(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025019361
(43)【公開日】2025-02-07
(54)【発明の名称】難燃性リサイクル織編物および繊維製品
(51)【国際特許分類】
D03D 15/513 20210101AFI20250131BHJP
【FI】
D03D15/513
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023122930
(22)【出願日】2023-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】奥家 智裕
【テーマコード(参考)】
4L048
【Fターム(参考)】
4L048AA08
4L048AA13
4L048AA14
4L048AA16
4L048AA17
4L048AA19
4L048AA20
4L048AA25
4L048AA53
4L048AB01
4L048AB05
4L048AB12
4L048AC07
4L048CA15
(57)【要約】
【課題】難燃性リサイクル繊維と未使用の難燃性繊維を用いてなり、防護衣料用途に適した難燃性能および優れた外観品位を有する難燃性リサイクル織編物および繊維製品を提供する。
【解決手段】難燃性リサイクル繊維と未使用の難燃性繊維を含む織編物であり、カチオン染料で染色されている。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
織編物であって、難燃性リサイクル繊維と未使用の難燃性繊維を含み、カチオン染料で染色されていることを特徴とする難燃性リサイクル織編物。
【請求項2】
紡績糸を用いてなりかつ下記式(I)を満たす織物または該織物を用いた繊維製品を開繊することにより得られた難燃性リサイクル繊維と、未使用の難燃性繊維とを含む難燃性リサイクル織編物であり、カチオン染料で染色されていることを特徴とする難燃性リサイクル織編物。
撚係数×織物充填密度≦4.5 (I)
【請求項3】
前記紡績糸において、JIS L1091 E法により測定される限界酸素指数が25以上の難燃性繊維を紡績糸重量対比40重量%以上混紡してなる、請求項2に記載の難燃性リサイクル織編物。
【請求項4】
難燃性リサイクル織編物が、紡績糸を用いた織編物であって、前記紡績糸において、難燃性リサイクル繊維を紡績糸重量対比10~50重量%混紡してなる、請求項1に記載の難燃性リサイクル織編物。
【請求項5】
難燃性リサイクル織編物が、紡績糸を用いた織編物であって、前記紡績糸において、繊維長30~200mm、JIS L1091 E法により測定される限界酸素指数が25以上の未使用の難燃性繊維を紡績糸重量対比50~90重量%混紡してなる、請求項1に記載の難燃性リサイクル織編物。
【請求項6】
前記の難燃性リサイクル繊維および/または未使用の難燃性繊維が、メタ系アラミド繊維、パラ系アラミド繊維、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維、ポリベンゾイミダゾール繊維、ポリベンゾイミダゾール繊維、ポリイミド繊維、ポリエーテルイミド繊維、ポリアミドイミド繊維、炭素繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリ塩化ビニル繊維、難燃レーヨン、モダアクリル繊維、難燃アクリル繊維、難燃ポリエステル繊維、難燃ビニロン繊維、メラミン繊維、フッ素繊維、難燃ウール、および難燃コットンの群から選ばれた1種類以上の繊維である、請求項1に記載の難燃性リサイクル織編物。
【請求項7】
難燃性リサイクル織編物が、紡績糸を用いた織編物であって、かつ前記の未使用の難燃性繊維がメタ系アラミド繊維であり、該メタ系アラミド繊維を前記紡績糸全体の50~90重量%の割合で含む、請求項1に記載の難燃性リサイクル織編物。
【請求項8】
前記の未使用の難燃性繊維が、残存溶媒量が0.1重量%以下かつ結晶化度が5~35%のメタ系アラミド繊維である、請求項1に記載の難燃性リサイクル織編物。
【請求項9】
難燃性リサイクル織編物が、紡績糸を用いた織編物であって、前記紡績糸に導電繊維が含まれる、請求項1に記載の難燃性リサイクル織編物。
【請求項10】
前記の未使用の難燃性繊維がメタ系アラミド繊維であり、前記難燃性リサイクル繊維と前記メタ系アラミド繊維の色差が3以下である、請求項1に記載の難燃性リサイクル織編物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載の難燃性リサイクル織編物を含む繊維製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性リサイクル繊維と未使用の難燃性繊維を用いてなり、防護衣料用途に適した難燃性能および優れた外観品位を有する難燃性リサイクル織編物および繊維製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、難燃性繊維は、耐熱性、燃焼性に優れているため、消防、電力、化学会社など火炎に晒される可能性のある作業服用難燃布帛として用いられている。難燃布帛は、アラミド繊維(全芳香族ポリアミド繊維)に代表される難燃性繊維を用いても、使用に伴って性能が低下し、汚れ、こすれ、破れ、ほつれ等により、ついには廃棄されることになる。また、難燃布帛を製造する各段階および作業服を縫製する場合にも裁断屑が発生する。その結果、これらの各工程で発生する屑や使用済み製品が廃棄物として生じている。この様な工程屑や使用済み製品は、ほとんどが産業用に使用され、再利用はほとんど行われておらず、その大部分が焼却処分や埋立て処分されている。
【0003】
一方、近年では、資源の消費を抑制し環境に対する負荷を軽減し、循環型社会の形成が求められている(例えば、特許文献1、2)。具体的には、汎用繊維の使用済み製品については、従来から古着などのボロ、屑繊維などの古繊維について、再利用が行われている。そして、難燃布帛の各工程屑および使用済み製品についても、汎用繊維の製品と同様の再利用方法を適用することが考えられる。
【0004】
しかしながら、難燃性繊維は汎用繊維に比べ耐熱性、難燃性に優れるため、公知の開繊機を、汎用繊維製品と同様の条件で用いると、不具合が生じて、効率的かつ十分な開繊が行えないという問題があった。難燃性繊維を含む織編物においては、製品や工程で発生する工程屑などを開繊・反毛を実施して得られた高機能リサイクル繊維を用いて、綿や糸に加工してフェルトや作業用手袋などの繊維製品を製造されているのが現状で、外観品位が求められる防護衣料用途に使用できる織編物を提案するには至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-233409号公報
【特許文献2】特開2005-105491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、難燃性リサイクル繊維と未使用の難燃性繊維を用いてなり、防護衣料用途に適した難燃性能および優れた外観品位を有する難燃性リサイクル織編物および繊維製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。かくして、以下の発明が提供される。
