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特開2025-19026印刷ヘッド内のインクの印刷温度を制御する装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025019026
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】印刷ヘッド内のインクの印刷温度を制御する装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/17 20060101AFI20250130BHJP
   B41J 2/175 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
B41J2/17
B41J2/175 121
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024119580
(22)【出願日】2024-07-25
(31)【優先権主張番号】10 2023 119 969.2
(32)【優先日】2023-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】516255493
【氏名又は名称】キャノン プロダクション プリンティング ホールディング ビー. ヴィ.
【氏名又は名称原語表記】Canon Production Printing Holding B.V.
【住所又は居所原語表記】Van der Grintenstraat 10, 5914 HH Venlo, The Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】エンダー オルガック
(72)【発明者】
【氏名】マティアス カーゲ
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EC29
2C056HA15
2C056HA60
2C056KA01
2C056KB04
2C056KB16
2C056KB29
2C056KB37
2C056KD10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】インクの温度を所定の温度範囲内に維持できるように制御を行う。
【解決手段】インクジェット印刷用のシステムの印刷ヘッド内のインクの印刷温度を制御する装置。システムは、熱交換器であって、インク用の第1の通路と、温度制御流体用の第2の通路とを有する熱交換器と、温度制御流体を加熱/冷却するチラーと、インクを、熱交換器を通して、かつ印刷ヘッド内に、圧送するインク回路と、温度制御流体を、チラーと、熱交換器とを通して圧送する温度制御流体回路と、を備えている。装置は、チラーにより温度制御流体を、インクの温度が、所定の温度範囲内に置かれ、かつその範囲内に維持されるように加熱/冷却するように、構成され、熱交換器には、少なくとも1つの加熱要素が設けられ、加熱要素は、インクを所定の温度範囲内に入れるために、電流により温度制御流体およびインクを加熱するように、構成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット印刷用のシステムの印刷ヘッド(3)内のインク(4)の印刷温度を制御する装置であって、前記システムは、
熱交換器(2)であって、
インク(5)用の第1の通路と、
温度制御流体(4)用の第2の通路と、
を有する熱交換器(2)と、
前記温度制御流体(4)を加熱および/または冷却するチラー(1)と、
インク(5)を、前記熱交換器(2)を通して、かつ前記印刷ヘッド(3)内に、圧送するように、構成されているインク回路(100)と、
前記温度制御流体(4)を、前記チラー(1)と、前記熱交換器(2)とを通して圧送するように、構成されている温度制御流体回路(100)と、
を備え、
前記装置は、前記チラー(1)により前記温度制御流体(4)を、前記インク(5)の温度が、所定の温度範囲内に置かれ、かつその範囲内に維持されるように加熱および/または冷却するように、構成されており、前記熱交換器(2)には、少なくとも1つの加熱要素(23,24)が設けられており、前記加熱要素(23,24)は、前記インク(5)をより迅速に前記所定の温度範囲内に入れるために、電流により前記温度制御流体(4)および前記インク(5)を付加的に加熱するように、構成されている、
装置。
【請求項2】
少なくとも2つの加熱要素(23,24)が設けられている、請求項1記載の装置。
【請求項3】
