(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001915
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】電源制御装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20241226BHJP
【FI】
H02M3/155 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023101693
(22)【出願日】2023-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥 浩典
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AS05
5H730BB13
5H730BB81
5H730DD04
5H730EE13
5H730EE58
5H730FD61
5H730FF09
5H730XX04
5H730XX19
5H730XX24
5H730XX38
5H730XX42
5H730XX50
(57)【要約】
【課題】使用環境履歴の参照を可能とする電源制御装置を提供する。
【解決手段】入力電圧から出力電圧を生成する電源装置の動作を制御する電源制御装であって、当該電源制御装置の温度が複数の温度範囲(R[1]~R[5])の何れに属するかを判定するよう構成された温度判定回路と、前記温度範囲ごとに、当該電源制御装置の温度が当該温度範囲に属する時間を計測する計測回路と、前記計測回路による計測結果を記憶する不揮発性メモリと、を備える。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電圧から出力電圧を生成する電源装置の動作を制御するよう構成された電源制御装置であって、
当該電源制御装置の温度が複数の温度範囲の何れに属するかを判定するよう構成された温度判定回路と、
前記温度範囲ごとに、当該電源制御装置の温度が当該温度範囲に属する時間を計測するよう構成された計測回路と、
前記計測回路による計測結果を記憶するよう構成された不揮発性メモリと、を備える
、電源制御装置。
【請求項2】
前記不揮発性メモリは、前記温度範囲ごとに累積駆動時間を記憶し、
前記温度範囲ごとの前記累積駆動時間は、当該電源制御装置の駆動時間の内、当該電源制御装置の温度が当該温度範囲に属する時間の累積値を表す
、請求項1に記載の電源制御装置。
【請求項3】
当該電源制御装置の外部装置に対して特定信号を出力可能に構成された信号出力制御回路を更に備え、
前記信号出力制御回路は、前記不揮発性メモリに記憶された各累積駆動時間に基づき、前記特定信号を出力するかを決定する
、請求項2に記載の電源制御装置。
【請求項4】
前記信号出力制御回路は、前記不揮発性メモリに記憶された各累積駆動時間に基づき当該電源制御装置が寿命に達したかを判定し、前記判定の結果に基づき前記特定信号を出力するかを決定する
、請求項3に記載の電源制御装置。
【請求項5】
前記信号出力制御回路は、前記複数の温度範囲に対する複数の累積駆動時間を重み付け加算することで加重和を導出し、前記加重和と所定の閾値との比較結果に基づき当該電源制御装置が寿命に達したかを判定する
、請求項4に記載の電源制御装置。
【請求項6】
当該電源制御装置の温度に応じた信号を出力するよう構成された温度センサと、
前記温度センサの出力信号に基づき当該電源制御装置の温度異常を検出するよう構成された温度異常検出回路と、を備え、
前記温度判定回路は、前記温度センサを用いて当該電源制御装置の温度が前記複数の温度範囲の何れに属するかを判定する
、請求項1~5の何れかに記載の電源制御装置。
【請求項7】
所定の異常を検出するよう構成された異常検出回路を備え、
前記異常検出回路にて前記異常が検出されたとき、前記異常が検出された旨を示す情報が前記不揮発性メモリに記憶される
、請求項1~5の何れかに記載の電源制御装置。
【請求項8】
前記電源装置は複数チャネルのレギュレータを有して、チャネルごとに前記入力電圧から前記出力電圧を生成し、
当該電源制御装置は前記チャネルごとに前記レギュレータの動作を制御する
、請求項1~5の何れかに記載の電源制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電源制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
入力電圧から出力電圧を生成する電源装置の動作を制御する装置として、様々な電源制御装置が実用化されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
[概要]
電源制御装置及び電源装置は様々な環境で使用される。電源制御装置及び電源装置の使用環境は、それらの寿命判定等に関わる重要な情報である。当該情報を参照可能とする技術は有益である。
【0005】
本開示に係る電源制御装置は、入力電圧から出力電圧を生成する電源装置の動作を制御するよう構成された電源制御装置であって、当該電源制御装置の温度が複数の温度範囲の何れに属するかを判定するよう構成された温度判定回路と、前記温度範囲ごとに、当該電源制御装置の温度が当該温度範囲に属する時間を計測するよう構成された計測回路と、前記計測回路による計測結果を記憶するよう構成された不揮発性メモリと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態に係る電源装置の概略的な構成ブロック図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施形態に係る電源制御装置の外観斜視図である。
【
図3】
図3は、本開示の実施形態に係る電源装置に、複数チャネルのレギュレータが設けられる様子を示す図である。