【0008】
1.織編物であって、難燃性リサイクル繊維と未使用の難燃性繊維を含み、カチオン染料で染色されていることを特徴とする難燃性リサイクル織編物。
2.紡績糸を用いてなりかつ下記式(I)を満たす織物または該織物を用いた繊維製品を開繊することにより得られた難燃性リサイクル繊維と、未使用の難燃性繊維とを含難燃性リサイクル織編物であり、カチオン染料で染色されていることを特徴とする難燃性リサイクル織編物。
撚係数×織物充填密度≦4.5 (I)
3.前記紡績糸において、JIS L1091 E法により測定される限界酸素指数が25以上の難燃性繊維を紡績糸重量対比40重量%以上混紡してなる、上記2に記載の難燃性リサイクル織編物。
4.織編物が、紡績糸を用いた織編物であって、前記紡績糸において、難燃性リサイクル繊維を紡績糸全体の10~50重量%の割合で混紡してなる、上記1~3のいずれかに記載の難燃性リサイクル織編物。
5.織編物が、紡績糸を用いた織編物であって、前記紡績糸において、繊維長30~200mm、JIS L1091 E法により測定される限界酸素指数が25以上の未使用の難燃性繊維を紡績糸全体の50~90重量%の割合で混紡してなる、上記1~4のいずれかに記載の難燃性リサイクル織編物。
6.前記の難燃性リサイクル繊維および/または未使用の難燃性繊維が、メタ系アラミド繊維、パラ系アラミド繊維、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維、ポリベンゾイミダゾール繊維、ポリベンゾイミダゾール繊維、ポリイミド繊維、ポリエーテルイミド繊維、ポリアミドイミド繊維、炭素繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリ塩化ビニル繊維、難燃レーヨン、モダアクリル繊維、難燃アクリル繊維、難燃ポリエステル繊維、難燃ビニロン繊維、メラミン繊維、フッ素繊維、難燃ウール、および難燃コットンの群から選ばれた1種類以上の繊維である、上記1~5のいずれかに記載の難燃性リサイクル織編物。
7.難燃性リサイクル織編物が、紡績糸を用いた織編物であって、かつ前記の未使用の難燃性繊維がメタ系アラミド繊維であり、該メタ系アラミド繊維を前記紡績糸全体の50~90重量%の割合で含む、上記1~6のいずれかに記載の難燃性リサイクル織編物。
8.前記の未使用の難燃性繊維が、残存溶媒量が0.1重量%以下かつ結晶化度が5~35%のメタ系アラミド繊維である、上記1~7のいずれかに記載の難燃性リサイクル織編物。
9.難燃性リサイクル織編物が、紡績糸を用いた織編物であって、前記紡績糸に導電繊維が含まれる、上記1~8のいずれかに記載の難燃性リサイクル織編物。
10.前記の未使用の難燃性繊維がメタ系アラミド繊維であり、前記難燃性リサイクル繊維と前記メタ系アラミド繊維の色差が3以下である、上記1~9のいずれかに記載の難燃性リサイクル織編物。
11.上記1~10のいずれかに記載の難燃性リサイクル織編物を含む繊維製品。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、難燃性リサイクル繊維と未使用の難燃性繊維を用いてなり、防護衣料用途に適した難燃性能および優れた外観品位を有する難燃性リサイクル織編物および繊維製品が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。まず、本発明の難燃性リサイクル織編物(「織編物」、「布帛」ということもある。)は、難燃リサイクル繊維と未使用の難燃性繊維とを含む。
【0011】
前記の難燃性リサイクル繊維および/または未使用の難燃性繊維としては、JIS L1091-1999 E法により測定される限界酸素指数が25以上の難燃性繊維が好ましい。かかる難燃性繊維としては、メタ系アラミド繊維(「メタ型全芳香族ポリアミド繊維」ということもある。)、パラ系アラミド繊維(「パラ型全芳香族ポリアミド繊維」ということもある。)、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維、ポリベンゾイミダゾール繊維、ポリイミド繊維、ポリエーテルイミド繊維、ポリアミドイミド繊維、炭素繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリ塩化ビニル繊維、難燃レーヨン、モダアクリル繊維、難燃アクリル繊維、難燃ポリエステル繊維、難燃ビニロン繊維、メラミン繊維、フッ素繊維、難燃ウール、難燃コットンなどが例示される。これらの難燃性繊維を1種または2種以上用いることができる。
【0012】
なかでも、優れた限界酸素指数を示しかつ優れた機械的物性の点から、メタ系アラミド繊維すなわちメタフェニレンイソフタルアミド繊維(市販品では、帝人株式会社製「テイジンコーネックス」や「テイジンコーネックス ネオ」(商標名)、デュポン社製「ノーメックス」(商標名)など)は有用である。さらには、パラ系アラミド繊維すなわちパラフェニレンテレフタルアミド繊維(市販品では、帝人株式会社製「トワロン」(商標名)、東レ・デュポン株式会社製「ケブラー」(商標名)など)、コパラフェニレン・3、4’オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維(市販品では、帝人株式会社製「テクノーラ」(商標名)など)を混合させることも好ましい。
【0013】
これらの難燃性繊維は、本発明の目的を損なわない範囲で、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、難燃剤、酸化チタン、着色剤、不活性微粒子などの添加剤を含有してもよい。
【0014】
また、前記難燃リサイクル繊維としては、紡績糸を用いてなりかつ下記式(I)を満たす織物、または該織物を用いた繊維製品を開繊することにより得られた繊維であることが好ましい。
撚係数×織物充填密度≦4.5 (I)
ここで、撚係数は、K=T/√nで算出することができ、Kは撚係数、Tは1インチ(2.54cm)あたりの撚数、nは英式綿番手である。かかる撚係数Kは織物の物性および柔軟性の点から2.5~6.0の範囲であることが好ましい。特に、単糸の場合2.5~4.5、双糸の場合3.0~6.0であることが好ましい。紡績糸は単糸であってもよいし双糸であってもよく、最終糸の撚数から撚係数を算出する。単糸織物(単糸紡績糸からなる織物)の場合は、単糸の下撚数より求めた撚係数、双糸織物(双糸紡績糸からなる織物)の場合は、双糸の上撚数より求めた撚係数である。
【0015】
また、織物充填密度Tは、次により求められる。
T=(ta1+ta2)/(tm1+tm2)
ここで、ta1は経方向における一完全組織内に実際に糸が占める量であり、1cmあたりの経密度(本/cm)である。同様に、ta2は緯方向における一完全組織内に実際に糸が占める量であり、1cmあたりの緯密度(本/cm)である。tm1は経方向における一完全組織内に理論的に最大糸が占める量、tm2は緯方向における一完全組織内に理論的に最大糸が占める量である。tmは次式で表すことができる。
tm=e/((e-i)×3.14×d/4+2id)
