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特開2025-19049表面処理成分または硬化促進成分を含む組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025019049
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】表面処理成分または硬化促進成分を含む組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 201/00 20060101AFI20250130BHJP
   C09J 5/00 20060101ALI20250130BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
C09J201/00
C09J5/00
C09J11/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024121352
(22)【出願日】2024-07-26
(31)【優先権主張番号】P 2023122864
(32)【優先日】2023-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000132404
【氏名又は名称】株式会社スリーボンド
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】大村 愛
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040EC001
4J040EF001
4J040EK041
4J040EK051
4J040EK081
4J040FA121
4J040FA131
4J040HB17
4J040HB19
4J040HC01
4J040HC15
4J040HC21
4J040HC26
4J040HD02
4J040HD43
4J040JB02
4J040JB04
4J040JB07
4J040KA14
4J040KA15
4J040KA23
4J040KA30
4J040LA06
4J040MA02
4J040MA10
4J040PA30
4J040PA32
(57)【要約】
【課題】従来、表面処理成分または硬化促進成分を含む組成物は基剤に対して塗布した際に、組成物が透明の場合にウェットの状態では視認性が低く、さらに溶剤が乾燥したドライの状態では視認性がさらに低かった。本発明では、ブラックライトで容易に塗布した痕跡を目視で確認することを可能にする。
【解決手段】下記(A-1)成分、(B)成分及び(C)成分を含む組成物。
(A-1)成分:表面処理成分
(B)成分:ベンゾオキサゾール系蛍光増感剤
(C)成分:溶剤
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A-1)成分、(B)成分及び(C)成分を含む、組成物。
(A-1)成分:表面処理成分
(B)成分:ベンゾオキサゾール系蛍光増感剤
(C)成分:溶剤
【請求項2】
下記(A-2)成分、(B)成分及び(C)成分を含む、組成物。
(A-2)成分:硬化促進成分
(B)成分:ベンゾオキサゾール系蛍光増感剤
(C)成分:溶剤
【請求項3】
前記(A-1)成分が、ベンゾフェノンおよびベンゾフェノン誘導体からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記(A-2)成分が、有機金属錯体、包摂化合物、水、ヒドラジン化合物、メルカプタン化合物、アルデヒド化合物、アミン化合物および金属触媒からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
硬化性樹脂、ポリマー、オリゴマー、エラストマー、ゴム、熱可塑性樹脂および充填剤を含まない、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の組成物を基材に塗布し、活性エネルギー線を前記組成物に照射する、基材表面の処理方法。
【請求項7】
請求項1または2に記載の組成物を基材に塗布する、組成物の塗布方法であって、
当該塗布によって得られる塗膜の厚さがウェット状態で10μm以下である、組成物の塗布方法。
【請求項8】
請求項1または2に記載の組成物を基材に塗布し、前記組成物が塗布された領域をブラックライトで確認する、塗布領域の確認方法。
【請求項9】
請求項1または2に記載の組成物を基材に塗布し、前記(C)成分を乾燥させて、前記組成物が塗布された領域をブラックライトで確認する、塗布領域の確認方法。
【請求項10】
第一基材及び第二基材を用意し、
