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特開2025-18908スピンベースの量子ドット量子ビットのためのナノ磁石
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025018908
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】スピンベースの量子ドット量子ビットのためのナノ磁石
(51)【国際特許分類】
   H10D 62/81 20250101AFI20250130BHJP
   B82Y 25/00 20110101ALI20250130BHJP
   B82Y 10/00 20110101ALI20250130BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20250130BHJP
【FI】
H01L29/06 601D
B82Y25/00
B82Y10/00
B82Y40/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024063905
(22)【出願日】2024-04-11
(31)【優先権主張番号】18/359,327
(32)【優先日】2023-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】523043898
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100163522
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 晋平
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 允辰
(72)【発明者】
【氏名】アントニオ・メイ
(72)【発明者】
【氏名】コリン・パトリック・フィーニー
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレリー・スメタンカ
(72)【発明者】
【氏名】マリアノ・ジョスエ・タボアダ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィン・ホ
(72)【発明者】
【氏名】ジャック・アーノルド・クロウェル・ザ・セカンド
(72)【発明者】
【氏名】ゴラム・サビル
(72)【発明者】
【氏名】イヴァン・ミロサヴリィェヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】ウォニル・ハ
(57)【要約】
【課題】スピンベースの量子ドット量子ビットを含む量子コンピューティングデバイスに関する。
【解決手段】各々が1つまたは複数の量子ドットを含む複数のスピンベースの量子ドット量子ビットを含む、量子コンピューティングデバイスが提供される。複数のスピンベースの量子ドット量子ビットは各々、アモルファス強磁性合金を含むナノ磁石も含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたは複数の量子ドットと、
アモルファス強磁性合金を含むナノ磁石と
を各々が含む、複数のスピンベースの量子ドット量子ビット
を備える、量子コンピューティングデバイス。
【請求項2】
前記アモルファス強磁性合金が、コバルト-鉄-ホウ素(CoFeB)合金である、請求項1に記載の量子コンピューティングデバイス。
【請求項3】
前記CoFeB合金は、Co1-xFeの組成を有し、0<x<1および0.2<y<1である、請求項2に記載の量子コンピューティングデバイス。
【請求項4】
前記複数のスピンベースの量子ドット量子ビットの各々は、複数の層のスタックを含み、前記スタックは、厚さ方向を有し、
前記ナノ磁石は、前記厚さ方向において前記1つまたは複数の量子ドットの上方に設けられた前記複数の層の層に位置する、
請求項1に記載の量子コンピューティングデバイス。
【請求項5】
前記複数のスピンベースの量子ドット量子ビットの各々が、第1の量子ドットおよび第2の量子ドットを含む二重量子ドット量子ビットである、請求項1に記載の量子コンピューティングデバイス。
【請求項6】
前記複数のスピンベースの量子ドット量子ビットの各々が、複数のバリアゲートをさらに含む、請求項1に記載の量子コンピューティングデバイス。
【請求項7】
前記複数のスピンベースの量子ドット量子ビットの各々が、複数のプランジャゲートをさらに含む、請求項1に記載の量子コンピューティングデバイス。
