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特開2025-19028チタン合金及びそれを含むゴルフクラブヘッド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025019028
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】チタン合金及びそれを含むゴルフクラブヘッド
(51)【国際特許分類】
   A63B 53/04 20150101AFI20250130BHJP
   C22C 14/00 20060101ALI20250130BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20250130BHJP
   C22F 1/18 20060101ALN20250130BHJP
   A63B 102/32 20150101ALN20250130BHJP
【FI】
A63B53/04 C
C22C14/00 Z
A63B53/04 G
A63B53/04 K
C22F1/00 623
C22F1/00 624
C22F1/00 630A
C22F1/00 630C
C22F1/00 630K
C22F1/00 673
C22F1/00 683
C22F1/00 694B
C22F1/18 H
C22F1/00 601
A63B102:32
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024119597
(22)【出願日】2024-07-25
(31)【優先権主張番号】18/226,106
(32)【優先日】2023-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】516368128
【氏名又は名称】アクシネット・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ウダイ・ブイ・デシュムク
(72)【発明者】
【氏名】チェウェイ・タイ
【テーマコード(参考)】
2C002
【Fターム(参考)】
2C002AA02
2C002CH01
2C002CH03
2C002MM04
(57)【要約】
【課題】ゴルフクラブの性能ニーズ及び要望に特化した合金組成物を開発すること。
【解決手段】ゴルフクラブヘッドは、打撃フェース部分とアフトボディ部分とを備える。打撃フェース部分は、4種以上のベータ(β)相安定化元素及び1種又は複数のアルファ(α)相安定化元素を含むチタン合金を含む。4種以上のベータ(β)相安定化元素のそれぞれは、チタン合金中に約0.25~約1.75質量%の量で独立して存在する。チタン合金は、チタン、4種以上のベータ(β)相安定化元素、及び1種又は複数のアルファ(α)相安定化元素を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
打撃フェース部分と、
アフトボディ部分と
を備える、ゴルフクラブヘッドであって、
前記打撃フェース部分が、4種以上のベータ(β)相安定化元素、及び1種又は複数のアルファ(α)相安定化元素を含むチタン合金を含み、前記4種以上のベータ(β)相安定化元素のそれぞれが、前記チタン合金中に約0.25~約1.75質量%の量で独立して存在する、ゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
前記4種以上のベータ(β)相安定化元素のそれぞれが、前記チタン合金中に約0.5~約1.5質量%の量で独立して存在する、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
前記4種以上のベータ(β)相安定化元素のそれぞれが、前記チタン合金中に約0.75~約1.25質量%の量で独立して存在する、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
前記4種以上のベータ(β)相安定化元素が、Mnを含む、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
前記4種以上のベータ(β)相安定化元素のそれぞれが、前記チタン合金中に概して同じ量で存在する、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項6】
前記1種又は複数のアルファ(α)相安定化元素が、Alを含む、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項7】
前記チタン合金が、約7~約10質量%の量のAlを含む、請求項6に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項8】
前記チタン合金が、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Sn、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Zr、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Sn-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Zr-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Zr-Sn、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Zr-Sn-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-Sn、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-Zr、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-Sn-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-Zr-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-Zr-Sn、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-Zr-Sn-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Mo、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Mo-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Mo-Sn、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Mo-Zr、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Mo-Sn-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Mo-Zr-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Mo-Zr-Sn、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Mo-Zr-Sn-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-Mo、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-Mo-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-Mo-Sn、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-Mo-Zr、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-Mo-Sn-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-Mo-Zr-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-Mo-Zr-Sn、及び
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-Mo-Zr-Sn-O
からなる群から選択される組成を有する、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項9】
前記打撃フェース部分が打撃フェースインサートを備え、前記打撃フェースインサートが前記チタン合金を含む、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項10】
チタン、4種以上のベータ(β)相安定化元素、及び1種又は複数のアルファ(α)相安定化元素を含む、チタン合金。
【請求項11】
1種又は複数の中性元素を更に含む、請求項10に記載のチタン合金。
【請求項12】
前記4種以上のベータ(β)相安定化元素のそれぞれが、チタン合金中に約0.25~約1.75質量%の量で独立して存在する、請求項10に記載のチタン合金。
【請求項13】
前記4種以上のベータ(β)相安定化元素のそれぞれが、チタン合金中に約0.5~約1.5質量%の量で独立して存在する、請求項10に記載のチタン合金。
【請求項14】
前記4種以上のベータ(β)相安定化元素のそれぞれが、チタン合金中に約0.75~約1.25質量%の量で独立して存在する、請求項10に記載のチタン合金。
【請求項15】
前記4種以上のベータ(β)相安定化元素が、Mnを含む、請求項10に記載のチタン合金。
【請求項16】
前記4種以上のベータ(β)相安定化元素のそれぞれが、チタン合金中に概して同じ量で存在する、請求項10に記載のチタン合金。
【請求項17】
前記概して同じ量が、約0.25~約1.75質量%である、請求項16に記載のチタン合金。
【請求項18】
前記1種又は複数のアルファ(α)相安定化元素が、Alを含む、請求項10に記載のチタン合金。
【請求項19】
Alが、チタン合金中に約7~約10質量%の量で存在する、請求項18に記載のチタン合金。
【請求項20】
