(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025018920
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】空中表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 30/56 20200101AFI20250130BHJP
G02B 5/128 20060101ALI20250130BHJP
G02B 5/00 20060101ALI20250130BHJP
H04N 13/302 20180101ALI20250130BHJP
H04N 13/346 20180101ALI20250130BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20250130BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20250130BHJP
G02B 5/124 20060101ALN20250130BHJP
【FI】
G02B30/56
G02B5/128
G02B5/00 Z
H04N13/302
H04N13/346
G09F9/30 398
G09F9/00 361
G09F9/30 349A
G09F9/00 313
G02B5/124
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024079380
(22)【出願日】2024-05-15
(31)【優先権主張番号】P 2023120552
(32)【優先日】2023-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】大原 知子
(72)【発明者】
【氏名】山田 敦
(72)【発明者】
【氏名】浜田 勝平
(72)【発明者】
【氏名】山本 裕紹
(72)【発明者】
【氏名】陶山 史朗
【テーマコード(参考)】
2H042
2H199
5C094
5G435
【Fターム(参考)】
2H042AA02
2H042AA04
2H042AA06
2H042AA26
2H042EA02
2H042EA07
2H042EA15
2H199BA32
2H199BA63
2H199BB10
2H199BB12
2H199BB13
2H199BB18
2H199BB20
2H199BB25
2H199BB27
2H199BB29
5C094AA51
5C094BA23
5C094CA01
5C094CA21
5C094ED02
5C094ED11
5C094ED14
5G435AA00
5G435BB04
5G435CC01
5G435CC11
5G435DD11
5G435FF02
5G435FF03
5G435FF05
5G435GG09
5G435GG11
5G435GG25
5G435GG27
5G435LL03
5G435LL18
(57)【要約】
【課題】複数のパターンの空中像を切り替えて表示することができ、表示内容に多様性をもたせることができる空中表示装置を提供すること。
【解決手段】実施形態の空中表示装置は、面状発光体と、フィルタ部と、再帰反射シートと、ハーフミラーまたは偏光シートとを備える。前記面状発光体は、ピーク波長が異なる複数色の可視光を発光可能である。前記フィルタ部は、前記面状発光体の出射面側に配置され、前記複数色の可視光のいずれかまたは複数を透過する複数の塗料により空中表示する複数の図形が表される。前記再帰反射シートは、前記フィルタ部の出射面側に配置され、前記フィルタ部の図形をカバーする範囲に設けられた貫通孔を有する。前記ハーフミラーまたは前記偏光シートは、前記再帰反射シートの出射面側に配置される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピーク波長が異なる複数色の可視光を発光可能な面状発光体と、
前記面状発光体の出射面側に配置され、前記複数色の可視光のいずれかまたは複数を透過する複数の塗料により空中表示する複数の図形が表されたフィルタ部と、
前記フィルタ部の出射面側に配置され、前記フィルタ部の図形をカバーする範囲に設けられた貫通孔を有する再帰反射シートと、
前記再帰反射シートの出射面側に配置されたハーフミラーまたは当該ハーフミラーに代えて設けられた偏光シートと、
を備える空中表示装置。
【請求項2】
前記フィルタ部は、空中表示する図形の周囲が塗料で塗りつぶされたポジ形式、または、空中表示する図形の内部が塗料で塗りつぶされたネガ形式である、
請求項1に記載の空中表示装置。
【請求項3】
前記貫通孔は、前記フィルタ部の図形をカバーする範囲に設けられる一つの貫通孔である、
請求項1に記載の空中表示装置。
【請求項4】
前記貫通孔は、前記フィルタ部の図形をカバーする範囲に密集して設けられる複数の貫通孔である、
請求項1に記載の空中表示装置。
【請求項5】
前記フィルタ部の図形のエッジは、前記貫通孔の開口に露出するよう配置される、
請求項4に記載の空中表示装置。
【請求項6】
前記複数の貫通孔は、格子状配置、放射状配置、格子状配置の1列ごとの縦方向ズレ配置、格子状配置の1行ごとの横方向ズレ配置のいずれかである、
請求項4に記載の空中表示装置。
【請求項7】
前記面状発光体の可視光に視感度の低い波長が用いられる場合、前記フィルタ部を透過可能な視感度の高い波長の可視光を併用する、
請求項1に記載の空中表示装置。
【請求項8】
前記面状発光体の可視光には色弱者に視認しやすい波長を含める、
請求項1に記載の空中表示装置。
【請求項9】
前記面状発光体の可視光の発生にRGB発光ダイオードを用いる場合、全点灯時に白色となる発光強度に代えて、発光色ごとに視認性に基づいて発光強度を調整する、
請求項1に記載の空中表示装置。
【請求項10】
前記フィルタ部は、前記複数の図形として、前記複数の塗料のうち透過性が異なる2つの塗料それぞれにより表され、互いに所定距離離間した2つの図形を有する、
請求項1に記載の空中表示装置。
【請求項11】
前記フィルタ部は、前記所定距離に相当する厚みを有する透明な板部材であり、当該板部材の2つの主面のそれぞれに前記2つの図形のそれぞれが形成される、
請求項10に記載の空中表示装置。
【請求項12】
