IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ローム株式会社の特許一覧

特開2025-1912信号処理回路、DAコンバータ回路、ADコンバータ回路、および、オーディオ機器
<>
  • 特開-信号処理回路、DAコンバータ回路、ADコンバータ回路、および、オーディオ機器 図1
  • 特開-信号処理回路、DAコンバータ回路、ADコンバータ回路、および、オーディオ機器 図2
  • 特開-信号処理回路、DAコンバータ回路、ADコンバータ回路、および、オーディオ機器 図3
  • 特開-信号処理回路、DAコンバータ回路、ADコンバータ回路、および、オーディオ機器 図4
  • 特開-信号処理回路、DAコンバータ回路、ADコンバータ回路、および、オーディオ機器 図5
  • 特開-信号処理回路、DAコンバータ回路、ADコンバータ回路、および、オーディオ機器 図6
  • 特開-信号処理回路、DAコンバータ回路、ADコンバータ回路、および、オーディオ機器 図7
  • 特開-信号処理回路、DAコンバータ回路、ADコンバータ回路、および、オーディオ機器 図8
  • 特開-信号処理回路、DAコンバータ回路、ADコンバータ回路、および、オーディオ機器 図9
  • 特開-信号処理回路、DAコンバータ回路、ADコンバータ回路、および、オーディオ機器 図10
  • 特開-信号処理回路、DAコンバータ回路、ADコンバータ回路、および、オーディオ機器 図11
  • 特開-信号処理回路、DAコンバータ回路、ADコンバータ回路、および、オーディオ機器 図12
  • 特開-信号処理回路、DAコンバータ回路、ADコンバータ回路、および、オーディオ機器 図13
  • 特開-信号処理回路、DAコンバータ回路、ADコンバータ回路、および、オーディオ機器 図14
  • 特開-信号処理回路、DAコンバータ回路、ADコンバータ回路、および、オーディオ機器 図15
  • 特開-信号処理回路、DAコンバータ回路、ADコンバータ回路、および、オーディオ機器 図16
  • 特開-信号処理回路、DAコンバータ回路、ADコンバータ回路、および、オーディオ機器 図17
  • 特開-信号処理回路、DAコンバータ回路、ADコンバータ回路、および、オーディオ機器 図18
  • 特開-信号処理回路、DAコンバータ回路、ADコンバータ回路、および、オーディオ機器 図19
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001912
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】信号処理回路、DAコンバータ回路、ADコンバータ回路、および、オーディオ機器
(51)【国際特許分類】
   H03M 3/04 20060101AFI20241226BHJP
   H03K 7/08 20060101ALI20241226BHJP
   H03M 1/12 20060101ALI20241226BHJP
   H03M 1/66 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
H03M3/04
H03K7/08 A
H03M1/12 C
H03M1/66 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023101686
(22)【出願日】2023-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 雄二
(72)【発明者】
【氏名】春海 豪
【テーマコード(参考)】
5J022
5J064
【Fターム(参考)】
5J022AA00
5J022AB01
5J022BA06
5J022CA00
5J064BA03
5J064BB07
5J064BB13
5J064BC06
5J064BC07
5J064BC08
5J064BC10
5J064BC11
5J064BC16
(57)【要約】
【課題】後段側回路による消費電流またはノイズを抑制することが可能となる信号処理回路を提供する。
【解決手段】信号処理回路(500)は、PWM出力信号(Spwm)を構成する選択対象期間のうちハイレベルとする前記選択対象期間を、n値出力信号のレベルに対して選択することでパルス選択を行うように構成されるパルス選択部(400)を備え、前記パルス選択部は、前記n値出力信号の1つ以上のサンプルごとに、前記サンプルの切り替わりにおいて、今回の前記サンプルに対応する前記PWM出力信号における最初の前記選択対象期間のレベルが、前回の前記サンプルに対応する前記PWM出力信号における最後の前記選択対象期間のレベルと一致するように、パルス選択を行う。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号をn値出力信号(nは2以上の整数)に変換して出力するように構成されるΔΣ変調器と、
前記n値出力信号を前記n値出力信号のレベルに応じたデューティを有するPWM出力信号に変換するように構成されるPWM変換部と、
前記PWM出力信号を構成する選択対象期間のうちハイレベルとする前記選択対象期間を、前記n値出力信号のレベルに対して選択することでパルス選択を行うように構成されるパルス選択部と、
を備え、
