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特開2025-18927オニウム塩組成物、オニウム塩組成物の存在下でセルロースの加水分解物、アルコール及び/又は有機酸を製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025018927
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】オニウム塩組成物、オニウム塩組成物の存在下でセルロースの加水分解物、アルコール及び/又は有機酸を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/00 20060101AFI20250130BHJP
   C12P 7/10 20060101ALI20250130BHJP
   C07D 233/60 20060101ALI20250130BHJP
   C08B 1/00 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
C12N1/00 F
C12P7/10
C07D233/60 103
C08B1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024083080
(22)【出願日】2024-05-22
(31)【優先権主張番号】P 2023122660
(32)【優先日】2023-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000167646
【氏名又は名称】広栄化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】玉越 里美
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C090
【Fターム(参考)】
4B064AC03
4B064AD03
4B064AD04
4B064CA01
4B064CD05
4B064CD12
4B064DA16
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065BB12
4B065BB13
4B065BB26
4B065BD26
4B065BD32
4B065BD34
4B065BD43
4B065CA05
4B065CA06
4B065CA55
4C090AA04
4C090BA34
4C090BB12
4C090CA43
4C090DA40
(57)【要約】
【課題】酵素反応および微生物による発酵を首尾よく行うことができるオニウム塩を含む組成物を提供する。
【解決手段】下記式(1)で表されるオニウム塩、セルロース含有バイオマス及び酵素を含むオニウム塩組成物。
式(1):
(式中、R1~R4は、明細書に定義される通りである。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるオニウム塩、セルロース含有バイオマス及び酵素を含むオニウム塩組成物。
式(1):
【化1】
(式中、R1~R3は同一又は異なって、R1及びR2はヘテロ原子を1~5個含む炭素数2~12の炭化水素基、R3は水素原子、又はヘテロ原子を含んでも良い炭化水素基を示す。R1~R3は分岐及び/又は環構造及び/又は二重結合を含んでいてもよく、R1~R3の一部又は全てが、R1~R3が結合している窒素原子及び炭素原子と一緒になって相互に結合して環構造を形成してもよい。R4はヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基を示し、分岐及び/又は環構造及び/又は二重結合を含んでいてもよい。)
【請求項2】
セルロース含有バイオマスが前記式(1)で表されるオニウム塩に溶解している、請求項1に記載のオニウム塩組成物。
【請求項3】
さらに水を含有する、請求項1又は請求項2に記載のオニウム塩組成物。
【請求項4】
前記式(1)で表されるオニウム塩の濃度が、オニウム塩組成物の全量100質量%に対して、0.1質量%以上20質量%以下である、請求項3に記載のオニウム塩組成物。
【請求項5】
下記式(1)で表されるオニウム塩、グルコース及び微生物を含むオニウム塩組成物。
式(1):
【化2】
(式中、R1~R3は同一又は異なって、R1及びR2はヘテロ原子を1~5個含む炭素数2~12の炭化水素基、R3は水素原子、又はヘテロ原子を含んでも良い炭化水素基を示す。R1~R3は分岐及び/又は環構造及び/又は二重結合を含んでいてもよく、R1~R3の一部又は全てが、R1~R3が結合している窒素原子及び炭素原子と一緒になって相互に結合して環構造を形成してもよい。R4はヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基を示し、分岐及び/又は環構造及び/又は二重結合を含んでいてもよい。)
【請求項6】
グルコースが前記式(1)で表されるオニウム塩に溶解している、請求項5に記載のオニウム塩組成物。
【請求項7】
さらに水を含有する、請求項5又は請求項6に記載のオニウム塩組成物。
【請求項8】
前記式(1)で表されるオニウム塩の濃度が、オニウム塩組成物の全量100質量%に対して、0.1質量%以上20質量%以下である、請求項7に記載のオニウム塩組成物。
【請求項9】
下記式(1)で表されるオニウム塩、セルロース含有バイオマス、酵素、グルコース及び微生物を含むオニウム塩組成物。
式(1):
【化3】
(式中、R1~R3は同一又は異なって、R1及びR2はヘテロ原子を1~5個含む炭素数2~12の炭化水素基、R3は水素原子、又はヘテロ原子を含んでも良い炭化水素基を示す。R1~R3は分岐及び/又は環構造及び/又は二重結合を含んでいてもよく、R1~R3の一部又は全てが、R1~R3が結合している窒素原子及び炭素原子と一緒になって相互に結合して環構造を形成してもよい。R4はヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基を示し、分岐及び/又は環構造及び/又は二重結合を含んでいてもよい。)
【請求項10】
さらに水を含有する、請求項9に記載のオニウム塩組成物。
【請求項11】
前記式(1)で表されるオニウム塩の濃度が、オニウム塩組成物の全量100質量%に対して、0.1質量%以上20質量%以下である、請求項10に記載のオニウム塩組成物。
【請求項12】
下記式(1)で表されるオニウム塩及び水の存在下で、セルロース含有バイオマスに含有されるセルロースを酵素で加水分解する、セルロースの加水分解物の製造方法。
式(1):
【化4】
(式中、R1~R3は同一又は異なって、R1及びR2はヘテロ原子を1~5個含む炭素数2~12の炭化水素基、R3は水素原子、又はヘテロ原子を含んでも良い炭化水素基を示す。R1~R3は分岐及び/又は環構造及び/又は二重結合を含んでいてもよく、R1~R3の一部又は全てが、R1~R3が結合している窒素原子及び炭素原子と一緒になって相互に結合して環構造を形成してもよい。R4はヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基を示し、分岐及び/又は環構造及び/又は二重結合を含んでいてもよい。)
【請求項13】
請求項12に記載のセルロースの加水分解物の製造方法であって、下記の工程(1)~(3)を含む、セルロースの加水分解物の製造方法。
工程(1):前記式(1)で表されるオニウム塩の存在下で、セルロース含有バイオマスを溶解させる工程。
工程(2):工程(1)で得た溶解液に水と酵素を添加する工程。
工程(3):工程(2)で得た溶液を攪拌し、セルロース含有バイオマスに含有されるセルロースを酵素で加水分解して、セルロースの加水分解物を得る工程。
【請求項14】
下記式(1)で表されるオニウム塩及び水の存在下で、セルロースの加水分解物を微生物で発酵させる、アルコール及び/又は有機酸の製造方法。
式(1):
【化5】
(式中、R1~R3は同一又は異なって、R1及びR2はヘテロ原子を1~5個含む炭素数2~12の炭化水素基、R3は水素原子、又はヘテロ原子を含んでも良い炭化水素基を示す。R1~R3は分岐及び/又は環構造及び/又は二重結合を含んでいてもよく、R1~R3の一部又は全てが、R1~R3が結合している窒素原子及び炭素原子と一緒になって相互に結合して環構造を形成してもよい。R4はヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基を示し、分岐及び/又は環構造及び/又は二重結合を含んでいてもよい。)
【請求項15】
請求項14に記載のアルコール及び/又は有機酸の製造方法であって、下記の工程(1)~(3)を含む、アルコール及び/又は有機酸の製造方法。
工程(1):前記式(1)で表されるオニウム塩、セルロースの加水分解物、水及び微生物を混合させる工程。
工程(2):工程(1)で得た微生物が添加された溶液において、セルロースの加水分解物を微生物で発酵させ、アルコール及び/又は有機酸を製造する工程。
工程(3):工程(2)で得たアルコール及び/又は有機酸を含有する溶液から、アルコール及び/又は有機酸を分離する工程。
【請求項16】
前記アルコールがエタノールである、請求項14又は15に記載のアルコールの製造方法。
【請求項17】
下記式(1)で表されるオニウム塩及び水の存在下で、セルロース含有バイオマスからアルコール及び/又は有機酸を製造する方法であって、下記の工程(1)~(6)を含むアルコール及び/又は有機酸の製造方法。
式(1):
【化6】
(式中、R1~R3は同一又は異なって、R1及びR2はヘテロ原子を1~5個含む炭素数2~12の炭化水素基、R3は水素原子、又はヘテロ原子を含んでも良い炭化水素基を示す。R1~R3は分岐及び/又は環構造及び/又は二重結合を含んでいてもよく、R1~R3の一部又は全てが、R1~R3が結合している窒素原子及び炭素原子と一緒になって相互に結合して環構造を形成してもよい。R4はヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基を示し、分岐及び/又は環構造及び/又は二重結合を含んでいてもよい。)
工程(1):前記式(1)で表されるオニウム塩の存在下で、セルロース含有バイオマスを溶解させる工程。
工程(2):工程(1)で得た溶解液に水と酵素を添加する工程。
工程(3):工程(2)で得た溶液を攪拌し、セルロース含有バイオマスに含有されるセルロースを酵素で加水分解して、セルロースの加水分解物を得る工程。
工程(4):工程(3)で得たセルロースの加水分解物を含む溶液に微生物を添加する工程。
工程(5):工程(4)で得た微生物が添加された溶液において、セルロースの加水分解物を微生物で発酵させ、アルコール及び/又は有機酸を製造する工程。
工程(6):工程(5)で得たアルコール及び/又は有機酸を含有する溶液から、アルコール及び/又は有機酸を分離する工程。
【請求項18】
請求項14又は請求項17に記載の製造方法において、前記式(1)で表されるオニウム塩を含有する溶液を回収し、回収した溶液から当該オニウム塩を分離して、当該オニウム塩をリサイクルする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オニウム塩組成物、オニウム塩組成物の存在下でセルロースの加水分解物、アルコール及び/又は有機酸を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石油資源の代替として植物に由来するバイオマスの利用が期待されており、バイオマスをエネルギー、各種材料等に利用するための試みがなされている。バイオマスをエネルギー源、その他の原料等として有効利用するためには、バイオマスを動物又は微生物が容易に利用可能な炭素源にまで分解・糖化することが望ましい。
【0003】
かかる分解・糖化としては、バイオマスに含有されるセルロースをイオン液体で溶解し、セルラーゼ等の酵素でグルコースに分解し、グルコースを微生物で発酵させて、アルコール及び/又は有機酸を生産することが知られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、セルロース含有材料をカチオン種が置換ピリジニウムであるイオン液体で処理し、該処理液にセルラーゼを反応させて、セルロースを糖化する方法と、さらに、前記のセルラーゼを反応させて得られた反応液とエタノール生産微生物とを混合して微生物を培養して、セルロース含有材料からエタノールを生産する方法が記載されている。
【0005】
