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特開2025-18956シリコーン重合体の製造方法および膜の製造方法
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  • 特開-シリコーン重合体の製造方法および膜の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025018956
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】シリコーン重合体の製造方法および膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 77/06 20060101AFI20250130BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20250130BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
C08G77/06
B05D7/24 302Y
B32B27/00 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024105947
(22)【出願日】2024-07-01
(31)【優先権主張番号】P 2023122414
(32)【優先日】2023-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000187046
【氏名又は名称】東レ・ファインケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】加藤 秀利
(72)【発明者】
【氏名】小川 龍治
(72)【発明者】
【氏名】村野 治男
【テーマコード(参考)】
4D075
4F100
4J246
【Fターム(参考)】
4D075DA06
4D075DB13
4D075DB14
4D075DB36
4D075DB48
4D075DC21
4D075EB43
4F100AB11B
4F100AK52A
4F100AT00B
4F100BA02
4F100EH46A
4F100EJ423
4F100GB41
4J246AA03
4J246BA16X
4J246BB022
4J246BB02X
4J246CA24X
4J246FA071
4J246FA081
4J246FA131
4J246FA441
4J246FA701
4J246FB031
4J246FB081
4J246FB091
4J246FB271
4J246FE04
4J246FE24
4J246FE27
4J246FE32
4J246GA01
4J246GA02
4J246GB04
4J246GD08
4J246HA15
4J246HA63
(57)【要約】      (修正有)
【課題】自動化が容易で連続的に、かつ、収率が高く、低分散度なシリコーン重合体が得られる製造方法を提供する。
【解決手段】一般式(1)で表される化合物、および一般式(2)で表される化合物、から選ばれる少なくとも1種のシラン化合物を含む溶液A、ならびに触媒を含む溶液Bを用い、これらをミキサーに連続的に供給し混合して混合物とする工程、前記混合物を内径1~20mmの管型反応器に供給し反応させて反応液を得る工程、前記反応液をイオン交換樹脂を充填したカラムに連続的に供給し前記イオン交換樹脂に接触させる工程をこの順に含み、溶液Aまたは溶液Bが水を含み、前記イオン交換樹脂がゲル型である、シリコーン重合体の製造方法。
Si(OR4-a・・・・・(1)
Si(OR・・・・・(2)
式中、Rは水素原子または1価の有機基、Rは1価の有機基、aは1~2の整数、Rは1価の有機基を示す。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物、および下記一般式(2)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種のシラン化合物を含む溶液A、ならびに触媒を含む溶液Bを用い、これらをミキサーに連続的に供給し混合して混合物とする工程、前記混合物を内径1~20mmの管型反応器に供給し反応させて反応液を得る工程、前記反応液をイオン交換樹脂を充填したカラムに連続的に供給し前記イオン交換樹脂に接触させる工程をこの順に含み、溶液Aまたは溶液Bが水を含み、前記イオン交換樹脂がゲル型である、シリコーン重合体の製造方法。
Si(OR4-a ・・・・・(1)
式中、Rは水素原子または1価の有機基、Rは1価の有機基、aは1~2の整数を示す。
Si(OR ・・・・・(2)
式中、Rは1価の有機基を示す。
【請求項2】
溶液Bが水を含む、請求項1に記載のシリコーン重合体の製造方法。
【請求項3】
前記触媒が、塩酸を除く酸触媒または塩基触媒である、請求項1または2に記載のシリコーン重合体の製造方法。
【請求項4】
前記酸触媒が、シュウ酸、マレイン酸、リン酸、およびメタンスルホン酸から選ばれる少なくとも1つである、請求項3に記載のシリコーン重合体の製造方法。
【請求項5】
前記塩基触媒が第四級アンモニウム化合物である、請求項3に記載のシリコーン重合体の製造方法。
【請求項6】
前記第四級アンモニウム化合物が水酸基を含有する第四級アンモニウム化合物である、請求項5に記載のシリコーン重合体の製造方法。
【請求項7】
前記水酸基を含有する第四級アンモニウム化合物が、2-ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ジメチルビス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、およびトリス(2-ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムヒドロキシドから選ばれる少なくとも1つである、請求項6に記載のシリコーン重合体の製造方法。
【請求項8】
溶液Aおよび/または溶液Bがアルコールを含む、請求項1または2に記載のシリコーン重合体の製造方法。
【請求項9】
前記アルコールを前記シラン化合物に対し1.0~10質量倍使用する、請求項8に記載のシリコーン重合体の製造方法。
【請求項10】
請求項1または2に記載の製造方法で得られたシリコーン重合体を基板に塗布して加熱する工程を含む、膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーン重合体を得る製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーン重合体は、有機化合物と無機化合物とが分子レベルで組み合わさった、有機-無機ハイブリッド材料であり、柔軟性や加工性といった有機材料の特長と、耐熱性・耐候性や耐薬品性といった無機材料の特長を併せ持つ素材であるため、近年盛んに研究されている。
【0003】
中でも半導体用素子等を製造する際のパターン成型においては、リソグラフィー技術、エッチング技術等を適用する反転パターン形成の際、シリコーン重合体をレジスト下層膜として用いることが提案されている。シリコーン重合体の中でも特に、テトラメトキシシランやテトラエトキシシラン由来の構造が多く含まれた場合、微細なレジスト下層膜パターンへの埋め込み性及びレジスト下層膜パターンを酸素系ガスエッチング等で除去する際のエッチング耐性に優れることが知られていた。
【0004】
一方で、フロー・マイクロ合成法の実用化が進められている。フロー・マイクロ合成法とは、一般的に原料をポンプ等で連続的に供給し、管型反応器や連続攪拌槽型反応器で反応させる方法である。特に管型反応器の内径を数百μmと極細にした場合、拡散距離が短くなり、従来のバッチ型反応槽で反応した場合と比べて、見かけの反応速度が速くなることがある(例えば、非特許文献1参照)。フロー・マイクロ合成法は、自動化が容易で、連続的に反応することができ、装置が小型となるためエネルギー消費が少なく、廃棄物が削減される等、次世代の製造方法として期待されている。