チタン合金が、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Sn、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Zr、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Sn-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Zr-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Zr-Sn、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Zr-Sn-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-Sn、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-Zr、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-Sn-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-Zr-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-Zr-Sn、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-Zr-Sn-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Mo、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Mo-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Mo-Sn、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Mo-Zr、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Mo-Sn-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Mo-Zr-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Mo-Zr-Sn、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Mo-Zr-Sn-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-Mo、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-Mo-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-Mo-Sn、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-Mo-Zr、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-Mo-Sn-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-Mo-Zr-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-Mo-Zr-Sn、及び
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-Mo-Zr-Sn-O
からなる群から選択される組成を有する、請求項10に記載のチタン合金。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、「チタン合金及びそれを含むゴルフクラブヘッド」と題された2023年7月25日に出願の米国特許出願第18/226,106号の利益を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
概念的には、ゴルフの競技は単純なものである。ボールが穴に落ちるまで、複数回打つ。しかしながら実際には、ゴルフには信じられないほどの技術及びトレーニング、おそらくある程度の天賦の才能、そして当然ながら適切な道具が必要である。ゴルフの競技は何世紀にもわたって存在してきたため、その道具であるゴルフクラブには、何度もイテレーションが行われてきた。革新の中心は、シャフト及びクラブヘッドの形状、機械工学、並びに材料に関するものであった。ただし、ゴルフクラブの公差及び仕様に関する規則により、特定の改善はより困難になっている。したがって、ゴルフクラブの性能向上を目的とした近年の研究は、材料科学に焦点を当てている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
基本的な水準では、ゴルフクラブはシャフトとクラブヘッドの両方を含み、典型的には、異なる材料で構成されており、競技の規則及びゴルフクラブの種類、例えば、ドライバー(若しくは「ウッド」)又はアイアンによって厳しい公差で指定された規定の角度で接合されている。クラブヘッドはこれまで、さまざまな種類の木材及びさまざまな金属を含む、種々の異なる材料で作製されてきたが、現在では、クラブヘッドはチタン合金で作製されるのが最も一般的である。しかしながら、ゴルフ業界では従来、航空宇宙用途及び防衛用途等、非常にさまざまな目的で開発されたチタン合金が使用されてきた。しかし、航空宇宙及び防衛を対象とした合金に必要な材料要件並びに化学的、機械的、及び物理的特性は、ゴルフクラブヘッドに必要な、又は所望されるものとは大きく異なる。したがって、ゴルフクラブの性能ニーズ及び要望に特化した合金組成物の開発によって、ゴルフの競技は大きな利益を得るだろう。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の実施形態によれば、ゴルフクラブヘッドは、打撃フェース部分とアフトボディ部分とを備える。打撃フェース部分は、4種以上のベータ(β)相安定化元素及び1種又は複数のアルファ(α)相安定化元素を含むチタン合金を含む。4種以上のベータ(β)相安定化元素のそれぞれは、チタン合金中に約0.25~約1.75質量%の量で独立して存在する。一部の実施形態では、例えば、4種以上のベータ(β)相安定化元素のそれぞれは、チタン合金中に約0.25~約1.75質量%、又は約0.75~約1.25質量%の量で独立して存在してもよい。
【0005】
一部の実施形態では、4種以上のベータ(β)相安定化元素には、Mnが含まれてもよい。一部の実施形態では、4種以上のベータ(β)相安定化元素のそれぞれは、チタン合金中に概して同じ量で存在してもよい。
【0006】
一部の実施形態によれば、1種又は複数のアルファ(α)相安定化元素には、Alが含まれる。一部の実施形態では、チタン合金は、約7~約10質量%の量のAlを含み得る。
【0007】
チタン合金の非限定的な例としては、以下から選択される合金組成物が挙げられる。
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Sn、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Zr、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Sn-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Zr-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Zr-Sn、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Zr-Sn-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-Sn、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-Zr、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-Sn-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-Zr-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-Zr-Sn、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-Zr-Sn-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Mo、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Mo-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Mo-Sn、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Mo-Zr、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Mo-Sn-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Mo-Zr-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Mo-Zr-Sn、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Mo-Zr-Sn-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-Mo、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-Mo-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-Mo-Sn、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-Mo-Zr、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-Mo-Sn-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-Mo-Zr-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-Mo-Zr-Sn、及び
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-Mo-Zr-Sn-O。
【0008】
一部の実施形態によれば、打撃フェース部分は、打撃フェースインサートを備えてもよく、打撃フェースインサートは、チタン合金を含んでもよい。
【0009】
本開示の一部の実施形態によれば、チタン合金は、チタン、4種以上のベータ(β)相安定化元素、及び1種又は複数のアルファ(α)相安定化元素を含む。
【0010】
一部の実施形態では、チタン合金は、1種又は複数の中性元素を更に含んでもよい。
【0011】
一部の実施形態によれば、4種以上のベータ(β)相安定化元素のそれぞれは、チタン合金中に約0.25~約1.75質量%の量で独立して存在してもよい。一部の実施形態では、例えば、4種以上のベータ(β)相安定化元素のそれぞれは、チタン合金中に約0.25~約1.75質量%、又は約0.75~約1.25質量%の量で独立して存在してもよい。
【0012】
一部の実施形態では、4種以上のベータ(β)相安定化元素には、Mnが含まれてもよい。
【0013】
一部の実施形態によれば、4種以上のベータ(β)相安定化元素のそれぞれは、チタン合金中に概して同じ量で存在してもよい。一部の実施形態では、概して同じ量は、約0.25~約1.75質量%であってもよい。
【0014】
一部の実施形態では、1種又は複数のアルファ(α)相安定化元素には、Alが含まれてもよい。一部の実施形態では、Alは、チタン合金中に約7~約10質量%の量で存在してもよい。
【0015】
一部の実施形態によれば、チタン合金は、以下から選択される組成を有してもよい。