【請求項8】
前記複数のスピンベースの量子ドット量子ビットの各々が、1つまたは複数のシリコン層をさらに含む、請求項1に記載の量子コンピューティングデバイス。
【請求項9】
前記複数のスピンベースの量子ドット量子ビットの各々が、1つまたは複数のシリコンゲルマニウム(SiGe)合金層をさらに含む、請求項1に記載の量子コンピューティングデバイス。
【請求項10】
前記1つまたは複数の量子ドットがシリコンから形成される、請求項1に記載の量子コンピューティングデバイス。
【請求項11】
前記ナノ磁石がスパッタリングを介して形成される、請求項1に記載の量子コンピューティングデバイス。
【請求項12】
スピンベースの量子コンピューティングデバイスに含まれる1つまたは複数の量子ドットに外部磁場を印加するナノ磁石であって、前記ナノ磁石がアモルファス強磁性合金を含む、ナノ磁石。
【請求項13】
前記アモルファス強磁性合金が、コバルト-鉄-ホウ素(CoFeB)合金である、請求項12に記載のナノ磁石。
【請求項14】
前記CoFeB合金が、Co1-xFeの組成を有し、0<x<1および0.2<y<1である、請求項13に記載のナノ磁石。
【請求項15】
前記ナノ磁石は、厚さ方向において前記1つまたは複数の量子ドットの上方に設けられた前記スピンベースの量子コンピューティングデバイスの層に位置する、請求項12に記載のナノ磁石。
【請求項16】
前記ナノ磁石は、前記1つまたは複数の量子ドットに対して基板層の反対側に位置する、請求項15に記載のナノ磁石。
【請求項17】
前記ナノ磁石がスパッタリングを介して形成される、請求項12に記載のナノ磁石。
【請求項18】
基板層と、
厚さ方向において前記基板層の上方に位置するバッファ層と、
第1の量子ドットおよび第2の量子ドットが位置する量子井戸層であって、前記量子井戸層が前記厚さ方向において前記バッファ層の上方に位置する、量子井戸層と、
前記厚さ方向において前記量子井戸層の上方に位置する上部バリア層と、
前記厚さ方向において前記上部バリア層の上方に位置するゲート誘電体層と、
前記厚さ方向において前記ゲート誘電体層の上方に位置する複数のプランジャゲートおよび複数のバリアゲートと、
前記厚さ方向において前記複数のプランジャゲートおよび前記複数のバリアゲートの上方に位置するナノ磁石であって、前記ナノ磁石がアモルファス強磁性合金を含む、ナノ磁石と
を含む、スピンベースの量子ドット量子ビット。
【請求項19】
前記アモルファス強磁性合金が、コバルト-鉄-ホウ素(CoFeB)合金である、請求項18に記載のスピンベースの量子ドット量子ビット。
【請求項20】
前記CoFeB合金は、Co1-xFeの組成を有し、0<x<1および0.2<y<1である、請求項19に記載のスピンベースの量子ドット量子ビット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、量子コンピューティングの分野に関し、より具体的には、スピンベースの量子ドット量子ビットを含む量子コンピューティングデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
量子コンピューティングデバイスでは、量子ビットとして知られる量子状態で符号化された情報に対して計算が実行される。スピンベースの量子コンピューティングデバイスとして知られる、いくつかの量子コンピューティングデバイスでは、量子ビットは電荷キャリアのスピンで物理的にインスタンス化される。電荷キャリアは、半導体デバイスの電子または電子正孔であってもよい。スピンベースの量子コンピューティングデバイスにおいて量子ビットとして使用される電子または電子正孔は、量子ドットに閉じ込められる。量子計算が実行されるとき、量子ビットの量子状態は、電子または電子正孔のスピンに影響を及ぼすことによって修正される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示の一態様によれば、各々が1つまたは複数の量子ドットを含む複数のスピンベースの量子ドット量子ビットを含む、量子コンピューティングデバイスが提供される。複数のスピンベースの量子ドット量子ビットは各々、アモルファス強磁性合金を含むナノ磁石も含む。
【0004】
本開示の別の態様によれば、ナノ磁石が提供される。ナノ磁石は、スピンベースの量子コンピューティングデバイスに含まれる1つまたは複数の量子ドットに外部磁場を印加するように構成される。ナノ磁石は、アモルファス強磁性合金を含む。