【0005】
このようなフロー・マイクロ合成法で、シリコーン重合体を得る試みがされている(例えば、非特許文献2参照)。
【0006】
また発明者らは、アルコキシシランとアルコールからなる溶液と、水、四級アンモニウム化合物からなる溶液を、それぞれポンプでマイクロミキサーに供給し、内径1~3mmの管型反応器で反応し、カラムに充填されたイオン交換樹脂と接触させることで触媒除去することで、連続的にシリコーン重合体が得られることを見出した(特許文献1参照)。
【0007】
しかしながら、イオン交換樹脂で触媒を除去すると、シリコーン重合体がイオン交換樹脂に吸着され、収率が低下することがあった。また、イオン交換樹脂に接触するとシリコーン重合体の一部が吸着されるため、製造されたシリコーン重合体の分散度(Mw/Mn)が高くなる傾向があり、長時間にわたりシリコーン重合体を製造すると後の方で製造されるシリコーン重合体の機能性に好ましくない影響を及ぼすことがあった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】小林修、小野澤俊也 監訳・編著、有機合成のためのフロー化学、266p、東京化学同人(2020)
【非特許文献2】D. Kessler, et. al., Macromol. Chem. Phys. 210, p807-813, 2009
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2022/270336号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、自動化が容易で連続的に、かつ、収率が高く、低分散度なシリコーン重合体を得る製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のシリコーン重合体の製造方法は、下記一般式(1)で表される化合物、および下記一般式(2)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種のシラン化合物を含む溶液A、ならびに触媒を含む溶液Bを用い、これらをミキサーに連続的に供給し混合して混合物とする工程、前記混合物を内径1~20mmの管型反応器に供給し反応させて反応液を得る工程、前記反応液をイオン交換樹脂を充填したカラムに連続的に供給しイオン交換樹脂と接触させる工程をこの順に含み、前記溶液Aまたは溶液Bが水を含み、イオン交換樹脂がゲル型である、シリコーン重合体の製造方法である。
Si(OR4-a ・・・・・(1)
式中、Rは水素原子または1価の有機基、Rは1価の有機基、aは1~2の整数を示す。
Si(OR ・・・・・(2)
式中、Rは1価の有機基を示す。
また本発明は、本発明の製造方法で得られたシリコーン重合体を基板に塗布して加熱する工程を含む、膜の製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、自動化が容易で連続的に、かつ、収率が高く、低分散度なシリコーン重合体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明のシリコーン重合体の製造方法に用いる製造装置の構成を例示するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のシリコーン重合体の製造方法は、シラン化合物を含む溶液A、および触媒を含む溶液Bを用い、これらをミキサーに連続的に供給し混合して混合物とする工程、その混合物を内径1~20mmの管型反応器に供給し反応させて反応液を得る工程、その反応液をイオン交換樹脂を充填したカラムに連続的に供給しイオン交換樹脂と接触させる工程をこの順に含む。
【0015】
前記シラン化合物は、下記一般式(1)で表される化合物、および下記一般式(2)で表される化合物から選ばれた少なくとも1種である。
Si(OR4-a ・・・・・(1)
式中、Rは水素原子または1価の有機基、Rは1価の有機基、aは1~2の整数を示す。
および下記一般式(2)で表される化合物、
Si(OR ・・・・・(2)
式中、Rは1価の有機基を示す。
【0016】
上記一般式(1)において、Rが1価の有機基であるとき、RおよびRは互いに独立しており、同じ有機基でも異なる有機基でもよい。また、aが2のとき、Rは互いに独立し、1種類の1価の有機基または2種類の1価の有機基でもよい。さらに、2つ以上のRは互いに独立し、1種類の1価の有機基または2種類以上の1価の有機基でもよい。RおよびRの1価の有機基としては、アルキル基、アリール基、ビニル基、アリル基、グリシジル基などを挙げることができる。また、一般式(1)において、Rは1価の有機基、特に、アルキル基、アリール基、またはビニル基であることが好ましい。
【0017】
前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基などが挙げられ、好ましくは炭素数が1~5のアルキル基であり、これらのアルキル基は直鎖状でも、分岐鎖状でもよく、さらにアルキル基の水素原子がフッ素原子やヘテロ原子を含む官能基などに置換されていてもよい。
【0018】
前記アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、フルオロフェニル基などを挙げることができる。
【0019】
一般式(1)で表される化合物の具体例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ-n-プロポキシシラン、メチルトリ-iso-プロポキシシラン、メチルトリ-n-ブトキシシラン、メチルトリ-sec-ブトキシシラン、メチルトリ-tert-ブトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリ-n-プロポキシシラン、エチルトリ-iso-プロポキシシラン、エチルトリ-n-ブトキシシラン、エチルトリ-sec-ブトキシシラン、エチルトリ-tert-ブトキシシラン、エチルトリフェノキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ-n-プロポキシシラン、ビニルトリ-iso-プロポキシシラン、ビニルトリ-n-ブトキシシラン、ビニルトリ-sec-ブトキシシラン、ビニルトリ-tert-ブトキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、n-プロピルトリ-n-プロポキシシラン、n-プロピルトリ-iso-プロポキシシラン、n-プロピルトリ-n-ブトキシシラン、n-プロピルトリ-sec-ブトキシシラン、n-プロピルトリ-tert-ブトキシシラン、n-プロピルトリフェノキシシラン、i-プロピルトリメトキシシラン、i-プロピルトリエトキシシラン、i-プロピルトリ-n-プロポキシシラン、i-プロピルトリ-iso-プロポキシシラン、i-プロピルトリ-n-ブトキシシラン、i-プロピルトリ-sec-ブトキシシラン、i-プロピルトリ-tert-ブトキシシラン、i-プロピルトリフェノキシシラン、n-ブチルトリメトキシシラン、n-ブチルトリエトキシシラン、n-ブチルトリ-n-プロポキシシラン、n-ブチルトリ-iso-プロポキシシラン、n-ブチルトリ-n-ブトキシシラン、n-ブチルトリ-sec-ブトキシシラン、n-ブチルトリ-tert-ブトキシシラン、n-ブチルトリフェノキシシラン、sec-ブチルトリメトキシシラン、sec-ブチルトリエトキシシラン、sec-ブチルトリ-n-プロポキシシラン、sec-ブチルトリ-iso-プロポキシシラン、sec-ブチルトリ-n-ブトキシシラン、sec-ブチルトリ-sec-ブトキシシラン、sec-ブチルトリ-tert-ブトキシシラン、sec-ブチル-トリフェノキシシラン、t-ブチルトリメトキシシラン、t-ブチルトリエトキシシラン、t-ブチルトリ-n-プロポキシシラン、t-ブチルトリ-iso-プロポキシシラン、t-ブチルトリ-n-ブトキシシラン、t-ブチルトリ-sec-ブトキシシラン、t-ブチルトリ-tert-ブトキシシラン、t-ブチルトリフェノキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリ-n-プロポキシシラン、フェニルトリ-iso-プロポキシシラン、フェニルトリ-n-ブトキシシラン、フェニルトリ-sec-ブトキシシラン、フェニルトリ-tert-ブトキシシラン、フェニルトリフェノキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-トリフロロプロピルトリメトキシシラン、γ-トリフロロプロピルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジ-n-プロポキシシラン、ジメチルジ-iso-プロポキシシラン、ジメチルジ-n-ブトキシシラン、ジメチルジ-sec-ブトキシシラン、ジメチルジ-tert-ブトキシシラン、ジメチルジフェノキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジ-n-プロポキシシラン、ジエチルジ-iso-プロポキシシラン、ジエチルジ-n-ブトキシシラン、ジエチルジ-sec-ブトキシシラン、ジエチルジ-tert-ブトキシシラン、ジエチルジフェノキシシラン、ジ-n-プロピルジメトキシシラン、ジ-n-プロピルジエトキシシラン、ジ-n-プロピルジ-n-プロポキシシラン、ジ-n-プロピルジ-iso-プロポキシシラン、ジ-n-プロピルジ-n-ブトキシシラン、ジ-n-プロピルジ-sec-ブトキシシラン、ジ-n-プロピルジ-tert-ブトキシシラン、ジ-n-プロピルジフェノキシシラン、ジ-iso-プロピルジメトキシシラン、ジ-iso-プロピルジエトキシシラン、ジ-iso-プロピルジ-n-プロポキシシラン、ジ-iso-プロピルジ-iso-プロポキシシラン、ジ-iso-プロピルジ-n-ブトキシシラン、ジ-iso-プロピルジ-sec-ブトキシシラン、ジ-iso-プロピルジ-tert-ブトキシシラン、ジ-iso-プロピルジフェノキシシラン、ジ-n-ブチルジメトキシシラン、ジ-n-ブチルジエトキシシラン、ジ-n-ブチルジ-n-プロポキシシラン、ジ-n-ブチルジ-iso-プロポキシシラン、ジ-n-ブチルジ-n-ブトキシシラン、ジ-n-ブチルジ-sec-ブトキシシラン、ジ-n-ブチルジ-tert-ブトキシシラン、ジ-n-ブチルジフェノキシシラン、ジ-sec-ブチルジメトキシシラン、ジ-sec-ブチルジエトキシシラン、ジ-sec-ブチルジ-n-プロポキシシラン、ジ-sec-ブチルジ-iso-プロポキシシラン、ジ-sec-ブチルジ-n-ブトキシシラン、ジ-sec-ブチルジ-sec-ブトキシシラン、ジ-sec-ブチルジ-tert-ブトキシシラン、ジ-sec-ブチルジフェノキシシラン、ジ-tert-ブチルジメトキシシラン、ジ-tert-ブチルジエトキシシラン、ジ-tert-ブチルジ-n-プロポキシシラン、ジ-tert-ブチルジ-iso-プロポキシシラン、ジ-tert-ブチルジ-n-ブトキシシラン、ジ-tert-ブチルジ-sec-ブトキシシラン、ジ-tert-ブチルジ-tert-ブトキシシラン、ジ-tert-ブチルジフェノキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニル-ジ-エトキシシラン、ジフェニルジ-n-プロポキシシラン、ジフェニルジ-iso-プロポキシシラン、ジフェニルジ-n-ブトキシシラン、ジフェニルジ-sec-ブトキシシラン、ジフェニルジ-tert-ブトキシシラン、ジフェニルジフェノキシシラン、ジビニルジメトキシシランなどを挙げることができる。
【0020】
一般式(1)で表される化合物として中でも、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ-n-プロポキシシラン、メチルトリ-iso-プロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシランなどが工業的に入手しやすく好ましい。これらは、1種あるいは2種以上を同時に使用してもよい。
【0021】
一般式(2)において、Rで表される1価の有機基としては、先の一般式(1)のRと同様な有機基を挙げることができる。また、4つのRは、互いに独立し、1種類の1価の有機基、または2種類以上の1価の有機基でもよい。
【0022】
一般式(2)で表される化合物として具体的には、テトラメトキシシラン、メトキシトリエトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、トリメトキシエトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ-n-プロポキシシラン、テトラ-iso-プロポキシシラン、テトラ-n-ブトキシシラン、テトラ-sec-ブトキシシラン、テトラ-tert-ブトキシシラン、テトラフェノキシシラン等が用いられる。中でもテトラメトキシシラン、テトラエトキシシランが工業的に入手しやすく好ましい。
【0023】
溶液Aは、前記シラン化合物を、溶媒に溶解させた溶液である。溶液Aの溶媒としては例えば、水;メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール等のアルコール;トルエン、キシレン等の非プロトン性溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、乳酸エチル等の高沸点溶媒を使用することができる。溶媒は、2種類以上を含んでもよい。
【0024】
本発明のシリコーン重合体の製造方法は、前記シラン化合物の加水分解縮合を促進するため、触媒を含む溶液Bを用いる。溶液Bは、触媒を、溶媒に溶解させた溶液である。
【0025】
触媒としては、酸触媒、塩基触媒のいずれかを用いることができる。
酸触媒としては、塩酸を除く酸触媒が好ましく、無機酸、有機酸のいずれも用いることができる。無機酸としては、例えば、硝酸、硫酸、フッ酸、リン酸等が挙げられる。有機酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、シュウ酸、マレイン酸、メチルマロン酸、アジピン酸、セバシン酸、没食子酸、酪酸、メリット酸、アラキドン酸、ミキミ酸、2-エチルヘキサン酸、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、サリチル酸、安息香酸、p-アミノ安息香酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、マロン酸、スルホン酸、フタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸等が挙げられる。中でも有機酸を用いると、有機溶媒との相溶性が高く好ましい。好ましい有機酸は、シュウ酸、マレイン酸、メタンスルホン酸である。酸触媒は2種類以上用いてもよい。
【0026】
塩基触媒としては、無機塩基、有機塩基のいずれも用いることができる。無機塩基としては、具体的には水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。有機塩基として、具体的には第四級アンモニウム化合物が、金属を含有しないため、電子情報材料向けに好適に用いられる。中でも、水酸基を含有する第四級アンモニウム化合物であることが好ましい。
【0027】