請求項1または2に記載の組成物を前記第一基材に塗布し、
硬化性樹脂組成物を使用して前記第二基材を前記第一基材に接着する、基材の接着方法。
【請求項11】
第一基材及び第二基材を用意し、
請求項1または2に記載の組成物を前記第一基材に塗布し、
前記(C)成分を乾燥させて、
硬化性樹脂組成物を使用して前記第二基材を前記第一基材に接着する、基材の接着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理成分または硬化促進成分を含む組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
視認性を向上させることを目的に特許文献1に開示される様な発光材料を含むコーティング組成物が知られている。これらのコーティング組成物は塗料であり、樹脂やポリマーを含む。当該組成物を基材に塗布すればある程度の膜厚を確保することで視認性が発現する。また、当該組成物を充填剤などの遮蔽性のある材料を多く添加すれば、それだけ視認性が向上される。しかしながら、表面処理成分または硬化促進成分を溶剤に少量だけ溶解させて得られる様な組成物は、基材に塗布しても塗布領域を目視で確認することが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】日本国再表2018-505265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、表面処理成分または硬化促進成分を含む組成物は基剤に対して塗布した際に、組成物が透明の場合にウェットの状態では視認性が低く、さらに溶剤が乾燥したドライの状態では視認性がさらに低いという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成するべく鋭意検討した結果、表面処理成分または硬化促進成分を含む組成物が上記課題を解決できることを発見し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明の要旨を次に説明する。
本発明の第一の実施態様は、下記(A-1)成分、(B)成分及び(C)成分を含む組成物である。
(A-1)成分:表面処理成分
(B)成分:ベンゾオキサゾール系蛍光増感剤
(C)成分:溶剤
【0007】
本発明の第二の実施態様は、下記(A-2)成分、(B)成分及び(C)成分を含む組成物である。
(A-2)成分:硬化促進成分
(B)成分:ベンゾオキサゾール系蛍光増感剤
(C)成分:溶剤
【0008】
本発明の第三の実施態様は、前記(A-1)成分が、ベンゾフェノンおよびベンゾフェノン誘導体からなる群から選択される少なくとも1つである、第一の実施態様に記載の組成物である。
【0009】
本発明の第四の実施態様は、前記(A-2)成分が、金属錯体、包摂化合物、水、ヒドラジン化合物、メルカプタン化合物、アルデヒド化合物、アミン化合物および金属触媒からなる群から選択される少なくとも1つである、第二の実施態様に記載の組成物である。
【0010】
本発明の第五の実施態様は、硬化性樹脂、ポリマー、オリゴマー、エラストマー、ゴム、熱可塑性樹脂および充填剤を含まない、第一または第二の実施態様に記載の組成物である。
【0011】
本発明の第六の実施態様は、第一の実施態様に記載の組成物を基材に塗布し、活性エネルギー線を前記組成物に照射する、基材表面の処理方法である。
【0012】
本発明の第七の実施態様は、第一または第二の実施態様に記載の組成物を基材に塗布する、組成物の塗布方法であって、当該塗布によって得られる塗膜の厚さがウェット状態で10μm以下である、組成物の塗布方法である。
【0013】
本発明の第八の実施態様は、第一または第二の実施態様に記載の組成物を基材に塗布し、前記組成物が塗布された領域をブラックライトで確認する、塗布領域の確認方法である。
【0014】
本発明の第九の実施態様は、第一または第二の実施態様に記載の組成物を基材に塗布し、前記(C)成分を乾燥させて、前記組成物が塗布された領域をブラックライトで確認する、塗布領域の確認方法である。
【0015】
本発明の第十の実施態様は、第一基材及び第二基材を用意し、第一または第二の実施態様に記載の組成物を前記第一基材に塗布し、硬化性樹脂組成物を使用して前記第二基材を前記第一基材に接着する、基材の接着方法である。
【0016】