ここで、eはtm1の場合は一完全組織の経方向(tm2の場合は緯方向)の糸の数であり、iはtm1の場合は一完全組織の経方向(tm2の場合は緯方向)の交錯の数である。本発明において、eとiは経方向と緯方向とで値が同じであることが好ましいが異なっていてもよい。
【0016】
また、dは糸の直径であり次式で表すことができる。
d(cm)=0.00357×√((tex/(φ×ρf))
ここで、texは紡績糸番手をtexに換算した数値、φは糸の充填率、ρfは繊維の比重である。糸の充填率φは、本願では簡便にするため1として計算している。
【0017】
紡績糸の撚数が高くなると解砕処理および反毛処理で開繊がし難くなるそれがある。また、織物充填密度が大きすぎると、同様に解砕処理および反毛処理で開繊がし難くなるおそれがある。撚係数と織物充填密度との積が4.5以下(より好ましくは0.1~4.0)である場合、解砕処理および反毛処理での開繊が容易となり好ましい。
【0018】
また、前記織物は前記のような難燃性繊維を紡績糸の構成繊維として含むことが好ましく、特に、前記のような難燃性繊維を紡績糸重量対比40重量%以上混紡していることが好ましい。
【0019】
織物に含まれる紡績糸は、前記の難燃性繊維のみからなることが好ましいが、非難燃性繊維(JIS L 1091-1999 E法により測定される限界酸素指数が25未満の繊維)を含ませてもよい。その際、非難燃性繊維としては、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリノジック繊維、リヨセル繊維、アクリル系繊維、ビニロン繊維、コットン、麻、ウールなどが例示される。これらの非難燃性繊維を1種または2種以上用いることができる。
【0020】
これらの非難燃性繊維は、本発明の目的を損なわない範囲で、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、難燃剤、酸化チタン、着色剤、不活性微粒子、導電粒子などの添加剤を含有してもよい。
【0021】
前記織物は前記の構成を有することにより、リサイクルして繊維の状態にする際に効率的でかつ十分な開繊が容易となる。なお、前記織物は、未使用の難燃性紡績糸織物、使用済みの難燃性紡績糸織物、織物を製造する際に発生する工程屑、縫製する際に発生する縫製屑などであってもよい。
【0022】
前記織物または該織物を用いた繊維製品(以下、「難燃性紡績糸製品」ということもある。)は、必要に応じて予め洗浄し、ついで必要に応じて油剤を付与した後に解砕処理を行い、得られた解砕物を開繊して綿状物となし、難燃性リサイクル繊維が得られる。以下、難燃性紡績糸製品から難燃性リサイクル繊維を製造する方法を例示する。
【0023】
前記繊維製品は、前記織物を含む製品であれば特に限定されない。具体的には、難燃性紡績糸を含む難燃作業着、消防服、作業用手袋、工業資材(織物、編み物)等が挙げられる。かかる繊維製品には、上述の難燃性紡績糸が単独で使用されていることが好ましい。ただし、難燃性紡績糸以外の糸を含んでいてもよく、かかる糸は紡績糸であることが好ましい。この場合、難燃性紡績糸の含有量が、繊維製品全体の50重量%以上(好ましくは50~100重量%)であることが好ましい。使用済み繊維製品としては、使用済み製品はもちろん、繊維製品を製造する過程で生じる繊維屑や半端品なども含む。以下、各工程について詳細に説明する。
【0024】
まず、上記の繊維製品を予め洗浄するのが好ましい。この洗浄処理によって、使用済み繊維製品に付着した汚れのほか、プラスチックや金属粉等の挟雑物や油分などが除去される。その結果、機器のトラブルの発生を抑え、効率的な再生処理を行うことができる。特に作業用手袋については、金属片やプラスチック片を含んでいたり、油が付着していたりするため、十分に洗浄を行うことが好ましい。また、洗浄処理を行うことは再生品の品質を向上する点からも好ましい。また、原料となる繊維製品がリサイクルできるかできないかをチェックし、前記製品中にボルトなど機械部品や種々の雑他物が含まれていないかをチェックすることができる。前記洗浄方法は特に限定されず、公知の手段を用いてよい。
【0025】
また、湿度や時候などを鑑みて必要に応じて、後述する解砕処理前または解砕処理時に、リサイクル原料となる繊維製品に油剤を付与してもよい。この油剤の付与は、解砕処理前または解砕処理時に限らず、開繊前または開繊時に解砕物に対して行ってもよいし、紡績前または紡績時に綿状物に対して行ってもよい。このように油剤を付与することにより、解砕処理、開繊工程および紡績工程での静電気の発生を抑制することができ、処理を円滑に行うことが可能となる。前記油剤としては、通常の紡績に使用される油剤が主成分である油剤であれば特に限定されない。前記油剤としては、動植物油あるいは鉱物油、アルキルリン酸エステルカリウム塩等の平滑剤に、界面活性剤(アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤または非イオン系界面活性剤)を組み合わせた油剤、さらにこれらに高粘度の高分子物質、コロイダルシリカを配合した油剤などが挙げられる。前記油剤を付与する量は特に限定されないが、使用済み繊維製品の重量に対して2重量%以下(より好ましくは0.1~2重量%)であることが好ましい。
【0026】
ついで、繊維製品を解砕処理に付す。この解砕処理によって使用済み繊維製品が糸や断片や綿状にまで機械的に分解、分離されるため、前記製品を直接開繊するよりも、開繊処理がやりやすく、綿状化を促進することができる。解砕処理は、前記目的を達成できれば特に限定されず、噛み込み、引き裂き、引きちぎり、などの公知の手段を用いてよい。後の開繊処理で得られる綿状物の短繊維の長さは、元の長さに近いものが多いほど、引張強度の回復が高い紡績糸に再生することができる。それゆえ、解砕処理においては、できるだけ元の長さに近い短繊維の含有割合が多くなるような処理が好ましい。
【0027】
また、前記解砕処理の前工程として、難燃性紡績糸製品を粗く切断する裁断処理を行うことが好ましい。この場合、前記製品の形態に応じて、できるだけ元の長さに近い短繊維の含有割合が多くなるよう、切断する間隔を長くするのが好ましい。例えば、繊維製品において使用されている紡績糸の短繊維の長さ以上の間隔で切断(カット)する。このような前記製品は噛み込み、引き裂き、引き抜くように引きちぎり、解砕することも好ましい。さらに、開繊処理として掻き取り、掻き削ることも好ましい。また、裁断処理から、解砕処理、および開繊処理までを一工程で行うこともより効率的となり好ましい。
【0028】
開繊処理の条件は、繊維製品の形状、前記製品に使用されている難燃性繊維の種類、または開繊機の種類などにより異なり、原料の繊維製品に応じて適宜試験を行い、適当な条件を決定することができる。ただし、開繊処理により得られた綿状物が長さ20mm以上の短繊維を50重量%以上含むよう、開繊条件を選択することが好ましい。また、元の製品に使用されている紡績糸の短繊維長の40%以上の長さを有する短繊維を50重量%以上含むよう、開繊条件を選択することも好ましい。上述したように、長さが長い、言い換えれば元の繊維長に近い長さを有する短繊維が多いほど、再生された紡績糸の引張強度の回復(市販紡績糸の引張強度に対するリサイクルされた難燃性紡績糸の引張強度の割合)を高くすることができるからである。なお、繊維長の分布は、「JIS L 1015-2010 8.4.1 A法」にしたがって、ステープルダイヤグラムにより容易に測定することができる。