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Sn、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Zr、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Sn-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Zr-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Zr-Sn、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Zr-Sn-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-Sn、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-Zr、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-Sn-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-Zr-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-Zr-Sn、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-Zr-Sn-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Mo、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Mo-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Mo-Sn、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Mo-Zr、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Mo-Sn-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Mo-Zr-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Mo-Zr-Sn、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Mo-Zr-Sn-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-Mo、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-Mo-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-Mo-Sn、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-Mo-Zr、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-Mo-Sn-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-Mo-Zr-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-Mo-Zr-Sn、及び
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-Mo-Zr-Sn-O。
【0016】
本開示の実施形態のこれら及び他の特徴及び利点は、添付の図面と併せて検討すると、以下の詳細な説明を参照することによってよりよく理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1A】極限引張強さ(UTS)vsAl含有量を示すグラフであり、実施例3、6、及び9のデータの近似曲線プロットを含む。
図1B】降伏強さ(YS)vsAl含有量を示すグラフであり、実施例3、6、及び9のデータの近似曲線プロットを含む。
図1C】伸びパーセントvsAl含有量を示すグラフであり、実施例3、6、及び9のデータの近似曲線プロットを含む。
図1D】ヤング率vsAl含有量を示すグラフであり、実施例3、6、及び9のデータの近似曲線プロットを含む。
図1E】UTSvs伸びパーセントを示すグラフであり、実施例3、6、及び9のデータの近似曲線プロットを含む。
図2】本開示の実施形態によるゴルフクラブヘッドの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
純チタンは、約882℃の「ベータ(β)トランザス」温度に加熱した場合、同素変態を起こす。具体的には、ベータ(β)トランザス温度未満では、チタンは稠密六方(CPH)格子構造を有するが、ベータ(β)トランザス温度より高い温度に加熱すると、チタンは体心立方体(BCC)格子構造に変化する。CPH格子構造相は、「アルファ(α)相」と呼ばれ、BCC格子構造相は、「ベータ(β)相」と呼ばれる。したがって、チタン合金の設計は、チタンのどの相が所望されるかによって決まる可能性があり、ひいてはその合金のための特定の用途によって決まる可能性がある。特に、ある種の合金元素は、アルファ(α)相を促進又は安定化でき、「アルファ(α)相安定化元素」と呼ばれ、他方の合金元素は、ベータ(β)相を促進又は安定化でき、(「ベータ(β)相安定化元素」と呼ばれる。チタンをアルファ(α)又はベータ(β)相安定化元素と合金化すると、ベータ(β)トランザス温度に変化が起きる。例えば、アルファ(α)相安定化元素を添加すると、ベータ(β)トランザス温度が上昇する傾向があり、アルファ(α)相がより安定するが、ベータ(β)相安定化元素を添加すると、ベータ(β)トランザス温度が低下する傾向があり、ベータ(β)相がより安定する。
【0019】
これを念頭に置いて、チタン合金は、合金中の合金元素の種類、したがってどちらの相が存在するかによって、一般的に4つの主要なカテゴリーに分類される。アルファ(α)型合金は、アルファ(α)相安定化元素、及び場合により中性元素を含有するが、ベータ(β)相安定化元素は含有しない。ニアアルファ(α)型合金は、アルファ(α)相安定化元素、及び場合によっては中性元素も含有するが、ベータ(β)相安定化元素も少量含有する。アルファ(α)+ベータ(β)型合金は、アルファ(α)とベータ(β)相安定化元素の両方、及び場合により中性元素を有する。最後に、ベータ(β)及びニアベータ(β)型合金は、大量のベータ(β)相安定化元素を有し、少量のアルファ(α)相安定化元素を有するか、又はアルファ(α)相安定化元素を有さず、また場合により中性元素を含む可能性がある。これらのうち、アルファ(α)+ベータ(β)型合金は、他のカテゴリーよりも高い強度特性で製造できる。
【0020】
本開示の実施形態によれば、アルファ(α)+ベータ(β)(「AB」又は「α-β」)チタン合金は、少なくとも4種の異なるベータ(β)相安定化元素及び少なくとも1種のアルファ(α)相安定化元素を含む。一部の実施形態では、例えば、AB(又は「α-β」)チタン合金は、4種以上の異なるベータ(β)相安定化元素、例えば、4~10種の異なるベータ(β)相安定化元素、4~9種の異なるベータ(β)相安定化元素、4~8種の異なるベータ(β)相安定化元素、4~7種の異なるベータ(β)相安定化元素、4~6種の異なるベータ(β)相安定化元素、又は4~5種の異なるベータ(β)相安定化元素を含んでもよい。一部の実施形態では、AB(又は「α-β」)チタン合金は、1種又は複数の異なるアルファ(α)相安定化元素、例えば、1~4種の異なるアルファ(α)相安定化元素、1~3種の異なるアルファ(α)相安定化元素、又は1~2種の異なるアルファ(α)相安定化元素を含んでもよい。
【0021】
更に、一部の実施形態では、AB(又は「α-β」)チタン合金は、ベータ(β)トランザス温度にほとんど又はまったく変化をもたらさないか、又は影響を及ぼさない中性元素を、最大で2種更に含む場合がある。しかしながら、一部の実施形態では、中性元素を省略してもよい。例えば、一部の実施形態では、AB(又は「α-β」)チタン合金には、中性元素が含まれない。一部の実施形態では、AB(又は「α-β」)チタン合金には、1~2種の異なる中性元素が含まれてもよい。
【0022】
一部の実施形態では、例えば、AB(又は「α-β」)チタン合金は、チタン、4種以上のベータ(β)相安定化元素、1種又は複数のアルファ(α)相安定化元素、及び1種又は複数の中性元素を含んでもよい。一部の例示的な実施形態では、AB(又は「α-β」)チタン合金は、4種以上のベータ(β)相安定化元素、4種のアルファ(α)相安定化元素、及び1種の中性元素を含んでもよいか、又は4種以上のベータ(β)相安定化元素、4種のアルファ(α)相安定化元素、及び2種の中性元素を含んでもよいか、又は4種以上のベータ(β)相安定化元素、4種のアルファ(α)相安定化元素を含むが中性元素を含まなくてもよい。更に、一部の実施形態では、AB(又は「α-β」)チタン合金は、4種以上のベータ(β)相安定化元素、3種のアルファ(α)相安定化元素、及び1種の中性元素を含んでもよいか、又は4種以上のベータ(β)相安定化元素、3種のアルファ(α)相安定化元素、及び2種の中性元素を含んでもよいか、又は4種以上のベータ(β)相安定化元素、3種のアルファ(α)相安定化元素を含むが中性元素を含まなくてもよい。また、一部の実施形態では、AB(又は「α-β」)チタン合金は、4種以上のベータ(β)相安定化元素、1種のアルファ(α)相安定化元素、及び1種の中性元素を含んでもよいか、又は4種以上のベータ(β)相安定化元素、1種のアルファ(α)相安定化元素、及び2種の中性元素を含んでもよいか、又は4種以上のベータ(β)相安定化元素、1種のアルファ(α)相安定化元素を含むが中性元素を含まなくてもよい。更に、一部の実施形態では、AB(又は「α-β」)チタン合金は、4種以上のベータ(β)相安定化元素、2種のアルファ(α)相安定化元素、及び1種の中性元素を含んでもよいか、又は4種以上のベータ(β)相安定化元素、2種のアルファ(α)相安定化元素、及び2種の中性元素を含んでもよいか、又は4種以上のベータ(β)相安定化元素、2種のアルファ(α)相安定化元素を含むが中性元素を含まなくてもよい。
【0023】
ベータ(β)相安定化元素は特に限定されず、当業者に公知の任意の好適なベータ(β)相安定化元素を含んでもよい。好適なベータ(β)相安定化元素の非限定的な例としては、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Nb、Mo、Ta、W、Hf、及びReが挙げられる。一部の実施形態では、例えば、ベータ(β)相安定化元素は、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Nb、及びMoから選択されてもよい。一部の実施形態では、ベータ(β)相安定化元素は、V、Cr、Mn、Fe、Nb、及びMoから選択されてもよい。
【0024】
本開示の実施形態によるAB(又は「α-β」)チタン合金には、任意の数のベータ(β)相安定化元素の任意の組合せを採用できることが理解される。一例として、AB(又は「α-β」)チタン合金が、10種のベータ(β)相安定化元素を含む場合、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Nb、Mo、Ta、W、Hf、及びRe(又は他の公知のベータ(β)相安定化元素)の任意の組合せを、制限なく合金組成物として選択できる。ただし、10種のベータ(β)相安定化元素を含む一部のそのような実施形態では、ベータ(β)相安定化元素には、少なくともV、Cr、Mn、Fe、Nb、及びMoが含まれてもよく、残りの4種のベータ(β)相安定化元素は、Cu、Ni、Ta、W、Hf、及びReの4種の任意の組合せであり得る。同様に、9、8、又は7種のベータ(β)相安定化元素を含む実施形態では、ベータ(β)相安定化元素には、少なくともV、Cr、Mn、Fe、Nb及びMoが含まれてもよく、残りの1、2又は3種のベータ(β)相安定化元素は、Cu、Ni、Ta、W、Hf、及びReから選択される任意の単一の元素又は元素の組合せであり得る。
