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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025019328
(43)【公開日】2025-02-06
(54)【発明の名称】アルロース結晶化用組成物
(51)【国際特許分類】
   C07H 3/02 20060101AFI20250130BHJP
   A23L 27/30 20160101ALI20250130BHJP
【FI】
C07H3/02
A23L27/30 A
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024207832
(22)【出願日】2024-11-29
(62)【分割の表示】P 2022181074の分割
【原出願日】2019-02-07
(31)【優先権主張番号】PCT/KR2018/001829
(32)【優先日】2018-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0172864
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】500578515
【氏名又は名称】サムヤン コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム,ゴウン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ジェギョン
(72)【発明者】
【氏名】リュ,キョンホン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ソンウォン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジウォン
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ウンス
(57)【要約】
【課題】本発明は、均一な粒子の大きさを有し、回収工程での損失を減らすことができるため、結晶収率を向上させることができる、アルロース転換物(Impurity-S)の含有量を特定濃度範囲に調整したアルロース結晶化用組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係るアルロース結晶化用組成物は、固形分総含有量を基準に、アルロース含有量が90重量%以上であり、アルロース転換物(Impurity-S)の含有量が2重量%以下であり、前記アルロース転換物(Impurity-S)が、LC/MS分析法で測定した質量/荷電量との比率が10~600m/zの範囲に含まれる物質であることを特徴とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載されている発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶形機能性甘味料の製造方法に関し、結晶形機能性甘味料、例えばアルロース結晶を製造する過程でアルロースから転換された不純物の含有量を制御することによって結晶収率を高めて粒度大きさを増加させるためのアルロース結晶を製造する方法に関する。また、本発明は、均一な粒子の大きさを有し、回収工程での損失を減らすことができるため、結晶収率を向上させることができる、アルロース転換物(Impurity-S)の含有量を特定濃度範囲に調整したアルロース結晶化用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
砂糖およびでん粉糖に代弁される一般糖類が全世界に約65兆程度で最も大きい市場を形成しているが、全世界的に健康志向、機能性およびプレミアム製品に対する消費者のニーズ(needs)が強くなることにより、キシリトールのような糖アルコール類、フラクトオリゴ糖のようなオリゴ糖類、そして結晶果糖のような機能性糖類、スクラロースやアスパルテームのような甘味料などの機能性甘味料の市場が成長している。
【0003】
甘味を感じさせる調味料および食品添加物を総称する甘味料、数多くの甘味料の中で砂糖、ブドウ糖、果糖などは、食品中の自然成分として最も広く分布しており、加工食品製造時にも最も広く使われている。しかし、砂糖が虫歯、肥満、糖尿病などを誘発する否定的な側面が現れて世界的に砂糖の代わりに使用できる機能性代替甘味料が注目されている。
【0004】
最近、機能性甘味料として砂糖または果糖などを代替できる脚光を浴びる糖類の一つとしてアルロースがある。アルロースは化学的または生物学的方法で製造されるが、生産物中のアルロース含有量が低いので精製および濃縮する工程が必要である。しかし、濃縮されたシロップの場合その適用に限界があるので、結晶粉末に対する要求が高いが、アルロースは結晶性が低いため結晶化し難い。また、アルロース転換酵素または前記酵素を生産する菌株を利用した生物学的方法でアルロースを生産する場合にも、低い転換率によってD-アルロースの純度を高めた後結晶化しなければならないため、D-アルロースの工業的利用を目的とした場合、精製工程や精製収率、結晶化収率などに未解決の課題が残っている。
【0005】
したがって、結晶化のためのアルロース溶液に含まれた不純物の含有量またはアルロース製造過程で不純物の生成を最小化し、アルロースから転換された不純物の含有量を制御することによって結晶収率を高めて粒度大きさを増加させるためのアルロース結晶を製造する方法が切実に必要な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は結晶を製造するための溶液に含まれた不純物含有量または不純物の生成を制御することによって結晶収率を高めて粒度大きさを増加させるためのアルロース結晶を製造する方法に関する。
【0007】
また、本発明は結晶粒子成長を適切に調整することによって均一な粒子の大きさを有するアルロース結晶を製造し、これによって回収工程での損失を減らすことができ、結晶収率を向上させてアルロース結晶化工程の生産性を高めることができる、アルロース結晶の製造方法を提供する。
【0008】
また、本発明は、均一な粒子の大きさを有し、回収工程での損失を減らすことができるため、結晶収率を向上させることができる、アルロース転換物(Impurity-S)の含有量を特定濃度範囲に調整したアルロース結晶化用組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は均一な粒子の大きさを有し、回収工程での損失を減らすことができるため、結晶収率を向上させることができる、アルロース転換物(Impurity-S)の含有量を特定濃度範囲に調整したアルロース結晶化用組成物およびそれを用いたアルロース結晶の製造方法に関する。また、本発明は結晶を製造するための溶液に含まれた不純物含有量または不純物の生成を制御することによって結晶収率を高めて粒度大きさを増加させるためのアルロース結晶を製造する方法に関する。
【0010】
アルロースはpHが低く温度が高いほど不安定であるため(図2図3)、実際の生産工程中に、特に濃縮段階でアルロースの含有量が変化する。このような問題は高純度のアルロース純度を低下させて結晶化段階に多くの影響を与える。実際この過程でアルロースの含有量が減少することにより付加的に生成されるアルロース転換物(Impurity)の含有量が増加するが、この成分がアルロースの結晶化に大きな影響を与えることが本発明で確認された。様々なアルロース転換物の中でImpurity-Sという成分が存在する場合、アルロース結晶粒子が成長するのにInhibitorとして作用することが分かり、これが結晶粒子の粒度と結晶収率に大きな影響を与えることを発見した。
【0011】
そこで、本発明はアルロース結晶化工程を行うにあたって、高純度分離工程以後に濃縮前後段階で不純物(Impurity-S)を特定含有量以下、例えば2重量%以下に調整することによって、アルロース粒子の大きさが小さくなることを防止することができ、結晶粒子成長を適切に調整することによって均一な粒子の大きさを有するアルロースを生産することができる。また、粒子を均一な大きさに成長させることによって、回収工程での損失を減らすことができ、結晶収率を向上させて生産性を高めることができる。
【0012】
アルロース結晶化工程に使用される原料であるアルロースシロップは、アルロースを製造する過程で発生するアルロース以外の不純物である多様なアルロース転換物を含んだり、アルロース結晶化工程でアルロース転換物が生成され得る。前記転換物の中で特定転換物(以下、Impurity-S)を特定含有量以下、例えば2重量%以下に調整(制御)することで、アルロース結晶粒子の形、構造および大きさ、結晶純度、結晶生成速度、および結晶収率を向上させることができる。前記Impurity-Sはアルロースの結晶粒子が成長することを妨げ、そのため結晶収率を低くする阻害剤(Inhibitor)として作用する。本発明では、アルロース転換物が生成されない条件でアルロースの生産工程を制御することによって、アルロース結晶粒度を増大させて収率を向上させることができる方法を提供する。
【0013】