前記パルス選択部は、前記n値出力信号の1つ以上のサンプルごとに、前記サンプルの切り替わりにおいて、今回の前記サンプルに対応する前記PWM出力信号における最初の前記選択対象期間のレベルが、前回の前記サンプルに対応する前記PWM出力信号における最後の前記選択対象期間のレベルと一致するように、パルス選択を行う、信号処理回路。
【請求項2】
前記パルス選択部は、前回の前記サンプルに対応する前記PWM出力信号における最後の前記選択対象期間のレベルがローレベルの場合、今回の前記サンプルに対応する前記PWM出力信号において、最初の前記選択対象期間のレベルをローレベルとし、かつ最後の前記選択対象期間から連続した前記選択対象期間をハイレベルとする、請求項1に記載の信号処理回路。
【請求項3】
前記パルス選択部は、前回の前記サンプルに対応する前記PWM出力信号における最後の前記選択対象期間のレベルがハイレベルの場合、今回の前記サンプルに対応する前記PWM出力信号において、最初の前記選択対象期間から連続した前記選択対象期間をハイレベルとする、請求項1に記載の信号処理回路。
【請求項4】
前記パルス選択部は、1つ以上の前記サンプルごとに、前方の前記選択対象期間がローレベル、後方の前記選択対象期間がハイレベルとなるパターンと、前方の前記選択対象期間がハイレベル、後方の前記選択対象期間がローレベルとなるパターンと、を交互に繰り返すようにパルス選択を行う、請求項1に記載の信号処理回路。
【請求項5】
前記パルス選択部は、前記選択対象期間ごとのハイレベルとされる回数であるパルス選択回数が前記選択対象期間の間で均一となるように、前記サンプルのレベルに応じて、ハイレベルとする前記選択対象期間の候補パターンを決定し、
今回の前記サンプルに対応する前記PWM出力信号における最初の前記選択対象期間のレベルが、前回の前記サンプルに対応する前記PWM出力信号における最後の前記選択対象期間のレベルと一致するように、前記候補パターンを選択する、請求項1に記載の信号処理回路。
【請求項6】
前記PWM変換部の出力ピンの個数が複数であり、
パルス数を前記選択対象期間の数として、
(前記出力ピンの数)×(1つの前記出力ピンあたりの前記パルス数)+1=nである、請求項1に記載の信号処理回路。
【請求項7】
前記PWM変換部の後段側に配置され、パルス信号を絶縁しつつ伝送するように構成される絶縁通信部をさらに備える、請求項1に記載の信号処理回路。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の信号処理回路と、前記信号処理回路の後段側に配置されるDAコンバータと、前記DAコンバータの後段側に配置されるアナログローパスフィルタと、を備えるDAコンバータ回路。
【請求項9】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の信号処理回路と、前記信号処理回路の後段側に配置されるデジタルローパスフィルタと、前記デジタルローパスフィルタの後段側に配置されるデシメーションフィルタと、を備えるADコンバータ回路。
【請求項10】
請求項8に記載のDAコンバータ回路を備えるオーディオ機器。
【請求項11】
請求項9に記載のADコンバータ回路を備えるオーディオ機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、信号処理回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、デジタル信号をアナログ信号へ変換するDAコンバータまたはアナログ信号をデジタル信号へ変換するADコンバータにΔΣ変調器が用いられる(ΔΣ変調器の一例は例えば特許文献1に開示)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-87876号公報
【0004】
[概要]
ΔΣ変調器を用いた信号処理回路では、後段側に設けられる回路による消費電流の増加またはノイズの増加を抑制することが要求される。
【0005】
上記状況に鑑み、本開示は、後段側回路による消費電流またはノイズを抑制することが可能となる信号処理回路を提供することを目的とする。
【0006】
本開示の一態様に係る信号処理回路は、
入力信号をn値出力信号(nは2以上の整数)に変換して出力するように構成されるΔΣ変調器と、
前記n値出力信号を前記n値出力信号のレベルに応じたデューティを有するPWM出力信号に変換するように構成されるPWM変換部と、
前記PWM出力信号を構成する選択対象期間のうちハイレベルとする前記選択対象期間を、前記n値出力信号のレベルに対して選択することでパルス選択を行うように構成されるパルス選択部と、
を備え、
前記パルス選択部は、前記n値出力信号の1つ以上のサンプルごとに、前記サンプルの切り替わりにおいて、今回の前記サンプルに対応する前記PWM出力信号における最初の前記選択対象期間のレベルが、前回の前記サンプルに対応する前記PWM出力信号における最後の前記選択対象期間のレベルと一致するように、パルス選択を行う構成としている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、DAコンバータ回路の構成を示す図である。
図2図2は、図1に示すDAコンバータ回路に備えられるΔΣ変調器の内部構成を示す図である。
図3図3は、2値のΔΣ変調器を示す図である。
図4図4は、5値のΔΣ変調器を示す図である。
図5図5は、量子化ノイズの改善例を示す図である。
図6図6は、量子化ノイズの改善例を示す図である。
図7図7は、ADコンバータ回路の構成を示す図である。
