(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025019109
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】粘着シート
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20250130BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20250130BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J201/00
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024201701
(22)【出願日】2024-11-19
(62)【分割の表示】P 2021551129の分割
【原出願日】2020-05-22
(31)【優先権主張番号】P 2019183566
(32)【優先日】2019-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 忠知
(72)【発明者】
【氏名】高野 健
(72)【発明者】
【氏名】田久 真也
(57)【要約】
【課題】エキスパンド工程で粘着シートを展延させて半導体チップ間の距離を拡張させる際に、粘着シートの面内方向での伸び量の差を小さくでき、拡張性に優れる粘着シートを提供すること。
【解決手段】基材10と粘着剤層20とを有する粘着シート1から幅25mmの第一の試験片を作製し、第一の試験片の長手方向両端を掴み具で把持して引張試験機による0.5mm引張り時の引張強度F
A1と、縦寸法が45mm、横寸法が35mm、厚さ寸法が0.625mmである半導体チップCP1及び半導体チップCP2のうち、第一の試験片の長手方向の一端側に半導体チップCP1を貼着し、当該長手方向の他端側に半導体チップCP2を貼着して第二の試験片を作製して、第二の試験片の長手方向の両端を掴み具で把持して引張試験機による0.5mm引張り時の引張強度F
B1と、が、数式(数1A)を満たす粘着シート。F
B1/F
A1≦30…(数1A)
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着シートであって、
基材と、粘着剤層と、を有し、
前記粘着シートから幅25mmの第一の試験片を作製して、前記第一の試験片の長手方向のそれぞれの両端における前記基材及び前記粘着剤層を掴み具で把持して引張試験機による0.5mm引張り時の引張強度FA1と、
縦寸法が45mmであり、横寸法が35mmであり、厚さ寸法が0.625mmである第一の半導体チップ及び第二の半導体チップを前記第一の半導体チップ及び第二の半導体チップの縦寸法が45mmである辺を、前記第一の試験片の長手方向に沿わせ、前記第一の半導体チップと前記第二の半導体チップとの間隔を35μmとして、前記第一の試験片の長手方向の一端側の粘着剤層に前記第一の半導体チップを貼着し、前記第一の試験片の長手方向の他端側の粘着剤層に前記第二の半導体チップを貼着して第二の試験片を作製して、前記第二の試験片の長手方向のそれぞれの両端における前記基材、前記粘着剤層及び前記半導体チップを掴み具で把持して引張試験機による0.5mm引張り時の引張強度FB1と、が、下記数式(数1A)の関係を満たす、
粘着シート。
FB1/FA1≦30 …(数1A)
【請求項2】
請求項1に記載の粘着シートにおいて、
前記引張強度FA1と、前記引張強度FB1と、が、下記数式(数1B)の関係を満たす、
粘着シート。
1≦FB1/FA1≦30 …(数1B)
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の粘着シートにおいて、
前記第一の試験片のヤング率YA1と、前記第二の試験片のヤング率YB1と、が、下記数式(数2A)の関係を満たす、
粘着シート。
YB1/YA1≦19 …(数2A)
【請求項4】
粘着シートであって、
基材と、粘着剤層と、を有し、
前記粘着シートから幅15mmの第一の試験片を作製して、前記第一の試験片の長手方向のそれぞれの両端における前記基材及び前記粘着剤層を掴み具で把持して引張試験機による0.5mm引張り時の引張強度FA1と、
縦寸法が35mmであり、横寸法が25mmであり、厚さ寸法が0.350mmである第一の半導体チップ及び第二の半導体チップを前記第一の半導体チップ及び第二の半導体チップの縦寸法が35mmである辺を、前記第一の試験片の長手方向に沿わせ、前記第一の半導体チップと前記第二の半導体チップとの間隔を35μmとして、前記第一の試験片の長手方向の一端側の粘着剤層に前記第一の半導体チップを貼着し、前記第一の試験片の長手方向の他端側の粘着剤層に前記第二の半導体チップを貼着して第二の試験片を作製して、前記第二の試験片の長手方向のそれぞれの両端における前記基材、前記粘着剤層及び前記半導体チップを掴み具で把持して引張試験機による0.5mm引張り時の引張強度FB1と、が、下記数式(数1A)の関係を満たす、
粘着シート。
FB1/FA1≦30 …(数1A)
【請求項5】
請求項4に記載の粘着シートにおいて、
前記引張強度FA1と、前記引張強度FB1と、が、下記数式(数1B)の関係を満たす、
粘着シート。
1≦FB1/FA1≦30 …(数1B)
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の粘着シートにおいて、
前記第一の試験片のヤング率YA1と、前記第二の試験片のヤング率YB1と、が、下記数式(数2A)の関係を満たす、
粘着シート。
YB1/YA1≦19 …(数2A)
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の粘着シートにおいて、
前記粘着剤層は、アクリル系粘着剤を含有する、
粘着シート。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の粘着シートにおいて、
前記基材は、ウレタン系エラストマーを含有する、
粘着シート。
【請求項9】
半導体装置の製造工程中、複数の半導体チップ同士の間隔を拡張するためのエキスパンド工程に使用される、
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、軽量化、及び高機能化が進んでいる。電子機器に搭載される半導体装置にも、小型化、薄型化、及び高密度化が求められている。半導体チップは、そのサイズに近いパッケージに実装されることがある。このようなパッケージは、チップスケールパッケージ(Chip Scale Package;CSP)と称されることもある。CSPの一つとして、ウエハレベルパッケージ(Wafer Level Package;WLP)が挙げられる。WLPにおいては、ダイシングにより個片化する前に、ウエハに外部電極等を形成し、最終的にはウエハをダイシングして、個片化する。WLPとしては、ファンイン(Fan-In)型とファンアウト(Fan-Out)型が挙げられる。ファンアウト型のWLP(以下、「FO-WLP」と略記する場合がある。)においては、半導体チップを、チップサイズよりも大きな領域となるように封止部材で覆って半導体チップ封止体を形成し、再配線層や外部電極を、半導体チップの回路面だけでなく封止部材の表面領域においても形成する。
【0003】
例えば、特許文献1には、半導体ウエハから個片化された複数の半導体チップについて、その回路形成面を残し、モールド部材を用いて周りを囲んで拡張ウエハを形成し、半導体チップ外の領域に再配線パターンを延在させて形成する半導体パッケージの製造方法が記載されている。特許文献1に記載の製造方法において、個片化された複数の半導体チップをモールド部材で囲う前に、エキスパンド用のウエハマウントテープに貼り替え、ウエハマウントテープを展延して複数の半導体チップの間の距離を拡大させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エキスパンド工程においては、複数の半導体チップが貼着されているテープ又はシートを展延させて、半導体チップ同士の間隔を拡大させる。シートを引っ張って展延させる際に、シート面内で伸び量が異なると、半導体チップ同士の間隔も均等に拡大させ難い。
【0006】
本発明の目的は、エキスパンド工程で粘着シートを展延させて半導体チップ間の距離を拡張させる際に、粘着シートの面内方向での伸び量の差を小さくでき、拡張性に優れる粘着シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る粘着シートは、基材と、粘着剤層と、を有し、
前記粘着シートから幅25mmの第一の試験片を作製して、前記第一の試験片の長手方向のそれぞれの両端における前記基材及び前記粘着剤層を掴み具で把持して引張試験機による0.5mm引張り時の引張強度FA1と、
縦寸法が45mmであり、横寸法が35mmであり、厚さ寸法が0.625mmである第一の半導体チップ及び第二の半導体チップを前記第一の半導体チップ及び第二の半導体チップの縦寸法が45mmである辺を、前記第一の試験片の長手方向に沿わせ、前記第一の半導体チップと前記第二の半導体チップとの間隔を35μmとして、前記第一の試験片の長手方向の一端側の粘着剤層に前記第一の半導体チップを貼着し、前記第一の試験片の長手方向の他端側の粘着剤層に前記第二の半導体チップを貼着して第二の試験片を作製して、前記第二の試験片の長手方向のそれぞれの両端における前記基材、前記粘着剤層及び前記半導体チップを掴み具で把持して引張試験機による0.5mm引張り時の引張強度FB1と、が、下記数式(数1A)の関係を満たす。
FB1/FA1≦30 …(数1A)
【0008】
本発明の一態様に係る粘着シートは、基材と、粘着剤層と、を有し、
前記粘着シートから幅15mmの第一の試験片を作製して、前記第一の試験片の長手方向のそれぞれの両端における前記基材及び前記粘着剤層を掴み具で把持して引張試験機による0.5mm引張り時の引張強度FA1と、