【0025】
6種のベータ(β)相安定化元素を含む実施形態では、やはりV、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Nb、Mo、Ta、W、Hf、及びRe(又は他の公知のベータ(β)相安定化元素)のうち6種の任意の組合せを、制限なく合金組成物として選択できる。ただし、6種のベータ(β)相安定化元素を含む一部のそのような実施形態では、ベータ(β)相安定化元素には、V、Cr、Mn、Fe、Nb、及びMoが含まれてもよい。
【0026】
同様に、5種のベータ(β)相安定化元素を含む実施形態では、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Nb、Mo、Ta、W、Hf、及びRe(又は他の公知のベータ(β)相安定化元素)のうち5種の任意の組合せを、制限なく合金組成物として選択できる。ただし、5種のベータ(β)相安定化元素を含む一部のそのような実施形態では、ベータ(β)相安定化元素には、少なくともV、Cr、Mn、及びFeが含まれる場合があり、残りのベータ(β)相安定化元素は、Nb又はMoであり得る。
【0027】
また、4種のベータ(β)相安定化元素を含む実施形態では、やはりV、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Nb、Mo、Ta、W、Hf、及びRe(又は他の公知のベータ(β)相安定化元素)のうち4種の任意の組合せを、制限なく合金組成物として選択できる。ただし、4種のベータ(β)相安定化元素を含む一部のそのような実施形態では、ベータ(β)相安定化元素には、V、Cr、Mn、及びFeが含まれてもよい。
【0028】
また、一部の実施形態では、ベータ(β)相安定化元素にMnが含まれており、Mn及び少なくとも3種(又は3種以上)の更なるベータ(β)相安定化元素を含むAB(又は「α-β」)チタン合金が得られる。上述したように、3種以上の更なるベータ(β)相安定化元素は、任意の3種以上のベータ(β)相安定化元素の任意の組合せであってもよい。例えば、AB(又は「α-β」)チタン合金に10種のベータ(β)相安定化元素が含まれる場合、(Mnに加えて)3種以上の更なるベータ(β)相安定化元素には、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Nb、Mo、Ta、W、Hf、及びRe(又は他の公知のベータ(β)相安定化元素)の任意の組合せであり得る9種のベータ(β)相安定化元素が、制限なく含まれる。例えば、一部の実施形態では、9種の更なるベータ(β)相安定化元素には、少なくともV、Cr、Fe、Nb、及びMoが含まれてもよく、残りの4種のベータ(β)相安定化元素は、Cu、Ni、Ta、W、Hf、及びReの4種の任意の組合せであり得る。同様に、9、8、又は7種のベータ(β)相安定化元素を含む実施形態では、(Mnに加えて)3種以上の更なるベータ(β)相安定化元素には、少なくともV、Cr、Fe、Nb及びMoが含まれ得る8、7又は6種のベータ(β)相安定化元素が含まれ、残りの1、2又は3種のベータ(β)相安定化元素は、Cu、Ni、Ta、W、Hf、及びReから選択される任意の単一の元素又は元素の組合せであり得る。
【0029】
6種のベータ(β)相安定化元素を含む実施形態では、(Mnに加えて)3種以上の更なるベータ(β)相安定化元素には、やはりV、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Nb、Mo、Ta、W、Hf、及びRe(又は他の公知のベータ(β)相安定化元素)のうちの5種の任意の組合せであり得る5種のベータ(β)相安定化元素が、制限なく含まれる。ただし、Mn及び5種の更なるベータ(β)相安定化元素を含む一部のそのような実施形態では、ベータ(β)相安定化元素には、Mnに加えてV、Cr、Fe、Nb、及びMoが含まれてもよい。
【0030】
同様に、5種のベータ(β)相安定化元素を含む実施形態では、(Mnに加えて)3種以上の更なるベータ(β)相安定化元素には、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Nb、Mo、Ta、W、Hf、及びRe(又は他の公知のベータ(β)相安定化元素)のうちの4種の任意の組合せであり得る4種のベータ(β)相安定化元素が、制限なく含まれる。ただし、Mn及び4種の更なるベータ(β)相安定化元素を含む一部のそのような実施形態では、4種の更なるベータ(β)相安定化元素には、少なくともV、Cr、及びFeが含まれる場合があり、残りのベータ(β)相安定化元素は、Nb又はMoであり得る。
【0031】
また、4種のベータ(β)相安定化元素を含む実施形態では、(Mnに加えて)3種以上の更なるベータ(β)相安定化元素には、やはりV、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Nb、Mo、Ta、W、Hf、及びRe(又は他の公知のベータ(β)相安定化元素)のうちの3種の任意の組合せであり得る3種のベータ(β)相安定化元素が、制限なく含まれる。ただし、Mn及び3種の更なるベータ(β)相安定化元素を含む一部のそのような実施形態では、3種の更なるベータ(β)相安定化元素には、Mnに加えてV、Cr、及びFeが含まれてもよい。
【0032】
アルファ(α)相安定化元素は、同様に特に限定されず、当業者に公知の任意の好適なアルファ(α)相安定化元素を含んでもよい。好適なアルファ(α)相安定化元素の非限定的な例としては、Al、O、N、及びCが挙げられる。ただし、アルファ(α)相安定化元素としてAlを添加すると、密度を低下させながら得られる合金の強度を向上させることができるため、一部の実施形態では、AB(又は「α-β」)チタン合金は、アルファ(α)相安定化元素として少なくともAlを含む。一部の実施形態では、AB(又は「α-β」)チタン合金は、主要なアルファ(α)相安定化元素としてAlを含む場合があり、すなわち、Alは唯一のアルファ(α)相安定化元素であるか、又は含まれるすべてのアルファ(α)相安定化元素の中で最大の公称量で供給されるアルファ(α)相安定化元素である。
【0033】
ベータ(β)相安定化元素に関して上述したように、本開示の実施形態によるAB(又は「α-β」)チタン合金には、任意の数のアルファ(α)相安定化元素の任意の組合せを採用できることが理解される。4種のアルファ(α)相安定化元素を含む実施形態では、当然アルファ(α)相安定化元素にはAl、O、N、及びCが含まれてもよい。ただし、3種のアルファ(α)相安定化元素を含む実施形態では、Al、O、N、及びC(又は他の公知のアルファ(α)相安定化元素)のうち3種の任意の組合せを、制限なく合金組成物として選択できる。ただし、3種のアルファ(α)相安定化元素を含む一部のそのような実施形態では、アルファ(α)相安定化元素には少なくともAlが含まれる場合があり、残りの2種のアルファ(α)相安定化元素はO、N、及びCから選択してもよい。一部の実施形態では、例えば、アルファ(α)相安定化元素には、少なくともAl及びOが含まれる場合があり、残りのアルファ(α)相安定化元素は、N又はCのいずれかであり得る。
【0034】
同様に、2種のアルファ(α)相安定化元素を含む実施形態では、Al、O、N、及びC(又は他の公知のアルファ(α)相安定化元素)のうち2種の任意の組合せを、制限なく合金組成物として選択できる。ただし、2種のアルファ(α)相安定化元素を含む一部のどのような実施形態では、アルファ(α)相安定化元素には少なくともAlが含まれる場合があり、残りのアルファ(α)相安定化元素はO、N、又はCであり得る。一部の実施形態では、例えば、アルファ(α)相安定化元素には、Al及びOが含まれてもよい。
【0035】
また、アルファ(α)相安定化元素を1種しか含まない実施形態では、やはりAl、O、N、及びC(又は他の公知のアルファ(α)相安定化元素)のうちいずれかを、制限なく合金組成物として選択できる。ただし、アルファ(α)相安定化元素を1種しか含まない一部のそのような実施形態では、アルファ(α)相安定化元素はAlであり得る。
【0036】
また、一部の実施形態では、アルファ(α)相安定化元素にはAlが含まれ、それによりAlを唯一のアルファ(α)相安定化元素として、又は1種又は複数の更なるアルファ(α)相安定化元素に加えてAlを含むAB(又は「α-β」)チタン合金が得られる。上述したように、1種又は複数の更なるアルファ(α)相安定化元素は、任意の1種又は複数のアルファ(α)相安定化元素の任意の組合せであってもよい。例えば、AB(又は「α-β」)チタン合金に4種のアルファ(α)相安定化元素が含まれる場合、1種又は複数の更なるアルファ(α)相安定化元素には、3種の更なるアルファ(α)相安定化元素、O、N、及びCが含まれる。ただし、3種のアルファ(α)相安定化元素を含む実施形態では、1種又は複数の更なるアルファ(α)相安定化元素には、O、N、及びCのうちの2種(又は他の公知のアルファ(α)相安定化元素)の任意の組合せが含まれ得る2種の更なるアルファ(α)相安定化元素が制限なく含まれる。ただし、3種のアルファ(α)相安定化元素を含む一部のどのような実施形態では、2種の更なるアルファ(α)相安定化元素のうちの1種には、(Alに加えて)Oが含まれる場合があり、残りのアルファ(α)相安定化元素は、N又はCのいずれかであり得る。
【0037】
2種のアルファ(α)相安定化元素を含む実施形態では、1種又は複数の更なるアルファ(α)相安定化元素には、O、N、及びC(又は他の公知のアルファ(α)相安定化元素)のうちのいずれかであり得る1種の更なるアルファ(α)相安定化元素が制限なく含まれる。ただし、2種のアルファ(α)相安定化元素を含む一部のそのような実施形態では、(Alに加えて)1種の更なるアルファ(α)相安定化元素は、Oであり得る。
【0038】
また、中性元素は特に限定されるものではなく、合金に含まれる場合にベータ(β)トランザス温度にほとんど又はまったく変化をもたらさない、任意の好適な中性元素であってもよい。中性元素の非限定的な例としては、Zr、Si、及びSnが挙げられる。例えば、一部の実施形態では、中性元素は、Zr及びSnから選択されてもよい。
【0039】
アルファ(α)及びベータ(β)相安定化元素に関して上述したように、本開示の実施形態によるAB(又は「α-β」)チタン合金には、任意の数の中性元素の任意の組合せを採用できることが理解される。例えば、AB(又は「α-β」)チタン合金が、2種のアルファ(α)相安定化元素を含む場合、Zr、Si、及びSn(又は他の公知の中性元素)の任意の組合せを、制限なく合金組成物として選択できる。ただし、2種の中性元素を含む一部のそのような実施形態では、中性元素の一方はSnを含んでもよく、2種の中性元素の他方は、Zr又はSiのいずれかであってもよい。1種の中性元素を含む一部の実施形態では、中性元素は、SnでもSrでもよい。
【0040】
好適なAB(又は「α-β」)チタン合金組成物のいくつかの非限定的な例としては、以下が挙げられる。