図8図8は、図7に示すADコンバータ回路に備えられるΔΣ変調器の内部構成を示す図である。
図9図9は、比較例に係る信号処理回路の構成を示す図である。
図10図10は、ΔΣ変調器の出力レベル(出力振幅)と、PWM出力信号の波形との対応関係を示す図である。
図11図11は、本開示の第1実施形態に係る信号処理回路の構成を示す図である。
図12図12は、比較例と第1実施形態におけるパルス選択の一例を示す図である。
図13図13は、比較例と第1実施形態におけるPWM出力信号の一例を示す図である。
図14図14は、比較例、第1実施形態、第2実施形態におけるパルス選択の一例を示す図である。
図15図15は、比較例と第3実施形態におけるパルス選択の一例を示す図である。
図16図16は、本開示の実施形態に係るDAコンバータ回路およびADコンバータ回路の構成を示す図である。
図17図17は、本開示の実施形態に係るオーディオ機器の構成を示す図である。
図18図18は、絶縁通信部を設けた信号処理回路の構成例を示す図である。
図19図19は、絶縁通信部の構成例を示す図である。
【0008】
[詳細な説明]
以下、本開示の例示的な実施形態について、図面を参照して説明する。
【0009】
<DAコンバータ>
図1は、DAコンバータ回路5の構成を示す図である。DAコンバータ回路5は、ΔΣ変調器1と、DAC(DAコンバータ)2と、アナログLPF(ローパスフィルタ)3と、を備える。
【0010】
ΔΣ変調器1は、入力されるデジタル入力信号Dinをサンプリング周波数fによりオーバーサンプリングし、ΔΣ変調を用いて低ビットのデジタル出力信号Doutに変換する。デジタル出力信号Doutは、DAC2に入力され、デジタル信号からアナログ信号へ変換される。変換後のアナログ信号は、アナログLPFに入力され、アナログ出力信号Aoutに変換される。オーバーサンプリングすることで量子化ノイズを広い周波数帯域に分散させることができるため、DAC2の出力をアナログLPF3で処理することで、量子化ノイズが除去されてS/N比の良好なアナログ出力信号Aoutが得られる。
【0011】
図2は、DAコンバータ回路5に備えられるΔΣ変調器1の内部構成を示す図である。
ΔΣ変調器1は、積分器1Aと、量子化器1Bと、を有する。デジタル入力信号Dinと量子化器1Bからフィードバックされた出力との差分を積分器1Aにより累積し、量子化器1Bにより低ビットのデジタル出力信号Doutに変換する。
【0012】
図3は、ΔΣ変調器1の一例としての2値のΔΣ変調器1を示す図である。2値のΔΣ変調器1は、1ビット(0または1)のデジタル出力信号Doutを出力する。図3に示すように、デジタル出力信号Doutは0また1を示すパルスから構成され、パルス幅は1/fとなる。2値のΔΣ変調器1は、内部で2値の量子化器1B(図2)が用いられる。
【0013】
図4は、ΔΣ変調器1の一例としての5値のΔΣ変調器1を示す図である。5値のΔΣ変調器1は、5値(出力=0~4)のデジタル出力信号Doutを出力する。1/fごとにデジタル出力信号Doutが出力される。
【0014】
ΔΣ変調器の精度を向上させる方法としては、サンプリング周波数fを上げる方法、あるいは量子化器の量子化レベルを上げる方法が存在する。
【0015】
サンプリング周波数fを上げると、例えば図5に示すA1→A2のように、ΔΣ変調器の量子化ノイズがより広い周波数帯域に分散されるため、信号帯域Sにおける量子化ノイズは低減される。しかしながら、高いサンプリング周波数fを使用するとクロックジッタの影響が大きくなり、また、高い周波数を高精度で生成するには高価なPLL(phase locked loop)回路が必要となる。
【0016】
一方、量子化器1Bの量子化レベルとは、量子化器1Bの出力の取りうる値(レベル)の個数(例えば5値など)のことである。量子化レベルを上げると、例えば図6にA3→A4で示すように、周波数帯域全体で量子化ノイズが低減される。しかしながら、量子化器1Bの出力ピンの個数が増加し、面積増加とコスト増加を招く。例えば2値の量子化器1Bであれば、出力ピンは1個であり、5値の量子化器1Bであれば、出力ピンは4個である。
【0017】
<ADコンバータ>
図7は、ADコンバータ回路50の構成を示す図である。ADコンバータ回路50は、ΔΣ変調器10と、デジタルLPF20と、デシメーションフィルタ30と、を備える。
【0018】
ΔΣ変調器10は、入力されるアナログ入力信号Ainをサンプリング周波数fによりオーバーサンプリングし、ΔΣ変調を用いて低ビットのデジタル出力信号Doutに変換する。デジタル出力信号Doutは、デジタルLPF20に入力される。デジタル出力信号Doutは、デジタルLPF20により量子化ノイズを除去され、さらに後段側のデシメーションフィルタ30によりサンプリング周波数が間引かれる。
【0019】
図8は、ADコンバータ回路50に備えられるΔΣ変調器10の内部構成を示す図である。ΔΣ変調器10は、積分器10Aと、量子化器10Bと、DAC10Cと、を有する。アナログ入力信号AinとDAC10Cの出力との差分を積分器10Aにより累積し、量子化器10Bにより低ビットのデジタル出力信号Doutに変換する。デジタル出力信号Doutは、DAC10Cによりアナログ信号に変換され、入力側にフィードバックされる。
【0020】
このようなADコンバータ回路50に用いられるΔΣ変調器10の精度を向上させるための方法およびその課題は、先述と同様である。
【0021】
<PWM出力構成>