本発明の第十一の実施態様は、第一基材及び第二基材を用意し、第一または第二の実施態様に記載の組成物を前記第一基材に塗布し、前記(C)成分を乾燥させて、硬化性樹脂組成物を使用して前記第二基材を前記第一基材に接着する、基材の接着方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、組成物を基剤に対して塗布した際に、組成物が透明の場合にウェットの状態でも、溶剤が乾燥したドライの状態でも、ブラックライトで容易に組成物を塗布した痕跡を目視で確認することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の詳細を次に説明する。本発明で使用することができる(A-1)成分は表面処理成分である。本発明で使用することができる(A-2)成分は硬化促進成分である。表面処理成分とは、加熱や活性エネルギー線の照射により基材表面の改質を行い、後述する硬化性樹脂組成物の接着性を向上させるために使用される。また、硬化促進成分とは、基材表面に硬化性樹脂組成物の硬化性を向上させる成分を残留させて、硬化性樹脂組成物の硬化性向上や速硬化を実現するために使用される。
【0019】
(A-1)成分として使用することができる表面処理成分の具体例としては、ベンゾフェノンおよびベンゾフェノン誘導体などが挙げられる。ここで、誘導体とは基本的な骨格に対して水素などが置換基で置き換わった化合物を指す。明確な理由は不明であるが、ベンゾフェノンおよびベンゾフェノン誘導体は、基材の表面において、紫外線等の活性エネルギー線照射により、三重項励起状態となり、水素引抜き反応が生じて基材の表面が改質されると推認される。それによって、後述の硬化性樹脂組成物の接着性を向上させるという顕著な効果を発現する。
【0020】
本発明でいう活性エネルギー線とは、α線やβ線等の放射線、γ線やX線等の電磁波、電子線(EB)、波長100~400nm程度の紫外線(UV)、波長400~800nm程度の可視光線等の広義の光全てを含むものであり、好ましくは紫外線である。
【0021】
ベンゾフェノンおよびベンゾフェノン誘導体の具体例としては、ベンゾフェノン、2-メチルベンゾフェノン、3-メチルベンゾフェノン、2-エチルベンゾフェノン、3-エチルベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、4-エチルベンゾフェノン、4-ブロモベンゾフェノン、4-クロロベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、4-クロロ-4’-ベンジルベンゾフェノン、4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、3-メトキシベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、4-シアノベンゾフェノン、4-メタクリロイルオキシベンゾフェノン、4-ベンゾイル安息香酸、2,2,4,4-テトラメチルベンゾフェノン、4,4-ジメチルベンゾフェノン、4-ジメチルアミノベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、3,3,4,4-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4-(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、2,4-ジメトキシ-4’-ヒドロキシベンゾフェノン、キサントン、3-ヒドロキシサンテン-9-オン、9-ヒドロキシキサンテン、チオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサンテン-9-オン、アントラキノン-2-スルホン酸ナトリウム一水和物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
(A-1)成分による基材の表面処理後に接着用途で使用される硬化性樹脂組成物は、様々な硬化性樹脂を含むことができる。硬化性樹脂の具体例としてエポキシ化合物を含むエポキシ樹脂組成物、(メタ)アクリレート化合物を含む(メタ)アクリレート組成物、シアノアクリレート化合物を含む硬化性樹脂組成物、ウレタン樹脂組成物、ビニルシロキサン基を含み主骨格がポリオルガノシロキサンである樹脂とハイドロゲンシロキサン基を含む樹脂を組成物中に含む付加反応型シリコーン樹脂組成物、加水分解性シリル基を含み主骨格がポリオルガノシロキサンである樹脂を含む縮合反応型シリコーン樹脂組成物、ビニルシロキサン基を含む樹脂とハイドロゲンシロキサン基を含み主骨格がポリオルガノシロキサン以外の樹脂を組成物中に含む付加反応型変性シリコーン組成物、加水分解性シリル基を含み主骨格がポリオルガノシロキサン以外の樹脂を含む縮合反応型変性シリコーン組成物など挙げられるがこれらに限定されるものではない。また、硬化性樹脂組成物は、全ての成分が含まれる1液型でも、本剤と硬化剤が別になっている2液型でも良い。硬化性樹脂組成物の硬化形態としても、熱硬化性、光硬化性、嫌気硬化性、湿気硬化性などの様々な形態が使用できる。