【
図4】
図4は、本開示の実施形態に係る電源装置に、複数チャネルのレギュレータが設けられる様子を示す図である。
【
図5】
図5は、本開示の実施形態に係り、電源装置における2つのレギュレータの構成図である。
【
図6】
図6は、本開示の実施形態に係り、電源制御装置の一部ブロック図である。
【
図7】
図7は、本開示の実施形態に係り、複数の境界温度と複数の温度範囲との関係図である。
【
図8】
図8は、本開示の実施形態に係り、
図6の計測回路の動作説明図である。
【
図9】
図9は、本開示の実施形態に係り、不揮発性メモリに記憶される温度履歴情報の構造図である。
【
図10】
図10は、本開示の実施形態に係り、不揮発性メモリに記憶される温度履歴情報の例を示す図である。
【0007】
[詳細な説明]
以下、本開示の実施形態の例を、図面を参照して具体的に説明する。参照される各図において、同一の部分には同一の符号を付し、同一の部分に関する重複する説明を原則として省略する。尚、本明細書では、記述の簡略化上、情報、信号、物理量、機能部、回路、素子又は部品等を参照する記号又は符号を記すことによって、該記号又は符号に対応する情報、信号、物理量、機能部、回路、素子又は部品等の名称を省略又は略記することがある。例えば、後述の“26”によって参照される不揮発性メモリは(
図6参照)、不揮発性メモリ26と表記されることもあるし、メモリ26と略記されることもあり得るが、それらは全て同じものを指す。
【0008】
まず、本開示の実施形態の記述にて用いられる幾つかの用語について説明を設ける。グランドとは、基準となる0V(ゼロボルト)の電位を有する基準導電部を指す又は0Vの電位そのものを指す。基準導電部は金属等の導体を用いて形成されて良い。本開示の実施形態において、特に基準を設けずに示される電圧はグランドから見た電位を表す。
【0009】
MOSFETを含むFET(電界効果トランジスタ)として構成された任意のトランジスタについて、オン状態とは、当該トランジスタのドレイン及びソース間が導通している状態を指し、オフ状態とは、当該トランジスタのドレイン及びソース間が非導通となっている状態(遮断状態)を指す。FETに分類されないトランジスタについても同様である。MOSFETは、特に記述無き限り、エンハンスメント型のMOSFETであると解される。MOSFETは“metal-oxide-semiconductor field-effect transistor”の略称である。また、特に記述なき限り、任意のMOSFETにおいて、バックゲートはソースに短絡されていると考えて良い。以下、任意のトランジスタについて、オン状態、オフ状態を、単に、オン、オフと表現することもある。
【0010】
任意の回路素子、配線、ノードなど、回路を形成する複数の部位間についての接続とは、特に記述なき限り、電気的な接続を指すと解して良い。
【0011】
図1は本開示の実施形態に係る電源装置1の概略的な構成ブロック図である。電源装置1は、電源制御装置2と、電源制御装置2に対して外付け接続される複数のディスクリート部品から成るディスクリート部品群3と、を備える。電源制御装置2はPMIC(Power Management IC)に分類される電子部品であって良い。
【0012】
図2に電源制御装置2の外観斜視図を示す。電源制御装置2は、半導体基板上に形成された半導体集積回路を有する半導体チップと、半導体チップを収容する筐体(パッケージ)と、筐体から電源制御装置2の外部に対して露出する複数の外部端子と、を備えた電子部品である。半導体チップを樹脂にて構成された筐体(パッケージ)内に封入することで電源制御装置2が形成される。尚、
図2に示される電源制御装置2の外部端子の数及び電源制御装置2の筐体の種類は例示に過ぎず、それらを任意に設計可能である。
【0013】
図3に示す如く、電源装置1には、nチャネル分のレギュレータ4が設けられる、即ち、n個のレギュレータ4が設けられる。各レギュレータ4には制御ブロック10が設けられる。nは2以上の任意の整数を表す。n個のチャネルは第1~第nチャネルから成る。各レギュレータ4は入力電圧V
INの供給を受け、入力電圧V
INを電力変換することで出力電圧V
OUTを生成する。各チャネルにおいて入力電圧V
IN及び出力電圧V
OUTは互いに異なる直流電圧である。各チャネルにおける入力電圧V
IN又は出力電圧V
OUTは負の直流電圧であり得るが、以下では、各チャネルにおける入力電圧V
IN及び出力電圧V
OUTは正の直流電圧であるとする。
【0014】
第1~第nチャネルにおける1以上のチャネルのレギュレータ4はスイッチングレギュレータであって良い。スイッチングレギュレータとしてのレギュレータ4は、入力電圧VINを降圧することで入力電圧VINより低い出力電圧VOUTを生成する降圧型のスイッチングレギュレータ、又は、入力電圧VINを昇圧することで入力電圧VINより高い出力電圧VOUTを生成する昇圧型のスイッチングレギュレータであって良い。第1~第nチャネルにおける1以上のチャネルのレギュレータ4はリニアレギュレータであって良い。第1~第nチャネルにおける計n個のレギュレータ4は、全てスイッチングレギュレータであっても良いし、全てリニアレギュレータであっても良い。第1~第nチャネルにおける計n個のレギュレータ4の中に、1以上のスイッチングレギュレータと、1以上のリニアレギュレータと、が混在していても良い。
【0015】
第1~第nチャネルにおける計n個の出力電圧VOUTは互いに異なる直流電圧である。但し、第iAチャネルにおける出力電圧VOUTの値と、第iBチャネルにおける出力電圧VOUTの値とが一致する場合もあり得る。ここで、iA及びiBはn以下の互いに異なる任意の自然数を表す。
【0016】