上記課題を解決する解決手段としては、例えば図9に示すような信号処理回路300が考えられる。信号処理回路300は、ΔΣ変調器100と、PWM(Pulse Width Modulation)変換部200と、を備える。ここで、ΔΣ変調器100は、多値出力の一例として、5値出力のΔΣ変調器であるとする。
【0022】
PWM変換部200は、ΔΣ変調器100から出力される5値出力(出力レベル=0~4)をPWM出力信号Spwmに変換する。ここで、図10は、ΔΣ変調器100の出力レベル(出力振幅)と、PWM出力信号Spwmの波形との対応関係を示す。PWM出力信号Spwmは、ΔΣ変調器100のサンプリング周波数をfとして、1/4fの幅を持つパルスを4つ並べて構成される。
【0023】
ΔΣ変調器100の出力レベルが0の場合、PWM出力信号においては、4つのパルスともに0となる。ΔΣ変調器100の出力レベルが1の場合、PWM出力信号においては、1番目のパルスが1となり、残りのパルスは0となる。ΔΣ変調器100の出力レベルが2の場合、PWM出力信号においては、1番目および2番目のパルスが1となり、残りのパルスは0となる。ΔΣ変調器100の出力レベルが3の場合、PWM出力信号においては、1~3番目のパルスが1となり、残りのパルスは0となる。ΔΣ変調器100の出力レベルが4の場合、PWM出力信号においては、4つのパルスともに1となる。
【0024】
このようにΔΣ変調器100の多値出力に応じてPWM出力信号のパルス幅(デューティ)を変化させる。これにより、PWM変換部200の出力ピンの個数は1個で済み、ΔΣ変調器100の量子化レベルを上げることができる。
【0025】
図9のような構成の信号処理回路300を用いてDAコンバータ回路を構成する場合は、信号処理回路300の後段側に図1と同様にDACおよびアナログLPFを設ける(この場合、ΔΣ変調器100の入力はデジタル入力信号)。また、図9のような構成の信号処理回路300を用いてADコンバータ回路を構成する場合は、信号処理回路300の後段側に図7と同様にデジタルLPFおよびデシメーションフィルタを設ける(この場合、ΔΣ変調器100の入力はアナログ入力信号)。
【0026】
しかしながら、上記のような信号処理回路300では、PWM出力信号の変化点が多くなる。変化点は、ローレベルからハイレベルへの変化点と、ハイレベルからローレベルへの変化点を含む。変化点が多くなると、例えば信号処理回路300の後段に設けられるDACにおいて備えられるドライバ回路のスイッチング回数が多くなり、貫通電流が流れる頻度が高くなり、消費電流が増加する。また、スイッチング時に電源およびグランドへノイズが伝わり、特性悪化の原因ともなる。なお、上記ドライバ回路は、例えばHブリッジドライバと呼ばれる回路である。Hブリッジドライバは、2つのスイッチング素子からなるハーフブリッジを2つ備える。
【0027】
また、後述するような絶縁通信部を信号処理回路300の後段に設けるADコンバータ回路の場合は、絶縁通信部における回路電流が回路全体に対して大きな比率を占めており、上記変化点ごとに大きい電流が発生するため、絶縁通信部がノイズ源となる。
【0028】
<第1実施形態>
上記課題を解決すべく、以下説明する本開示の実施形態が実施される。図11は、本開示の第1実施形態に係る信号処理回路500の構成を示す図である。信号処理回路500の先述した信号処理回路300(図9)との相違点は、ΔΣ変調器100とPWM変換部200との間にパルス選択部400を挿入していることである。
【0029】
先述した信号処理回路300(比較例)におけるPWM変換部200では、ΔΣ変調器100からの出力サンプルごとにおけるレベル(出力振幅)に応じて、PWM出力信号において選択されるパルスは固定であった。ここで、パルスの選択とは、量子化レベル=nとして、1/((n-1)×f)ごとに区切られる期間(以下、選択対象期間)のうち、いずれかの選択対象期間を選択してレベルをハイレベルとすることである。図10の例であれば、n=5であるので、1/(4f)ごとに区切られる選択対象期間(4つの選択対象期間)のうち、ハイレベルとされる選択対象期間は、出力振幅に応じて固定である。
【0030】
これに対して、本実施形態の信号処理回路500におけるパルス選択部400は、PWM出力信号Spwmにおける変化点の数が少なくなるようにパルスの選択を行う。具体的には、パルス選択部400は、ΔΣ変調器100からの出力サンプルごとにおける出力振幅に応じた個数の選択対象期間をハイレベルとする(これは先述した信号処理回路300と同様)。なお、出力振幅によっては、すべての選択対象期間がローレベルまたはハイレベルになることもある。
【0031】
また、パルス選択部400は、前回の出力サンプルに対応するPWM出力信号の最後の選択対象期間がローレベルの場合、今回の出力サンプルに対応するPWM出力信号の最初の選択対象期間をローレベルとし、最後の選択対象期間から連続した期間をハイレベルとする。連続した期間をハイレベルにするとは、ハイレベルにする選択対象期間が1つの場合は、最後の選択対象期間のみをハイレベルとし、ハイレベルにする選択対象期間が複数の場合は、最後の選択対象期間を含めた上記複数の連続した選択対象期間をハイレベルとすることである。
【0032】