【0005】
本開示の別の態様によれば、スピンベースの量子ドット量子ビットが提供される。スピンベースの量子ドット量子ビットは、第1の量子ドットおよび第2の量子ドットが位置する第1のシリコン層を含む。スピンベースの量子ドット量子ビットは、厚さ方向において第1のシリコン層の上方に位置するシリコンゲルマニウム(SiGe)合金層をさらに含む。スピンベースの量子ドット量子ビットは、厚さ方向においてSiGe合金層の上方に位置する第2のシリコン層をさらに含む。スピンベースの量子ドット量子ビットは、厚さ方向において第2のシリコン層の上方に位置する複数のプランジャゲートおよび複数のバリアゲートをさらに含む。スピンベースの量子ドット量子ビットは、厚さ方向において複数のプランジャゲートおよび複数のバリアゲートの上方に位置するナノ磁石をさらに含む。ナノ磁石は、アモルファス強磁性合金を含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】一例による、磁場強度の関数としての量子ドットのエネルギーレベルのエネルギーレベルプロットを示す図である。
図2A】一例による、量子ビットグリッドおよび測定デバイスを含む量子コンピューティングデバイスの一例示的な上面図である。
図2B図2Aの量子ビットグリッドをさらに詳細に示す図である。
図3図2Aの例による、スピンベースの量子ドット量子ビットの垂直断面図である。
図4A図2Aの例による、結晶性強磁性材料から形成された従来のナノ磁石の一部の一例示的な断面図である。
図4B図2Aの例による、アモルファス強磁性合金を含むナノ磁石の一部の一例示的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
スピンベースの量子コンピューティングデバイスは、電荷キャリアのスピンを測定するときにゼーマン効果を利用する。ゼーマン効果は、粒子が磁場にさらされたときに生じる荷電粒子のエネルギーレベルに対する効果である。図1は、磁場強度の関数としての量子ドットのエネルギーレベルのエネルギーレベルプロット10を示す。図1の例では、量子ドット内に電子が閉じ込められている。磁場が印加されると、量子ドット内に閉じ込められた電子のエネルギーEは、2つの異なるエネルギーレベルに分割される。これらのエネルギーレベルは、それぞれ、1/2のスピンおよび-1/2のスピンを有する電子に対応する。量子ドット内に閉じ込められた電子のスピンは、量子コンピューティングデバイスで量子計算を実行するために制御される。
【0008】
図2Aは、一例による、量子コンピューティングデバイス20の一部の一例示的な上面図を示す。量子コンピューティングデバイス20は、図2Aに示すように、複数の量子ビット22がインスタンス化される量子ビットグリッド21を含む。量子ビットグリッド21は、対応する量子ビット22に結合された複数の測定回路24を含む測定デバイス23に結合されている。したがって、測定回路24は、量子ビット22の量子状態を測定することによって量子ビットグリッド21で実行される量子計算の出力として古典ビットを取得するように構成される。量子ビットグリッド21で測定を行うことにより、量子ビット22の量子状態も量子アルゴリズムの実行中に修正される。いくつかの例では、測定回路24は、量子ドットとそれぞれの電荷リザーバとの間のトンネリングを測定するように構成される。他の例では、測定回路24は、量子ドットに閉じ込められた電子のスピン状態に対応する電荷状態を取得するように構成される。
【0009】
図2Aの例では、複数の量子ビット22は矩形グリッドに配置されているが、複数の量子ビット22は、他の量子コンピューティングデバイス構成では他の何らかのパターンで配置されてもよい。追加的または代替的に、複数の測定回路24の他の構成が、他の例示的な量子コンピューティングデバイスにおいて使用されてもよい。
【0010】
図2Bは、一例による、図2Aの量子ビットグリッド21をさらに詳細に示す。図2Bに示す量子ビットグリッド21において、複数の量子ビット22は、スピンベースの量子ドット量子ビットである。スピンベースの量子ドット量子ビット22は、各々1つまたは複数の量子ドットを含む。図1の例では、複数のスピンベースの量子ドット量子ビット22の各々は、第1の量子ドット25および第2の量子ドット26を含む二重量子ドット量子ビットである。他の例では、スピンベースの量子ドット量子ビット22は、単一量子ドット量子ビットであってもよい。
【0011】