第1~第nチャネルにおける計n個の入力電圧VINは互いに同じ直流電圧であり得る。即ち、共通の直流電圧が第1~第nチャネルの入力電圧VINとして兼用され得る。第iAチャネルにおける入力電圧VINは第iBチャネルにおける入力電圧VINと同じである場合もあるし、異なる場合もある。第1~第nチャネルの何れかのチャネルの入力電圧VINは電源制御装置2の電源電圧であって良い。
【0017】
第1~第nチャネルにおける計n個の制御ブロック10は電源制御装置2に設けられる。各チャネルにおいて、制御ブロック10と制御ブロック10に対して接続されたディスクリート部品にてレギュレータ4が形成される。
図4に示す如く、第iチャネルにおけるレギュレータ4、制御ブロック10、入力電圧V
IN、出力電圧V
OUTを、夫々、特にレギュレータ4[i]、制御ブロック10[i]、入力電圧V
IN[i]、出力電圧V
OUT[i]と表記する。iは任意の整数を表す(例えばn以下の任意の自然数を表す)。
【0018】
電源装置1は、チャネルごとに入力電圧VINから出力電圧VOUTを生成する動作(電力変換)を行う。電力制御装置2は電源装置1の動作(電力変換)を制御する。即ち、電力制御装置2はチャネルごとにレギュレータ4の動作(電力変換)を制御する。
【0019】
図5に、レギュレータ4[1]~4[n]の内、任意の2つのレギュレータ4であるレギュレータ4[i
A]及び4[i
B]の構成例を示す。レギュレータ4[i
A]は、制御ブロック10[i
A]と出力コイルL[i
A]及び出力コンデンサC[i
A]とを備えた降圧型のスイッチングレギュレータである。レギュレータ4[i
B]は制御ブロック10[i
B]と出力コンデンサC[i
B]とを備えたリニアレギュレータである。レギュレータ4[i
B]はLDO(Low Dropout)レギュレータであって良い。制御ブロック10[i
A]及び10[i
B]は電源制御装置2に設けられる。出力コイルL[i
A]並びに出力コンデンサC[i
A]及びC[i
B]はディスクリード部品群3(
図1参照)の構成要素である。
【0020】
制御ブロック10[iA]はトランジスタ11及び12と制御駆動回路13を備える。トランジスタ11はPチャネル型のMOSFETであり、トランジスタ12はNチャネル型のMOSFETである。トランジスタ11のソースに対して入力電圧VIN[iA]が供給される。トランジスタ11及び12の各ドレインは出力コイルL[iA]の第1端に共通接続される。出力コイルL[iA]の第2端は出力ノードOUT[iA]に接続される。トランジスタ12のソースはグランドに接続される。出力ノードOUT[iA]及びグランド間に出力コンデンサC[iA]が設けられる。即ち、出力コンデンサC[iA]の第1端は出力ノードOUT[iA]に接続され、出力コンデンサC[iA]の第2端はグランドに接続される。出力ノードOUT[iA]における電圧が出力電圧VOUT[iA]である。
【0021】
制御駆動回路13に対して出力電圧V
OUT[i
A]の帰還情報が入力される。
図5では、出力ノードOUT[i
A]が制御駆動回路13に接続されることで、出力電圧V
OUT[i
A]そのものが出力電圧V
OUT[i
A]の帰還情報として制御駆動回路13に入力される。但し、出力電圧V
OUT[i
A]の帰還情報は出力電圧V
OUT[i
A]の分圧であっても良い。制御駆動回路13はトランジスタ11及び12の各ゲートに接続され、トランジスタ11及び12の各ゲート電位を制御することでトランジスタ11及び12を個別にオン又はオフに制御する。制御駆動回路13は、出力電圧V
OUT[i
A]の帰還情報に基づき、出力電圧V
OUT[i
A]が所定の目標電圧にて安定化されるよう、トランジスタ11及び12を交互にオン、オフに切り替えるスイッチング制御を行う。当該スイッチング制御により、トランジスタ11及び12間の接続ノードに矩形波電圧(概ね0Vと入力電圧V
IN[i
A]との間で変動する矩形波電圧)が発生する。出力コイルL[i
A]及び出力コンデンサC[i
A]により当該矩形波電圧が整流及び平滑化されることで出力ノードOUT[i
A]に出力電圧V
OUT[i
A]が生じる。
【0022】
制御ブロック10[iB]はトランジスタ14と制御駆動回路15を備える。トランジスタ14はPチャネル型のMOSFETである。トランジスタ14のソースに対して入力電圧VIN[iB]が供給される。トランジスタ14のドレインは出力ノードOUT[iB]に接続される。出力ノードOUT[iB]及びグランド間に出力コンデンサC[iB]が設けられる。即ち、出力コンデンサC[iB]の第1端は出力ノードOUT[iB]に接続され、出力コンデンサC[iB]の第2端はグランドに接続される。出力ノードOUT[iB]における電圧が出力電圧VOUT[iB]である。
【0023】
制御駆動回路15に対して出力電圧V
OUT[i
B]の帰還情報が入力される。
図5では、出力ノードOUT[i
B]が制御駆動回路15に接続されることで、出力電圧V
OUT[i
B]そのものが出力電圧V
OUT[i
B]の帰還情報として制御駆動回路15に入力される。但し、出力電圧V
OUT[i
B]の帰還情報は出力電圧V
OUT[i
B]の分圧であっても良い。制御駆動回路15はトランジスタ14のゲートに接続される。制御駆動回路15は、出力電圧V
OUT[i
B]の帰還情報に基づきトランジスタ14のゲート電位を制御することでトランジスタ14を介して出力ノードOUT[i
B]に供給される電流の大きさを制御し、これによって出力電圧V
OUT[i
B]を所定の目標電圧にて安定化させる。
【0024】
レギュレータ4[iA]と同等の構成を持つ2以上のレギュレータ4が電源装置1に設けられて良い。レギュレータ4[iB]と同等の構成を持つ2以上のレギュレータ4が電源装置1に設けられて良い。
【0025】
図6に、電源制御装置2の特徴的な機能を実現するためのブロック図であって、電源制御装置2の一部のブロック図を示す。電源制御装置2は、温度センサ21、温度判定回路22、計測回路23、異常検出回路24、メモリコントローラ25、不揮発性メモリ26、揮発性メモリ27及び信号出力制御回路28を備える。異常検出回路24には温度異常検出回路24aが含まれる。また、