また、パルス選択部400は、前回の出力サンプルに対応するPWM出力信号の最後の選択対象期間がハイレベルの場合、今回の出力サンプルに対応するPWM出力信号の最初の選択対象期間から連続した期間をハイレベルとする。連続した期間をハイレベルにするとは、ハイレベルにする選択対象期間が1つの場合は、最初の選択対象期間のみをハイレベルとし、ハイレベルにする選択対象期間が複数の場合は、最初の選択対象期間を含めた上記複数の連続した選択対象期間をハイレベルとすることである。
【0033】
このような方法によりPWM出力信号Spwmにおいてパルスを選択した例を図12を用いて説明する。図12において、左方は比較例に係る信号処理回路300によるパルス選択の例を示し、右方は本実施形態に係る信号処理回路500(パルス選択部400)によるパルス選択の例を示す。図12において、左右ともにΔΣ変調器100からの出力サンプルごとの出力振幅を示しており、出力振幅の並びは同じパターンであるとする。
【0034】
図12の左方(比較例)では、出力振幅に応じたパルス選択は固定としている。これに対して、図12の右方(本実施形態)では、前回の出力サンプルにおける最後の選択対象期間のレベルに応じて、同じ出力振幅の値でも今回の出力サンプルにおいてパルス選択を変えている。これにより、出力サンプルの順に前方の選択対象期間がローレベル、後方の選択対象期間がハイレベルとなるパターンと、前方の選択対象期間がハイレベル、後方の選択対象期間がローレベルとなるパターンと、が交互に繰り返される。ただし、出力振幅=0の場合はすべての選択対象期間がローレベル、周力振幅=4の場合はすべての選択対象期間がハイレベルとされる。
【0035】
図13では、図12における左方(比較例)に示すPWM出力信号を時系列で並べたものを上方に示し、図12における右方(本実施形態)に示すPWM出力信号を時系列で並べたものを下方に示す。このように、比較例ではPWM出力信号における変化点の数=12個であったものが、本実施形態では変化点の数が6個に低減されている。このように変化点の数を低減することで、先述したような後段回路による消費電流およびノイズを抑制できる。
【0036】
<第2実施形態>
第1実施形態では、図12の例で示すように、1つのサンプル出力ごとに先述した方法でパルス選択を行っていた。これに対し、第2実施形態として、複数のサンプル出力ごとに先述したパルス選択の方法を適用してもよい。
【0037】
図14では、左方に比較例に係る信号処理回路300によるパルス選択の例、中央に第1実施形態に係るパルス選択の例、右方に第2実施形態に係るパルス選択の例を示す。図14において、いずれも出力サンプルの出力振幅のパターンは同じである。
【0038】
図14に示すように、第1実施形態(中央)ではサンプル出力ごとに、前方がローレベル、後方がハイレベルとなるパターンと、前方がハイレベル、後方がローレベルとなるパターンと、が繰り返される。これに対し、第2実施形態(右方)では、2つのサンプル出力ごとに、前方がローレベル、後方がハイレベルとなるパターンと、前方がハイレベル、後方がローレベルとなるパターンと、が繰り返される。
【0039】
PWM出力信号の変化点の個数は、比較例では16個、第1実施形態では8個、第2実施形態では12個となり、第2実施形態であっても比較例よりは個数を低減できる。
【0040】
<第3実施形態>
第3実施形態に係る信号処理回路は、第1実施形態に係る構成(図11)と同様であるが、パルス選択部400におけるパルス選択の方法が第1実施形態と異なっている。
【0041】
第3実施形態では、より具体的にパルス選択部400は、以下のような方法でパルス選択を行う。まず、選択対象期間ごとのハイレベルとされる回数であるパルス選択回数が選択対象期間の間で均一となるように、サンプル出力の出力振幅の値に応じて、ハイレベルとする選択対象期間の候補パターンを決定する。ただし、サンプル出力の出力振幅の値によって、すべての選択対象期間がローレベルまたはハイレベルとなる場合は除く。
【0042】
上記候補パターンが1つしかない場合は、その時点でパルス選択が決定される。一方、上記候補パターンが複数ある場合は、下記のような候補パターンの選択が行われる。前回の出力サンプルに対応するPWM出力信号の最後の選択対象期間がローレベルの場合、今回の出力サンプルに対応するPWM出力信号の最初の選択対象期間がローレベルとされ、かつ、最後の選択対象期間から連続した選択対象期間がハイレベルとされるように、上記候補パターンが選択される。一方、前回の出力サンプルに対応するPWM出力信号の最後の選択対象期間がハイレベルの場合、今回の出力サンプルに対応するPWM出力信号の最初の選択対象期間から連続した選択対象期間がハイレベルとされるように、上記候補パターンが選択される。
【0043】
図15では、左方に比較例に係る信号処理回路300によるパルス選択の例、右方に第3実施形態に係るパルス選択の例を示す。図15において、左右で出力サンプルの出力振幅のパターンは同じである。
【0044】
第3実施形態では、まず出力振幅=0(サンプル1)の場合、PWM出力信号におけるすべての選択対象期間がローレベルとされ、パルス選択が確定される。次に、出力振幅=1(サンプル2)の場合、すべての選択対象期間のうちいずれか1つが候補となる候補パターンが決定され、前回の出力サンプルに対応するPWM出力信号の最後の選択対象期間がローレベルであるので、今回の出力サンプルに対応するPWM出力信号の最初の選択対象期間がローレベルとされ、最後の選択対象期間のみがローレベルとされる。すなわち、最後の選択対象期間が候補パターンとして選択される。
【0045】