前記フィルタ部は、前記2つの図形のそれぞれが表された2つのフィルタシートを含む、
請求項10に記載の空中表示装置。
【請求項13】
前記2つの図形は、特定の視点位置から見た場合に特定の図形となるように各々の図形が形成される、
請求項10に記載の空中表示装置。
【請求項14】
特定のピーク波長を有する可視光を発光可能な面状発光体と、
前記面状発光体の出射面側に配置され、前記可視光を透過しない塗料により空中表示する複数の図形が表されたフィルタ部と、
前記フィルタ部の出射面側に配置され、前記フィルタ部の図形をカバーする範囲に設けられた貫通孔を有する再帰反射シートと、
前記再帰反射シートの出射面側に配置されたハーフミラーまたは当該ハーフミラーに代えて設けられた偏光シートとを備え、
前記複数の図形のうち2つの図形は、互いに所定距離離間した位置に配置され、特定の視点位置から見た場合に特定の図形となるように各々の図形が形成される、
空中表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空中表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、再帰反射シートやハーフミラーが用いられ、空中に画像を結像させる空中表示装置が提案されている(例えば、特許文献1、2等を参照)。
【0003】
また、出願人は、空中表示する図形を表した貫通孔を有する再帰反射シートを用いた空中表示装置を提案している(例えば、特許文献3等を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-81138号公報
【特許文献2】特開2017-107165号公報
【特許文献3】国際公開第2022/190493号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、空中表示する図形を表した貫通孔を有する再帰反射シートを用いた空中表示装置においては、貫通孔のパターンにより空中表示の空中像が固定されてしまい、表示内容に多様性をもたせることができないという問題があった。すなわち、空中表示の空中像を変えるには、装置を分解し、異なる貫通孔のパターンが設けられた再帰反射シートに交換しなければならなかった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、複数のパターンの空中像を切り替えて表示することができ、表示内容に多様性をもたせることができる空中表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係る空中表示装置は、面状発光体と、フィルタ部と、再帰反射シートと、ハーフミラーまたは偏光シートとを備える。前記面状発光体は、ピーク波長が異なる複数色の可視光を発光可能である。前記フィルタ部は、前記面状発光体の出射面側に配置され、前記複数色の可視光のいずれかまたは複数を透過する複数の塗料により空中表示する複数の図形が表される。前記再帰反射シートは、前記フィルタ部の出射面側に配置され、前記フィルタ部の図形をカバーする範囲に設けられた貫通孔を有する。前記ハーフミラーまたは前記偏光シートは、前記再帰反射シートの出射面側に配置される。
【0008】
本発明の一態様に係る空中表示装置は、複数のパターンの空中像を切り替えて表示することができ、表示内容に多様性をもたせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一実施形態にかかる空中表示装置の構成例を示す、表示面側から見た図である。
【
図3】
図3は、ポジ形式によるフィルタシートの例を示す図である。
【
図4】
図4は、ネガ形式によるフィルタシートの例を示す図である。
【
図5A】
図5Aは、
図3のポジ形式によるフィルタシートに第1の波長λ1の光が照射された場合の例を示す図である。
【
図5B】
図5Bは、
図3のポジ形式によるフィルタシートに第2の波長λ2の光が照射された場合の例を示す図である。
【
図6A】
図6Aは、
図4のネガ形式によるフィルタシートに第1の波長λ1の光が照射された場合の例を示す図である。
【
図6B】
図6Bは、
図4のネガ形式によるフィルタシートに第2の波長λ2の光が照射された場合の例を示す図である。
【
図7】
図7は、正面視対策として再帰反射シートに小さな円形の複数の貫通孔が格子状に設けられた例を示す図である。
【
図8】
図8は、再帰反射シートに小さな複数の貫通孔が設けられた場合に空中表示の視認性を高める例を示す図である。
【
図9A】
図9Aは、再帰反射シートに設けられる小さな複数の貫通孔の例を示す図(1)である。
【
図9B】
図9Bは、再帰反射シートに設けられる小さな複数の貫通孔の例を示す図(2)である。
【
図9C】
図9Cは、再帰反射シートに設けられる小さな複数の貫通孔の例を示す図(3)である。
【
図9D】
図9Dは、再帰反射シートに設けられる小さな複数の貫通孔の例を示す図(4)である。
【
図9E】
図9Eは、再帰反射シートに設けられる小さな複数の貫通孔の例を示す図(5)である。
【
図10】
図10は、ポジ形式のフィルタシートによる内側点灯、ネガ形式のフィルタシートによる外側点灯、再帰反射シートの貫通孔のタイプによる空中表示の違いの例を示す図である。
【
図11】
図11は、波長に対する人の視感度の例を示す図である。
【
図12】
図12は、フィルタシートに塗布される塗料、内側点灯、外側点灯、光源の発光色による空中表示の違いの例を示す図である。
【
図14A】
図14Aは、フィルタ部に特定波長の光が照射された場合の例を示す図である。
【
図14B】
図14Bは、フィルタ部に特定波長の光が照射された場合の例を示す図である。
【
図15】
図15は、一変形例にかかる空中表示装置の応用例を示す図である。
【
図16】
図16は、一変形例にかかる空中表示装置の構成例を示す図である。
【
図18A】
図18Aは、視点位置による見え方の違いについて説明するための図である。
【
図18B】