少なくとも1つの前記加熱要素(23,24)は、加熱フィルムとして形成され、特に、ポリエステルフィルムまたはシリコーン内に封じ込められている、担体上の電気伝導性のコーティングとして形成されている、請求項1または2記載の装置。
【請求項4】
前記熱交換器(2)は、プレート形熱交換器(2)として、特に特殊鋼からなる金属プレートを有して形成されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の装置。
【請求項5】
前記熱交換器(2)は、外部に対して絶縁されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の装置。
【請求項6】
第1の加熱要素(23)が、第1の方向で前記プレート形熱交換器(2)の最も外側の金属プレート(27)に装着されており、さらに好ましくは、第2の加熱要素(24)が、第2の方向で前記プレート形熱交換器(2)の最も外側の金属プレート(27)に装着されており、さらに好ましくは、前記第1の加熱要素(23)および/または前記第2の加熱要素(24)は、前記最も外側の金属プレートの表面の少なくとも80パーセントにわたって張設されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の装置。
【請求項7】
前記チラー(2)は、冷却モードでも加熱モードでも運転され得る、請求項1から6までのいずれか1項記載の装置。
【請求項8】
前記温度制御流体回路(100)は、さらに、前記温度制御流体(5)を、付加的に前記印刷ヘッド(3)を通して圧送するように、構成されている、請求項1から7までのいずれか1項記載の装置。
【請求項9】
前記温度制御流体回路(100)は、弁を有し、前記弁は、第1の位置では、前記温度制御流体(4)を、前記熱交換器(2)を通して導き、第2の位置では、前記温度制御流体(4)を、前記熱交換器(2)を迂回させて導くように、構成されており、前記弁は、好ましくは、第1のレーマ弁(101)として形成されている、請求項1から8までのいずれか1項記載の装置。
【請求項10】
前記インク回路(200)は、バッファタンク(201)を有し、前記バッファタンク(201)は、一部、空気(6)またはその他のガスで満たされ、一部、インク(5)で満たされており、好ましくは、前記インク回路(200)の分岐管路(206)が、前記バッファタンク(201)から前記印刷ヘッド(3)へと通じている、請求項1から9までのいずれか1項記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット印刷用のシステムの印刷ヘッド内のインクの印刷温度を制御する装置に関する。
【0002】
高性能印刷分野、特に、解像度が高く、600dpiを超え、かつ速度が最先端領域にあるような印刷分野にあっては、高品質のプリントアウトが、少量のインク消費で発生させられなければならない。その際、インクの挙動に対する高い要求は、インクが、印刷工程中、狭い所定の温度範囲内に維持されるときしか、達成され得ない。経験によれば、最も有利なインク特性は、摂氏25度~摂氏38度、特に摂氏30度~摂氏34度の温度範囲内で達成される。理想温度から摂氏1度という小さな偏差があるだけで、パフォーマンスのロスに繋がってしまうことがある。外気温、室温ならびにポンプの動作および電流による加熱効果に応じ、これにより、インクを加熱したり、または冷却もしたりする必要がある。インクジェット印刷用のシステムが存在する部屋の室温は、通例、摂氏30度より低いことが大半であるので、このような場合、インク回路内に存在するインクを予熱することが必要である。
【0003】
米国特許出願公開第2010/0066785号明細書は、インクを加熱および冷却する、熱交換器を有するインクジェットプリンタを開示している。このインクジェットプリンタは、異なるインクカラー用に複数の通路を有している。図面にはプレートとして示されていて、オン・オフが切り換え可能なヒータにより、通路内のインクは、加熱され得る。熱交換器は、さらに放射セクションを有し、放射セクションは、旋回可能に通路と熱交換するように移行され得る。放射セクションには、周囲への熱放射によりインクを冷却すべく、大きな表面が設けられている。冷却は、空気流により強められ、空気流は、放射セクションの表面から熱を運び出すべく、構成されている。このとき、不都合なのは、外気温または室温が摂氏34度を超えるとき、冷却がもはや不可能であることである。さらにヒータは、調整不能である。それゆえ、ヒータのオン時間およびオフ時間は、インクを実に狭い所定の温度範囲内に維持することを達成すべく、極めて正確に設定されていなければならない。
【0004】