次に、出力振幅=1(サンプル3)の場合、最後の選択対象期間を除く、いずれか1つの選択対象期間が候補となる候補パターンが決定され、前回の出力サンプルに対応するPWM出力信号の最後の選択対象期間がハイレベルであるので、今回の出力サンプルに対応するPWM出力信号の最初の選択対象期間のみがハイレベルとされる。すなわち、最初の選択対象期間が候補パターンとして選択される。
【0046】
次に、出力振幅=2(サンプル4)の場合、最初と最後の選択対象期間を除く2つの選択対象期間が候補対象パターンとして決定され、当該候補対象パターンは1つであるので、パルス選択が確定される。このときに、すべての選択対象期間が選択完了となり、すべての選択対象期間が候補となる。
【0047】
次に、出力振幅=2(サンプル5)の場合、すべての選択対象期間のうちいずれか2つが候補となる候補パターンが決定され、前回の出力サンプルに対応するPWM出力信号の最後の選択対象期間がローレベルであるので、今回の出力サンプルに対応するPWM出力信号の最初の選択対象期間がローレベルとされ、最後の選択対象期間から連続した2つの選択対象期間がハイレベルとされる。すなわち、最後の2つの選択対象期間が候補パターンとして選択される。
【0048】
次に、出力振幅=3(サンプル6)の場合、最初から2つの選択対象期間に加えて、残りの選択対象期間からいずれか1つが候補となる候補パターンが決定され、前回の出力サンプルに対応するPWM出力信号の最後の選択対象期間がハイレベルであるので、今回の出力サンプルに対応するPWM出力信号の最初の選択対象期間から連続した3つの選択対象期間がハイレベルとされる。すなわち、最初の3つの選択対象期間が候補パターンとして選択される。
【0049】
次に、出力振幅=3(サンプル7)の場合、最初から2つの選択対象期間および最後の選択対象期間が候補となる候補パターンが決定され、当該候補対象パターンは1つであるので、パルス選択が確定される。この時点で、すべての選択対象期間が選択完了となる。
【0050】
出力振幅=4(サンプル8)の場合、PWM出力信号におけるすべての選択対象期間がハイレベルとされ、パルス選択が確定される。
【0051】
以降、同様に出力サンプルごとにパルス選択が行われる。これにより、図15の例では、比較例(左方)の場合、PWM出力信号における変化点の個数は24個であるが、だい3実施形態(右方)の場合、変化点の個数を18個に低減させることができる。このように、本実施形態では、変化点の個数を低減するとともに、パルス選択回数の均一化が可能となる。パルス選択回数の均一化により、本実施形態に係る信号処理回路500を用いてDAコンバータ回路またはADコンバータ回路を構成する場合は、S/N比を改善することができる。このような特性改善の効果は、本願発明者によって検証されている。
【0052】
<PWM変換部の出力ピン>
先述した実施形態では、PWM変換部200の出力ピンは1ピンであったが、PWM変
換部の出力ピンは複数ピンとしてもよい。ここでは、このような変形例について述べる。
【0053】
例えば、ΔΣ変調器100は17値出力の構成とし、PWM変換部200の出力ピンの数は4個としてもよい。すなわち、PWM変換部20の4つの出力ピンからPWM出力信号Spwmが出力される。本実施形態では、ΔΣ変調器110の出力がn値(nは2以上の整数)として、(PWM変換部200の出力ピン数)×(1つの出力ピンあたりのパルス数)+1=nとなる。なお、パルス数は、選択対象期間の個数である。
【0054】
先述したようにΔΣ変調器100が5値出力の場合は、1つの出力ピンあたりのパルス数=4としているので、出力ピンの数=1として、1×4+1=5値となる。一方、ΔΣ変調器100が17値出力の場合は、1つの出力ピンあたりのパルス数=4としているので、出力ピンの数=4として、4×4+1=17値となる。従って、ΔΣ変調器100の量子化レベルをより上げることができる。
【0055】
<DAコンバータ、ADコンバータ>
上記第1~第3実施形態に係る信号処理回路500を用いてDAコンバータ回路を構成する場合は、図16に示すDAコンバータ回路700のように、信号処理回路500の後段側に図1と同様にDAC2およびアナログLPF3を設ける(この場合、ΔΣ変調器100の入力はデジタル入力信号Din)。
【0056】
また、信号処理回路500を用いてADコンバータ回路を構成する場合は、図16に示すADコンバータ回路750のように、信号処理回路500の後段側に図7と同様にデジタルLPF20およびデシメーションフィルタ30を設ける(この場合、ΔΣ変調器100の入力はアナログ入力信号Ain)。
【0057】
<オーディオ機器への適用>
本開示の実施形態に係る信号処理回路は、様々な機器への適用が可能であるが、例えば、図17に示すようにオーディオ機器に適用することが好適である。図17に示すオーディオ機器800は、信号処理回路500を用いたDAコンバータ回路700(図16)を備えている。この場合、信号処理回路500には、デジタル入力信号Dinとしてデジタルオーディオ入力信号が用いられる。また、図17に示すオーディオ機器850は、信号処理回路500を用いたADコンバータ回路750(図16)を備えている。この場合、信号処理回路500には、アナログ入力信号Ainとしてアナログオーディオ入力信号が用いられる。
【0058】
<絶縁型の信号処理回路>
本開示の信号処理回路は、絶縁型に構成することも好適である。図18は、第1~第3実施形態の構成に対して絶縁通信部900を適用して構成される信号処理回路510を示す図である。図18の構成では、PWM変換部200の後段側に絶縁通信部900を配置している。絶縁通信部900は、PWM変換部200から出力される2値出力を絶縁しつつ後段側に伝送する。