また、非特許文献1には、セルロースを溶解するイオン液体として、ジアルキルイミダゾリウムをカチオンとするイオン液体、具体的には、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテート、1-アリル-3-メチルイミダゾリウムクロライド、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロライド、1,3-ジメチルイミダゾリウムジアルキルホスフェートが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013-135641号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】グリーン ケミストリー(Green Chemistry),2015年,17巻,p.694-714.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
先行技術文献に記載されているイオン液体であるオニウム塩は、酵素反応および微生物による発酵の両方を阻害するため、バイオマスに含まれるセルロースをイオン液体であるオニウム塩で溶解させた後、該オニウム塩を除去する必要がある。
【0009】
かかる先行技術の状況において、本発明は酵素反応および微生物による発酵のいずれも首尾よく行うことができるオニウム塩を含む組成物を提供することを課題とする。また本発明は、酵素反応および微生物による発酵のいずれも首尾よく行うことができるオニウム塩の存在下で、セルロースを酵素で加水分解するセルロースの加水分解物の製造方法を提供することを課題とする。さらに本発明は、前記オニウム塩の存在下で、セルロースの加水分解物を微生物で発酵させるアルコール及び/又は有機酸の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、酵素反応および微生物による発酵のいずれも首尾よく行うことができるオニウム塩、及びオニウム塩の存在下で、酵素反応および微生物による発酵について鋭意検討し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち本発明は、以下の[1]~[18]を提供するものである。
[1]
下記式(1)で表されるオニウム塩、セルロース含有バイオマス及び酵素を含むオニウム塩組成物。
式(1):
【化1】
(式中、R1~R3は同一又は異なって、R1及びR2はヘテロ原子を1~5個含む炭素数2~12の炭化水素基、R3は水素原子、又はヘテロ原子を含んでも良い炭化水素基を示す。R1~R3は分岐及び/又は環構造及び/又は二重結合を含んでいてもよく、R1~R3の一部又は全てが、R1~R3が結合している窒素原子及び炭素原子と一緒になって相互に結合して環構造を形成してもよい。R4はヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基を示し、分岐及び/又は環構造及び/又は二重結合を含んでいてもよい。)
[2]
セルロース含有バイオマスが前記式(1)で表されるオニウム塩に溶解している、[1]に記載のオニウム塩組成物。
[3]
さらに水を含有する、[1]又は[2]に記載のオニウム塩組成物。
[4]
前記式(1)で表されるオニウム塩の濃度が、オニウム塩組成物の全量100質量%に対して、0.1質量%以上20質量%以下である、[3]に記載のオニウム塩組成物。
[5]
下記式(1)で表されるオニウム塩、グルコース及び微生物を含むオニウム塩組成物。式(1):
【化2】
(式中、R1~R3は同一又は異なって、R1及びR2はヘテロ原子を1~5個含む炭素数2~12の炭化水素基、R3は水素原子、又はヘテロ原子を含んでも良い炭化水素基を示す。R1~R3は分岐及び/又は環構造及び/又は二重結合を含んでいてもよく、R1~R3の一部又は全てが、R1~R3が結合している窒素原子及び炭素原子と一緒になって相互に結合して環構造を形成してもよい。R4はヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基を示し、分岐及び/又は環構造及び/又は二重結合を含んでいてもよい。)
[6]
グルコースが前記式(1)で表されるオニウム塩に溶解している、[5]に記載のオニウム塩組成物。
[7]
さらに水を含有する、[5]又は[6]に記載のオニウム塩組成物。
[8]
前記式(1)で表されるオニウム塩の濃度が、オニウム塩組成物の全量100質量%に対して、0.1質量%以上20質量%以下である、[7]に記載のオニウム塩組成物。
[9]
下記式(1)で表されるオニウム塩、セルロース含有バイオマス、酵素、グルコース及び微生物を含むオニウム塩組成物。
式(1):
【化3】
(式中、R1~R3は同一又は異なって、R1及びR2はヘテロ原子を1~5個含む炭素数2~12の炭化水素基、R3は水素原子、又はヘテロ原子を含んでも良い炭化水素基を示す。R1~R3は分岐及び/又は環構造及び/又は二重結合を含んでいてもよく、R1~R3の一部又は全てが、R1~R3が結合している窒素原子及び炭素原子と一緒になって相互に結合して環構造を形成してもよい。R4はヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基を示し、分岐及び/又は環構造及び/又は二重結合を含んでいてもよい。)
[10]
さらに水を含有する、[9]に記載のオニウム塩組成物。
[11]
前記式(1)で表されるオニウム塩の濃度が、オニウム塩組成物の全量100質量%に対して、0.1質量%以上20質量%以下である、[10]に記載のオニウム塩組成物。
[12]
下記式(1)で表されるオニウム塩及び水の存在下で、セルロース含有バイオマスに含有されるセルロースを酵素で加水分解する、セルロースの加水分解物の製造方法。
式(1):
【化4】
(式中、R1~R3は同一又は異なって、R1及びR2はヘテロ原子を1~5個含む炭素数2~12の炭化水素基、R3は水素原子、又はヘテロ原子を含んでも良い炭化水素基を示す。R1~R3は分岐及び/又は環構造及び/又は二重結合を含んでいてもよく、R1~R3の一部又は全てが、R1~R3が結合している窒素原子及び炭素原子と一緒になって相互に結合して環構造を形成してもよい。R4はヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基を示し、分岐及び/又は環構造及び/又は二重結合を含んでいてもよい。)
[13]
[12]に記載のセルロースの加水分解物の製造方法であって、下記の工程(1)~(3)を含む、セルロースの加水分解物の製造方法。
工程(1):前記式(1)で表されるオニウム塩の存在下で、セルロース含有バイオマスを溶解させる工程。
工程(2):工程(1)で得た溶解液に水と酵素を添加する工程。
工程(3):工程(2)で得た溶液を攪拌し、セルロース含有バイオマスに含有されるセルロースを酵素で加水分解して、セルロースの加水分解物を得る工程。
[14]
下記式(1)で表されるオニウム塩及び水の存在下で、セルロースの加水分解物を微生物で発酵させる、アルコール及び/又は有機酸の製造方法。
式(1):
【化5】
(式中、R1~R3は同一又は異なって、R1及びR2はヘテロ原子を1~5個含む炭素数2~12の炭化水素基、R3は水素原子、又はヘテロ原子を含んでも良い炭化水素基を示す。R1~R3は分岐及び/又は環構造及び/又は二重結合を含んでいてもよく、R1~R3の一部又は全てが、R1~R3が結合している窒素原子及び炭素原子と一緒になって相互に結合して環構造を形成してもよい。R4はヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基を示し、分岐及び/又は環構造及び/又は二重結合を含んでいてもよい。)
[15]
[14]に記載のアルコール及び/又は有機酸の製造方法であって、下記の工程(1)~(3)を含む、アルコール及び/又は有機酸の製造方法。
工程(1):前記式(1)で表されるオニウム塩、セルロースの加水分解物、水及び微生物を混合させる工程。
工程(2):工程(1)で得た微生物が添加された溶液において、セルロースの加水分解物を微生物で発酵させ、アルコール及び/又は有機酸を製造する工程。
工程(3):工程(2)で得たアルコール及び/又は有機酸を含有する溶液から、アルコール及び/又は有機酸を分離する工程。
[16]
前記アルコールがエタノールである、[14]又は[15]に記載のアルコールの製造方法。
[17]
下記式(1)で表されるオニウム塩及び水の存在下で、セルロース含有バイオマスからアルコール及び/又は有機酸を製造する方法であって、下記の工程(1)~(6)を含むアルコール及び/又は有機酸の製造方法。
式(1):
【化6】
(式中、R1~R3は同一又は異なって、R1及びR2はヘテロ原子を1~5個含む炭素数2~12の炭化水素基、R3は水素原子、又はヘテロ原子を含んでも良い炭化水素基を示す。R1~R3は分岐及び/又は環構造及び/又は二重結合を含んでいてもよく、R1~R3の一部又は全てが、R1~R3が結合している窒素原子及び炭素原子と一緒になって相互に結合して環構造を形成してもよい。R4はヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基を示し、分岐及び/又は環構造及び/又は二重結合を含んでいてもよい。)
工程(1):前記式(1)で表されるオニウム塩の存在下で、セルロース含有バイオマスを溶解させる工程。
工程(2):工程(1)で得た溶解液に水と酵素を添加する工程。
工程(3):工程(2)で得た溶液を攪拌し、セルロース含有バイオマスに含有されるセルロースを酵素で加水分解して、セルロースの加水分解物を得る工程。
工程(4):工程(3)で得たセルロースの加水分解物を含む溶液に微生物を添加する工程。
工程(5):工程(4)で得た微生物が添加された溶液において、セルロースの加水分解物を微生物で発酵させ、アルコール及び/又は有機酸を製造する工程。
工程(6):工程(5)で得たアルコール及び/又は有機酸を含有する溶液から、アルコール及び/又は有機酸を分離する工程。
[18]
[14]又は[17]に記載の製造方法において、前記式(1)で表されるオニウム塩を含有する溶液を回収し、回収した溶液から当該オニウム塩を分離して、当該オニウム塩をリサイクルする方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、酵素反応および微生物による発酵を首尾よく行うことができるオニウム塩を含む組成物を提供できる。また本発明によれば、酵素反応および微生物による発酵を首尾よく行うことができるオニウム塩の存在下で、セルロースを酵素で加水分解するセルロースの加水分解物の製造方法を提供できる。さらに本発明によれば、前記オニウム塩の存在下で、セルロースの加水分解物を微生物で発酵させるアルコール及び/又は有機酸の製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を具体的に説明する。本発明の一つの実施形態は、下記式(1)で示されるオニウム塩(以下、オニウム塩(1)という。)、セルロース含有バイオマス及び酵素を含むオニウム塩組成物(以下、オニウム塩組成物(1)という。)に係るものである。
【0014】
式(1):
【化7】
(式中、R1~R3は同一又は異なって、R1及びR2はヘテロ原子を1~5個含む炭素数2~12の炭化水素基、R3は水素原子、又はヘテロ原子を含んでも良い炭化水素基を示す。R1~R3は分岐及び/又は環構造及び/又は二重結合を含んでいてもよく、R1~R3の一部又は全てが、R1~R3が結合している窒素原子及び炭素原子と一緒になって相互に結合して環構造を形成してもよい。R4はヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基を示し、分岐及び/又は環構造及び/又は二重結合を含んでいてもよい。)
【0015】
式(1)中、R1及びR2において「ヘテロ原子を1~5個含む炭素数2~12の炭化水素基」は、直鎖であってもよく、分岐及び/又は環構造及び/又は二重結合を含んでいてもよい。ヘテロ原子の数として好ましくは1~3であり、より好ましくは1~2である。炭化水素基の炭素数として好ましくは3~10であり、より好ましくは4~7である。
【0016】
式(1)中、R1及びR2において「ヘテロ原子」としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等が挙げられる。
【0017】
式(1)中、R1及びR2において、「ヘテロ原子を1~5個含む炭素数2~12の炭化水素基」は、ヘテロ原子を含まない炭素数2~12の炭化水素基の
(i)隣接する2個の炭素原子間の結合、及び/又は、