米国特許出願公開第2019/0092017号明細書は、インクを冷却および加温する、熱交換器を有するインクジェットプリンタを開示している。このインクジェットプリンタは、1つまたは複数のインク通路と、1つの温度制御通路とを有している。温度制御通路を通して、温度制御流体が流れる。温度制御流体は、チラー内で冷却され得る。さらに温度制御流体は、ポンプを動作制御するために使用される集積回路の余熱により加温されることができ、しかし、このためには、温度制御流体の流れ方向を逆にする必要がある。
【0005】
米国特許出願公開第2021/0023838号明細書は、インクを冷却および加温する、熱交換器を有するインクジェットプリンタを開示している。このインクジェットプリンタは、詳細は特定しないヒータと、クーラとを有し、クーラは、例えば米国特許出願公開第2010/0066785号明細書におけるような放射クーラであってもよい。
【0006】
本発明の根底にある課題は、インクの温度を、より効率的に、かつより正確に、所定の温度範囲内に維持するとともに、温度が所定の温度範囲を大幅に下回っているとき、インクを所定の温度範囲内に入れる予熱時間を短縮することである。このことは、特に、長めのダウンタイム後に該当し得る。
【0007】
上記課題は、請求項1記載のインクジェット印刷用のシステムの印刷ヘッド内のインクの印刷温度を制御する装置により解決される。有利な実施の形態は、従属請求項から看取可能である。
【0008】
本発明に係る装置は、熱交換器を備えている。この熱交換器は、インク用の第1の通路と、温度制御流体、特に水用の第2の通路とを有している。チラーが、温度制御流体を加熱および/または冷却するように、設けられている。さらに装置は、インクを、熱交換器と、印刷ヘッドとを通して圧送するように、構成されているインク回路を備えている。さらに装置は、温度制御流体を、チラーと、熱交換器とを通して圧送するように、構成されている温度制御流体回路を備えている。装置は、チラーにより温度制御流体を、インクの温度が、所定の温度範囲内に置かれ、かつその範囲内に維持されるように加熱および/または冷却するように、構成されている。熱交換器には、少なくとも1つの加熱要素が設けられており、加熱要素は、インクをより迅速に所定の温度範囲内に入れるために、電流により温度制御流体およびインクを付加的に加熱するように、構成されている。
【0009】
少なくとも1つの加熱要素が、熱交換器に直接存在することにより、少なくとも1つの加熱要素による加熱と、温度制御流体によるインクの加熱とは、同じ箇所で行われる。これにより、インクのより迅速な加熱と、良好な温度管理とが互いに結び付けられる。さらに、このことは、低コストの解決手段である。それというのも、加熱要素、特に加熱フィルムまたは加熱マットも、熱交換器も、商業的に低コストに入手可能であり、かつ簡単に互いに組み立てられ得るからである。
【0010】
好ましくは、少なくとも2つの加熱要素が設けられている。こうして有利には、付加的な加熱が、熱交換器の異なる表面セクションにおいて行われ得る。
【0011】
少なくとも1つの加熱要素は、特に、ポリエステルフィルムまたはシリコーン内に封じ込められている、担体上の電気伝導性のコーティングとして形成されている。これは、加熱要素の特に低コストの、かつ商業的に入手可能な変化態様である。
【0012】
好ましくは、熱交換器は、プレート形熱交換器として形成されている。このような熱交換器は、安価に商業的に入手可能であり、簡単に製造可能であり、かつこのような熱交換器には、特に加熱要素が加熱フィルムまたは加熱マットとして形成されているとき、簡単に加熱要素が取り付けられる。プレート形熱交換器は、通例、複数の金属プレートを有し、これらの金属プレートは、層状に形成されている。これらの金属プレートは、例えば互いにろう接またはねじ止めされていることができる。金属プレートは、特に熱伝導性の、頑強な、かつ耐食性の特殊鋼からなっていることが大半である。例えば金属プレートの波形のパターンにより複数の中間室が提供されてもよく、この場合は、これらの中間室内で熱交換が行われる。
【0013】
温度制御流体の流れ方向と、インクの流れ方向とが、クロスするように互いに対して直交していると、特に好ましい。直交流は、決められた温度を達成したいとき、特に好ましく、このことは、インクを温度制御すべく、殊に特に本発明の目的方向に添っている。
【0014】
しかし、温度制御流体の流れ方向と、インクの流れ方向とが、互いに並流形または向流形であることも可能である。流れ方向が向流形である場合、考え得る最大の熱交換が行われる。
【0015】