縦寸法が35mmであり、横寸法が25mmであり、厚さ寸法が0.350mmである第一の半導体チップ及び第二の半導体チップを前記第一の半導体チップ及び第二の半導体チップの縦寸法が35mmである辺を、前記第一の試験片の長手方向に沿わせ、前記第一の半導体チップと前記第二の半導体チップとの間隔を35μmとして、前記第一の試験片の長手方向の一端側の粘着剤層に前記第一の半導体チップを貼着し、前記第一の試験片の長手方向の他端側の粘着剤層に前記第二の半導体チップを貼着して第二の試験片を作製して、前記第二の試験片の長手方向のそれぞれの両端における前記基材、前記粘着剤層及び前記半導体チップを掴み具で把持して引張試験機による0.5mm引張り時の引張強度FB1と、が、下記数式(数1A)の関係を満たす。
FB1/FA1≦30 …(数1A)
【0009】
本発明の一態様に係る粘着シートにおいて、前記引張強度FA1と、前記引張強度FB1と、が、下記数式(数1B)の関係を満たすことが好ましい。
1≦FB1/FA1≦30 …(数1B)
【0010】
本発明の一態様に係る粘着シートにおいて、前記第一の試験片のヤング率YA1と、前記第二の試験片のヤング率YB1と、が、下記数式(数2A)の関係を満たすことが好ましい。
YB1/YA1≦19 …(数2A)
【0011】
本発明の一態様に係る粘着シートにおいて、前記粘着剤層は、アクリル系粘着剤を含有することが好ましい。
【0012】
本発明の一態様に係る粘着シートにおいて、前記基材は、ウレタン系エラストマーを含有することが好ましい。
【0013】
本発明の一態様に係る粘着シートは、半導体装置の製造工程中、複数の半導体チップ同士の間隔を拡張するためのエキスパンド工程に使用されることが好ましい。
【0014】
本発明の一態様によれば、エキスパンド工程で粘着シートを展延させて半導体チップ間の距離を拡張させる際に、粘着シートの面内方向での伸び量の差を小さくでき、拡張性に優れる粘着シートを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】一実施形態に係る粘着シートの断面概略図である。
【
図2】第一の試験片を引張試験機の掴み具で把持した状態を示す概略図である。
【
図3】第二の試験片を引張試験機の掴み具で把持した状態を示す概略図である。
【
図4】実施例で使用した2軸延伸エキスパンド装置を説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔第一実施形態〕
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0017】
[粘着シート]
本実施形態に係る粘着シートは、基材と、粘着剤層と、を有する。粘着シートの形状は、例えば、テープ状(長尺の形態)、及びラベル状(枚葉の形態)等、あらゆる形状をとり得る。
図1は、本実施形態に係る粘着シートの一例の断面概略図である。
図1には、基材10及び粘着剤層20を有する粘着シート1が記載されている。
【0018】
本実施形態に係る粘着シートは、当該粘着シートから作製した第一の試験片及び第二の試験片を、引張試験機で測定した引張強度の比が所定の範囲を満たす。
【0019】
(第一の試験片)
第一の試験片は、本実施形態に係る粘着シートから作製される。第一の試験片の幅は、25mmである。第一の試験片の長さは、特に限定されないが、第一の試験片を引張試験機の一対の掴み具で把持する際に当該掴み具間の距離を50mmに設定できる程度の長さであればよい。
【0020】
図2は、第一の試験片の一端側における基材10及び粘着剤層20を引張試験機の第一の掴み具101で把持し、第一の試験片の他端側における基材10及び粘着剤層20を引張試験機の第二の掴み具102で把持した状態を示す概略図である。
【0021】
(第二の試験片)
第二の試験片は、本実施形態に係る粘着シートから作製された第一の試験片に2つの半導体チップを貼着することにより作製される。本実施形態においては、この2つの半導体チップは、第一の半導体チップ及び第二の半導体チップである。第一の半導体チップ及び第二の半導体チップは、いずれも、縦寸法が45mmであり、横寸法が35mmであり、厚さ寸法が0.625mmである。
第一の半導体チップ及び第二の半導体チップの縦寸法が45mmである辺を、第一の試験片の長手方向に沿わせて貼着する。
第一の半導体チップは、第一の試験片の長手方向の一端側に貼着される。第二の半導体チップは、第一の試験片の長手方向の他端側に貼着される。第一の試験片に貼着された第一の半導体チップと第二の半導体チップとの間隔を35μmとする。
第一の半導体チップ及び第二の半導体チップは、シリコンウエハを前述の寸法にダイシングしたチップでもよいし、ガリウム・砒素等の化合物半導体ウエハを前述の寸法にダイシングしたチップでもよい。
【0022】
図3は、第二の試験片の一端側における基材10、粘着剤層20及び第一の半導体チップCP1を引張試験機の第一の掴み具101で把持し、第二の試験片の他端側における基材10、粘着剤層20及び第二の半導体チップCP2を引張試験機の第二の掴み具102で把持した状態を示す概略図である。
【0023】
(引張強度)
本実施形態に係る粘着シートは、引張試験機を用いて測定した第一の試験片及び第二の試験片の引張強度が、下記数式(数1A)の関係を満たす。
FB1/FA1≦30 …(数1A)
【0024】
前記数式(数1A)において、引張強度FA1は、第一の試験片の長手方向のそれぞれの両端における基材及び粘着剤層を掴み具で把持して引張試験機による0.5mm引張り時の強度である。
【0025】
前記数式(数1A)において、引張強度FB1は、第二の試験片の長手方向のそれぞれの両端における基材、粘着剤層及び半導体チップを掴み具で把持して引張試験機による0.5mm引張り時の強度である。
【0026】
本実施形態において、引張試験機を用いて引張強度を測定する際の第一の試験片及び第二の試験片を把持する掴み具間の距離は、50mmであることが好ましい。掴み具間の距離とは、引張試験開始前の初期の距離である。
本実施形態において、引張試験機を用いて引張強度を測定する際の引張速度は、50mm/分であることが好ましい。
【0027】
本発明者らは、粘着シートの半導体チップが貼着されていない部位と、半導体チップが貼着されている部位とで、エキスパンド(展延)した際に、粘着シートの延び方の挙動が異なることを見出した。また、本発明者らは、従来の粘着シートにおいては、粘着シートの半導体チップが貼着されていない部位の引張強度と、半導体チップが貼着されている部位の引張強度とが、大きく異なり、エキスパンド工程で粘着シートを展延させて半導体チップ間の距離を拡大させる際に、粘着シートの面内方向での伸び量の差が大きいことも見出した。
本実施形態に係る粘着シートによれば、FB1/FA1が30以下であり、粘着シートの半導体チップが貼着されていない部位の引張強度と、半導体チップが貼着されている部位の引張強度との比FB1/FA1が小さい。そのため、本実施形態に係る粘着シートによれば、エキスパンド工程で粘着シートを展延させて半導体チップ間の距離を拡張させる際に、粘着シートの面内方向での伸び量の差が小さくなり、拡張性に優れ、半導体チップ間の距離のばらつきを小さくできる。
なお、引張強度FA1及びFB1を測定する際の0.5mmという引張量は、エキスパンド工程における引張量の一つの目安である。そのため、本実施形態に係る粘着シートは、0.5mmよりも小さい引張量のエキスパンド工程で使用してもよいし、0.5mmよりも大きい引張量のエキスパンド工程で使用してもよい。
本実施形態に係る粘着シートによれば、0.5mm引張り時のFB1/FA1が30以下であるので、0.5mmよりも大きく延伸させるエキスパンド工程に本実施形態に係る粘着シートを用いた際に、粘着シートの半導体チップが貼着されていない部位と、半導体チップが貼着されている部位の引張強度との伸び量の差が過度に大きくなることも抑制できる。
【0028】
本実施形態に係る粘着シートにおいて、FB1/FA1が1以上であることが好ましい。
本実施形態に係る粘着シートは、引張試験機を用いて測定した第一の試験片の引張強度FA1及び第二の試験片の引張強度FB1が、下記数式(数1B)の関係を満たすことが好ましい。
1≦FB1/FA1≦30 …(数1B)
【0029】
本実施形態に係る粘着シートは、引張試験機を用いて測定した第一の試験片の引張強度FA1及び第二の試験片の引張強度FB1が、下記数式(数1C)の関係を満たすことも好ましい。
FB1/FA1≦20 …(数1C)
【0030】
FB1/FA1の値を前記数式(数1A)、数式(数1B)又は数式(数1C)の範囲内に調整する方法としては、以下のような方法が挙げられる。FB1/FA1の値は、例えば、粘着剤層20に用いる粘着剤組成物の組成を変更すること、粘着剤層の厚さを変更すること、基材の材質を変更すること、並びに基材の厚さを変更すること等の1つ又は2つ以上を組み合わせることによって、前記数式(数1A)、数式(数1B)又は数式(数1C)の範囲内に調整できる。
【0031】
(ヤング率)
本実施形態に係る粘着シートにおいて、第一の試験片のヤング率YA1と、第二の試験片のヤング率YB1と、が、下記数式(数2A)の関係を満たすことが好ましい。
YB1/YA1≦19 …(数2A)
上記数式(数2A)の関係を満たすことにより、粘着シートの半導体チップが貼着されていない部位のヤング率と、半導体チップが貼着されている部位のヤング率との比YB1/YA1が小さい。そのため、エキスパンド工程で粘着シートを展延させて半導体チップ間の距離を拡張させる際に、粘着シートの面内方向での伸び量の差を小さくし易い。また、上記数式(数2A)の関係を満たすことにより、引張量が0.5mmより大きいエキスパンド工程で粘着シートを使用しても、YB1/YA1の値が過度に大きくなることを抑制できる。
粘着シートのヤング率は、後述する実施例に記載の測定方法に従って測定できる。
【0032】
(基材)
前記基材は、第一の基材面と、第一の基材面とは反対側の第二の基材面とを有することが好ましい。例えば、
図1に示すように、粘着シート1の基材10は、第一の基材面11と、第一の基材面11とは反対側の第二の基材面12とを有する。
本実施形態の粘着シートにおいて、本実施形態に係る粘着剤層が、第一の基材面及び第二の基材面の一方の面に設けられていることが好ましい。
【0033】
基材の材料は、大きく延伸させ易いという観点から、熱可塑性エラストマー、またはゴム系材料であることが好ましく、熱可塑性エラストマーであることがより好ましい。
【0034】