図6には電源制御装置2の外部に設けられる外部装置5も図示される。外部装置5は例えばMPU(Micro Processing Unit)を含む。電源制御装置2及び外部装置5は所定の通信バスを通じて互いに双方向通信が可能に接続される。例えば、I
2C(Inter-Integrated Circuit )又はSPI(Serial Peripheral Interface)による通信バスを通じて、電源制御装置2及び外部装置5間の双方向通信が実現される。
【0026】
温度センサ21は対象温度TEMPを検出し、対象温度TEMPに応じた温度信号STEMPを出力する。対象温度TEMPは電源制御装置2の温度である。より具体的には、対象温度TEMPは電源制御装置2内における所定の測定対象位置での温度である。即ち、温度センサ21は電源制御装置2内の所定の測定対象位置に設置され、測定対象位置における温度に応じた温度信号STEMPを出力する。
【0027】
温度センサ21は半導体のPN接合により形成される温度検出用ダイオードを用いて温度信号STEMPを生成する。より具体的には例えば、温度センサ21は、温度検出用ダイオードと、温度検出用ダイオードに対し定電流を順方向に供給する定電流回路と、温度検出用ダイオードの順方向電圧Vfに基づき温度信号STEMPを生成する出力回路と、を備える(何れも不図示)。順方向電圧Vfは、温度検出用ダイオードに対し定電流を順方向に供給している期間において、温度検出用ダイオードにて発生する順方向電圧である。温度信号STEMPは、順方向電圧Vfそのものあっても良いし、順方向電圧Vfを増幅することで得られる信号であっても良い。順方向電圧Vfは対象温度TEMPに応じて増減するため、順方向電圧Vfの検出を通じて温度信号STEMPを生成できる。温度信号STEMPは温度判定回路22及び温度異常検出回路24aに供給される。
【0028】
温度判定回路22は、温度信号S
TEMPに基づき対象温度TEMPが温度範囲R[1]~R[m]の何れに属するかを判定する。mは2以上の任意の整数を表す。温度範囲R[1 ]~R[m]は互いに重複しないm種類の温度範囲である。
図7を参照する。温度判定回路22において、所定の(m-1)種類の温度である境界温度T
B[1]~T
B[m-1]が定義される。境界温度T
B[j+1]は境界温度T
B[j]よりも高い。jは任意の整数を表す。“2≦j≦m-1”を満たす任意の整数jについて、温度範囲R[j]は境界温度T
B[j-1]以上且つ境界温度T
B[j]未満の温度範囲であるとする。境界温度T
B[1]未満の温度は温度範囲R[1]に属する。境界温度T
B[m]以上の温度は温度範囲R[m]に属する。
【0029】
温度判定回路22はAD変換器にて構成されていて良い。この場合、AD変換器は、アナログ電圧信号である温度信号STEMPをデジタル信号に変換することで、温度信号STEMPの電圧値を取得し、取得した電圧値に基づき対象温度TEMPが温度範囲R[1]~R[m]の何れに属するかを判定する。或いは、温度判定回路22は(m-1)個のコンパレータにて構成されていて良い。この場合、温度判定回路22は、(m-1)個のコンパレータを用いて温度信号STEMPの電圧と(m-1)種類の判定電圧とを比較し、温度信号STEMPの電圧と(m-1)種類の判定電圧との高低関係に基づき、対象温度TEMPが温度範囲R[1]~R[m]の何れに属するかを判定する。
【0030】
対象温度TEMPが温度範囲R[1]~R[m]の何れに属するかを示す分類信号SCLSが温度判定回路22から計測回路23に出力される。
【0031】
計測回路23は、分類信号SCLSに基づき、温度範囲ごとに温度TEMPが当該温度範囲に属する時間を計測する。便宜上、対象温度TEMPが温度範囲R[j]に属することを示す分類信号SCLSを分類信号SCLS[j]と称する。従って例えば、対象温度TEMPが温度範囲R[1]に属する期間では温度判定回路22から計測回路23に分類信号SCLS[1]が出力され、対象温度TEMPが温度範囲R[2]に属する期間では温度判定回路22から計測回路23に分類信号SCLS[2]が出力される。対象温度TEMPが他の温度範囲に属する期間も同様である。計測回路23をカウンタにて構成することができる。対象温度TEMPが温度範囲R[j]に属する時間を計測するためのカウント値をカウント値VAL[j]と称する。カウント値VAL[j]の初期値はゼロである。
【0032】
図8に、対象温度TEMPが温度範囲R[j]に属する期間におけるカウントVAL[j]の変化の様子を示す。計測回路23は分類信号S
CLS[j]が自身に供給される期間(即ち対象温度TEMPが温度範囲R[j]に属する期間)において、所定の微小時間が経過するごとにカウント値VAL[j]に1を加算する。計測回路23は、カウント値VAL[j]が所定の上限値VAL
MAXに達すると、カウント値VAL[j]をリセットすると共にアップカウント信号UP[j]をメモリコントローラ25に出力する。そうすると、対象温度TEMPが温度範囲R[j]に属する期間において、単位時間t
UNITが経過するごとにアップカウント信号UP[j]がメモリコントローラ25に出力される。つまり例えば、対象温度TEMPが温度範囲R[1]に属する期間では単位時間t
UNITが経過するごとアップカウント信号UP[1]が計測回路23からメモリコントローラ25に出力され、対象温度TEMPが温度範囲R[2]に属する期間では単位時間t
UNITが経過するごとアップカウント信号UP[2]が計測回路23からメモリコントローラ25に出力される。対象温度TEMPが他の温度範囲に属する期間も同様である。単位時間t
UNITは、上記微小時間と上限値VAL
