(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025018994
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】加圧流体分配ステーションから充填されるべき容器の体積を推定するための方法
(51)【国際特許分類】
F17C 5/00 20060101AFI20250130BHJP
H01M 8/04 20160101ALN20250130BHJP
【FI】
F17C5/00
H01M8/04 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024117440
(22)【出願日】2024-07-23
(31)【優先権主張番号】2307995
(32)【優先日】2023-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】591036572
【氏名又は名称】レール・リキード-ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】レミ・ゴニン
(72)【発明者】
【氏名】フアド・アモリ
(72)【発明者】
【氏名】ダビド・バンピール
【テーマコード(参考)】
3E172
5H127
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA05
3E172AB01
3E172BA01
3E172BD03
3E172DA90
3E172EA02
5H127AB04
5H127BA02
5H127BA22
5H127FF20
(57)【要約】 (修正有)
【課題】気体水素などの加圧流体を分配するためのステーションから充填されるべき容器の体積を推定するための方法を提供する。
【解決手段】加圧流体の流れを容器中に注入するステップ(S1)と、流体流の注入後の容器中の圧力変動(dp)を決定するステップ(S2)と、ここで、圧力変動は、注入前の容器の初期圧力(p0)に関して決定され、容器中に注入された流体流の量(dm)を決定するステップ(S3)と、容器中に注入された流体流の量(dm)、及び流体流の注入後の容器中の圧力変動(dp)に基づいて、充填されるべき容器の体積(V)を推定するステップ(S4)において、充填されるべき容器の体積(V)はまた、容器に入る流体流の注入温度(Tinj)及び流体流の注入後の容器中の温度変動(dT)に基づいて推定され、温度変動は、注入前の容器の初期温度(T0)に関して決定される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体水素などの加圧流体を分配するためのステーション(5)から充填されるべき容器(2)の体積(V)を推定するための方法(10)であって、前記方法(10)が、
-加圧流体を前記容器(2)中に注入するステップ(S1)と、
-前記加圧流体の流れの注入後の前記容器(2)中の圧力変動(dp)を決定するステップ(S2)と、ここで、前記圧力変動は、注入前の前記容器(2)の初期圧力(p0)に関して決定され、
-前記容器(2)中に注入された流体流の量(dm)を決定するステップ(S3)と、
-前記容器(2)中に注入された前記流体流の量(dm)に基づいて、及び前記流体流の注入後の前記容器(2)中の前記圧力変動(dp)に基づいて、充填されるべき前記容器(2)の体積(V)を推定するステップ(S4)と
を備える、方法(10)において、
充填されるべき前記容器(2)の体積(V)はまた、注入温度(Tinj)、即ち、前記容器(2)に入る前記流体流の温度に基づいて、及び前記流体流の注入後の前記容器(2)中の温度変動(dT)に基づいて推定され、前記温度変動は、注入前の前記容器(2)の初期温度(T0))に関して決定されることを特徴とする、方法(10)。
【請求項2】
前記初期温度(T0))は、周囲温度に等しいと推定されることを特徴とする、請求項1に記載の方法(10)。
【請求項3】
充填されるべき前記容器(2)の体積(V)は、前記容器(2)中の前記加圧流体に適用される状態方程式から、及び前記容器(2)中の同じ流体に適用されるエンタルピー収支から取得される関数によって、前記容器(2)中の注入される前記流体流の量(dm)、前記圧力変動(dp)、前記注入温度(Tinj)、及び前記温度変動(dT)に関連付けられることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法(10)。
【請求項4】
