にクレーンから懸下されたワイヤロープの吊具を連結し、クレーンによってプレキャストブロック2を支持体40の上方に吊上げた状態にする。そして、プレキャストブロック2に設けられている貫通孔3と支持体40との位置を合わせた状態で、プレキャストブロック2を支持体40の上方から下方移動させて、プレキャストブロック2の貫通孔3に支持体40を遊挿してプレキャストブロック2の底面を閉塞枠体8の上面に当接させた状態にする。
【0036】
そして、
図4および
図5に例示するように、前述した状態からプレキャストブロック2と閉塞枠体8を所定の設置高さまで下方移動させるとともに、当接維持手段9により、閉塞枠体8の上面をプレキャストブロック2の底面に当接させた状態を維持する。この実施形態では、貫通孔3の内側に張り出している梁部材6を支持体40の上端部に載置することで、プレキャストブロック2が所定の設置高さに配置され、プレキャストブロック2が支持体40の上部に支持された状態になる。そして、閉塞枠体8によって支持体40の外周面とプレキャストブロック2の貫通孔3の下端との間のすき間が塞がれた状態になる。プレキャストブロック2が支持体40の上部に支持された状態にすると、作業者がプレキャストブロック2の上にのって作業を行える状態になる。
【0037】
より詳しくは、この実施形態では、プレキャストブロック2の底面を閉塞枠体8の上面に当接させた状態にして、その状態からプレキャストブロック2と閉塞枠体8を所定の設置高さまで下方移動させると、当接維持手段9を構成するそれぞれの弾性部材9aが伸長する。そして、伸長した弾性部材9aが収縮しようとする弾性力によって、閉塞枠体8に対して上向きの力F(付勢力)が作用した状態になることで、閉塞枠体8の上面がプレキャストブロック2の底面に当接した状態が維持される。また、プレキャストブロック2と閉塞枠体8を所定の設置高さまで下方移動させる際に、すき間埋め部材8aの先端部が支持体40の外周面に当接した状態が維持される。
【0038】
次に、閉塞枠体8とプレキャストブロック2とを吊り部材10で接続して、張った状態(緊張させた状態)の吊り部材10によって閉塞枠体8を支持(固定)した状態にする。この実施形態では、プレキャストブロック2の上から、支持体40の上端に引っ掛けられているそれぞれの吊り部材10の上端部を、梁部材6に設けられている上側接続部6aまで引き上げて、張った状態にした吊り部材10の上端部を上側接続部6aに固定する。
【0039】
次いで、
図6および
図7に例示するように、閉塞枠体8(すき間埋め部材8aを含む)により支持体40の外周面とプレキャストブロック2の貫通孔3の下端との間のすき間を塞いだ状態で、プレキャストブロック2の貫通孔3の内側に中詰材20を打設する。そして、仕切板30よりも上方の支持体40の内側と、閉塞枠体8の上方の支持体40の外周面と貫通孔3の内周面との間のすき間と、支持体40よりも上方の貫通孔3の上部に中詰材20を充填する。
【0040】
貫通孔3が埋まるように中詰材20を一度の打設で充填すると作業工数を少なくするには有利になる。中詰材20は例えば、複数回に分けて打設することもできる。
図6では、中詰材20を2度に分けて打設する場合を例示している。この場合には、一度目の打設では、支持体40の外周面と貫通孔3の内周面との間から閉塞枠体8の上に5cm~20cm程度の厚さになるように第一の中詰材20aを打設して、その第一の中詰材20aを固化させることにより、閉塞枠体8の上に固化した第一の中詰材20aで薄い底板を形成している。そして、その後に、貫通孔3が埋まるように残りの中詰材20を打設して固化させる。弾性部材9aや吊り部材10は、中詰材20に埋まった状態になる。
図6および
図7では、中詰材20を充填している範囲を斜線で示している。
【0041】
その後、所定の養生期間が経過し、中詰材20が固化すると、プレキャストブロック2と固化された中詰材20とが一体化した上部工1が支持体40の上部に固定された状態になる。以上により、上部工1の構築作業が完了する。