当該第四級アンモニウム化合物としては、例えば、ヒドロキシメチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、1-ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、2-ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、1-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、3-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ヒドロキシメチルトリエチルアンモニウムヒドロキシド、1-ヒドロキシエチルトリエチルアンモニウムヒドロキシド、2-ヒドロキシエチルトリエチルアンモニウムヒドロキシド、1-ヒドロキシプロピルトリエチルアンモニウムヒドロキシド、2-ヒドロキシプロピルトリエチルアンモニウムヒドロキシド、3-ヒドロキシプロピルトリエチルアンモニウムヒドロキシド、ヒドロキシメチルトリプロピルアンモニウムヒドロキシド、1-ヒドロキシエチルトリプロピルアンモニウムヒドロキシド、2-ヒドロキシエチルトリプロピルアンモニウムヒドロキシド、1-ヒドロキシプロピルトリプロピルアンモニウムヒドロキシド、2-ヒドロキシプロピルトリプロピルアンモニウムヒドロキシド、3-ヒドロキシプロピルトリプロピルアンモニウムヒドロキシド、ヒドロキシメチルトリブチルアンモニウムヒドロキシド、1-ヒドロキシエチルトリブチルアンモニウムヒドロキシド、2-ヒドロキシエチルトリブチルアンモニウムヒドロキシド、1-ヒドロキシプロピルトリブチルアンモニウムヒドロキシド、2-ヒドロキシプロピルトリブチルアンモニウムヒドロキシド、3-ヒドロキシプロピルトリブチルアンモニウムヒドロキシド、ビス(ヒドロキシメチル)ジメチルアンモニウムヒドロキシド、ジメチルビス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、トリス(2-ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムフルオライド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、テトラn-ブチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリn-ブチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリエチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド、n-オクチルトリメチルアンモニウムブロマイド、ヘキシルトリメチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラn-プロピルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムアイオダイド、テトラエチルアンモニウムアイオダイド、テトラメチルアンモニウムアイオダイド、テトラn-プロピルアンモニウムアイオダイド、トリメチルフェニルアンモニウムアイオダイド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、フェニルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロゲンスルフェート、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラメチルアンモニウムチオシアネート、テトラメチルアンモニウムp-トルエンスルフォネートなどが挙げられる。
【0028】
中でも好ましくは、2-ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、2-ヒドロキシエチルトリエチルアンモニウムヒドロキシド、2-ヒドロキシエチルトリプロピルアンモニウムヒドロキシド、2-ヒドロキシエチルトリブチルアンモニウムヒドロキシド、ジメチルビス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、トリス(2-ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、テトラn-ブチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリn-ブチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド、ヘキシルトリメチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシト゛、フェニルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロゲンスルフェート、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラメチルアンモニウムチオシアネート、テトラメチルアンモニウムp-トルエンスルフォネートが好ましく、さらに、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、2-ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ジメチルビス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、トリス(2-ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムヒドロキシドが好ましい。テトラメチルアンモニウムヒドロキシドは、安価で反応制御が容易であり、2-ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ジメチルビス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、トリス(2-ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムヒドロキシドは、一般的に、トリメチルアミン、ジメチルアミンおよびメチルアミンとエチレンオキサイドの付加反応で得られ、原料に金属を使用しないため、金属含量の少ない2-ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ジメチルビス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、トリス(2-ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムヒドロキシドが工業グレードで入手しやすく好ましい。
【0029】
前記触媒の使用量は、前記シラン化合物のアルコキシル基の総量1モルに対して、0.002~2.0モルが好ましく、0.005~1.0モルがさらに好ましい。
【0030】
溶液Bの溶媒としては例えば、水;メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール等のアルコール;トルエン、キシレン等の非プロトン性溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、乳酸エチル等の高沸点溶媒を使用することができる。溶媒は、2種類以上を含んでもよい。
【0031】
溶液Aまたは溶液Bは水を含む。前記水は、前記シラン化合物を加水分解、縮重合するために用いられる。水の種類は特に限定されないが、工業用水、市水、井水、蒸留水、イオン交換水および超純水などが用いられる。水は1種類でもよいし、2種類以上を用いてもよい。中でも電気抵抗率が高い、イオン交換水や超純水が好ましく、更には、電気抵抗率が15MΩ・cm以上の超純水が、金属含量が少なく好ましい。
【0032】
水は、溶液Aに加えてもよいし、溶液Bに加えてもよい。水を溶液Bに加えた場合、前記シラン化合物の意図しない加水分解が生じず好ましい。
【0033】