熱可塑性エラストマーとしては、ウレタン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、スチレン系エラストマー、アクリル系エラストマー、及びアミド系エラストマー等が挙げられる。熱可塑性エラストマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。熱可塑性エラストマーとしては、大きく延伸させ易いという観点から、ウレタン系エラストマーを使用することが好ましい。すなわち、本実施形態に係る粘着シートにおいて、基材は、ウレタン系エラストマーを含有することが好ましい。
【0035】
基材は、上記のような材料(例えば、熱可塑性エラストマー、またはゴム系材料)からなるフィルムが、複数、積層された積層フィルムでもよい。また、基材は、上記のような材料(例えば、熱可塑性エラストマー、またはゴム系材料)からなるフィルムと、その他のフィルムとが積層された積層フィルムでもよい。
【0036】
基材は、上記の樹脂系材料を主材料とするフィルム内に、添加剤を含んでいてもよい。
添加剤としては、例えば、顔料、染料、難燃剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、及びフィラー等が挙げられる。顔料としては、例えば、二酸化チタン、及びカーボンブラック等が挙げられる。また、フィラーとしては、メラミン樹脂のような有機系材料、ヒュームドシリカのような無機系材料、及びニッケル粒子のような金属系材料が例示される。こうした添加剤の含有量は特に限定されないが、基材が所望の機能を発揮し得る範囲に留めることが好ましい。
【0037】
基材は、第一の基材面及び第二の基材面の少なくともいずれかに積層される粘着剤層との密着性を向上させる目的で、所望により片面または両面に、表面処理、またはプライマー処理が施されていてもよい。表面処理としては、酸化法、及び凹凸化法等が挙げられる。プライマー処理としては、基材表面にプライマー層を形成する方法が挙げられる。酸化法としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、クロム酸化処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン処理、及び紫外線照射処理等が挙げられる。凹凸化法としては、例えば、サンドブラスト法、及び溶射処理法等が挙げられる。
【0038】
粘着剤層がエネルギー線硬化性粘着剤を含有する場合、基材は、エネルギー線に対する透過性を有することが好ましい。エネルギー線として紫外線を用いる場合には、基材は、紫外線に対して透過性を有することが好ましい。エネルギー線として電子線を用いる場合には、基材は、電子線の透過性を有することが好ましい。
【0039】
基材の厚さは、粘着シートが所望の工程において適切に機能できる限り、限定されない。基材の厚さは、20μm以上であることが好ましく、40μm以上であることがより好ましい。また、基材の厚さは、250μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましい。
【0040】
また、基材の第一の基材面または第二の基材面の面内方向において2cm間隔で複数箇所の厚さを測定した際の、基材の厚さの標準偏差は、2μm以下であることが好ましく、1.5μm以下であることがより好ましく、1μm以下であることがさらに好ましい。当該標準偏差が2μm以下であることで、粘着シートは、精度の高い厚さを有しており、粘着シートを均一に延伸することが可能となる。
【0041】
23℃において基材のMD方向及びCD方向の引張弾性率が、それぞれ10MPa以上、350MPa以下であり、23℃において基材のMD方向及びCD方向の100%応力が、それぞれ3MPa以上、20MPa以下であることが好ましい。
引張弾性率及び100%応力が上記範囲であることで、粘着シートを大きく延伸することが可能となる。
基材の100%応力は、次のようにして得られる値である。100mm(長さ方向)×15mm(幅方向)の大きさの試験片を基材から切り出す。切り出した試験片の長さ方向の両端を、掴み具間の長さが50mmとなるように掴み具でつかむ。掴み具で試験片をつかんだ後、速度200mm/minで長さ方向に引張り、掴み具間の長さが100mmとなったときの引張力の測定値を読み取る。基材の100%応力は、読み取った引張力の測定値を、基材の断面積で除算することで得られる値である。基材の断面積は、幅方向長さ15mm×基材(試験片)の厚みで算出される。当該切り出しは、基材の製造時における流れ方向(MD方向)またはMD方向に直交する方向(CD方向)と、試験片の長さ方向とが一致するように行う。なお、この引張試験において、試験片の厚さは特別に制限されず、試験の対象とする基材の厚さと同じであってよい。
【0042】
23℃において基材のMD方向及びCD方向の破断伸度が、それぞれ100%以上であることが好ましい。
基材のMD方向及びCD方向の破断伸度が、それぞれ100%以上であることで、破断が生じることなく、粘着シートを大きく延伸することが可能となる。
【0043】
基材の引張弾性率(MPa)及び基材の破断伸度(%)は、次のようにして測定できる。基材を15mm×140mmに裁断して試験片を得る。当該試験片について、JIS K7161:2014及びJIS K7127:1999に準拠して、23℃における破断伸度及び引張弾性率を測定する。具体的には、上記試験片を、引張試験機(株式会社島津製作所製,製品名「オートグラフAG-IS 500N」)にて、チャック間距離100mmに設定した後、200mm/minの速度で引張試験を行い、破断伸度(%)及び引張弾性率(MPa)を測定する。なお、測定は、基材の製造時の流れ方向(MD)及びこれに直角の方向(CD)の双方で行う。
【0044】
(粘着剤層)
本実施形態に係る粘着シートにおいて、粘着剤層は、前述した数式(数1A)の関係を満たす限り、特に限定されない。前述した数式(数1A)の関係の範囲を満たすように、粘着剤層を構成する材料を、例えば、以下に説明する材料の中から適宜選択して配合することができる。
例えば、粘着剤層に用いる粘着剤としては、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤及びウレタン系粘着剤が挙げられる。
【0045】
本実施形態に係る粘着シートにおいて、粘着剤層は、アクリル系粘着剤を含有することが好ましい。
【0046】
・エネルギー線硬化性樹脂(a1)
粘着剤層は、エネルギー線硬化性樹脂(a1)を含有することが好ましい。エネルギー線硬化性樹脂(a1)は、分子内に、エネルギー線硬化性の二重結合を有する。
エネルギー線硬化性樹脂を含有する粘着剤層は、エネルギー線照射により硬化して粘着力が低下する。被着体と粘着シートとを分離したい場合、エネルギー線を粘着剤層に照射することにより、容易に分離できる。
【0047】
エネルギー線硬化性樹脂(a1)は、(メタ)アクリル系樹脂であることが好ましい。
【0048】
エネルギー線硬化性樹脂(a1)は、紫外線硬化性樹脂であることが好ましく、紫外線硬化性の(メタ)アクリル系樹脂であることがより好ましい。
【0049】
エネルギー線硬化性樹脂(a1)は、エネルギー線の照射を受けると重合硬化する樹脂である。エネルギー線としては、例えば、紫外線、及び電子線等が挙げられる。
エネルギー線硬化性樹脂(a1)の例としては、エネルギー線重合性基を有する低分子量化合物(単官能のモノマー、多官能のモノマー、単官能のオリゴマー、及び多官能のオリゴマー)が挙げられる。エネルギー線硬化性樹脂(a1)は、具体的には、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、1,4-ブチレングリコールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート等のアクリレート、ジシクロペンタジエンジメトキシジアクリレート、イソボルニルアクリレート等の環状脂肪族骨格含有アクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、オリゴエステルアクリレート、ウレタンアクリレートオリゴマー、エポキシ変性アクリレート、ポリエーテルアクリレート、イタコン酸オリゴマー等のアクリレート系化合物が用いられる。
【0050】
エネルギー線硬化性樹脂(a1)は、下記一般式(11)で表されるエチレングリコール単位を1以上有することも好ましい。
【0051】
【0052】
(前記一般式(11)中、mは、1以上である。)
【0053】
エネルギー線硬化性樹脂(a1)が下記一般式(11)で表されるエチレングリコール単位を2以上有する場合、2以上のmは、互いに同一であるか又は異なる。
【0054】
前記一般式(11)中のmは、2以上であることが好ましい。
【0055】
エネルギー線硬化性樹脂(a1)が柔軟なポリエチレングリコール鎖を有することで、硬化前の粘着剤層が変形し易くなり、硬化後の粘着剤層の架橋密度が適度に低下し、粘着剤層が破断し難くなる。
【0056】
エネルギー線硬化性樹脂(a1)が一分子当たり有するエチレングリコール単位の数は、3以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましい。
【0057】
また、一実施形態においては、エネルギー線硬化性樹脂(a1)が一分子当たり有するエチレングリコール単位の数は、10以上であることも好ましく、30以上であることもより好ましく、50以上であることもさらに好ましい。
【0058】
エネルギー線硬化性樹脂(a1)が一分子当たり有するエチレングリコール単位の数は、100以下であることが好ましく、90以下であることがさらに好ましく、80以下であることがさらに好ましい。
【0059】
エネルギー線硬化性樹脂(a1)は、さらに、エネルギー線硬化性の官能基を3以上有することが好ましく、4以上有することがより好ましい。エネルギー線硬化性樹脂(a1)が有するエネルギー線硬化性の官能基の数が3以上であれば、糊残りをさらに抑制し易くなる。
【0060】
エネルギー線硬化性樹脂(a1)は、一般式(11)で表されるエチレングリコール単位とエネルギー線硬化性の官能基とが直接結合した基を有することが好ましい。
【0061】
エネルギー線硬化性樹脂(a1)は、下記一般式(11A)で表されるエチレングリコール単位を含有する基を1以上有することが好ましい。
【0062】
【0063】
(前記一般式(11A)中、mは、1以上であり、Rは、水素原子又はメチル基である。)
【0064】