前記アルロース転換物(Impurity-S)は、LC/MS分析法で測定した質量/荷電量との比率が10~600m/z、10~550m/z、10~500m/z、10~450m/z、10~400m/z、20~600m/z、20~550m/z、20~500m/z、20~450m/z、20~400m/z、30~600m/z、30~550m/z、30~500m/z、30~450m/z、30~400m/z、40~600m/z、40~550m/z、40~500m/z、40~450m/z、40~400m/z、50~600m/z、50~550m/z、50~500m/z、50~450m/z、または50~400m/zの範囲を有する物質であり得、またはHPLC分析法で分析して溶出時間31±2分の時間に測定される最大ピークを有する物質であり得る。前記LC/MS分析法は、HPLC分析法で分析して溶出時間31±2分台の時間に測定される最大ピークを有する物質を分離して得られた物質を分析するものである
【0014】
また、前記アルロース転換物(Impurity-S)は、アルロース変性体、アルロース変性重合体、またはアルロースが分解される過程で生成されて転換された中間体物質であり得、前記アルロース転換物(Impurity-S)の分子量は、下限値がアルロース分子量の0.2倍以上、0.3倍以上、0.4倍以上、0.5倍以上、0.6倍以上、0.7倍以上、0.8倍以上、0.9倍以上、1倍以上、1.1倍以上、1.2倍以上、1.3倍以上、1.4倍以上、1.5倍以上、1.6倍以上、1.7倍以上、1.8倍以上、1.9倍以上、または2倍以上、上限値がアルロース分子量の10倍以下、9倍以下、8倍以下、7倍以下、6倍以下、5倍以下、4倍以下、3倍以下、2倍以下、1.5倍未満、1.5倍以下、1.4倍以下、1.3倍以下、1.2倍以下、1.1倍以下、1倍以下、0.9倍以下、0.8倍以下、0.7倍以下、0.6倍以下、0.5倍以下、0.4倍以下、0.3倍以下、または0.2倍以下であり得、前記アルロース転換物の分子量は、前記下限値および前記上限値の組み合わせに設定される数値範囲の分子量を有することができ、例えば前記アルロース転換物の分子量は、アルロース分子量の0.4倍以上~10倍、0.5倍以上~10倍、0.53倍以上~10倍、0.4倍以上~9倍、0.5倍以上~9倍、0.53倍以上~9倍、0.4倍以上~8倍、0.5倍以上~8倍、0.53倍以上~8倍、0.4倍以上~7倍、0.4倍以上~6倍、0.4倍以上~5倍、0.4倍以上~4倍、0.4倍以上~3倍、0.4倍以上~2倍、0.4倍以上~1.5倍未満、0.4倍以上~1.5倍以下、0.4倍以上~1.4倍、0.4倍以上~1.3倍、0.4倍以上~1.2倍、0.4倍以上~1.1倍、0.4倍以上~1倍、0.4倍以上~0.9倍、0.4倍以上~0.8倍、0.4倍以上~0.7倍、0.4倍以上~0.6倍、0.4倍以上~0.5倍、0.5倍以上~7倍、0.53倍以上~7倍、0.4倍以上~6倍、0.5倍以上~6倍、0.5倍以上~5倍、0.5倍以上~4倍、0.5倍以上~3倍、0.5倍以上~2倍、0.5倍以上~1.5倍未満、0.5倍以上~1.5倍以下、0.5倍以上~1.4倍、0.5倍以上~1.3倍、0.5倍以上~1.2倍、0.5倍以上~1.1倍、0.5倍以上~1倍、0.5倍以上~0.9倍、0.5倍以上~0.8倍、0.5倍以上~0.7倍、0.5倍以上~0.6倍、0.53倍以上~6倍、0.4倍以上~5倍、0.5倍以上~5倍、0.53倍以上~5倍、0.4倍以上~4倍、0.5倍以上~4倍、0.53倍以上~4倍、1.5倍以上~10倍、2倍以上~10倍、2倍以上~4倍、好ましくは0.4倍以上~4倍の分子量を有するアルロース変性体、アルロース変性重合体、またはアルロースが分解される過程で生成されて転換された中間体物質であり得る。
【0015】
一例として、前記アルロース転換物(Impurity-S)は、外部刺激、例えば高温や酸性条件に持続的に露出するほど、アルロース転換物(Impurity-S)であるアルロース変性重合体は、二量体(dimer)に近似の分子量を有するアルロース変性重合体(アルロースのtetramer類似体)にも転換され得る。これは、アルロースが外部刺激によって簡単に変性されることにより、アルロースまたはアルロース転換物とランダムに脱水および縮合重合(dehydration and condensation)反応が繰り返されて、前記のような変性重合体に転換されるメカニズムに起因するからである。または前記アルロース転換物(Impurity-S)は、アルロースが分解される過程で生成されて転換された中間体物質であり得る。
【0016】
具体的には、LC-MSによる分析の結果、分子量341m/zで検出された成分はアルロースを含有する結晶化原液を苛酷条件で処理するほど増加する成分であり、アルロースが脱水または縮合反応によって変性された二量体(Dimer)類似構造の物質であることを分子量分析により確認することができる。これは、LC-MS分析により構造を類推した結果、C122211の化学式を有する物質で、アルロース変性重合体であることを予測することができる。追加的に熱処理が行われるほどC252811、C244221また
はC244422の前記アルロース変性重合体の二量体と類似の分子量を有するアルロース変性重合体(アルロースのtetramer類似体)の含有量も共に増加することを確認した。これは、アルロースが外部刺激(stress)、例えば熱処理によって簡単に変性されることにより、アルロースまたはアルロース転換物とランダムに脱水および縮合反応が繰り返されて前記のような物質に転換されたと見ることができる。
【0017】
具体的には、LC-MSによる分析の結果、アルロース転換物(Impurity-S)が含むものとして検出された成分は、アルロースのような六炭糖(Hexose)が脱水反応によってHMFに分解される過程で生成される中間体物質(Furan aldehyde intermediate)を含み得、アルロースにNa+イオンが結合され
た形態[C6126+Na]+、またはアルロース二量体分子にNa+イオンが結合された分子[C6126+Na]+を含み得る。
【0018】
また、LC-MS分析により構造を類推した結果、アルロース転換物は、分子式Cxyzの化合物を含み得、前記xは、3~15の整数、3~14の整数、3~13の整数、
3~12の整数、4~15の整数、4~14の整数、4~13の整数、4~12の整数、5~15の整数、5~14の整数、5~13の整数、または5~12の整数であり得、前記yは1~15の整数、1~14の整数、1~13の整数、1~12の整数、2~15の整数、2~14の整数、2~13の整数、2~12の整数、3~15の整数、3~13の整数、3~12の整数、4~15の整数、4~14の整数、4~13の整数、または4~12の整数であり得、前記zは1~10の整数、1~9の整数、1~8の整数、1~7の整数、または1~6の整数でありうる。
【0019】
例えば、アルロース転換物は、C543、C564、C583、C542、C5103、C645、C6103、C644、C663、C68O、C645、C664、C644、C643、C683、C1186、C12125、またはC12105の化学式を有する物質を含み得る。
【0020】
具体的には、アルロース転換物は、レブリン酸(levulinic acid、4-oxopentanoic)、フルフラール(furfural)、ヒドロキシメチルフルフラール(Hydroxymethylfurfural,HMF)、γ-ヒドロキシ吉草酸(γ-Hydroxyvaleric acid,GVB)、2,5-ジメチルフラン(2,5-Dimethylfuran)、2,5-フランジカルボン酸(2,5-furandicarboxylic acid,FDCA)、5-ヒドロキシメチル-2-フロン酸(5-hydroxymethyl-2-furoic acid)、2,5-ホルミルフランカルボン酸(2,5-formylfurancarboxylic
acid)、2,5-フランジカルバルデヒド(2,5-Furandicarbaldehyde)、2,5-ビス-(ヒドロキシメチル)フラン(2,5-bis-(hydroxymethyl)furan)、ビス(5-ホルミル-2-フルフリル)エーテル(bis(5-formyl-2-furfuryl) ether)、2-フロン酸(2-Furoic acid)、3-フロン酸(3-Furoic acid)、5-ヒドロキシフルフラール(5-Hydroxyfurfural)、2,5-ジヒドロ-2,5-ジメトキシフラン(2,5-Dihydro-2,5-dimethoxyfuran)、(2R)-5-オキソテトラヒドロ-2-フランカルボン酸((2R)-5-Oxotetrahydro-2-furancarboxylic acid)、2,5-ホルミルフランカルボン酸(2,5-formylfuran carboxylic acid)、5,5’-メチレンジ(2-フロン酸)(5,5’-Methylenedi(2-furoic acid))、およびビス(5-メチルフルフリル)エーテル(bis(5-methyl furfuryl) ether)からなる群より選択される1種以上を含み得る。
【0021】
本発明により、アルロース転換物が生成されない条件でアルロースの生産、分離および/または精製工程を行い、アルロース結晶化工程に使用される原料であるアルロースシロップに含まれた転換物(Impurity-S)の含有量を除去または減少する方法を行うことができる。そのため、本発明による方法により、結晶化原液のImpurity-Sの含有量を減少させて結晶成長を妨げる不純の含有量を低くして、結晶形状と結晶収率を向上させることができる。
【0022】