MAXとの積に相当し、例えば数分~数時間である。アップカウント信号UP[j]は例えばワンショットパルス信号であって良い。
【0033】
尚、カウント値VAL[j]のリセットとは、カウント値VAL[j]に対して初期値であるゼロを代入することを指す。上限値VALMAXはゼロより十分に大きな整数値(例えば255又は65535を持つ)。
【0034】
異常検出回路24は所定の異常を検出する(詳細には所定の異常の発生有無を検出する)。異常検出回路24にて検出される異常は、電源制御装置2内の異常又は電源装置1内の異常である。異常検出回路24による検出対象は少なくとも温度異常を含む。温度異常は温度異常検出回路24aにて検出される。温度異常として、対象温度TEMPが所定のシャットダウン温度TTSDに達する第1温度異常、及び、対象温度TEMPが所定の警告温度TTWに達する第2温度異常がある(TTSD>TTW)。温度異常検出回路24aは温度信号STEMPに基づき第1又は第2温度異常を検出する(詳細には第1又は第2温度異常の発生有無を検出する)。
【0035】
異常検出回路24による検出対象は、チャネルごとの出力電圧異常を含む。異常検出回路24は出力電圧VOUT[i]の帰還情報に基づき第iチャネルの出力電圧異常を検出する。出力電圧VOUT[i]の帰還情報は、出力電圧VOUT[i]そのもの又は出力電圧VOUT[i]の分圧である。チャネルごとの出力電圧異常として、OVP異常、OVD異常、UVP異常及びUVD異常がある。第iチャネルのOVP異常は、出力電圧VOUT[i]が所定の上方保護電圧VOVP[i]以上となる状態を指す。第iチャネルのOVD異常は、出力電圧VOUT[i]が所定の上方検出電圧VOVD[i]以上となる状態を指す。第iチャネルのUVD異常は、出力電圧VOUT[i]が所定の下方警告電圧VUVD[i]以下となる状態を指す。第iチャネルのUVP異常は、出力電圧VOUT[i]が所定の下方保護電圧VUVP[i]以下となる状態を指す。ここで、“VOVP[i]>VOVD[i]>VTG[i]>VUVD[i]>VUVP[i]>0”が成立する。VTG[i]は、出力電圧VOUT[i]が安定化されるべき目標電圧を表す。
【0036】
この他、異常検出回路24は様々な種類の異常を検出できて良い。例えば、電源制御装置2に供給される電源電圧が高すぎる又は低すぎる異常、外部装置5と電源制御装置2との間の通信異常、外部装置5又は他の回路と電源制御装置2とで利用されるウォッチドッグタイマの異常が、異常検出回路24の検出対象に含まれる。異常検出回路24は各種異常の検出結果をメモリコントローラ25に出力する。
【0037】
メモリコントローラ25は不揮発性メモリ26に対して任意の情報を書き込むことができると共に揮発性メモリ27に対して任意の情報を書き込むことができる。この際、メモリコントローラ25は、計測回路23による計測結果に応じた情報、又は、異常検出回路24による各種異常の検出結果に応じた情報を、メモリ26及び27に書き込むことができる。また、メモリコントローラ25はメモリ26又は27に記憶された任意の情報を読み出すこともできる。
【0038】
不揮発性メモリ26は自身に記憶される情報を複数回書き換え可能なMTPメモリ(Multi-Time Programmable Memory)である。不揮発性メモリ26は、電源制御装置2に対する電源電圧の供給が途絶えているときでも、自身の記憶内容を保持する。これに対し、揮発性メモリ27の記憶内容は、電源制御装置2に対する電源電圧の供給が途絶えれば、失われる。揮発性メモリ27はRAM(Random access memory)であり、レジスタに分類されるメモリであって良い。信号出力制御回路28はメモリ26又は27の記憶内容に基づく各種の情報を、上記通信バスを通じて外部装置5に出力できる。信号出力制御回路28はメモリコントローラ25を通じてメモリ26又は27の記憶内容を読み出して良い。
【0039】
メモリコントローラ25は、異常検出回路24にて何らかの異常が検出されたとき、その旨を、検出された異常の種類ごとに、メモリ26及び27に記憶させることができる。例えば、温度異常検出回路24aにて第1温度異常が検出されたとき、メモリコントローラ25は、第1温度異常が検出された旨を示す情報をメモリ26及び27に記憶させる。第2温度異常が検出されたときも同様である。また例えば、異常検出回路24にて第1チャネルのOVP異常が検出されたとき、メモリコントローラ25は、第1チャネルのOVP異常が検出された旨を示す情報をメモリ26及び27に記憶させる。同様に異常検出回路24にて第2チャネルのOVP異常が検出されたとき、メモリコントローラ25は、第2チャネルのOVP異常が検出された旨を示す情報をメモリ26及び27に記憶させる。他のチャネルのOVP異常が検出された場合も同様である。任意のチャネルのOVD異常、UVP異常又はUVD異常が検出された場合も同様である。他の種類の異常が検出された場合も同様である。
【0040】
加えて、メモリコントローラ25は、不揮発性メモリ26に温度履歴情報を記憶させる処理を行うことができる。
図9に不揮発性メモリ26に記憶される温度履歴情報の構造を示す。温度履歴情報は累積駆動時間t
ACM[1]~t
ACM[m]を表す情報を含む。
【0041】
電源制御装置2に電源電圧が供給される期間においてのみ電源制御装置2は駆動する。電源制御装置2が駆動する時間の内、温度TEMPが温度範囲R[j]に属していた時間の累積値が、累積駆動時間tACM[j]に相当する。即ち例えば、累積駆動時間tACM[1]は、電源制御装置2の駆動時間の内(詳細は総駆動時間の内)、温度TEMPが温度範囲R[1]に属していた時間の累積値である。同様に例えば、累積駆動時間tACM[2]は、電源制御装置2の駆動時間の内(詳細は総駆動時間の内)、温度TEMPが温度範囲R[2]に属していた時間の累積値である。累積駆動時間tACM[3]~tACM[m]についても同様である。換言すれば、累積駆動時間tACM[j]は、電源制御装置2の駆動時間の内(詳細は総駆動時間の内)、温度TEMPが温度範囲R[j]に属していた期間の長さの総和を表す。
