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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025019348
(43)【公開日】2025-02-07
(54)【発明の名称】歪みゲージモジュール
(51)【国際特許分類】
   G01B 7/06 20060101AFI20250131BHJP
【FI】
G01B7/06 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021204877
(22)【出願日】2021-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】小野 位
(72)【発明者】
【氏名】北爪 誠
(72)【発明者】
【氏名】國府田 桂介
(72)【発明者】
【氏名】樋上 智貴
【テーマコード(参考)】
2F063
【Fターム(参考)】
2F063AA25
2F063DA02
2F063EC03
2F063EC05
2F063EC13
2F063EC14
2F063EC15
2F063EC16
2F063EC17
2F063EC18
2F063EC20
2F063EC24
2F063EC25
(57)【要約】
【課題】検出感度に優れた歪みゲージモジュールを提供する。
【解決手段】本歪みゲージモジュールは、測定対象物に装着し、上面に端子を有し前記測定対象物に生じる歪みを検出するためのフィルム状歪み検出デバイスと、上面と下面とを有する薄板基板と、を含んで構成され、前記薄板基板の前記上面に接着剤を介して前記フィルム状歪み検出デバイスが搭載され、前記下面を前記測定対象物への装着面とし、前記薄板基板は非晶質材料又はナノ結晶材料からなる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物に装着し、上面に端子を有し前記測定対象物に生じる歪みを検出するためのフィルム状歪み検出デバイスと、上面と下面とを有する薄板基板と、を含んで構成され、
前記薄板基板の前記上面に接着剤を介して前記フィルム状歪み検出デバイスが搭載され、前記下面を前記測定対象物への装着面とし、
前記薄板基板は非晶質材料又はナノ結晶材料からなる歪みゲージモジュール。
【請求項2】
前記薄板基板の厚さは、20μm以上120μm以下である請求項1に記載の歪みゲージモジュール。
【請求項3】
前記薄板基板の上面の表面粗さRaは、3μm以上20μm以下である請求項1又は2に記載の歪みゲージモジュール。
【請求項4】
前記薄板基板の材料は、ガラスである請求項1乃至3の何れか一項に記載の歪みゲージモジュール。
【請求項5】
前記薄板基板の材料は、非晶質合金である請求項1乃至3の何れか一項に記載の歪みゲージモジュール。
【請求項6】
前記薄板基板の材料は、Fe基非晶質合金である請求項5に記載の歪みゲージモジュール。
【請求項7】
前記薄板基板は、平面視で矩形状である請求項1乃至6の何れか一項に記載の歪みゲージモジュール。
【請求項8】
前記フィルム状歪み検出デバイスは、抵抗体が形成された抵抗体領域を含み、
前記抵抗体は前記薄板基板の重心と重なる部分を含む請求項1乃至7の何れか一項に記載の歪みゲージモジュール。
【請求項9】
前記薄板基板の重心と前記抵抗体領域の重心が一致している請求項8に記載の歪みゲージモジュール。
【請求項10】
前記フィルム状歪み検出デバイスは、ポリイミドからなる基材を含み、前記抵抗体は前記基材上に形成されている請求項8又は9に記載の歪みゲージモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歪みゲージモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
フィルム状デバイスとして、例えば、可撓性を有するポリイミド等の基材上に形成された抵抗体を有する歪みゲージが知られている(例えば、特許文献1参照)。このようなフィルム状デバイスにおいて、検出感度を向上することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-185346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、検出感度に優れた歪みゲージモジュールの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本歪みゲージモジュール(1)は、測定対象物に装着し、上面に端子(34,35)を有し前記測定対象物に生じる歪みを検出するためのフィルム状歪み検出デバイス(30)と、上面(10a)と下面(10b)とを有する薄板基板(10)と、を含んで構成され、前記薄板基板(10)の前記上面(10a)に接着剤(20)を介して前記フィルム状歪み検出デバイス(30)が搭載され、前記下面(10b)を前記測定対象物への装着面とし、前記薄板基板(10)は非晶質材料又はナノ結晶材料からなる。