図18Bは、視点位置による見え方の違いについて説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態に係る空中表示装置について図面を参照して説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面における各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。また、1つの実施形態や変形例に記載された内容は、原則として他の実施形態や変形例にも同様に適用される。
【0011】
図1は、一実施形態にかかる空中表示装置1の構成例を示す、表示面側から見た図である。
図2は、
図1におけるX-X断面図である。なお、
図1および
図2における空中表示装置1は、個室トイレ内の壁面等に設置される操作パネルに採用されることが想定されており、表示面が水平方向を向いている(表示面は垂直面内に設置されている)。なお、空中表示装置1が使用される対象は個室トイレの操作パネル等に限定されない。
【0012】
図1および
図2において、空中表示装置1は、略矩形状の開口2aが形成されたフレーム2内に、面状発光体を構成する光源3と導光板4とが、空中表示を行う図形(切替可能な複数の図形が重ねられた図形)ごとに配置されている。光源3は、導光板4の入光側面4aの長手方向(X軸方向)に沿って空中表示を行う図形の幅内で線状に発光する光源であり、ピーク波長が異なる複数色の可視光を発光可能になっている。例えば、RGB(Red Green Blue)の各LEDチップが設けられたRGB発光ダイオードが線状に並べられ、各LEDチップへの電源供給が個別に制御可能になっている。
【0013】
導光板4は、ポリカーボネートやアクリル等の透明材料により形成され、入光側面4aから入射された光を終端側まで導き、裏面(非表示面)側に設けられた、微細なプリズム等による光学素子により形成される発光部4bにより略表示面側(Z軸正方向側)に光を反射する。導光板4は、入射側から終端側に向かって厚みが減少するように形成されてもよい。導光板4の出射面側には配光を調整するためのプリズムシート14が配置されている。
【0014】
なお、この構成例では、発光部4bの光学素子やプリズムシート14の配光の調整により、表示面側のアイポイントEPが存在しない方向(
図2における左斜め下側)に光を出射し、アイポイントEPが存在する所定方向に出射する光を抑制するようにしている。アイポイントEPは、ユーザが目視することが想定される位置である。
【0015】
また、フレーム2の非表示面側には、開口2aを覆うように、反射シート8が配置されており、導光板4から背面側へ漏れる光を導光板4に戻すことで、光効率を高め、輝度を高めている。なお、フレーム2の非表示面側に開口2aはなくてもよく(底板で塞がれていてもよい)、導光板4の非表示面側に反射シート8が設けられていればよい。
【0016】
また、プリズムシート14の出射面側には、導光板4から出射される複数色の可視光のいずれかまたは複数を透過する複数の塗料により空中表示する複数の図形が表されたフィルタシート31が配置されている。フィルタシート31には、いずれの塗料も塗布されずに、全ての光を透過する部分も含まれている。なお、フィルタシート31は、フィルタ部の一例である。
【0017】
また、フィルタシート31の出射面側には、フィルタシート31の図形(切替可能な複数の図形が重ねられた図形)をカバーする範囲に設けられた貫通孔5aを有する再帰反射シート5が、再帰反射面を出射面側(導光板4とは反対側)に向けて配置されている。図示の例では、貫通孔5aはフィルタシート31の図形をカバーする範囲に設けられる一つ(
図1では横に並んだ4個の図形のそれぞれに対して一つ)の矩形状の貫通孔となっている。
【0018】
再帰反射シート5は、入射された光を同じ経路で出射(入射角と出射角が同じ)する性質を有したシートである。再帰反射シート5としては、光を反射する性質を持った3枚の面が互いに直角に組み合わされた、立方体の頂点の内面(コーナーキューブ)を利用したものを使用することができる。この場合、コストは若干高くなるが、光利用効率が高く、空中表示(空中像)のボケが少なくなるという利点がある。また、透明の微小なガラスビーズ球などが表面に隙間なく配置されたものも再帰反射シート5として使用することができる。この場合、安価であるが、性能は劣る。
【0019】
また、フレーム2の表示面側には、開口2aを覆うようにハーフミラー6が配置され、ハーフミラー6にはトップカバー7が外側に重ねられている。なお、ハーフミラー6の外側(視認側)にハードコート処理を施すことにより、トップカバー7を省略することもできるが、ハーフミラー6はフィルム状であるため、支持用の透明樹脂板が必要となる。なお、ハードコート処理は、傷防止や汚れ防止、抗菌などを目的として施されるものであり、トップカバー7が外側に配置される場合でも、トップカバー7の外側にハードコート処理を施すのが好ましい。
【0020】
ハーフミラー6は、入射された光の半分程度を反射し、残りの半分程度を透過させる性質を有した光学部材である。トップカバー7は、透明材料により形成され、ハーフミラー6を保護するためのものである。なお、トップカバー7の透過度を下げることにより、外部から空中表示装置1の内部が見えづらくなり、空中表示だけを見やすくすることができる。また、再帰反射シート5とハーフミラー6とは、図示の例では平行に配置されているが、互いに少し傾けて配置されるものであってもよい。
【0021】
図2において、光源3は表示する図形に応じて発光する可視光の波長(発光色)を切り替える。光源3から出て導光板4の入光側面4aを通り発光部4bから出射側に向かって出た光は、プリズムシート14によって配光が調整された後、フィルタシート31に入射する。フィルタシート31は、前述のように複数色の可視光のいずれかまたは複数を透過する複数の塗料により空中表示する複数の図形が表されているため、入射した光は、入射した光の波長を通過させる塗料の部分と、いずれの塗料も塗布されていない部分とを通過する。
【0022】
フィルタシート31を通過した光は、再帰反射シート5の貫通孔5aを通って例えば経路L1で出る。この光は、半分程度がハーフミラー6で反射され、経路L2により再帰反射シート5に当たる。再帰反射シート5に当たった光は、入射角と同じ出射角で経路L3によりハーフミラー6に戻り、半分程度が透過する。貫通孔5aのある点から出た光は、経路L1の角度が変わっても幾何学的な関係から空中表示装置1外の同じ位置を通過するため、ハーフミラー6およびトップカバー7の外側に空中像による空中表示Iが行われ、ユーザのアイポイントEPから視認することができ、ユーザに指Fにより触れる動作を行わせることができる。光源3から発光する可視光の波長を切り替えることにより、フィルタシート31を光が通過できる部分が変わるため、空中表示Iとしては異なる図形が異なる波長(発光色)で表示される。