図2Bの例示的な量子ビットグリッド21では、複数の電気リード27が第1の量子ドット25および第2の量子ドット26に電気的に結合されている。電気リード27は、第1の量子ドット25および第2の量子ドット26に電圧を印加するように構成されている。加えて、以下でさらに詳細に説明するように、複数のゲート電極29が電気リード27に設けられる。ゲート電極29は、第1の量子ドット25および第2の量子ドット26のエネルギーレベルを調整するために開閉されるように構成されている。
【0012】
図2Bに示す例示的な量子ビットグリッド21において、スピンベースの量子ドット量子ビット22は、それぞれのナノ磁石28をさらに含む。ナノ磁石28は、図2Bの例では、量子ビットグリッド21の表面の上方に設けられている。図2Bの例では、各量子ビット22は、その上に位置するそれぞれのナノ磁石28を有する。他の例では、複数の量子ビット22は共有ナノ磁石を有する。ナノ磁石28を介して、第1の量子ドット25および第2の量子ドット26は、図1を参照して上述したエネルギーレベル分割を生成する磁場にさらされる。
【0013】
いくつかの例では、量子コンピューティングデバイス20の製造中に、ナノ磁石28はスパッタ堆積を介して形成される。ナノ磁石28は、以下でさらに詳細に説明するように、ナノ磁石28に含まれる原子の磁気モーメントを整列させるために、スパッタ堆積が実行されるときに外部磁場にさらされ得る。
【0014】
図3は、一例による、量子コンピューティングデバイス20に含まれるスピンベースの量子ドット量子ビット22の垂直断面図を示す。図3の例では、スピンベースの量子ドット量子ビット22は、複数の層のスタックを含む。スタックの厚さ方向30が図3に示されている。
【0015】
複数の層は、1つまたは複数のシリコン層を含む。図3の例によれば、スピンベースの量子ドット量子ビット22は基板層31を含む。基板層は、例えば、シリコンから形成され、したがってシリコンを含み得る。
【0016】
スピンベースの量子ドット量子ビット22は、厚さ方向30において基板層31の上方に位置するバッファ層32をさらに含む。バッファ層は、シリコンゲルマニウム(SiGe)合金層であってもよく、これは、例えば、Si0.7Ge0.3の組成を有するSiGe合金を含んでもよい。他の例では、バッファ層32は、何らかの他の組成を有してもよい。バッファ層32は、スピンベースの量子ドット量子ビット22の層間の電子閉じ込めを提供する。
【0017】
スピンベースの量子ドット量子ビット22は、厚さ方向30においてバッファ層32の上方に位置する量子井戸層33をさらに含む。第1の量子ドット25および第2の量子ドット26は、量子井戸層33に位置している。例えば、量子井戸層33はシリコン層であってもよい。
【0018】
バッファ層32がSiGe合金層である例では、量子井戸層33の電子閉じ込めが材料の歪みと釣り合うように、ゲルマニウムに対するシリコンの比が選択される。電子閉じ込めは、ゲルマニウムのレベルが増加するにつれて増加する。材料の歪みは、シリコンのレベルが増加するにつれて減少し、それによってバッファ層32の転位密度を減少させる。上述の組成例Si0.7Ge0.3は、高レベルの電子閉じ込めと低転位密度の両方を提供する。
【0019】
図3に示すスピンベースの量子ドット量子ビット22は、厚さ方向30において量子井戸層の上方に位置する上部バリア層34をさらに含む。バッファ層32と同様に、上部バリア層34は、スピンベースの量子ドット量子ビット22の層間に電子閉じ込めを提供する。上部バリア層34は、SiGe層であってもよく、例えば、組成Si0.7Ge0.3を有してもよい。
【0020】
スピンベースの量子ドット量子ビット22は、厚さ方向30において上部バリア層34の上方に位置するゲート誘電体層35をさらに含む。ゲート誘電体層35は、電気リード27およびゲート電極29を上部バリア層34から絶縁する絶縁体である。例えば、ゲート誘電体層35は二酸化ケイ素(SiO)層であってもよい。
【0021】
スピンベースの量子ドット量子ビット22は、厚さ方向30においてゲート誘電体層35の上方に位置する複数の電極ゲートをさらに含む。複数のゲート電極29は、複数のプランジャゲート29Aおよび複数のバリアゲート29Bを含む。加えて、厚さ方向30において第2のシリコン層33の上方に、供給源リード27Aおよびドレインリード27Bが位置している。供給源リード27Aおよびドレインリード27Bは、量子ドットと電子供給源領域との間で電子が伝達される電気リードである。供給源リード27Aおよびドレインリード27Bは、それぞれ、量子ドットに電子を供給し、量子ドットから電子を受け取るように構成されている。電子供給源領域は、いくつかの例では、量子ビットグリッド21の注入領域である。