【0006】
なお、上記括弧内の参照符号は、理解を容易にするために付したものであり、一例にすぎず、図示の態様に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0007】
開示の技術によれば、検出感度に優れた歪みゲージモジュールを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る歪みゲージモジュールを例示する上面図である。
図2】本実施形態に係る歪みゲージモジュールを例示する断面図である。
図3】表面粗さRaと接着剤の厚さについて説明する図である。
図4】抵抗体領域について説明する図である。
図5】薄板基板と抵抗体領域の重心の一致について説明する図である。
図6】フィルム状歪み検出デバイスの出力の測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
(歪みゲージモジュール)
図1は、本実施形態に係る歪みゲージモジュールを例示する上面図である。図2は、本実施形態に係る歪みゲージモジュールを例示する断面図であり、図1のA-A線に沿う断面を示している。図3は、表面粗さRaと接着剤の厚さについて説明する図である。図4は、抵抗体領域について説明する図である。
【0011】
図1及び図2を参照すると、歪みゲージモジュール1は、薄板基板10と、接着剤20と、フィルム状歪み検出デバイス30とを有する。歪みゲージモジュール1は、測定対象物に装着し、フィルム状歪み検出デバイス30により、測定対象物に生じる歪みを検出することができる。
【0012】
薄板基板10は、フィルム状歪み検出デバイス30を配置する部材である。詳細には、薄板基板10は、上面10aと下面10bとを有する。薄板基板10の上面10aにはフィルム状歪み検出デバイス30が搭載され、下面10bは測定対象物への装着面となる。
【0013】
ここで、薄板基板とは、厚さが200μm以下である基板を指す。薄板基板10の厚さは、20μm以上120μm以下であることが好ましく、さらに20μm以上80μm以下であることがより好ましく、20μm以上50μm以下であることがさらに好ましい。
【0014】
薄板基板10の厚さを20μm以上とすることで、歪みを安定して検出することができる。薄板基板10の厚さを120μm以下とすることで、歪みを感度よく検出することができる。また、薄板基板10の厚さをより薄くすることで、歪みをさらに感度よく検出することができる。また、薄板基板10の厚さが20μm以上80μm以下であれば、湾曲した測定対象物に対しても容易に固定することができる。薄板基板10の厚さが20μm以上50μm以下であれば、湾曲した測定対象物に対してもさらに容易に固定することができる。
【0015】
薄板基板10は、全面において、うねり及び反りの排除された平坦性を有することが好ましい。また、薄板基板10は、上面10aの表面粗さRaは、3μm以上20μm以下であることが好ましく、さらに3μm以上10μm以下であることがより好ましく、3μm以上5μm以下であることがさらに好ましい。薄板基板10の上面10aの表面粗さRaを3μm以上20μm以下とすることにより、フィルム状歪み検出デバイス30に対する薄板基板10の上面10aの表面粗さRaの影響を低減することが可能となり、歪みを容易に、かつ正確に測定することができる。
【0016】
ここで、表面粗さRaとは、表面粗さを表わす数値の一種であり、算術平均粗さと呼ばれるものであって、具体的には、図3に示すように、基準長さL内で変化する高さの絶対値を平均ラインである表面から測定して算術平均したものである。
【0017】
薄板基板10は、非晶質材料又はナノ結晶材料からなる。具体的には、薄板基板10の材料は、非晶質材料の一例であるガラスである。あるいは、薄板基板10の材料は、ナノ結晶材料の一例である非晶質合金である。特に非晶質合金は、現行の材料としてFe基、Ni基、コバルト基で、15~30原子%のボロン、炭素、ケイ素、リンなどを含むものを主としており、強さ、耐食性、軟磁性の面で特性的に優れ、使用環境の幅が広い。これらのガラスや非晶質合金などの非晶質材料は、結晶構造に起因する歪み減衰を回避したり、減衰した歪を回復又は増幅させる性質を有することが知られている。このような材料を用いた薄板基板10は、例えば、腐食法、電解研磨法、機械的切断法などの適宜な方法にて形成される。薄板基板10の大きさは、特に制限はないが、平面視でフィルム状歪み検出デバイス30の大きさよりも大きい。