【0042】
実際には、不揮発性メモリ26に、累積駆動時間t
ACM[1]~t
ACM[m]を示す累積駆動値N
ACM[1]~N
ACM[m]が個別に記憶されて良い。累積駆動時間t
ACM[1]~t
ACM[m]と累積駆動値N
ACM[1]~N
ACM[m]は一対一で対応する。即ち、累積駆動値N
ACM[j]は累積駆動時間t
ACM[j]を示す情報である。初期状態の電源制御装置2において、累積駆動値N
ACM[1]~N
ACM[m]は全てゼロである。メモリコントローラ25は、計測回路23からアップカウント信号UP[j](
図8参照)を受けるたびに累積駆動値N
ACM[j]を1だけ増加させる。つまり例えば、メモリコントローラ25は、計測回路23からアップカウント信号UP[1]を受けるたびに累積駆動値N
ACM[1]を1だけ増加させ、計測回路23からアップカウント信号UP[2]を受けるたびに累積駆動値N
ACM[2]を1だけ増加させる。累積駆動値N
ACM[j]と上記単位時間t
UNITとの積が累積駆動時間t
ACM[j]である。累積駆動値N
ACM[j]の記憶と累積駆動時間t
ACM[j]の記憶は等価である。
【0043】
図10に或る注目時刻における温度履歴情報の例を示す。
図10の例では、“m=5”であって、且つ、境界温度T
B[1]、T
B[2]、T
B[3]、T
B[4]が、夫々、0℃、75℃、100℃、125℃であることが想定されている。初期状態を起点に注目時刻に至るまでの期間において、対象温度TEMPが温度範囲R[1]に属する状態で電源制御装置2が計1時間だけ駆動し、対象温度TEMPが温度範囲R[2]に属する状態で電源制御装置2が計200時間だけ駆動し、対象温度TEMPが温度範囲R[3]に属する状態で電源制御装置2が計10時間だけ駆動し、対象温度TEMPが温度範囲R[4]に属する状態で電源制御装置2が計5時間だけ駆動し、且つ、対象温度TEMPが温度範囲R[5]に属する状態で電源制御装置2が計1時間だけ駆動したとする。そうすると、注目時刻において、累積駆動時間t
ACM[1]、t
ACM[2]、t
ACM[3]、t
ACM[4]、t
ACM[5]が、夫々、1時間、200時間、10時間、5時間、1時間であることを示す温度履歴情報が不揮発性メモリ26に記憶及び保持される。
【0044】
信号出力制御回路28は、不揮発性メモリ26に記憶された温度履歴情報を、上記通信バスを通じて外部装置5に出力可能である。外部装置5は温度履歴情報を要求するコマンドを電源制御装置2に送信することができ、当該コマンドが電源制御装置2にて受信されたことに応答して、信号出力制御回路28は温度履歴情報を外部装置5に送信する。
【0045】
また、信号出力制御回路28は、メモリ26又は27に記憶された任意の情報(例えば、異常検出回路24による各種異常の検出結果に応じた情報)を、上記通信バスを通じて外部装置5に出力可能である。この場合も、外部装置5から所定のコマンドを受信したことに応答して、信号出力制御回路28は当該コマンドにて指定された情報(メモリ26又は27内の情報)を外部装置5に送信する。
【0046】
上述のような温度履歴情報を不揮発性メモリ26に保持させることにより、電源制御装置2への電源電圧の供給が度々遮断される場合であっても、電源制御装置2の使用環境のデータ蓄積が可能となり、電源制御装置2の寿命に関わる判断が可能となる。また、異常に関わる情報も不揮発性メモリ26に保持させておくことにより、事後的な故障解析等が容易となる(即ち異常に関わる情報を故障解析等に役立てることができる)。
【0047】
信号出力制御回路28に寿命判定処理を行わせることもできる。これについて説明する。寿命判定処理において、信号出力制御回路28は、不揮発性メモリ26に記憶された累積駆動時間tACM[1]~tACM[m]に基づき電源制御装置2が寿命に達したかを判定する。
【0048】
電源制御装置2の設計段階において、電源制御装置2が仕様通りに駆動し続けることのできる駆動時間の設計値(以下、耐用設計時間と称する)が定められる。但し、耐用設計時間は電源制御装置2の使用温度によって変化する。基本的に、電源制御装置2の使用温度が高いほど耐用設計時間は短くなる。これを考慮し、寿命判定処理において、信号出力制御回路28は、累積駆動時間tACM[1]~tACM[m]を重み付け加算することで加重和WSUMを導出し、加重和WSUMと所定の寿命判定閾値との比較を通じて電源制御装置2の寿命に関わる判定を行う。加重和WSUMがゼロから増大するにつれて、電源制御装置2の寿命に近づく。
【0049】
加重和WSUMは下記式(1)に従って導出される。即ち、加重和WSUMは第1~第mの積の総和である。第jの積は(k[j]×tACM[j])である。k[1]~k[m]は所定の係数を表す。係数k[1]~k[m]は全て互いに異なる。但し、係数k[1]~k[m]の内、一部の係数の値と他の一部の係数の値とは一致し得る。少なくとも、係数k[1]~k[m]の中に、互いに異なる値を持つ2種類以上の係数が含まれる。例えば少なくとも係数k[1]及びk[m]は互いに異なる値を持つ。上述したように、電源制御装置2の使用温度が高いほど耐用設計時間は短くなる。このため、基本的には、係数k[j+1]の値は係数k[j]の値よりも大きいと良い(少なくとも“k[m]>k[1]”である)。
【0050】
【0051】