【0029】
開繊は公知の反毛機や開繊機などで行い、難燃性リサイクル繊維を得ることができる。
本発明の難燃性リサイクル織編物は、前記の難燃性リサイクル繊維と未使用の前記のような難燃性繊維とを用いて好ましくは混紡して、紡績糸(以下、「再生難燃性紡績糸」ということもある。)を得た後、製編織し、カチオン染料で染色することにより製造することができる。
【0030】
ここで、前記再生難燃性紡績糸において、難燃性リサイクル繊維を紡績糸重量対比10~50重量%混紡することが好ましい。また、未使用の難燃性繊維を再生難燃性紡績糸全体の90重量%以下(好ましくは50~90重量%、より好ましくは60~80重量%)の割合で混合する。
【0031】
未使用の短繊維を混合することにより、前記紡績糸の引張強度をより効果的に回復することができるという利点がある。前記未使用の短繊維としては、クリンプのついた短繊維が好ましい。クリンプがあることによって、ストランドまたはトウ状の繊維がより開繊しやすくなるためである。また、長さが30mm以上(より好ましくは30~200mm)の短繊維が好ましい。未使用の短繊維の長さが長ければ、本発明で得られる綿状物がより多く、より長く絡まり、つなぎ効果が高まることにより、引張強度がより回復された前記再生難燃性紡績糸を得ることができる。本発明において使用する未使用の短繊維としては、(a)市販されている難燃性繊維のステープル、または(b)難燃性繊維の長繊維もしくは前記長繊維からなる製品を製造する過程で生じる繊維屑や半端品から得た短繊維も含まれる。これらは、長さが30~200mm、開繊しやすいクリンプのあるもののほうが好ましい。(b)の短繊維は、難燃性繊維の長繊維もしくは前記長繊維からなる製品を製造する過程で生じる繊維屑や半端品をカットすることにより得ることができる。
上記未使用の難燃性繊維は、未使用の繊維全体重量に対し50~100重量%にメタ系アラミド繊維を用いることが好ましい。
【0032】
かかるメタ系アラミド繊維は、主骨格を構成する芳香環がアミド結合によりメタに結合されてなるものであり、ポリマーの全繰返し単位の85モル%以上がメタフェニレンイソフタルアミド単位であるものを対象とする。特にポリメタフェニレンイソフタルアミドホモポリマーが好ましい。全繰返し単位の15モル%以下(好ましくは5モル%以下)で共重合し得る第3成分は、ジアミン成分として、例えば、パラフェニレンジアミン、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、パラキシリレンジアミン、ビフェニレンジアミン、3,3’-ジクロルベンジジン、3,3’-ジメチルベンジジン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、1,5-ナフタレンジアミン等の芳香族ジアミンが挙げられる。また、また酸成分として、例えば、テレフタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、ナフタレン-2,7-ジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸があげられる。また、これらの芳香族ジアミンおよび芳香族ジカルボン酸は、その芳香環の水素原子の一部がハロゲン原子やメチル基等のアルキル基によって置換されていてもよい。ポリマーの全末端の20%以上が、アニリン等の一価のジアミンまたは一価のカルボン酸成分で封鎖されている場合には、高温下に長時間保持した際の繊維の強力低下が小さくなるので好ましい。なお、そのようなメタ型全芳香族ポリアミド繊維として、市販品では、コーネックス(商標名)、ノーメックス(商標名)などがあげられ、易染性メタ型全芳香族ポリアミド繊維としてはコーネックスネオ(商標名)があげられる。
【0033】
このようなメタ型全芳香族ポリアミドは、公知の界面重合法により製造することができ、そのポリマーの重合度は、0.5g/100mlの濃度のN-メチル-2-ピロリドン溶液で測定した固有粘度(I.V.)が1.3~1.9dl/gの範囲にあるものが好ましい。
【0034】
また、メタ型全芳香族ポリアミドにはアルキルベンゼンスルホン酸オニウム塩が含有されていてもよい。アルキルベンゼンスルホン酸オニウム塩は、例えば、ヘキシルベンゼンスルホン酸テトラブチルフォスフォニウム塩、ヘキシルベンゼンスルホン酸トリブチルベンジルフォスフォニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラフェニルフォスフォニウ
ム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸トリブチルテトラデシルフォスフォニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルフォスフォニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸トリブチルベンジルアンモニウム塩等の化合物が挙げられる。なかでもドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルフォスフォニウム塩、またはドデシルベンゼンスルホン酸トリブチルベンジルアンモニウム塩は、入手しやすく、熱的安定性も良好なうえ、N-メチル-2-ピロリドンに対する溶解度も高いため好ましい。
【0035】
アルキルベンゼンスルホン酸オニウム塩の含有割合は、十分な染色性の改良効果を得るために、ポリ-m-フェニレンイソフタルアミドに対して2.5モル%以上(好ましくは3.0~7.0モル%)の範囲にあるものが好ましい。
【0036】
また、ポリ-m-フェニレンイソフタルアミドとアルキルベンゼンスルホン酸オニウム塩を混合する方法は、溶媒中にポリ-m-フェニレンイソフタルアミドを混合、溶解した後、アルキルベンゼンスルホン酸オニウム塩をその溶媒に溶解する方法などが用いられる。このようにして得られたドープは、公知の方法により繊維に形成される。
【0037】
メタ型全芳香族ポリアミド繊維に用いるポリマーは、染着性や耐変褪色性を向上させるなどの目的で、下記の式(1)で示される反復構造単位を含む芳香族ポリアミド骨格中に、反復構造の主たる構成単位とは異なる芳香族ジアミン成分、または芳香族ジカルボン酸ハライド成分を、第3成分として芳香族ポリアミドの反復構造単位の全量に対し1~10モル%となるように共重合させてもよい。
-(NH-Ar1-NH-CO-Ar1-CO)- ・・・式(1)
Ar1はメタ配位または平行軸方向以外に結合基を有する2価の芳香族基である。
【0038】
なお、第3成分として下記の式(2)、(3)、(4)、(5)で示される芳香族ジアミンまたは芳香族ジカルボン酸ジクロライドを共重合させることが可能である。