【0018】
フィルム状歪み検出デバイス30を薄板基板10に接着する構造では、フィルム状歪み検出デバイス30の感受特性が結晶構造(粒界)により減衰する場合がある。歪みゲージモジュール1では、薄板基板10の材料として非晶質材料又はナノ結晶材料を用いることによりその性質を利用し、結晶構造に起因する歪み減衰を回避、あるいは、減衰した歪を回復又は増幅させることができる。これにより、フィルム状歪み検出デバイス30の特性変動を抑制し、安定性に優れた高感度の歪みゲージモジュール1を実現することができる。
【0019】
フィルム状歪み検出デバイス30は、薄板基板10の上面10aに、接着剤20を介して搭載されている。接着剤20としては、例えば、エポキシ系樹脂等を用いることができる。接着剤20の曲げ弾性率は、例えば、3GPa以上20GPa以下とすることができる。接着剤20は、必要に応じて、フィラーを含有してもよい。接着剤20がフィラーを含有する場合、含有するフィラーは無機フィラーでも有機フィラーでもよい。接着剤20が無機フィラーを含有する場合、フィラー径は5μm以下であることが好ましく、有機フィラーを含有する場合、フィラー径は10μm以下であることが好ましい。
【0020】
接着剤20の厚さTは、30μm以下であることが好ましい。接着剤20の厚さTが30μm以下であれば、薄板基板10の歪みをフィルム状歪み検出デバイス30に効率よく伝達することができる。なお、図3に示すように、接着剤20の厚さTは、薄板基板10の上面10aにおいて、異常突起(スパイク)を除く実線で示す凸部の先端から基材31の下面までの距離である。図3の破線で示す凹凸は虚像である。なお、図3のUの部分、すなわち薄板基板10の上面10aの凹凸の隙間は、接着剤20で埋まる。
【0021】
フィルム状歪み検出デバイス30の下面の全面が接着剤20により薄板基板10の上面10aに接着されることが好ましい。この際、接着剤20の厚さのばらつきは±5μm以下であることが好ましい。これにより、フィルム状歪み検出デバイス30全体が薄板基板10の上面10aに平坦に保持された状態となるため、薄板基板10の歪みをフィルム状歪み検出デバイス30にさらに効率よく伝達することができる。
【0022】
フィルム状歪み検出デバイス30は、基材31と、抵抗体32と、配線33と、端子34及び35とを有している。フィルム状歪み検出デバイス30の大きさは、特に制限はないが、歪みゲージモジュール1の小型化の観点からは、フィルム状歪み検出デバイス30も小型であることが好ましく、例えば、基材31を一辺の長さが1.5mm~2mm程度の正方形状や長方形状とすることができる。
【0023】
基材31は、抵抗体32を形成するためのベース層となる部材であり、可撓性を有する。基材31の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。基材31は、例えば、PI(ポリイミド)樹脂等の絶縁樹脂フィルムから形成できる。
【0024】
抵抗体32は、基材31の上面に形成された薄膜であり、歪みを受けて抵抗変化を生じる受感部である。抵抗体32は、基材31の上面に直接形成されてもよいし、基材31の上面に他の層を介して形成されてもよい。抵抗体32の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、0.05μm以上50μm以下である。
【0025】
抵抗体32は、複数の細長状部が長手方向を同一方向(図1の例ではA-A線に垂直なの方向)に向けて所定間隔で配置され、隣接する細長状部の端部が互い違いに連結されて、全体としてジグザグに折り返す構造である。複数の細長状部の長手方向がグリッド方向となり、グリッド方向と垂直な方向がグリッド幅方向(図1の例ではA-A線の方向)となる。
【0026】
抵抗体32は、例えば、Cr(クロム)を含む材料、Ni(ニッケル)を含む材料、又はCrとNiの両方を含む材料から形成できる。すなわち、抵抗体32は、CrとNiの少なくとも一方を含む材料から形成できる。Niを含む材料としては、例えば、Cu-Ni(銅ニッケル)が挙げられる。CrとNiの両方を含む材料としては、例えば、Ni-Cr(ニッケルクロム)が挙げられる。
【0027】
抵抗体32として、Cr混相膜を用いてもよい。ここで、Cr混相膜とは、Cr、CrN、CrN等が混相した膜である。Cr混相膜は、酸化クロム等の不可避不純物を含んでもよい。抵抗体32としてCr混相膜を用いた場合、フィルム状歪み検出デバイス30を高感度化かつ小型化できる。