【0023】
なお、
図1および
図2は原理的な構成を示しており、空中像の視認性を低下させる不要像を低減させたり、空中像の輝度を高めたりするために、種々の追加・変更が可能である。例えば、ハーフミラー6に代えて反射型偏光シートが設けられ、再帰反射シート5の出射面側に位相差シートが設けられ、フィルタシート31と再帰反射シート5との間に出射側の反射型偏光シートとは透過軸が直交する他の反射型偏光シートが設けられるようにしてもよい(偏光構成)。
【0024】
なお、偏光構成の場合、フィルタシート31により偏光状態が乱れる(PET材によりフィルタシート31が作成される場合に偏光が乱れる)ことを想定してフィルタシート31の出射面側に反射型偏光シートが設けられるとしたが、フィルタシート31により偏光が乱れない場合は、フィルタシート31の光源側に反射型偏光シートが設けられてもよい。また、上記の2枚の反射型偏光シートとは別に、あるいは上記の2枚の反射型偏光シートとともに、フィルタシート31の光源側または出射面側に斜め左下方向の光を通過させるルーバーシートが設けられてもよい。
【0025】
図3は、ポジ形式によるフィルタシート31の例を示す図である。ポジ形式は、丸や四角といった図形の内部が空中像として発光する形式であり、内側点灯に対応する。
図3において、例えば四角い枠P1-1と、同じく四角い図形枠P1-2とに囲まれた領域が第1のピーク波長λ1の光(例えば赤色光)を透過して第2のピーク波長λ2の光(例えば青色光)を透過しない塗料で塗りつぶされたフィルタパターンP1と、例えば四角い枠P2-1と、丸い図形枠P2-2とに囲まれた領域が第2のピーク波長λ2の光(例えば青色光)を透過して第1のピーク波長λ1の光(例えば赤色光)を透過しない塗料で塗りつぶされたフィルタパターンP2とが重ね合わされてフィルタシート31が形成されている。具体的には、透明シート上にフィルタパターンP1とフィルタパターンP2とがそれぞれ異なる塗料で重ねて印刷等により塗布されることでフィルタシート31が形成される。
【0026】
フィルタシート31の中央の丸い領域31aはいずれの塗料も塗布されていないためいずれの波長の光も透過し、その外側の領域31bは第2のピーク波長λ2の光(例えば青色光)を透過して第1のピーク波長λ1の光(例えば赤色光)を透過せず、その外側の領域31cは第1のピーク波長λ1の光(赤色光)も第2のピーク波長λ2の光(青色光)も透過させない。なお、更に外側の領域31dは再帰反射シート5の貫通孔5aのない部分により遮断されるため、考慮する必要がない。
【0027】
図4は、ネガ形式によるフィルタシート31の例を示す図である。ネガ形式は、丸や四角といった図形の外部が空中像として発光する形式であり、外側点灯に対応する。
図4において、例えば四角い図形枠P1-2の内部の領域が第1のピーク波長λ1の光(例えば赤色光)を透過して第2のピーク波長λ2の光(例えば青色光)を透過しない塗料で塗りつぶされたフィルタパターンP1と、例えば丸い図形枠P2-2の内部の領域が第2のピーク波長λ2の光(例えば青色光)を透過して第1のピーク波長λ1の光(例えば赤色光)を透過しない塗料で塗りつぶされたフィルタパターンP2とが重ね合わされてフィルタシート31が形成されている。なお、四角い枠P1-1、P2-1は、フィルタパターンP1、P2の外縁を示しているが、省略してもかまわない。
【0028】
フィルタシート31の中央の丸い領域31aは第1のピーク波長λ1の光(例えば赤色光)も第2のピーク波長λ2の光(例えば青色光)も透過させず、その外側の領域31bは第1のピーク波長λ1の光(例えば赤色光)を透過して第2のピーク波長λ2の光(例えば青色光)を透過せず、その外側の領域31cはいずれの塗料も塗布されていないためいずれの波長の光も透過する。なお、更に外側の領域31dは再帰反射シート5の貫通孔5aのない部分により遮断されるため、考慮する必要がない。
【0029】
図5Aは、
図3のポジ形式によるフィルタシート31に第1の波長λ1の光が照射された場合の例を示す図である。この場合、中央の領域31aは第1のピーク波長λ1の光(例えば赤色光)を透過する。領域31b、31cは第1のピーク波長λ1の光(例えば赤色光)を透過しない。そのため、透過するのは中央の丸い図形の部分の光となる。これが、
図2で説明された仕組みにより空中表示Iの空中像となり、第1のピーク波長λ1の光(例えば赤色光)で発光する。
【0030】
図5Bは、
図3のポジ形式によるフィルタシート31に第2の波長λ2の光が照射された場合の例を示す図である。この場合、領域31a、31bは第2のピーク波長λ2の光(例えば青色光)を透過する。領域31cは第2のピーク波長λ2の光(例えば青色光)を透過しない。そのため、透過するのは中央の四角い図形の部分の光となる。これが、
図2で説明された仕組みにより空中表示Iの空中像となり、第2のピーク波長λ2の光(例えば青色光)で発光する。
【0031】
図6Aは、
図4のネガ形式によるフィルタシート31に第1の波長λ1の光が照射された場合の例を示す図である。この場合、中央の領域31aは第1のピーク波長λ1の光(例えば赤色光)を透過しない。領域31b、31cは第1のピーク波長λ1の光(例えば赤色光)を透過する。そのため、透過するのは中央の丸い図形の外側の部分の光となる。これが、
図2で説明された仕組みにより空中表示Iの空中像となり、第1のピーク波長λ1の光(例えば赤色光)で発光する。
【0032】
図6Bは、
図4のネガ形式によるフィルタシート31に第2の波長λ2の光が照射された場合の例を示す図である。この場合、領域31a、31bは第2のピーク波長λ2の光(例えば青色光)を透過しない。領域31cは第2のピーク波長λ2の光(例えば青色光)を透過する。そのため、透過するのは中央の四角い図形の外側の部分の光となる。これが、
図2で説明された仕組みにより空中表示Iの空中像となり、第2のピーク波長λ2の光(例えば青色光)で発光する。