前記容器(2)中の前記加圧流体に適用される状態方程式は、以下によって求められる理想気体方程式であり、
【数1】
ここで、p[Pa]、V[m
3]、T[K]、m[kg]、M[kg/mol]、及びz(無単位)は、それぞれ、充填されるべき前記容器(2)中の前記加圧流体の圧力、体積、温度、質量、モル質量、及び圧縮率であり、R[J/mol.K]は、理想気体定数であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法(10)。
【請求項5】
前記容器(2)の体積(V)を前記注入温度(Tinj)に関連付ける関数、前記容器(2)中に注入された前記流体流の量(dm)、前記容器(2)中の前記圧力変動(dp)、及び前記容器(2)中の前記温度変動(dT)は、以下の2つの因数、
-前記容器(2)中に注入された前記流体流の量(dm)及び前記容器(2)中の前記圧力変動(dp)にのみ依存する第1の一定の因数と、
-前記容器(2)中の前記初期圧力(p0))、前記注入温度(Tinj)、及び前記初期温度(T0)に依存する第2の因数f(T0,Tinj,p0)と
の積の形式で書くことができることを特徴とする、請求項3又は4に記載の方法(10)。
【請求項6】
前記第2の因数f(T
0,T
inj,p
0)は、以下のように書かれ、
【数2】
ここで、c
p[J/(kg.K)]、β[1/K]、ρ[kg/m
3]、及びh(p
0,T
0)[J/kg]は、それぞれ、前記容器(2)中の前記加圧流体の質量熱容量、等圧膨張係数、密度、及び質量エンタルピーであり、h(p
0,T
inj)[J/kg]は、前記容器(2)中に注入された前記流体流の質量エンタルピーであり、rは、理想気体定数R[J/mol.K]と、充填されるべき前記容器(2)中の前記加圧流体のモル質量M[kg/mol]との間の比であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法(10)。
【請求項7】
前記第2の因数f(T0,Tinj,p0)は、補間多項式f*(T0,Tinj,p0)によって近似されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法(10)。
【請求項8】
前記第2の因数f(T0,Tinj,p0)の前記補間多項式f*(T0,Tinj,p0)は、それぞれ、前記容器(2)中の前記加圧流体の前記初期温度、前記注入温度、及び前記容器(2)中の前記加圧流体の前記初期圧力を表す3つの変数(T0,Tinj,p0)を有する二次多項式であることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法(10)。
【請求項9】
充填されるべき前記容器(2)は、分配器(6)を介して前記ステーション(5)のソース容器(3)に流体接続され、前記容器(2)中に注入された流体の量(dm)及び前記容器(2)中の前記圧力変動(dp)は、前記分配器(6)に位置決めされたセンサによって測定されることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[1]本発明は、加圧流体分配ステーションから充填されるべき容器の体積を推定するための方法に関する。移送されるべき流体は、気体水素であり得る。充填されるべき容器は、車両、とりわけ燃料電池を有する車両に組み込まれ得る。
【背景技術】
【0002】
[2]充填されるべき容器の体積を推定するための方法は、通常、
-加圧流体の流れを容器中に注入するステップと、
-加圧流体の流れの注入後の容器中の圧力変動を決定するステップと、ここで、圧力変動は、注入前の容器の初期圧力に関して決定され、
-容器中に注入された加圧流体の流れの量を決定するステップと、
-容器中に注入された流体流の量に基づいて、及び加圧流体の流れの注入後の容器中の圧力変動に基づいて、充填されるべき容器の体積を推定するステップと
を備える。
【0003】
[3]充填されるべき容器の体積を知ることによって、とりわけ、容器がそれに従って充填されることになる圧力勾配を決定することが可能である。
【0004】
[4]容器の体積部が、充填されるべき容器を収容する車両中に設置された通信システムによって流体分配ステーションに通信することができる場合、そのような通信システムがない場合、又はこの通信システムによって通信されるデータを検証することを目的として、分配ステーションは、充填されるべき容器の体積を単独で推定することが可能でなければならない。
【0005】