エネルギー線硬化性樹脂(a1)が前記一般式(11A)で表される基を有する場合、一分子中の前記一般式(11A)で表される基の数は、3以上であることが好ましく、4以上であることがより好ましい。
エネルギー線硬化性樹脂(a1)が一分子中に有する前記一般式(11A)で表される基の数が、3以上であれば、糊残りをさらに抑制し易くなる。
エネルギー線硬化性樹脂(a1)が前記一般式(11A)で表される基を有する場合、一分子中の前記一般式(11A)で表される基の数は、10以下であることが好ましく、9以下であることがより好ましく、8以下であることがさらに好ましい。
【0065】
エネルギー線硬化性樹脂(a1)は、エチレングリコール単位と、さらに、グリセリン骨格を1以上有することが好ましい。エネルギー線硬化性樹脂(a1)は、エチレングリコール単位と、ポリグリセリン骨格とを有することも好ましい。
【0066】
エネルギー線硬化性樹脂(a1)が、飽和炭化水素骨格のような炭素-炭素結合系よりも、エーテル結合を多数有し、かつ多官能化できるグリセリン骨格を有することで、粘着剤層がさらに変形し易くなり、同時に良好な硬化性を実現できる。
【0067】
エネルギー線硬化性樹脂(a1)は、下記一般式(12)で表されることもが好ましい。
【0068】
【0069】
(前記一般式(12)中、
nは、1以上であり、
R1、R2及びR3は、それぞれ独立に、前記エネルギー線硬化性樹脂の分子中の原子、又は基であり、
R1、R2及びR3の内、少なくとも1つは、前記一般式(11)で表されるエチレングリコール単位を1以上有する。)
【0070】
nが1であるとき、前記一般式(12)は、下記一般式(12-1)で表される。
【0071】
【0072】
(前記一般式(12-1)において、R1、R2及びR3は、前記一般式(12)におけるR1、R2及びR3と同義である。)
【0073】
nが4であるとき、前記一般式(12)は、下記一般式(12-4)で表される。
【0074】
【0075】
(前記一般式(12-4)において、
R1A、R1B、R1C及びR1Dは、それぞれ独立に、前記一般式(12)におけるR1と同義であり、
R2及びR3は、前記一般式(12)におけるR2及びR3と同義である。)
【0076】
R1、R2及びR3が、それぞれ独立に、前記一般式(11)で表されるエチレングリコール単位を1以上有することが好ましい。この場合、R1、R2及びR3におけるエチレングリコール単位の数は、互いに同一であるか又は異なる。
【0077】
R1、R2及びR3のうち少なくとも1つがエネルギー線硬化性の官能基を含む基であることが好ましく、R1、R2及びR3が、それぞれ独立に、エネルギー線硬化性の官能基を含む基であることがより好ましい。
【0078】
R1、R2及びR3が、それぞれ独立に、前記一般式(11)で表されるエチレングリコール単位を1以上有し、かつ、エネルギー線硬化性の官能基を含む基であることが好ましい。
【0079】
R1、R2及びR3が、それぞれ独立に、前記一般式(11A)で表される基であることがより好ましい。
【0080】
例えば、前記一般式(12-4)で表されるエネルギー線硬化性樹脂(a1)において、R1A、R1B、R1C、R1D、R2及びR3がエネルギー線硬化性の官能基を1つずつ有する場合、当該エネルギー線硬化性樹脂(a1)は、エネルギー線硬化性の官能基を6個有することに相当する。
【0081】
エネルギー線硬化性樹脂(a1)は、下記一般式(13)で表されることが好ましい。
【0082】
【0083】
(前記一般式(13)中、
nは、1以上であり、
R11、R12及びR13は、それぞれ独立に、前記エネルギー線硬化性樹脂の分子中の他の原子、又は基であり、
m1、m2及びm3は、それぞれ独立に、1以上である。)
【0084】
前記一般式(13)において、nが2以上である場合、2以上のm1は、互いに同一であるか又は異なり、2以上のR11は、互いに同一であるか又は異なる。
【0085】
R11、R12及びR13のうち少なくとも1つがエネルギー線硬化性の官能基を含む基であることが好ましく、R11、R12及びR13が、それぞれ独立に、エネルギー線硬化性の官能基を含む基であることがより好ましい。
【0086】
エネルギー線硬化性樹脂(a1)は、下記一般式(14)で表されることも好ましい。
【0087】
【0088】
(前記一般式(14)中、
R21、R22、R23及びR24は、それぞれ独立に、前記エネルギー線硬化性樹脂の分子中の他の原子、又は基であり、
R21、R22、R23及びR24の内、少なくとも1つは、前記一般式(11)で表されるエチレングリコール単位を1以上有する。)
【0089】
R21、R22、R23及びR24が、それぞれ独立に、前記一般式(11)で表されるエチレングリコール単位を1以上有することが好ましい。この場合、R21、R22、R23及びR24におけるエチレングリコール単位の数は、互いに同一であるか又は異なる。
【0090】
R21、R22、R23及びR24のうち少なくとも1つがエネルギー線硬化性の官能基を含む基であることが好ましく、R21、R22、R23及びR24が、それぞれ独立に、エネルギー線硬化性の官能基を含む基であることがより好ましい。
【0091】
R21、R22、R23及びR24が、それぞれ独立に、前記一般式(11)で表されるエチレングリコール単位を1以上有し、かつ、エネルギー線硬化性の官能基を含む基であることが好ましい。
【0092】
R21、R22、R23及びR24が、それぞれ独立に、前記一般式(11A)で表される基であることがより好ましい。
【0093】
エネルギー線硬化性樹脂(a1)は、下記一般式(15)で表されることも好ましい。
【0094】
【0095】
(前記一般式(15)中、
R25、R26、R27及びR28は、それぞれ独立に、前記エネルギー線硬化性樹脂の分子中の他の原子、又は基であり、
m21、m22、m23及びm24は、それぞれ独立に、1以上である。)
【0096】
R25、R26、R27及びR28のうち少なくとも1つがエネルギー線硬化性の官能基を含む基であることが好ましく、R25、R26、R27及びR28が、それぞれ独立に、エネルギー線硬化性の官能基を含む基であることがより好ましい。
【0097】
エネルギー線硬化性樹脂(a1)の分子量は、通常、100以上30000以下であり、300以上10000以下程度であることが好ましい。
【0098】
・(メタ)アクリル系共重合体(b1)
本実施形態に係る粘着剤層は、(メタ)アクリル系共重合体(b1)をさらに含んでいることが好ましい。(メタ)アクリル系共重合体は、前述したエネルギー線硬化性樹脂(a1)とは異なる。
【0099】
(メタ)アクリル系共重合体(b1)は、エネルギー線硬化性の炭素-炭素二重結合を有することが好ましい。すなわち、本実施形態において、粘着剤層は、エネルギー線硬化性樹脂(a1)と、エネルギー線硬化性の(メタ)アクリル系共重合体(b1)とを含有することが好ましい。
【0100】
本実施形態に係る粘着剤層は、(メタ)アクリル系共重合体(b1)100質量部に対し、エネルギー線硬化性樹脂(a1)を10質量部以上の割合で含有することが好ましく、20質量部以上の割合で含有することがより好ましく、25質量部以上の割合で含有することがさらに好ましい。
本実施形態に係る粘着剤層は、(メタ)アクリル系共重合体(b1)100質量部に対し、エネルギー線硬化性樹脂(a1)を80質量部以下の割合で含有することが好ましく、70質量部以下の割合で含有することがより好ましく、60質量部以下の割合で含有することがさらに好ましい。
【0101】
(メタ)アクリル系共重合体(b1)の重量平均分子量(Mw)は、1万以上であることが好ましく、15万以上であることがより好ましく、20万以上であることがさらに好ましい。
また、(メタ)アクリル系共重合体(b1)の重量平均分子量(Mw)は、150万以下であることが好ましく、100万以下であることがより好ましい。
なお、本明細書における重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
【0102】
(メタ)アクリル系共重合体(b1)は、側鎖にエネルギー線硬化性を有する官能基(エネルギー線硬化性基)が導入された(メタ)アクリル酸エステル重合体(b2)(以下「エネルギー線硬化性重合体(b2)」という場合がある。)であることが好ましい。
【0103】
エネルギー線硬化性重合体(b2)は、官能基含有モノマー単位を有するアクリル系共重合体(b21)と、その官能基に結合する官能基を有する不飽和基含有化合物(b22)とを反応させて得られる共重合体であることが好ましい。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの両方を意味する。他の類似用語も同様である。
【0104】
アクリル系共重合体(b21)は、官能基含有モノマーから導かれる構成単位と、(メタ)アクリル酸エステルモノマー、または(メタ)アクリル酸エステルモノマーの誘導体から導かれる構成単位とを含むことが好ましい。
【0105】
アクリル系共重合体(b21)の構成単位としての官能基含有モノマーは、重合性の二重結合と、官能基と、を分子内に有するモノマーであることが好ましい。官能基は、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、置換アミノ基、及びエポキシ基等からなる群から選択される少なくともいずれかの官能基であることが好ましい。
【0106】
ヒドロキシ基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、及び4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。ヒドロキシ基含有モノマーは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0107】
カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、及びシトラコン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸が挙げられる。カルボキシ基含有モノマーは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0108】