【0033】
なお、2つのピーク波長λ1、λ2の光の切り替えにより2つの図形を空中像として表示する場合について説明したが、光のピーク波長の種類を増やし、フィルタシート31に塗布する塗料の種類を増やすことにより、3以上の図形を空中像として表示することができる。
【0034】
次に、正面視対策について説明する。すなわち、
図2の構成から明らかなように、アイポイントEPよりも低い正面に近い位置から空中表示装置1が視認された場合、再帰反射シート5の貫通孔5aから出た光は再帰反射シート5の貫通孔5aに戻ってしまい、貫通孔5a以外の部分で反射しにくくなるため、視認できる空中像ができにくくなる。その対策として、再帰反射シート5の貫通孔5aとして、フィルタシート31の図形をカバーする範囲に密集して設けられる複数の貫通孔5aとすることが望ましい。この場合、フィルタシート31の図形の光は再帰反射シート5の複数の貫通孔5aから不連続に出ることになるが、再帰反射シート5の貫通孔5a以外の部分で再帰反射が行われやすくなるため、空中像ができやすくなる。
図7は、正面視対策として再帰反射シート5に小さな円形の複数の貫通孔5aが格子状に設けられた例を示す図である。
【0035】
次に、再帰反射シート5に密集した複数の貫通孔5aが設けられた場合における視認性向上について説明する。すなわち、再帰反射シート5の複数の貫通孔5aからフィルタシート31の図形の光が不連続に出射するため、貫通孔5aと図形との位置関係によっては図形が正常に認識されないおそれがある。すなわち、通過できる発光色が変わるようなフィルタシート31の図形の境界部分(エッジ)が再帰反射シート5によって隠れて欠ける部分が多いと、図形の特徴が認識しづらくなる場合がある。
【0036】
図8は、再帰反射シート5に小さな複数の貫通孔5aが設けられた場合に空中表示の視認性を高める例を示す図である。図形が視認されやすくするために、フィルタシート31の図形のエッジは、再帰反射シート5の貫通孔5aの開口から露出するよう配置されるのが望ましい。
図8では、
図3のフィルタシート31の場合を例として空中像に対応する図形の左上の角部分を示しているが、再帰反射シート5の貫通孔5a1、5a2、5a3には2つのフィルタパターンP1、P2の塗料の重なりが変化する部分や透過部分(塗料のない部分)のエッジが露出している。エッジが貫通孔5a1、5a2、5a3の開口から露出することで、見た者が図形を補間もしくは外挿して認識するため、隠れている部分が補われる。特に、外側点灯ではその傾向が強くなる。
【0037】
図9A~
図9Eは、再帰反射シート5に設けられる小さな複数の貫通孔5aの例を示す図である。
図9Aは、再帰反射シート5に貫通孔5aが格子状に配置されたものではあるが、
図7よりも貫通孔5aの径が大きく、数が少なく(3×3)なっている。
図9Bは、再帰反射シート5に貫通孔5aが放射状に配置されたものである。
図9Cは、再帰反射シート5に貫通孔5aが格子状に配置されたものではあるが、
図9Aよりも貫通孔5aの径が小さく、
図9Aよりも数が多く(5×5)なっている。
図9Dは、
図9Bと貫通孔5aの径は同じであるが、格子状の配置に変形が加えられ、縦方向に延びる1列ごとに縦方向に半ピッチだけ貫通孔5aがズレて配置されている。
図9Eは、
図9B(
図9D)と貫通孔5aの径は同じであるが、格子状の配置に変形が加えられ、横方向に延びる1行ごとに横方向に半ピッチだけ貫通孔5aがズレて配置されている。
図9Dまたは
図9Eの再帰反射シート5は、図形の縦線部分や横線部分が貫通孔5aの開口に露出しやすくなるため、
図8と同様に視認性を向上させる観点から望ましい。
【0038】
図10は、ポジ形式のフィルタシート31による内側点灯、ネガ形式のフィルタシート31による外側点灯、再帰反射シート5の貫通孔5aのタイプによる空中表示の違いの例を示す図である。それぞれの写真中、中央よりやや上側の黒い四角や密集した小さい黒い点は再帰反射シート5の貫通孔5aであり、その下の白い丸や四角や密集した白い点は空中像である。なお、写真から分かるように、「再帰反射シート 貫通孔」のうち、「格子」、「放射状」、「縦ズレ」および「横ズレ」は、貫通孔5aの大きさは互いに同じである。「3×3」および「5×5」は、貫通孔5aの大きさは互いに同じであるが、同じ格子状配置の「格子」に比べて大きい。また、「再帰反射シート 貫通孔」の「5×5」の空中像の回りに四角い枠が空中像として表示されているが、これはフィルタシート31のパターンが小さく、外側に透過領域が形成されたことによるものであって、本来の空中像の一部ではない。視認性の観点からは、「外側点灯」で、「格子」、「縦ズレ」または「横ズレ」が望ましい。ただし、「3×3」と「5×5」の視認性が「格子」に比べて劣っていたことから、いずれのタイプにおいても、見た者が図形を補間もしくは外挿して認識できる程度の貫通孔5aの数や大きさが必要であると言える。
【0039】
次に、波長による視認性の違いへの対策について説明する。
図11は、波長に対する人の視感度の例を示す図であり、555nm付近が最も視感度が高いとされている。例えば、
図3または
図4のフィルタシート31に対して光源として用いる2つのピーク波長の光として、赤色光と青色光とを用いた場合、青色光の波長は例えば465nmであり、555nmよりも波長が短く、視感度が低いため、視認性が低下してしまう。そのため、そのような視感度の低い波長が光源として用いられる場合、フィルタシート31を透過可能な範囲で視感度の高い波長の可視光を併用することが望ましい。例えば、RGB発光ダイオードを用いる場合、点灯に既に用いられている赤色光と青色光の他に緑色光が更に利用可能であり、緑色光の波長は例えば522nmであり、青色光よりも視感度が高いため、緑色光を青色光と同時に点灯させることで、視認性を向上させることができる。
【0040】
図12は、フィルタシート31に塗布される塗料、内側点灯、外側点灯、光源の発光色による空中表示の違いの例を示す図である。フィルタシート31についての「RB」は赤色光(R)を透過させる(青色光を透過させない)塗料と、青色光(B)を透過させる(赤色光を透過させない)塗料とを用いていることを示し、「RG」は赤色光(R)を透過させる(青色光、緑色光を透過させない)塗料と、緑色光(G)を透過させる(赤色光を透過させない)塗料とを用いていることを示している。「内側点灯 赤」は内側点灯の図形で光源から赤色光を点灯させていることを示し、「内側点灯 青」は内側点灯の図形で光源から青色光を点灯させていることを示し、「内側点灯 青+緑」は内側点灯の図形で光源から青色光と緑色光とを同時点灯させていることを示している。「外側点灯」についても同様である。