【0023】
(A-2)成分として使用することができる硬化促進成分は、様々な硬化性樹脂組成物に使用することができる。硬化促進成分は、硬化性樹脂組成物と触れた領域で硬化を促進させる役割があり、それぞれの硬化性樹脂組成物に対して固有の(A-2)成分が存在する。具体的な硬化性樹脂組成物としては、上述のとおりであるが、これらに限定されるものではない。特に、硬化促進成分は、(メタ)アクリレート化合物を含む嫌気硬化性を有する硬化性樹脂組成物、シアノアクリレート化合物を含む硬化性樹脂組成物、ビニルシロキサン基を含む樹脂とハイドロゲンシロキサン基を含む樹脂を組成物中に含み付加反応することによって得られる硬化性樹脂組成物などに対して使用されるが、使用される硬化性樹脂組成物はこれらに限定されるものではない。
【0024】
(メタ)アクリレート化合物を含む嫌気硬化性を有する硬化性樹脂組成物に対して好ましく用いられる(A-2)成分としては、嫌気硬化性を促進させる有機金属錯体、嫌気硬化性を促進させるアミン化合物、嫌気硬化性を促進させるメルカプタン化合物などが挙げられる。嫌気硬化性を発現させるには、硬化性樹脂組成物中にサッカリンなどを含めば良い。
【0025】
有機金属錯体としては、好ましくは金属キレート錯塩が使用される。例えば、ペンタジオン鉄、ペンタジオンコバルト、ペンタジオン銅、プロピレンジアミン銅、エチレンジアミン銅、鉄ナフテート、ニッケルナフテート、コバルトナフテート、銅ナフテート、銅オクテート、2-エチルヘキサン酸銅、鉄ヘキソエート、鉄プロピオネート、アセチルアセトンバナジウム等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。特に、有機銅錯体や有機鉄錯体などが好ましい。
【0026】
(メタ)アクリレート化合物を含む嫌気硬化性を有する硬化性樹脂組成物に対して好ましく用いられるアミン化合物としては、特に、ヒドラジン化合物が挙げられる。ヒドラジン化合物としては、例えば、1-アセチル-2-フェニルヒドラジン、1-アセチル-2(p-トリル)ヒドラジン、1-ベンゾイル-2-フェニルヒドラジン、1-(1’,1’,1’-トリフルオロ)アセチル-2-フェニルヒドラジン、1,5-ジフェニル-カルボヒドラジン、1-フォーミル-2-フェニルヒドラジン、1-アセチル-2-(p-ブロモフェニル)ヒドラジン、1-アセチル-2-(p-ニトロフェニル)ヒドラジン、1-アセチル-2-(2’-フェニルエチルヒドラジン)、エチルカルバゼート、p-ニトロフェニルヒドラジン、p-トリスルホニルヒドラジド等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0027】
ヒドラジン化合物以外のアミン化合物としては、例えば、2-エチルヘキシルアミン、1,2,3,4-テトラヒドロキノン、1,2,3,4-テトラヒドロキナルジン等の複素環第二級アミン;キノリン、メチルキノリン、キナルジン、キノキサリンフェナジン等の複素環第三級アミン;N,N-ジメチル-パラ-トルイジン、N,N-ジメチル-アニシジン、N,N-ジメチルアニリン等の芳香族第三級アミン;1,2,4-トリアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、ベンゾトリアゾール、ヒドロキシベンゾトリアゾール、1,2,3-ベンゾチアジアゾール、3-メルカプトベンゾトリゾール等のアゾール系化合物等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0028】
メルカプタン化合物としては、例えば、n-ドデシルメルカプタン、エチルメルカプタン、ブチルメルカプタン等の直鎖型メルカプタンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。ただし、アミン化合物を除く。
【0029】
シアノアクリレート化合物を含む硬化性樹脂組成物に対して好ましく用いられる(A-2)成分としては、アルデヒド化合物、アミン化合物、包摂化合物、水が挙げられ、シアノアクリレートが硬化を進める際に必要なアニオン種になりえる化合物や外気から水分を引き込む化合物であれば良い。
【0030】
アルデヒド化合物の具体例としては、ベンズアルデヒド、ジメチルアミノベンズアルデヒド、ジエチルアミノベンズアルデヒド、P-ジメチルベンズアルデヒド、アミノベンズアルデヒド、テレフタルアルデヒド、アルデヒドアニリン系化合物が挙げられる。また、アルデヒドアニリン系化合物の具体例としては、例えばアルデヒドとアニリンの脱水縮合反応によって生成された化合物であり、具体的にはアセトアルデヒドアニリン、プロピオンアルデヒドアニリン、ブチルアルデヒドアニリン、ペンチルアルデヒドアニリン、ヘキシルアルデヒドアニリン、ペンタアルデヒドアニリンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