アミノ基含有モノマーまたは置換アミノ基含有モノマーとしては、例えば、アミノエチル(メタ)アクリレート、及びn-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。アミノ基含有モノマーまたは置換アミノ基含有モノマーは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0109】
アクリル系共重合体(b21)を構成する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、アルキル基の炭素数が1以上20以下であるアルキル(メタ)アクリレートの他、例えば、分子内に脂環式構造を有するモノマー(脂環式構造含有モノマー)が好ましく用いられる。
【0110】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、アルキル基の炭素数が1以上18以下であるアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。アルキル(メタ)アクリレートは、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、及び2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等がより好ましい。アルキル(メタ)アクリレートは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0111】
脂環式構造含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、及び(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル等が好ましく用いられる。脂環式構造含有モノマーは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0112】
アクリル系共重合体(b21)は、上記官能基含有モノマーから導かれる構成単位を、1質量%以上の割合で含有することが好ましく、5質量%以上の割合で含有することがより好ましく、10質量%以上の割合で含有することがさらに好ましい。
また、アクリル系共重合体(b21)は、上記官能基含有モノマーから導かれる構成単位を、35質量%以下の割合で含有することが好ましく、30質量%以下の割合で含有することがより好ましく、25質量%以下の割合で含有することがさらに好ましい。
【0113】
さらに、アクリル系共重合体(b21)は、(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体から導かれる構成単位を、50質量%以上の割合で含有することが好ましく、60質量%以上の割合で含有することがより好ましく、70質量%以上の割合で含有することがさらに好ましい。
また、アクリル系共重合体(b21)は、(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体から導かれる構成単位を、99質量%以下の割合で含有することが好ましく、95質量%以下の割合で含有することがより好ましく、90質量%以下の割合で含有することがさらに好ましい。
【0114】
アクリル系共重合体(b21)は、上記のような官能基含有モノマーと、(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体とを常法で共重合することにより得られる。
アクリル系共重合体(b21)は、上述のモノマーの他にも、ジメチルアクリルアミド、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、及びスチレン等からなる群から選択される少なくともいずれかの構成単位を含有していてもよい。
【0115】
上記官能基含有モノマー単位を有するアクリル系共重合体(b21)を、その官能基に結合する官能基を有する不飽和基含有化合物(b22)と反応させることにより、エネルギー線硬化性重合体(b2)が得られる。
【0116】
不飽和基含有化合物(b22)が有する官能基は、アクリル系共重合体(b21)が有する官能基含有モノマー単位の官能基の種類に応じて、適宜選択することができる。例えば、アクリル系共重合体(b21)が有する官能基がヒドロキシ基、アミノ基または置換アミノ基の場合、不飽和基含有化合物(b22)が有する官能基としてはイソシアネート基またはエポキシ基が好ましく、アクリル系共重合体(b21)が有する官能基がエポキシ基の場合、不飽和基含有化合物(b22)が有する官能基としてはアミノ基、カルボキシ基またはアジリジニル基が好ましい。
【0117】
不飽和基含有化合物(b22)は、エネルギー線重合性の炭素-炭素二重結合を、1分子中に少なくとも1個含み、1個以上6個以下含むことが好ましく、1個以上4個以下含むことがより好ましい。
【0118】
不飽和基含有化合物(b22)としては、例えば、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(2-イソシアナートエチルメタクリレート)、メタ-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート、メタクリロイルイソシアネート、アリルイソシアネート、1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート;ジイソシアネート化合物またはポリイソシアネート化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物;ジイソシアネート化合物またはポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物;グリシジル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸、2-(1-アジリジニル)エチル(メタ)アクリレート、2-ビニル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン等が挙げられる。
【0119】
不飽和基含有化合物(b22)は、アクリル系共重合体(b21)の官能基含有モノマーのモル数に対して、50モル%以上の割合(付加率)で用いられることが好ましく、60モル%以上の割合で用いられることがより好ましく、70モル%以上の割合で用いられることが更に好ましい。
また、不飽和基含有化合物(b22)は、アクリル系共重合体(b21)の官能基含有モノマーモル数に対して、95モル%以下の割合で用いられることが好ましく、93モル%以下の割合で用いられることがより好ましく、90モル%以下の割合で用いられることがさらに好ましい。
【0120】
アクリル系共重合体(b21)と不飽和基含有化合物(b22)との反応においては、アクリル系共重合体(b21)が有する官能基と不飽和基含有化合物(b22)が有する官能基との組合せに応じて、反応の温度、圧力、溶媒、時間、触媒の有無、及び触媒の種類を適宜選択することができる。これにより、アクリル系共重合体(b21)が有する官能基と、不飽和基含有化合物(b22)が有する官能基とが反応し、不飽和基がアクリル系共重合体(b21)の側鎖に導入され、エネルギー線硬化性重合体(b2)が得られる。
【0121】
エネルギー線硬化性重合体(b2)の重量平均分子量(Mw)は、1万以上であることが好ましく、15万以上であることがより好ましく、20万以上であることがさらに好ましい。
また、エネルギー線硬化性重合体(b2)の重量平均分子量(Mw)は、150万以下であることが好ましく、100万以下であることがより好ましい。
【0122】
・光重合開始剤(C)
粘着剤層が紫外線硬化性の化合物(例えば、紫外線硬化性樹脂)を含有する場合、粘着剤層は、光重合開始剤(C)を含有することが好ましい。
粘着剤層が光重合開始剤(C)を含有することにより、重合硬化時間及び光線照射量を少なくすることができる。
【0123】
光重合開始剤(C)としては、具体的には、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール、2,4-ジエチルチオキサンソン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンジル、ジベンジル、ジアセチル、β-クロールアンスラキノン、(2,4,6-トリメチルベンジルジフェニル)フォスフィンオキサイド、2-ベンゾチアゾール-N,N-ジエチルジチオカルバメート、オリゴ{2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-プロペニル)フェニル]プロパノン}、及び2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン等が挙げられる。これら光重合開始剤(C)は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0124】
光重合開始剤(C)は、粘着剤層にエネルギー線硬化性樹脂(a1)、及び(メタ)アクリル系共重合体(b1)を配合する場合には、エネルギー線硬化性樹脂(a1)、及び(メタ)アクリル系共重合体(b1)の合計量100質量部に対して0.1質量部以上の量で用いられることが好ましく、0.5質量部以上の量で用いられることがより好ましい。
また、光重合開始剤(C)は、粘着剤層にエネルギー線硬化性樹脂(a1)、及び(メタ)アクリル系共重合体(b1)を配合する場合には、エネルギー線硬化性樹脂(a1)、及び(メタ)アクリル系共重合体(b1)の合計量100質量部に対して10質量部以下の量で用いられることが好ましく、6質量部以下の量で用いられることがより好ましい。
【0125】
粘着剤層は、上記成分以外にも、適宜他の成分を配合してもよい。他の成分としては、例えば、架橋剤(E)等が挙げられる。
【0126】
・架橋剤(E)
架橋剤(E)としては、(メタ)アクリル系共重合体(b1)等が有する官能基との反応性を有する多官能性化合物を用いることができる。このような多官能性化合物の例としては、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アミン化合物、メラミン化合物、アジリジン化合物、ヒドラジン化合物、アルデヒド化合物、オキサゾリン化合物、金属アルコキシド化合物、金属キレート化合物、金属塩、アンモニウム塩、及び反応性フェノール樹脂等を挙げることができる。