(ii)1つの-CH2-(メチレン基)の水素原子と、他のーCH2-(メチレン基)の水素原子が、-O-、-N<、-NH-、-S-、-C(=O)-O-、-C(=O)-、=N-、-C(=O)-N<、-C(=O)-NH-、-O-C(=O)-O-、-O-C(=O)-N<、-O-C(=O)-NH-、-C(=O)-N[-C(=O)-]-、-C(=O)-NH-C(=O)-、>N-C(=O)-N<、>N-C(=O)-NH-、-HN-C(=O)-NH-、-S(=O)-、-S(=O)2-、-S(=O)2-O-、-O-S(=O)2-O-、>N-C(=S)-N<、>N-C(=S)-NH-、-HN-C(=S)-NH-、-C(=N-)-、-C(=NH)-等の構造により置換されたものであり、これらの構造による置換の数及び組み合わせは、R1、R2中のヘテロ原子が1~5個となる範囲であれば特に限定されない。
【0018】
好ましくは炭化水素基の(i)隣接する2個の炭素原子間の結合、及び/又は、
(ii)1つの-CH2-(メチレン基)の水素原子と、他のーCH2-(メチレン基)の水素原子が、-O-又は-S-の構造により置換されているものであり、より好ましくは-O-の構造により置換されているものである。
【0019】
本発明において、炭化水素基の(i)隣接する2個の炭素原子間の結合、及び/又は、(ii)1つの-CH2-(メチレン基)の水素原子と、他のーCH2-(メチレン基)の水素原子が、-O-又は-S-の構造により置換されている構造としては、エーテル構造、チオエーテル構造といった構造以外にも、たとえば、エポキシ基、チオエポキシ基、グリシジルエーテル基、エポキシシクロヘキシル基等のエポキシ構造もしくはチオエポキシ構造を形成していても良い。この場合において、R1又はR2がエポキシ基、チオエポキシ基等となっても良い。
【0020】
1及びR2において、-O-又は/及び-S-の構造を2個以上含む場合、-O-又は/及び-S-の構造間の炭素数は2以上であることが望ましい。
【0021】
1とR2のそれぞれが結合しているイミダゾール環上の窒素原子とR1又はR2中の、最もイミダゾール環上の窒素原子に近いヘテロ原子との間の炭素数は2以上であることがより望ましい。
【0022】
式(1)中、R1及びR2において「ヘテロ原子を含まない炭素数2~12の炭化水素基」は、直鎖であってもよく、分岐及び/又は環構造及び/又は二重結合を含んでいてもよい。ヘテロ原子を含まない炭素数2~12の炭化水素基の例としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、アラルキル基などが挙げられるが、特に制限されない。
【0023】
式(1)中、R1及びR2において「ヘテロ原子を1~5個含む炭素数2~12の炭化水素基」としては、たとえば、ヘテロ原子を1~5個含む炭素数2~12の直鎖又は分岐を有するアルキル基、ヘテロ原子を1~5個含む炭素数2~12の直鎖又は分岐を有するアルケニル基、ヘテロ原子を1~5個含む炭素数2~12の直鎖又は分岐を有するアルキニル基、ヘテロ原子を1~5個含む炭素数3~12の分岐を有していても良いシクロアルキル基、ヘテロ原子を1~5個含む炭素数3~12の分岐を有していても良いシクロアルケニル基、ヘテロ原子を1~5個含む炭素数6~12の分岐を有していても良いアリール基、ヘテロ原子を1~5個含む炭素数7~12の分岐を有していても良いアラルキル基などが挙げられる。好ましくは、ヘテロ原子を1~5個含む炭素数2~12の直鎖又は分岐を有するアルキル基、ヘテロ原子を1~5個含む炭素数2~12の直鎖又は分岐を有するアルケニル基、ヘテロ原子を1~5個含む炭素数3~12の分岐を有していても良いシクロアルキル基である。
「ヘテロ原子を1~5個含む炭素数2~12の直鎖又は分岐を有するアルキル基」として好ましくはヘテロ原子を1~3個含む炭素数3~10の直鎖又は分岐を有するアルキル基である。別の様態として好ましくは、ヘテロ原子を1~2個含む炭素数3~10の直鎖又は分岐を有するアルキル基、より好ましくはヘテロ原子を1~2個含む炭素数4~7の直鎖又は分岐を有するアルキル基である。
「ヘテロ原子を1~5個含む炭素数2~12の直鎖又は分岐を有するアルケニル基」として好ましくはヘテロ原子を1~3個含む炭素数3~10の直鎖又は分岐を有するアルケニル基である。別の様態として好ましくは、ヘテロ原子を1~2個含む炭素数3~10の直鎖又は分岐を有するアルケニル基、より好ましくはヘテロ原子を1~2個含む炭素数4~7の直鎖又は分岐を有するアルケニル基である。
「ヘテロ原子を1~5個含む炭素数3~12の分岐を有していても良いシクロアルキル基」として好ましくはヘテロ原子を1~3個含む炭素数3~10の分岐を有していても良いシクロアルキル基である。別の様態として好ましくは、ヘテロ原子を1~2個含む炭素数3~10の分岐を有していても良いシクロアルキル基、より好ましくはヘテロ原子を1~2個含む炭素数4~7の分岐を有していても良いシクロアルキル基である。
【0024】
式(1)中、R1及びR2においてヘテロ原子を含まない炭素数2~12の炭化水素基としては、具体的には、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、デシル基、ドデシル基、プロぺニル基、イソプロぺニル基、アリル基、プロパルギル基、ブテニル基、クロチル基、ブタジエニル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、フェニル基、ベンジル基、トリル基、2,4,6-トリメチルフェニル基等が挙げられるが、特に制限されない。ヘテロ原子を含まない炭素数2~12の炭化水素基の(i)隣接する2個の炭素原子間の結合、及び/又は、
(ii)1つの-CH2-(メチレン基)の水素原子と、他のーCH2-(メチレン基)の水素原子が、-O-、-N<、-NH-、-S-、-C(=O)-O-、-C(=O)-、=N-、-C(=O)-N<、-C(=O)-NH-、-O-C(=O)-O-、-O-C(=O)-N<、-O-C(=O)-NH-、-C(=O)-N[-C(=O)-]-、-C(=O)-NH-C(=O)-、>N-C(=O)-N<、>N-C(=O)-NH-、-HN-C(=O)-NH-、-S(=O)-、-S(=O)2-、-S(=O)2-O-、-O-S(=O)2-O-、>N-C(=S)-N<、>N-C(=S)-NH-、-HN-C(=S)-NH-、-C(=N-)-、-C(=NH)-等の構造により置換されると、「ヘテロ原子を1~5個含む炭素数2~12の炭化水素基」になる。
【0025】
式(1)に示されるR1及びR2の構造として具体的には、2-メトキシエチル、2-エトキシエチル、2-プロポキシエチル、2-イソプロポキシエチル、2-フェノキシエチル、2-(ベンジルオキシ)エチル、2-(p-メトキシベンジルオキシ)エチル、2-(2-メトキシエトキシメトキシ)エチル、2-(2-ベンジルオキシエトキシ)エチル、2-(ジメチルアミノ)エチル、3-メトキシプロピル、3-エトキシプロピル、3-プロポキシプロピル、3-アリルオキシプロピル、3-イソプロポキシプロピル、3-(1-メチルプロポキシ)プロピル、3-(2-メチルプロポキシ)プロピル、3-(1,1-ジメチルエトキシ)プロピル、3-ブトキシプロピル、3-ペンチルオキシプロピル、3-ネオペンチルオキシプロピル、3-ヘキシルオキシプロピル、3-シクロヘキシルオキシプロピル、3-ヘプチルオキシプロピル、3-オクチルオキシプロピル、3-ノニルオキシプロピル、3-(2-エチルヘキサン-1-イル)オキシプロピル、3-(2,4,6-トリメチルフェノキシ)プロピル、3-(2-メトキシエトキシ)プロピル、3-(ジメチルアミノ)プロピル、4-メトキシブチル、4-エトキシブチル、4-プロポキシブチル、4-イソプロポキシブチル、4-アリルオキシブチル、4-ブトキシブチル、4-(1-メチルプロポキシ)ブチル、4-(2-メチルプロポキシ)ブチル、4-(1,1-ジメチルエトキシ)ブチル、4-ペンチルオキシブチル、4-ネオペンチルオキシブチル、4-ヘキシルオキシブチル、4-シクロヘキシルオキシブチル、4-ヘプチルオキシブチル、4-オクチルオキシブチル、4-(2-エチルヘキサン-1-イル)オキシブチル、5-メトキシペンチル、5-エトキシペンチル、5-プロポキシペンチル、5-イソプロポキシペンチル、5-アリルオキシペンチル、5-ブトキシペンチル、5-(1-メチルプロポキシ)ペンチル、5-(2-メチルプロポキシ)ペンチル、5-(1,1-ジメチルエトキシ)ペンチル、5-ペンチルオキシペンチル、5-ネオペンチルオキシペンチル、5-ヘキシルオキシペンチル、5-シクロヘキシルオキシペンチル、5-ヘプチルオキシペンチル、6-メトキシヘキシル、6-エトキシヘキシル、6-プロポキシヘキシル、6-イソプロポキシヘキシル、6-アリルオキシヘキシル、6-ブトキシヘキシル、6-(1-メチルプロポキシ)ヘキシル、6-(2-メチルプロポキシ)ヘキシル、6-(1,1-ジメチルエトキシ)ヘキシル、6-ペンチルオキシヘキシル、6-ネオペンチルオキシヘキシル、6-ヘキシルオキシヘキシル、6-シクロヘキシルオキシヘキシル、(2-メトキシシクロヘキサン-1-イル)メチル、(2-エトキシシクロヘキサン-1-イル)メチル、(2-プロポキシシクロヘキサン-1-イル)メチル、(2-イソプロポキシシクロヘキサン-1-イル)メチル、(2-ブトキシシクロヘキサン-1-イル)メチル、[2-(1-メチルプロポキシ)シクロヘキサン-1-イル]メチル、[2-(2-メチルプロポキシ)シクロヘキサン-1-イル]メチル、[2-(1,1-ジメチルエトキシ)シクロヘキサン-1-イル]メチル、(2-ペンチルオキシシクロヘキサン-1-イル)メチル、(2-ネオペンチルオキシシクロヘキサン-1-イル)メチル、2-メチルチオエチル、3-メチルチオプロピル、1-(メトキシメチル)プロピル、(オキソラン-2-イル)メチル、(フラン-2-イル)メチル、2-[(フラン-2-イル)メチルチオ]エチル、2-(メチルスルホニル)エチル、(チオフェン-2-イル)メチル、p-メトキシフェニル、p-エトキシフェニル、3,4-メチレンジオキシフェニル、3,4-メチレンジオキシベンジル、(7-オキサビシクロ[2,2,1]ヘプタン-2-イル)メチル等が挙げられ、好ましくは2-メトキシエチル、3-メトキシプロピル、3-エトキシプロピル、3-イソプロポキシプロピル、3-ブトキシプロピル、3-(2-メトキシエトキシ)プロピル、3-メチルチオプロピル、3-(ジメチルアミノ)プロピルであり、より好ましくは2-メトキシエチル、3-メトキシプロピル、3-(2-メトキシエトキシ)プロピルであるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0026】
式(1)において、R1とR2は同一であることが好ましい。
【0027】
式(1)中、R3は、水素原子又はヘテロ原子を含んでいても良い炭化水素基を示す。「ヘテロ原子を含んでいても良い炭化水素基」は直鎖であってもよく、分岐及び/又は環構造及び/又は二重結合を含んでいてもよい。また、R3において、炭化水素基はヘテロ原子を含んでいなくとも、ヘテロ原子を含んでいても良い。
【0028】
式(1)中、R3がヘテロ原子を含まない炭化水素基の場合、炭素数として好ましくは1~12であり、より好ましくは1~8、さらに好ましくは1~3である。R3がヘテロ原子を含む炭化水素基である場合、炭素数として好ましくは2~12であり、より好ましくは2~8、さらに好ましくは2~4である。
【0029】
式(1)中、R3がヘテロ原子を含む場合、ヘテロ原子の数として好ましくは1~5個であり、より好ましくは1~2個である。炭化水素基の炭素数は2以上となり、好ましくは2~12であり、より好ましくは2~8、さらに好ましくは2~4である。
【0030】
式(1)中、R3がヘテロ原子を含む炭化水素基である場合、「ヘテロ原子」としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等が挙げられる。
【0031】
3がヘテロ原子を含む炭化水素基である場合の「ヘテロ原子」としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等が挙げられる。また、ヘテロ原子の数として好ましくは1~5個であり、より好ましくは1~2個である。
【0032】
式(1)中、R3において、「ヘテロ原子を含む炭化水素基」は、ヘテロ原子を含まない炭化水素基の(i)隣接する2個の炭素原子間の結合、及び/又は、
(ii)1つの-CH2-(メチレン基)の水素原子と、他のーCH2-(メチレン基)の水素原子が、-O-、-N<、-NH-、-S-、-C(=O)-O-、-C(=O)-、=N-、-C(=O)-N<、-C(=O)-NH-、-O-C(=O)-O-、-O-C(=O)-N<、-O-C(=O)-NH-、-C(=O)-N[-C(=O)-]-、-C(=O)-NH-C(=O)-、>N-C(=O)-N<、>N-C(=O)-NH-、-HN-C(=O)-NH-、-S(=O)-、-S(=O)2-、-S(=O)2-O-、-O-S(=O)2-O-、>N-C(=S)-N<、>N-C(=S)-NH-、-HN-C(=S)-NH-、-C(=N-)-、-C(=NH)-等の構造により置換されたものであり、これらの構造による置換の数及び組み合わせは、特に限定されないが、R3中のヘテロ原子が1~5個が好ましく、1~2個となるものがより好ましい。