【0022】
図2Bを参照して上述したように、スピンベースの量子ドット量子ビット22は、厚さ方向30において複数のプランジャゲート29Aおよび複数のバリアゲート29Bの上方に位置するナノ磁石28をさらに含む。したがって、ナノ磁石28は、厚さ方向30において量子ドット25および26の上方に設けられた量子コンピューティングデバイス20の層に位置し、量子ドット25および26に対して基板層31の反対側に位置する。
【0023】
ナノ磁石28は、アモルファス強磁性合金を含む。図3の例に示すように、アモルファス強磁性合金は、コバルト-鉄-ホウ素(CoFeB)合金である。この例では、CoFeB合金はCo1-xFeの組成を有し、0<x<1および0.2<y<1である。
【0024】
ナノ磁石28の材料として元素材料ではなく合金を使用することにより、より強い磁場を達成することができる。図4Aは、結晶性強磁性材料から形成された従来のナノ磁石40の一部の一例示的な断面図を示す。例えば、従来のナノ磁石40は、結晶性コバルトナノ磁石であってもよい。従来のナノ磁石40は、製造中に外部磁場Bにさらされたときに示される。外部磁場Bは、従来のナノ磁石40に含まれる合金内の磁気モーメント42を整列させるために印加される。
【0025】
図4Aには、複数の結晶粒41が示されている。従来のナノ磁石40の結晶粒41は、結晶磁気異方性を示す。コバルトの結晶構造は六方晶であるため、従来のナノ磁石40の結晶粒41によって示される結晶磁気異方性は一軸性である。結晶粒41の各々内で、結晶コバルトはそれぞれの磁気容易軸43を有する。結晶粒41の各々に含まれる原子の磁気モーメント42は、外部磁場Bが印加されたときに、少なくとも一部が外部磁場Bと整列する。
【0026】
結晶コバルトナノ磁石の結晶粒41の磁気容易軸43は、典型的には、H<100 Oeの保磁力場強度を有する。各結晶粒41はまた、磁気容易軸43に垂直であり、典型的にはH>4000 Oeの保磁力場強度を有する磁気硬軸44を有する。加えて、磁気モーメント42の角度の変動に起因して、従来のナノ磁石40は不均一な磁場を生成する。
【0027】
図4Bは、図2Bのナノ磁石28の一部の一例示的な断面図を示す。図4Aの例と同様に、製造中に外部磁場Bが印加されたときのナノ磁石28が示されている。図4Bの例に示すように、ナノ磁石28はアモルファス強磁性合金で形成されているため、ナノ磁石28に含まれる原子の磁気モーメント45は、磁気容易軸方向に回転することなく、それ自体を外部磁場B方向に整列する。したがって、ナノ磁石28に含まれる原子の磁気モーメント45は、図4Aの従来のナノ磁石40よりも大きく外部磁場Bと整列する。したがって、図4Bのナノ磁石28は、従来のナノ磁石40が及ぼすよりも強い磁場を量子ドット25および26に及ぼす。量子コンピューティングデバイス20で実行される量子ビット動作中、量子ドットに印加される磁場は、典型的に、0.3Tから1Tの強度を有する。量子コンピューティングデバイス20で実行されるいくつかの実験では、最大印加磁場は5Tから10Tの強度に達する。
【0028】
スピンベースの量子コンピューティングデバイス20に含まれるナノ磁石28をCoFeBなどのアモルファス強磁性合金から形成すると、磁場強度が増加するため、ゼーマン効果による量子ドット25と量子ドット26とのエネルギーレベルの間の分割も増加する。いくつかの例では、ナノ磁石28は、ナノ磁石28のサイズがより小さいことを除いて、従来のナノ磁石40によって生成される磁場と同等の強度の磁場を生成する。このサイズ縮小により、スピンベースの量子ドット量子ビット22の全体サイズを縮小することが可能である。加えて、ナノ磁石28によって生成される磁場は結晶粒41の結晶軸から切り離されるため、ナノ磁石28は、図4Aの従来のナノ磁石40よりも均一な磁場を生成する。従来のナノ磁石40よりも強く、より均一な磁場を提供することにより、上述のナノ磁石28は、量子ドット25および26のスピンをより高い信頼性で制御することを可能にする。
【0029】
さらに、本開示は、以下の条項による構成を含む。
【0030】
条項1.各々が1つまたは複数の量子ドットおよびアモルファス強磁性合金を含むナノ磁石を含む、複数のスピンベースの量子ドット量子ビットを備える、量子コンピューティングデバイス。
【0031】
条項2.アモルファス強磁性合金が、コバルト-鉄-ホウ素(CoFeB)合金である、条項1の量子コンピューティングデバイス。