水の使用量は、前記シラン化合物のアルコキシル基の総量1当量に対して、好ましくは1.0~15.0当量、より好ましくは1.0~10.0当量にするとよい。更に好ましくは、1.0~5.0当量である。水の量が1.0当量以上の場合、シラン化合物の加水分解、縮重合反応が速やかに進行し、15.0当量以下であれば、シラン化合物の反応が制御されゲル化しないため好ましい。
【0034】
本発明のシリコーン重合体の製造方法は、溶液Aと溶液Bとをミキサーで混合して混合物とする工程を含む。ミキサーで混合した混合液を用いる場合、溶液Aと溶液Bを別々に保管できるため、ポットライフを考慮する必要がなく好ましい。
【0035】
前記ミキサーには、遠心ポンプ、渦巻きポンプ、撹拌羽を有するインラインミキサー等の駆動型混合攪拌器、スタティックミキサー、ノズル、オリフィス、T字リアクター等の静止型混合攪拌器などが用いられる。中でも駆動部や摺動部がない静止型混合撹拌機、いわゆるスタティックミキサーは駆動部がないので、摺動部からの発塵や、オイルの混入リスクがなく、管理が厳格な医薬品や電子情報材料向け材料の製造に適している。スタティックミキサーは一般的な反応缶に比べ、比表面積が大きいので、温度の管理が容易である。
【0036】
スタティックミキサーに用いるパイプの内径は1~20mmが好ましく、1~10mmがさらに好ましい。内径が1mm以上であれば圧力損失が小さく、閉塞のリスクが少ない。内径が20mm以下であれば、混合が速やかに進行して好ましい。さらに、スタティックミキサーのパイプやブロックからなる流路の内径を約1mmとしたマイクロミキサーは、混合が反応を伴う場合、物質の拡散距離が制限されるため、反応が速やかに進行し好ましい。スタティックミキサーの内径が小さければ、比表面積はさらに大きくなり好ましい。
【0037】
スタティックミキサーやマイクロミキサーには、長方形の板を左右逆方向に、180度ねじったエレメントが、管内に交互に配列される。エレメント数は、12以上が好ましく、さらに好ましくは18以上である。エレメント数が12以上であれば、原料の供給速度によらず、十分に混合されるため好ましい。
【0038】
前記ミキサーの材質は、SUS304、SUS316等のステンレス鋼、SS41、SC、SCM等の炭素鋼、ハステロイ、チタン、モネル、ニッケル、カーペンター、タンタル等の金属、テフロン(登録商標)、PFA、PVC、FRP、CFRP等の樹脂、更に、金属等にセラミックス、ゴムライニング、テフロンライニング、ガラスライニングした材料等が用いられる。テフロンやテフロンライニングした材料を用いた場合、混合液に金属が溶出せず好ましい。具体的には、Kenics mixer型、Sulzer SMV型、Sulzer SMX型、Toray Hi-mixer型、Komax mixer型、Lightnin mixer型、Ross ISG型、Bran&Lube mixer型、YMC Deneb型、YMC Spica型、YMC Hadar型、IMM CPMM-R300型、ノリタケK1-24-P等のスタティックミキサーが挙げられる。
【0039】
溶液Aと溶液Bの混合物を前記ミキサーで混合する際の圧力は0MPaから5MPaが好ましく、更に好ましくは0MPaから2MPaである。ミキサーで混合する際の温度は0~100℃が好ましく、更に好ましくは5℃から80℃である。温度が0℃以上であれば、混合が十分行われ、100℃以下であれば、反応の制御が容易で好ましい。
【0040】
前記ミキサーで混合する際の時間は、原料の供給速度とミキサーの設計によるが、0.1秒から600秒が好ましく、さらに好ましくは1秒から300秒である。0.1秒以上であれば十分に混合が行われ、600秒以下であれば反応時間の制御への影響が少なく好ましい。
【0041】
前記ミキサーへの原料の供給は、ポンプを用いる。ポンプの圧力や流量の制御にパソコン(以下、「PC」と記すことがある。)等を利用すると、自動化や省人化に繋がり好ましい。
【0042】
本発明のシリコーン重合体の製造方法は、前記混合物を内径1~20mmの管型反応器に供給し反応させて反応液を得る工程を含む。管型反応器とは、管の中に流体を流しながら反応させる形式の反応器である。管型反応器は、シリコーン重合体の重合反応に求められる温度・圧力に耐えられるものであれば特に制限されるものでなく、例えば、管、チューブ、ホース等が挙げられる。管型反応器の内径は1~20mmであり、1~10mmがさらに好ましい。内径が1mm以上であれば圧力損失が小さく、閉塞のリスクが少ない。また、長い管型反応器を設計したり生産量を増やすために供給量を増やしても、圧力が過大にかかることがない。一方で、内径が20mm以下の管型反応器は、従来の反応缶に比べ、物質の拡散距離が短いため見かけの反応速度が速くなり、速やかに反応が完結して好ましい。
【0043】
前記管型反応器の管の材質は、特に限定されないが、SUS304、SUS316等のステンレス鋼、SS41、SC、SCM等の炭素鋼、ハステロイ、チタン、モネル、ニッケル、カーペンター、タンタル等の金属、テフロン、PFA、PVC,FRP、CFRP等の樹脂、更に、金属等にセラミックス、ゴムライニング、テフロンライニング、ガラスライニングした材料等が用いられる。テフロン、PFAやテフロンライニングした材料を用いた場合、混合液に金属が溶出せず好ましい。
【0044】
前記管型反応器で反応する際の圧力は0MPaから5MPaが好ましく、更に好ましくは0MPaから2MPaである。圧力が0MPa以上であれば、溶媒の沸点以上の温度で反応できるため好ましく、5MPa以下であれば装置が簡素となり好ましい。
前記管型反応器で反応する際の温度は0~200℃が好ましく、更に好ましくは5℃から150℃である。
【0045】
前記管型反応器で反応させる時間は、管型反応器の容積と原料の供給速度によるが、1秒から900秒が好ましく、さらに好ましくは10秒から600秒である。1秒以上であれば十分に重合し、900秒以下であれば経済的に好ましい。
【0046】
前記シラン化合物を反応させる際、アルコールを加えてもよい。アルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、t-ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルが挙げられる。中でもメタノールは、留去しやすく好ましい。アルコールは、2種類以上用いてもよい。
【0047】
前記アルコールを用いる量は、前記シラン化合物の質量に対して好ましくは0.5質量倍以上、1.0~10質量倍がより好ましく、更に好ましくは1.2~8質量倍であり、更により好ましくは1.5~5質量倍である。アルコールがシラン化合物の0.5質量倍以上であれば、一般式(1)で表されるシラン化合物の質量および/または一般式(2)で表されるシラン化合物と水が混合しやすくなり、またシリコーン重合体のゲル化が抑制され安定する。10質量倍以下であれば経済的に好ましい。
【0048】
前記シラン化合物を反応させる際、前記アルコールの他に、溶媒を加えても良い。溶媒としては、トルエン、キシレン等の非プロトン性溶媒、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、乳酸エチルなどの高沸点溶媒を使用することができる。溶媒は、2種類以上用いてもよい。
【0049】
本発明のシリコーン重合体の製造方法は、前記反応液をイオン交換樹脂と接触させる工程を含む。前記反応液を前記イオン交換樹脂と接触させることで、前記反応液から触媒や、金属などイオン性の不純物を連続的に除去することができる。イオン交換樹脂は、再生することで繰り返し使用することができ資源的、経済的に好ましい。
【0050】