[5]既存の方法は、充填されるべき容器の体積の、正確とは程遠い推定値を提供し、従って、充填されるべき容器の実際の体積に近似するために、補正係数が通常適用されなければならない。
【0006】
[6]更に、補正係数は、充填されるべき容器の寸法及び充填シナリオ(初期圧力、注入温度、等)に依存する。このことから、充填されるべき容器の体積を推定するための既存の方法に従って、この補正係数は、再計算されなければならない。
【0007】
[7]文献FR0955229もまた、充填されるべき容器の体積を推定するための方法を開示しており、この方法は、より正確であるという利点を有する。しかしながら、この方法は、比較的多くの回数の計算を必要とするという欠点を抱えており、そのような計算を行うための反復法は、体積の値に収束する。この方法に従った反復法は、体積のいかなる値にも収束しない場合もあり得る。
【0008】
[8]燃料電池車両の市場の発展に伴い、並びに充填されるべき様々な容器及び様々な充填ステーションを考慮して、単純且つ普遍的であり、より正確な結果を提供するであろう体積推定方法を開発する必要が明らかにある。
【発明の概要】
【0009】
[9]この目的のために、本発明は、上記の前提部によって与えられた包括的な定義に準拠しながら、充填されるべき容器の体積はまた、注入温度、即ち、容器に入る流体流の温度に基づいて、及び流体流の注入後の容器中の温度変動に基づいて推定され、温度変動は、注入前の容器の初期温度に関して決定されることを特徴とする。
【0010】
[10]このことから、充填されるべき容器の体積の推定のために、本発明による方法は、現実により近い熱力学的仮説(即ち、温度が注入後に変動する)を考慮する。このように、本発明は、容器中の流体の温度は注入中に一定であると想定される先行技術とは異なる。
【0011】
[11]更に、注入温度と、注入後の容器中の流体の温度の変動とを考慮することによって、本発明による方法は、容器の体積のより正確な推定値を取得することを可能にする。このことから、本発明は、分配ステーションにおいて遭遇する充填シナリオにかかわらず、補正係数を用意することを不要にし、いかなるタイプの容器の体積推定も推定することを可能にする。
【0012】
[12]本発明はまた、反復法を伴わずに、体積が直接推定されることを可能にする。
【0013】
[13]本発明の実施形態は、以下の特性のうちの1つ以上を備えることができる。
【0014】
[14]初期温度は、周囲温度で推定される。
【0015】
[15]充填されるべき容器の体積は、容器中の流体に適用される状態方程式から、及び容器中の同じ流体に適用されるエンタルピー収支から取得される関数を介して、容器中の注入される流体流の量、圧力変動、注入温度、及び温度の変動に関連付けられる。
【0016】
[16]容器中に流体に適用される状態方程式は、理想気体方程式であり、
【0017】
【0018】
ここで、p[Pa]、V[m3]、T[K]、m[kg]、M[kg/mol]、及びz(無単位)は、それぞれ、充填されるべき容器中の流体の圧力、体積、温度、質量、モル質量、及び圧縮率であり、R[J/mol.K]は、理想気体定数である。
【0019】
[17]容器の体積を注入温度に関係付ける関数、容器中に注入された流体流の量、容器中の圧力変動、及び容器中の温度変動は、以下の2つの因数、
-容器中に注入された流体流の量及び容器中の圧力変動にのみ依存する第1の一定の因数と、
-容器中の初期圧力、注入温度、及び初期温度に依存する第2の因数f(T0,Tinj,p0)と
の積の形式で書くことができる。
【0020】
[18]第2の因数は、このことから、以下のように書くことができ、
【0021】
【0022】
ここで、cp[J/(kg.K)]、β[1/K]、ρ[kg/m3]、及びh(p0,T0)[J/kg]は、それぞれ、容器中の流体の質量熱容量、等圧膨張係数、密度、及び質量エンタルピーであり、h(p0,Tinj)[J/kg]は、容器中に注入された流体流の質量エンタルピーであり、rは、理想気体定数R[J/mol.K]と、充填されるべき容器中の流体のモル質量M[kg/mol]との間の比である。
【0023】
[19]第2の因数f(T0,Tinj,p0)は、補間多項式f*(T0,Tinj,p0)によって近似される。
【0024】
[20]第2の因数f(T0,Tinj,p0)の補間多項式f*(T0,Tinj,p0)は、それぞれ、容器中の流体の初期温度、注入温度、及び容器中の流体の初期圧力を表す3つの変数(T0,Tinj,p0)を有する二次多項式である。