【0127】
架橋剤(E)の配合量は、(メタ)アクリル系共重合体(b1)100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、0.03質量部以上であることがより好ましく、0.04質量部以上であることがさらに好ましい。
また、架橋剤(E)の配合量は、(メタ)アクリル系共重合体(b1)100質量部に対して、8質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましく、3.5質量部以下であることがさらに好ましい。
【0128】
粘着剤層の厚さは、特に限定されない。粘着剤層の厚さは、例えば、10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましい。また、粘着剤層の厚さは、150μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましい。
【0129】
(剥離シート)
本実施形態に係る粘着シートは、その粘着面を被着体(例えば、半導体チップ等)に貼付するまでの間、粘着面を保護する目的で、粘着面に剥離シートが積層されていてもよい。剥離シートの構成は任意である。剥離シートの例としては、剥離剤等により剥離処理したプラスチックフィルムが例示される。
プラスチックフィルムの具体例としては、ポリエステルフィルム、及びポリオレフィンフィルムが挙げられる。ポリエステルフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、又はポリエチレンナフタレート等のフィルムが挙げられる。ポリオレフィンフィルムとしては、例えば、ポリプロピレン、又はポリエチレン等のフィルムが挙げられる。
剥離剤としては、シリコーン系、フッ素系、及び長鎖アルキル系等を用いることができる。これら剥離剤の中で、安価で安定した性能が得られるシリコーン系が好ましい。
剥離シートの厚さは、特に限定されない。剥離シートの厚さは、通常、20μm以上、250μm以下である。
【0130】
(粘着シートの製造方法)
本実施形態に係る粘着シートは、従来の粘着シートと同様に製造できる。
粘着シートの製造方法は、前述の粘着剤層を基材の一の面に積層できれば、特に詳細には限定されない。
粘着シートの製造方法の一例としては、次のような方法が挙げられる。まず、粘着剤層を構成する粘着性組成物、及び所望によりさらに溶媒または分散媒を含有する塗工液を調製する。次に、塗工液を、基材の一の面上に、塗布手段により塗布して塗膜を形成する。塗布手段としては、例えば、ダイコーター、カーテンコーター、スプレーコーター、スリットコーター、及びナイフコーター等が挙げられる。次に、当該塗膜を乾燥させることにより、粘着剤層を形成できる。塗工液は、塗布を行うことが可能であれば、その性状は特に限定されない。塗工液は、粘着剤層を形成するための成分を溶質として含有する場合もあれば、粘着剤層を形成するための成分を分散質として含有する場合もある。
【0131】
また、粘着シートの製造方法の別の一例としては、次のような方法が挙げられる。まず、前述の剥離シートの剥離面上に塗工液を塗布して塗膜を形成する。次に、塗膜を乾燥させて粘着剤層と剥離シートとからなる積層体を形成する。次に、この積層体の粘着剤層における剥離シート側の面と反対側の面に、基材を貼付して、粘着シートと剥離シートとの積層体を得てもよい。この積層体における剥離シートは、工程材料として剥離してもよいし、粘着剤層に被着体(例えば、半導体チップ、及び半導体ウエハ等)が貼付されるまで、粘着剤層を保護していてもよい。
【0132】
塗工液が架橋剤を含有する場合には、塗膜の乾燥の条件(例えば、温度、及び時間等)を変えることにより、または加熱処理を、別途、行うことにより、塗膜内の(メタ)アクリル系共重合体(b1)と架橋剤との架橋反応を進行させ、粘着剤層内に所望の存在密度で架橋構造を形成させればよい。この架橋反応を十分に進行させるために、上述の方法等によって基材に粘着剤層を積層させた後、得られた粘着シートを、例えば、23℃、相対湿度50%の環境に数日間静置するといった養生を行ってもよい。
【0133】
本実施形態に係る粘着シートの厚さは、30μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましい。また、粘着シートの厚さは、400μm以下であることが好ましく、300μm以下であることがより好ましい。
【0134】
[粘着シートの使用方法]
本実施形態に係る粘着シートは、様々な被着体に貼着できるため、本実施形態に係る粘着シートを適用できる被着体は、特に限定されない。例えば、被着体としては、半導体チップ、及び半導体ウエハであることが好ましい。
【0135】
本実施形態に係る粘着シートは、例えば、半導体加工用に用いることができる。
半導体装置の製造工程中、複数の半導体チップ同士の間隔を拡張するためのエキスパンド工程に使用されることが好ましい。
複数の半導体チップは、粘着シートの中央部に貼着されていることが好ましい。
また、複数の半導体チップは、半導体ウエハをダイシングして得た半導体チップであることが好ましい。例えば、ダイシングシートに貼着された半導体ウエハをダイシングして、複数の半導体チップに分割し、分割して得た複数の半導体チップを本実施形態に係る粘着シートに、直接、転写してもよいし、他の粘着シートに転写してから、当該他の粘着シートから本実施形態に係る粘着シートに転写してもよい。
【0136】
複数の半導体チップの拡張間隔は、半導体チップのサイズに依存するため、特に制限されない。本実施形態に係る粘着シートは、粘着シートの片面に貼着された複数の半導体チップにおける、隣り合う半導体チップの相互の間隔を、200μm以上拡げるために使用することが好ましい。なお、当該半導体チップの相互の間隔の上限は、特に制限されない。当該半導体チップの相互の間隔の上限は、例えば、6000μmであってもよい。
【0137】
また、本実施形態に係る粘着シートは、少なくとも2軸延伸によって、粘着シートの片面に積層された複数の半導体チップの間隔を拡げる場合にも使用することができる。この場合、粘着シートは、例えば、互いに直交するX軸及びY軸における、+X軸方向、-X軸方向、+Y軸方向、及び-Y軸方向の4方向に張力を付与して引き延ばされ、より具体的には、基材におけるMD方向及びCD方向にそれぞれ引き延ばされる。
【0138】
上記のような2軸延伸は、例えば、X軸方向、及びY軸方向に張力を付与する離間装置を使用して行うことができる。ここで、X軸及びY軸は直交するものとし、X軸に平行な方向のうちの1つを+X軸方向、当該+X軸方向に反対の方向を-X軸方向、Y軸に平行な方向のうちの1つを+Y軸方向、当該+Y軸方向に反対の方向を-Y軸方向とする。
【0139】
上記離間装置は、粘着シートに対して、+X軸方向、-X軸方向、+Y軸方向、及び-Y軸方向の4方向に張力を付与し、この4方向のそれぞれについて、複数の保持手段と、それらに対応する複数の張力付与手段とを備えることが好ましい。各方向における、保持手段及び張力付与手段の数は、粘着シートの大きさにもよるが、例えば、3個以上、10個以下程度であってもよい。
【0140】
ここで、例えば+X軸方向に張力を付与するために備えられた、複数の保持手段と複数の張力付与手段とを含む群において、それぞれの保持手段は、粘着シートを保持する保持部材を備え、それぞれの張力付与手段は、当該張力付与手段に対応した保持部材を+X軸方向に移動させて粘着シートに張力を付与することが好ましい。そして、複数の張力付与手段は、それぞれ独立に、保持手段を+X軸方向に移動させるように設けられていることが好ましい。また、-X軸方向、+Y軸方向及び-Y軸方向にそれぞれ張力を付与するために備えられた、複数の保持手段と複数の張力付与手段とを含む3つの群においても、同様の構成を有することが好ましい。これにより、上記離間装置は、各方向に直交する方向の領域ごとに、粘着シートに対して異なる大きさの張力を付与することができる。
【0141】
一般に、4つの保持部材を用いて粘着シートを、+X軸方向、-X軸方向、+Y軸方向及び-Y軸方向の4方向からそれぞれ保持し、当該4方向に延伸する場合、粘着シートにはこれら4方向に加え、これらの合成方向(例えば、+X軸方向と+Y軸方向との合成方向、+Y軸方向と-X軸方向との合成方向、-X軸方向と-Y軸方向との合成方向及び-Y軸方向と+X軸方向との合成方向)にも張力が付与される。その結果、粘着シートの内側領域における半導体チップの間隔と外側領域における半導体チップとの間隔に違いが生じることがある。
【0142】
しかしながら、上述した離間装置では、+X軸方向、-X軸方向、+Y軸方向及び-Y軸方向のそれぞれの方向において、複数の張力付与手段がそれぞれ独立に粘着シートに張力を付与することができるため、上述したような粘着シートの内側と外側との間隔の違いが解消されるように、粘着シートを延伸することができる。
その結果、半導体チップの間隔を正確に調整することができる。
【0143】
上記離間装置は、半導体チップの相互間隔を測定する測定手段をさらに備えることが好ましい。ここにおいて、上記張力付与手段は、測定手段の測定結果を基に、複数の保持部材を個別に移動可能に設けられていることが好ましい。上記離間装置が測定手段を備えることにより、上記測定手段による半導体チップの間隔の測定結果に基づいて、当該間隔をさらに調整することが可能となる結果、半導体チップの間隔をより正確に調整することが可能となる。
【0144】
なお、上記離間装置において、保持手段としては、チャック手段、及び減圧手段が挙げられる。チャック手段としては、例えば、メカチャック、及びチャックシリンダ等が挙げられる。減圧手段としては、例えば、減圧ポンプ、及び真空エジェクタ等が挙げられる。また、上記離間装置において、保持手段としては、接着剤、もしくは磁力等で粘着シートを支持する構成であってもよい。また、チャック手段における保持部材としては、例えば、粘着シートを下から支持する下支持部材と、下支持部材に支持された駆動機器と、駆動機器の出力軸に支持され、駆動機器が駆動することで粘着シートを上から押さえつけることが可能な上支持部材とを備えた構成を有する保持部材を使用することができる。当該駆動機器としては、例えば、電動機器、及びアクチュエータ等が挙げられる。電動機器としては、例えば、回動モータ、直動モータ、リニアモータ、単軸ロボット、及び多関節ロボット等が挙げられる。アクチュエータとしては、例えば、エアシリンダ、油圧シリンダ、ロッドレスシリンダ、及びロータリシリンダ等が挙げられる。