具体的には、前記転換物(Impurity-S)の含有量調整は、Impurity-Sの生成を防止または減少させたり、生成されたImpurity-Sを除去または減少させる方法で行うことができる。本発明の一例で、アルロース転換物の生成を防止または減少させる条件でアルロースの生産工程を制御する方法として、アルロース結晶粒度を増大、結晶を正方形形状に近い形に形成し、アルロース収率を向上させることができる。より詳しくは、結晶化原液でのアルロース転換物(Impurity-S)成分含有量が2重量%以下になるように制御すると、アルロース結晶粒子成長および収率を向上させることができる。
【0023】
前記Impurity-Sの生成を防止または減少させる方法は、アルロース転換物が生成されない条件、特に濃縮工程でpH、温度、電気伝導度の制御のようなアルロースの生産工程の条件を制御することによって達成することができる。また、前記生成されたImpurity-Sを除去または減少させる方法は、活性炭処理を行う方法または1次結晶化で収得された結晶を再溶解して2次結晶化する方法などを使用し得、アルロースシロップ内の不純物の除去方法を使用することができる。
【0024】
具体的には、不純物生成または含有量調整方法は、下記方法のうち一つ以上の方法で行われることができる。
【0025】
一例として、アルロース生産工程でアルロース転換物(Impurity-S)の生成を防止または減少させる方法の一例は、アルロース生産工程をpHは4以上および/または温度は70℃以下で行う方法でありうる。具体的には、前記pHは4~7またはpH4~6である条件、温度は70℃以下、好ましくは60℃以下の条件で比較的安定であるため、脱色、イオン精製、高純度分離などのアルロース生産工程で反応液の温度が70℃、好ましくは60℃を超えないように管理し、特に濃縮工程を2段階以上に分けて行うことによって、持続的に外部刺激に露出しないように管理することが好ましい。
【0026】
アルロース生産工程でImpurity-Sの生成を防止または減少させるために、前記濃縮工程は、SMBクロマトグラフィー分離工程で得られたアルロース分画を40~70℃以下の温度条件で行うことができ、選択的に前記濃縮工程を少なくとも2段階以上に分けて行うことができる。例えば、前記濃縮工程を2段階に分けて行う場合には、アルロースシロップを30~50Bx濃度になるように一次濃縮を行い、1次濃縮液を再び60~85Bx濃度で2回濃縮を行うことができ、好ましくは1次濃縮工程と2次濃縮工程の間に活性炭処理工程を追加で含んで濃縮水内に含まれたImpurity-Sを除去したりまたは含有量を減少させることができる。
【0027】
また他の一例で、アルロース結晶化原料であるアルロースシロップに含まれた転換物(Impurity-S)の含有量を除去または減少する方法は、活性炭処理して、不純物として作用したりアルロースの変性を誘導できる高分子または低分子有機物、有色イオン性物質またはタンパク質などを吸着させて除去することである。
【0028】
詳しくは、基質から得られるアルロース反応液に対してSMBクロマトグラフィー分離
工程を行って得られたアルロース分画を濃縮する前に活性炭で処理する工程を行い、転換物(Impurity-S)の含有量を除去または減少することができる。前記活性炭工程は、SMBクロマトグラフィー分離工程で得られたアルロース分画をイオン精製工程に付し、追加で行うことができる。
【0029】
前記活性炭工程は、アルロース溶液に活性炭を接触させて温度40~50℃で0.5~5時間反応した後に、前記活性炭を含む反応液を固液分離工程に付してろ液を収得し、不純物を濾過残留物として除去することができる。前記濾過は、フィルタープレスのような濾過装備を利用して行うことができる。
【0030】
前記活性炭反応工程では、選択的に攪拌することができ、前記反応液の攪拌速度は5~500rpm、好ましくは50~300rpmであり得る。前記攪拌速度は、活性炭の分散程度および攪拌に所要される費用を考慮して適宜選択することができる。活性炭と反応液の接触時間は、活性炭の分散程度および不純物の除去効率などを考慮して適宜選択することができ、例えば、0.5~5時間、好ましくは0.5~2時間であり得、接触時間が短いと不純物除去、例えば脱色が十分に行われず、接触時間が長いと主要成分の破壊および褐変が起きる。
【0031】
前記活性炭処理工程に使用された前記活性炭は、石炭系または木質系由来であり得、活性炭の気孔粒径サイズにより選択的に不純物を除去することもできる。
【0032】
追加の一例として、アルロース結晶化組成物のアルロース転換物(Impurity-S)の生成を防止または減少させる方法は、再結晶化を行うことである。高純度分離および濃縮工程を経たアルロース溶液で1次結晶化を行い、1次結晶化原液で上澄液を除去して脱水して回収したアルロース結晶を再び水に溶解して結晶化用アルロース溶液を製造した後、2次結晶化工程に投入することによって、1次結晶化工程でアルロース転換物(Impurity-S)の含有量を除去または減少することができる。
【0033】
そのため、本発明の一例は、結晶化用アルロース組成物に含まれたアルロース転換物(Impurity-S)の含有量が前記組成物の固形分含有量を基準に2重量%以下に調整する方法を提供する。
【0034】
前記方法は、組成物のpH条件および温度条件からなる群より選択される1種以上の条件を調整して行われ得、前記pH条件はpH4~7範囲や温度条件を70℃以下であり得る。
【0035】
前記結晶化用アルロース組成物を、アルロース含有反応液をSMBクロマトグラフィー分離工程で処理することにより得られたアルロース溶液を40~70℃以下の温度条件で濃縮して、製造することができる。前記濃縮工程は少なくとも2個の段階に分割して行い、アルロース溶液を30~50Bx濃度になるように一次濃縮を行い、1次濃縮液を再び60~85Bx濃度で2回濃縮することもできる。前記濃縮工程を行う前に活性炭処理工程を追加で行うことができる。
【0036】
本発明のまた他の一例は、組成物の固形分総含有量100重量%を基準にアルロース転換物(Impurity-S)の含有量が2重量%以下、1.9重量%以下、1.8重量%以下、1.7重量%以下、1.6重量%以下、1.5重量%以下、1.4重量%以下、1.3重量%以下、1.2重量%以下、1.1重量%以下、1.0重量%以下、0.9重量%以下、0.8重量%以下、0.7重量%以下、0.65重量%以下、0.6重量%以下、0.5重量%以下、0.4重量%以下、0.3重量%以下、0.2重量%以下、0.1重量%以下、好ましくは1.0重量%以下を含むアルロース結晶化用組成物に関するも
のであり、不純物を含まないことがさらに好ましい。
【0037】
好ましくは、前記アルロース結晶化用組成物は、組成物の固形分総含有量100重量%を基準にアルロース含有量が90重量%以上、91重量%以上、92重量%以上、93重量%以上、94重量%以上、または95重量%以上で含み得る。
【0038】
前記結晶化用アルロース組成物の粘度は、組成物の温度45℃で2cps~200cpsであり得、電気伝導度は1,000uS/cm以下、例えば0.01~1,000uS/cm、好ましくは30uS/cm以下、例えば0.1~30uS/cmであり得る。前記アルロース結晶化用組成物の電気伝導度は、低いほど結晶化に好ましい。前記アルロースシロップの電気伝導度は、固形分含有量30Bxを基準に測定した値である。
【0039】
前記結晶化のためのアルロース溶液は、固形分含有量が60以上~85ブリックス以下、例えば60ブリックス超~80ブリックス、65~85ブリックス、65~80ブリックス、または68~85ブリックスであり得る。
【0040】
本発明の一例は、結晶化用アルロース溶液を利用してアルロース結晶を製造する方法に関し、より詳しくは組成物の固形分総含有量100重量%を基準にアルロース転換物(Impurity-S)の含有量が2重量%以下、1.9重量%以下、1.8重量%以下、1.7重量%以下、1.6重量%以下、1.5重量%以下、1.4重量%以下、1.3重量%以下、1.2重量%以下、1.1重量%以下、1.0重量%以下、0.9重量%以下、0.8重量%以下、0.7重量%以下、0.65重量%以下、0.6重量%以下、0.5重量%以下、0.4重量%以下、0.3重量%以下、0.2重量%以下、0.1重量%以下、好ましくは1.0重量%以下を含むアルロース結晶化用組成物を提供する工程、および前記アルロース水溶液を冷却してアルロース結晶を製造する工程を含むアルロース結晶を製造する方法である。
【0041】
本発明の一具体例で、アルロース結晶を製造する方法は、SMBクロマトグラフィー分離工程で得られたアルロース分画を第2次イオン精製する工程、前記イオン精製されたアルロース分画を濃縮する工程、前記濃縮物からアルロースを結晶化してアルロース結晶とアルロース結晶化母液を得る工程を含み、選択的にアルロース結晶の回収工程、洗浄工程および乾燥工程を追加で含み得る。
【0042】
また、SMBクロマトグラフィー分離工程で得られたアルロース分画自体、または前記アルロース分画をイオン精製した溶液を、濃縮段階前に、活性炭で処理してアルロース転換物(Impurity-S)の含有量を減少または除去することができる。また、前記結晶化用アルロース溶液を濃縮した後に一次結晶化を行い得られた結晶を溶解して2回結晶化を行い、アルロース転換物(Impurity-S)の含有量を減少または除去することができる。
【0043】