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Sn、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Zr、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Sn-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Zr-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Zr-Sn、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Zr-Sn-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-Sn、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-Zr、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-Sn-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-Zr-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-Zr-Sn、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-Zr-Sn-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Mo、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Mo-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Mo-Sn、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Mo-Zr、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Mo-Sn-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Mo-Zr-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Mo-Zr-Sn、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Mo-Zr-Sn-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-Mo、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-Mo-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-Mo-Sn、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-Mo-Zr、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-Mo-Sn-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-Mo-Zr-O、
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-Mo-Zr-Sn、及び
Ti-Al-V-Cr-Mn-Fe-Nb-Mo-Zr-Sn-O。
【0041】
さまざまなベータ(β)相安定化元素、アルファ(α)相安定化元素、及び中性元素の公称量は特に限定されず、得られる合金の所望の化学的又は物理的特性を達成するのに好適な任意の量であってもよい。本開示全体、及び特許請求の範囲において、別段に記載がない限り、「公称」という用語が使用されているかどうかにかかわらず、さまざまな合金成分のすべての量、例えば、アルファ(α)相安定化元素、及びベータ(β)相安定化元素、中性元素、及びチタンの量は、公称量を指す。
【0042】
一部の実施形態では、AB(又は「α-β」)チタン合金中のベータ(β)相の含有量は、合金組成物中のベータ(β)相安定化元素の量に基づいて計算することができる。合金のベータ(β)相安定化元素の含有量は、Mo当量によって測定され、下記式1によって計算される。
式1-ベータ(β)相安定化元素含有量の測定単位としてのMo当量
Mo Eq.=(wt% Mo)+0.2(wt% Ta)+0.28(wt% Nb)+0.4(wt% W)+0.67(wt% V)+1.25(wt% Cr)+1.25(wt% Ni)+1.7(wt% Mn)+1.7(wt% Co)+2.5(wt% Fe)
【0043】
一部の実施形態では、AB(又は「α-β」)チタン合金のベータ(β)相安定化元素の含有量は、約1~約11質量%であってもよい。一部の実施形態では、例えば、ベータ(β)相安定化元素の含有量は、約1~約10質量%、約1~約9質量%、約1~約8質量%、約1~約7質量%、約1~約6質量%、約1~約5質量%、約1~約4質量%、約2~約11質量%、約2~約10質量%、約2~約9質量%、約2~約8質量%、約2~約7質量%、約2~約6質量%、約2~約5質量%、約2~約4質量%、約3~約11質量%、約3質量%~約10質量%、約3質量%~約9質量%、約3質量%~約8質量%、約3~約7質量%、約3~約6質量%、約3~約5質量%、約3~約4質量%、約4~約11質量%、約4~約10質量%、約4~約9質量%、約4~約8質量%、約4~約7質量%、約4~約6質量%、又は約4~約5質量%であってもよい。また、これらの範囲には、すべての部分範囲、並びにこれらの範囲内の任意の点で開始及び/又は終了する他の範囲が含まれることも理解され、例えば、約4~約11質量%及び約4~約8質量%の範囲が上記に開示されているが、約8~約11質量%の範囲も考慮され、これらの範囲内に含まれる。一部の実施形態では、例えば、ベータ(β)相安定化元素の含有量は、約4~約11質量%、約4~約10質量%、約4~約9質量%、約4~約8質量%、約4~約7質量%、約4~約6質量%、又は約4~約5質量%であってもよい。一部の実施形態では、例えば、ベータ(β)相安定化元素の含有量は、約4~約6質量%、又は約4質量%、約5質量%、又は約6質量%であってもよい。
【0044】
個々のベータ(β)相安定化元素のそれぞれの量は特に限定されず、所望のベータ(β)相安定化性能又は所望の合金特性(例えば、強度、伸び等)に基づいて選択することができる。ただし、一部の実施形態では、ベータ(β)相安定化元素のそれぞれの量は、個別に約2質量%以下、例えば約1.5質量%以下、又は約1質量%以下であってもよい。例えば、一部の実施形態では、ベータ(β)相安定化元素のそれぞれの量は、個別に約0.1~約2質量%、約0.15~約2質量%、約0.2~約2質量%、約0.25~約2質量%、約0.3~約2質量%、約0.35~約2質量%、約0.4~約2質量%、約0.45~約2質量%、約0.5~約2質量%、約0.55~約2質量%、約0.6~約2質量%、約0.65~約2質量%、約0.7~約2質量%、約0.75~約2質量%、約0.8~約2質量%、約0.85~約2質量%、約0.9~約2質量%、約0.95~約2質量%、約1~約2質量%、約1.1~約2質量%、約1.15~約2質量%、約1.2~約2質量%、約1.25~約2質量%、約1.3~約2質量%、約1.35~約2質量%、約1.4~約2質量%、約1.45~約2質量%、約1.5~約2質量%、約1.55~約2質量%、約1.6~約2質量%、約1.65~約2質量%、約1.7~約2質量%、約1.75~約2質量%、約1.8~約2質量%、約1.85~約2質量%、約1.9~約2質量%、約1.95~約2質量%、約0.1~約1.5質量%、約0.15~約1.5質量%、約0.2~約1.5質量%、約0.25~約1.5質量%、約0.3~約1.5質量%、約0.35~約1.5質量%、約0.4~約1.5質量%、約0.45~約1.5質量%、約0.5~約1.5質量%、約0.55~約1.5質量%、約0.6~約1.5質量%約0.65~約1.5質量%、約0.7~約1.5質量%、約0.75~約1.5質量%、約0.8~約1.5質量%、約0.85~約1.5質量%、約0.9~約1.5質量%、約0.95~約1.5質量%、約1~約1.5質量%、約1.1~約1.5質量%、約1.15~約1.5質量%、約1.2~約1.5質量%、約1.25~約1.5質量%、約1.3~約1.5質量%、約1.35~約1.5質量%、約1.4~約1.5質量%、約1.45~約1.5質量%、約0.1~約1質量%、約0.15~約1質量%、約0.2~約1質量%、約0.25~約1質量%、約0.3~約1質量%、約0.35~約1質量%、約0.4~約1質量%、約0.45~約1質量%、約0.5~約1質量%、約0.55~約1質量%、約0.6~約1質量%、約0.65~約1質量%、約0.7~約1質量%、約0.75~約1質量%、約0.8~約1質量%、約0.85~約1質量%、約0.9~約1質量%、又は約0.95~約1質量%であってもよい。また、これらの範囲には、すべての部分範囲、並びにこれらの範囲内の任意の点で開始及び/又は終了する他の範囲が含まれることも理解され、例えば、約0.25~約1.5質量%、約1.75~約2質量%及び約1.25~約1.5質量%の範囲が上記に開示されているが、約0.25~約1.25質量%、又は約0.25~約1.75質量%の範囲も考慮され、これらの範囲内に含まれる。一部の実施形態では、例えば、ベータ(β)相安定化元素のそれぞれの量は、個別に約1質量%以下、約0.5~約1.5質量%、又は約0.25~約1.25質量%であってもよい。
【0045】
ただし、一部の実施形態によれば、AB(又は「α-β」)チタン合金の各ベータ(β)相安定化元素は、他のベータ(β)相安定化元素の各々と概して同じ量で含まれていてもよい。しかし、本開示はこれらに限定されるものではなく、一部の実施形態では、AB(又は「α-β」)チタン合金は、それぞれ異なる量の異なるベータ(β)相安定化元素、又は同じか若しくは概して同じ量のいくつかのベータ(β)相安定化元素、並びに異なる量の他のベータ(β)相安定化元素を含んでもよいことが理解される。ただし、特定のいかなる理論にも束縛されることなく、含まれているすべてのベータ(β)相安定化元素を合金組成物に概して同じ量で供給することによって、合金がハイエントロピー合金と同様の挙動を示すことができると考えられている。実際、本開示の実施形態による合金は、(例えば、Tiの量が不均衡なため)真のハイエントロピー合金ではないが、やはり特定のいかなる理論にも束縛されることなく、含まれているすべてのベータ(β)相安定化元素を等しい割合で供給することで(合金の他の元素が、異なる量で供給される場合でも)、合金組成物が個々のベータ(β)相安定化元素の潜在的に好ましくない影響を最小限に抑えながら、個々のベータ(β)相安定化元素の利点を得ることができると考えられている。当然ながら、各ベータ(β)相安定化元素は、合金に異なる特性向上及びベータ(β)相安定化効果をもたらす。例えば、Feは非常に有力なベータ(β)相安定化元素であり、Vのほぼ4倍のベータ(β)相安定化性能を備えているが、Feは合金の偏析を引き起こし、合金の特定の領域で他の領域よりもベータ(β)相が多くなる可能性もある。個々のベータ(β)相安定化元素は、ベータ(β)相安定化性能に加えて合金に異なる特性及び利点をもたらすため、合金組成物に4種以上のベータ(β)相安定化元素を供給することで、合金において多くのさまざまな利点を利用することが可能となる。やはり、特定のいかなる理論にも束縛されることなく、合金内に4種以上のベータ(β)相安定化元素を等しい割合で供給することで、個々のベータ(β)相安定化元素がもたらす可能性のある特定の悪影響を最小限に抑えながら、これらの利点を保持できると考えられる。
【0046】