図12から明らかなように、主に青色で発光する四角い図形については「内側点灯 青+緑」と「外側点灯 青+緑」とが、空中像の視認性が高い。
【0041】
なお、上記の例において、視感度が高い緑色光を用いる場合に青色光を省略してもよいように考えられるが、それは望ましくない。色弱者には緑色光を視認しづらい者もいるため、色弱者にも認識しやすい青色光を残しておく必要がある。
【0042】
次に、面状発光体の可視光の発生にRGB発光ダイオードを用いる場合の明るさの調整について説明する。一般に、RGB発光ダイオードを用いる場合、R、G、Bの全点灯時に白色となるように、それぞれのLEDチップの発光強度が調整される。しかし、そのような調整によると、各色光の視感度の違いから視認性に差が出てしまう。そのため、全点灯時に白色となる発光強度に代えて、発光色ごとに視認性に基づいて発光強度を調整することが望ましい。
【0043】
(空中像の奥行表現1)
上記の実施形態では、薄いフィルタシート31に対して複数色の塗料を塗布することで、複数のパターンの空中像を切り替えて表示する場合を説明したが、厚みのあるフィルタ部(透明厚板)の表裏に対して複数色の塗料を塗布することで、複数のパターンの空中像の結像位置の奥行を異ならせることが可能である。
【0044】
【0045】
図13Aに示すように、一変形例にかかる空中表示装置1は、フレーム2、光源3、導光板4、再帰反射シート5、ハーフミラー6、トップカバー7、反射シート8、プリズムシート14、およびフィルタ部32を備える。
図13Aに示すフレーム2、光源3、導光板4、再帰反射シート5、ハーフミラー6、トップカバー7、反射シート8、およびプリズムシート14は、上記の実施形態で説明した同符号の各構成と同一であるので、説明を省略する。また、
図13Aには、
図2と同様にビームスプリッターとしてハーフミラー6が適用される場合を例示するが、上述した偏光構成が適用されてもよい。
【0046】
フィルタ部32は、透過性が異なる2つの塗料それぞれにより表された2つの図形が、2つの主面それぞれに形成された透明な板部材であり、本実施形態では、光透過性を有するポリカーボネート、アクリル等の樹脂材料によって構成される。フィルタ部32は、所定の厚み(後述するΔLに相当)を有し、面32aおよび面32bそれぞれに図形が形成される。なお、フィルタ部32の厚みは、空中像を閲覧する者が奥行(空中像Iaおよび空中像Ibの位置の違い)を視認できる程度の距離が好適であり、5mm以上であるのが更に好適である。
【0047】
図13Bに示すように、フィルタ部32の入射側の面32aには図形パターン32cが形成される。図形パターン32cは、例えば上記のフィルタパターンP1と同じ形状、同じ塗料で印刷等により塗布されることで形成される。つまり、フィルタ部32の面32aは、第1のピーク波長λ1の光(例えば赤色光)を透過して第2のピーク波長λ2の光(例えば青色光)を透過しない塗料で形成された、ポジ形式による光学フィルタに相当する。
【0048】
図13Cに示すように、フィルタ部32の出射側の面32bには図形パターン32dが形成される。図形パターン32dは、例えば上記のフィルタパターンP2と同じ形状、同じ塗料で印刷等により塗布されることで形成される。つまり、フィルタ部32の面32bは、第2のピーク波長λ2の光(例えば青色光)を透過して第1のピーク波長λ1の光(例えば赤色光)を透過しない塗料で形成された、ポジ形式による光学フィルタに相当する。
【0049】
なお、図形パターン32cおよび図形パターン32dは、同一(共通)の形状であってもよく、例えば双方とも丸い図形であってもよい。
【0050】
図14Aおよび
図14Bは、フィルタ部32に特定波長の光が照射された場合の例を示す図である。
図14Aには、第1のピーク波長λ1(例えば赤色光)の光が照射された場合を例示する。
図14Bには、第2のピーク波長λ2(例えば青色光)の光が照射された場合を例示する。
【0051】
図14Aの例では、図形パターン32cは第1のピーク波長λ1の光(例えば赤色光)を透過し、図形パターン32dは透過しない。このため、透過するのは図形パターン32dに形成された中央の丸い図形の部分の光となる。これが、
図2で説明された仕組みにより空中像Ibとなり、第1のピーク波長λ1の光(例えば赤色光)で発光する。
【0052】
図14Bの例では、図形パターン32cは第2のピーク波長λ2の光(例えば青色光)を透過せず、図形パターン32dは透過する。このため、透過するのは図形パターン32cに形成された中央の四角い図形の部分の光となる。これが、
図2で説明された仕組みにより空中像Iaとなり、第2のピーク波長λ2の光(例えば青色光)で発光する。
【0053】
ここで、フィルタ部32は所定の厚みを有するので、図形パターン32cおよび図形パターン32dは互いに所定距離(例えばΔL)離間して配置されるため、空中像Iaおよび空中像Ibも互いに所定距離(例えばΔL)離間して形成される。なお、空中像Iaおよび空中像Ibは同時に表示されないため、空中像Iaが形成される位置Paおよび空中像Ibが形成される位置Pbをそれぞれ図示することにより、互いの空中像の間隔を図示している。
【0054】
なお、空中像が形成される位置は、図形パターンからビームスプリッターまでの距離に依存する。このため、ビームスプリッターから近い位置にある図形パターン32dは、ビームスプリッターから近い位置Pb(アイポイントEPからは遠い位置)に空中像Ibを形成させる。また、ビームスプリッターから遠い位置にある図形パターン32cは、ビームスプリッターから遠い位置Pa(アイポイントEPからは近い位置)に空中像Iaを形成させる。
【0055】
また、第1のピーク波長λ1(例えば赤色光)の光と、第2のピーク波長λ2(例えば青色光)の光とが同時に発光された場合には、空中像Iaおよび空中像Ibが同時に形成されることとなる。
【0056】