式(2)、(3)に示した芳香族ジアミンの具体例としては、例えば、p-フェニレンジアミン、クロロフェニレンジアミン、メチルフェニレンジアミン、アセチルフェニレンジアミン、アミノアニシジン、ベンジジン、ビス(アミノフェニル)エーテル、ビス(アミノフェニル)スルホン、ジアミノベンズアニリド、ジアミノアゾベンゼンなどが挙げられる。式(4)、(5)に示すような芳香族ジカルボン酸ジクロライドの具体例としては、例えば、テレフタル酸クロライド、1,4-ナフタレンジカルボン酸クロライド、2,6-ナフタレンジカルボン酸クロライド、4,4’-ビフェニルジカルボン酸クロライド、5-クロルイソフタル酸クロライド、5-メトキシイソフタル酸クロライド、ビス(クロロカルボニルフェニル)エーテルなどが挙げられる。
【0039】
H2N-Ar2-NH2 ・・・式(2)
H2N-Ar2-Y-Ar2-NH2 ・・・式(3)
XOC-Ar3-COX ・・・式(4)
XOC-Ar3-Y-Ar3-COX ・・・式(5)
Ar2はAr1とは異なる2価の芳香族基、Ar3はAr1とは異なる2価の芳香族基、Yは酸素原子、硫黄原子、アルキレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種の原子または官能基であり、Xはハロゲン原子を表す。
【0040】
また、メタ系アラミド繊維の結晶化度は、染料の吸尽性がよく、より少ない染料でまたは染色条件が弱くても狙いの色に調整し易いという点で5~35%であることが好ましい。さらには、染料の表面偏在が起こり難く耐変褪色性も高い点および実用上必要な寸法安定性も確保できる点で15~25%であることがより好ましい。
【0041】
また、メタ系アラミド繊維の残存溶媒量は、メタ系アラミド繊維の優れた難燃性能を損なわない点で、0.1重量%以下(より好ましくは0.001~0.1重量%)であることが好ましい。
【0042】
前記メタ系アラミド繊維は以下の方法により製造することができ、特に後述する方法により、結晶化度や残存溶媒量を上記範囲とすることができる。メタ型全芳香族ポリアミドポリマーの重合方法としては、特に限定する必要はなく、例えば特公昭35-14399号公報、米国特許第3360595号公報、特公昭47-10863号公報などに記載された溶液重合法、界面重合法を用いてもよい。
【0043】
紡糸溶液としては、とくに限定する必要はないが、上記溶液重合や界面重合などで得られた、芳香族コポリアミドポリマーを含むアミド系溶媒溶液を用いても良いし、上記重合溶液から該ポリマーを単離し、これをアミド系溶媒に溶解したものを用いてもよい。ここで用いられるアミド系溶媒としては、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシドなどを例示することができるが、とくにN,N-ジメチルアセトアミドが好ましい。
【0044】
上記の通り得られた共重合芳香族ポリアミドポリマー溶液は、さらにアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を含むことにより安定化され、より高濃度、低温での使用が可能となり好ましい。好ましくはアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩がポリマー溶液の全重量に対して1重量以下、より好ましくは0.1重量%以下である。紡糸・凝固工程においては、上記で得られた紡糸液(メタ型全芳香族ポリアミド重合体溶液)を凝固液中に紡出して凝固させる。
【0045】
紡糸装置としては特に限定されるものではなく、従来公知の湿式紡糸装置を使用することができる。また、安定して湿式紡糸できるものであれば、紡糸口金の紡糸孔数、配列状態、孔形状等は特に制限する必要はなく、例えば、孔数が1000~30000個、紡糸孔径が0.05~0.2mmのスフ用の多ホール紡糸口金等を用いてもよい。また、紡糸口金から紡出する際の紡糸液(メタ型全芳香族ポリアミド重合体溶液)の温度は、20~90℃の範囲が適当である。
【0046】
繊維を得るために用いる凝固浴としては、実質的に無機塩を含まない、アミド系溶媒、好ましくはNMPの濃度が45~60重量%の水溶液を、浴液の温度10~50℃範囲で用いる。アミド系溶媒(好ましくはNMP)の濃度が45質量%未満ではスキンが厚い構造となってしまい、洗浄工程における洗浄効率が低下し、繊維の残存溶媒量を低減させることが困難となる。一方、アミド系溶媒(好ましくはNMP)の濃度が60重量%を超える場合には、繊維内部に至るまで均一な凝固を行うことができず、このためやはり、繊維の残存溶媒量を低減させることが困難となるおそれがある。なお、凝固浴中への繊維の浸漬時間は、0.1~30秒の範囲が適当である。
【0047】
引続き、アミド系溶媒、好ましくはNMPの濃度が45~60重量%の水溶液であり、浴液の温度を10~50℃の範囲とした可塑延伸浴中にて、3~4倍の延伸倍率で延伸を行う。延伸後、10~30℃のNMPの濃度が20~40重量%の水溶液、続いて50~70℃の温水浴を通して十分に洗浄を行う。洗浄後の繊維は、温度270~290℃にて乾熱処理を施し、上記の結晶化度および残存溶媒量の範囲を満たすメタ系アラミド繊維を得ることができる。前記メタ系アラミド繊維において、繊維形態は、長繊維(マルチフィラメント)でもよいし短繊維でもよい。特に、他の繊維と混紡する上で繊維長25~200mmの短繊維が好ましい。また、単繊維繊度としては0.8~5dtex範囲が好ましい。
【0048】
難燃性リサイクル繊維と未使用の難燃性繊維を混合する方法は、特に限定されず、例えば、綿とポリエチレンテレフタレート繊維との混紡方法など公知の混合方法を用いればよい。また、未使用の短繊維を混合するのは、紡績時、好ましくは混打綿工程において行ってもよい。
【0049】
また、前記紡績糸に導電繊維が含まれていてもよく、かかる導電繊維としては特に限定されないが、カチオン染料に可染の導電性繊維が好ましい。例えば、アクリル系導電繊維カチオン可染ポリエステル系導電繊維、カチオン可染ナイロン系導電繊維などが好ましい。特に、かかる導電繊維は、芯部に導電剤を含む芯鞘型複合繊維であって、芯部ポリマーが導電剤を含む、鞘部ポリマーがカチオン可染ポリエステルまたはカチオン可染ナイロンからなることが好ましい。
【0050】
綿状物または綿状物と未使用の短繊維との混合物から紡績糸を作製する方法(以下、単に紡績方法という)は、当技術分野で十分に確立されているので、それに従えばよい。紡績方法として具体的には、綿紡式、梳毛式、紡毛式、麻紡式、絹紡式またはトウ紡績式などの方法が挙げられる。また、これらの方法を適宜組み合わせてもよい。なかでも、本発明においては、綿紡式、梳毛式、紡毛式の紡績方法を用いることが好ましい。上記紡績方法として、より具体的には、混打綿工程、製条工程、前紡工程および精紡工程からなる紡績方法が好適な例として挙げられる。以下に、綿紡式紡績方法の各工程について説明する。
【0051】
製条工程は、カーディング工程とも言われ、前記開繊処理でかさ密度の低くなった綿状物を、最終的に1本1本の繊維に分離して、棒ひも状の無限に長い繊維の集合体であるスライバー(sliver)を製造する工程である。かかる製条工程は、公知のカード機を用いて行うことができる。なかでも、本発明においては、フラットカードを用いて製条工程を行うことが好ましい。スライバーは、長さ20mm以上の短繊維を50重量%以上含むこと、および/または、難燃性紡績糸製品に用いられている紡績糸の短繊維長の40%以上の長さを有する短繊維を50重量%以上含むことが好ましい。なお、繊維長の分布は、JIS L 1015:2010 8.4.1 A法にしたがって、ステープルダイヤグラムにより容易に測定することができる。