前記イオン交換樹脂は、陽イオン交換樹脂、陰イオン交換樹脂のいずれでもよく、酸触媒を含む反応液は陰イオン交換樹脂と接触させ、塩基触媒を含む反応液は陽イオン交換樹脂と接触させるとよい。陽イオン交換樹脂としては、強酸性陽イオン交換樹脂でも、弱酸性陽イオン交換樹脂でもよい。通常用いられているもの、例えば市販品の水素型陽イオン交換樹脂、具体的には、例えば“Amberlyst”(オルガノ株式会社製)、“Lewatit(登録商標)”(ランクセス株式会社製)、“ダイヤイオン(登録商標)”(三菱化学株式会社製)、“Monosphere(登録商標)”(ダウ・ケミカル社製)等を用いることができる。陽イオン交換樹脂として、強酸性陽イオン交換樹脂が好ましい。陰イオン交換樹脂は、強塩基性陰イオン交換樹脂、弱塩基性陰イオン交換樹脂のいずれでもよく、好ましくは強塩基性陰イオン交換樹脂がよい。陰イオン交換樹脂として、例えば、“Amberlyst”(オルガノ株式会社製)、“Lewatit(登録商標)”(ランクセス株式会社製)、“ダイヤイオン(登録商標)”(三菱化学株式会社製)、“Monosphere(登録商標)”(ダウ・ケミカル社製)等が挙げられる。
【0051】
イオン交換樹脂は、そのマクロな構造によって、ゲル型とマクロポーラス型に大別される。イオン交換樹脂には一般的に、スチレンとジビニルベンゼンの共重合体が基礎高分子母体として用いられるが、ゲル型のイオン交換樹脂は、スチレンとジビニルベンゼンを共重合して、球状のほぼ均質ないわゆるゲル相を形成し、外観が透明なイオン交換樹脂である。一方で、マクロポーラス型のイオン交換樹脂は、スチレンとジビニルベンゼンを共重合する際、水に不溶で、スチレンとジビニルベンゼンをよく溶解し、かつ、生成した共重合体を十分に膨潤することができる高沸点の有機溶媒(例えば、芳香族炭化水素、ハロゲン化エタンなど)を加えて重合する。重合後、有機溶媒を除去することで、球体内部の奥深くまで大きな孔(マクロポア)を持った、多孔性基礎高分子母体が得られ、マクロポーラス型と呼ばれる。
【0052】
本発明では、前記イオン交換樹脂としてゲル型のものを用いる。ゲル型のイオン交換樹脂を用いると、シリコーン重合体がイオン交換樹脂に吸着されづらく、マクロポーラス型を用いた場合と比較して、収率が高く、低分散度で、機能性、特に酸素ガスエッチング耐性に優れるシリコーン重合体が得られる。
【0053】
ゲル型のイオン交換樹脂としては例えば、“Amberlite(登録商標)”(オルガノ株式会社)IR120B、IR124、HPR1200、HPR1024、HPR1006NNC、IRA400J、IRA402BL、HPR4002、HPR4580、IRA410J、HPR4010、HPR4780、IRA67等が挙げられる。
【0054】
前記反応液を前記イオン交換樹脂に接触させる方法としては、例えば、反応液を、イオン交換樹脂を充填したカラム内に流通させる方法や、イオン交換樹脂を反応液に添加して攪拌する方法等が挙げられる。後者の場合、イオン交換樹脂は処理後にろ過等で取り除くとよい。好ましくは、シリコーン重合体、第四級アンモニウム化合物、および、水を含有する反応液を、陽イオン交換樹脂が充填された槽に流通させて、陽イオン交換樹脂と接触させるとよい。
【0055】
前記イオン交換樹脂(好ましくは陽イオン交換樹脂)の量としては、用いた触媒(好ましくは第四級アンモニウム化合物)1当量に対して1.0~10.0当量が好ましく、より好ましくは1.1~8.0当量であり、更に好ましくは1.2~5.0当量である。陽イオン交換樹脂が1.0当量以上あれば反応液中の触媒を除去することができ、10.0当量以下であれば、得られるシリコーン重合体が安定であり、また、イオン交換樹脂を使用する量が少なく経済的に好ましい。
【0056】
前記反応液をイオン交換樹脂と接触させる際の温度としては、0~60℃が好ましく、さらに好ましくは5~50℃である。温度が0℃以上であれば、第四級アンモニウム化合物等の触媒が十分除去され、60℃以下であればシリコーン重合体が安定であり好ましい。
【0057】
前記反応液をイオン交換樹脂と接触させる時間は、5分~6時間が好ましく、より好ましくは10分~3時間である。接触させる時間が5分以上であれば、第四級アンモニウム化合物等の触媒を除去することができ、6時間以下であればシリコーン重合体が安定で好ましい。
【0058】
本発明のシリコーン重合体の製造方法は、シラン化合物を含む溶液A、触媒を含む溶液Bからなる原料をポンプ等で連続的に供給して混合、反応させるため、従来のバッチ反応に比べると、手動操作が少なく、省人化できる。また、ポンプ等の運転や、ミキサーおよび管型反応器の温度制御を、パソコン等を使用してプログラムで制御すると、自動運転が可能である。情報伝達のネットワークを利用すれば、装置の運転を遠隔操作することができ、作業員を危険な薬品に曝露することがない。リスクの大きい装置の近くでの作業も減らすことができる。自動運転とすると、手動操作によるバラつきがなくなるので、再現性の高い生産ができる。
【0059】
本発明のシリコーン重合体の製造方法により製造されるシリコーン重合体の重量平均分子量は、300~100,000が好ましく、より好ましくは500~50,000であり、更に好ましくは1,000~20,000である。重量平均分子量は300以上であれば、塗膜を形成することができ、100,000以下であれば有機溶媒に可溶であり好ましい。
【0060】
前記シリコーン重合体の、重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で割った分散度(Mw/Mn)は、1.00~1.20が好ましく、より好ましくは1.00~1.16である。
【0061】
本発明において、シリコーン重合体の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)およびZ平均分子量(Mz)は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)を使用して測定し、標準ポリスチレン換算により求める事が出来る。
前記シリコーン重合体の高次構造は、籠型であっても良い。
【0062】
前記シリコーン重合体は、溶媒に溶解してもよい。溶媒としては、アルコール系溶媒、高沸点溶媒が用いられる。アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等が挙げられ、高沸点溶媒としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチル等が挙げられる。
【0063】
前記シリコーン重合体及びその組成物は、スピンコーティング等の一般的な方法によって塗膜形成が可能である。
前記シリコーン重合体で塗膜を得る方法として、例えば、シリコーン重合体を基板に塗布し、加熱する膜の形成方法が挙げられる。
【0064】
前記塗膜の作製は、前記シリコーン重合体を基板上にスピンコートして薄膜を形成し、これを加熱することで塗膜を得る。前記基板としては例えば、ガラス基板、セラミック基板、シリコンウェハや、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリプロピレンテレフタレートなどの樹脂から形成された基板が挙げられる。
【0065】
次に前記基板上に形成された薄膜をホットプレートやインキュベーターに入れて加熱することにより、溶媒を除去するとともに、シリコーン重合体の加水分解、縮重合反応させることで、塗膜を作製する。
一般に膜の作製においては、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上で加熱することにより、膜を作製することができる。
【0066】
このように作製した塗膜は、鉛筆硬度が好ましくは4H以上の非常に硬い膜が得られ、耐傷性に優れる。なお、鉛筆硬度は、JIS K5600-5-4(1999)に準じて測定することができる。
【0067】
また、前記シリコーン重合体及びその組成物は、基板に塗布した場合、基板上に薄膜を形成することができ、熱をかけることで基板上に熱硬化フィルムを作成することができる。このように形成した熱硬化フィルムは、透明性と耐熱性および酸素ガスエッチング耐性に優れた特性を有していることから、半導体やディスプレイの保護膜およびレジスト下層膜などに使用することができる。