寿命判定処理において、信号出力制御回路28は、加重和WSUMを所定の寿命判定閾値THLIMと比較し、加重和WSUMが寿命判定閾値THLIM以上であるときに電源制御装置2が寿命に達したと判定する一方、加重和WSUMが寿命判定閾値THLIM未満であるときには電源制御装置2が寿命に達したと判定しない。信号出力制御回路28は、電源制御装置2が寿命に達したかの判定結果に基づき所定の寿命到達信号を外部装置5に出力(送信)するかを決定する。信号出力制御回路28は、電源制御装置2が寿命に達したと判定した場合、所定の寿命到達信号を外部装置5に出力(送信)する。電源制御装置2が寿命に達したと判定されない場合、寿命到達信号の出力(送信)は実行されない。
【0052】
また、寿命判定処理において、信号出力制御回路28は、加重和WSUMを所定の寿命警報閾値THW及び寿命判定閾値THLIMの夫々と比較し、“THLIM>WSUM≧THW”の成立時において所定の寿命警報信号を外部装置5に出力(送信)して良い。寿命到達信号は電源制御装置2が寿命に達したことを示す信号であるのに対し、寿命警報信号は電源制御装置2がまもなく寿命に達することを示す信号である。寿命到達信号又は寿命警報信号を出力可能としておくことで、電源制御装置2の交換時期又は電源制御装置2を含む機器の交換時期を把握することが可能となる。
【0053】
メモリ26及び27の夫々に寿命到達情報及び寿命警報情報を記憶させて良い。寿命到達情報及び寿命警報情報は夫々に“1”又は“0”の値を持つ。寿命到達情報及び寿命警報情報の各初期値は“0”である。信号出力制御回路28は、“WSUM≧THW”の成立時においてメモリコントローラ25を介しメモリ26及び27内の各寿命警報情報に“1”を書き込む。信号出力制御回路28は、“WSUM≧THLIM”の成立時においてメモリコントローラ25を介しメモリ26及び27内の各寿命到達情報に“1”を書き込む。“1”の寿命警報情報は、電源制御装置2がまもなく寿命に達することを示す情報である。“1”の寿命到達情報は、電源制御装置2が寿命に達したことを示す情報である。
【0054】
寿命到達信号と寿命警報信号とは外部装置5にて互いに区別可能な信号であって良いが、以下のような信号出力構成が採用されても良い。即ち、オープンドレイン構成の信号出力回路を電源制御装置2に設け、信号出力回路を用いて電源制御装置2から外部装置5に対してエラー信号を出力可能にしておく。エラー信号は“1”又は“0”の値を表す二値化信号である。信号出力制御回路28は、原則としてエラー信号に“0”の値を持たせ、“WSUM≧THLIM”の成立時において“1”のエラー信号を出力する。この際における“1”のエラー信号は寿命到達信号として機能する。或いは、信号出力制御回路28は、原則としてエラー信号に“0”の値を持たせ、“WSUM≧THW”の成立時において“1”のエラー信号を出力する。この際における“1”のエラー信号は寿命警報信号として機能する。加えて、信号出力制御回路28は異常検出回路24にて特定の異常(例えば温度異常又は出力電圧異常)が検出されたときにも、“1”のエラー信号を出力する。そうすると、“1”のエラー信号を受信した段階では、外部装置5は、“1”のエラー信号の要因を詳細には判断できない。但し、外部装置5は“1”のエラー信号を受信した後、メモリ26又は27内の記憶情報を要求するコマンドを電源制御装置2に送信し、当該コマンドに応答して電源制御装置2から送信される情報(メモリ26又は27内の記憶情報)を受信することで、“1”のエラー信号の要因を詳細に判断できる。尚、外部装置5からの所定のエラーリセットコマンドが電源制御装置2にて受信されると、電源制御装置2にてエラー信号の値が“0”に戻されて良い。
【0055】
[応用・変形等]
上述の実施形態に対する幾つかの応用技術又は変形技術等を説明する。
【0056】
メモリコントローラ25は対象温度TEMPの時系列データを含む温度履歴情報を、不揮発性メモリ26に記憶させるようにしても良い。即ち例えば、対象温度TEMPが温度範囲R[1]に属する状態で電源制御装置2が計3時間だけ駆動した後、対象温度TEMPが温度範囲R[2]に属する状態で電源制御装置2が計10時間だけ駆動した場合を考える。この場合、対象温度TEMPが温度範囲R[1]に属する状態で電源制御装置2が計3時間だけ駆動した後、対象温度TEMPが温度範囲R[2]に属する状態で電源制御装置2が計10時間だけ駆動したことを特定できる時系列データを、不揮発性メモリ26に記憶させて良い。
【0057】
電源制御装置2に温度センサ21を複数設けるようにしても良い。この場合、複数の温度センサ21は電源制御装置2内における互いに異なる複数の測定対象位置に設置され、複数の温度センサ21により複数の測定対象位置の温度が個別に検出される。複数の測定対象位置の温度は複数の対象温度TEMPである。この際、対象温度TEMPごとに上述の各動作を行うことで対象温度TEMPごとに温度履歴情報を不揮発性メモリ26に記憶させて良い。
【0058】
電源装置1に設けられるレギュレータ4の総数は1でも良い。即ち“n=1”であっても良い。
【0059】
電源装置1は自動車等の車両に搭載されて良い。この際、電源装置1への入力電圧VIN及び電源制御装置2の電源電圧は、車両に搭載されたバッテリの出力電圧である、又は、当該バッテリの出力電圧に基づき生成される。但し、電源装置1の用途は車載用途に限定されず、任意である。
【0060】
各実施形態に示されたFET(電界効果トランジスタ)のチャネルの種類は例示である。上述の主旨を損なわない形で、任意のFETのチャネルの種類はPチャネル型及びNチャネル型間で変更され得る。
【0061】
不都合が生じない限り、上述の任意のトランジスタは、任意の種類のトランジスタであって良い。例えば、MOSFETとして上述された任意のトランジスタを、不都合が生じない限り、接合型FET、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)又はバイポーラトランジスタに置き換えることも可能である。任意のトランジスタは第1電極、第2電極及び制御電極を有する。FETにおいては、第1及び第2電極の内の一方がドレインで他方がソースであり且つ制御電極がゲートである。IGBTにおいては、第1及び第2電極の内の一方がコレクタで他方がエミッタであり且つ制御電極がゲートである。IGBTに属さないバイポーラトランジスタにおいては、第1及び第2電極の内の一方がコレクタで他方がエミッタであり且つ制御電極がベースである。