【0052】
前紡工程とは、製条工程で製造されたスライバーを精紡工程に供給するため、適当な繊維配列および太さにする中間的調整工程で、通常数組のトップ、ボトムローラの組み合わせおよびその他の装置を付属させて、スライバーを延伸し繊維の配列向上を図る(これをドラフティング(drafting)と称する。)工程である。前紡工程は、さらに練条工程と粗紡工程に分けられる。製条工程直後の繊維配列性の悪いスライバーを主として配列向上を中心にドラフティングする操作を行う工程を練条工程といい、通常複数回繰り返される。その後、スライバーの太さを順次適当に細くする操作を行う工程を粗紡工程という。精紡工程とは、粗紡工程で得られた粗糸を供給して最終的に所望の太さ(番手)にし、所望により撚りを加えて巻き取る操作を行う工程を言う。通常、この工程では、加撚と巻取が同時に行われる。精紡工程の設備は、公知のリング精紡機、エアージェット精紡機、オープンエンド精紡機を使用することができる。
【0053】
以上のようにして得られる紡績糸は、長さ20mm以上の短繊維を20重量%以上含むことが好ましい。上述したように、長さの長い短繊維を多く含むほど、引張強度の回復を高めることができるからである。なお、繊維長の分布は、JIS L 1015:2010 8.4.1 A法にしたがって、ステープルダイヤグラムにより容易に測定することができる。
【0054】
長さ約20mm以上の短繊維を20重量%以上(好ましくは35重量%以上、より好ましくは50重量%以上)含む再生難燃性紡績糸は、未使用の難燃性紡績糸の引張強度に対する再生難燃性紡績糸の引張強度の割合が高いという効果を奏し、その結果より広い用途に利用することができる。具体的には、前記再生難燃性紡績糸は、その引張強度が未使用の難燃性紡績糸の引張強度に対して15~100%(より好ましくは35~100%、さらに好ましくは60~100%)であることが好ましい。紡績糸の引張強さは、「JIS L 1095:2010 9.5」にしたがって測定する。さらに、前記再生難燃性紡績糸は、より細い糸にすることができ、柔らかく風合いがよいなどの利点も有する。
【0055】
次いで、製編織されて布帛に成形された後にカチオン染料によって染色することにより本発明の難燃性リサイクル織編物が得られる。複数の繊維種を用いた場合、必要に応じて繊維種に適した染色方法を用いてよい。染料は、例えば、カチオン染料のほか分散染料やスレン染料等を挙げられる。
【0056】
カチオン染料は、水に可溶性で、塩基性を示す基を有する水溶性染料をいい、アクリル繊維、天然繊維、またはカチオン可染型ポリエステル繊維などの染色に多く用いられているものである。カチオン染料としては適宜選択することができるが、例えば、ジアクリルメタン系およびトリアクリルメタン系、キノンイミン(アジン、オキサジン、チアジン)系、キサンテン系、メチン系(ポリメチン、アザメチン)、複素環アゾ系(チアゾールアゾ、トリアゾールアゾ、ベンゾチアゾールアゾ)、アントラキノン系が挙げられる。なお、塩基性基を封鎖することにより分散型にしたカチオン染料を用いてもよい。そのような染料として、アゾ系が望ましく、例えば、アゾ系としてC.I.Basic Blue54、C.I.Basic Blue3、C.I.Basic Red29、C.I.Basic Yellow67などがあげられる。
【0057】
また、キャリア剤を用いてもよく、かかるキャリア剤として、例えば、DL-β-エチルフェネチルアルコール、2-エトキシベンジルアルコール、3-クロロベンジルアルコール、2,5-ジメチルベンジルアルコール、2-ニトロベンジルアルコール、p-イソプロピルベンジルアルコール、2-メチルフェネチルアルコール、3-メチルフェネチルアルコール、4-メチルフェネチルアルコール、2-メトキシベンジルアルコール、3-ヨードベンジルアルコール、ケイ皮アルコール、p-アニシルアルコール、ベンズヒドロール、ベンジルアルコール、プロピレングリコールフェニルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、およびN-メチルホルムアニリドの群から選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0058】
メタ系アラミド繊維と、パラ系アラミド繊維とを含む織編物を染色する場合、アラミド繊維用染色液であるカチオン染料によりメタ系アラミド繊維と、パラ系アラミド繊維を染色する充分な温度に昇温して染色を行うことが好ましい。なお、カチオン染料は115~135℃で染色することが好ましい。
【0059】
染色時のカチオン染料の濃度は、20%owf以下(より好ましくは0.01~15%owf、さらに好ましくは0.1~10%owf)であることが好ましい。
また、難燃性リサイクル繊維と未使用の難燃性繊維(好ましくは易染性メタ系アラミド繊維)の色の色差(ΔE)が3以下(より好ましくは0.1~3)とすることが好ましい。
【0060】
織編物は、撥水剤、蓄熱剤、紫外線遮蔽あるいは制電剤、抗菌剤、消臭剤、防虫剤、蓄光剤、再帰反射剤等の機能を付与する他の各種加工を付加適用してもよい。例えば、吸汗加工剤は、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートの誘導体、ポリエチレンテレフタレート-ポリエチレングリコール共重合体、水溶性ポリウレタンなどが用いられることが好ましい。特に、ポリエチレングリコール-アミノシリコーン共重合体は、全芳香族ポリアミド繊維との親和性がよく洗濯耐久性のある吸汗性が得られやすいため好ましい。また、前記吸汗加工剤の粒子径は小さいほど全芳香族ポリアミド繊維に固着しやすいため好ましく、25~200nmの範囲であることが好ましい。吸汗加工剤の付与方法は、染色時に同浴処理によって付与しても、パディング処理によって付与してもよい。
【0061】
上記した方法によって、耐熱性、耐炎性に優れ、かつ、外観品位に優れる本発明の難燃性リサイクル織編物を得ることができる。かかる織編物は、難燃性繊維を含むので、かかる繊維の特性を生かした種々の用途に応用することができる。
【0062】
本発明の繊維製品は、前記織編物を用いてなり、防護服、消防防火服、消防活動服、救助服、ワークウェア、警察制服、自衛隊衣服、軍服などを含む。かかる繊維製品は、前記織編物を用いているため、耐熱性、難燃性、耐炎性、強度に優れ、さらに、同色性に優れているので、アラミド繊維の特性を兼ね備え、審美性に優れた織編物として、消防士、飛行士、レースドライバー、電力会社もしくは化学会社の作業者など、火炎などに曝される可能性のある作業に従事する人々が着用するのに適している。
【実施例0063】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は示されたこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の各測定項目は下記の方法で測定した。なお、1インチは2.54cmである。
【0064】
(1)撚係数
K=T/√nで撚係数を算出した。ただし、Kは撚係数、Tは1インチ(2.54cm)あたりの撚数、nは英式綿番手、である。