【0059】
図19は、絶縁通信部900の構成例を示す図である。本構成例の絶縁通信部900は、一次回路系900p(VCC1-GND1系)と二次回路系900s(VCC2-GND2系)との間を絶縁しつつ、一次回路系900pから二次回路系900sにパルス信号に伝送する。絶縁通信部900は、コントローラチップ910と、ドライバチップ920と、トランスチップ930と、を有する。
【0060】
コントローラチップ910は、電源電圧VCC1の供給を受けて動作する半導体チップである。コントローラチップ910には、例えば、パルス送信回路911と、バッファ912および913が集積されている。
【0061】
パルス送信回路911は、入力パルス信号INに応じて送信パルス信号S11およびS21を生成するパルスジェネレータである。より具体的に述べると、パルス送信回路911は、入力パルス信号INがハイレベルである旨を通知するときには、送信パルス信号S11のパルス駆動(単発または複数発の送信パルス出力)を行い、入力パルス信号INがローレベルである旨を通知するときには、送信パルス信号S21のパルス駆動を行う。すなわち、パルス送信回路911は、入力パルス信号INの論理レベルに応じて、送信パルス信号S11およびS21のいずれか一方をパルス駆動する。
【0062】
バッファ912は、パルス送信回路911から送信パルス信号S11の入力を受けて、トランスチップ930(具体的にはトランス931)をパルス駆動する。
【0063】
バッファ913は、パルス送信回路911から送信パルス信号S21の入力を受けて、
トランスチップ930(具体的にはトランス932)をパルス駆動する。
【0064】
ドライバチップ920は、電源電圧VCC2の供給を受けて動作する半導体チップである。ドライバチップ920には、例えば、バッファ921および922と、パルス受信回路923と、ドライバ924が集積されている。
【0065】
バッファ921は、トランスチップ930(具体的にはトランス931)に誘起される受信パルス信号S12を波形整形してパルス受信回路923に出力する。
【0066】
バッファ922は、トランスチップ930(具体的にはトランス932)に誘起される受信パルス信号S22を波形整形してパルス受信回路923に出力する。
【0067】
パルス受信回路923は、バッファ921および922を介して入力される受信パルス信号S12およびS22に応じてドライバ924を駆動することにより出力パルス信号OUTを生成する。より具体的に述べると、パルス受信回路923は、受信パルス信号S12のパルス駆動を受けて出力パルス信号OUTをハイレベルに立ち上げる一方、受信パルス信号S22のパルス駆動を受けて出力パルス信号OUTをローレベルに立ち下げるようにドライバ924を駆動する。すなわち、パルス受信回路923は、入力パルス信号INの論理レベルに応じて出力パルス信号OUTの論理レベルを切り替える。なお、パルス受信回路923としては、例えば、RSフリップフロップを好適に用いることができる。
【0068】
ドライバ924は、パルス受信回路923の駆動制御に基づいて出力パルス信号OUT
を生成する。
【0069】
トランスチップ930は、トランス931および932を用いてコントローラチップ910とドライバチップ920との間を直流的に絶縁しつつ、パルス送信回路911から入力される送信パルス信号S11およびS21をそれぞれ受信パルス信号S12およびS22としてパルス受信回路923に出力する。なお、本明細書中において、「直流的に絶縁する」とは、絶縁すべき対象物が導体では接続されていないということである。
【0070】
より具体的に述べると、トランス931は、一次側コイル931pに入力される送信パルス信号S11に応じて、二次側コイル931sから受信パルス信号S12を出力する。一方、トランス932は、一次側コイル932pに入力される送信パルス信号S21に応
じて、二次側コイル932sから受信パルス信号S22を出力する。
【0071】
このように、絶縁間通信に用いられるスパイラルコイルの特性上、入力パルス信号INは、2本の送信パルス信号S11およびS21(=ライズ信号及びフォール信号に相当)に分離された後、2つのトランス931および932を介して一次回路系900pから二次回路系900sに伝達される。
【0072】
なお、本構成例の絶縁通信部900は、コントローラチップ910およびドライバチップ920とは別に、トランス931および932のみを搭載するトランスチップ930を独立に有しており、これら3つのチップが単一のパッケージに封止される。
【0073】
このような構成とすることにより、コントローラチップ910、およびドライバチップ920については、いずれも一般の低耐圧~中耐圧プロセス(数V~数十V耐圧)で形成することができるので、専用の高耐圧プロセス(数kV耐圧)を用いる必要がなくなり、製造コストを低減することが可能となる。
【0074】
<その他>
なお、本明細書中に開示されている種々の技術的特徴は、上記実施形態のほか、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【0075】
<付記>
以上のように、本開示の一態様に係る信号処理回路(500)は、
入力信号をn値出力信号(nは2以上の整数)に変換して出力するように構成されるΔΣ変調器(100)と、