【0062】
本開示の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。以上の実施形態は、あくまでも、本開示の実施形態の例であって、本開示ないし各構成要件の用語の意義は、以上の実施形態に記載されたものに制限されるものではない。上述の説明文中に示した具体的な数値は、単なる例示であって、当然の如く、それらを様々な数値に変更することができる。
【0063】
<<付記>>
上述の実施形態にて具体的構成例が示された本開示について付記を設ける。
【0064】
本開示の一側面に係る電源制御装置は、入力電圧(VIN)から出力電圧(VOUT)を生成する電源装置(1)の動作を制御するよう構成された電源制御装置(2)であって、当該電源制御装置の温度(TEMP)が複数の温度範囲(R[1]~R[m])の何れに属するかを判定するよう構成された温度判定回路(22)と、前記温度範囲ごとに、当該電源制御装置の温度が当該温度範囲に属する時間を計測するよう構成された計測回路(23)と、前記計測回路による計測結果を記憶するよう構成された不揮発性メモリ(26)と、を備える構成(第1の構成)である。
【0065】
これにより、電源制御装置への電源電圧の供給が度々遮断される場合であっても、電源制御装置の使用環境のデータ蓄積が可能となり、電源制御装置の寿命に関わる判断も可能となる。
【0066】
上記第1の構成に係る電源制御装置において、前記不揮発性メモリは、前記温度範囲ごとに累積駆動時間(tACM[1]~tACM[m])を記憶し、前記温度範囲ごとの前記累積駆動時間(tACM[j])は、当該電源制御装置の駆動時間の内、当該電源制御装置の温度が当該温度範囲(R[j])に属する時間の累積値を表す構成(第2の構成)であっても良い。
【0067】
上記第2の構成に係る電源制御装置において、当該電源制御装置の外部装置(5)に対して特定信号(例えば寿命到達信号)を出力可能に構成された信号出力制御回路(28)を更に備え、前記信号出力制御回路は、前記不揮発性メモリに記憶された各累積駆動時間に基づき、前記特定信号を出力するかを決定する構成(第3の構成)であっても良い。
【0068】
上記第3の構成に係る電源制御装置において、前記信号出力制御回路は、前記不揮発性メモリに記憶された各累積駆動時間に基づき当該電源制御装置が寿命に達したかを判定し、前記判定の結果に基づき前記特定信号を出力するかを決定する構成(第4の構成)であっても良い。
【0069】
これにより、電源制御装置が寿命に達したかを外部装置に知らせることができる。
【0070】
上記第4の構成に係る電源制御装置において、前記信号出力制御回路は、前記複数の温度範囲に対する複数の累積駆動時間を重み付け加算することで加重和(WSUM)を導出し、前記加重和と所定の閾値との比較結果に基づき当該電源制御装置が寿命に達したかを判定する構成(第5の構成)であっても良い。
【0071】
これにより、電源制御装置が寿命に達したかを良好に推定することができる。
【0072】
上記第1~第5の構成の何れかに係る電源制御装置において、当該電源制御装置の温度に応じた信号(STEMP)を出力するよう構成された温度センサ(21)と、前記温度センサの出力信号に基づき当該電源制御装置の温度異常を検出するよう構成された温度異常検出回路(24a)と、を備え、前記温度判定回路は、前記温度センサを用いて当該電源制御装置の温度が前記複数の温度範囲の何れに属するかを判定する構成(第6の構成)であっても良い。
【0073】
これにより、温度異常の検出のために用意された温度センサを流用して、不揮発性メモリへの情報記憶に向けた温度の分類等を行うことができる。
【0074】
上記第1~第5の構成の何れかに係る電源制御装置において、所定の異常を検出するよう構成された異常検出回路(24)を備え、前記異常検出回路にて前記異常が検出されたとき、前記異常が検出された旨を示す情報が前記不揮発性メモリに記憶される構成(第7の構成)であっても良い。
【0075】
これにより、事後的な故障解析等が容易となる(即ち異常に関わる情報を故障解析等に役立てることができる)。
【0076】
上記第1~第7の構成の何れかに係る電源制御装置において、前記電源装置は複数チャネルのレギュレータ(4)を有して、チャネルごとに前記入力電圧から前記出力電圧を生成し、当該電源制御装置は前記チャネルごとに前記レギュレータの動作を制御する構成(第8の構成)であっても良い。
【符号の説明】
【0077】
1 電源装置
2 電源制御装置
3 ディスクリード部品群
4、4[1]~4[n]、4[iA]、4[iB] レギュレータ
5 外部装置
10、10[1]~10[n]、10[iA]、10[iB] 制御ブロック
11、12、14 トランジスタ
13、15 制御駆動回路
L[iA] 出力コイル
C[iA]、C[iB] 出力コンデンサ
VIN、VIN[1]~VIN[n]、VIN[iA]、VIN[iB] 入力電圧
VOUT、VOUT[1]~VOUT[n]、VOUT[iA]、VOUT[iB] 出力電圧
OUT[iA]、OUT[iB] 出力ノード
21 温度センサ
22 温度判定回路
23 計測回路
24 異常検出回路
24a 温度異常検出回路
25 メモリコントローラ
26 不揮発性メモリ
27 揮発性メモリ
28 信号出力制御回路
STEMP 温度信号
SCLS[j] 分類信号
UP[j] アップカウント信号
TEMP 対象温度
TB[1]~TB[m-1] 境界温度
R[1]~R[m] 温度範囲
tACM[1]~tACM[m] 累積駆動時間
NACM[1]~NACM[m] 累積駆動値