特に有利な一実施の形態において、熱交換器は、外部に対して絶縁されている。このことは、こうして外部への熱伝導が効果的に制限されるので、有利である。而して、インクの所定の温度範囲は、より良好に達成され、かつ維持され得る。絶縁は、この場合、好ましくは、開放可能に形成されている。こうして、少なくとも1つの加熱要素は、有利には絶縁の内側に組み立てられ得る。
【0016】
好ましくは、第1の加熱要素が、第1の方向でプレート形熱交換器の最も外側の金属プレートに装着されている。特に好ましくは、第2の加熱要素が、第2の方向でプレート形熱交換器の最も外側の金属プレートに装着されている。こうして、有利には、特に良好な熱伝達が達成され得る。特に有利な一実施の形態において、第1および/または第2の加熱要素は、最も外側の金属プレートの表面の少なくとも80パーセントにわたって張設されている。こうして、熱伝達は、さらに改善され得る。
【0017】
少なくとも1つの加熱要素は、熱交換器に接着され、かつ/またはクランプされ、かつ/またはねじ止めされていることが可能である。このことは、限定的に解すべきものではない。
【0018】
熱交換器の絶縁は、好ましくは、少なくとも1つの加熱要素の電流供給用の孔を有している。このことは、少なくとも1つの加熱要素の動作制御に有利である。
【0019】
チラーは、好ましくは、冷却モードでも加熱モードでも運転され得る。こうして、温度制御流体の温度は、極めて正確に開ループおよび/または閉ループ制御され得る。
【0020】
有利な一実施の形態において、温度制御流体回路は、温度制御流体を、さらに印刷ヘッドを通して圧送するように、構成されている。こうして、印刷ヘッドにおけるインクの温度の制御は、さらに正確に実施され得る。このことは、とりわけ、印刷プロセス中、熱が印刷ヘッドにおいて放出されるので、必要である。インクの温度が、熱交換器の通走後、所定の範囲内にあるとき、インクは、印刷ヘッドを通走する際に、所定の範囲を超えて加熱されることがある。温度制御流体は、ここでつまり、なおもさらに冷却を提供し得る。
【0021】
さらにより良好に印刷ヘッドの昇温に反応することができるように、装置は、好ましくは、弁を備え、弁は、第1の位置では、温度制御流体を、熱交換器を通して導き、第2の位置では、温度制御流体を、熱交換器を迂回させて導くように、構成されている。このことは、特に冷却モードにおいて、印刷工程中の印刷ヘッドの昇温に、より迅速に対抗作用するために、有利であって、この対抗作用は、温度制御流体が、なおも熱交換器を通して導かれるのではなく、熱交換器を迂回させ、こうしてより強い冷却作用が印刷ヘッド内に引き起こされ得ることによって、達成される。
【0022】
インク回路は、好ましくは、バッファタンクを有し、バッファタンクは、一部、空気またはその他のガスで満たされ、一部、インクで満たされている。このことは、インクの圧力および温度の良好な管理を可能にする。インク回路の分岐管路が、特にバッファタンクから印刷ヘッドへと通じている。バッファタンク内の圧力により、インクは、而して有利には印刷ヘッドへと案内される。部分インク回路が、好ましくは、バッファタンクから、ポンプを通り、熱交換器を通り、そして再びバッファタンクへと戻る。この部分回路は、有利には、バッファタンク内のインクを熱交換器により加熱および/または冷却するために用いられる。特に部分インク回路内に弁が設けられており、弁は、インクを、熱交換器を通して導くか、または熱交換器を迂回させて導くように、構成されている。こうして、インクが、熱交換器を迂回するように導かれるとき、印刷ヘッドにおける熱交換効果を強めることができ、このことは、特に冷却モードにおいて有利である。
【0023】
別の有利な実施の形態は、以下の図面および図面の詳細な説明から看取可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係る装置の好ましい一実施の形態の温度制御流体回路の概略流れ図である。
図2】本発明に係る装置の好ましい一実施の形態のインク回路の概略流れ図である。
図3】本発明に係る装置の好ましい一実施の形態による2つの加熱要素を有するプレート形熱交換器の概略鉛直-水平断面図である。
図4図3に示したプレート形熱交換器の別の概略鉛直-水平断面図である。
図5図3および4に示したプレート形熱交換器の斜視図である。
【0025】
図面の詳細な説明
図1には、流れ図で概略的に本発明に係る装置の好ましい一実施の形態の温度制御流体回路を概略的に示し、100を付してある。この温度制御流体回路100は、温度制御流体4を、チラー1、プレート形熱交換器2および印刷ヘッド3を通して圧送するように、構成されている。
【0026】