【0025】
[21]充填されるべき容器は、分配器を介して流体分配ステーションのソース容器に流体接続される。
【0026】
[22]容器中に注入された流体流の量及び流体中の圧力変動は、分配器中に位置決めされたセンサによって測定される。
【0027】
[23]他の特定の特徴及び利点は、以下の図を参照して提供される以下の説明を読むことから明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】[24]加圧流体分配ステーションに流体接続された充填されるべき容器を概略的に示す。
【
図2】[25]本発明による方法のステップを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
[26]
図1に示すように、本発明は、加圧流体を含むソース容器3から充填されるべき容器2(受け入れ容器)の体積Vを推定するための方法10に関する。
【0030】
[27]
図2を参照すると、充填されるべき容器2は、車両4、とりわけ燃料電池を有する車両に組み込まれ得る。ソース容器3は、加圧流体分配ステーション5に設置され得る。当該流体は、気体水素であり得る。
【0031】
[28]特に、分配ステーション5はまた、分配部材6、及びソース容器3と分配部材6との間に位置決めされた弁7を備える。
【0032】
[29]分配部材6は、充填されるべき容器2を含む車両4中に設けられた容れ物中に係合するノズル(図示せず)と共に、ソース容器3に接続された充填ラインを備える。分配部材6はまた、それぞれ、充填されるべき容器2に入る流体流の温度、圧力、及び流量を測定するためのセンサ(図示せず)を装備され得る。
【0033】
[30]推定方法10は、充填されるべき容器2を含む車両4の容れ物にステーション5の分配部材6を接続すること(分配部材を備える充填ラインと容器2の体積部との間の流体連通)から成るステップS0を備える。このステップS0では、弁7は、閉じられたままである。圧力バランシングは、分配部材6と充填されるべき容器2との間で行われる。このバランシングは、充填されるべき容器2の初期圧力p0を決定又は測定することを可能にする。
【0034】
[31]同じステップS0では、周囲温度は、分配ステーション5によって測定される。これは、充填されるべき容器2中の初期温度T0を推定するために使用することができる。
【0035】
[32]ステップS1では、弁7は、比較的短い時間間隔、長さにして数秒にわたって開かれる(例えば、5秒、言い換えれば、離散的、又は「パルス状の」ジェットの注入がある)。ソース容器3からの流体は、次いで、予め定義された圧力勾配、例えば、5bar/秒に従って、充填されるべき容器2中に注入される。充填されるべき容器2中への流体の注入は、圧力センサによって測定される圧力の増大を引き起こす。
【0036】
[33]弁7が閉じられた後、圧力センサによって測定される圧力は、ある特定の値p1まで減少する。この圧力p1は、充填されるべき容器2の圧力と同一である。
【0037】
[34]ステップS2では、本方法10は、注入の開始t0と終了t1との間の圧力変動の測定を提供する。この圧力変動は、dp=p1-p0と書くことができる。追加として、この同じステップS2又は異なるステップS3では、本方法10はまた、充填されるべき容器2中に注入された流体流の量dmの測定を提供する。
【0038】
[35]充填されるべき容器2中に注入された流体流の量dm(以下では単に物質の量dmと呼ばれる)は、時点t0とt1との間の質量流量の時間積分によって取得することができる:
【0039】
【0040】
[36]方法10のステップS4では、充填されるべき容器の体積Vが決定される。充填されるべき容器2の体積Vの計算は、圧力の変動dp、充填されるべき容器2中に注入された流体流の量dm、充填されるべき容器2の初期温度T0を考慮に入れる。
【0041】
[37]本発明によると、体積Vの計算はまた、注入温度Tinj、即ち、充填されるべき容器2に入る流体流の温度、及び流体流の注入後の容器2中の温度変動dTを考慮に入れ、温度変動は、注入前の容器2の初期温度T0に関して決定される。
【0042】
[38]注入前の容器2の初期圧力p0及び初期温度T0、注入後の容器2中の温度変動dT及び質量dmの変動は、注入温度Tinjと共に、以下のように書くことができる関係によって、充填されるべき容器2の体積Vの推定において考慮される:
V=f(p0,T0,dT,dm,Tinj)
【0043】