【0042】
このように、本発明では、閉塞枠体8を支持体40に対して上下方向に移動可能な状態で外嵌めして仮配置し、貫通孔3を有するプレキャストブロック2を、支持体40の上方から下方移動させて、貫通孔3に支持体40を遊挿してプレキャストブロック2の底面を閉塞枠体8の上面に当接させた状態にする。その状態からプレキャストブロック2と閉塞枠体8を所定の設置高さまで下方移動させるとともに、当接維持手段9により閉塞枠体8の上面をプレキャストブロック2の底面に当接させた状態を維持する。これにより、支持体40に設置したプレキャストブロック2の下方での作業を行わずに、閉塞枠体8によって支持体40の外周面とプレキャストブロック2の貫通孔3の下端との間のすき間を塞いだ状態にできる。その後は、支持体40の外周面とプレキャストブロック2の貫通孔3の内周面との間に中詰材20を充填して固化させることで、支持体40に設置したプレキャストブロック2の下方での作業を行わずに、水上の上部工1を効率的に構築することができる。
【0043】
この実施形態のように、当接維持手段9として弾性部材9aを使用して、閉塞枠体8を支持体40に対して仮置きする際に、閉塞枠体8よりも上方に位置する支持体40の上部と閉塞枠体8とを弾性部材9aで接続した状態にすると、当接維持手段9を簡素に構成できる。プレキャストブロック2と閉塞枠体8を所定の設置高さまで下方移動させるとともに、伸長した弾性部材9aの弾性力により閉塞枠体8に対して上向きの力Fを作用させた状態にすると、閉塞枠体8の上面をプレキャストブロック2の底面に押し付けた状態にできるので、閉塞枠体8の上面がプレキャストブロック2の底面から離間することを防止するには有利になる。
【0044】
さらに、この実施形態のように、弾性部材9aの上端部を接続した固定部11を設けて、閉塞枠体8を支持体40に対して仮配置する際に、閉塞枠体8よりも上方に位置する支持体40の上部に固定部11を固定する構成にすると、支持体40の上部と閉塞枠体8とを弾性部材9aによって接続した状態にする作業を非常に効率的に行える。なお、固定部11を設けずに、例えば、弾性部材9aの上端部を支持体40の上部にボルト接合や接着剤、溶接などで直接接合することもできる。
【0045】
この実施形態のように、プレキャストブロック2と閉塞枠体8を所定の設置高さまで下方移動させた後に、閉塞枠体8とプレキャストブロック2とを吊り部材10で接続して、張った状態の吊り部材10により閉塞枠体8を支持した状態にすると、中詰材20を充填する際に閉塞枠体8にかかる荷重を、当接維持手段9だけではなく吊り部材10によって支持した状態にできる。それ故、吊り部材10を設けることで、中詰材20の充填中に閉塞枠体8の上面がプレキャストブロック2の底面から離間して中詰材20が漏れ出すことを防ぐにはより有利になる。この実施形態のように、梁部材6に、吊り部材10の上端部を接続可能な上側接続部6aを設けておくと、閉塞枠体8とプレキャストブロック2とを吊り部材10によって接続する作業を効率的に行える。なお、上側接続部6aを設けずに、例えば、吊り部材10の上端部を梁部材6や鞘管5、貫通孔3の内側面などにボルト接合や接着剤、溶接などで直接接合することもできる。
【0046】
この実施形態では、閉塞枠体8とプレキャストブロック2とを吊り部材10で接続する場合を例示したが、例えば、プレキャストブロック2と閉塞枠体8を所定の設置高さまで下方移動させた後に、閉塞枠体8と支持体40の上部とを吊り部材10で接続して、張った状態の吊り部材10により閉塞枠体8を支持した状態にすることもできる。この場合にも、中詰材20を充填する際に閉塞枠体8にかかる荷重を、当接維持手段9だけではなく吊り部材10によって支持することができるので、中詰材20の充填中に閉塞枠体8の上面がプレキャストブロック2の底面から離間して中詰材20が漏れ出すことを防ぐにはより有利になる。なお、閉塞枠体8と支持体40の上部とを吊り部材10で接続する場合については、後に別の実施形態で例示する。