シアノアクリレート化合物を含む硬化性樹脂組成物に対して好ましく用いられるアミン化合物の具体例としては、ジメチルアミノプロパノール、ジエチルアミノプロパノール、ジエチルアミノペンタノール、ジメチルアミノヘキサノール、2-ジメチルアミノ-2メチルプロパノール等であり、また一般式R(NH(ただし、RはC2n、n=1~10)で表されるアルキルジアミンであって、具体的にはエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン等であり、さらにこのほかにジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、N、メチルジエタノールアミン等が用いられるがこれらに限定されるものではない。
【0032】
包摂化合物としては、ポリエチレングリコール誘導体、クラウンエーテル及びその誘導体、カリックスアレーン誘導体、チアカリックスアレーン誘導体などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
水としては、アルカリ電解水、イオン交換水などが使用されるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
ビニルシロキサン基を含む樹脂とハイドロゲンシロキサン基を含む樹脂を組成物中に含み、付加反応することによって得られる硬化性樹脂組成物に対して好ましく用いられる(A-2)成分としては、付加反応を促進させる金属触媒であれば限定されない。
【0035】
付加反応を促進させる金属触媒としては、価格や種類の多さから白金系金属触媒および/またはロジウム系金属触媒であることが好ましい。白金系金属触媒の具体例としては、0価の白金錯体ではジビニルテトラメチルジシロキサン白金錯体、テトラビニルテトラメチルテトラシクロシロキサン白金錯体、2価の白金錯体ではジクロロビストリフェニルフォスフィンパラジウム錯体、4価の白金錯体では塩化白金酸が挙げられるが、これに限定されるものではない。ロジウム系金属触媒の具体例としては、1価のロジウム錯体ではクロロトリストリフェニルフォスファイトロジウム錯体、2価のロジウム錯体ではテトラキスアセテートジロジウム錯体、3価のロジウム錯体ではトリスアセチルアセトナトロジウム錯体が挙げられるが、これに限定されるものではない。また、2種類以上の金属触媒を混合して使用しても良い。
【0036】
ビニルシロキサン基を含む樹脂の主剤の骨格としては、ジメチルシロキサン骨格、ポリイソブチレン骨格、ポリイソプレン骨格、ポリブタジエン骨格などが挙げられる。ビニルシロキサン基を含む樹脂としては、これらの骨格の中で炭素-炭素二重結合を有する樹脂の水添タイプなどが挙げられる。水添とは水素添加とも呼ばれ、水素ガスを還元剤として化合物に対して水素原子を付加する還元反応のことであり、分子中に存在する不飽和結合を飽和結合にすることである。一方、ハイドロゲンシロキサン基を含む樹脂とはいわゆる架橋剤であり、1分子に1以上のハイドロゲンシロキサン基を有する化合物である。当該化合物は、好ましくは、1分子に2以上のハイドロゲンシロキサン基を有する化合物であり、ビニルシロキサン基を含む樹脂との相溶性を有する化合物が、特に好ましい。
【0037】
本発明で使用することができる(B)成分は、ベンゾオキサゾール系蛍光増感剤である。ただし、(A-1)成分及び(A-2)成分を除く。本発明に係る組成物を基材に塗布した際に、(B)成分の存在によって、ブラックライトにより組成物を塗布した領域を視認できる。ここで、ベンゾオキサゾール系蛍光増感剤とは、下記構造のベンゾオキサゾールおよびベンゾオキサゾール誘導体を含む。ベンゾオキサゾール誘導体とは基本的な骨格に対して水素などが置換基で置き換わった化合物や1分子中に複数のベンゾオキサゾール骨格を有る多量体を含む。ただし、蛍光増感の効果を発現しないものを除く。
【0038】
【化1】
【0039】
(B)成分の具体例としては、ベンゾオキサゾール、1,4-ビス(2-ベンゾオキサゾリル)ナフタレン、2,5-ビス(5-tert-ブチル-2-ベンゾオキサゾリル)チオフェンなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない。また、(B)成分は1種類を使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0040】