【0033】
好ましくは炭化水素基の(i)隣接する2個の炭素原子間の結合、及び/又は、
(ii)1つの-CH2-(メチレン基)の水素原子と、他のーCH2-(メチレン基)の水素原子が、-O-又は-S-の構造により置換されているものであり、より好ましくは-O-の構造により置換されているものである。
【0034】
本発明において、炭化水素基の(i)隣接する2個の炭素原子間の結合、及び/又は、(ii)1つの-CH2-(メチレン基)の水素原子と、他のーCH2-(メチレン基)の水素原子が、-O-又は-S-の構造により置換されている構造としては、エーテル構造、チオエーテル構造といった構造以外にも、たとえば、エポキシ基、チオエポキシ基、グリシジルエーテル基、エポキシシクロヘキシル基等のエポキシ構造もしくはチオエポキシ構造を形成していても良い。この場合において、R3がエポキシ基、チオエポキシ基等となっても良い。
【0035】
3において、-O-又は/及び-S-の構造を2個以上含む場合、-O-又は/及び-S-の構造間の炭素数は2以上であることが望ましい。
【0036】
式(1)中、R3において「ヘテロ原子を含んでいても良い炭化水素基」としては、ヘテロ原子を含んでいても良い直鎖又は分岐を有するアルキル基、ヘテロ原子を含んでいても良い直鎖又は分岐を有するアルケニル基、ヘテロ原子を含んでいても良い直鎖又は分岐を有するアルキニル基、ヘテロ原子を含んでいても良く分岐を有していても良いシクロアルキル基、ヘテロ原子を含んでいても良く分岐を有していても良いシクロアルケニル基、ヘテロ原子を含んでいても良く分岐を有していても良いアリール基、ヘテロ原子を含んでいても良く分岐を有していても良いアラルキル基等が挙げられる。好ましくはヘテロ原子を含んでいても良い直鎖又は分岐を有するアルキル基、ヘテロ原子を含んでいても良い直鎖又は分岐を有するアルケニル基、ヘテロ原子を含んでいても良く分岐を有していても良いシクロアルキル基である。
「ヘテロ原子を含んでいても良い直鎖又は分岐を有するアルキル基」として好ましくは、ヘテロ原子を1~5個含んでいても良い炭素数1~12の直鎖又は分岐を有するアルキル基である。別の様態として好ましくはヘテロ原子を1~2個含んでいても良い炭素数1~12の直鎖又は分岐を有するアルキル基、より好ましくはヘテロ原子を1~2個含んでいても良い炭素数1~8の直鎖又は分岐を有するアルキル基、さらに好ましくはヘテロ原子を1~2個含んでいても良い炭素数1~4の直鎖又は分岐を有するアルキル基である。さらに別の様態として、好ましくは炭素数1~12の直鎖又は分岐を有するアルキル基、より好ましくは炭素数1~8の直鎖又は分岐を有するアルキル基、さらに好ましくは炭素数1~3の直鎖又は分岐を有するアルキル基である。
「ヘテロ原子を含んでいても良い直鎖又は分岐を有するアルケニル基」として好ましくは、ヘテロ原子を1~5個含んでいても良い炭素数2~12の直鎖又は分岐を有するアルケニル基である。別の様態として好ましくはヘテロ原子を1~2個含んでいても良い炭素数2~12の直鎖又は分岐を有するアルケニル基、より好ましくはヘテロ原子を1~2個含んでいても良い炭素数2~8の直鎖又は分岐を有するアルケニル基、さらに好ましくはヘテロ原子を1~2個含んでいても良い炭素数2~4の直鎖又は分岐を有するアルケニル基である。さらに別の様態として、好ましくは炭素数2~12の直鎖又は分岐を有するアルケニル基、より好ましくは炭素数2~8の直鎖又は分岐を有するアルケニル基、さらに好ましくは炭素数2~3の直鎖又は分岐を有するアルケニル基である。
「ヘテロ原子を含んでいても良く分岐を有していても良いシクロアルキル基」として好ましくは、ヘテロ原子を1~5個含んでいても良い炭素数3~12の分岐を有していても良いシクロアルキル基である。別の様態として好ましくはヘテロ原子を1~2個含んでいても良い炭素数3~12の分岐を有していても良いシクロアルキル基、より好ましくはヘテロ原子を1~2個含んでいても良い炭素数3~8の分岐を有していても良いシクロアルキル基、さらに好ましくはヘテロ原子を1~2個含んでいても良い炭素数3~4の分岐を有していても良いシクロアルキル基である。さらに別の様態として、好ましくは炭素数3~12の分岐を有していても良いシクロアルキル基、より好ましくは炭素数3~8の分岐を有していても良いシクロアルキル基、さらに好ましくは炭素数3のシクロアルキル基である。
【0037】
式(1)中、R3において、「ヘテロ原子を含まない炭化水素基」としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、デシル基、ドデシル基、ビニル基、エチニル基、プロぺニル基、イソプロぺニル基、アリル基、プロパルギル基、ブテニル基、クロチル基、ブタジエニル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、フェニル基、ベンジル基、トリル基、スチリル基、2,4,6-トリメチルフェニル基等が挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert-ブチル基である。
【0038】
式(1)中、R3において「ヘテロ原子を含む炭化水素基」としては、好ましくは3-インドリル基、p-メトキシフェニル基、7-オキサビシクロ[2,2,1]ヘプタ-5-エン-2-イル基、1,2-エポキシエチル基、1-メチル-2-メトキシビニル基、2-フリル基、2-ピリジル基、4-イミダゾリル基、ベンジルオキシメチル基であり、より好ましくは1-メチル-2-メトキシビニル基、2-フリル基であるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0039】
式(1)中、R3として、好ましくは水素原子又はメチル基であり、より好ましくは水素原子である。
【0040】
式(1)において、R1~R3の一部又は全てが、それらが結合している窒素原子及び炭素原子と一緒になって相互に結合して環構造を形成してもよい。環構造とは、具体的にはR1及びR2、R1及びR3、又はR2及びR3が結合しヘテロ原子を2~10個含む炭素数2~24の炭化水素によって架橋されたことにより環状となった構造が挙げられるが、特に限定されない。
【0041】
式(1)においてR4は炭化水素基を示し、直鎖であってもよく、分岐及び/又は環構造及び/又は二重結合を含んでいてもよい。好ましくは炭素数1~12の炭化水素基、より好ましくは炭素数1~8の炭化水素基、さらに好ましくは炭素数1~3の炭化水素基である。
【0042】
式(1)中、R4の「炭化水素基」としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。好ましくは炭素数1~12の直鎖又は分岐を有するアルキル基、炭素数1~12の直鎖又は分岐を有するアルケニル基、炭素数1~12の直鎖又は分岐を有するアルキニル基、炭素数3~12の分岐を有していても良いシクロアルキル基、炭素数3~12の分岐を有していても良いシクロアルケニル基、炭素数6~12の分岐を有していても良いアリール基、炭素数7~12の分岐を有していても良いアラルキル基であり、より好ましくは炭素数1~3の直鎖又は分岐を有するアルキル基、炭素数1~3の直鎖又は分岐を有するアルケニル基である。
【0043】
式(1)中、R4の「炭化水素基」としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ビニル基、エチニル基、プロぺニル基、イソプロぺニル基、アリル基、プロパルギル基、1-プロピニル基、ブテニル基、クロチル基、ブタジエニル基、ペンタジエニル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、フェニル基、ベンジル基、トリル基、スチリル基、2,4,6-トリメチルフェニル基、ナフチル基、2,6ージメチルー1,5ーへプタジエニル基等が挙げられるが、特に制限されない。
【0044】
式(1)において、R4-CO-O-で表されるアニオンとしては、具体的には、酢酸イオン、プロピオン酸イオン、アクリル酸イオン、プロパルギル酸イオン、酪酸イオン、イソ酪酸イオン、メタクリル酸イオン、クロトン酸イオン、テトロル酸イオン、シクロプロパンカルボン酸イオン、吉草酸イオン、イソ吉草酸イオン、ピバル酸イオン、アンゲリカ酸イオン、チグリン酸イオン、シクロブタンカルボン酸イオン、カプロン酸イオン、シクロペンタンカルボン酸イオン、エナント酸イオン、ソルビン酸イオン、シクロヘキサンカルボン酸イオン、安息香酸イオン、カプリル酸イオン、2-エチルへキシルカルボン酸イオン、トルイル酸イオン、2-ノルボルナンカルボン酸イオン、ペラルゴン酸イオン、桂皮酸イオン、カプリン酸イオン、アダマンタンカルボン酸イオン、ゲラン酸イオン、ウンデシル酸イオン、ラウリン酸イオン、ナフタレンカルボン酸イオン、等が挙げられ、好ましくは酢酸イオン、プロピオン酸イオン、アクリル酸イオン、プロパルギル酸イオン、酪酸イオン、イソ酪酸イオン、メタクリル酸イオン、クロトン酸イオン、テトロル酸イオン、吉草酸イオン、イソ吉草酸イオン、ピバル酸イオンであり、特に好ましくは酢酸イオン、アクリル酸イオン又はメタクリル酸イオンであるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0045】
式(1)で表されるオニウム塩のイミダゾリウムカチオンとしては、具体的には、1,3-ビス(2-メトキシエチル)イミダゾリウム、1,3-ビス(2-エトキシエチル)イミダゾリウム、1,3-ビス(2-プロポキシエチル)イミダゾリウム、1,3-ビス(2-イソプロポキシエチル)イミダゾリウム、1,3-ビス(2-フェノキシエチル)イミダゾリウム、1,3-ビス(2-ベンジルオキシエチル)イミダゾリウム、1,3-ビス[2-(p-メトキシベンジルオキシ)エチル]イミダゾリウム、1,3-ビス[2-(2-メトキシエトキシメトキシ)エチル]イミダゾリウム、1,3-ビス[2-(2-ベンジルオキシエトキシ)エチル]イミダゾリウム、1,3-ビス(3-メトキシプロピル)イミダゾリウム、1,3-ビス(3-エトキシプロピル)イミダゾリウム、1,3-ビス(3-プロポキシプロピル)イミダゾリウム、1,3-ビス(3-イソプロポキシプロピル)イミダゾリウム、1,3-ビス(3-アリルオキシプロピル)イミダゾリウム、1,3-ビス(3-ブトキシプロピル)イミダゾリウム、1,3-ビス[3-(1-メチルプロポキシ)プロピル]イミダゾリウム、1,3-ビス[3-(2-メチルプロポキシ)プロピル]イミダゾリウム、1,3-ビス[3-(1,1-ジメチルエトキシ)プロピル]イミダゾリウム、1,3-ビス[(オキソラン-2-イル)メチル]イミダゾリウム、1,3-ビス(3-ペンチルオキシプロピル)イミダゾリウム、1,3-ビス(3-ネオペンチルオキシプロピル)イミダゾリウム、1,3-ビス(3-ヘキシルオキシプロピル)イミダゾリウム、1,3-ビス(3-シクロヘキシルオキシプロピル)イミダゾリウム、1,3-ビス(3-ヘプチルオキシプロピル)イミダゾリウム、1,3-ビス(3-オクチルオキシプロピル)イミダゾリウム、1,3-ビス(3-ノニルオキシプロピル)イミダゾリウム、1,3-ビス{3-[(2-エチルヘキサン-1-イル)オキシ]プロピル}イミダゾリウム、1,3-ビス[3-(2,4,6-トリメチルフェノキシ)プロピル]イミダゾリウム、1,3-ビス[3-(2-メトキシエトキシ)プロピル]イミダゾリウム、1,3-ビス[2-(ジメチルアミノ)エチル]イミダゾリウム、1,3-ビス[3-(ジメチルアミノ)プロピル]イミダゾリウム、1,3-ビス(2-メチルチオエチル)イミダゾリウム、1,3-ビス{2-[(フラン-2-イル)メチルチオ]エチル]イミダゾリウム、1,3-ビス[2-(フラン-2-イル)メチル]イミダゾリウム、1,3-ビス[1-(メトキシメチル)プロピル]イミダゾリウム、1,3-ビス(4-メトキシブチル)イミダゾリウム、1,3-ビス(4-エトキシブチル)イミダゾリウム、1,3-ビス(4-プロポキシブチル)イミダゾリウム、1,3-ビス(4-イソプロポキシブチル)イミダゾリウム、1,3-ビス(4-アリルオキシブチル)イミダゾリウム、1,3-ビス(4-ブトキシブチル)イミダゾリウム、1,3-ビス[4-(1-メチルプロポキシ)ブチル]イミダゾリウム、1,3-ビス[4-(2-メチルプロポキシ)ブチル]イミダゾリウム、1