【0068】
本発明のシリコーン重合体の製造方法に好適に用いられる装置の例を、図1に示す。図1に示す前記装置の概要は、溶液Aを調製するモノマー槽1、溶液Bを調製する触媒槽2、溶液Aおよび溶液Bを混合するミキサー4、得られた溶液AおよびBの混合物を反応させる管型反応器5、得られた反応液を接触させるイオン交換樹脂を充填したカラム6からなる。
【0069】
モノマー槽1は、前記シラン化合物および溶媒を、秤量、投入、混合、取出しを行うことにより、モノマー溶液(溶液A)を調製するための装置であり、上述した各操作のための手段を有する。モノマー槽1は、バッチ式、連続式のいずれの形式でもよく、またこれらの組み合わせでもよい。モノマー槽1で調製された溶液Aは、デュアルプランジャーポンプなどのポンプ3や流量制御手段を介して、ミキサー4に供給される。
【0070】
触媒槽2は、触媒およびその溶媒を、秤量、投入、混合、取出しを行うことにより、触媒溶液(溶液B)を調製するための装置であり、上述した各操作のための手段を有する。触媒槽2は、バッチ式、連続式のいずれの形式でもよく、またこれらの組み合わせでもよい。触媒槽2で調製された溶液Bは、デュアルプランジャーポンプなどのポンプ3や流量制御手段を介して、ミキサー4に供給される。
【0071】
ミキサー4の詳細について、前述のとおり、ミキサー4は、好ましくは、スタティックミキサー、マイクロミキサー等の静止型混合攪拌器であるとよい。ミキサー4は、供給された溶液Aおよび溶液Bを混合し、混合物(原料溶液)を調製する。得られた原料溶液は、そのまま管型反応器5に供給される。
【0072】
管型反応器5の詳細について、前述のとおり、管型反応器5は、内径1~20mmの反応器である。管型反応器5の材質は、特に制限されるものではなく、金属等の剛直な材料でも、樹脂等の比較的柔軟な材料でもよい。管型反応器5では、供給された原料溶液に含まれる、シラン化合物、触媒、および水が反応し、シリコーン重合体が重合される。管型反応器5は、温度、圧力、滞留時間等の重合条件を適宜、調節する手段を有する。また得られたシリコーン重合体、触媒等を含む反応液が送り出される。
【0073】
管型反応器5から送り出された反応液は、イオン交換樹脂を充填したカラム6に供給され、イオン交換樹脂と接触した触媒が除去される。カラム6は、温度、圧力、滞留時間等のイオン交換樹脂との接触条件を適宜、調節する手段を有する。またシリコーン重合体を含み、触媒が除去された反応液は、カラム6から送り出され、製品容器等に収集される。
【0074】
本発明により製造されるシリコーン重合体は、原料に金属が含まれないため、ディスプレイや半導体といった電子情報材料に好適に用いる事ができる。さらに、電子情報材料分野に限らず、塗料や接着剤等、幅広い分野に応用できる。
【実施例0075】
以下実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明する。以下の実施例において、分析には下記装置を使用し、原料は、特に明示しない場合、試薬メーカーから購入した一般的な試薬を用いた。分析には以下の方法を用いた。
【0076】
・分子量測定
東ソー社製HLC-8420GPCシステムを使用し、東ソー社製TSKgel SuperHZ3000、TSKgel SuperHZ2000、TSKgel SuperHZ1000を直列に接続して分析を行った。検出はRI(屈折率計)で行い、リファレンスカラムとしてTSKgel SuperH-RCを1本使用した。展開溶媒には和光純薬社製テトラヒドロフランを使用し、カラムとリファレンスカラムの流速は0.35mL/分で行った。測定温度はプランジャーポンプ、カラム共に40℃で行った。サンプルの調製にはシリコーン重合体約0.025gを10mLのテトラヒドロフランで希釈したものを25μL打ちこむ設定で行った。分子量分布計算には、東ソー社製TSK標準ポリスチレン(A-500、A-1000、A-2500、A-5000、F-1、F-2、F-4、F-10、F-20、F-40、F-80)を標準物質として使用した。
【0077】
・固形分濃度測定および収率測定
シリコーン重合体を含む溶液約1.0gをアルミカップに入れ精秤し、ホットプレートを用いて175℃で1時間焼成した後の質量を測定することで、シリコーン重合体を含む溶液約1.0gに対する固形分の質量を求め、シリコーン重合体を含む溶液の固形分濃度(質量%)を算出した。更に、得られた固形分濃度から、シリコーン重合体全体の固形分量を算出し、理論収量に対する割合を収率とした。
【0078】
・酸素ガスエッチング耐性
シリコーン重合体をシリコンウェハ(基板)上に、スピンコーター(MS-100、ミカサ社製)を用い、スピンコート法により塗布した。その後ホットプレートにて215℃1分間加熱(焼成)した。得られた膜の厚さは、光干渉式膜厚測定装置(ラムダエースVM-1210、株式会社SCREENセミコンダクターソリューションズ社製)で測定したところ、平均厚み130nmであった。得られた塗膜を有する基板を、エッチング装置(平行平板型RIE装置)を用いて、200W、5Pa、酸素ガス流量50sccm、10minの条件にて処理し、処理前後の平均膜厚からエッチングレート(nm/min)を算出した。
【0079】
実施例1
フローリアクターとして、デュアルプランジャーポンプ2基、マイクロミキサー、コントローラーおよび制御用PCからなる、KeyChem Integral(株式会社ワイエムシィ製)を用いた。デュアルプランジャーポンプは、それぞれマイクロミキサーと接続している。さらに、マイクロミキサーは、250mlのカラムと、内径2.4mm長さ138mmのチューブ(管型反応器)で接続しており、250mlのカラムには前処理されたイオン交換樹脂(“アンバーライト(登録商標)”IR124(H)―HG、オルガノ社製 ゲル型陽イオン交換樹脂)200mlが充填されている。250mlのカラムを通過した反応液は、ナスフラスコで収集される。
【0080】
500mlのポリ容器にテトラメトキシシラン9.28g(0.061mol)、メチルトリメトキシシラン24.91g(0.183mol)、メタノール102.58gを計量し、マグネチックスターラーで撹拌してモノマー溶液(溶液A)を得た。また、500mlのポリ容器にコリン(2-ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド)50%水溶液38.61g、メタノール85.48gを計量し、マグネチックスターラーで撹拌して触媒溶液(溶液B)を得た。
【0081】
溶液Aを含むポリ容器と、溶液Bを含むポリ容器をそれぞれデュアルプランジャーポンプ(以下、「ポンプA」、「ポンプB」ということがある。)に接続し、マイクロミキサーに送液した。溶液Aを供給するポンプAの送液速度は0.90ml/分、溶液Bを供給するポンプBの送液速度は0.77ml/分、マイクロミキサーの温度は25℃とした。マイクロミキサーで混合された溶液Aおよび溶液Bからなる混合液は、内径2.4mm長さ138mのチューブ(管型反応器)中で反応した。反応液がチューブに滞留する時間は225秒である。
【0082】
管型反応器から送り出された反応液をカラムに充填したイオン交換樹脂に接触させることにより、触媒を除去した。一方で、反応液をナスフラスコで収集することと並行して、プランジャーポンプでプロピレングリコールモノエチルエーテル239.33gをナスフラスコに加えた。得られた反応液を減圧濃縮することとで、無色透明のシリコーン重合体溶液159.4gを得た。
【0083】
得られたシリコーン重合体の数平均分子量(Mn)は1,410、重量平均分子量(Mw)は1,590、分散度(Mw/Mn)は1.13、固形分は10.1質量%であった。固形分から求められるシリコーン重合体の収率は100%であった。また、原料の仕込み作業を除くと、反応液の減圧濃縮操作までは、制御用PCを用いた自動運転で行った。