[39]上記の関係は、充填されるべき容器2中への流体流に適用される状態方程式から、及び同じ流れに適用されるエンタルピー収支から取得される。
【0044】
[40]有利には、流体が理想気体とみなされる場合、充填されるべき容器2中に注入された流体に適用される状態方程式は、以下のように書くことができる:
【0045】
【0046】
ここで、p[Pa]、V[m3]、T[K]、m[kg]、M[kg/mol]、及びz(無単位)は、それぞれ、充填されるべき容器中の流体の圧力、体積、温度、質量、モル質量、及び圧縮率であり、R[J/mol.K]は、理想気体定数である。
【0047】
[41]充填されるべき容器2中の流体のエンタルピー収支は、以下のように書かれる:
【0048】
【0049】
ここで、
β[1/K]、cp[J/(kg.K)]、及びh[J/kg]は、それぞれ、気体の等圧膨張係数、質量熱容量、及び質量エンタルピーであり、
uinj[m/s]は、注入気体の速度であり、Sw[m2]、Tg,w[K]、及びkg[W/m2/K]は、それぞれ、容器の内部表面積、内壁の表面の平均温度、及び気体と壁との間の熱伝達係数である。
【0050】
[42]充填されるべき容器の気体と壁との間の熱交換を無視し(即ち、
【0051】
【0052】
であると想定する)、エンタルピーに対する流体の運動エネルギーを無視すると(即ち、
【0053】
【0054】
であると想定する)、エンタルピー収支は、このことから、以下のように書くことができる:
【0055】
【0056】
[43]上記で示した状態方程式の導出と、導出された数式と上記のエンタルピー収支の簡略化された数式との組み合わせの後、充填されるべき容器2の体積Vと注入温度Tinjと量dmと圧力変動dpと温度変動dTとの間の関係は、以下のように書くことができる:
【0057】
【0058】
[44]初期温度T0は、分配ステーション5において測定された周囲温度によって近似することができる。
【0059】
[45]関数f(T0,Tinj,p0)は、アメリカ国立標準技術研究所(NIST)によって発行されたデータなどの文献によって供給される理想気体データに基づいて決定されることに留意されたい。
【0060】
[46]理想気体データがない場合、及び/又は体積の高速且つ正確な機械計算を目的として、本発明は、関数f(T0,Tinj,p0)の代わりに補間多項式f*(T0,Tinj,p0)の使用を提供する。
【0061】
[47]有利には、補間多項式f*(T0,Tinj,p0)は、3つの変数(T0,Tinj,p0)を有する二次多項式であり得る。この多項式は、以下のように書くことができる:
【0062】
【0063】
[48]補間多項式f*(T0,Tinj,p0)の係数ai(ここで、i∈[0,10])は、最小二乗線形回帰法によって決定することができる。
【0064】
[49]本発明による方法の検証研究は、補間多項式f*(T0,Tinj,p0)を使用して推定された体積Vが関数f(T0,Tinj,p0)を使用して推定された体積Vとほとんど変わらないことを示している。更に、ステーションにおいて測定された周囲温度による初期温度T0の近似は、満足のいく結果をもたらす。
【手続補正書】
【提出日】2024-08-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体水素などの加圧流体を分配するためのステーション(5)から充填されるべき容器(2)の体積(V)を推定するための方法(10)であって、前記方法(10)が、
-加圧流体を前記容器(2)中に注入するステップ(S1)と、
-前記加圧流体の流れの注入後の前記容器(2)中の圧力変動(dp)を決定するステップ(S2)と、ここで、前記圧力変動は、注入前の前記容器(2)の初期圧力(p0)に関して決定され、
-前記容器(2)中に注入された流体流の量(dm)を決定するステップ(S3)と、
-前記容器(2)中に注入された前記流体流の量(dm)に基づいて、及び前記流体流の注入後の前記容器(2)中の前記圧力変動(dp)に基づいて、充填されるべき前記容器(2)の体積(V)を推定するステップ(S4)と
を備える、方法(10)において、
充填されるべき前記容器(2)の体積(V)はまた、注入温度(Tinj)、即ち、前記容器(2)に入る前記流体流の温度に基づいて、及び前記流体流の注入後の前記容器(2)中の温度変動(dT)に基づいて推定され、前記温度変動は、注入前の前記容器(2)の初期温度(T0))に関して決定されることを特徴とする、方法(10)。
【請求項2】