(B)成分としては、株式会社日本化学工業所製のニッカフローSC200、BASF社製のTinopal(登録商標)シリーズとして、Tinopal OB CO及びTinopal OBなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
本発明で使用することができる(C)成分は、溶剤である。(C)成分は前記(A-1)成分、前記(A-2)成分および前記(B)成分を溶解する溶剤であれば使用することができる。特に、極性が低く、揮発性が高い溶剤が好ましい。(C)成分の沸点としては100℃以下であることが好ましく、80℃以下であることが特に好ましい。(C)成分の具体例としては、炭化水素系溶剤としてn-ヘキサン、シクロヘキサンなど、芳香族系溶剤としてトルエンなど、ケトン系溶剤としてアセトンなど、エステル系溶剤として酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピルなど、フッ素系溶剤としてハイドロクロロフルオロオレフィン、ハイドロフルオロエーテル、ハイドロフルオロカーボンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。組成物のレベリング性や粘度を調整するため、(A-1)成分、(A-2)成分及び(B)成分の組成物中の濃度を調整することができる。
【0042】
(C)成分100質量部に対して、(A-1)成分または(A-2)成分は0.1~10質量部含まれることが好ましい。(A-1)成分または(A-2)成分の含有量が0.1質量部以上であると表面処理成分を用いる場合には表面改質がなされやすくなり、硬化促進剤を用いる場合には硬化促進がなされやすくなる。(A-1)成分または(A-2)成分の含有量が10質量部以下であると(A-1)成分または(A-2)成分が基材上で偏らずに均一に基材に付着する。
【0043】
(C)成分100質量部に対して、(B)成分は0.01~5.0質量部含まれることが好ましい。(B)成分の含有量が0.01質量部以上であるとブラックライトによる視認性が向上し、(B)成分の含有量が5.0質量部以下であると(A-1)成分または(A-2)成分の効果を阻害させることが無い。
【0044】
本発明の組成物には、本発明の特性を損なわない範囲において顔料、染料等の着色剤((B)成分を除く)、金属粉、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム等の無機充填剤、難燃剤、有機充填剤、可塑剤、酸化防止剤、消泡剤、カップリング剤、レベリング剤、レオロジーコントロール剤等の添加剤を適量配合しても良い。これらの添加により樹脂強度、作業性、保存性等に優れた組成物およびその硬化物が得られる。しかしながら、本発明の表面処理に係る効果や硬化促進に係る効果を阻害することから、組成物中には硬化性樹脂、ポリマー、オリゴマー、エラストマー、ゴム、熱可塑性樹脂および充填剤を含まないことが最も好ましい。
【0045】
上述のとおり、本発明の基材表面の処理方法、本発明の組成物の塗布方法及び本発明の塗布領域の確認方法では、組成物を基材に塗布する。
基材としては、プラスチック、金属、塗装鋼板などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。(A-1)成分としてベンゾフェノンおよびベンゾフェノン誘導体からなる群から選択される少なくとも1つを用いる場合は、難接着な材質の基材であるポリプロピレン等のポリオレフィンに対して特に効果を有する。
【0046】
本発明に係る組成物を基材に塗布した際に、硬化性樹脂組成物の接着性を発現させるために、ウェットの状態で当該塗布によって得られる塗膜の厚さが10μm以下であることが好ましい。組成物は、綿棒や噴霧などで塗布し、意図的に組成物を基材表面に広げることもできる。また、組成物を塗布した後、意図的に組成物を乾燥させてドライの状態の塗膜にしても良い。特に、(A-1)成分であるベンゾフェノンおよびベンゾフェノン誘導体からなる群から選択される少なくとも1つを用いる場合は、組成物を基材に塗布した後、(C)成分を乾燥してから活性エネルギー線を積算光量で照射することが好ましい。乾燥温度としては10~40℃が好ましく、乾燥時間としては1秒~10分が好ましい。
【0047】
組成物を基材に塗布した後の組成物が塗布された領域の確認方法としては、ブラックライトで確認する。ブラックライトとしては、アズワン株式会社製のハンディーUVランプ SLUV-4などが使用できるがこれらに限定されるものではない。本発明ではブラックライトを組成物が塗布された領域に当てることで塗膜が白く浮き上がって見える。また、(C)成分が乾燥していない状態または乾燥した状態でも、組成物が塗布された領域を確認することができる。
【0048】