本発明の一具体例で、前記結晶化用アルロース組成物を製造する方法は、基質から製造されたアルロース含有反応液をSMBクロマトグラフィー分離工程で処理して得られたアルロース分画を第2次イオン精製する工程、および前記イオン精製されたアルロース分画を濃縮する工程を含んだり、SMBクロマトグラフィー分離工程で処理して得られたアルロース分画を処理するイオン精製工程、活性炭処理工程、または活性炭処理工程とイオン精製工程を全部含み得る。
【0044】
前記結晶化用アルロース組成物を提供する工程は、結晶化用組成物に含まれた固形分総含有量100重量%を基準にアルロース転換物(Impurity-S)の含有量を2重量%以下、1.9重量%以下、1.8重量%以下、1.7重量%以下、1.6重量%以下
、1.5重量%以下、1.4重量%以下、1.3重量%以下、1.2重量%以下、1.1重量%以下、1.0重量%以下、0.9重量%以下、0.8重量%以下、0.7重量%以下、0.65重量%以下、0.6重量%以下、0.5重量%以下、0.4重量%以下、0.3重量%以下、0.2重量%以下、0.1重量%以下、好ましくは1.0重量%以下または好ましくはアルロース転換物(Impurity-S)を含まないように、アルロース結晶を製造する方法に関するものである。
【0045】
本発明によるアルロース結晶の製造方法は、アルロース結晶収率が45%以上、好ましくは48%以上、50%以上、53%以上、54%以上、さらに好ましくは55%以上、56%以上、57%以上、58%以上、59%以上、または60%以上であり得る。
【0046】
前記アルロース転換物の含有量調整は、pH条件およびアルロース溶液の温度からなる群より選択される1種以上を調整して行われ得、前記pH調整は、pH4~7範囲、pH4.5~7、またはpH5~7、好ましくはpH5~7で達成することができ、前記溶液の温度は、80℃以下、75℃以下、70℃以下、好ましくは30~70℃以下、30~69℃、30~65℃または30~60℃範囲に調整して達成することができる。
【0047】
アルロースはpHが低く温度が高いほど不安定であるため、実際の生産工程中に、特に濃縮段階でアルロースの含有量が変化する。このような問題は、アルロース溶液のアルロース純度を低下させて結晶化段階に大きな影響を与える。前記過程でアルロースの含有量が減少して付加的に生成される特定アルロース転換物(Impurity)の含有量が増加するが、この成分がアルロースの結晶化に大きな影響を与えることを確認した。様々なアルロース転換物の中でImpurity-Sという成分の含有量が2%超えて存在する場合、アルロース結晶粒子が成長するのに主要な妨害要因として作用されることが分かり、そのため結晶粒子の粒度と結晶収率に大きな影響を与えることを確認した。
【0048】
具体的には、図1および図2に示すように、保管温度が高いほどアルロース含有量は減少し、アルロース転換物(Impurity-S)の含有量は増加した。図3および図4に示すように、70℃温度でpHが低いほどアルロース含有量は減少し、アルロース転換物の生成量は増加する。
【0049】
本発明による結晶化用アルロース組成物は、生物学的または化学プロセスで得られるアルロースを含有する反応物、前記反応物をSSMBクロマトグラフィー分離して得られたアルロース分画物、または前記アルロース分画物を濃縮した濃縮物であり得る。前記アルロース濃縮物を製造するための濃縮工程を行う前に、イオン精製および/または活性炭処理工程を追加で行うことができ、濃縮工程を少なくとも2段階に分割して行うこともできる。前記アルロースを含有する反応物は果糖基質から生物学的または化学的方法で得られ、好ましくは生物学的方法でアルロース転換酵素または前記酵素を生産する微生物を利用して製造することができる。
【0050】
前記アルロース反応液は、イオン精製および擬似移動層(SMB)クロマトグラフィー分離工程を含むプシコース転換反応物の分離工程を行うことができる。具体的な一例で、前記プシコース転換反応物をイオン精製およびSMBクロマトグラフィー分離工程に付し、転換反応物よりプシコース含有量が高いプシコース分画と果糖ラフィネートに分離し、前記プシコース分画はプシコース濃縮工程を経て結晶化工程に投入される。
【0051】
アルロース結晶を収得するためのアルロース溶液中のアルロースの含有量は、過飽和状態で高い濃度で含まれなければならないが、アルロース転換反応物のアルロースの含有量は低いので直接結晶化を実行できず、結晶化段階前にアルロースを、含有量を増加させるために精製し所望する水準まで濃縮する工程を行わなければならない。
【0052】
前記組成物を得る方法は、高純度アルロース溶液の温度が90℃以下、85℃以下、80℃以下、75℃以下、70℃以下、70℃未満、例えば40以上、70℃以下で濃縮工程が行われ得、具体的には薄膜濃縮器または多重効用蒸発器を用いて行うことができる。本発明の一具体例で、前記精製されたアルロース溶液を濃縮させる段階は、40~70℃以下の温度条件で行われることができる。濃縮液の温度が70℃超である場合、D-アルロースの熱変性が起き得、そのため本発明によるアルロース転換物(Impurity-S)が生成されたり増加し得る。また、濃縮が行われることにより蒸発熱による反応物の温度が急激に増加するので、濃縮液の温度を70℃以下に維持しながら速かに濃縮しなければならない。
【0053】
具体的には、前記SMBクロマトグラフィー分離工程で得られたアルロース分画の濃縮工程は多様な方法で行うことができ、濃縮物の固形分含有量が70ブリックス以上になるようにすることができる。例えば、擬似移動層吸着分離方法で得られたアルロース分画(例えば、固形分含有量20~30重量%)を濃縮工程によって固形分含有量60ブリックス以上に濃縮することができる。本発明によるアルロース結晶化用組成物は、固形分含有量が60以上、85ブリックス(Bx)以下、例えば60ブリックス超~85ブリックス、65~85ブリックス、70~85ブリックス、75~85ブリックス、60ブリックス超~83.5ブリックス、65~83.5ブリックス、70~83.5ブリックス、または75~83.5ブリックスであり得る。
【0054】
一例として、前記結晶化用組成物は、カルシウム活性基が付着したカチオン交換樹脂が充填されたカラムクロマトグラフを利用して擬似移動層(simulated moving bed,SMB)クロマトグラフィー分離工程を行い得られるアルロース分画であり得、具体的には生物学的触媒を利用して果糖-含有原料をアルロースに転換するアルロース転換反応物を得、前記アルロース転換反応物の活性炭処理、イオン精製および擬似移動層(simulated moving bed,SMB)クロマトグラフィー分離工程を行い得られたアルロース分画であり得る。前記アルロース分画物はSMBクロマトグラフィー分離工程で得られたそれ自体またはイオン精製工程を経て収得したものであり得る。前記果糖-含有原料の果糖含有量は果糖-含有原料の固形分総含有量100重量%を基準に85重量%以上であり、アルロース転換反応のアルロース転換率は15%~70%である生物学的触媒を使用するものであり得る。
【0055】
前記SMBクロマトグラフィー分離工程で得られたアルロース分画は、濃縮工程を行う前に、イオン精製および/または活性炭処理工程を追加で行うことができる。
【0056】
本発明によるアルロース結晶を製造する方法は、アルロース濃縮物溶液の温度および濃度を調整して結晶化することができ、具体的に結晶化のために求められる過飽和状態はアルロース溶液の温度を低くしたりまたはD-アルロース溶液中のD-アルロースの濃度を変化させることによって維持することができる。本発明の一具体例で、前記結晶化段階で一定間隔で試料を採取して肉眼や顕微鏡で観察したりまたは試料の遠心分離から収得された上層液中の糖濃度を分析することによって結晶化経過をモニタリングし、その結果により温度またはD-アルロースの濃度を調整することができる。アルロース結晶を製造するために、アルロース濃縮溶液を冷却させて結晶化する場合、熱交換機により10~25℃温度範囲に急速に冷却させた後、昇温と冷却を繰り返し行い結晶成長を誘導することができる。
【0057】
本発明によるアルロース結晶を製造する方法は、アルロース濃縮物溶液の温度および濃度を調整して結晶化することができ、具体的には結晶化のために求められる過飽和状態はアルロース溶液の温度を低くしたりまたはD-アルロース溶液中のD-アルロースの濃度
を変化させることによって維持されることができる。本発明によるアルロース結晶の製造方法は、多様な方法で行うことができ、好ましくは冷却法で行うことができる。本発明による冷却法の一例は、アルロース溶液を35~10℃温度で冷却させて過飽和状態を誘導して結晶を生成させることができる。冷却速度は0.01~20℃/分を維持した方がよく、冷却速度が低い場合、共結晶形成時間が長いため生産性が低く、冷却速度が高い場合、小さい粒子の大きさの結晶が形成されて結晶の回収が難しい。
【0058】
前記アルロース結晶の製造方法は、アルロース90重量%以上を含んで60~85ブリックスの電気伝導度1,000uS/cm以下であるアルロース溶液で結晶核を生成する工程、および前記溶液の温度を冷却させて結晶を成長させる工程を含み得る。
【0059】
具体的には、前記アルロース結晶の製造方法は、アルロース90重量%以上を含んで60~85ブリックスのアルロース溶液を20~40℃、または30~40℃、例えば35℃温度でゆっくり攪拌して結晶核を生成する工程、および前記溶液の温度を10℃まで冷却させて結晶を成長させる工程を含み得る。前記方法は、溶液の温度を30~35℃範囲に増加させて冷却途中に生成された微細結晶を再溶解する工程を1回以上追加で含み得る。前記アルロース結晶の製造方法は、前記種晶(seed)を添加する工程を追加で含み得る。前記種晶添加工程および再溶解工程は、それぞれ選択的に前記アルロース結晶の製造方法に含まれたり、前記二つの工程をすべて含み得る。