【0065】
(2)織物充填密度
次式により織物充填密度を算出した。
T=(ta1+ta2)/(tm1+tm2)
ここで、Tは織物の充填度、ta1は経方向における一完全組織内に実際に糸が占める量であり、1cmあたりの経密度(本/cm)である。同様に、ta2は緯方向における一完全組織内に実際に糸が占める量であり、1cmあたりの緯密度(本/cm)である。tm1は経方向における一完全組織内に理論的に最大糸が占める量、tm2は緯方向における一完全組織内に理論的に最大糸が占める量である。tmは次式で算出した。
tm=e/((e-i)×3.14×d/4+2id)
ここで、eは一完全組織の経方向(または緯方向)の糸の数であり、iは一完全組織の経方向(または緯方向)交錯の数である。dは糸の直径であり次式で算出した。
d(cm)=0.00357×√((tex/(φ×ρf))
ここで、texは紡績糸番手をtexに換算した数値、φは糸の充填率、ρfは繊維の比重である。糸の充填率φは簡便にするため1として計算した。
【0066】
(3)繊維長分布
繊維長の分布は、JIS L 1015:2010 8.4.1 A法にしたがって、ステープルダイヤグラムを測定した。また、実施例中の繊維長20mm以上の比率は、特許第3782061号公報の実施例に記載の通り、得られたステープルダイヤグラムより算出した。
【0067】
(4)繊維の難燃性
JIS 1091:1999 E-2に規定される限界酸素指数(LOI)を測定した。
【0068】
(5)リサイクル繊維の開繊度
次式によりリサイクル繊維の開繊度を算出した。
開繊度(%)=(Wt-W)/Wt×100
ここで、Wはリサイクル繊維中の糸などの状態で残っている未開繊繊維の重量(g)である。また、Wtはリサイクル繊維の総重量(g)である。これにより、リサイクル繊維中の開繊した繊維の割合(%)を表すことが出来る。
【0069】
(6)結晶化度
X線回折測定装置(リガク社製 RINT TTRIII)を用い、原繊維を約1mm径の繊維束に引きそろえて繊維試料台に装着して回折プロファイルを測定した。測定条件は、Cu-Kα線源(50kV、300mA)、走査角度範囲10~35°、連続測定0.1°幅計測、1°/分走査でおこなった。実測した回折プロファイルから空気散乱、非干渉性散乱を直線近似で補正して全散乱プロファイルを得た。次に、全散乱プロファイルから非晶質散乱プロファイルを差し引いて結晶散乱プロファイルを得た。結晶化度は、結晶散乱プロファイルの面積強度(結晶散乱強度)と全散乱プロファイルの面積強度(全散乱強度)から、次式により求めた。
結晶化度(%)=[結晶散乱強度/全散乱強度]×100
【0070】
(7)色差(ΔE)
マクベス分光光度計Color-Eye3100にてΔEを測色した。ΔEが3以下であれば〇(合格)、3より大きいと×(不合格)とした。
【0071】
(8)織物の外観
織物欠点(ネップ、スラブ)と色のイラツキについて、それぞれ良好な方から◎、〇、△、×の4段階に評価した。
【0072】
[実施例1]
リサイクルに供する難燃性紡績糸製品として、作業服用のメタ系アラミド繊維が95重量%、パラ系アラミド繊維が5重量%からなる難燃性作業着用織物を用いた。かかる織物は、ポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維(帝人株式会社製「テイジンコーネックス」(商標名))が95重量%、コパラフェニレン・3、4’オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維(帝人株式会社製「テクノーラ」(商標名))が5重量%からなる難燃紡績糸40番手/双糸からなり、上撚数は19.8回/インチ(S撚)であった。織物組織は、綾織(2/2)であり、経密度が86本/インチ、緯密度が75本/インチの織物である。充填度に必要な各パラメータは、e=4、i=2、d=0.0165であった。この織物の撚係数は4.43、織物の充填度は0.73、撚係数×織物充填度は3.23であった。
【0073】
前記織物を約8cm角に裁断し、洗濯・乾燥の洗浄処理と帯電防止の油剤付与を行った。その後、裁断された難燃性織物に対し、予備開繊機により解砕処理(噛み込み、引き裂き、引きちぎり)を行った後に、反毛機にて開繊処理(掻き取り、掻き削り)を行った。得られた難燃性リサイクル繊維(開繊が不十分な糸状物を含む。)の開繊度は90%であり、難燃性リサイクル繊維の開繊性は良好であった。
【0074】
この難燃性リサイクル繊維を紡績糸全体の20重量%と、単繊維繊度が1.7dtex、繊維長51mm、残留溶媒量0.05重量%、結晶化度が19%の未使用のメタ系アラミド繊維(帝人株式会社製「テイジンコーネックス ネオ」(商標名))を74.4重量%と、未使用のパラ系アラミド繊維(テイジンアラミド社製「トワロン」(商標名))を4.0重量%と、未使用の導電繊維(三菱ケミカル社製「コアブリッド」(商品名))を1.6重量%混合し、カード工程、練条工程、粗紡工程および精紡工程に付し、Z方向に22.1回/インチに下撚を付与し、難燃性紡績糸40番手/単糸(英式綿番手)を製造した。次いで合糸工程、撚糸工程に付し、S方向に19.9回/インチの上撚を付与し、難燃性リサイクル紡績糸40番手/双糸(英式綿番手)を製造した。得られたリサイクル繊維の開繊性、および繊維長20mm以上の比率、紡績糸加工の可否を表1~3に示す。
【0075】
次いで経密度57本/インチ、緯密度53本/インチの平織物を製織した。この織物を毛焼き、精練、乾燥、熱処理を行い、未染色織物を得た。
次いで、事前に難燃性リサイクル繊維の測色し、色差が3以下になる様に未使用のメタ系アラミド繊維をビーカー染色し、使用するカチオン染料および染料濃度を決定した。得られた未染色織物を、事前に決めたカチオン染料(日本化薬株式会社製 Kayacryl(商標名))を含む染浴で、常温から昇温して130℃で60分染色した。なお、以上の染色は、織物を、それぞれ上記染浴に投入し、液流染色機(日阪製作所株式会社製高温サーキュラー)にセットし、攪拌しながら上記温度条件にて行った。
【0076】
次いで、水に、ハイドロサルファイト1g/L、ソーダ灰1g/L、界面活性剤(明成化学株式会社製アミラジンD1g/L)を溶解し、還元洗浄用の後処理浴を調整した。この後処理浴に染色を行った織物を投入し、上記液流染色機にセットし、撹拌しながら温度を常温から80℃まで昇温速度2℃/分で昇温し、さらに80℃で20分保持し、還元洗浄を行った。冷却した後、染色物を取り出し、水洗し、風乾、加熱処理して仕上げた。加熱処理は、温度190℃、時間2分で行い、染色された難燃性リサイクル織物を得た。結果を表4に示す。
【0077】
[参考例]
参考として、未使用の単繊維繊度1.7dtex、繊維長51mmのメタ系アラミド繊維(帝人株式会社製「テイジンコーネックス ネオ」(商標名))を93重量%、パラ系アラミド繊維(テイジンアラミド社製「トワロン」(商標名))を5.0重量%、導電繊維(三菱ケミカル社製「コアブリッド」(商品名))を2.0重量%使用して、同様に紡績、製織、染色を実施した。
【0078】
[実施例2]