【0028】
端子34及び35は、配線33の端部付近の上面に形成されている。端子34及び35は、銅等からなる配線33を介して抵抗体32の両端部に接続されており、例えば平面視において矩形状に形成されている。端子34及び35は、歪みにより生じる抵抗体32の抵抗値の変化を出力するための一対の電極である。端子34及び35は、例えば、銅等から形成される。銅等の表面に金膜等が積層されてもよい。
【0029】
図2に示すように、歪みゲージモジュール1は、薄板基板10上に、フィルム状歪み検出デバイス30を覆う樹脂部36を有してもよい。樹脂部36は、例えば、フィルム状歪み検出デバイス30の端子34及び35の一部又は全部を露出するように形成することができる。薄板基板10上にフィルム状歪み検出デバイス30を覆う樹脂部36を設けることで、フィルム状歪み検出デバイス30の端子34及び35の機械的強度を向上させると共に、フィルム状歪み検出デバイス30の耐環境性(湿度、ガス)を向上させることができる。
【0030】
樹脂部36は、歪みが印加されていないときのフィルム状歪み検出デバイス30の出力(オフセット)を抑えるために、フィラーを含まない材料か、或いは3μm以下の無機系又は有機系のフィラーを含む材料から形成することが好ましい。又、樹脂部36は、歪み伝搬に適した硬度がD90~A15で引っ張り強度が0.3MPa~10MPaの材料から形成することが好ましい。このような材料としては、例えば、熱硬化性又は光硬化性のシリコーン系樹脂やエポキシ系樹脂が挙げられる。樹脂部36の材料として、このような低応力の樹脂を用いることで、樹脂部36で被覆したことによるフィルム状歪み検出デバイス30の特性(感度)への影響を低減できる。
【0031】
[薄板基板と抵抗体領域との位置関係]
薄板基板10は、平面視で矩形状であることが好ましい。薄板基板10を平面視で矩形状とすることで、長手方向の歪みを感度よく検出することができる。図1において、薄板基板10は平面視で矩形状であり、直線L1は薄板基板10の対向する短辺の中点を通る線を示している。つまり、直線L1は、薄板基板10を長手方向に2分する線である。また、直線L2は薄板基板10の対向する長辺の中点を通る線を示している。つまり、直線L2は、薄板基板10を短手方向に2分する線である。直線L1と直線L2の交点は、平面視で薄板基板10の重心Gpを通る。なお、ここでいう重心は、平面視における重心、つまり平面図形の重心である。例えば、薄板基板10の重心Gpは、薄板基板10の厚さを考慮しない図1に示す矩形の重心である。
【0032】
フィルム状歪み検出デバイス30は、上面に抵抗体領域Rを有している。図4に示すように、基材31の上面において、抵抗体32が形成されている平面視で矩形状の領域が抵抗体領域Rである。抵抗体領域Rは、抵抗体32をすべて含むように描くことができる最小の矩形状の領域である。図4に示すGrは、抵抗体領域Rの重心を示している。
【0033】
図5に示すように、歪みゲージモジュール1において、抵抗体32は薄板基板10の重心Gpと重なる部分を含むことが好ましい。さらに、歪みゲージモジュール1において、薄板基板10の重心Gpと抵抗体領域Rの重心Grは一致していることが好ましい。なお、本願において、『Aの重心とBの重心は一致している』とは、平面視でAの重心とBの重心が完全に一致している場合を含むことはもちろんであるが、Aの重心とBの重心とのずれ量が50μmの範囲内にある場合を含むものとする。また、ずれの方向は任意でよく、Aの重心に対して半径50μmの範囲内にBの重心が位置していればよいものとする。
【0034】
また、薄板基板10の重心Gpと抵抗体領域Rの重心Grが一致しているとは、薄板基板10と抵抗体領域Rが平面視で矩形状であれば、薄板基板10の対角線の交点と抵抗体領域Rの対角線の交点が一致していることと同義である。薄板基板10の対角線の交点と抵抗体領域Rの対角線の交点の許容されるずれ量については、上記の場合と同様である。つまり、2つの対角線の交点のずれ量が50μmの範囲内であれば、2つの対角線の交点が一致しているものとみなす。
【0035】
薄板基板10の重心Gpは、薄板基板10を測定対象物に貼り付けて、薄板基板10が測定対象物から歪みを受ける際に、歪みが最も集中する点である。したがって、薄板基板10の重心Gpと抵抗体領域Rの重心Grが一致していることで、フィルム状歪み検出デバイス30における歪みの検出感度を向上できる。すなわち、検出感度に優れた歪みゲージモジュール1を実現できる。なお、この効果は、薄板基板10が平面視で矩形状でない場合にも得られる。