チラー1は、温度制御流体4を加熱および/または冷却するように、構成されている。チラー1は、例えば冷凍機またはヒートポンプまたは圧縮式冷却もしくは加熱設備として、熱力学サイクルにより温度制御流体に熱を供給するように、または温度制御流体から熱を奪うようにも、構成されていることができる。1つもしくは複数のペルティエ素子を用いて、または別の公知の、流体を加熱および/もしくは冷却する設備を用いて形成することも可能である。チラー1は、温度制御流体4の供給部11と、温度制御流体4の排出部12とを有している。温度制御流体回路100は、チラー1に温度制御流体4を、供給部11を通して供給し、かつ排出部12を通して、加熱または冷却した温度制御流体4を排出するように、構成されている。
【0027】
チラー1の排出部12に後置されて、本実施の形態では、第1のレーマ弁(Roemer-Ventil)101が設けられている。第1のレーマ弁101は、チラー1からの温度制御流体4をプレート形熱交換器2に供給するか、または第1のバイパス102内でプレート形熱交換器2を迂回させて案内するように、構成されている。
【0028】
プレート形熱交換器2は、温度制御流体4によりインク回路内のインクを加熱または冷却するように、設けられている。このことは、しかし、チラー4から排出された温度制御流体4がプレート形熱交換器2に供給されるように、第1のレーマ弁101が調整されているときのみ、行われる。このためにプレート形熱交換器2は、供給部21と、排出部22とを有している。供給部21と、排出部22とは、本実施の形態では、1つの共通の表面に配置されているが、このことは、普遍性を制限するものではない。プレート形熱交換器は、第1の加熱要素23と、第2の加熱要素24とを有している。第1の加熱要素23は、プレート形熱交換器2の、供給部21および排出部22側の表面に配置されている。第2の加熱要素24は、プレート形熱交換器の、供給部21および排出部22とは反対側の表面に配置されている。プレート形熱交換器2のさらなる好ましい特徴については、図3~5を参照しながらさらに下で説明する。
【0029】
プレート形熱交換器に後置されて、本実施の形態では、T形接続器103が配置されている。T形接続器103は、プレート形熱交換器2の排出部22から来る温度制御流体4と、第1のバイパス102から来る温度制御流体4とを、1つの共通の温度制御流体流104へと移行させるように、構成されている。こうして、第1のレーマ弁101の位置次第で、T形接続器103が、プレート形熱交換器2からの温度制御流体を通すか、または第1のバイパス102からの温度制御流体4を通すかが、達成される。
【0030】
T形接続器103からの温度制御流体流104は、印刷ヘッド3内に導かれるように、構成されている。ここで、本実施の形態では、付加的にインクの加熱および/または冷却が行われる。このことは、特に、印刷ヘッド内のインクの温度が印刷工程に基づいて上昇しているときに、利点を有している。この場合、チラーは、冷却モードに切り換え可能である。さらに第1のレーマ弁101は、チラーの流出部12からの温度制御流体4が、第1のバイパス102内に流れるように調整されることができ、これにより、プレート形熱交換器4内での加熱が行われず、温度制御流体4のフルの冷却作用が印刷ヘッド3において直接行われる。而して、極めて迅速に印刷ヘッドの昇温に反応することができる。印刷ヘッドに後置されて、温度制御流体4は、本実施の形態では、直接、再びチラー1の流入部11内に流れる。
【0031】
図2には、流れ図で概略的に本発明に係る装置の好ましい一実施の形態のインク回路を概略的に示し、200を付してある。このインク回路100は、バッファタンク201を有している。このバッファタンク201は、部分的にインク5により満たされ、部分的に空気6により満たされている。こうして、バッファタンク201内の正圧は、極めて良好に調整され得る。分岐管路206が、バッファタンク201から印刷ヘッド3へと通じている。
【0032】
インク回路200の部分回路202が、本実施の形態では、インク5をポンプ2021によりプレート形熱交換器2を通して圧送し、再びバッファタンク201内に戻し案内するように、構成されている。この場合、プレート形熱交換器2は、通し案内されるインク5を温度制御流体4により冷却または加熱するように、形成されている。こうして、バッファタンク内のインク5の温度は、制御可能である。例示的な温度制御流体回路100については、上で図1を参照しながら説明してある。バッファタンク201に後置されて、ここでは、ポンプが配置されている。ポンプに後置されて、ここでは、第2のレーマ弁2022が配置されている。第2のレーマ弁は、この場合、第1の位置では、インク5をさらにプレート形熱交換器2へと導き、第2の位置では、インク5を第2のバイパス2025内でバッファタンク201へと戻し案内するように、形成されている。