ベータ(β)相安定化元素が合金内で概して等しい割合で提供されるそのような実施形態では、ベータ(β)相安定化元素のそれぞれの概して等しい量は、特に限定されず、所望のベータ(β)相定化性能又は所望の合金特性(例えば、強度、伸び等)に基づいて選択することができる。ただし、一部の実施形態では、ベータ(β)相安定化元素のそれぞれの概して等しい量は、個別にベータ(β)相安定化元素に関連して上記で説明した範囲と同じであってもよい。
【0047】
AB(又は「α-β」)チタン合金中のアルファ(α)相の含有量は、合金組成物中のアルファ(α)相安定化元素及び特定の中性元素の量に基づいて計算することができる。合金のアルファ(α)相安定化元素の含有量は、Al当量によって測定され、下記式2によって計算される。
式2-アルファ(α)相安定化元素含有量の測定単位としてのAl当量
Al Eq.=(wt% Al)+0.33(wt% Sn)+0.16(wt% Zr)+10[(wt% O)+(wt% C)+2(wt% N)]
【0048】
アルファ(α)相安定化元素の含有量は、Al当量によって測定して、約2~約12質量%、約3~約12質量%、又は約4~約12質量%であってもよい。一部の実施形態では、例えば、アルファ(α)相安定化元素の含有量は、約2~約11質量%、約2~約10質量%、約2~約9質量%、約2~約8質量%、約2~約7質量%、約2~約6質量%、約2~約5質量%、約2~約4質量%、約2~3質量%、約3~約11質量%、約3~約10質量%、約3~約9質量%、約3~約8質量%、約3~約7質量%、約3~約6質量%、約3~約5質量%、約3~約4質量%、約4~約11質量%、約4~約10質量%、約4~約9質量%、約4~約8質量%、約4~約7質量%、約4~約6質量%、又は約4~約5質量%であってもよい。また、これらの範囲には、すべての部分範囲、並びにこれらの範囲内の任意の点で開始及び/又は終了する他の範囲が含まれることも理解され、例えば、約4~約11質量%及び約4~約8質量%の範囲が上記に開示されているが、約8~約11質量%の範囲も考慮され、これらの範囲内に含まれる。一部の実施形態では、例えば、アルファ(α)相安定化元素の含有量は、約3~約11質量%、約4~約11質量%、約5~約11質量%、約6~約11質量%、約7~約11質量%、約8~約11質量%、又は約9~約11質量%であってもよい。
【0049】
個々のアルファ(α)相安定化元素のそれぞれの量も特に限定されず、所望の性能又は合金特性(例えば、強度、伸び等)に基づいて選択することができる。ただし、一部の実施形態では、アルファ(α)相安定化元素のそれぞれの量は、個別に約10質量%以下、例えば約9質量%以下、又は約8質量%以下であってもよい。例えば、一部の実施形態では、アルファ(α)相安定化元素のそれぞれの量は、個別に約0.05~約10質量%、約0.1~約10質量%、約0.15~約10質量%、約0.2~約10質量%、約0.25~約10質量%、約0.05~約9質量%、約0.1~約9質量%、約0.15~約9質量%、約0.2~約9質量%、約0.25~約9質量%、約0.05~約8質量%、約0.1~約8質量%、約0.15~約8質量%、約0.2~約8質量%、又は約0.25~約8質量%であってもよい。また、これらの範囲には、すべての部分範囲、並びにこれらの範囲内の任意の点で開始及び/又は終了する他の範囲が含まれることも理解され、例えば、約0.05~約10質量%及び約0.25~約10質量%の範囲が上記に開示されているが、約0.05~約0.25質量%の範囲も考慮され、これらの範囲内に含まれる。一部の実施形態では、例えば、アルファ(α)相安定化元素のそれぞれの量は、個別に約0.1~約9質量%であってもよい。
【0050】
更に、いかなる特定の理論にも束縛されることなく、合金組成物に4種以上の異なるベータ(β)相安定化元素を添加することによって、所望の性能又は合金特性を損なうことなく、アルミニウムの添加量を増加することができると考えられている。また、やはりいかなる特定の理論にも束縛されることなく、これらの4種以上のベータ(β)相安定化元素を合金組成物に概して等しい割合で添加することによって、より多くの量のAlを添加することも可能になると考えられている。Alは合金組成物中の有力な強化剤であり、また得られる合金の密度を低下させる。しかし従来は、Alの過剰量は合金の伸び特性に悪影響を及ぼすという考えが支配的であった。したがって、従来のチタン合金の設計では、Al含有量がいくらか制限されていた。
【0051】
しかしながら、本開示の実施形態によれば、AB(又は「α-β」)チタン合金は、増加した量のAlを含むことができ、それでもなお適切な又は許容可能な伸び特性を維持できる。実際、一部の実施形態では、合金組成物中のAlが増加すると、許容可能な伸び特性を維持しながら、合金の強度特性が改善された合金が得られる。例えば、一部の実施形態では、Alは合金組成物中に最大約10質量%、例えば、最大約9質量%、又は最大約8質量%の量で存在してもよい。一部の実施形態では、例えば、Alは、合金組成物中に約1~約10質量%、約1~約9質量%、約1~約8質量%、約2~約10質量%、約2~約9質量%、約2~約8質量%、約3~約10質量%、約3~約9質量%、約3~約8質量%、約4~約10質量%、約4~約9質量%、約4~約8質量%、約5~約10質量%、約5~約9質量%、約5~約8質量%、約6~約10質量%、約6~約9質量%、約6~約8質量%、約7~10質量%、約7~約9質量%、又は約7~約8質量%の量で存在してもよい。また、これらの範囲には、すべての部分範囲、並びにこれらの範囲内の任意の点で開始及び/又は終了する他の範囲が含まれることも理解され、例えば、約6~約10質量%及び約5~約9質量%の範囲が上記に開示されているが、約6~約9質量%の範囲も考慮され、これらの範囲内に含まれる。一部の実施形態では、例えば、Alは、合金組成物中に約3~約10質量%、約6~約10質量%、約7~約10質量%、又は約8~約10質量%の量で存在してもよい。
【0052】
これに加えて、O、N、及びCが、Alよりも強いアルファ(α)相安定化元素であるという事実を考慮すると、一部の実施形態では、合金組成物中のAl以外のアルファ(α)相安定化元素をより少ない量で供給してもよいが、本開示はこれらに限定されない。例えば、一部の実施形態では、非Alアルファ(α)相安定化元素は、約0.05~約1質量%、又は約0.1~約1質量%の組み合わせた量(すなわち、すべての非Alアルファ(α)相安定化元素の総計量)又は個別の量(すなわち、各非Al安定化元素が、ある量で個別に存在し得る)で組成物中に存在してもよい。一部の実施形態では、例えば、非Alアルファ(α)相安定化元素は、合金組成物中に、約0.05~約1質量%、約0.1~約1質量%、約0.15~約1質量%、約0.2~約1質量%、約0.25~約1質量%、約0.05~約0.5質量%、約0.1~約0.5質量%、約0.15~約0.5質量%、約0.2~約0.5質量%、約0.25~約0.5質量%、約0.05~約0.25質量%、約0.1~約0.25質量%、約0.15~約0.25質量%、約0.2~約0.25質量%の組み合わせた量又は個別の量で存在してもよい。また、これらの範囲には、すべての部分範囲、並びにこれらの範囲内の任意の点で開始及び/又は終了する他の範囲が含まれることも理解され、例えば、約0.05~約1質量%及び約0.15~約1質量%の範囲が上記に開示されているが、約0.05~約0.15質量%の範囲も考慮され、これらの範囲内に含まれる。一部の実施形態では、例えば、非Alアルファ(α)相安定化元素は、合金組成物中に約0.05~約0.25質量%、又は約0.1~約0.25質量%の量で存在してもよい。
【0053】
個々の中性元素のそれぞれの量も特に限定されず、所望の性能又は合金特性(例えば、強度、伸び等)に基づいて選択することができる。ただし、一部の実施形態では、中性元素のそれぞれの量は、個別に約2質量%以下、例えば約1.5質量%以下、又は約1質量%以下であってもよい。例えば、一部の実施形態では、中性元素のそれぞれの量は、個別に約0.1~約2質量%、約0.15~約2質量%、約0.2~約2質量%、約0.25~約2質量%、約0.3~約2質量%、約0.35~約2質量%、約0.4~約2質量%、約0.45~約2質量%、約0.5~約2質量%、約0.55~約2質量%、約0.6~約2質量%、約0.65~約2質量%、約0.7~約2質量%、約0.75~約2質量%、約0.8~約2質量%、約0.85~約2質量%、約0.9~約2質量%、約0.95~約2質量%、約1~約2質量%、約1.1~約2質量%、約1.15~約2質量%、約1.2~約2質量%、約1.25~約2質量%、約1.3~約2質量%、約1.35~約2質量%、約1.4~約2質量%、約1.45~約2質量%、約1.5~約2質量%、約1.55~約2質量%、約1.6~約2質量%、約1.65~約2質量%、約1.7~約2質量%、約1.75~約2質量%、約1.8~約2質量%、約1.85~約2質量%、約1.9~約2質量%、約1.95~約2質量%、約0.1~約1.5質量%、約0.15~約1.5質量%、約0.2~約1.5質量%、約0.25~約1.5質量%、約0.3~約1.5質量%、約0.35~約1.5質量%、約0.4~約1.5質量%、約0.45~約1.5質量%、約0.5~約1.5質量%、約0.55~約1.5質量%、約0.6~約1.5質量%、約0.65~約1.5質量%、約0.7~約1.5質量%、約0.75~約1.5質量%、約0.8~約1.5質量%、約0.85~約1.5質量%、約0.9~約1.5質量%、約0.95~約1.5質量%、約1~約1.5質量%、約1.1~約1.5質量%、約1.15~約1.5質量%、約1.2~約1.5質量%、約1.25~約1.5質量%、約1.3~約1.5質量%、約1.35~約1.5質量%、約1.4~約1.5質量%、約1.45~約1.5質量%、約0.1~約1質量%、約0.15~約1質量%、約0.2~約1質量%、約0.25~約1質量%、約0.3~約1質量%、約0.35~約1質量%、約0.4~約1質量%、約0.45~約1質量%、約0.5~約1質量%、約0.55~約1質量%、約0.6~約1質量%、約0.65~約1質量%、約0.7~約1質量%、約0.75~約1質量%、約0.8~約1質量%、約0.85~約1質量%、約0.9~約1質量%、又は約0.95~約1質量%であってもよい。また、これらの範囲には、すべての部分範囲、並びにこれらの範囲内の任意の点で開始及び/又は終了する他の範囲が含まれることも理解され、例えば、約0.25~約1.5質量%及び約1.25~約1.5質量%の範囲が上記に開示されているが、約0.25~約1.25質量%の範囲も考慮され、これらの範囲内に含まれる。一部の実施形態では、例えば、中性元素のそれぞれの量は、個別に約1質量%以下、約0.5~約1.5質量%、又は約0.25~約1.25質量%であってもよい。
【0054】
当業者に理解されるように、AB(又は「α-β」)チタン合金中のTiの量は、AB(又は「α-β」)チタン合金の総質量%が100質量%となるように、100-[総ベータ(β)相安定化元素の質量%]-[総アルファ(α)相安定化元素の質量%]-[総中性元素の質量%]で表される。
【0055】