また、本発明の基材の接着方法では、第一基材及び第二基材を用意し、組成物を第一基材に塗布し、硬化性樹脂組成物を使用して第二基材を第一基材に接着する。第一基材及び第二基材の具体例は、上記基材の具体例と同様である。第一基材及び第二基材は、同じ基材を用いてもよいし、異なる基材を用いてもよい。また、組成物を第一基材に塗布した後に、(C)成分を上記温度及び時間で乾燥させてもよい。
第二基材及び第一基材は、硬化性樹脂組成物で接着する。硬化性樹脂組成物の成分によって、室温で放置して接着及び硬化させることもできるが、熱風乾燥炉などで加熱することで接着及び硬化させることもできる。
【実施例0049】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。以下、表面処理成分または硬化促進成分を含む組成物を単に組成物とも呼ぶ。
【0050】
[実施例1~8、参考例1と2、比較例1~3]
組成物を調製するために下記の成分を準備した。
(A-1)成分:表面処理成分
・ベンゾフェノン(試薬)
(A-2)成分:硬化性樹脂の硬化促進成分
・2-エチルヘキサン酸銅(試薬)
(B)成分:ベンゾオキサゾール系蛍光増感剤
・ベンゾオキサゾール系蛍光増白剤(ニッカフローSC200、株式会社日本化学工業所製)
・1,4-ビス(2-ベンゾオキサゾリル)ナフタレン(蛍光増白剤)(Tinopal(登録商標)OB CO、BASF社製)
・2,5-ビス(5-tert-ブチル-2-ベンゾオキサゾリル)チオフェン(Tinopal(登録商標)OB、BASF社製)
(B’)成分:(B)成分に属さない下記の化合物
・クマリン系蛍光増白剤(ニッカフローMCT、株式会社日本化学工業所製)
・蛍光染料(Kayaset Flavine FG、日本化薬株式会社製)
・蛍光増白剤(Kayalight OS、日本化薬株式会社製)
(C)成分:溶剤
・アセトン(試薬)
・n-ヘキサン(試薬)
その他成分
・3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM-503、信越化学工業株式会社製)
【0051】
実施例1~5、参考例1、比較例1~3の組成物を調製するため、(C)成分を容器に秤量した後、(A-1)成分を秤量して容器に投入して、(A-1)成分が溶解するまで10分間攪拌した。(B)成分または(B’)成分を秤量して容器に投入して30分間撹拌した。(C)成分が揮発した場合は、揮発分を追加した。詳細な調製量は表1に従い、数値は全て質量部で表記した。
なお、参考例1では、(B)成分及び(B’)成分は用いなかった。
【0052】
【表1】
【0053】
実施例1~5、参考例1、比較例1~3の組成物に対して、後述の溶解性確認、外観確認、蛍光確認1、引張せん断接着強さ測定1を行い、その結果を表2にまとめた。
【0054】
[溶解性確認]
組成物を調製して25℃雰囲気下で10分間放置し、無色透明な容器の底を目視で確認し、下記の評価基準に従い表2の「溶解性」の行に結果を記載した。(A-1)成分及び(B)成分に偏りがでないためにも、結果は「A」であることが好ましい。下記の外観確認、蛍光確認1および蛍光確認2において、評価基準が「A」であっても「上澄液」という表現を用いた。
評価基準
A:残留物が無かった(完全に溶けた)。
B:若干残留物が有った(溶け残りがあった)。
C:かなりの残留物が有った(全く溶けなかった)。
【0055】
[外観確認]
組成物を調製して25℃雰囲気下で10分間放置し、容器の液体部分である上澄液を目視で確認して表2の「外観」の行に結果を記載した。(A-1)成分及び(B)成分に偏りがでないためにも、上澄液は透明であることが好ましい。
【0056】
[蛍光確認1]
外観確認で得られた上澄液を基材であるポリプロピレン板上に綿棒で塗布して25℃雰囲気下で30秒静置した。その後、高圧水銀灯で照射するベルトコンベアー式紫外線照射器により積算光量30kJ/mを塗布面に照射して、さらに1分間放置した。その後、ブラックライトをポリプロピレン板に当てて目視で確認し、下記の評価基準に従い表2の「蛍光発光1」の行に結果を記載した。目視にて上澄液を塗布したことが確実に判断できるために、結果は「A」であることが好ましい。
評価基準
A:発光した。
C:発光しなかった。
【0057】
[引張せん断接着強さ測定1]