第2のレーマ弁2022が、第1の位置にある場合、第2のレーマ弁2022には、5μmフィルタが後置されている。5μmフィルタ2024には、脱気器2024が後置されている。こうして、凝集物または気泡がプレート形熱交換器2内に到達してしまわないようにすることができる。気泡は、熱伝導を低減させてしまうことがあり、凝集物は、プレート形熱交換器2を閉塞させてしまうことがある。5μmフィルタ2024には、プレート形熱交換器2が後置されている。プレート形熱交換器2のインク流出部から、インクは、バッファタンク201へと戻し案内される。
【0033】
図3ないし5には、本発明に係る装置の好ましい一実施の形態から、1つのプレート形熱交換器を、2つの断面図と、1つの斜視図とで示してあり、2を付してある。
【0034】
プレート形熱交換器2は、インク供給部25と、温度制御流体供給部21とを有している。さらにプレート形熱交換器2は、インク排出部26と、温度制御流体排出部22とを有している。例示的な温度制御流体回路100については、図1を参照しながら上で説明してある。例示的なインク回路200については、図2を参照しながら上で説明してある。プレート形熱交換器2は、複数の金属プレート27を有し、これらの金属プレート27は、層状に形成されており、中間室またはチャンバを形成している。この場合、互いに交互に、それぞれ1つのインク制御流体チャンバ28と、それぞれ1つのインクチャンバ29とが配置されている。図3には、こうして6つのインク制御流体チャンバ28と、5つのインクチャンバ29とを示してある。特に有利には、プレート形熱交換器は、容積をさらなる金属プレート27およびチャンバの追加により変更するように、形成されている。
【0035】
プレート形熱交換器2の第1の端部には、第1の加熱要素23が配置されている。プレート形熱交換器2の第2の端部には、第2の加熱要素24が配置されている。プレート形熱交換器2は、両端部でそれぞれ1つのマウントプレート29bにより閉鎖されている。外側のマウントプレート29bは、本実施の形態では、ねじ結合部29aにより連結されている。こうしてプレート形熱交換器2のチャンバは、有利には密に保持されることができ、プレート形熱交換器の容積の変更は、さらなる金属プレート27が、ねじ結合部29aと、マウントプレート29bとにより、それらの間に挿入され、かつ封止され得ることにより、容易に可能である。
【0036】
第1の加熱要素23と、第2の加熱要素24とは、ここでは、加熱フィルムとして形成されており、それぞれ、熱交換器の外側の金属プレートの表面の80%超にわたって張設されている。こうして特に良好な付加的な熱放出が達成される。電圧の変更により、特に加熱フィルムの熱出力は、変更可能である。
【0037】
図4の断面図には、プレート形熱交換器2の上に、図1に示した第1のレーマ弁101、バイパス102およびT形接続器103の配置を示してある。第1のレーマ弁101により、有利には、チラー1(図1参照)からの温度制御流体4が、プレート形熱交換器2を通して導かれるか、またはバイパス102を通して導かれるかが、設定される。
【0038】
特にインクカラー毎に本発明に係る装置が設けられている。本明細書において説明した手段により、迅速かつ低コストに、インク5を所定の印刷温度範囲内に入れることが達成され得る。さらに、極めて正確かつ低コストに、インク5の印刷温度をこの所定の範囲内に維持することが達成され得る。さらに、異なるインク体積への良好な適合性および可変性が達成される。
【符号の説明】
【0039】
1 チラー
2 プレート形熱交換器
3 印刷ヘッド
4 温度制御流体
5 インク
6 空気
11 チラーへの温度制御流体の供給部
12 チラーからの温度制御流体の排出部
21 プレート形熱交換器のための温度制御流体供給部
22 プレート形熱交換器のための温度制御流体排出部
23 第1の加熱要素
24 第2の加熱要素
25 プレート形熱交換器のためのインク供給部
26 プレート形熱交換器のためのインク排出部
27 金属プレート
28 温度制御流体チャンバ
29 インクチャンバ
29a マウントプレート
29b マウントプレート用のねじ止め
100 温度制御流体回路
101 第1のレーマ弁
102 第1のバイパス
103 T形接続器
104 温度制御流体流
200 インク回路
201 バッファタンク
202 部分インク回路
206 分岐管路
2021 ポンプ
2022 第2のレーマ弁
2023 5μmフィルタ
2024 脱気器
2025 第2のバイパス
図1
図2
図3
図4
図5
【外国語明細書】