【0047】
この実施形態のように、閉塞枠体8の内周側に柔軟性を有するすき間埋め部材8aを平面視で環状に設けておき、プレキャストブロック2と閉塞枠体8を所定の設置高さまで下方移動させる際に、支持体40の外周面にすき間埋め部材8aの内周側の先端部が当接した状態を維持すると、中詰材20の充填中に中詰材20が閉塞枠体8の下方に漏れ出すことを防ぐにはより有利になる。なお、すき間埋め部材8aは必要に応じて任意に設けることができる。
【0048】
支持体40の外周面または閉塞枠体8の内側面の少なくともいずれかに、支持体40の外周面と閉塞枠体8の内側面との間のすき間を埋める介在部材8bを設けると、中詰材20の充填中に中詰材20が閉塞枠体8の下方に漏れ出すことを防ぐにはより有利になる。介在部材8bを弾性部材で構成すると、プレキャストブロック2と閉塞枠体8を所定の設置高さまで下方移動させる際に、閉塞枠体8(介在部材8b)が支持体40に接触しても、介在部材8bが緩衝材として機能するので、支持体40の外周面を保護するには有利になる。支持体40の外周面に樹脂等で形成された防食層(防食カバー)が設けられている場合があるので、防食層の摩耗や損傷を回避するには非常に有効である。介在部材8bを支持体40の外周面と閉塞枠体8の内側面との間の摩擦を低減する部材で構成すると、プレキャストブロック2と閉塞枠体8を所定の設置高さまで下方移動させる際に、支持体40に対して閉塞枠体8が円滑に移動し易くなる。それ故、施工を円滑に行うには有利になる。この実施形態では、閉塞枠体8の内側面に介在部材8bを設ける場合を例示したが、例えば、支持体40の外周面に介在部材8bを設けてもよいし、支持体40の外周面と閉塞枠体8の内側面との両方に介在部材8bを設けてもよい。すき間埋め部材8aと介在部材8bを両方設けた構成にすると、中詰材20の充填中に中詰材20が閉塞枠体8の下方に漏れ出すことを防ぐにはより一層有利になる。なお、介在部材8bは必要に応じて任意に設けることができる。
【0049】
この実施形態のように、プレキャストブロック2を作製する際に、プレキャストブロック2の貫通孔3の内側に張り出す梁部材6を設けると、支持体40の上端部に梁部材6を載置することで、プレキャストブロック2を支持体40の上部に簡易に安定した状態で設置することが可能になる。プレキャストブロック2を複数の支持体40の上部に設置した後には、作業者がプレキャストブロック2の上にのって作業を行うことが可能になるので、施工効率を向上させるには有利になる。
【0050】
なお、プレキャストブロック2を構成する梁部材6の本数や配置は、上記で例示した実施形態に限定されず、例えば、貫通孔3の内側に張り出している梁部材6を1本や3本以上にすることもできる。また、例えば、梁部材6の端部が平面視で貫通孔3の内側に配置されていて、梁部材6が貫通孔3を横断していない構成にすることもできる。また、例えば、平面視で貫通孔3の内側に2本の梁部材6が横並びに配設された構成にすることもできる。
【0051】
貫通孔3が埋まるように中詰材20を一度の打設で充填すると作業工数を少なくするには有利になる。その一方で、中詰材20を打設する際には、閉塞枠体8に中詰材20の荷重がかかるが、中詰材20の打設を複数回に分けて行い、一度目の打設で、閉塞枠体8の上に固化させた中詰材20aによって5cm~20cm程度の薄い底板を形成する構成にすると、その薄い底板が閉塞枠体8とともに、その後に打設される中詰材20の荷重を支持する底板として機能する。それ故、中詰材20の打設を複数回に分けて行う場合には、一度の打設で全ての中詰材20を打設する場合よりも作業工数は多くなるが、閉塞枠体8にかかる負荷を低減できるメリットがある。それに伴い、閉塞枠体8を支持する当接維持手段9や吊り部材10の簡素化を図ることができる。