前記初期温度(T0))は、周囲温度に等しいと推定されることを特徴とする、請求項1に記載の方法(10)。
【請求項3】
充填されるべき前記容器(2)の体積(V)は、前記容器(2)中の前記加圧流体に適用される状態方程式から、及び前記容器(2)中の同じ流体に適用されるエンタルピー収支から取得される関数によって、前記容器(2)中の注入される前記流体流の量(dm)、前記圧力変動(dp)、前記注入温度(Tinj)、及び前記温度変動(dT)に関連付けられることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法(10)。
【請求項4】
前記容器(2)中の前記加圧流体に適用される状態方程式は、以下によって求められる理想気体方程式であり、
【数1】
ここで、p[Pa]、V[m
3]、T[K]、m[kg]、M[kg/mol]、及びz(無単位)は、それぞれ、充填されるべき前記容器(2)中の前記加圧流体の圧力、体積、温度、質量、モル質量、及び圧縮率であり、R[J/mol.K]は、理想気体定数であることを特徴とする、請求項1
又は2に記載の方法(10)。
【請求項5】
前記容器(2)の体積(V)を前記注入温度(Tinj)に関連付ける関数、前記容器(2)中に注入された前記流体流の量(dm)、前記容器(2)中の前記圧力変動(dp)、及び前記容器(2)中の前記温度変動(dT)は、以下の2つの因数、
-前記容器(2)中に注入された前記流体流の量(dm)及び前記容器(2)中の前記圧力変動(dp)にのみ依存する第1の一定の因数と、
-前記容器(2)中の前記初期圧力(p0))、前記注入温度(Tinj)、及び前記初期温度(T0)に依存する第2の因数f(T0,Tinj,p0)と
の積の形式で書くことができることを特徴とする、請求項3に記載の方法(10)。
【請求項6】
前記第2の因数f(T
0,T
inj,p
0)は、以下のように書かれ、
【数2】
ここで、c
p[J/(kg.K)]、β[1/K]、ρ[kg/m
3]、及びh(p
0,T
0)[J/kg]は、それぞれ、前記容器(2)中の前記加圧流体の質量熱容量、等圧膨張係数、密度、及び質量エンタルピーであり、h(p
0,T
inj)[J/kg]は、前記容器(2)中に注入された前記流体流の質量エンタルピーであり、rは、理想気体定数R[J/mol.K]と、充填されるべき前記容器(2)中の前記加圧流体のモル質量M[kg/mol]との間の比であることを特徴とする、請求
項5に記載の方法(10)。
【請求項7】
前記第2の因数f(T0,Tinj,p0)は、補間多項式f*(T0,Tinj,p0)によって近似されることを特徴とする、請求項5に記載の方法(10)。
【請求項8】
前記第2の因数f(T0,Tinj,p0)の前記補間多項式f*(T0,Tinj,p0)は、それぞれ、前記容器(2)中の前記加圧流体の前記初期温度、前記注入温度、及び前記容器(2)中の前記加圧流体の前記初期圧力を表す3つの変数(T0,Tinj,p0)を有する二次多項式であることを特徴とする、請求項7に記載の方法(10)。
【請求項9】
充填されるべき前記容器(2)は、分配器(6)を介して前記ステーション(5)のソース容器(3)に流体接続され、前記容器(2)中に注入された流体の量(dm)及び前記容器(2)中の前記圧力変動(dp)は、前記分配器(6)に位置決めされたセンサによって測定されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法(10)。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0064
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0064】
[49]本発明による方法の検証研究は、補間多項式f
*(T
0,T
inj,p
0)を使用して推定された体積Vが関数f(T
0,T
inj,p
0)を使用して推定された体積Vとほとんど変わらないことを示している。更に、ステーションにおいて測定された周囲温度による初期温度T
0の近似は、満足のいく結果をもたらす。
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載の事項を、そのまま、付記しておく。
[1] 気体水素などの加圧流体を分配するためのステーション(5)から充填されるべき容器(2)の体積(V)を推定するための方法(10)であって、前記方法(10)が、
-加圧流体を前記容器(2)中に注入するステップ(S1)と、