本開示の実施形態によるAB(又は「α-β」)チタン合金は、多くの有益な機械的特性を有し、とりわけゴルフクラブの製造、特にゴルフクラブヘッド及びゴルフクラブヘッドの打撃フェースの製造に特に有用な材料となる。例えば、一部の実施形態では、AB(又は「α-β」)チタン合金の極限引張強さ(UTS)は、約140ksi以上(又は約965MPa以上)であってもよい。一部の実施形態では、例えば、AB(又は「α-β」)チタン合金のUTSは、約145ksi以上(約1000MPa以上)、約150ksi以上(約1034MPa以上)、約155ksi以上(約1069MPa以上)、約160ksi以上(約1103MPa以上)、約165ksi以上(約1138MPa以上)、約170ksi以上(約1172MPa以上)、約175ksi以上(約1207MPa以上)、又は約180ksi以上(約1241MPa以上)であってもよい。一部の実施形態では、例えば、AB(又は「α-β」)チタン合金は、UTSが約140ksi~約200ksi、約140ksi~約190ksi、約140ksi~約185ksi、約145ksi~約200ksi、約145ksi~約190ksi、約145ksi~約185ksi、約150ksi~約200ksi、約150ksi~約190ksi、約150ksi~約185ksi、約155ksi~約200ksi、約155ksi~約190ksi、約155ksi~約185ksi、約160ksi~約200ksi、約160ksi~約190ksi、約160ksi~約185ksi、約165ksi~約200ksi、約165ksi~約190ksi、約165ksi~約185ksi、約170ksi~約200ksi、約170ksi~約190ksi、約170ksi~約185ksi、約180ksi~約200ksi、約180ksi~約190ksi、又は約180ksi~約185ksiであってもよい。また、これらの範囲には、すべての部分範囲、並びにこれらの範囲内の任意の点で開始及び/又は終了する他の範囲が含まれることも理解され、例えば、約140~約200ksi及び約175~約185ksiの範囲が上記に開示されているが、約140ksi~約175ksi及び約185ksi~約200ksiの範囲も検討され、これらの範囲内に含まれる。
【0056】
更に、一部の実施形態では、AB(又は「α-β」)チタン合金の降伏強さ(YS)は、約100ksi以上(又は約689MPa以上)であってもよい。例えば、一部の実施形態では、AB(又は「α-β」)チタン合金のYSは、約110ksi以上(約758MPa以上)、約120ksi以上(約827MPa以上)、約130ksi以上(約896MPa以上)、約140ksi以上(約965MPa以上)、約150ksi以上(約1034MPa以上)、約160ksi以上(約1103MPa以上)、約170ksi以上(約1172MPa以上)、又は約180ksi以上(約1241MPa以上)であってもよい。一部の実施形態では、例えば、AB(又は「α-β」)チタン合金は、YSが約100ksi~約200ksi、約100ksi~約190ksi、約100ksi~約180ksi、約100ksi~約175ksi、約110ksi~約200ksi、約110ksi~約190ksi、約110ksi~約180ksi、約110ksi~約175ksi、約120ksi~約200ksi、約120ksi~約190ksi、約120ksi~約180ksi、約120ksi~約175ksi、約130ksi~約200ksi、約130ksi~約190ksi、約130ksi~約180ksi、約130ksi~約175ksi、約140ksi~約200ksi、約140ksi~約190ksi、約140ksi~約180ksi、約140ksi~約175ksi、約150ksi~約200ksi、約150ksi~約190ksi、約150ksi~約180ksi、約150ksi~約175ksi、約160ksi~約200ksi、約160ksi~約190ksi、約160ksi~約180ksi、約160ksi~約175ksi、約170ksi~約200ksi、約170ksi~約190ksi、約170ksi~約180ksi、約170ksi~約175ksi、約180ksi~約200ksi、又は約180ksi~約190ksiであってもよい。また、これらの範囲には、すべての部分範囲、並びにこれらの範囲内の任意の点で開始及び/又は終了する他の範囲が含まれることも理解され、例えば、約140~約175ksi及び約170~約200ksiの範囲が上記に開示されているが、約140ksi~約170ksi及び約175ksi~約200ksiの範囲も検討され、これらの範囲内に含まれる。
【0057】
更に、本開示の実施形態によれば、AB(又は「α-β」)チタン合金は、許容可能な伸び特性を有する。例えば、一部の実施形態では、AB(又は「α-β」)チタン合金の伸びパーセントは、約5以上である。例えば、一部の実施形態では、合金の伸びパーセントは、約8以上、約10以上、又は約15以上であってもよい。一部の実施形態では、例えば、AB(又は「α-β」)チタン合金の伸びパーセントは、約5~20、約5~約15、約5~約10、約8~約20、約8~約15、約8~約10、約10~約20、約10~約15、又は約15~約20であってもよい。また、これらの範囲には、すべての部分範囲、並びにこれらの範囲内の任意の点で開始及び/又は終了する他の範囲が含まれることも理解され、例えば、約5~約20及び約8~約10の範囲が上記に開示されているが、約5~約8の範囲も考慮され、これらの範囲内に含まれる。
【0058】
更に、本開示の実施形態によれば、AB(又は「α-β」)チタン合金のヤング率は、約100GPa以上であってもよい。一部の実施形態では、例えば、合金のヤング率は、約110GPa以上又は約120GPa以上であってもよい。例えば、一部の実施形態では、AB(又は「α-β」)チタン合金のヤング率は、約100GPa~約140GPa、約100GPa~約130GPa、約100GPa~約125GPa、約100GPa~約120GPa、約110GPa~約140GPa、約110GPa~約130GPa、約110GPa~約125GPa、約110GPa~約120GPa、約120GPa~約140GPa、約120GPa~約130GPa、又は約120GPa~約125GPaであってもよい。また、これらの範囲には、すべての部分範囲、並びにこれらの範囲内の任意の点で開始及び/又は終了する他の範囲が含まれることも理解され、例えば、約100GPa~約120GPa及び約110GPa~約140GPaの範囲が上記に開示されているが、約100GPa~約110GPaの範囲も考慮され、これらの範囲内に含まれる。
【0059】
また、一部の実施形態では、AB(又は「α-β」)チタン合金のポアソン比の値は、約0.3~約0.4であってもよい。一部の実施形態では、例えば、合金のポアソン比の値は、約0.31~約0.35、又は約0.31~約0.34であってもよい。
【0060】
また、AB(又は「α-β」)チタン合金のロックウェル硬さは、約50未満であってもよい。例えば、一部の実施形態では、合金のロックウェル硬さは、約45未満、又は約40未満であってもよい。一部の実施形態では、例えば、合金のロックウェル硬さは、約30~約50、約30~約45、約30~約40、約35~約50、約35~約45、又は約35~約45であってもよい。また、これらの範囲には、すべての部分範囲、並びにこれらの範囲内の任意の点で開始及び/又は終了する他の範囲が含まれることも理解され、例えば、約30~約45及び約35~約40の範囲が上記に開示されているが、約30~約35及び約40~約45の範囲も考慮され、これらの範囲内に含まれる。
【0061】
AB(又は「α-β」)チタン合金はまた、擬弾性限界(PEL)が良好である。PELは、降伏強さのヤング率に対する比率として計算され、パーセンテージとして表され、材料の弾性の測定単位であり、半永久的に変形することなく材料をどれだけ伸ばすことができるかを示す。具体的には、PELは下記式3を使用して計算される。
式3-擬弾性限界(PEL)
PEL=(降伏強さ(MPa))/(ヤング率(MPa))×100
本開示の実施形態によれば、AB(又は「α-β」)チタン合金のPELは、約0.6以上、例えば約0.7以上、又は約0.8以上である。一部の実施形態では、例えば、合金のPELは、約0.6~約1.1、約0.6~約1、約0.6~約0.9、約0.6~約0.8、約0.7~約1.1、約0.7~約1、0.7~約0.9、0.7~約0.8、約0.8~約1.1、約0.8~約1、又は約0.8~約0.9であってもよい。また、これらの範囲には、すべての部分範囲、並びにこれらの範囲内の任意の点で開始及び/又は終了する他の範囲が含まれることも理解され、例えば、約0.6~約1及び約0.7~約0.8の範囲が上記に開示されているが、約0.6~約0.7の範囲も考慮され、これらの範囲内に含まれる。
【0062】
本開示の実施形態によるAB(又は「α-β」)チタン合金は、任意の好適な手順によって製造することができる。一例として、限定されるものではないが、AB(又は「α-β」)チタン合金は、鋳造インゴットとして開始してもよく(又は最初に調製されてもよく)、その後、任意の好適な技術、例えば、非限定的な例として熱間鍛造、熱間圧延、及び/又は冷間圧延によってプレート、シート、バー等の鍛造形態に変換される。この処理は、典型的には「加工熱」処理と呼ばれ、当業者はこのような手順に精通しており、これらの手順を使用して本明細書に開示されている合金を容易に製造することができるだろう。
【0063】
一部の実施形態によれば、AB(又は「α-β」)チタン合金を製造する方法は、合金組成物を加工熱処理して合金シートにする工程を含む。合金シートの厚さは、特に限定されないが、一部の実施形態では、約2~約10mmの厚さ、約3~約8mmの厚さ、又は約5mmの厚さであってもよい。加工熱処理には、合金材料の鋳造ブロックを熱間鍛造することと、続いて熱間鍛造材料を合金シートに熱間圧延することが含まれる場合がある。熱間鍛造又は熱間圧延は、制限なく任意の好適な温度で実施することができる。一部の実施形態では、例えば、熱間鍛造又は熱間圧延は、約750℃を超える温度で実施してもよい。
【0064】
加工熱処理により、鋳放し合金の粗い微視組織が破壊され、微細な微視組織が得られる。この処理から得られる合金材料は、高い機械的強度及び高い伸び特性を有する。加工熱処理は、合金材料の化学組成をより良好に均質化するのにも役立ち、これにより、合金材料のバッチ全体でより一貫した一連の機械的特性が得られる。
【実施例0065】
以下の実施例及び比較例は、説明のみを目的として提示されており、本開示又は特許請求の範囲の範囲又は内容を制限するものではない。
【0066】
(実施例1~9)
以下のTable 1(表1)に記載されている合金組成物は、熱間圧延によって調製した。具体的には、合金組成物を鋳造して合金鋳造ブロックを形成し、次いで加工熱処理して厚さ約5mmの合金シートにした。加工熱処理には、鋳造ブロックを熱間鍛造することと、続いて熱間鍛造材料を合金シートに熱間圧延することが含まれていた。熱間鍛造及び熱間圧延は、約750℃を超える温度で実施した。
【0067】
【表1】
【0068】
Table 1(表1)において、合金組成物中の合金元素の前の数字は、組成物中のその元素の質量%である。例えば、Ti-5Al-1V-1Cr-1Fe-1Mn-1Sn-0.13Oの組成物には、Alが5質量%、V、Cr、Fe、Mn、及びSnがそれぞれ1質量%、並びにOが0.13質量%含まれ、残りがTiである。
【0069】
(比較例1~3)
比較例1~5として、以下のTable 2(表2)に記載されている市販品を使用した。
【0070】
【表2】
【0071】
実施例1~9及び比較例1~3の合金組成物の機械的特性は、圧延シートから引張サンプルを加工することによって測定した。縦(又は圧延)方向の機械的特性を、以下のTable 3(表3)に示す。
【0072】
【表3】
【0073】
Table 3(表3)において、擬弾性限界(Pseudo Elastic Limit)(PEL)は材料の弾性の測定単位であり、半永久的に変形することなく材料をどれだけ伸ばすことができるかを示す。PELは、降伏強さ(MPa)のヤング率(MPa)に対する比である。