,3-ビス[4-(1,1-ジメチルエトキシ)ブチル]イミダゾリウム、1,3-ビス(4-ペンチルオキシブチル)イミダゾリウム、1,3-ビス(4-ネオペンチルオキシブチル)イミダゾリウム、1,3-ビス(4-ヘキシルオキシブチル)イミダゾリウム、1,3-ビス(4-シクロヘキシルオキシブチル)イミダゾリウム、1,3-ビス(4-ヘプチルオキシブチル)イミダゾリウム、1,3-ビス(4-オクチルオキシブチル)イミダゾリウム、1,3-ビス{4-[(2-エチルヘキサン-1-イル)オキシ]ブチル}イミダゾリウム、1,3-ビス(5-メトキシペンチル)イミダゾリウム、1,3-ビス(5-エトキシペンチル)イミダゾリウム、1,3-ビス(5-プロポキシペンチル)イミダゾリウム、1,3-ビス(5-イソプロポキシペンチル)イミダゾリウム、1,3-ビス(5-アリルオキシペンチル)イミダゾリウム、1,3-ビス(5-ブトキシペンチル)イミダゾリウム、1,3-ビス[5-(1-メチルプロポキシ)ペンチル]イミダゾリウム、1,3-ビス[5-(2-メチルプロポキシ)ペンチル]イミダゾリウム、1,3-ビス[5-(1,1-ジメチルエトキシ)ペンチル]イミダゾリウム、1,3-ビス(5-ペンチルオキシペンチル)イミダゾリウム、1,3-ビス(5-ネオペンチルオキシペンチル)イミダゾリウム、1,3-ビス(5-ヘキシルオキシペンチル)イミダゾリウム、1,3-ビス(5-シクロヘキシルオキシペンチル)イミダゾリウム、1,3-ビス(5-ヘプチルオキシペンチル)イミダゾリウム、1,3-ビス(6-メトキシヘキシル)イミダゾリウム、1,3-ビス(6-エトキシヘキシル)イミダゾリウム、1,3-ビス(6-プロポキシヘキシル)イミダゾリウム、1,3-ビス(6-イソプロポキシヘキシル)イミダゾリウム、1,3-ビス(6-アリルオキシヘキシル)イミダゾリウム、1,3-ビス(6-ブトキシヘキシル)イミダゾリウム、1,3-ビス[6-(1-メチルプロポキシ)ヘキシル]イミダゾリウム、1,3-ビス[6-(2-メチルプロポキシ)ヘキシル]イミダゾリウム、1,3-ビス[6-(1,1-ジメチルエトキシ)ヘキシル]イミダゾリウム、1,3-ビス(6-ペンチルオキシヘキシル)イミダゾリウム、1,3-ビス(6-ネオペンチルオキシヘキシル)イミダゾリウム、1,3-ビス(6-ヘキシルオキシヘキシル)イミダゾリウム、1,3-ビス(6-シクロヘキシルオキシヘキシル)イミダゾリウム、1,3-ビス[(2-メトキシシクロヘキサン-1-イル)メチル]イミダゾリウム、1,3-ビス[(2-エトキシシクロヘキサン-1-イル)メチル]イミダゾリウム、1,3-ビス[(2-プロポキシシクロヘキサン-1-イル)メチル]イミダゾリウム、1,3-ビス[(2-イソプロポキシシクロヘキサン-1-イル)メチル]イミダゾリウム、1,3-ビス[(2-ブトキシシクロヘキサン-1-イル)メチル]イミダゾリウム、1,3-ビス{[2-(1-メチルプロポキシ)シクロヘキサン-1-イル]メチル}イミダゾリウム、1,3-ビス{[2-(2-メチルプロポキシ)シクロヘキサン-1-イル]メチル}イミダゾリウム、1,3-ビス{[2-(1,1-ジメチルエトキシ)シクロヘキサン-1-イル]メチル}イミダゾリウム、1,3-ビス[(2-ペンチルオキシシクロヘキサン-1-イル)メチル]イミダゾリウム、1,3-ビス[(2-ネオペンチルオキシシクロヘキサン-1-イル)メチル]イミダゾリウム、1,3-ビス(3-メチルチオプロピル)イミダゾリウム、1,3-ビス[2-(メチルスルホニル)エチル]イミダゾリウム、1,3-ビス[(チオフェン-2-イル)メチル]イミダゾリウム、1,3-ビス(p-メトキシフェニル)イミダゾリウム、1,3-ビス(p-エトキシフェニル)イミダゾリウム、1,3-ビス(3,4-メチレンジオキシフェニル)イミダゾリウム、1,3-ビス(3,4-メチレンジオキシベンジル)イミダゾリウム、1,3-ビス{(7-オキサビシクロ[2,2,1]ヘプタン-2-イル)メチル}イミダゾリウム、1-メトキシプロピル-3-メチルチオプロピルイミダゾリウム、1,3-ビス(3-メトキシプロピル)-2-メチルイミダゾリウム、1,3-ビス(2-メトキシエチル)-2-メチルイミダゾリウム等が挙げられ、好ましくは1,3-ビス(3-メトキシプロピル)イミダゾリウム、1,3-ビス(3-エトキシプロピル)イミダゾリウム、1,3-ビス(3-プロポキシプロピル)イミダゾリウム、1,3-ビス(3-イソプロポキシプロピル)イミダゾリウム、1,3-ビス(3-アリルオキシプロピル)イミダゾリウム、1,3-ビス(3-ブトキシプロピル)イミダゾリウム、1,3-ビス[3-(1-メチルプロポキシ)プロピル]イミダゾリウム、1,3-ビス[3-(2-メチルプロポキシ)プロピル]イミダゾリウム、1,3-ビス[3-(1,1-ジメチルエトキシ)プロピル]イミダゾリウム、1,3-ビス[(オキソラン-2-イル)メチル]イミダゾリウム、1,3-ビス[3-(2-メトキシエトキシ)プロピル]イミダゾリウム、1,3-ビス(3-メチルチオプロピル)イミダゾリウム、1-メトキシプロピル-3-メチルチオプロピルイミダゾリウム、1,3-ビス(3-メトキシプロピル)-2-メチルイミダゾリウム、1,3-ビス(2-メトキシエチル)-2-メチルイミダゾリウムであり、より好ましくは1,3-ビス(3-メトキシプロピル)イミダゾリウム、1,3-ビス(3-エトキシプロピル)イミダゾリウム、1-メトキシプロピル-3-メチルチオプロピルイミダゾリウム、1,3-ビス[3-(2-メトキシエトキシ)プロピル]イミダゾリウム、1,3-ビス(2-メトキシエチル)-2-メチルイミダゾリウム、1,3-ビス(3-メトキシプロピル)-2-メチルイミダゾリウムであるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0046】
式(1)で表されるオニウム塩として好ましくは、1,3-ビス(2-メトキシエチル)イミダゾリウム、1,3-ビス(3-メトキシプロピル)イミダゾリウム、1,3-ビス(3-エトキシプロピル)イミダゾリウム、1,3-ビス(3-メチルチオプロピル)イミダゾリウム、1,3-ビス[3-(2-メトキシエトキシ)プロピル]イミダゾリウム、1-メトキシプロピル-3-メチルチオプロピルイミダゾリウム、1,3-ビス(2-メトキシエチル)-2-メチルイミダゾリウム、1,3-ビス(3-メトキシプロピル)-2-メチルイミダゾリウムからなる群より選択される1つのカチオンと、酢酸イオン、アクリル酸イオン、メタクリル酸イオンからなる群より選択される1つのアニオンとの組み合わせから構成されるオニウム塩である。
【0047】
式(1)で表されるオニウム塩として、より具体的には、1,3-ビス(2-メトキシエチル)イミダゾリウムアセテート、1,3-ビス(3-メトキシプロピル)イミダゾリウムアセテート、1,3-ビス(3-メトキシプロピル)イミダゾリウムアクリレート、1,3-ビス(3-メトキシプロピル)イミダゾリウムメタクリレート、1,3-ビス(3-エトキシプロピル)イミダゾリウムアセテート、1-メトキシプロピル-3-メチルチオプロピルイミダゾリウムアセテート、1,3-ビス(3-メチルチオプロピル)イミダゾリウムアセテート、1,3-ビス(2-メトキシエチル)-2-メチルイミダゾリウムアセテート、1,3-ビス(2-メトキシエチル)-2-メチルイミダゾリウムアクリレート、1,3-ビス(2-メトキシエチル)-2-メチルイミダゾリウムメタクリレート、1,3-ビス(3-メトキシプロピル)-2-メチルイミダゾリウムアセテート、1,3-ビス(3-メトキシプロピル)-2-メチルイミダゾリウムアクリレート、1,3-ビス(3-メトキシプロピル)-2-メチルイミダゾリウムメタクリレート、1,3-ビス[3-(2-メトキシエトキシ)プロピル]イミダゾリウムアセテート、1,3-ビス[3-(2-メトキシエトキシ)プロピル]イミダゾリウムアクリレート、1,3-ビス[3-(2-メトキシエトキシ)プロピル]イミダゾリウムメタクリレート等が挙げられ、好ましくは1,3-ビス(3-メトキシプロピル)イミダゾリウムアセテート、1,3-ビス(3-メトキシプロピル)イミダゾリウムアクリレート、1,3-ビス(3-メトキシプロピル)イミダゾリウムメタクリレートであるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0048】
本発明のオニウム塩(1)は、例えば、下記反応式1に示す製造方法(製造方法1)で得ることができる。具体的には[製造例1]に示す1,3-ビス(3-メトキシプロピル)イミダゾリウムアセテートの製造方法を参考にして、当業者であれば容易に製造することができる。
【0049】
反応式1:
【化8】
(反応式1中、R1、R2、R3及びR4は各々前記に定義される通りである。)
【0050】
製造方法1について説明する。グリオキサール、R1-NH2(式(2))及び/又はR2-NH2(式(3))で表されるアミン化合物、R3-CHOで表されるアルデヒド化合物(式(4))、及びR4-COOH(式(5))で表されるカルボン酸を反応させる。
【0051】
1-NH2(式(2))又はR2-NH2(式(3))で表されるアミン化合物としては、具体的には2-メトキシエチルアミン、2-エトキシエチルアミン、2-プロポキシエチルアミン、2-イソプロポキシエチルアミン、2-アリルオキシエチルアミン、2-ブトキシエチルアミン、2-(1-メチルプロポキシ)エチルアミン、2-(2-メチルプロポキシ)エチルアミン、2-(1,1-ジメチルエトキシ)エチルアミン、2-ペンチルオキシエチルアミン、2-ネオペンチルオキシエチルアミン、2-ヘキシルオキシエチルアミン、2-フェノキシエチルアミン、2-ヘプチルオキシエチルアミン、2-オクチルオキシエチルアミン、2-ノニルオキシエチルアミン、2-デシルオキシエチルアミン、2-シクロペンチルオキシエチルアミン、2-シクロヘキシルオキシエチルアミン、2-(2-エチルヘキサン-1-イル)オキシエチルアミン、2-(2,4,6-トリメチルフェノキシ)エチルアミン、2-(ベンジルオキシ)エチルアミン、2-(p-メトキシベンジルオキシ)エチルアミン、2-(2-メトキシエトキシメトキシ)エチルアミン、2-(2-ベンジルオキシエトキシ)エチルアミン、2-(ジメチルアミノ)エチルアミン、3-メトキシプロピルアミン、3-エトキシプロピルアミン、3-プロポキシプロピルアミン、3-アリルオキシプロピルアミン、3-イソプロポキシプロピルアミン、3-(1-メチルプロポキシ)プロピルアミン、3-(2-メチルプロポキシ)プロピルアミン、3-(1,1-ジメチルエトキシ)プロピルアミン、3-ブトキシプロピルアミン、3-ペンチルオキシプロピルアミン、3-ネオペンチルオキシプロピルアミン、3-ヘキシルオキシプロピルアミン、3-シクロヘキシルオキシプロピルアミン、3-ヘプチルオキシプロピルアミン、3-オクチルオキシプロピルアミン、3-ノニルオキシプロピルアミン、3-(2-エチルヘキサン-1-イル)オキシプロピルアミン、3-(2,4,6-トリメチルフェノキシ)プロピルアミン、3-(2-メトキシエトキシ)プロピルアミン、3-(ジメチルアミノ)プロピルアミン、4-メトキシブチルアミン、4-エトキシブチルアミン、4-プロポキシブチルアミン、4-イソプロポキシブチルアミン、4-アリルオキシブチルアミン、4-ブトキシブチルアミン、4-(1-メチルプロポキシ)ブチルアミン、4-(2-メチルプロポキシ)ブチルアミン、4-(1,1-ジメチルエトキシ)ブチルアミン、4-ペンチルオキシブチルアミン、4-ネオペンチルオキシブチルアミン、4-ヘキシルオキシブチルアミン、4-シクロヘキシルオキシブチルアミン、4-ヘプチルオキシブチルアミン、4-オクチルオキシブチルアミン、4-(2-エチルヘキサン-1-イル)オキシブチルアミン、5-メトキシペンチルアミン、5-エトキシペンチルアミン、5-プロポキシペンチルアミン、5-イソプロポキシペンチルアミン、5-アリルオキシペンチルアミン、5-ブトキシペンチルアミン、5-(1-メチルプロポキシ)ペンチルアミン、5-(2-メチルプロポキシ)ペンチルアミン、5-(1,1-ジメチルエトキシ)ペンチルアミン、5-ペンチルオキシペンチルアミン、5-ネオペンチルオキシペンチルアミン、5-ヘキシルオキシペンチルアミン、5-シクロヘキシルオキシペンチルアミン、5-ヘプチルオキシペンチルアミン、6-メトキシヘキシルアミン、6-エトキシヘキシルアミン、6-プロポキシヘキシルアミン、6-イソプロポキシヘキシルアミン、6-アリルオキシヘキシルアミン、6-ブトキシヘキシルアミン、6-(1-メチルプロポキシ)ヘキシルアミン、6-(2-メチルプロポキシ)ヘキシルアミン、6-(1,1-ジメチルエトキシ)ヘキシルアミン、6-ペンチルオキシヘキシルアミン、6-ネオペンチルオキシヘキシルアミン、6-ヘキシルオキシヘキシルアミン、6-シクロヘキシルオキシヘキシルアミン、2-メトキシシクロヘキシル-1-イルメチルアミン、(2-エトキシシクロヘキサン-1-イル)メチルアミン、(2-プロポキシシクロヘキサン-1-イル)メチルアミン、(2-イソプロポキシシクロヘキサン-1-イル)メチルアミン、(2-ブトキシシクロヘキシル-1-イル)メチルアミン、[2-(1-メチルプロポキシ)シクロヘキサン-1-イル]メチルアミン、[2-(2-メチルプロポキシ)シクロヘキサン-1-イル]メチルアミン、[2-(1,1-ジメチルエトキシ)シクロヘキサン-1-イル]メチルアミン、(2-ペンチルオキシシクロヘキサン-1-イル)メチルアミン、(2-ネオペンチルオキシシクロヘキサン-1-イル)メチルアミン、2-メチルチオエチルアミン、3-メチルチオプロピルアミン、1-(メトキシメチル)プロピルアミン、(オキソラン-2-イル)メチルアミン、(フラン-2-イル)メチルアミン、2-[(フラン-2-イル)メチルチオ]エチルアミン、2-(メチルスルホニル)エチルアミン、(チオフェン-2-イル)メチルアミン、p-メトキシフェニルアミン、p-エトキシフェニルアミン、3,4-メチレンジオキシアニリン、3,4-メチレンジオキシベンジルアミン、(7-オキサビシクロ[2,2,1]ヘプタン-2-イル)メチルアミン等が挙げられ、好ましくは2-メトキシエチルアミン、3-メトキシプロピルアミン、3-エトキシプロピルアミン、3-イソプロポキシプロピルアミン、3-ブトキシプロピルアミン、3-(2-メトキシエトキシ)プロピルアミン、3-メチルチオプロピルアミン、3-(ジメチルアミノ)プロピルアミンであり、より好ましくは2-メトキシエチルアミン、3-メトキシプロピルアミン、3-(2-メトキシエトキシ)プロピルアミンであるが、本発明はこれらに限定されるものではない。R1-NH2又はR2-NH2で表されるアミン化合物は、同一であっても、異なっていても良い。