【0052】
図8および
図9に例示するように、本発明では当接維持手段9を例えば、閉塞枠体8に設けた浮力体9bで構成することもできる。この実施形態では、当接維持手段9の構成と、吊り部材10によって閉塞枠体8を吊り持ちした状態にする方法が、
図1~
図7に例示した実施形態と異なっている。その他の構成は
図1~
図7に例示した実施形態と同じである。
【0053】
図8に例示するように、この実施形態では、当接維持手段9として閉塞枠体8に浮力体9bを設けている。浮力体9bは、水(施工水域が海域の場合には海水)よりも密度が小さい部材であり、例えば、樹脂や木材などで形成される。浮力体9bは、例えば、内空の箱体で構成することもできるし、発泡スチロールのような内部に多数の気泡を有する発泡体で構成することもできる。
【0054】
図8に例示するように、この実施形態では、プレキャストブロック2を支持体40に対して仮配置する際に、浮力体9bを設けた閉塞枠体8を水上に浮かべた状態にしている。閉塞枠体8は、
図1~
図7に例示した実施形態と同様に、支持体40に対して上下方向に移動可能な状態で外嵌めしている。支持体40に対して閉塞枠体8を仮置きした状態では、浮力体9bの一部が水没し、閉塞枠体8の上端面は水面位置WLよりも上方に位置している。この実施形態では、すき間埋め部材8aとして独立気泡構造のスポンジを用いた場合を例示している。
【0055】
この実施形態では、閉塞枠体8よりも上方に位置する支持体40の上部に、支持体40に対して吊り部材10を接続するための接続部12を設置している。この実施形態では、平面視で円環形状の接続部12を支持体40に外嵌めした状態で固定している。より詳しくは、この実施形態の接続部12は2つの分割部材で構成されている。2つの分割部材のそれぞれの一方側はヒンジ部12aで連結されていて、2つの分割部材の他方側にそれぞれ連結部12bが設けられている。それぞれの分割部材を支持体40に外嵌めし、一対の分割部材の連結部12bどうしを連結することで、接続部12を支持体40に外嵌して固定する構成になっている。接続部12は、例えば、平面視で環状の1つの部材で構成することもできる。その場合には、接続部12を支持体40の上方から下方移動させて外嵌する。接続部12を平面視で環状の1つの部材で構成すると、接続部12を非常に簡素に構成できるというメリットがある。
【0056】
図8に例示するように、この実施形態では、閉塞枠体8の上端部に輪状(環状)の下側接続部8eが複数箇所に設けられている。この実施形態では、支持体40(固定部11)と閉塞枠体8との間に延在させる吊り部材10の長さを調整する器具として結束治具13を設けている。結束治具13は、結束治具13に挿通している吊り部材10が結束治具13に対して片側にだけ移動可能で、もう片側には移動しないセルフロック機能(自動締まり機能)を有している。
【0057】
図1~
図7に例示した実施形態と同様に、この実施形態においても、上部工1を構築する支持体40のサイズに合わせて、プレキャストブロック2と閉塞枠体8を陸上や船上などで予め作製しておく。この実施形態では、支持体40のサイズに合わせて前述した構成の接続部12も陸上や船上などで予め作製しておく。この実施形態では、閉塞枠体8と接続部12とを予め複数の吊り部材10によって接続した状態で、その一体物を施工水域に搬送する。
【0058】
具体的には、
図8に例示するように、吊り部材10の一端部は接続部12に固定し、接続部12から下方に向かって延在する吊り部材10の中途部分を結束治具13に挿通させておく。そして、結束治具13から下方に向かって延在する吊り部材10の中途部分を下側接続部8eの輪に挿通させた状態とし、下側接続部8eから上方に向かって延在する吊り部材10の中途部分を結束治具13に挿通させた状態にする。結束治具13から上方に向かって延在する吊り部材10の他端部は自由端の状態にしておく。