図15は、一変形例にかかる空中表示装置1の応用例を示す図である。例えば、一変形例にかかる空中表示装置1は、指Fとトップカバー7との距離に応じて空中像の奥行を変更することで、あたかも空中像を指Fで押し込んだかのような動作を表現することが可能である。なお、
図15において、空中表示装置1は、ユーザの指Fを検知する空中センシング機能を備えるものとする。
【0057】
具体的には、空中表示装置1は、まず、第2のピーク波長λ2の光(例えば青色光)を光源4に点灯させ、空中像Iaを形成させる(
図15左図)。ここで、指Fが空中像Iaを押し込むかの如く空中表示装置1(トップカバー7)に近づくと、空中表示装置1は、第2のピーク波長λ2の光を消灯し、第1のピーク波長λ1の光を点灯させることにより、空中像Iaを消失させ、空中像Ibを形成させる。これにより、あたかも空中像Iaを指Fで押し込んだかのような動作を表現することが可能である。
【0058】
なお、
図13A~
図15では、ポジ形式(内側点灯)により空中像が結像される場合を例示したが、ネガ形式により空中像が結像されてもよい。
【0059】
(空中像の奥行表現2)
上記の空中像の奥行表現1では、厚みのあるフィルタ部(透明厚板)の表裏に対して複数色の塗料を塗布することで、複数のパターンの空中像の結像位置の奥行を異ならせる場合を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、2つの図形のそれぞれが表された2つのフィルタシートによって複数のパターンの空中像の結像位置の奥行を異ならせることも可能である。
【0060】
図16は、一変形例にかかる空中表示装置1の構成例を示す図である。
図16には、
図1におけるX-X断面図に対応する空中表示装置1の構成を例示する。
【0061】
図16に示すように、一変形例にかかる空中表示装置1は、フレーム2、光源3、導光板4、再帰反射シート5、ハーフミラー6、トップカバー7、反射シート8、プリズムシート14、およびフィルタ部33を備える。
図16に示すフレーム2、光源3、導光板4、再帰反射シート5、ハーフミラー6、トップカバー7、反射シート8、およびプリズムシート14は、上記の実施形態で説明した同符号の各構成と同一であるので、説明を省略する。また、
図16には、
図2と同様にビームスプリッターとしてハーフミラー6が適用される場合を例示するが、上述した偏光構成が適用されてもよい。
【0062】
フィルタ部33は、2つの図形のそれぞれが表された2つのフィルタシート331およびフィルタシート332を有する。フィルタシート331およびフィルタシート332は、互いに所定距離離間した位置に配置される。フィルタシート331には、
図13Bに示した図形パターン32cが形成される。フィルタシート332には、
図13Cに示した図形パターン32dが形成される。これにより、
図16に示す空中表示装置1は、
図14Aおよび
図14Bで説明した仕組みと同様の仕組みによって空中像Iaおよび空中像Ibを結像することができる。
【0063】
なお、
図16では、ポジ形式(内側点灯)により空中像が結像される場合を例示したが、ネガ形式により空中像が結像されてもよい。
【0064】
(空中像の秘匿表示)
また、特定の視点位置から見た場合に特定の図形となるように、所定距離離間した各々の図形を形成することにより、秘匿性の高い空中像を結像することが可能である。
【0065】
【0066】
図17Aに示すように、一変形例にかかる空中表示装置1は、フレーム2、光源3、導光板4、再帰反射シート5、ハーフミラー6、トップカバー7、反射シート8、プリズムシート14、およびフィルタ部34を備える。
図17Aに示すフレーム2、光源3、導光板4、再帰反射シート5、ハーフミラー6、トップカバー7、反射シート8、およびプリズムシート14は、上記の実施形態で説明した同符号の各構成と同一であるので、説明を省略する。また、
図17Aには、
図2と同様にビームスプリッターとしてハーフミラー6が適用される場合を例示するが、上述した偏光構成が適用されてもよい。
【0067】
フィルタ部34は、同一(共通)の透過性を有する2つの塗料それぞれにより表された2つの図形が、2つの主面それぞれに形成された透明な板部材であり、光透過性を有するポリカーボネート、アクリル等の樹脂材料によって構成される。フィルタ部34は、所定の厚み(後述するΔLに相当)を有し、面34aおよび面34bそれぞれに図形が形成される。なお、フィルタ部34の厚みは、空中像を閲覧する者が奥行(位置の違い)を視認できる程度の距離であるのが好適である。
【0068】
図17Bおよび
図17Cに示すように、フィルタ部34の入射側の面34aには図形パターン34cが形成され、出射側の面34bには図形パターン34dが形成される。ここで、図形パターン34cおよび図形パターン34dは、特定のピーク波長の光(例えば赤色光)を透過しない塗料(図のハッチング部分)により形成される。また、図形パターン34cおよび図形パターン34dは、各々単独の図形として意味を成さないものの、各々の図形に基づいて結像される2つの空中像Icおよび空中像Idが特定の視点位置(アイポイントEP)から見られた場合に特定の図形となるように、各々の図形が形成される。
【0069】
図18Aおよび
図18Bは、視点位置による見え方の違いについて説明するための図である。
図18Aには、アイポイントEPから空中像Icおよび空中像Idを見た場合の表示例を示す。
図18Bには、アイポイントEP以外の一視点から空中像Icおよび空中像Idを見た場合の表示例を示す。
図18Aおよび
図18Bでは、特定のピーク波長の光(例えば赤色光)が照射されることにより、空中像Icおよび空中像Idが同時に結像される。
【0070】
図18Aに示すように、アイポイントEPから空中像Icおよび空中像Idを見た場合には、空中像Icおよび空中像Idが互いに適切に重なり合うことで、中央の四角い図形の光となる。一方、
図18Bに示すように、アイポイントEP以外の一視点から空中像Icおよび空中像Idを見た場合には、空中像Icおよび空中像Idが互いに適切に重なり合わず、意味を成さない図形の光となる。これにより、他者による覗き込みを防ぐことができるので、秘匿性の高い空中像を表示することが可能となる。また、空中表示装置1では、空中センシングが利用されるため指紋も残らないため、秘匿性の更なる向上が期待される。