前記n値出力信号を前記n値出力信号のレベル(振幅)に応じたデューティを有するPWM出力信号(Spwm)に変換するように構成されるPWM変換部(200)と、
前記PWM出力信号を構成する選択対象期間のうちハイレベルとする前記選択対象期間を、前記n値出力信号のレベルに対して選択することでパルス選択を行うように構成されるパルス選択部(400)と、
を備え、
前記パルス選択部は、前記n値出力信号の1つ以上のサンプルごとに、前記サンプルの切り替わりにおいて、今回の前記サンプルに対応する前記PWM出力信号における最初の前記選択対象期間のレベルが、前回の前記サンプルに対応する前記PWM出力信号における最後の前記選択対象期間のレベルと一致するように、パルス選択を行う構成としている(第1の構成)。
【0076】
また、上記第1の構成において、前記パルス選択部は、前回の前記サンプルに対応する前記PWM出力信号における最後の前記選択対象期間のレベルがローレベルの場合、今回の前記サンプルに対応する前記PWM出力信号において、最初の前記選択対象期間のレベルをローレベルとし、かつ最後の前記選択対象期間から連続した前記選択対象期間をハイレベルとする構成としてもよい(第2の構成)。
【0077】
また、上記第1または第2の構成において、前記パルス選択部は、前回の前記サンプルに対応する前記PWM出力信号における最後の前記選択対象期間のレベルがハイレベルの場合、今回の前記サンプルに対応する前記PWM出力信号において、最初の前記選択対象期間から連続した前記選択対象期間をハイレベルとする構成としてもよい(第3の構成)。
【0078】
また、上記第1から第3のいずれかの構成において、前記パルス選択部は、1つ以上の前記サンプルごとに、前方の前記選択対象期間がローレベル、後方の前記選択対象期間がハイレベルとなるパターンと、前方の前記選択対象期間がハイレベル、後方の前記選択対象期間がローレベルとなるパターンと、を交互に繰り返すようにパルス選択を行う構成としてもよい(第4の構成)。
【0079】
また、上記第1から第3のいずれかの構成において、前記パルス選択部は、前記選択対象期間ごとのハイレベルとされる回数であるパルス選択回数が前記選択対象期間の間で均一となるように、前記サンプルのレベルに応じて、ハイレベルとする前記選択対象期間の候補パターンを決定し、
今回の前記サンプルに対応する前記PWM出力信号における最初の前記選択対象期間のレベルが、前回の前記サンプルに対応する前記PWM出力信号における最後の前記選択対象期間のレベルと一致するように、前記候補パターンを選択する構成としてもよい(第5の構成)。
【0080】
また、上記第1から第5のいずれかの構成において、前記PWM変換部の出力ピンの個数が複数であり、
パルス数を前記選択対象期間の数として、
(前記出力ピンの数)×(1つの前記出力ピンあたりの前記パルス数)+1=nである構成としてもよい(第6の構成)。
【0081】
また、上記第1から第6のいずれかの構成において、前記PWM変換部の後段側に配置され、パルス信号を絶縁しつつ伝送するように構成される絶縁通信部(900)をさらに備える構成としてもよい(第7の構成)。
【0082】
また、本開示の一態様に係るDAコンバータ回路(700)は、上記第1から第7のいずれかの構成の信号処理回路と、前記信号処理回路の後段側に配置されるDAコンバータ(2)と、前記DAコンバータの後段側に配置されるアナログローパスフィルタ(3)と、を備える(第8の構成)。
【0083】
また、本開示の一態様に係るADコンバータ回路(750)は、上記第1から第7のいずれかの構成の信号処理回路と、前記信号処理回路の後段側に配置されるデジタルローパスフィルタ(20)と、前記デジタルローパスフィルタの後段側に配置されるデシメーションフィルタ(30)と、を備える(第9の構成)。
【0084】
また、本開示の一態様に係るオーディオ機器(800)は、上記第8の構成のDAコンバータ回路を備える。
【0085】
また、本開示の一態様に係るオーディオ機器(850)は、上記第9の構成のADコンバータ回路を備える。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本開示は、例えば、オーディオ機器など各種機器に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0087】
1 ΔΣ変調器
1A 積分器
1B 量子化器
2 DAC
3 アナログLPF
5 DAコンバータ回路
10 ΔΣ変調器
10A 積分器
10B 量子化器
10C DAC
20 デジタルLPF
30 デシメーションフィルタ
50 ADコンバータ回路
100 ΔΣ変調器
200 PWM変換部
300 信号処理回路
400 パルス選択部
500,510 信号処理回路
700 DAコンバータ回路
750 ADコンバータ回路
800 オーディオ機器
850 オーディオ機器
900 絶縁通信部
900p 一次回路系
900s 二次回路系
910 コントローラチップ
911 パルス送信回路
912 バッファ
913 バッファ
920 ドライバチップ
921 バッファ
922 バッファ
923 パルス受信回路
924 ドライバ
930 トランスチップ
931 トランス
931p 一次側コイル
931s 二次側コイル
932 トランス
932p 一次側コイル
932s 二次側コイル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19