基材として幅25mm×厚さ2.0mm×長さ100mmのポリプロピレン板を2枚用意し、基材の表面に組成物を綿棒で擦りつけることで塗布し、25℃雰囲気下で30秒静置した。その後、塗布面に高圧水銀灯で照射するベルトコンベアー式紫外線照射器により積算光量30kJ/mを照射して表面改質を行った。硬化性樹脂組成物として二液型エポキシ樹脂組成物を使用した。本剤はビスフェノールA型エポキシ樹脂、硬化剤はトリエチレンテトラミンであり、本剤:硬化剤を100:13で混合した。本剤と硬化剤の混合物は混合後10分以内に使用した。一方の表面改質済みの基材の表面改質面に硬化性樹脂組成物を塗布し、もう一方の表面改質済みの基材の表面改質面を幅25mm×長さ10mmの接着面になる用に貼り合わせて治具で固定した。その後、熱風乾燥炉で100℃雰囲気下で1時間放置してテストピースを作製した。放置後の試験片を取り出して常温に戻ったことを確認して、引張試験機のチャックでテストピースの両端を固定し、せん断方向に10mm/minの速度で測定を行い、最大強度と接着面積から「せん断接着力1(MPa)」を計算した。表面改質が確実に行われているために、せん断接着力は3.0MPa以上であることが好ましい。ちなみに、ポリプロピレン板を表面改質しないで、二液型エポキシ樹脂組成物によりせん断接着強さを測定すると、せん断接着力は0.4MPaであった。
【0058】
【表2】
【0059】
表2は加熱や活性エネルギー線の照射により基材表面の改質を行う表面処理成分を含む組成物の検証を行った結果である。実施例1~5では(B)成分としてベンゾオキサゾール系蛍光増感剤を添加しているが、アセトン、n-ヘキサンという2種類の溶剤に対する溶解性が良好であると共に蛍光発光が発現することが確認された。一方、(B’)成分を使用した比較例1~3では溶解性は良好であるものもあったが、蛍光発光は発現しなかった。(B)成分及び(B’)成分を含まない参考例1では蛍光発光が発現しなかった。
【0060】
実施例6~8、参考例2の組成物を調製するため、(C)成分を容器に秤量した後、(A-2)成分およびその他成分を秤量して容器に投入して、(A-2)成分が溶解するまで10分間攪拌した。(B)成分を秤量して容器に投入して30分間撹拌した。(C)成分が揮発した場合は、揮発分を追加した。詳細な調製量は表3に従い、数値は全て質量部で表記した。
なお、参考例2では、(B)成分及び(B’)成分は用いなかった。
【0061】
【表3】
【0062】
実施例6~8、参考例2の組成物に対して、後述の溶解性確認、外観確認、蛍光確認2、引張せん断接着強さ測定2を行い、その結果を表4にまとめた。溶解性確認、外観確認は前記と同様の方法で行った。蛍光確認2、引張せん断接着強さ測定2は、下記の通り行った。
【0063】
[蛍光確認2]
外観確認で得られた上澄液を基材であるポリプロピレン板上に綿棒で塗布して25℃雰囲気下で1分放置した。その後、ブラックライトをポリプロピレン板に当てて目視で確認し、下記の評価基準に従い表4の「蛍光発光2」の行に結果を記載した。目視にて上澄液を塗布したことが確実に判断できるために、結果は「A」であることが好ましい。
評価基準
A:発光した
C:発光しなかった
【0064】
[引張せん断接着強さ測定2]
基材として幅25mm×厚さ1.6mm×長さ100mmのSPCC(Steel Plate Cold Commercial)板を2枚用意し、基材の接着領域の表面に組成物を綿棒で擦りつけることで塗布し、25℃雰囲気下で30秒静置した。硬化性樹脂組成物として1液型の嫌気硬化性組成物である「株式会社スリーボンド製 ThreeBond 1357K」を使用した。一方の基材の接着領域に硬化性樹脂組成物を塗布し、もう一方の基材の接着領域を幅25mm×長さ10mmの接着面になる様に貼り合わせて治具で固定した。25℃雰囲気下で1時間放置してテストピースを作製した。引張試験機のチャックでテストピースの両側を固定し、せん断方向に10mm/minの速度で測定を行い、最大強度と接着面積から「せん断接着力2(MPa)」を計算した。硬化促進が確実に行われれば、せん断接着力は3.0MPa以上であることが好ましい。
【0065】
【表4】
【0066】
表4は硬化促進成分を含む組成物の検証を行った結果である。実施例6~8では(B)成分としてベンゾオキサゾール系蛍光増感剤を添加しているが、アセトンに対する溶解性が良好であると共に蛍光発光が発現することが確認された。(B)成分及び(B’)成分を含まない参考例2は蛍光発光が発現しなかった。
【0067】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は2023年7月27日出願の日本特許出願(特願2023-122864)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
ウェットの状態で組成物が不透明であると被着体に塗布した際に外観不良になる。また、組成物を大量に塗布した際に視認ができない様では取り扱いに支障が出る。本発明に係る組成物は、組成物自体が透明であり、少量の塗布でもブラックライトにより容易に視認が出来ることから、取り扱いが良好な被着体の表面処理剤および硬化性樹脂組成物の硬化促進剤である。