【0059】
上部工1を構築する施工水域の作業では、支持体40の内部に仕切板30を固定する。また、浮力体9bを設けた閉塞枠体8を支持体40に対して上下方向に移動可能な状態で外嵌めした状態とし、浮力体9bを設けた閉塞枠体8を水上に浮かべた状態で支持体40に対して仮配置する。
【0060】
さらに、閉塞枠体8よりも上方に位置する支持体40の上部に接続部12を固定する。この実施形態では、接続部12を構成するそれぞれの分割部材を支持体40に外嵌めし、一対の分割部材に設けられている連結部12bどうしを連結することで接続部12を支持体40に対して外嵌めして固定する。この実施形態においても閉塞枠体8は、例えば、平面視で環状の1つの部材で構成することもできる。その場合には、閉塞枠体8を支持体40の上方から下方移動させて外嵌する。支持体40に対して閉塞枠体8を仮置きした状態では、結束治具13と下側接続部8eとの間に位置する吊り部材10の中途部分はある程度弛みを設けた状態にする。自由端になっているそれぞれ吊り部材10の他端部は、支持体40の上部に引っ掛けておく。
【0061】
次いで、クレーンを使用して、プレキャストブロック2を支持体40の上方から下方移動させて、プレキャストブロック2の貫通孔3に支持体40を遊挿してプレキャストブロック2の底面を閉塞枠体8の上面に当接させた状態にする。
【0062】
そして、
図9に例示するように、前述した状態からプレキャストブロック2と閉塞枠体8を所定の設置高さまで下方移動させるとともに、当接維持手段9により閉塞枠体8の上面をプレキャストブロック2の底面に当接させた状態を維持する。この実施形態では、プレキャストブロック2の底面を閉塞枠体8の上面に当接させた状態にして、その状態からプレキャストブロック2と閉塞枠体8を所定の設置高さまで下方移動させると、浮力体9bの水面下に沈められた部分の浮力により閉塞枠体8に対して上向きの力F(付勢力)が作用した状態になる。プレキャストブロック2と閉塞枠体8を所定の設置高さに配置した状態では、プレキャストブロック2の底面と閉塞枠体8は、水面位置WLよりも下方に位置した状態になる。
【0063】
次いで、閉塞枠体8と支持体40の上部とを吊り部材10で接続して、張った状態(緊張させた状態)の吊り部材10により閉塞枠体8を支持した状態にする。
図9に例示するように、この実施形態では、プレキャストブロック2の上から、作業者が支持体40の上部に引っ掛けられているそれぞれの吊り部材10の他端部を上方に引き上げて、接続部12と下側接続部8eとの間に位置する吊り部材10の中途部分を張った状態にする。この実施形態では、結束治具13を設けていることで、作業者が吊り部材10の他端部を上方に引き上げるだけで、接続部12と下側接続部8eとの間に位置する吊り部材10の中途部分が張った状態になる。その後は、作業者が吊り部材10の他端部から手を離しても、結束治具13のセルフロック機能により、接続部12と下側接続部8eとの間に位置する吊り部材10の中途部分は張った状態が維持される。
【0064】
中詰材20を打設する前に、プレキャストブロック2の外側に突出している吊り部材10の他端部は切断して回収する。或いは、吊り部材10の他端部はプレキャストブロック2の外側に突出しないように貫通孔3の内側に配置しておく。その後は、
図1~
図7に例示した実施形態と同様に、閉塞枠体8により支持体40の外周面とプレキャストブロック2の貫通孔3の下端との間のすき間を塞いだ状態で、プレキャストブロック2の貫通孔3の内側に中詰材20を打設する。その後、所定の養生期間が経過し、中詰材20が固化すると、プレキャストブロック2と固化された中詰材20とが一体化した上部工1が支持体40の上部に固定された状態になる。
【0065】
この実施形態のように、当接維持手段9として浮力体9bを使用して、閉塞枠体8を支持体40に対して仮置きする際に、浮力体9bを設けた閉塞枠体8を水上に浮かべた状態にすると、当接維持手段9を非常に簡素に構成できる。