【0052】
3-CHO(式(4))で表されるアルデヒド化合物としては、具体的にはホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブタナール、ペンタナール、ヘキサナール、ヘプタナール、オクタナール、ノナナール、デカナール、アクロレイン、ベンズアルデヒド、シンナムアルデヒド、ペリルアルデヒド、バニリン等が挙げられ、好ましくはホルムアルデヒド、アセトアルデヒドであるが、本発明はこれらに限定されるものではない。ホルムアルデヒドは、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、テトラオキサンなどのホルムアルデヒドを反応系中で生成可能な環状オリゴマー又はポリマーを使用してもよい。
【0053】
3-CHO(式(4))で表されるアルデヒド化合物は水溶液、又はメタノール、ブタノール、2-エチルヘキサノール等のアルコール溶液をそのまま使用しても良い。
【0054】
4-COOH(式(5))で表されるカルボン酸としては酢酸、プロピオン酸、アクリル酸、プロパルギル酸、酪酸、イソ酪酸、メタクリル酸、クロトン酸、テトロル酸、シクロプロパンカルボン酸、吉草酸、イソ吉草酸、ピバル酸、アンゲリカ酸、チグリン酸、シクロブタンカルボン酸、カプロン酸、シクロペンタンカルボン酸、エナント酸、ソルビン酸、シクロヘキサンカルボン酸、安息香酸、カプリル酸、2-エチルへキシルカルボン酸、トルイル酸、2-ノルボルナンカルボン酸、ペラルゴン酸、キュバンカルボン酸、桂皮酸、カプリン酸、3-ノルアダマンタンカルボン酸、ゲラン酸、ウンデシル酸、1-ナフタレンカルボン酸、2-ナフタレンカルボン酸、1-アダマンタンカルボン酸等が挙げられ、好ましくは酢酸、プロピオン酸、アクリル酸、プロパルギル酸、酪酸イオン、イソ酪酸、メタクリル酸、クロトン酸、テトロル酸、吉草酸、イソ吉草酸、ピバル酸であり、特に好ましくは酢酸、アクリル酸又はメタクリル酸であるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0055】
グリオキサールは水溶液、又はメタノール、ブタノール、2-エチルヘキサノール等のアルコール溶液をそのまま使用しても良い。
【0056】
1-NH2(式(2))及びR2-NH2(式(3))で表されるアミン化合物の使用量としては、グリオキサール1モルに対して、R1-NH2とR2-NH2の合計量が0.1~10モルであることが好ましく、0.5~3モルであることがより好ましい。R1とR2が異なる場合、2種のアミン化合物(R1-NH2とR2-NH2)の割合(モル比)は、特に限定するものではなく、R1-NH2:R2-NH2=0:100~100:0の範囲である。R1-NH2:R2-NH2=0:100若しくは100:0の場合、R1=R2になる。R1-NH2:R2-NH2=0:100若しくは100:0ではない場合、製造方法1により得られるオニウム塩(1)は下記式で表される化合物の混合物となる。下記式(1')、式(1'')で表される化合物のいずれも式(1)で表されるオニウム塩に包含され、当該混合物を後述するオニウム塩組成物として使用 しても良い。また、任意選択で、当該混合物を精製して所望の単一化合物としたうえでオニウム塩(1)として使用することもできる。
【0057】
【化9】
【0058】
3-CHOで表されるアルデヒド化合物(式(4))は水溶液、又はメタノール、ブタノール、2-エチルヘキサノール等のアルコール溶液をそのまま使用しても良い。アルデヒド化合物の使用量としては、グリオキサール1モルに対してアルデヒド化合物が0.1~10モルであることが好ましく、0.5~5モルであることがより好ましい。
【0059】
4-COOH(式(5))で表されるカルボン酸の使用量としては、グリオキサール1モルに対してカルボン酸が0.1~10モルであることが好ましく、0.5~2モルであることがより好ましい。
【0060】
製造方法1において、溶媒は使用してもしなくてもよい。溶媒を使用する場合、使用する溶媒は反応に影響を与えないものであれば特に制限されない。溶媒の具体例としては、トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の炭化水素溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル溶媒、メタノール、エタノール、2-プロパノール等のアルコール溶媒、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、水等が挙げられ、好ましくはアルコール溶媒、水である。
【0061】
また、予め製造したオニウム塩(1)を製造方法1の反応溶媒として使用することもできる。溶媒は任意選択で2種以上を混合して使用することもできる。溶媒の使用量はグリオキサール1質量部に対して、50質量部以下であることが好ましく、0.1~10質量部であることがより好ましい。
【0062】
製造方法1において、任意選択で、窒素、アルゴン、ヘリウム等の反応に影響を与えない不活性ガス雰囲気下で反応させてもよい。
【0063】
製造方法1を行う際、反応圧力は、通常大気圧下であるが、使用する原料及び/又は溶媒によっては反応系内を大気圧~1MPaの圧力に加圧して反応させてもよい。
【0064】
反応温度は、使用する原料、溶媒等によって最適な温度が異なるが、-10℃以上であることが好ましく、0℃~100℃であることがより好ましい。
【0065】
製造方法1の反応終了後、オニウム塩(1)は公知の精製方法により精製しても、精製しなくてもよい。精製方法としては濃縮、分液、再結晶、透析、吸着、ろ過等が挙げられるが特に制限されない。
【0066】
オニウム塩組成物(1)に含まれるセルロース含有バイオマスは、特に限定されない。具体的には、パルプ、綿や麻等の天然繊維品、レーヨン、キュプラ、アセテート等の再生繊維品、稲わら等の各種わら、バガス、木材チップ等の農産廃棄物、古紙、建築廃材等の各種廃棄物等を含むバイオマスが挙げられる。上記のパルプ、綿や麻等の天然繊維品、レーヨン、キュプラ、アセテート等の再生繊維品、稲わら等の各種わら、バガス、木材チップ等の農産廃棄物、古紙、建築廃材等の各種廃棄物等を含むバイオマスをオニウム塩(1)に溶解する場合には、これらを裁断したものを使用することが溶解までの時間を短縮するために好ましい。
【0067】
本発明において、セルロースとは、グルコースがβ-1,4-グルコシド結合により重合した重合体及びその誘導体をいう。セルロースにおけるグルコースの重合度は、特に限定されないが、好ましくは200以上である。また、誘導体としては、カルボキシメチル化、アルデヒド化、エステル化等の誘導体が挙げられる。また、セルロースは、その部分分解物である、セロオリゴ糖、セロビオースを含んでいてもよい。さらに、セルロースは、配糖体であるβ-グルコシド、リグニン及び/又はヘミセルロースとの複合体であるリグノセルロース、さらにペクチン等との複合体であってもよい。本発明のオニウム塩は、リグノセルロース、さらにペクチン等との複合体であっても10℃~50℃でセルロースを溶解することができる。セルロースは、結晶性セルロースであってもよいし、非結晶性セルロースであってもよいが、好ましくは結晶性セルロースである。さらに、セルロースは天然由来のものでも、人為的に合成したものでもよい。セルロースの由来も特に限定しない。植物由来のものでも、真菌由来のものでも、細菌由来のものであってもよい。
【0068】
オニウム塩組成物(1)に含まれる酵素は、セルロース加水分解酵素であって、セルラーゼが挙げられる。セルラーゼは、セルロースのβ-1,4-グルコシド結合を加水分解する。セルラーゼの種類としては、代表的には、エンドβ-1,4-グルカナーゼ(以下、単に「エンドグルカナーゼ」という)、セロビオヒドロラーゼ、およびβ-グルコシダーゼが挙げられるが、これらに限定されない。
【0069】
本明細書において、セルロース加水分解とは、セルロースのβ-1,4-グルコシド結合が加水分解を受け、グルコース、セロビオースなどの還元糖が生成することをいう。また、セルロースの加水分解物とは、セルロースが加水分解されて生成するグルコース、セロビオースなどの還元糖である。
【0070】
エンドグルカナーゼは、通常、セルラーゼと称される酵素であり、セルロースを分子内部から切断し、グルコース、セロビオース、およびセロオリゴ糖(重合度が3以上であり、そして通常、10以下であるが、これに限定されない)を生じる。
エンドグルカナーゼは、非晶性セルロースを加水分解する酵素の代表例である。エンドグルカナーゼとしては、例えば、トリコデルマ・リーセイ由来エンドグルカナーゼ(特に、EGII) が挙げられるが、これに限定されない。
【0071】
セロビオヒドロラーゼは、セルロースの還元末端または非還元末端のいずれかから分解してセロビオースを遊離する。セロビオヒドロラーゼは、結晶性セルロースを加水分解する酵素の代表例である。セロビオヒドロラーゼには2種類あり、それぞれセロビオヒドロラーゼ1およびセロビオヒドロラーゼ2と称される。セロビオヒドロラーゼとしては、例えば、トリコデルマ・リーセイ由来セロビオヒドロラーゼ(特に、CBH2)が挙げられるが、これに限定されない。
【0072】
β-グルコシダーゼは、セルロースにおいては、非還元末端からグルコース単位を切り離していくエキソ型の加水分解酵素である。β-グルコシダーゼは、アグリコンまたは糖鎖とβ-D-グルコースとのβ1,4-グルコシド結合を切断し、セロビオースまたはセロオリゴ糖を加水分解してグルコースを生成する。β-グルコシダーゼは、セロビオースまたはセロオリゴ糖を加水分解する酵素の代表例である。β-グルコシダーゼの1種類は、β-グルコシダーゼ1と称される。β-グルコシダーゼとしては、例えば、アスペルギルス・アクレアータス由来β-グルコシダーゼ(特に、BGL1)挙げられるが、これに限定されない。
【0073】
セルラーゼとしては、天然由来のものであってもよいし、組換えDNA技術により製造されたものであってもよいし、市販されているものであってもよい。精製されたものであってもよいし、酵素産生微生物などそのままであってもよい。酵素製剤であってもよいし、セルラーゼ発現微生物などであってもよい。例えば、クロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)などのClostridium属、Trichoderma reeseiなどのTrichoderma属またはAspergillus oryzaeやAspergillus nigerなどのAspergillus属由来のセルラーゼが挙げられる。Pyrococcus属に代表される超好熱性古細菌由来のセルラーゼであってもよい。
【0074】
セルラーゼとしては、2種以上を組み合わせて用いてもよい。好ましくは、セルロースをグルコースにまで加水分解することが可能な組み合わせである。