【0060】
通常の場合、アルロース結晶の大きさが大きいほど物性が良くなり、使用便宜性が増加することが知られており、このような大きい大きさの結晶を製造するためには移送工程に区分される種結晶と本結晶化工程をすべて行わなければならないが、本発明による結晶化工程は、一段階工程でも比較的大きい大きさの結晶を高収率で容易に製造することができる。
【0061】
また、前記結晶化工程は、前記結晶成長工程で冷却途中に生成された微細結晶を再溶解するために溶液の温度を30~35℃まで高めて微細結晶を溶解する工程を行うことができる。本発明による結晶化工程では、結晶成長工程と微細結晶溶解工程を少なくとも1回以上繰り返して行うことができる。
【0062】
前記結晶を製造する工程において、結晶生成速度および大きさを増加させる目的で種晶(seed)を追加で添加することができる。
【0063】
本発明による具体的な一例で、アルロース結晶は、固形分基準で90重量%以上のアルロースを含み、全体固形分含有量が60~85ブリックスであるアルロース溶液を温度35℃でゆっくり攪拌して少量の結晶核が生成させるようにした後、温度を時間当り1℃ずつ減少させて温度10℃まで冷却させて結晶を成長させて製造し、選択的に冷却途中に生成された微細結晶を再溶解するために溶液の温度を30~35℃まで高めて微細結晶を溶解する工程を少なくとも1回以上繰り返し、アルロース結晶を製造することができる。
【0064】
本発明によるアルロース結晶を製造する方法は、前記結晶化工程で収得されたアルロース結晶を多様な固液分離方法、例えば遠心分離で回収する工程、脱イオン水で洗浄する工程、および乾燥する工程をさらに含み得る。前記乾燥工程は流動層乾燥器または真空乾燥器で行われるが、これに制限されない。
【0065】
本発明による結晶化用アルロース組成物を冷却する方法で、アルロース結晶を製造することができる。前記結晶化用アルロース組成物は上述したとおりである。
【0066】
前記アルロース結晶に含まれるアルロースは、固形分総含有量100重量%を基準に9
4重量%以上、95重量%以上、96重量%以上、97重量%以上、98重量%以上または99重量%以上であり得る。
【0067】
本発明で、「結晶体の純度」は、アルロースの結晶の純度を意味する。本発明の結晶体の純度を含む物性は、例えばX線粉末回折分析法、示差走査熱量計(DSC)分析法、赤外線分光(FTIR)分析、HPLC分析、LC/MS分析法などのような方法によって求めることができ、純度は具体的にHPLCクロマトグラフィーで分析することができる。
【0068】
本発明の一例によるアルロース結晶は、X線分光スペクトルで15.24、18.78、および30.84の回折角(2θ)±0.2°でピークを有するX線分光スペクトルを有するアルロース結晶であり得る。本発明の一例で、前記X線分光スペクトルはX線分光スペクトルで15.24、18.78、30.84および28.37の回折角(2θ)±0.2°で、15.24、18.78、30.84および31.87の回折角(2θ)±0.2°で、または15.24、18.78、30.84および47.06の回折角(2θ)±0.2°でピークを有するX線分光スペクトルを有するアルロース結晶であり得る。前記アルロース結晶の有するX線分光スペクトルでピークを有する回折角は、X線回折分析結果を上位(Relative Intensity%)の主なピークおよび形態特異的なピークを選定して表示したものである。
【0069】
本発明によるアルロース結晶は、多様な結晶化方法で得られるが、冷却法によって製造したアルロース結晶で測定した特性であり得る。
【0070】
本発明の一例によるアルロース結晶は、DSC分析により125.8℃±5℃のTm温度または200~220J/gの溶融エンタルピー(△H)を有することができ、前記Tmは125.8℃±3℃であり得る。示差走査熱分析(DSC)は温度勾配により操作され、アルロース粉末試料の体温上昇を維持するために提供されたエネルギを測定するものである。結晶のDSC分析で熱容量が高いほど容易に溶けにくく、熱容量が高く吸熱ピークの幅が狭いほど結晶が均一で堅固に形成されていることを予測することができる。
【0071】
本発明のまた他の一例は、前記アルロース結晶化用組成物で製造されたアルロース結晶であって、好ましくは下記(1)~(5)からなる群より選択される一つ以上の特性を有するアルロース結晶であり得る:
(1)粉末X線分光スペクトル上で15.24、18.78、および30.84の回折角(2θ)±0.2°でピークを有する粉末X線分光スペクトルを有する、
(2)示差走査熱分析(DSC)により125.8℃±5℃のTm温度を有する、
(3)示差走査熱分析により200~220J/gの溶融エンタルピー(△H)を有する、
(4)350μm以上、好ましくは350~2,000μmの平均長直径を有する、および
(5)アルロース結晶の短直径に対する長直径長さ(マイクロメータ)の比率(=長直径/短直径)が1.0~8.0の範囲に含まれる。
【0072】
本発明によるアルロース結晶は、結晶の平均短直径が50以上~1,000μmであり得、好ましくは50以上~500μmであり得、平均長直径が350μm以上、好ましくは350~2,000μm、さらに好ましくは400μm以上~2,000μmでありうる。
【0073】
また、本発明によるアルロース結晶の短直径に対する長直径の長さ(マイクロメータ)比率(=長直径/短直径)が、1.0~8.0、1.0~6.9、1.0~6.0、1.
0~5.5、1.0~5.0、1.1~8.0、1.1~6.9、1.1~6.0、1.1~5.5、1.1~5.0、1.3~8.0、1.3~6.9、1.3~6.0、1.3~5.5、1.3~5.0、1.5~8.0、1.1~6.9、1.5~6.0、1.5~5.5、1.5~5.0、2.0~8.0、2.0~6.9、2.0~6.0、2.0~5.5、2.0~5.0であり得る。
【0074】
本発明によるアルロース結晶に対する粉末XRDパターン分析結果によれば、本発明によるアルロース結晶は純粋な結晶粒子として、長方形六面体またはそれに近接する構造を有する。本発明の結晶構造が立方晶系に近接するほど、結晶の均一度と堅固さが高まるのでさらに好ましい。
【0075】
また、アルロースの結晶化工程で製造された結晶が均一であるほど、結晶の強度が高まって粒子破れが最小化されることによって粒度分布が均一になり、これによって流れ性が向上することができる。反面、均一度が低い場合、乾燥および移送段階で結晶粒子の壊れによって未分化され、相対的に簡単に溶け得るため製品の品質に悪影響を及ぼす。
【0076】
本発明のアルロース結晶は微粉型の粉末に比べて流れ性が良く、ケーキング(Caking)が起こり難く保管時安定であり、流通および取り扱いが容易な特性を有する。また、前記アルロース粉末が砂糖より低いカロリーを有し、甘美は砂糖と類似の特性を有するので、混合甘味料、固形混合甘味料、チョコレート、チューインガム、即席ジュース、即席スープ、顆粒、精製などの製造が容易で有利に実施することができる。また、前記アルロース結晶粉末は、飲食品、嗜好物、飼料、飼料、化粧品、医薬品などの各種組成物に含有されて使用されることができる。
【発明の効果】
【0077】
本発明によるアルロース結晶の製造方法は、結晶を製造するための溶液に含まれたアルロース転換物(Impurity-S)含有量を制御することによって、アルロース粒子の大きさが小さくなることを防止することができ、結晶粒子成長を適切に調整することによって均一な粒子の大きさを有するアルロースを生産することができる。また、粒子を均一な大きさに成長させることによって、回収工程での損失を減らすことができ、結晶収率を向上させて生産性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
図1】pH5である70Brix濃度のアルロースシロップを温度別に保管した場合におけるアルロースの含有量変化を示すグラフである。
図2】pH5である70Brix濃度のアルロースシロップを温度別に保管した場合におけるアルロース転換物の含有量変化を示すグラフである。
図3】相違するpHを有して70Brix濃度のアルロースシロップを70℃温度で保管した場合におけるアルロースの含有量変化を示すグラフである。
図4】相違するpHを有して70Brix濃度のアルロースシロップを70℃温度で保管した場合におけるアルロース転換物の含有量変化を示すグラフである。
図5】実施例5で得られたアルロース粉末の倍率X100で測定された光学顕微鏡写真である。
図6】実施例5で得られたアルロース粉末の倍率X50で測定された走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【発明を実施するための形態】
【0079】
本発明を下記実施例によってさらに詳細に説明する。ただし、下記の実施例は本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明はこれに限定されない。
【実施例0080】
実施例1:アルロース結晶の製造