-前記加圧流体の流れの注入後の前記容器(2)中の圧力変動(dp)を決定するステップ(S2)と、ここで、前記圧力変動は、注入前の前記容器(2)の初期圧力(p
0
)に関して決定され、
-前記容器(2)中に注入された流体流の量(dm)を決定するステップ(S3)と、
-前記容器(2)中に注入された前記流体流の量(dm)に基づいて、及び前記流体流の注入後の前記容器(2)中の前記圧力変動(dp)に基づいて、充填されるべき前記容器(2)の体積(V)を推定するステップ(S4)と
を備える、方法(10)において、
充填されるべき前記容器(2)の体積(V)はまた、注入温度(T
inj
)、即ち、前記容器(2)に入る前記流体流の温度に基づいて、及び前記流体流の注入後の前記容器(2)中の温度変動(dT)に基づいて推定され、前記温度変動は、注入前の前記容器(2)の初期温度(T
0
))に関して決定されることを特徴とする、方法(10)。
[2] 前記初期温度(T
0
))は、周囲温度に等しいと推定されることを特徴とする、[1]に記載の方法(10)。
[3] 充填されるべき前記容器(2)の体積(V)は、前記容器(2)中の前記加圧流体に適用される状態方程式から、及び前記容器(2)中の同じ流体に適用されるエンタルピー収支から取得される関数によって、前記容器(2)中の注入される前記流体流の量(dm)、前記圧力変動(dp)、前記注入温度(T
inj
)、及び前記温度変動(dT)に関連付けられることを特徴とする、[1]又は[2]に記載の方法(10)。
[4] 前記容器(2)中の前記加圧流体に適用される状態方程式は、以下によって求められる理想気体方程式であり、
[数11]
ここで、p[Pa]、V[m
3
]、T[K]、m[kg]、M[kg/mol]、及びz(無単位)は、それぞれ、充填されるべき前記容器(2)中の前記加圧流体の圧力、体積、温度、質量、モル質量、及び圧縮率であり、R[J/mol.K]は、理想気体定数であることを特徴とする、[1]~[3]のいずれか一項に記載の方法(10)。
[5] 前記容器(2)の体積(V)を前記注入温度(T
inj
)に関連付ける関数、前記容器(2)中に注入された前記流体流の量(dm)、前記容器(2)中の前記圧力変動(dp)、及び前記容器(2)中の前記温度変動(dT)は、以下の2つの因数、
-前記容器(2)中に注入された前記流体流の量(dm)及び前記容器(2)中の前記圧力変動(dp)にのみ依存する第1の一定の因数と、
-前記容器(2)中の前記初期圧力(p
0
))、前記注入温度(T
inj
)、及び前記初期温度(T
0
)に依存する第2の因数f(T
0
,T
inj
,p
0
)と
の積の形式で書くことができることを特徴とする、[3]又は[4]に記載の方法(10)。
[6] 前記第2の因数f(T
0
,T
inj
,p
0
)は、以下のように書かれ、
[数12]
ここで、c
p
[J/(kg.K)]、β[1/K]、ρ[kg/m
3
]、及びh(p
0
,T
0
)[J/kg]は、それぞれ、前記容器(2)中の前記加圧流体の質量熱容量、等圧膨張係数、密度、及び質量エンタルピーであり、h(p
0
,T
inj
)[J/kg]は、前記容器(2)中に注入された前記流体流の質量エンタルピーであり、rは、理想気体定数R[J/mol.K]と、充填されるべき前記容器(2)中の前記加圧流体のモル質量M[kg/mol]との間の比であることを特徴とする、[1]~[5]のいずれか一項に記載の方法(10)。
[7] 前記第2の因数f(T
0
,T
inj
,p
0
)は、補間多項式f
*
(T
0
,T
inj
,p
0
)によって近似されることを特徴とする、[1]~[6]のいずれか一項に記載の方法(10)。
[8] 前記第2の因数f(T
0
,T
inj
,p
0
)の前記補間多項式f
*
(T
0
,T
inj
,p
0
)は、それぞれ、前記容器(2)中の前記加圧流体の前記初期温度、前記注入温度、及び前記容器(2)中の前記加圧流体の前記初期圧力を表す3つの変数(T
0
,T
inj
,p
0
)を有する二次多項式であることを特徴とする、[1]~[7]のいずれか一項に記載の方法(10)。
[9] 充填されるべき前記容器(2)は、分配器(6)を介して前記ステーション(5)のソース容器(3)に流体接続され、前記容器(2)中に注入された流体の量(dm)及び前記容器(2)中の前記圧力変動(dp)は、前記分配器(6)に位置決めされたセンサによって測定されることを特徴とする、[1]~[8]のいずれか一項に記載の方法(10)。
【外国語明細書】