【0075】
オニウム塩組成物(1)として、好ましくは、セルロース含有バイオマスがオニウム塩(1)に溶解している、オニウム塩組成物(1)である。
【0076】
オニウム塩組成物(1)として、好ましくは、オニウム塩(1)、セルロース含有バイオマス及び酵素と水を含有する、オニウム塩組成物(1)である。より好ましくは、オニウム塩(1)、セルロース含有バイオマス及び酵素と水を含有し、セルロース含有バイオマスがオニウム塩(1)に溶解している、オニウム塩組成物(1)である。
【0077】
オニウム塩組成物(1)として、好ましくは、オニウム塩(1)、セルロース含有バイオマス及び酵素と水を含有するオニウム塩組成物(1)であって、オニウム塩(1)の濃度が、オニウム塩組成物(1)の全量100質量%に対して、0.1質量%以上20質量%以下である、オニウム塩組成物(1)である。オニウム塩(1)の濃度として、より好ましくは、0.5質量%以上15質量%以下、さらに好ましくは、1質量%以上10質量%以下である。
【0078】
本発明の一つは、前述の式(1)で示されるオニウム塩(1)、グルコース及び微生物を含むオニウム塩組成物(以下、オニウム塩組成物(2)という。)に係るものである。オニウム塩組成物(2)に含まれるオニウム塩(1)は、前述のオニウム塩(1)と同様のものである。
【0079】
オニウム塩組成物(2)に含まれるグルコースは、分子式C6126を持つ単糖分子であり、セルロースを構成するものである。
【0080】
オニウム塩組成物(2)に含まれる微生物は、グルコースを炭素源としてアルコール及び/又は有機酸を生産する微生物である。例えば、エタノール生産微生物が挙げられる。エタノール生産微生物は、発酵を進めることによってエタノールと同時に酢酸などの有機酸を生産することができる。
【0081】
エタノール生産微生物としては、特に限定されず、例えば、酵母、エタノール生産糸状菌、エタノール生産細菌が挙げられる。好ましくは、酵母である。酵母としては、特に限定されず、例えば、サッカロマイセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)などのサッカロマイセス属の酵母、シゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)などのシゾサッカロマイセス属の酵母、カンジダ・クルゼイ(Candida krusei)、キャンディダ・シェハーテ(Candidashehatae)などのキャンディダ属の酵母、ピヒア・パストリス(Pichia pastoris)、ピヒア・スティピティス(Pichia stipitis)などのピヒア属の酵母、ハンセヌラ(Hansenula)属の酵母、トリコスポロン(Trichosporon)属の酵母、ブレタノマイセス(Brettanomyces)属の酵母、パチソレン(Pachysolen)属の酵母、ヤマダジマ(Yamadazyma)属の酵母、クルイベロマイセス・マーキシアヌス(Kluyveromyces marxianus)、クルイベロマイセス・ラクティス(Kluveromyces lactis)などのクルイベロマイセス属の酵母が挙げられる。なかでも、工業的利用性などの観点からサッカロマイセス属酵母が好ましく、サッカロマイセス・セレビジエがより好ましい。酵母として生イースト、ドライイーストを使用することができる。エタノール生産糸状菌としては、特に限定されず、例えば、ケカビ(Mucor)属の糸状菌が挙げられる。エタノール生産細菌としては、特に限定されず、例えば、ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)、エタノールを生産するように形質転換された遺伝子組換え大腸菌が挙げられる。
【0082】
オニウム塩組成物(2)として、好ましくは、グルコースがオニウム塩(1)に溶解している、オニウム塩組成物(2)である。
【0083】
オニウム塩組成物(2)として、好ましくは、オニウム塩(1)、グルコース及び微生物と水を含有する、オニウム塩組成物(2)である。より好ましくは、オニウム塩(1)、グルコース及び微生物と水を含有し、グルコースがオニウム塩(1)に溶解している、オニウム塩組成物(2)である。
【0084】
オニウム塩組成物(2)として、好ましくは、オニウム塩(1)、グルコース及び微生物と水を含有するオニウム塩組成物(2)であって、オニウム塩(1)の濃度が、オニウム塩組成物(2)の全量100質量%に対して、0.1質量%以上20質量%以下である、オニウム塩組成物(2)である。オニウム塩(1)の濃度として、より好ましくは0.5質量%以上15質量%以下、さらに好ましくは1質量%以上10質量%以下である。
【0085】
本発明の一つは、前述の式(1)で示されるオニウム塩(1)、セルロース含有バイオマス、酵素、グルコース及び微生物を含むオニウム塩組成物(以下、オニウム塩組成物(3)という。)に係るものである。オニウム塩組成物(3)に含まれるオニウム塩(1)、セルロース含有バイオマス、酵素、グルコース及び微生物のそれぞれは、前述のオニウム塩(1)、セルロース含有バイオマス、酵素、グルコース及び微生物のそれぞれと同様のものである。
【0086】
オニウム塩組成物(3)として、好ましくは、オニウム塩(1)、セルロース含有バイオマス、酵素、グルコース及び微生物と水を含有する、オニウム塩組成物(3)である。
【0087】
オニウム塩組成物(3)として、好ましくは、オニウム塩(1)、セルロース含有バイオマス、酵素、グルコース及び微生物と水を含有するオニウム塩組成物(3)であって、オニウム塩(1)の濃度が、オニウム塩組成物(3)の全量100質量%に対して、0.1質量%以上20質量%以下である、オニウム塩組成物(3)である。オニウム塩(1)の濃度として、より好ましくは0.5質量%以上15質量%以下、さらに好ましくは1質量%以上10質量%以下である。
【0088】
本発明の一つは、前述の式(1)で表されるオニウム塩(1)及び水の存在下で、セルロース含有バイオマスに含有されるセルロースを酵素で加水分解する、セルロースの加水分解物の製造方法に係るものである。
【0089】
セルロースの加水分解物の製造方法として、好ましくは、下記の工程(1)~(3)を有する、セルロースの加水分解物の製造方法である。
工程(1):前述の式(1)で表されるオニウム塩(1)の存在下で、セルロース含有バイオマスを溶解させる工程。
工程(2):工程(1)で得た溶解液に水と酵素を添加する工程。
工程(3):工程(2)で得た溶液を攪拌し、セルロース含有バイオマスに含有されるセルロースを酵素で加水分解して、セルロースの加水分解物を得る工程。
【0090】
セルロースの加水分解物の製造方法の工程(1)で使用するオニウム塩(1)とセルロース含有バイオマスの割合は、セルロース含有バイオマスの含有率[{セルロース含有バイオマス(g)/(セルロース含有バイオマス(g)+オニウム塩(1))}×100]で、1~30質量%であることが好ましく、10~28質量%であることがより好ましく、15~25質量%が特に好ましい。
【0091】
前記工程(1)において、オニウム塩(1)の存在下で、セルロース含有バイオマスを溶解させるときの温度は、0~120℃であることが好ましく、20~100℃、25~80℃であることが特に好ましい。
【0092】
セルロースの加水分解物の製造方法の工程(2)で添加する水の量は、工程(1)で得た溶解液1kgに対して、4~999kgであることが好ましく、6~150kgであることがより好ましく、19~99kgであることが特に好ましい。
【0093】
前記工程(2)で添加する酵素の量は、工程(1)で得た溶解液1kgに対して、0.1~50gであることが好ましく、1~10gであることがより好ましく、2~5gであることが特に好ましい。
【0094】
前記工程(2)で添加する水と酵素は、別々に添加してもよく、同時に添加してもよい。また、水と酵素を事前に混合したものを添加してもよい。
【0095】
前記工程(2)で水と酵素を添加するときの温度は、工程(1)で得た溶液の温度で、10~60℃であることが好ましく、25~50℃であることがより好ましい。
【0096】
セルロースの加水分解物の製造方法の工程(3)で行うセルロースを酵素で加水分解は、工程(2)で得た溶液を攪拌して行う。加水分解を行うときの温度は、10~60℃であることが好ましく、25~50℃であることがより好ましい。加水分解を行う時間または攪拌時間は、4~100時間であることが好ましく、12~96時間であることがより好ましく、24~72時間であることが特に好ましい。
【0097】
前記工程(3)の終了後に、工程(3)で得られた溶液を濾過して、セルロース含有バイオマスの残留物を濾別し、セルロースの加水分解物を含む溶液を濾液として得ることができる。
【0098】
本発明の一つの実施形態は、前述の式(1)で表されるオニウム塩(1)及び水の存在下で、セルロースの加水分解物を微生物で発酵させる、アルコール及び/又は有機酸の製造方法に係るものである。
【0099】
アルコール及び/又は有機酸の製造方法として、好ましくは、下記の工程(1)~(3)を有する、アルコール及び/又は有機酸の製造方法である。
工程(1):前述の記式(1)で表されるオニウム塩、セルロースの加水分解物、水及び微生物を混合させる工程。
工程(2):工程(1)で得た微生物が添加された溶液において、セルロースの加水分解物を微生物で発酵させ、アルコール及び/又は有機酸を製造する工程。
工程(3):工程(2)で得たアルコール及び/又は有機酸を含有する溶液から、アルコール及び/又は有機酸を分離する工程。
【0100】
アルコール及び/又は有機酸の製造方法として、より好ましくは、アルコールの製造方法であって、さらに好ましくは、エタノールの製造方法である。
【0101】
セルロースの加水分解物を微生物で発酵させ、アルコール及び/又は有機酸の製造方法の工程(1)で使用するセルロースの加水分解物は、前述のセルロースの加水分解物の製造方法で得られる加水分解物を使用することができる。
【0102】
前記工程(1)で混合するオニウム塩、セルロースの加水分解物、水及び微生物の使用量の割合は、オニウム塩1kgに対して、セルロース加水分解物は0.1~100kg、水は4~999kg、微生物は0.01~10kgである。
【0103】
前記工程(1)でオニウム塩、セルロースの加水分解物、水及び微生物を混合するときの温度は、5~60℃であることが好ましく、10~50℃であることがより好ましく、25~40℃であることが特に好ましい。
【0104】
セルロースの加水分解物を微生物で発酵させ、アルコール及び/又は有機酸の製造方法の工程(2)の微生物によるセルロースの加水分解物の発酵は、微生物が添加された溶液を攪拌して行ってもよく、静置して(攪拌せずに)行ってもよい。
【0105】
前記工程(2)の微生物によるセルロースの加水分解物の発酵温度は、5~60℃であることがより好ましく、10~50℃であることがより好ましく、25~40℃であることが特に好ましい。
【0106】
前記工程(2)の微生物によるセルロースの加水分解物の発酵時間は、1~48時間であることが好ましく、8~36時間であることがより好ましく、12~24時間であることが特に好ましい。
【0107】
前記工程(2)で、セルロースの加水分解物を微生物で発酵させることにより、アルコール及び/又は有機酸が生成する。例えば、アルコールとしてはメタノール、エタノール等であり、有機酸としてはギ酸、酢酸等である。
【0108】
セルロースの加水分解物を微生物で発酵させ、アルコール及び/又は有機酸の製造方法の工程(3)のアルコール及び/又は有機酸の分離は、前記工程(2)で得られたアルコール及び/又は有機酸を含有する溶液を加熱して、アルコール及び/又は有機酸を蒸留して分離することができる。
【0109】
本発明の一つは、前述の式(1)で表されるオニウム塩(1)及び水の存在下で、セルロース含有バイオマスからアルコール及び/又は有機酸を製造する方法であって、下記の工程(1)~(6)を有するアルコール及び/又は有機酸の製造方法に係るものである。工程(1):前述の式(1)で表されるオニウム塩(1)の存在下で、セルロース含有バイオマスを溶解させる工程。
工程(2):工程(1)で得た溶解液に水と酵素を添加する工程。
工程(3):工程(2)で得た溶液を攪拌し、セルロース含有バイオマスに含有されるセルロースを酵素で加水分解して、セルロースの加水分解物を得る工程。
工程(4):工程(3)で得たセルロースの加水分解物を含む溶液に微生物を添加する工程。
工程(5):工程(4)で得た微生物が添加された溶液において、セルロースの加水分解物を微生物で発酵させ、アルコール及び/又は有機酸を製造する工程。