韓国公開特許第2014-0054997号に記載された製造方法と実質的に同じ生物学的方法で、果糖基質からアルロースシロップを製造した。アルロースシロップを、有色およびイオン成分などの不純物を除去するために、陽イオン交換樹脂、陰イオン交換樹脂および陽イオンと陰イオン交換樹脂が混合された樹脂で充填された常温のカラムに時間当たりイオン交換樹脂2倍(1~2倍)体積の速度で通液させて脱塩させた後、カルシウム(Ca2+)タイプのイオン交換樹脂で充填されたクロマトグラフィーを利用して高純度のアルロース溶液で分離収得した。
前記高純度分離工程(SMB)によりアルロース97重量%を含むアルロース高純度シロップを1次濃縮して35Bx(w/w%)濃度で得て2次濃縮し、アルロース97重量%を含む81Bx(w/w%)濃度、12uS/cmの電気伝導度を有する結晶化用アルロースシロップを製造した。前記アルロースシロップの電気伝導度は固形分含有量30Bx基準に測定した値である。
前記濃縮されたアルロースシロップを過飽和状態になる温度35℃で徐々に温度10℃まで冷却させて結晶を成長させた。この際、アルロース種晶を添加して温度35℃でゆっくり攪拌して少量の結晶核を生成させるようにした後、温度を時間当り1℃ずつ減少させて結晶を成長させ、前記結晶成長工程で冷却途中に生成された微細結晶を再溶解するために溶液の温度を30~35℃まで高めて微細結晶を溶解する工程を行った。前記結晶成長工程と微細結晶溶解工程を少なくとも1回以上繰り返して結晶化を行った。ここで製造されたアルロース結晶は、遠心脱水によって母液を除去して結晶を冷却水で洗浄した後、乾燥して回収した。
【0081】
前記結晶化原液のアルロース含有量とアルロース転換物(Impurity-S)の含有量と、アルロース結晶の純度は下記HPLC分析を行った。分析条件は次のとおりである。
分析カラム: Biolad Aminex HPX-87C column
移動相: 水
Flow rate: 0.6ml/min
カラム温度: 80℃
検出器: RI detector
【0082】
前記HLPC分析の結果、結晶化用アルロース水溶液の固形分含有量100重量%を基準として、結晶化用アルロース水溶液のアルロース転換物(Impurity S)の含有量は0.4重量%で、アルロース含有量は97.0重量%であった。
前記方法で製造されたアルロース結晶収率は63.6%であった。前記結晶水率は、結晶化のための原料アルロースシロップの固形分重量に対して脱水洗浄後の回収されたアルロース結晶粉末の重量を百分率で表示したものである。
【0083】
実施例2および3:アルロース結晶の製造
前記実施例1のアルロース製造と実質的に同様の方法を実施し、高純度分離工程(SMB)により、実施例2でアルロース96.6重量%を含むアルロース高純度シロップを35Bx(w/w%)濃度で得て、実施例3でアルロース95.8重量%を含むアルロース高純度シロップを濃縮して35Bx(w/w%)濃度で得て、実施例6でアルロース95.5重量%を含むアルロース高純度シロップを濃縮して35Bx(w/w%)濃度で得た。前記アルロース溶液を濃縮し、実施例2はアルロース96.6重量%を含む81Bx(w/w%)濃度、14uS/cmの電気伝導度を有する結晶化用81Bx(w/w%)濃度のアルロースシロップを製造し、実施例3はアルロース95.8重量%を含む81Bx(w/w%)濃度、14uS/cmの電気伝導度を有する結晶化用81Bx(w/w%)濃度のアルロースシロップを製造し、実施例6はアルロース95.5重量%を含む81B
x(w/w%)濃度、12uS/cmの電気伝導度を有する結晶化用アルロースシロップを製造した。前記アルロースシロップの電気伝導度は、固形分含有量30Bx基準に測定した値である。
前記実施例1と同じ結晶化方法で、前記濃縮されたアルロースシロップを利用して結晶化を行い、結晶を冷却水で洗浄した後、乾燥して回収した。
前記実施例1と同様の方法で、前記結晶化原液のアルロース含有量とアルロース転換物(Impurity-S)の含有量と、アルロース結晶の純度は下記HPLC分析を行った。その結果を下記表1に示す。
具体的には、実施例2の結晶化用アルロースシロップ(アルロース転換物含有量0.3重量%、アルロース含有量96.6重量%)で製造されたアルロース結晶収率は61.9%であり、実施例3の結晶化用アルロースシロップ(アルロース転換物含有量0.5重量%、アルロース含有量95.8重量%)で製造されたアルロース結晶収率は61.6%であり、実施例6の結晶化用アルロースシロップ(アルロース転換物含有量0.25重量%、アルロース含有量95.5重量%)で製造されたアルロース結晶収率は62.1%であった。
【0084】
実施例4:アルロース結晶の製造
前記実施例1のアルロース製造と実質的に同様の方法を実施し、高純度分離工程(SMB)によりアルロース97.0重量%を含むアルロース高純度シロップを35Bx(w/w%)濃度で得た。
前記アルロースシロップ内に含有された不純物を最小化するために不純物除去に適した活性炭を使用して温度40℃で30分間処理後、濾過した。活性炭処理後のアルロースシロップを81Bx(w/w%)濃度で濃縮させて、アルロース97.3重量%を含む81Bx(w/w%)濃度、10uS/cmの電気伝導度を有する結晶化用アルロースシロップを製造した。
前記濃縮されたアルロースシロップを過飽和状態になる温度35℃で徐々に温度10℃まで冷却させて結晶を成長させた。この際、アルロース種晶を添加して温度35℃でゆっくり攪拌して少量の結晶核を生成させるようにした後、温度を時間当り1℃ずつ減少させて結晶を成長させ、前記結晶成長工程で冷却途中に生成された微細結晶を再溶解するために溶液の温度を30~35℃まで高めて微細結晶を溶解する工程を行った。前記結晶成長工程と微細結晶溶解工程を少なくとも1回以上繰り返して結晶化を行った。ここで製造されたアルロース結晶は遠心脱水によって母液を除去して結晶を冷却水で洗浄した後、乾燥して回収した。
【0085】
実施例5:アルロース結晶の製造
前記実施例1のアルロース製造と実質的に同様の方法を実施し、高純度分離工程(SMB)によりアルロース97.0重量%を含むアルロース高純度シロップを濃縮して35Bx(w/w%)濃度で得た。
前記アルロースシロップを濃度で濃縮させて固形分含有量100重量%を基準にアルロース97重量%を含む高純度アルロースシロップを81Bx(w/w%)濃度で濃縮させて、8uS/cmの電気伝導度を有する結晶化用アルロースシロップを製造した。前記実施例1と同じ結晶化方法で、前記濃縮されたアルロースシロップを利用して結晶化を行い、結晶を冷却水で洗浄した後、乾燥して回収した。
前記得られた1次結晶を水に溶解してアルロース溶解液81.2Bxを製造し、前記アルロース溶解液を実施例1のHPLC分析法で分析した結果、アルロース転換物(Impurity S)の含有量は0.07重量%で、アルロース含有量は99.5重量%であった。
2次結晶化工程の原料として、前記製造されたアルロース溶解液で前記1次結晶化方法と実質的に同様の方法で2次結晶化工程を行った。ここで製造されたアルロース結晶は遠心脱水によって母液を除去して2次結晶化で得た最終結晶を冷却水で洗浄した後、乾燥し
て回収して2次結晶を製造した。2次結晶の収率は62.5%であった。
【0086】
【表1】
【0087】
前記表1に示すように、実施例1~3のアルロース結晶収率が60%を超えることに比べて、比較例1はたとえ結晶化原液のアルロース含有量が高くても、アルロース転換物(Impurity-S)の含有量が2重量%を超えるときちんとした結晶を得ることができず、小さい結晶により結晶収率も大幅減ることになることを確認した。
【0088】
比較例1:アルロース転換物含有量が2重量%を超える時のアルロース結晶の製造
結晶化原液のアルロース転換物含有量が2重量%を超える時のアルロース結晶収率を調べるために、実施例5の2次結晶化のための結晶化原液に酸性pH条件または熱処理条件を加えてアルロース転換物生成を誘発した。
具体的には、前記実施例5で1次結晶化を行って得たアルロース結晶を水に溶解して製造された2次結晶化のための結晶化原液を利用して、pH3.5、温度80℃条件で3時間熱処理して結晶化原液を製造した。前記実施例1と同じ結晶化方法で、前記濃縮されたアルロースシロップを利用して結晶化を行い、結晶を冷却水で洗浄した後、乾燥して回収した。
前記実施例1と同様の方法で、前記結晶化原液のアルロース含有量とアルロース転換物(Impurity-S)の含有量と、アルロース結晶の純度は下記HPLC分析を行い、その結果を下記表2に示す。
【0089】
比較例2および実施例7~8:アルロース転換物含有量によるアルロース結晶の製造
前記実施例5で1次結晶化を行って得たアルロース結晶を水に溶解して製造された2次結晶化のための結晶化原液を利用し、pH4.5、70℃で6、13、または24時間熱処理を行い、結晶化原液を製造した。前記結晶化原液に含まれたアルロース含有量とアルロース転換物の含有量を下記表2に示す。
前記製造された結晶化原液を利用して結晶化を行う方法は、実施例1と実質的に同様の方法を実施した。具体的には、比較例2および実施例7~8は相違する熱処理時間で得られ下記表2のアルロース含有量とアルロース転換物の含有量を有する結晶化原液を製造し、アルロース結晶化工程を行った。
前記実施例1と同様の方法で、前記結晶化原液のアルロース含有量とアルロース転換物(Impurity-S)の含有量と、アルロース結晶の純度は下記HPLC分析を行った。その結果を下記表2に示す。
【0090】
【表2】
【0091】
比較例2の場合、結晶化原液でアルロースの純度が低くアルロース転換物の含有量が高いため、結晶粒子の成長がうまくできず、微細結晶に生成されて結晶を脱水、洗浄することが非常に難しかった。比較例1は、比較例2と同様に、アルロース転換物の含有量が高いほど結晶粒子の大きさ成長がうまく行われず微細結晶に生成されることを確認した。実施例7および実施例8の場合、アルロース転換物含有量が2重量%未満で、比較例に対して高い結晶収率を示すことを確認することができた。