【0145】
また、上記離間装置において、張力付与手段は、駆動機器を備え、当該駆動機器により保持部材を移動させてもよい。張力付与手段が備える駆動機器としては、上述した保持部材が備える駆動機器と同様の駆動機器を使用することができる。例えば、張力付与手段は、駆動機器としての直動モータと、直動モータと保持部材との間に介在する出力軸とを備え、駆動した直動モータが出力軸を介して保持部材を移動させる構成であってよい。
【0146】
本実施形態に係る粘着シートを用いて半導体チップの間隔を拡げる場合、半導体チップ同士が接触した状態、または半導体チップの間隔が殆ど拡げられていない状態からその間隔を拡げてもよく、あるいは、半導体チップ同士の間隔が既に所定の間隔まで拡げられた状態から、さらにその間隔を拡げてもよい。
【0147】
半導体チップ同士が接触した状態、または半導体チップの間隔が殆ど拡げられていない状態からその間隔を拡げる場合としては、例えば、ダイシングシート上において半導体ウエハを分割することで複数の半導体チップを得た後、当該ダイシングシートから本実施形態に係る粘着シートに複数の半導体チップを転写し、続いて、当該半導体チップの間隔を拡げることができる。あるいは、本実施形態に係る粘着シート上において半導体ウエハを分割して複数の半導体チップを得た後、当該半導体チップの間隔を拡げることもできる。
【0148】
半導体チップ同士の間隔が既に所定の間隔まで拡げられた状態から、さらにその間隔を拡げる場合としては、その他の粘着シート、好ましくは本実施形態に係る粘着シート(第一延伸用粘着シート)を用いて半導体チップ同士の間隔を所定の間隔まで拡げた後、当該シート(第一延伸用粘着シート)から本実施形態に係る粘着シート(第二延伸用粘着シート)に半導体チップを転写し、続いて、本実施形態に係る粘着シート(第二延伸用粘着シート)を延伸することで、半導体チップの間隔をさらに拡げることができる。なお、このような半導体チップの転写と粘着シートの延伸は、半導体チップの間隔が所望の距離となるまで複数回繰り返してもよい。
【0149】
〔第二実施形態〕
第二実施形態は、粘着シートの引張強度FA1と引張強度FB1の測定における第一の試験片および第二の試験片の条件を下記の通り変更した以外は、第一実施形態と共通する。そのため、第二実施形態の説明において、第一実施形態と共通する事項は、省略又は簡略化する。
【0150】
第二実施形態においては、粘着シートから幅15mmの第一の試験片を作製する。第一の試験片の長さは、特に限定されないが、第一の試験片を引張試験機の一対の掴み具で把持する際に当該掴み具間の距離を30mmに設定できる程度の長さであればよい。また、第二実施形態においては、縦寸法が35mmであり、横寸法が25mmであり、厚さ寸法が0.350mmである第一の半導体チップ及び第二の半導体チップを用いる。第一の半導体チップ及び第二の半導体チップの縦寸法が35mmである辺を、第一の試験片の長手方向に沿わせ、第一の半導体チップと第二の半導体チップとの間隔を35μmとして、第一の試験片の長手方向の一端側の粘着剤層に第一の半導体チップを貼着し、第一の試験片の長手方向の他端側の粘着剤層に第二の半導体チップを貼着して第二の試験片を作製する。
【0151】
第二実施形態に係る第一の試験片及び第二の試験片の引張強度は、前記数式(数1A)の関係を満たし、FB1/FA1が1以上であることが好ましく、前記数式(数1B)の関係を満たすことがより好ましい。また、FB1/FA1が前記数式(数1C)の関係を満たすことも好ましい。
【0152】
本実施形態において、引張試験機を用いて引張強度を測定する際の第一の試験片及び第二の試験片を把持する掴み具間の距離は、30mmであることが好ましい。ここで、掴み具間の距離とは、引張試験開始前の初期の距離である。
本実施形態において、引張試験機を用いて引張強度を測定する際の引張速度は、20mm/分であることが好ましい。
【0153】
第二実施形態に係る第一の試験片及び第二の試験片のヤング率は、前記数式(数2A)の関係を満たすことが好ましい。
【0154】
第二実施形態に係る粘着シートによっても、第一実施形態に係る粘着シートと同様の効果を奏する。
【0155】
[実施形態の変形]
本発明は、上述の実施形態に何ら限定されない。本発明は、本発明の目的を達成できる範囲で、上述の実施形態を変形した態様などを含む。
【実施例0156】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。本発明はこれら実施例に何ら限定されない。
【0157】
(粘着シートの作製)
[実施例1]
ブチルアクリレート(BA)62質量部、メタクリル酸メチル(MMA)10質量部、及び2-ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)28質量部を共重合してアクリル系共重合体を得た。このアクリル系共重合体に対して、2-イソシアナートエチルメタクリレート(昭和電工株式会社製、製品名「カレンズMOI」(登録商標))を付加した樹脂(アクリルA)の溶液(粘着剤主剤、固形分35.0質量%)を調製した。付加率は、アクリル系共重合体の2HEA100モル%に対して、2-イソシアナートエチルメタクリレートを80モル%とした。
得られた樹脂(アクリルA)の重量平均分子量(Mw)は、8万であった。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量Mwを求めた。
このアクリルAを粘着剤主剤とし、これに、UV硬化性樹脂A(10官能ウレタンアクリレート、三菱ケミカル株式会社製、製品名「UV-5806」、Mw=1740、光重合開始剤を樹脂の固形分100質量%に対して3質量%含む。)、及び架橋剤としてのトリレンジイソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン工業株式会社製、製品名「コロネートL」)を添加した。粘着剤主剤中の固形分100質量部に対して、UV硬化性樹脂Aを50質量部添加し、架橋剤を0.2質量部添加した。添加後、30分間攪拌して、粘着剤組成物A1を調製した。
次いで、調製した粘着剤組成物A1の溶液をポリエチレンテレフタレート(PET)系剥離フィルム(リンテック株式会社製、製品名「SP-PET381031」、厚さ38μm)に塗布して乾燥させ、厚さ40μmの粘着剤層を剥離フィルム上に形成した。
当該粘着剤層に、基材としてのポリエステル系ポリウレタンエラストマーシート(シーダム株式会社製,製品名「ハイグレスDUS202」,厚さ100μm)を貼り合わせた後、幅方向における端部の不要部分を裁断除去して粘着シートSA1を作製した。
【0158】
[比較例1]
粘着剤主剤を下記に変更し、粘着剤組成物B1を調製した以外は実施例1と同様に比較例1の粘着シートを作製した。
ブチルアクリレート(BA)52質量部、メタクリル酸メチル(MMA)20質量部、及び2-ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)28質量部を共重合してアクリル系共重合体を得た。このアクリル系共重合体に対して、2-イソシアナートエチルメタクリレート(昭和電工株式会社製、製品名「カレンズMOI」(登録商標))を付加した樹脂(アクリルB)の溶液(粘着剤主剤、固形分35.0質量%)を調製した。付加率は、アクリル系共重合体の2HEA100モル%に対して、2-イソシアナートエチルメタクリレートを90モル%とした。
得られた樹脂(アクリルB)の重量平均分子量(Mw)は、60万であった。比較例1に係る樹脂(アクリルB)の重量平均分子量Mwは、実施例1と同様にして求めた。
【0159】
[実施例2]
粘着剤組成物B1に代えて、粘着剤組成物B2を調製した以外は比較例1と同様にして実施例2の粘着シートを作製した。
比較例1で調製したアクリルBを粘着剤主剤とし、これに、UV硬化性樹脂B(阪本薬品工業株式会社製、製品名「SA-TE60」)、光重合開始剤(IGM Resins B.V.製、製品名「Omnirad 127D」)及び架橋剤(日本ポリウレタン工業株式会社製、製品名「コロネートL」)を次に示す比率で添加し、さらに酢酸エチルを添加した後、30分間攪拌して、固形分35.0質量%の粘着剤組成物B2を調製した。
粘着剤主剤 :固形分100質量部
UV硬化性樹脂B:固形分51.4質量部
光重合開始剤 :固形分3.7質量部
架橋剤 :固形分0.2質量部
【0160】
[実施例3]
実施例2に係る粘着シートの作製におけるUV硬化性樹脂B(「SA-TE60」)の添加量の1/2を、UV硬化性樹脂A(三菱ケミカル株式会社製、製品名「UV-5806」)に代えて、酢酸エチルを添加して固形分35.0質量%の粘着剤組成物B3を調製した以外は実施例2と同様に実施例3に係る粘着シートを作製した。
粘着剤主剤 :固形分100質量部
UV硬化性樹脂A:固形分25.7質量部
UV硬化性樹脂B:固形分25.7質量部
光重合開始剤 :固形分3.7質量部
架橋剤 :固形分0.2質量部
【0161】
<測定方法>
(引張強度の測定方法)
引張強度を測定するための引張試験機としては、株式会社島津製作所製のオートグラフAG-ISを用いた。
【0162】
・第一の引張試験
粘着シートから幅25mmの第一の試験片を作製した。
第一の試験片に第一の半導体チップ及び第二の半導体チップを貼着して、第二の試験片を作製した。第一の半導体チップ及び第二の半導体チップとして、いずれも、縦寸法が45mmであり、横寸法が35mmであり、厚さ寸法が0.625mmである半導体チップを用いた。
第一の半導体チップ及び第二の半導体チップの縦寸法が45mmである辺を、第一の試験片の長手方向に沿って貼着した。
第一の半導体チップは、第一の試験片の長手方向の一端側に貼着した。第二の半導体チップは、第一の試験片の長手方向の他端側に貼着した。第一の試験片に貼着された第一の半導体チップと第二の半導体チップとの間隔を35μmとした。
【0163】
第一の試験片の長手方向のそれぞれの両端における基材及び粘着剤層を掴み具(チャック)で把持して引張試験機で引張強度を測定した。第一の試験片の0.5mm引張り時(引張距離が0.5mmの時)の引張強度FA1を表1に示す。
第二の試験片の長手方向のそれぞれの両端における基材、粘着剤層及び半導体チップを掴み具で把持して引張試験機で引張強度を測定した。第二の試験片の0.5mm引張り時(引張距離が0.5mmの時)の引張強度FB1を表1に示す。