【0071】
なお、
図17A~
図18Bでは、ポジ形式(内側点灯)により空中像が結像される場合を例示したが、ネガ形式により空中像が結像されてもよい。また、図形パターン34cおよび図形パターン34dは、透過性が異なる2つの塗料それぞれによって形成されてもよい。
【0072】
なお、本発明において、「シート」および「フィルム」の用語は、呼称の違いに基づいてその厚みが規定されたり、互いから区別されたりするものではない。したがって、本発明においてはシートおよびフィルムは、互いに言い換えることができる概念である。なお、「板(板部材)」についても、呼称に基づいてその厚みが規定されるものではない。
【0073】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0074】
以上のように、実施形態に係る空中表示装置は、ピーク波長が異なる複数色の可視光を発光可能な面状発光体と、前記面状発光体の出射面側に配置され、前記複数色の可視光のいずれかまたは複数を透過する複数の塗料により空中表示する複数の図形が表されたフィルタ部と、前記フィルタ部の出射面側に配置され、前記フィルタ部の図形をカバーする範囲に設けられた貫通孔を有する再帰反射シートと、前記再帰反射シートの出射面側に配置されたハーフミラーまたは当該ハーフミラーに代えて設けられた偏光シートと、を備える。これにより、複数のパターンの空中像を切り替えて表示することができ、表示内容に多様性をもたせることができる。また、空中表示に複数の色を用いることができるため、装飾性も向上させることができる。なお、空中表示される映像の色は、光源の波長特性と上記のフィルタ部の分光透過率に加えて、上記のハーフミラー等および再帰反射シートの分光透過率および分光反射率によって決定する。たとえば、偏光を用いた空中結像光学系においては青色成分の透過率が低くなる傾向にあるため、光源およびフィルタ部の青色成分の透過率を高めるなど、システム全体として光源の波長特性とフィルタ部の分光透過率を設定することが重要である。
【0075】
また、前記フィルタ部は、空中表示する図形の周囲が塗料で塗りつぶされたポジ形式、または、空中表示する図形の内部が塗料で塗りつぶされたネガ形式である。これにより、内側点灯と外側点灯とを使い分けることができる。外側点灯は空中表示の視認性を高めることができる。
【0076】
また、前記貫通孔は、前記フィルタ部の図形をカバーする範囲に設けられる一つの貫通孔である。これにより、正面視を除き、フィルタ部による図形を正確に空中像として表示することができる。
【0077】
また、前記貫通孔は、前記フィルタ部の図形をカバーする範囲に密集して設けられる複数の貫通孔である。これにより、正面視に近い状態でも視認性を高めることができる。
【0078】
また、前記フィルタ部の図形のエッジは、前記貫通孔の開口に露出するよう配置される。これにより、図形の視認性をよりいっそう高めることができる。
【0079】
また、前記複数の貫通孔は、格子状配置、放射状配置、格子状配置の1列ごとの縦方向ズレ配置、格子状配置の1行ごとの横方向ズレ配置のいずれかである。これにより、貫通孔の自由度を高めることができる。空中表示の視認性を高める上では、格子状配置、または格子状配置の1列ごとの縦方向ズレ配置や、格子状配置の1行ごとの横方向ズレ配置が望ましい。
【0080】
また、前記面状発光体の可視光に視感度の低い波長が用いられる場合、前記フィルタ部を透過可能な視感度の高い波長の可視光を併用する。これにより、空中表示の視認性を高めることができる。
【0081】
また、前記面状発光体の可視光には色弱者に視認しやすい波長を含める。これにより、色弱者に対する空中表示の視認性を高めることができる。
【0082】
また、前記面状発光体の可視光の発生にRGB発光ダイオードを用いる場合、全点灯時に白色となる発光強度に代えて、発光色ごとに視認性に基づいて発光強度を調整する。これにより、図形ごとの空中表示の視認性を高めることができる。
【0083】
また、前記フィルタ部は、前記複数の図形として、前記複数の塗料のうち透過性が異なる2つの塗料それぞれにより表され、互いに所定距離離間した2つの図形を有する。これにより、複数のパターンの空中像の結像位置の奥行を異ならせることが可能である。
【0084】
また、前記フィルタ部は、前記所定距離に相当する厚みを有する透明な板部材であり、当該板部材の2つの主面のそれぞれに前記2つの図形のそれぞれが形成される。これにより、簡易な構成で複数のパターンの空中像の結像位置の奥行を異ならせることが可能である。
【0085】
また、前記フィルタ部は、前記2つの図形のそれぞれが表された2つのフィルタシートを含む。これにより、複数のパターンの空中像の結像位置の奥行を異ならせることが可能である。
【0086】
また、前記2つの図形は、特定の視点位置から見た場合に特定の図形となるように各々の図形が形成される。これにより、秘匿性の高い空中像を結像することが可能である。
【0087】
また、他の実施形態にかかる空中表示装置は、特定のピーク波長を有する可視光を発光可能な面状発光体と、前記面状発光体の出射面側に配置され、前記可視光を透過しない塗料により空中表示する複数の図形が表されたフィルタ部と、前記フィルタ部の出射面側に配置され、前記フィルタ部の図形をカバーする範囲に設けられた貫通孔を有する再帰反射シートと、前記再帰反射シートの出射面側に配置されたハーフミラーまたは当該ハーフミラーに代えて設けられた偏光シートとを備え、前記複数の図形のうち2つの図形は、互いに所定距離離間した位置に配置され、特定の視点位置から見た場合に特定の図形となるように各々の図形が形成される。これにより、秘匿性の高い空中像を結像することが可能である。
【0088】
また、上記実施の形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0089】
1 空中表示装置,2 フレーム,2a 開口,3 光源,4 導光板,4a 入光側面,4b 発光部,5 再帰反射シート,5a 貫通孔,6 ハーフミラー,7 トップカバー,8 反射シート,14 プリズムシート,31 フィルタシート,32~34 フィルタ部,EP アイポイント,I 空中表示,F 指