【0074】
上記のTable 3(表3)からわかるように、特に実施例3、6、及び9(8質量%のAlを含む)と比較例1~3との比較からわかるように、本開示の実施形態による合金は、良好な伸びを維持しながら改善された強度特性を達成する。例えば、比較例1~3では、13.7~15%の伸びを達成できたが、これらの合金のUTS値は、150.7~155.3ksiであった。対照的に、実施例6では、12.1%という同等の、許容可能な伸びを維持しながら、UTSが176.3ksiと大幅な改善を達成した。また、実施例3及び9では、UTS値がそれぞれ182.7ksi及び183.3ksiと大幅な改善を達成し、かつ13.7%及び8.8%という同等又は許容可能な伸び値を達成した。
【0075】
更に、上記のTable 3(表3)に示した特性から、本開示の実施形態による合金組成物中のAl含有量が増加すると、許容可能な伸び特性を維持しながら、強度を改善できることが確認される。例えば、8質量%のAlを含む実施例3、6、及び9のそれぞれでは、許容可能な伸びを維持しながら(それぞれ13.7%、12.1%、及び8.8%と記録された)、強度特性が改善された(UTSはそれぞれ182.7ksi、176.3ksi、及び183.3ksiと記録された)。
【0076】
Table 3(表3)のデータから推定して、Al含有量が更に増加した同様の合金の特性を予測すると、本開示の実施形態による合金は、許容可能な伸びを維持しながら、強度を更に向上させるために、より大量のAlを含み得ることが示唆される。これは、図1A図1Dのグラフからわかることであり、これらは、実施例1から9のデータのAl含有量に基づく線形関係の近似曲線であり、次いでこれらを使用して、Al含有量の多い合金の対応する特性を予測することができる。図1Aは、Al含有量の関数として、UTS特性のこれらの近似曲線をプロットしたものである。図1Bは、Al含有量の関数として、降伏強さ特性のこれらの近似曲線をプロットしたものである。図1Cは、Al含有量の関数として、伸び率特性のこれらの近似曲線をプロットしたものである。図1Dは、Al含有量の関数として、ヤング率特性のこれらの近似曲線をプロットしたものである。図1Eは、伸びの関数としてのUTSデータの近似曲線である。図1A~1Eのそれぞれで、同様の組成を有する合金のセットの近似曲線プロットに対応するデータトレースが3つある。具体的には、第1のトレースは、実施例1~3のデータをプロットしたものであり、そのすべての合金は、同様の元素組成を備え、Al含有量のみが異なる(すなわち、実施例1は、Alが5質量%、実施例2はAlが6質量%、実施例3はAlが8質量%である)。同様に、第2のデータトレースは、実施例4~6のデータをプロットしたものであり、そのすべての合金は、同様の元素組成を備え、Al含有量のみが異なる(すなわち、実施例1は、Alが5質量%、実施例2はAlが6質量%、実施例3はAlが8質量%である)。最後に、第3のデータトレースは、実施例7~9のデータをプロットしたものであり、そのすべての合金は、同様の元素組成を備え、Al含有量のみが異なる(すなわち、実施例1は、Alが5質量%、実施例2はAlが6質量%、実施例3はAlが8質量%である)。
【0077】
図1A図1Eのプロットを使用して、組成がTi-9Al-1V-1Cr-1Fe-1Mn-1Sn-0.13O(仮説例1)、Ti-9Al-1V-1Cr-1Fe-1Mn-1Mo-1Nb-0.13O(仮説例2)、及びTi-9Al-1V-1Cr-1Fe-1Mn-1Mo-1Nb-1Zr-1Sn-0.13O(仮説例3)である仮説上の9質量%Al合金の特性を予測することができる。これらの予測値を以下のTable 4(表4)に示す。
【0078】
【表4】
【0079】
上記のTable 4(表4)からわかるように、本開示の実施形態による仮説上の9%Al合金も、許容可能な伸び特性を維持しながら、大幅に改善された強度特性を有すると予測される。本明細書で提示された推定データは理論上のものであるが、当業者であれば、これらの予測材料特性の達成に成功すると合理的に予期するだろう。それにもかかわらず、これらの理論上の合金によって達成される実際の材料特性は、これらの予測、特に伸び特性とわずかに異なる場合があるが、本開示の精神、範囲、及び内容から逸脱するものではない。
【0080】
上述のように、本開示の実施形態によるAB(又は「α-β」)チタン合金は、ゴルフクラブ、ゴルフクラブヘッド、及び/又はゴルフクラブヘッド打撃フェースの製造において特に有用であり得る。この合金が採用されるゴルフクラブ、ゴルフクラブヘッド、及び打撃フェースは特に限定されず、合金は概して、これらの構成要素の全部又は一部を形成するために使用することができる。一部の実施形態では、例えば、図2に概して示されるように、本開示の実施形態によるゴルフクラブヘッド100は、打撃フェース部分102及びアフトボディ部分104を含む。一部の実施形態では、打撃フェース部分102には、フェースインサート103が含まれてもよい。打撃フェース部分102は、概して、実質的に平らな表面(バルジ及びロールが、この説明の目的では実質的に平らであると考えられるかすかな湾曲部を形成し得る)を有するゴルフクラブヘッド100の前面部分を指すことができ、アフトボディ部分104は、打撃フェース部分102の後方にあるゴルフクラブヘッド100の任意の部分を指す。本明細書では、「実質的に」という用語は、程度の用語ではなく近似の用語として使用されており、ある種の計算値、測定値、又は観測値における本質的なばらつきを考慮することを目的としている。例えば、前述のように、「実質的に平らな表面」という用語は、肉眼では全体的に平らに見えるが、ある程度のかすかな湾曲部を形成し得る特定のバルジ及びロールを有し得る表面を指す。また、図2は、概してドライバー又はウッド型のゴルフクラブを示すが、本開示はこれらに限定されず、本開示の実施形態によるゴルフクラブは、ドライバー又はウッド(フェアウェイウッド及びドライバーを含む)、アイアン、ハイブリッド、ウェッジ、及びパターを含むがこれらに限定されない、任意の形状又は形態をとることができる。
【0081】
本開示の実施形態によれば、ゴルフクラブヘッド100の任意の一部又は全部は、本明細書に開示されているAB(又は「α-β」)チタン合金のうちの1種で構成されてもよい。一部の実施形態では、例えば、ゴルフクラブヘッド100全体が、同一のAB(又は「α-β」)チタン合金で構成されていてもよい。ただし、一部の実施形態では、打撃フェース部分102又は打撃フェースインサート103のみが本開示の実施形態によるAB(又は「α-β」)チタン合金で構成されてもよく、アフトボディ部分104は他の任意の好適な材料で構成されてもよい。一部の実施形態では、クラブヘッド100の各部分は、本開示の実施形態によるAB(又は「α-β」)チタン合金で構成されてもよいが、クラブヘッド100の異なる部分が、異なる種類のAB(又は「α-β」)チタン合金で構成されてもよい。例えば、一部の実施形態では、打撃フェース部分102又は打撃フェースインサート103は、本開示の実施形態による第1のAB(又は「α-β」)チタン合金で構成されてもよく、アフトボディ部分104は、第1の合金とは異なる第2のAB(又は「α-β」)チタン合金で構成されてもよい。
【0082】
ゴルフクラブヘッド100、打撃フェース部分102、又は打撃フェースインサート103が、本明細書に記載のAB(又は「α-β」)チタン合金の1種又は複数で構成される場合、チタン合金は、ゴルフクラブヘッド又は打撃フェース部分(又はインサート)に上述の機械的特性を付与する。したがって、本明細書に記載のチタン合金で構成されたゴルフクラブヘッドは、合金自体に関して上述したのと同じUTS、YS、ヤング率、伸び、ポアソン比、PEL、及びロックウェル硬さ特性を有することができ、これらの特性の説明は、ゴルフクラブヘッド、打撃フェース部分、及び打撃フェースインサートに等しい効力及び開示をもって適用され、ここでは繰り返さない。
【0083】
本開示の特定の例示的な実施形態が図示及び説明されているが、当業者は、本明細書に続く特許請求の範囲で定義されているように、本開示の精神及び範囲、及びそれらの等価物から逸脱することなく、記載された実施形態にさまざまな変更及び修正を加えることができることを認識しているだろう。例えば、特定の成分が単数形で記載されている場合があるが、すなわち「a(1種の)」中性元素、「an(1種の)」アルファ(α)相安定化元素等は、別段に反対の記載がない限り、これらの成分のうちの1種又は複数を任意の組合せで、本開示に従って使用することができる。
【0084】
また、特定の実施形態では、特定の成分を「含む(comprising)」又は「含む(including)」と記載されているが、列挙された成分「から本質的になる」、又はこれら「からなる」実施形態も本開示の範囲内である。例えば、AB(又は「α-β」)チタン合金の実施形態は、4種以上のベータ(β)相安定化元素、1種若しくは複数のアルファ(α)相安定化元素、及び1種若しくは複数の中性元素を含むか、又は4種以上のベータ(β)相安定化元素、及び1種若しくは複数のアルファ(α)相安定化元素を含むが、これらの成分から本質的になる、又はこれらからなる実施形態も本開示の範囲内である。したがって、AB(又は「α-β」)チタン合金は、4種以上のベータ(β)相安定化元素、1種若しくは複数のアルファ(α)相安定化元素、及び1種若しくは複数の中性元素から本質的になってもよいか、又は4種以上のベータ(β)相安定化元素、及び1種若しくは複数のアルファ(α)相安定化元素を含む。この文脈では、「から本質的になる」とは、任意の追加の成分又は元素が、例えば、強度又は伸びを含む合金の化学的、物理的、又は機械的特性に実質的な影響を及ぼさないことを意味する。
【0085】
本明細書では、別段に明記されていない限り、値、範囲、量、又はパーセンテージを表す数値等のすべての数値は、たとえ「約」という語が明示的に表されていなくても、あたかも「約」が先行するかのように読むことができる。更に、「約」という語は、程度の用語としてではなく、近似の用語として使用されており、測定に関連するばらつきの周縁部、有効数値、及び互換性を反映しており、これらはすべて、この開示が関係する分野の当業者が理解するとおりである。本明細書に記載されている数値範囲は、そこに包摂されるすべての部分範囲を含むことを意図している。複数形には単数形が含まれ、その逆も同様である。範囲が指定されている場合、これらの範囲の任意の端点及び/又はこれらの範囲内の数値を、本開示の範囲内で組み合わせることができる。「含む」等の用語は、反対に規定されない限り、「含むがこれらに限定されない」という意味である。
【0086】
更に、前述のように、本明細書に記載されている合金内の元素の質量パーセントは、反対に明記されていない限り、すべて公称質量パーセントである。これには、実施例に記載されている質量パーセントが含まれる。
【0087】
本明細書に記載されている数値範囲及びパラメータは近似値であり得るが、実施例に記載されている数値は、実際と同等に正確に報告されている。ただし、いずれの数値にも、それぞれの試験測定値で発見された標準偏差から必然的に生じるある種の誤差が、本質的に含まれている。本明細書及び特許請求の範囲において使用されている「含む」という語及びその変形は、開示がいかなる変形又は付加をも除外するように限定するものではない。
【符号の説明】
【0088】
100 クラブヘッド
102 打撃フェース部分
103 フェースインサート
104 アフトボディ部分
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2
【外国語明細書】