【0032】
条項3.CoFeB合金は、Co1-xFeの組成を有し、0<x<1および0.2<y<1である、条項2の量子コンピューティングデバイス。
【0033】
条項4.複数のスピンベースの量子ドット量子ビットの各々は、複数の層のスタックを含み、スタックは、厚さ方向を有し、ナノ磁石は、厚さ方向において1つまたは複数の量子ドットの上方に設けられた複数の層の層に位置する、条項1の量子コンピューティングデバイス。
【0034】
条項5.複数のスピンベースの量子ドット量子ビット22の各々が、第1の量子ドットおよび第2の量子ドットを含む二重量子ドット量子ビットである、条項1の量子コンピューティングデバイス。
【0035】
条項6.スピンベースの量子ドット量子ビットの各々が、複数のバリアゲートをさらに含む、条項1の量子コンピューティングデバイス。
【0036】
条項7.スピンベースの量子ドット量子ビットの各々が、複数のプランジャゲートをさらに含む、条項1の量子コンピューティングデバイス。
【0037】
条項8.スピンベースの量子ドット量子ビットの各々が、1つまたは複数のシリコン層をさらに含む、条項1の量子コンピューティングデバイス。
【0038】
条項9.スピンベースの量子ドット量子ビットの各々が、1つまたは複数のシリコンゲルマニウム(SiGe)合金層をさらに含む、条項1の量子コンピューティングデバイス。
【0039】
条項10.1つまたは複数の量子ドットがシリコンから形成される、条項1の量子コンピューティングデバイス。
【0040】
条項11.ナノ磁石がスパッタリングを介して形成される、条項1の量子コンピューティングデバイス。
【0041】
条項12.スピンベースの量子コンピューティングデバイスに含まれる1つまたは複数の量子ドットに外部磁場を印加するナノ磁石であって、ナノ磁石はアモルファス強磁性合金を含む。
【0042】
条項13.アモルファス強磁性合金が、コバルト-鉄-ホウ素(CoFeB)合金である、条項12のナノ磁石。
【0043】
条項14.CoFeB合金が、Co1-xFeの組成を有し、0<x<1および0.2<y<1である、条項13のナノ磁石。
【0044】
条項15.ナノ磁石は、厚さ方向において1つまたは複数の量子ドットの上方に設けられたスピンベースの量子コンピューティングデバイスの層に位置する、条項12のナノ磁石。
【0045】
条項16.ナノ磁石は、1つまたは複数の量子ドットに対して基板層の反対側に位置する、条項15のナノ磁石。
【0046】
条項17.ナノ磁石がスパッタリングを介して形成される、条項12のナノ磁石。
【0047】
条項18.基板層と、厚さ方向において基板層の上方に位置するバッファ層と、第1の量子ドットおよび第2の量子ドットが位置する量子井戸層であって、量子井戸層が厚さ方向においてバッファ層の上方に位置する、量子井戸層と、厚さ方向において量子井戸層の上方に位置する上部バリア層と、厚さ方向において上部バリア層の上方に位置するゲート誘電体層と、厚さ方向においてゲート誘電体層の上方に位置する複数のプランジャゲートおよび複数のバリアゲートと、厚さ方向において複数のプランジャゲートおよび複数のバリアゲートの上方に位置するナノ磁石であって、ナノ磁石がアモルファス強磁性合金を含む、ナノ磁石とを含む、スピンベースの量子ドット量子ビット。
【0048】
条項19.アモルファス強磁性合金が、コバルト-鉄-ホウ素(CoFeB)合金である、条項18のスピンベースの量子ドット量子ビット。
【0049】
条項20.CoFeB合金は、Co1-xFeの組成を有し、0<x<1および0.2<y<1である、条項19のスピンベースの量子ドット量子ビット。
【符号の説明】
【0050】
10 量子ドットのエネルギーレベルのエネルギーレベルプロット
20 量子コンピューティングデバイス
21 量子ビットグリッド
22 量子ビット
23 測定デバイス
24 測定回路
25 第1の量子ドット
26 第2の量子ドット
27 電気リード
27A 供給源リード
27B ドレインリード
28 ナノ磁石
29 ゲート電極
29A プランジャゲート
29B バリアゲート
30 厚さ方向
31 基板層
32 バッファ層
33 量子井戸層、第2のシリコン層
34 上部バリア層
35 ゲート誘電体層
40 磁石
41 結晶粒
42 磁気モーメント
43 磁気容易軸
44 磁気硬軸
45 磁気モーメント
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
【外国語明細書】