引張強度の単位は、Nである。
引張試験時のその他の条件は、以下の通りである。
掴み具間の距離:50mm
引張速度 :50mm/分
【0164】
・第二の引張試験
第二の引張試験は、下記表2に示すように、第一の半導体チップ及び第二の半導体チップのチップサイズ、粘着シートの幅、掴み具間の距離及び引張速度の測定条件を変更した以外、第一の引張試験と同様にして実施した。結果を表1に示す。
【0165】
【0166】
表1に示すように、実施例1~実施例3に係る粘着シートは、FB1/FA1が30以下であり、粘着シートの半導体チップが貼着されていない部位の引張強度と、半導体チップが貼着されている部位の引張強度との比FB1/FA1が、比較例1よりも小さかった。そのため、実施例1~実施例3に係る粘着シートによれば、エキスパンド工程で粘着シートを展延させて半導体チップ間の距離を拡張させる際に、粘着シートの面内方向での伸び量の差が小さくなり、拡張性に優れ、半導体チップ間の距離のばらつきを小さくできる。
【0167】
【0168】
(ヤング率の測定方法)
JIS K7161及びJIS K7127に準拠して、万能試験機(株式会社島津製作所製「オートグラフAG-IS500N」)を用いて引張試験を行った。引張試験において、第一の試験片および第二の試験片を固定し、引張速度50mm/分で引張試験を行った。そして、このときの応力ひずみ曲線を作成して、試験初期の応力ひずみ曲線の傾きからヤング率を算出した。第一の引張試験および第二の引張試験で作製した第一の試験片および第二の試験片を用いて、ヤング率を算出した。
実施例1~実施例3及び比較例1に係る粘着シートのヤング率の測定結果を表1に示す。
【0169】
本発明では、エキスパンド試験を実施しなくても、引張試験により、粘着シートにおける拡張性及びばらつきに関する性能を測ることができる。
本発明者らは、各種測定パラメータを変更および検証することにより、拡張性とばらつきの性能と相関を見るための引張試験の測定条件を見出した。
引張試験の測定条件は、次の通り検証した。まず、この検証には、実施例2に係る粘着シートおよび比較例1に係る粘着シートを用いた。第一の半導体チップおよび第二の半導体チップとして、いずれも、縦寸法が35mmであり、横寸法が25mmであり、厚さ寸法が350μmである半導体チップ(第二の引張試験で用いたチップと同様のサイズの半導体チップ)を用いた。粘着シートの幅、掴み具間の距離および引張速度の3つの条件のうち、いずれか一つの条件について段階的に変更して、その他の点は、前述の(引張強度の測定方法)と同様に引張強度を測定し、および前述の(ヤング率の測定方法)と同様にヤング率を測定した。
第一の検証では、掴み具間の距離を30mm、および引張速度を50mm/分で一定とし、粘着シートの幅を表3および表4に示すように段階的に変更して、引張強度およびヤング率を測定した。
第二の検証では、粘着シートの幅を15mm、および引張速度を50mm/分で一定とし、掴み具間の距離を表5および表6に示すように段階的に変更して、引張強度およびヤング率を測定した。
第三の検証では、粘着シートの幅を15mm、および掴み具間の距離を30mmで一定とし、引張速度を表7および表8に示すように段階的に変更して、引張強度およびヤング率を測定した。
表3~表8中、実施例2Fとは、実施例2に係る粘着シートを用いて引張強度を測定したことを意味し、実施例2Yとは、実施例2に係る粘着シートを用いてヤング率を測定したことを意味し、比較例1Fとは、比較例1に係る粘着シートを用いて引張強度を測定したことを意味し、比較例1Yとは、比較例1に係る粘着シートを用いてヤング率を測定したことを意味する。
【0170】
【0171】
【0172】
【0173】
【0174】
【0175】
【0176】
これらの検証の結果、本発明者らは、粘着シートについて特定の測定条件で引張試験を実施することで、エキスパンド試験を実施しなくても、「拡張性などの有無」と「引張物性」との相関を見極め可能であることを見出した。
表2に示す第一の引張試験または第二の引張試験の測定条件で引張試験を実施して得た引張強度の関係が前記実施形態で説明した数式(数1A)の関係を満たす粘着シートは、下記の拡張性およびばらつきの評価において、優れた結果を示した。
【0177】
(拡張性およびばらつきの評価方法)
実施例1~3並びに比較例1で作製した粘着シートを210mm×210mmに切断し試験用粘着シートを得た。このとき、裁断後のシートの各辺が、粘着シートにおける基材のMD方向と平行または垂直となるように裁断した。
シリコンウエハをダイシングして、3mm×3mmのサイズのチップがX軸方向に7列、及びY軸方向に7列となるように、計49個のチップを切り出した。
試験用粘着シートの剥離フィルムを剥離し、露出した粘着剤層の中心部に、上述の通り切り出した計49個のチップを貼付した。このとき、チップがX軸方向に7列、及びY軸方向に7列で並んでおり、チップ間の距離は、X軸方向およびY軸方向ともに35μmだった。
【0178】
次に、チップが貼付された試験用粘着シートを、2軸延伸可能なエキスパンド装置(離間装置)に設置した。
図4には、当該エキスパンド装置100を説明する平面図が示される。
図4中、X軸及びY軸は、互いに直交する関係にあり、当該X軸の正の方向を+X軸方向、当該X軸の負の方向を-X軸方向、当該Y軸の正の方向を+Y軸方向、当該Y軸の負の方向を-Y軸方向とする。試験用粘着シート200は、各辺がX軸またはY軸と平行となるように、エキスパンド装置100に設置した。その結果、試験用粘着シート200における基材のMD方向は、X軸またはY軸と平行となる。なお、
図4中、チップは省略されている。
【0179】
図4に示されるように、エキスパンド装置100は、+X軸方向、-X軸方向、+Y軸方向及び-Y軸方向のそれぞれに5つの保持手段110(計20個の保持手段110)を備える。各方向における5つの保持手段110のうち、保持手段110Aは、両端に位置し、保持手段110Cは、中央に位置し、保持手段110Bは、保持手段110Aと保持手段110Cとの間に位置する。試験用粘着シート200の各辺を、これらの保持手段110によって把持させた。
【0180】
ここで、
図4に示されるように、試験用粘着シート200の一辺は210mmである。また、各辺における保持手段110同士の間隔は40mmである。また、試験用粘着シート200の一辺における端部(シートの頂点)と、当該辺に存在し、当該端部に最も近い保持手段110Aとの間隔は25mmである。
【0181】
・第1エキスパンド試験
続いて、保持手段110のそれぞれに対応する、図示されていない複数の張力付与手段を駆動させて、保持手段110をそれぞれ独立に移動させた。試験用粘着シートの四辺をつかみ治具で固定し、X軸方向、及びY軸方向にそれぞれ5mm/sの速度で、200mmの拡張量で試験用粘着シートをエキスパンドした。エキスパンド後の試験用粘着シート200の四辺の長さは、いずれも、410mmであった。第1エキスパンド試験の結果、試験用粘着シートの面積は、エキスパンド前に対して381%に拡張された。本実施例においては、この拡張量200mmのエキスパンド試験を、第1エキスパンド試験と称する場合がある。粘着シートの拡張性を評価するため、第1エキスパンド試験により粘着シートの基材及び粘着剤層の破断の有無を確認した。拡張性の評価基準は、次のように設定した。本実施例においては、評価Aを合格と判定した。結果を表9に示す。
・拡張性の評価基準
評価A:基材及び粘着剤層が破断しなかった。
評価C:基材及び粘着剤層が破断した。
第1エキスパンド試験後において、実施例1~3に係る粘着シートの基材及び粘着剤層は、破断しなかったが、比較例1に係る粘着シートの基材及び粘着剤層は破断した。
【0182】
第1エキスパンド試験によって試験用粘着シートを拡張した後、リングフレームにより試験用粘着シート200の拡張状態を保持した。
拡張状態を保持した状態で、チップ同士の位置関係に基づいてチップ間距離の標準偏差を算出することにより、ばらつきを評価した。具体的には、各チップの角から、チップの中心を求め、隣り合うチップの中心間距離を測定した。その中心間距離から、チップの辺の長さである3mmを差し引き、チップ間距離とした。試験用粘着シート上のチップの位置は、CNC画像測定機(株式会社ミツトヨ製、製品名「Vision ACCEL」)を用いて測定した。標準偏差は、JMP社製のデータ分析ソフトウェアJMP13を用いて算出した。ばらつきの評価基準は、次のように設定した。本実施例においては、評価A又は評価Bを合格と判定した。結果を表9に示す。
・ばらつきの評価基準
評価A:標準偏差が100μm以下
評価B:標準偏差が200μm以下
評価C:標準偏差が201μm以上
【0183】
<UV照射後の粘着剤層の基材に対する密着性>[糊飛び]
作製した粘着シートを裁断してロールに巻き取る際、その裁断部を跨ぐようにLED-UVユニットを、裁断一か所につき2灯設置した。粘着シートとの距離は10mmとした。スリットの速度は10m/minとして、LED-UVユニットの2灯とも出力50%でUV照射して、粘着剤層に硬化部を形成しながら当該硬化部にスリットを入れて裁断し、裁断後の粘着シートをロールに巻き取った。UV照射の照度は、2200mW/cm2であり、積算光量は、80mJ/cm2であった。
【0184】
使用したLED-UVユニットの説明は以下のとおりである。
・LED-UVユニット
HOYA CANDEO OPTRONICS社製
制御部=H-1 VC II
発光部=H-1 VH4
レンズ=HO-03L
【0185】
ロールに巻かれた硬化部を含む粘着シートから、当該硬化部と未硬化部とを含むように幅25mm×長さ150mmの大きさの試験片に切り出した。この試験片は、長さ方向全域に硬化部を有する。この試験片から剥離フィルムを剥離し、チャック(掴み具)間距離が100mmとなる様に設定した引張試験機のチャックに、当該試験片を固定し、速度50mm/secで、つかみ具間距離が200mmになるまで伸長させた(100%伸長させた)。引張試験機としては、株式会社島津製作所製のオートグラフAG-ISを用いた。伸長後の試験片を引張試験機から外し、非引張状態で粘着剤層の割れの最大長さを測定した。
割れの最大長さが0.5mm以下を評価A、0.5mmよりも大きい場合を評価Bとした。評価Aを合格とした。
【0186】