【0084】
比較例1
イオン交換樹脂を“アンバーライト(登録商標)”IR124(H)―HG(オルガノ社製 ゲル型陽イオン交換樹脂)から“アンバーリスト(登録商標)”15JWET(オルガノ社製 マクロポーラス型陽イオン交換樹脂)に置き換えた以外は実施例1と同様にして、無色透明のシリコーン重合体溶液156.2gを得た。
【0085】
得られたシリコーン重合体の数平均分子量(Mn)は、1,500、重量平均分子量(Mw)は1,920、分散度(Mw/Mn)は1.28、固形分は10.0質量%であった。固形分から求められるシリコーン重合体の収率は98%であった。実施例1と比較すると、分散度が高くなり収率が低下した。
【0086】
実施例2
500mlのポリ容器にテトラメトキシシラン9.28g(0.061mol)、メチルトリメトキシシラン24.91g(0.183mol)、メタノール102.58gを計量し、マグネチックスターラーで撹拌してモノマー溶液(溶液A)を得た。また、500mlのポリ容器にコリン(2-ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド)50%水溶液38.61g、メタノール85.48gを計量し、マグネチックスターラーで撹拌して触媒溶液(溶液B)を得た。
【0087】
溶液Aを含むポリ容器と、溶液Bを含むポリ容器をそれぞれデュアルプランジャーポンプに接続し、マイクロミキサーに送液した。溶液Aを供給するポンプAの送液速度は1.01ml/分、溶液Bを供給するポンプBの送液速度は0.87ml/分、マイクロミキサーの温度は25℃とした。マイクロミキサーで混合された溶液Aおよび溶液Bからなる混合液は、内径2.4mm長さ138mのチューブ(管型反応器)中で反応した。反応液がチューブに滞留する時間は200秒である。
【0088】
管型反応器から送り出された反応液をカラムに充填したイオン交換樹脂に接触させることにより、触媒を除去した。250mlのカラムには前処理されたイオン交換樹脂(“アンバーライト(登録商標)”IR124(H)―HG、オルガノ社製 ゲル型陽イオン交換樹脂)150mlが充填されている。一方で、反応液をナスフラスコで収集することと並行して、プランジャーポンプでプロピレングリコールモノエチルエーテル239.33gをナスフラスコに加えた。得られた反応液を減圧濃縮することとで、無色透明のシリコーン重合体溶液159.4gを得た。
【0089】
得られたシリコーン重合体の数平均分子量(Mn)は1,450、重量平均分子量(Mw)は1,680、分散度(Mw/Mn)は1.16、固形分は10.2質量%であった。固形分から求められるシリコーン重合体の収率は100%であった。また、原料の仕込み作業を除くと、反応液の減圧濃縮操作までは、制御用PCを用いた自動運転で行った。
【0090】
実施例3
実施例2で使用したイオン交換樹脂をメタノールで洗浄した。2Lポリ容器に、3.5%塩酸約1500gを調整し、デュアルプランジャーポンプでマイクロミキサーに供給速度約10ml/分で供給し、イオン交換樹脂と接触させることでイオン交換樹脂を再生した。再生後はメタノールで前処理し、再度実施例2と同様にして使用することで、無色透明のシリコーン重合体156.2gを得た。
【0091】
得られたシリコーン重合体の数平均分子量(Mn)は1,460、重量平均分子量(Mw)は1,690、分散度(Mw/Mn)は1.16、固形分は10.1質量%であった。固形分から求められるシリコーン重合体の収率は98%であった。ゲル型イオン交換樹脂を再生して再利用しても、収率は低下したが、分散度の低いシリコーン重合体が得られた。
【0092】
比較例2
イオン交換樹脂を“アンバーライト(登録商標)”IR124(H)―HG(オルガノ社製 ゲル型陽イオン交換樹脂)から、“アンバーリスト(登録商標)”15JWET(オルガノ社製 マクロポーラス型陽イオン交換樹脂)に置き換えた以外は、実施例2と同様にして無色透明液体149.6gを得た。
【0093】
得られたシリコーン重合体の数平均分子量(Mn)は、1,460、重量平均分子量(Mw)は1,790、分散度(Mw/Mn)は1.22、固形分は10.0質量%であった。固形分から求められるシリコーン重合体の収率は94%であった。実施例2と比較すると、分散度が高くなり収率が低下した。
【0094】
実施例4
フローリアクターとして、デュアルプランジャーポンプ2基、スタティックミキサー(K1-24-P、(株)ノリタケカンパニーリミテド製)、コントローラーおよび制御用PCからなる、KeyChem Integral(株式会社ワイエムシィ製)を用いた。デュアルプランジャーポンプは、それぞれスタティックミキサーと接続している。さらに、スタティックミキサーは、5Lのカラムと、内径2.4mm長さ15.3mのチューブ(管型反応器)で接続しており、5Lのカラムには前処理されたイオン交換樹脂(“アンバーライト(登録商標)”IR124(H)―HG、オルガノ社製 ゲル型陽イオン交換樹脂)3.75mlが充填されている。スタティックミキサーとチューブは、インキュベーターで25℃に温調されている。5Lのカラムを通過した反応液は、ナスフラスコで収集される。
【0095】
10Lのクリーンボトルにテトラメトキシシラン234.88g(1.543mol)、メチルトリメトキシシラン630.57g(4.629mol)、メタノール4759.98gを計量し攪拌しモノマー溶液(溶液A)を得た。更に、4Lクリーンボトルに25%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液996.32gを計量し触媒溶液(溶液B)を得た。モノマー溶液、触媒溶液および希釈溶液を含むクリーンボトルをそれぞれデュアルプランジャーポンプに接続した。溶液Aを供給するポンプAの送液速度は35.6ml/分、溶液Bを供給するポンプBの送液速度は5.0ml/分とし、スタティックミキサーにモノマー溶液と触媒溶液を供給して混合した。スタティックミキサーで混合されたモノマー溶液および触媒溶液からなる混合液は、内径2.4mm長さ15.3mのチューブ中で反応した。反応液がチューブに滞留する時間は103秒である。チューブから送り出された反応液を、カラムに充填したイオン交換樹脂と接触させて触媒を除去した。一方で、反応液を20L丸型フラスコで収集することと並行して、プランジャーポンプでプロピレングリコールモノエチルエーテル5426gを20L丸型フラスコに加えた。得られた反応液を減圧濃縮することとで、無色透明のシリコーン重合体溶液4.015kgを得た。得られたシリコーン重合体の、数平均分子量(Mn)は1,370、重量平均分子量(Mw)は1,440、分散度(Mw/Mn)は1.30、固形分は10.1質量%であった。固形分から求められるシリコーン重合体の収率は約100%であった。得られたシリコーン重合体の酸素ガスエッチング耐性を評価したところ5.0nm/minであった。
【0096】
比較例3
イオン交換樹脂を“アンバーライト(登録商標)”IR124(H)―HG(オルガノ社製 ゲル型陽イオン交換樹脂)から“アンバーリスト(登録商標)”15JWET(オルガノ社製 マクロポーラス型陽イオン交換樹脂)に置き換えた以外は実施例4と同様にして、無色透明のシリコーン重合体溶液3.905gを得た。
【0097】
得られたシリコーン重合体の数平均分子量(Mn)は、1,530、重量平均分子量(Mw)は2,040、分散度(Mw/Mn)は1.33、固形分は10.1質量%であった。固形分から求められるシリコーン重合体の収率は約100%であった。得られたシリコーン重合体の酸素ガスエッチング耐性を評価したところ6.0nm/minであった。実施例4と比較すると、分散度が高くなりエッチング耐性が低下した。
【0098】
【表1】
【符号の説明】
【0099】
1 モノマー槽
2 触媒槽
3 ポンプ
4 ミキサー
5 管型反応器
6 カラム
図1