【0036】
フィルム状歪み検出デバイス30における歪みの検出感度を一層向上する観点から、薄板基板10の重心Gpに対して、半径20μm以内に抵抗体領域Rの重心Grが位置すると好ましく、半径10μm以内に抵抗体領域Rの重心Grが位置するとより好ましく、半径5μm以内に抵抗体領域Rの重心Grが位置するとさらに好ましく、薄板基板10の重心Gpと抵抗体領域Rの重心Grが完全に一致すると特に好ましい。
【0037】
図1に示す矢印Dは、振動伝搬方向を示している。薄板基板10が平面視で矩形状である場合、振動伝搬方向Dと薄板基板10の長手方向が一致していることが好ましい。また、振動伝搬方向Dと抵抗体領域Rに形成された抵抗体32のグリッド方向が一致していることが好ましい。つまり、薄板基板10の長手方向と抵抗体領域Rに形成された抵抗体32のグリッド方向が一致していることが好ましい。このような関係により、振動伝搬方向Dの歪みの検出感度を向上することができる。
【0038】
歪みゲージモジュール1は、最下層が薄板基板10であるため、測定対象物に液状又はフィルム(テープ)状の接着剤又は粘着剤で薄板基板10の下面10bを測定対象物への装着面として容易に固定することができる。接着剤又は粘着剤の厚さは、例えば、25μm程度とすることができる。
【0039】
すなわち、歪みゲージモジュール1は、従来の歪みゲージのように最下層が可撓性の樹脂(ポリイミド等)ではないため、測定対象物への取り付けが容易である。又、ポリイミドは難接着材料であるため、測定対象物への取り付けには特殊な接着方法(加熱及び加圧)が必要であるが、薄板基板10を測定対象物に取り付けるために特殊な接着方法は不要である。
【0040】
また、薄板基板10は、例えば、接着剤が3~100μm程度の厚さの範囲内で、かつ厚さばらつきが±5μm程度で、測定対象物に対して略平坦な状態で接着されることが好ましい。これにより、測定対象物からの歪みを薄板基板10に効率よく伝達することができる。
【0041】
[検出感度の変化]
歪みゲージモジュール1において、フィルム状歪み検出デバイス30の検出感度の変化について調べた。
【0042】
まず、フィルム状歪み検出デバイス30を直接測定対象物に貼り付けた場合のフィルム状歪み検出デバイス30の出力を測定した。次に、比較例として、薄板基板10に金属基板を用いた以外は歪みゲージモジュール1と同様の構造の歪みゲージモジュールを作製し(便宜上、歪みゲージモジュール100とする)、測定対象物に貼り付けた場合のフィルム状歪み検出デバイス30の出力を測定した。次に、薄板基板10にガラス基板を用いた歪みゲージモジュール1を作製し、測定対象物に貼り付けた場合のフィルム状歪み検出デバイス30の出力を測定した。
【0043】
図6は、測定結果である。図6においては、フィルム状歪み検出デバイス30単体の測定結果を破線30単体で示し、比較例に係わる歪みゲージモジュール100の測定結果を実線100で示し、歪みゲージモジュール1の測定結果を破線1で示している。なお、図6において、縦軸はフィルム状歪み検出デバイス30の抵抗値をAnalog/Digital変換した値(便宜上、出力とする)の変化量を示しており、縦軸の上側ほど出力が大きいことを示している。図6において、横軸は経過時間である。
【0044】
図6において、フィルム状歪み検出デバイス30単体の測定結果(破線30単体)と歪みゲージモジュール100の測定結果(実線100)とを比較したところ、歪みゲージモジュール100では、フィルム状歪み検出デバイス30単体よりも出力が2%程度減衰することが分かった。これに対して、歪みゲージモジュール1では、歪みゲージモジュール100よりもフィルム状歪み検出デバイス30の出力が増加することが分かった。すなわち、薄板基板10としてガラス基板を用いることで、金属基板を用いていない場合の歪み(破線30単体)と比べて金属基板を用いた場合の減衰した歪み(実線100)を回復又は増幅して検出感度を向上できることが確認された。薄板基板10としてFe基非晶質合金の基板を用いた場合も、薄板基板10としてガラス基板を用いた場合とほぼ同様の結果であった。
【0045】
以上、好ましい実施形態について詳説したが、上述した実施形態に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0046】
1 歪みゲージモジュール、10 薄板基板、10a 上面、10b 下面、20 接着剤、30 フィルム状歪み検出デバイス、31 基材、32 抵抗体、33 配線、34、35 端子、36 樹脂部
図1
図2
図3
図4
図5
図6