【0066】
この実施形態のように、閉塞枠体8と支持体40とを吊り部材10で接続する場合には、支持体40の上部に吊り部材10の一端部を接続可能な接続部12を設けると、閉塞枠体8と支持体40とを吊り部材10によって接続する作業を非常に効率的に行える。また、結束治具13を使用すると、吊り部材10を張った状態にする作業を非常に容易に行える。
【0067】
なお、例えば、結束治具13を使用せずに、他の方法で吊り部材10を張った状態にしてもよい。接続部12は例えば、接着剤による接着や溶接などの他の方法で支持体40に固定することもできる。また、この実施形態では、1つの接続部12に複数の吊り部材10の一端部を固定しているが、例えば、それぞれの吊り部材10毎に別々の接続部12を支持体40に設けることもできる。接続部12を設けずに、例えば、吊り部材10の一端部を支持体40の外周面に接着剤や溶接で直接接合することもできる。
【0068】
なお、上記では、当接維持手段9として弾性部材9aを用いる場合と浮力体9bを用いる場合を例示したが、当接維持手段9は、プレキャストブロック2と閉塞枠体8を所定の設置高さまで下方移動させる際に、閉塞枠体8の上面をプレキャストブロック2の底面に当接させた状態を維持できる構成であれば、弾性部材9aや浮力体9bに限らず、他にも様々な構成にすることができる。当接維持手段9は、例えば、プレキャストブロック2と閉塞枠体8を所定の設置高さまで下方移動させる際に、閉塞枠体8に対して上向きの力Fを作用させずに、閉塞枠体8の上面をプレキャストブロック2の底面に当接させた状態を維持する構成にすることもできる。具体的には例えば、当接維持手段9として、プレキャストブロック2と閉塞枠体8を所定の設置高さまで下方移動させたときに、閉塞枠体8を所定の設置高さで停止させる係止具(扉のストップステーのような機能の器具)を用いることもできる。
【0069】
本発明では、
図1~
図7に例示した実施形態のように、当接維持手段9として弾性部材9aだけを用いる構成にすることもできるし、
図8および
図9に例示した実施形態のように、当接維持手段9として浮力体9bだけを用いる構成にすることもできる。本発明では、例えば、当接維持手段9として弾性部材9aと浮力体9bを両方用いる構成にすることもできる。また、当接維持手段9と、張った状態の吊り部材10により閉塞枠体8を支持した状態にする方法の組合せは、上記で例示した組合せに限定されず、適宜任意に組合せることができる。
【0070】
また、上部工1(プレキャストブロック2)の形状や大きさなどは、上記で例示した実施形態に限定されず、他にも様々な構成にすることができる。この実施形態では、1本の支持体40に固定される上部工1を構築する場合を例示したが、例えば、複数の貫通孔3を有するプレキャストブロック2を作製して、それぞれの貫通孔3に別々の支持体40を遊挿した状態にすることで、複数本の支持体40に渡って延在する上部工1を構築することも可能である。また、例えば、上面視でL字形や多角形状や円形状などの上部工1を構築することもできる。上記で例示した実施形態では、支持体40が杭である場合を例示したが、支持体40が矢板である場合にも同様の構築方法で同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 上部工
2 プレキャストブロック
3 貫通孔
4 ブロック体
5 鞘管
6 梁部材
6a 上側接続部
7 吊金具
8 閉塞枠体
8a すき間埋め部材
8b 介在部材
8c ヒンジ部
8d 連結部
8e 下側接続部
9 当接維持手段
9a 弾性部材
9b 浮力体
10 吊り部材
11 固定部
11a ヒンジ部
11b 連結部
12 接続部
12a ヒンジ部
12b 連結部
13 結束治具
14 締結金具
20 中詰材
20a 第一の中詰材
30 仕切板
40 支持体
WB 水底地盤
WL 水面位置