【0092】
実験例1:アルロース転換物(Impurity S)のLC-MSの分析
(1)実施例2のアルロース転換物(Impurity S)の分析
実施例2で使用した結晶化のためのアルロースシロップのHPLC分析で、溶出時間31±2分台のピークで分離した不純物分画を直接収得し、分離分画時希釈された液を凍結乾燥して約100倍濃度で濃縮して分析に使用した。これを液体クロマトグラフィー/質量分析機(LC/MS system、モデル名:LTQ、製造会社:Thermo Finnigan,USA)装備で不純物の分子量の分析を行い、LC/MS分析法で測定したアルロース転換物(Impurity S)の分子量は300~400m/z(質量/荷電量との比)範囲を有する物質であった。
【0093】
(2)比較例2および実施例7~8のアルロース転換物(Impurity S)の分析
前記LC-MS分析方法と実質的に同様の方法により、前記HPLC分析で、比較例2および実施例7~8に使用した熱処理した結晶化原液をLC-MS分析に使用した。前記熱処理によるアルロースとアルロース転換物の分子量変化のLC-MS分析を行い、比較例2および実施例7~8で使用した結晶化原液に含まれたアルロース含有量とアルロース転換物含有量(%)の分析結果を下記表3に示す。
下記表3は熱処理時間(実施例7,実施例8,比較例2)別のアルロースシロップをLC-MS分析したデータであり、各分子量(m/z)別に検出されたPeakの面積(Area)値を百分率で換算した数値を表に示したものである。表3のRow 1で分子量179.1m/zはアルロースである。下記表3でRow 4、8、および10は熱処理後アルロース転換物(Impurity S)の含有量が増加したことを示し、残りのRowでは熱処理後にアルロース転換物(Impurity S)の含有量が減少したことを示す。
【0094】
【表3】
【0095】
前記分析結果に示すように、熱処理時間が増加するほど分子量分析でもアルロース含有量が低くなって、不純物の含有量が高まることを確認した。前記表3のRow 1で分子量179.1m/zはアルロースであり、熱処理後にPeak面積値の数値が減少することを確認した。反面、分子量341m/z(表Row5)で検出された成分はアルロースを含有する結晶化原液を熱処理するほど増加する成分で、アルロースが脱水または縮合反応によって変性された二量体(Dimer)類似構造の物質であることを分子量分析により確認することができた。これはLC-MS分析により構造を類推した結果、C122211の化学式を有する物質で、アルロース変性重合体であることを予測することができる。追加的に熱処理が行われるほどC252811、C244221またはC244422の前記アルロース変性重合体の二量体と類似の分子量を有するアルロース変性重合体(アルロースのtetramer類似体)の含有量も共に増加することを確認した。これはアルロースが外部刺激(stress)、例えば、比較例1または2では酸性pHおよび/または熱処理によって簡単に変性されることによりアルロースまたはアルロース転換物とランダムに脱水および縮合反応が繰り返されて前記のような物質に転換されたと見ることができる。
【0096】
(3)実施例3のアルロース転換物の分析
実施例3で使用した結晶化のためのアルロースシロップのHPLC分析で、溶出時間31±2分台ピークで分離した不純物分画を直接収得し、分離分画時希釈された液を凍結乾燥して約100倍濃度で濃縮して分析に使用した。
液体クロマトグラフ/質量分析機(Liquid Chromatograph Mass Spectrometer;LCMS)装備を利用してアルロース転換物の分子量分析を行った。
-機器製品名: Ultimate-3000 ISQ EC(Thermo Fisher)
-分析カラム: Bio-rad Aminex HPX-87C
-カラム温度: 80℃
-流速: 0.3mL/min
-溶媒: 蒸溜水
-注入量: 5μl
アルロース転換物のLC/MS分析の結果、55.22m/z、60.24m/z、74.14m/z、79.25m/z、82.22m/z、83.23m/z、109m/z、117m/z、124.26m/z、127.1m/z、141.5m/z、144m/z、163.23m/z、203.16m/z、および365.16m/z付近でピークを示し、主なピークとしては127m/z、163m/z付近、198.2~203m/z付近、および365m/z付近でピークを示す。
したがって、アルロース転換物は、炭素(C)数5~12のC、H、Oで構成された分子で、分子量電荷値m/zが50以上~400以下の値を有する、アルロースから由来した変性物質で、HMFとレブリン酸(Levulinic acid)成分を含み、Furan構造が含まれた誘導体物質を含むことが分かった。具体的には、163m/zピークの場合、アルロースのような六炭糖(Hexose)が脱水反応によってHMFで分解される過程での生成される中間体物質(Furan aldehyde intermediate)であると考えられ、198.2~203m/zピークの場合、アルロース分子にNa+イオンが結合された形態である[C6126+Na]+分子であると考えられ、365m/zピークの場合、アルロース二量体(dimer)分子にNa+イオンが結合
された[C6126+Na]+分子であると考えられた。
アルロース転換物のLC/MS分析結果に基づいて、アルロース転換物に含まれる化合物を下記の表4に示す。
【0097】
【表4】
【0098】
(4)5-HMFのLC/MS分析
5-HMFのLC/MS分析を行い、アルロース転換物に5-HMFが含まれることを確認した。
5-HMF分析サンプルとしては、standard物質(SIGMA-ALDRICH,CAS Number 67-47-0)を購入して使用した。
その結果、5-HMFが水溶液状態での電荷移動、脱落および脱水反応によって生成され得る構造の分子量m/z値を示し、79.09m/z、109m/z、124.22m/z、127m/z、144.15m/zなどでピークを示し、アルロース転換物のLC/MS分析結果とLC/MS分析ピークが一部一致し、アルロース転換物に5-HMFが含まれることを確認することができた。
【0099】
実験例2:アルロースの安定性分析
アルロースおよびアルロース転換水の温度による影響をテストするため、実施例1のアルロース97重量%を含むアルロースシロップを同じ量30gずつ分けて入れて、温度が異なるそれぞれの恒温水槽に保管して時間別にサンプリングして含有量変化を分析した。その結果を図1および図2に示す。
図1は、pH5である70%Brix濃度のアルロースシロップを温度別に保管した場合におけるアルロースの含有量変化を示すグラフである。図2は、pH5である70%Brix濃度のアルロースシロップを温度別に保管した場合におけるアルロース転換物の含有量変化を示すグラフである。図1および図2に示すように、保管温度が高いほどアルロース含有量は減少し、アルロース転換物(Impurity-S)の含有量は増加した。
また、アルロースおよびアルロース転換物のpHによる影響をテストするため、実施例1のアルロース含有量97.0%シロップを苛性ソーダと塩酸溶液を利用してそれぞれの他のpHに調整した後、同じ温度(70℃)で保管して時間別にサンプリングして含有量変化を分析した。その結果を図3および図4に示す。
図3は、pHが異なる70Brix濃度のアルロースシロップを70℃温度で保管した場合におけるアルロースの含有量変化を示すグラフである。図4は、pHが異なる70Brix濃度のアルロースシロップを70℃温度で保管した場合におけるアルロース転換物
の含有量変化を示すグラフである。図3および図4に示すように、70℃温度でpHが低いほどアルロース含有量は減少し、アルロース転換物の生成量は増加した。
したがって、アルロースはpHが低く温度が高いほど不安定であり、実際の生産工程中に、特に濃縮段階でアルロースの含有量が変化する。このような問題は高純度のアルロース純度を低下させて結晶化段階に多くの影響を与える。実際この過程でアルロースの含有量が減少して付加的に生成される特定アルロース転換物(Impurity)の含有量が増加するが、この成分がアルロースの結晶化に大きな影響を与えることが確認された。様々なアルロース転換物の中でImpurity-Sという成分の含有量が2%を超えて存在する場合、アルロース結晶粒子が成長するのに主要な妨害要因として作用されることが分かり、これによって結晶粒子の粒度と結晶収率に大きな影響を与えることを確認した。
【0100】
実験例3:アルロース結晶の特性分析
(1)結晶の粒度分布の分析
実施例5で得られたアルロース結晶の粒度分布は、Mesh別の標準網篩を利用して確認した。標準網篩のMesh sizeは20、30、40、60、80、100meshを用い、標準網篩の穴のサイズで結晶粒子の粒度分布を測定した。
各メッシュ(mesh)別の標準網篩の穴サイズは850、600、425、250、180、150μmである。各サンプル別100gの重量を取ってMesh大きさ別の標準網篩に入れて3分間振動を加えて標準網篩を通過させた。各mesh大きさ別にふるいに残っているサンプルの重量を測って百分率値を表5に記載した。下記表5で各メッシュ別の粒度分布は、粒子の重量%を数値で示す。
【0101】