工程(6):工程(5)で得たアルコール及び/又は有機酸を含有する溶液から、アルコール及び/又は有機酸を分離する工程。
【0110】
セルロース含有バイオマスからアルコール及び/又は有機酸を製造する方法の工程(1)で使用するオニウム塩(1)とセルロース含有バイオマスの割合は、セルロース含有バイオマスの含有率[{セルロース含有バイオマス(g)/(セルロース含有バイオマス(g)+オニウム塩(1))}×100]で、1~30質量%であることが好ましく、10~28質量%であることがより好ましく、15~25質量%であるであることが特に好ましい。
【0111】
前記工程(1)において、0~120℃であることが好ましく、20~100℃であることがより好ましく、25~80℃であることが特に好ましい。
【0112】
セルロース含有バイオマスからアルコール及び/又は有機酸を製造する方法の工程(2)で添加する水の量は、前記工程(1)で得た溶解液1kgに対して、4~999kgであることが好ましく、6~150kgであることがより好ましく、19~99kgであることが特に好ましい。
【0113】
前記工程(2)で添加する酵素の量は、前記工程(1)で得た溶解液1kgに対して、0.1~50gであることが好ましく、1~10gであることがより好ましく、2~5gであることが特に好ましい。
【0114】
前記工程(2)で添加する水と酵素は、別々に添加してもよく、同時に添加してもよい。また、水と酵素を事前に混合したものを添加してもよい。
【0115】
前記工程(2)で水と酵素を添加するときの温度は、前記工程(1)で得た溶液の温度で、10~60℃であることが好ましく、25~50℃であることがより好ましい。
【0116】
セルロース含有バイオマスからアルコール及び/又は有機酸を製造する方法の工程(3)で行うセルロースを酵素で加水分解は、前記工程(2)で得た溶液を攪拌して行う。加水分解を行うときの温度は、10~60℃であることが好ましく、25~50℃であることがより好ましい。加水分解を行う時間または攪拌時間は、4~100時間であることが好ましく、12~96時間であることがより好ましく、24~72時間であることが特に好ましい。
【0117】
セルロース含有バイオマスからアルコール及び/又は有機酸を製造する方法の工程(4)で添加する微生物の量は、前記工程(3)で得たセルロースの加水分解物を含む溶液1kgに対して、0.01~10gであることが好ましく、0.1~5gであることがより好ましい。
【0118】
前記工程(4)で微生物を添加するときの温度は、前記工程(3)で得たセルロースの加水分解物を含む溶液の温度で、5~60℃であることが好ましく、10~50℃であることがより好ましく、25~40℃であることが特に好ましい。
【0119】
セルロース含有バイオマスからアルコール及び/又は有機酸を製造する方法の工程(5)の微生物によるセルロースの加水分解物の発酵は、前記工程(4)で得た微生物が添加された溶液を攪拌して行ってもよく、静置して(攪拌せずに)行ってもよい。
【0120】
前記工程(5)の微生物によるセルロースの加水分解物の発酵温度は、5~60℃であることが特に好ましく、10~50℃であることがより好ましく、25~40℃であることが特に好ましい。
【0121】
前記工程(5)の微生物によるセルロースの加水分解物の発酵時間は、1~48時間であることが好ましく、8~36時間であることがより好ましく、12~24時間であることが特に好ましい。
【0122】
前記工程(5)で、セルロースの加水分解物を微生物で発酵させることにより、アルコール及び/又は有機酸が生成する。例えば、アルコールとしてはメタノール、エタノール等であり、有機酸としてはギ酸、酢酸等である。
【0123】
セルロース含有バイオマスからアルコール及び/又は有機酸を製造する方法の工程(6)のアルコール及び/又は有機酸の分離は、前記工程(5)で得られたアルコール及び/又は有機酸を含有する溶液を加熱して、アルコール及び/又は有機酸を蒸留して分離することができる。
【0124】
本発明の一つは、前述のセルロースの加水分解物を微生物で発酵させるアルコール及び/又は有機酸の製造方法、又は、前述のセルロース含有バイオマスからアルコール及び/又は有機酸を製造する方法において、前述の式(1)で表されるオニウム塩(1)を含有する溶液を回収し、回収した溶液からオニウム塩(1)を分離して、オニウム塩(1)をリサイクルする方法に係るものである。
【0125】
前述のセルロースの加水分解物を微生物で発酵させるアルコール及び/又は有機酸の製造方法の工程(2)で得たアルコール及び/又は有機酸を含有する溶液から、アルコール及び/又は有機酸を蒸留、分離することによって、オニウム塩(1)又はオニウム塩(1)を含む液体を回収することができる。アルコール及び/又は有機酸の蒸留における残留物として、オニウム塩(1)又はオニウム塩(1)を含む液体が回収される。
【0126】
前述のセルロース含有バイオマスからアルコール及び/又は有機酸を製造する方法の工程(5)で得たアルコール及び/又は有機酸を含有する溶液から、アルコール及び/又は有機酸を蒸留、分離することによって、オニウム塩(1)又はオニウム塩(1)を含む液体を回収することができる。アルコール及び/又は有機酸の蒸留における残留物として、オニウム塩(1)又はオニウム塩(1)を含む液体が回収される。
【0127】
前述の回収されたオニウム塩(1)又はオニウム塩(1)を含む液体を、本発明のオニウム塩組成物、セルロースの加水分解物の製造方法、セルロースの加水分解物を微生物で発酵させるアルコール及び/又は有機酸の製造方法、又は、前述のセルロース含有バイオマスからアルコール及び/又は有機酸を製造する方法にリサイクルすることができる。 また、オニウム塩を使用するその他の組成物、製造方法又は用途に利用することができる。
【実施例0128】
次に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はなんらこれらに限定されるものではない。
【0129】
実施例及び参考例に使用した1,3-ビス(3-メトキシプロピル)イミダゾリウムアセテート([(MeOPr)2Im][AcO])を下記の[製造例1]に記載のとおりに製造した。
【0130】
[製造例1]
窒素置換した5L三つ口反応器に37wt%ホルムアルデヒド水溶液(東京化成工業株式会社製)260g(3.22mol)、酢酸(純正化学株式会社製)290g(4.83mol)、3-メトキシプロピルアミン(東京化成工業株式会社製)573g(6.43mol)、40wt%グリオキサール水溶液(東京化成工業株式会社製)461g(3.22mol)を仕込んだ。得られた混合物を40℃に加熱し、3時間撹拌して1,3-ビス(3-メトキシプロピル)イミダゾリウムアセテート([(MeOPr)2Im][AcO])811gを合成した。収率は93%であった。
[(MeOPr)2Im][AcO]の1H NMRデータの結果を以下に示す。
1H NMR(DMSO-d6) δ(ppm)=9.41(s,1H)、7.78(d,2H)、4.22(t,4H)、3.33(t,4H)、3.22(s,6H)、2.07-2.00(m,4H)、1.56(s,3H)
【0131】
比較例及び比較参考例に使用した1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテートは東京化成工業株式会社製のものを使用した。
【0132】
[実施例1]
フラスコに1,3-ビス(3-メトキシプロピル)イミダゾリウムアセテート5.00gを入れ、50℃に維持した。50℃下で微結晶セルロース(Avicel(登録商標) PH-101)を1.00g添加して攪拌し、目視観察で微結晶セルロースが完全溶解するまで攪拌した。超純水95.0gとセルラーゼ(Sigma)10μLを添加し、4日間攪拌した。残ったセルロース残をろ過で取得し、グルコース変換率を算出した。結果を表1に示す。
【0133】
[比較例1]
実施例1で使用した1,3-ビス(3-メトキシプロピル)イミダゾリウムアセテートを1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテートに替えた以外は、実施例1と同様に実施した。結果を表1に示す。
【0134】
[実施例2]
サンプル管に1,3-ビス(3-メトキシプロピル)イミダゾリウムアセテート0.20g、グルコース(東京化成工業株式会社製、β-D-グルコース(α―D-グルコースを含む))0.5g、超純水9.6gを入れ、グルコースが完全溶解するまで攪拌した。グルコースが完全溶解した後、ドライイースト0.05gを添加し、終夜静置した。不溶物をろ過後、GC(ガスクロマログラフィー)で生成したエタノール量を定量して、エタノール収率を算出した。結果を表2に示す。
【0135】
[実施例3]
サンプル管に1,3-ビス(メトキシエトキシプロピル)イミダゾリウムアセテート([(MeOEtOPr)2Im][AcO])0.20g、グルコース(東京化成工業株式会社製、β-D-グルコース(α―D-グルコースを含む))0.5g、超純水9.6gを入れ、グルコースが完全溶解するまで攪拌した。グルコースが完全溶解した後、ドライイースト0.05gを添加し、終夜静置した。不溶物をろ過後、GC(ガスクロマログラフィー)で生成したエタノール量を定量して、エタノール収率を算出した。結果を表2に示す。
【0136】
[実施例4]
サンプル管に1,3-ビス(エトキシプロピル)イミダゾリウムアセテート([(EtOPr)2Im][AcO])0.20g、グルコース(東京化成工業株式会社製、β-D-グルコース(α―D-グルコースを含む))0.5g、超純水9.6gを入れ、グルコースが完全溶解するまで攪拌した。グルコースが完全溶解した後、ドライイースト0.05gを添加し、終夜静置した。不溶物をろ過後、GC(ガスクロマログラフィー)で生成したエタノール量を定量して、エタノール収率を算出した。結果を表2に示す。
【0137】
[比較例2]
実施例2で使用した1,3-ビス(3-メトキシプロピル)イミダゾリウムアセテートを1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテートに替えた以外は、実施例2と同様に実施した。結果を表2に示す。
【0138】
[参考例1]及び[比較参考例1]
1,3-ビス(3-メトキシプロピル)イミダゾリウムアセテート及び1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテートの酵母菌(Saccharomycs cerevisiae)に対する抗菌試験(最小発育阻止濃度(MIC値)の測定)を行った。MIC値は値が小さいほど酵素及び/又は微生物の活動を阻害する程度が大きいことを示す。結果を表3に示す。
【0139】
【表1】
【0140】
【表2】
【0141】
【表3】
【0142】
[実施例5]
サンプル管に1,3-ビス(3-メトキシプロピル)イミダゾリウムアセテート2.00gを入れ、微結晶セルロース(Avicel(登録商標) PH-101)を0.50g添加して80℃下で3時間加熱攪拌した。目視観察で微結晶セルロースが完全溶解したことを確認した後、超純水38.0gとセルラーゼ(Sigma)20μLを添加し、50℃下で10時間攪拌した。その後、ドライイースト0.50gを添加し、30℃下で緩やかに攪拌した。7時間後、不溶物をろ過し、GC(ガスクロマログラフィー)で生成したエタノール量を定量して、エタノール収率を算出した。結果を表4に示す。
【0143】
[比較例3]
実施例5で使用した1,3-ビス(3-メトキシプロピル)イミダゾリウムアセテートを1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテートに替えた以外は、実施例5と同様に実施した。結果を表4に示す。
【0144】
[比較例4]
実施例5で使用した1,3-ビス(3-メトキシプロピル)イミダゾリウムアセテートを添加せず、1,3-ビス(3-メトキシプロピル)イミダゾリウムアセテート2.00gを超純水2.00gに替えた以外は、実施例5と同様に実施した。この際、微結晶セルロースは溶解しなかった。結果を表4に示す。
【0145】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0146】
本発明によれば、酵素反応および微生物による発酵を首尾よく行うことができるオニウム塩を含む組成物を提供できる。また本発明によれば、酵素反応および微生物による発酵を首尾よく行うことができるオニウム塩の存在下で、セルロースを酵素で加水分解するセルロースの加水分解物の製造方法を提供できる。さらに本発明によれば、前記オニウム塩の存在下で、セルロースの加水分解物を微生物で発酵させるアルコール及び/又は有機酸の製造方法を提供できる。