【表5】
【0102】
前記表5に示すように、実施例5のアルロース結晶は、粒子分布が90.2重量%に集中して非常に狭い分布を示し、実施例3のアルロース結晶は、40↑で最も多い分布を示すが、80↑、60↑、40↑、および30↑で均等に分布して粒子分布が広く広まっていることが確認された。実施例5のように長直径/短直径の比率が小さく堅固な結晶粒子であるほど、製品の微粉含有量が相対的に低く、均一な粒度分布を有していることを確認した。また、長直径/短直径の比率が大きく、低い均一度の粒子であるほど、乾燥および移送過程で粒子壊れによって未分化され、粒度が不均一になって広い範囲の粒度分布を有するようになる。
【0103】
(2)結晶形態および結晶粒子の大きさ分析
実施例5で得られたアルロース結晶の倍率X100で測定された光学顕微鏡写真を図5に示す。実施例5で得られたアルロース結晶の倍率X100で測定された走査電子顕微鏡(SEM)写真を図6に示す。
また、実施例5で得られたアルロース結晶9個の試料に対して長直径(縦)および短直径(横)を測定し、粒子直径比率(=長直径/短直径)を得て下記表6に示す。具体的には、5個の結晶に対して短直径長さ(μm)を1とし、それを基準に長直径の長さ(μm)比率を示す。
【0104】
【表6】
【0105】
図6に示すように、本発明によるアルロース結晶は、長方形六面体またはそれに近接する結晶構造を有する。前記表2に示す結晶の短直径長さ(μm)を1とし、それを基準に示す長直径の長さ(μm)比率は、実施例5の場合、平均1.6それぞれの結晶面が均一に成長して正方形に近い斜方晶系の結晶形態を形成している。また、結晶面が均一に成長するほど長直径/短直径比率が減少する傾向を現れることを確認することができた。これは、結晶化原料のアルロース純度が低いほど、アルロースの他に他の成分が純粋アルロースの結晶成長を妨げる不純物として作用するので、結晶形状に影響を及ぼしたと解釈される。
【0106】
(3)示差走査熱量計法(DSC)の分析
実施例5で得られたアルロース結晶のDSC分析を行った。具体的なDSC分析条件は次のとおりである。
装備名: DSC[differential scanning calorimetry]
製造会社: Perkin Elmer
方法: 30~250℃、10℃/min昇温、N2 gas purge
(基準方法:ASTM D 3418参照)
前記アルロース結晶のDSC分析結果を下記表7に示す。
【0107】
【表7】
【0108】
前記DSC分析の結果、実施例5の結晶はTm値が高く、熱容量も高く測定された。結晶のDSC分析で熱容量が高いほど容易に溶けにくく、熱容量が高く吸熱ピークの幅が狭いほど結晶が均一で堅固に形成されていることを予測することができる。前記実施例5の熱容量と吸熱ピークエンタルピー値を考慮する時、実施例5の結晶が相対的により均一で堅固に形成されていることを確認した。
【0109】
(4)赤外吸収(IR)スペクトルの分析
前記製造されたアルロース結晶を確認するため、実施例5の結晶に対して赤外吸収(IR)スペクトルの分析を下記測定条件で行った。
分析機器: TENSOR II with Platinum ATR、製造会社;Bruker(German)
検出器: highly sensitive photovoltaic MCT detector with liquid nitrogen cooling
スキャン(Scan)回数: 64 scans at 20 kHz
スキャン(Scan)範囲: 800-4,000cm-1 and averaged
at 4cm-1 resolution。
赤外吸収(IR)スペクトルの分析結果によれば、アルロース分子構造内に官能基-OHとC-O-C、C-C、C-OHなどで構成されており、アルロース分子だけの固有な構造特性を有することを確認することができ、そのため実施例5の結晶は同じアルロース結晶であることを確認した。
【0110】
(5)X線回折分析法(XRD)の分析
実施例5で得られたアルロース結晶の具体的分析条件によりX線回折分析法を行い、実施例5で得られたアルロース結晶のX線回折分析の結果を上位(Relative Intensity%)5個のピークおよび形態特異的なピークを選定して表8に示す。
分析機器: D/MAX-2200 Ultima/PC
製造会社: Rigaku International Corporation(Japan)
X-ray sauce system target: sealed tube Cu
管電圧: 45kV / 管電流: 200mA
Scan range: 5~80° 2θ
Step size: 0.019°
Scan speed: 5°/min
【0111】
【表8】
【0112】
前記表8に示すように、実施例5で得られたアルロース結晶は、粉末X線分光スペクトル上でAngle 2-Theta degree値が15.24、18.78および30.84;15.24、18.78、30.84、および28.37;15.24、18.78、30.84および31.87;15.24、18.78、30.84および47.06;または15.24、18.78、30.84、28.37、31.87および47.06で特異的なピークを有することを確認した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2024-12-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形分総含有量を基準に、アルロース含有量が90重量%以上であり、アルロース転換物(Impurity-S)の含有量が2重量%以下であり、
前記アルロース転換物(Impurity-S)が、アルロース分子量の0.2倍~10倍の分子量を有するアルロース変性重合体を含む、アルロース結晶化用組成物。
【請求項2】
前記アルロース転換物(Impurity-S)が、アルロースが脱水反応によってHMFに分解される過程で生成される中間体物質(Furan aldehyde intermediate)を含む請求項1に記載のアルロース結晶化用組成物。
【請求項3】
前記アルロース転換物(Impurity-S)が、前記アルロースにNa+イオンが結合された分子、またはアルロース二量体分子にNa+イオンが結合された分子を含む請求項1に記載のアルロース結晶化用組成物。
【請求項4】
粘度が温度45℃で2cps~200cpsである請求項1に記載のアルロース結晶化用組成物。
【請求項5】
電気伝導度が1,000uS/cm以下である請求項1に記載のアルロース結晶化用組成物。
【請求項6】
前記アルロース転換物(Impurity-S)が、LC/MS分析法で測定した質量/荷電量との比率が10~600m/zの範囲に含まれる物質である請求項1に記載のアルロース結晶化用組成物。
【請求項7】
前記アルロース転換物(Impurity-S)がCxyzの化合物を含み、
前記xは3~15の整数、前記yは1~15の整数、および前記zは1~10の整数である請求項1に記載のアルロース結晶化用組成物。
【請求項8】
前記アルロース転換物(Impurity-S)が、
アルロース二量体(dimer)、
アルロースのtetramer類似体、
レブリン酸(levulinic acid、4-oxopentanoic)、
フルフラール(furfural)、
ヒドロキシメチルフルフラール(Hydroxymethylfurfural,HMF)、
γ-ヒドロキシ吉草酸(γ-Hydroxyvaleric acid,GVB)、
2,5-ジメチルフラン(2,5-Dimethylfuran)、
2,5-フランジカルボン酸(2,5-furandicarboxylic acid,FDCA)、
5-ヒドロキシメチル-2-フロン酸(5-hydroxymethyl-2-furoic acid)、
2,5-ホルミルフランカルボン酸(2,5-formylfurancarboxylic acid)、
2,5-フランジカルバルデヒド(2,5-Furandicarbaldehyde)、
2,5-ビス-(ヒドロキシメチル)フラン(2,5-bis-(hydroxymethyl)furan)、
ビス(5-ホルミル-2-フルフリル)エーテル(bis(5-formyl-2-furfuryl) ether)、
2-フロン酸(2-Furoic acid)、
3-フロン酸(3-Furoic acid)、
5-ヒドロキシフルフラール(5-Hydroxyfurfural)、
2,5-ジヒドロ-2,5-ジメトキシフラン(2,5-Dihydro-2,5-dimethoxyfuran)、
(2R)-5-オキソテトラヒドロ-2-フランカルボン酸((2R)-5-Oxotetrahydro-2-furancarboxylic acid)、
2,5-ホルミルフランカルボン酸(2,5-formylfuran carboxylic acid)、
5,5’-メチレンジ(2-フロン酸)(5,5’-Methylenedi(2-furoic acid))、および
ビス(5-メチルフルフリル)エーテル(bis(5-methyl furfuryl) ether)
からなる群より選択される1種以上を含む請求項1に記載のアルロース結晶化用組成物。
【請求項9】
pHが4~7の範囲にある請求項1に記載のアルロース結晶化用組成物。
【請求項10】
温度が70℃以下である請求項1に記載のアルロース結晶化用組成物。
【請求項11】
前記アルロース結晶化用組成物から得られるアルロース結晶収率が55%以上である請求項1に記載のアルロース結晶化用組成物。