実施例1に記載の難燃性リサイクル繊維を全体の40重量%と、単繊維繊度が1.7dtex、繊維長51mm、残留溶媒量0.05重量%、結晶化度が19%の未使用のメタ系アラミド繊維(帝人株式会社製「テイジンコーネックス ネオ」(商標名))を55.8重量%と、未使用のパラ系アラミド繊維(テイジンアラミド社製「トワロン」(商標名))を3.0重量%と、未使用の導電繊維(三菱ケミカル社製「コアブリッド」(商品名))を1.2重量%混合し、カード工程、練条工程、粗紡工程および精紡工程に付し、Z方向に22.1回/インチに下撚を付与し、難燃性紡績糸40番手/単糸(英式綿番手)を製造した。次いで合糸工程、撚糸工程に付し、S方向に19.9回/インチの上撚を付与し、難燃性リサイクル紡績糸40番手/双糸(英式綿番手)を製造した。
得られた難燃性リサイクル紡績糸を使用して、実施例1と同様に製織、染色を実施し、染色された難燃性リサイクル織物を得た。結果を表1~4に示す。
【0079】
[実施例3]
リサイクルに供する難燃性織物として、作業服用のメタ系アラミド繊維が95重量%、パラ系アラミド繊維が5重量%からなる難燃性作業着用織物を用いた。かかる織物は、ポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維(帝人株式会社製「テイジンコーネックス」(商標名))が95重量%、コパラフェニレン・3、4’オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維(帝人株式会社製「テクノーラ」(商標名))が5重量%からなる難燃紡績糸36番手/双糸からなり、上撚数は19.8回/インチ(S撚)であった。織物組織は、平織であり、経密度が60本/インチで緯密度が49本/インチの織物である。填度に必要な各パラメータは、e=2、i=2、d=0.0174であった。この織物の双糸の撚係数は4.66、織物の充填度は0.75、撚係数×織物充填度は3.48であった。前記織物の処理は実施例1と同様に行った。得られた難燃性リサイクル繊維(開繊が不十分な糸状物を含む。)の開繊度は85%であり、実施例1の難燃性リサイクル繊維と比較すると糸条の未開繊繊維が若干残るものの開繊性は概ね良好であった。
【0080】
実施例1と同様に難燃性リサイクル繊維と未使用繊維を用いて、本発明にかかる難燃性リサイクル紡績糸40番手/双糸(英式綿番手)を製造した。得られた難燃性リサイクル紡績糸を使用して、実施例1と同様に製織、染色を実施し、染色された難燃性リサイクル織物を得た。結果を表1~4に示す。
【0081】
[実施例4]
リサイクルに供する難燃性織物として、作業服用のメタ系アラミド繊維が95重量%、パラ系アラミド繊維が5重量%からなる難燃性作業着用織物を用いた。かかる織物は、ポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維(帝人株式会社製「テイジンコーネックス」(商標名))が95重量%、コパラフェニレン・3、4’オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維(帝人株式会社製「テクノーラ」(商標名))が5重量%からなる難燃紡績糸40番手/単糸からなり、下撚数は24.0回/インチ(Z撚)であった。織物組織は、平織であり、経密度が53本/インチで緯密度が53本/インチの織物である。填度に必要な各パラメータは、e=2、i=2、d=0.0117であった。この織物の単糸の撚係数は3.79、織物の充填度は0.49、撚係数×織物充填度は1.85であった。前記織物の処理は実施例1と同様に行った。得られた難燃性リサイクル繊維(開繊が不十分な糸状物を含む。)の開繊度は75%であり、実施例1の難燃性リサイクル繊維と比較すると糸条の未開繊繊維が若干残り開繊性は劣る結果となった。
【0082】
実施例1と同様に難燃性リサイクル繊維と未使用繊維を用いて、本発明にかかる難燃性紡績糸40番手/双糸を製造した。得られた難燃性リサイクル紡績糸を使用して、実施例1と同様に製織、染色を実施し、染色された難燃性リサイクル織物を得た。結果を表1~4に示す。
【0083】
[比較例1]
リサイクルに供する難燃性織物として、作業服用のメタ系アラミド繊維が95重量%、パラ系アラミド繊維が5重量%からなる難燃性作業着用織物を用いた。かかる織物は、ポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維(帝人株式会社製「テイジンコーネックス」(商標名))が95重量%、コパラフェニレン・3、4’オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維(帝人株式会社製「テクノーラ」(商標名))が5重量%からなる難燃紡績糸35番手/双糸からなり、上撚数は23.6回/インチ(S撚)であった。織物組織は、平織であり、経密度が65本/インチで緯密度が55本/インチの織物である。填度に必要な各パラメータは、e=2、i=2、d=0.0177であった。この織物の双糸の撚係数は5.63、織物の充填度は0.84、撚係数×織物充填度は4.70であった。前記織物の処理は実施例1と同様に行ったが、開繊は殆どされずリサイクル繊維として紡績工程に投入する事が出来なかった。
【0084】
[比較例2]
リサイクルに供する難燃性織物として、作業服用のメタ系アラミド繊維が95重量%、パラ系アラミド繊維が5重量%からなる難燃性作業着用織物を用いた。かかる織物は、ポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維(帝人株式会社製「テイジンコーネックス」(商標名))が95重量%、コパラフェニレン・3、4’オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維(帝人株式会社製「テクノーラ」(商標名))が5重量%からなる難燃紡績糸35番手/双糸からなり、上撚数は25.8回/インチ(S撚)であった。織物組織は、綾織(2/1)であり、経密度が95本/インチで緯密度が54本/インチの織物である。填度に必要な各パラメータは、e=3、i=2、d=0.0177であった。この織物の双糸の撚係数は6.17、織物の充填度は0.83、撚係数×織物充填度は5.09であった。前記織物の処理は実施例1と同様に行ったが、開繊は殆どされずリサイクル繊維として紡績工程に投入する事が出来なかった。
【0085】
[実施例5]
実施例1に記載の難燃性リサイクル繊維を紡績糸全体の5重量%と単繊維繊度が1.7dtex、繊維長51mm、残留溶媒量0.05重量%、結晶化度が19%の未使用のメタ系アラミド繊維(帝人株式会社製「テイジンコーネックス ネオ」(商標名))を88.4重量%および未使用のパラ系アラミド繊維(テイジンアラミド社製「トワロン」(商標名))を4.8重量%、未使用の導電繊維(三菱ケミカル社製「コアブリッド」(商品名))を1.9重量%混合し、カード工程、練条工程、粗紡工程および精紡工程に付し、Z方向に22.1回/インチに下撚を付与し、難燃性紡績糸40番手/単糸(英式綿番手)を製造した。次いで合糸工程、撚糸工程に付し、S方向に19.9回/インチの上撚を付与し、難燃性リサイクル紡績糸40番手/双糸(英式綿番手)を製造した。
得られた難燃性リサイクル紡績糸を使用して、実施例1と同様に製織、染色を実施し、染色された難燃性リサイクル織物を得た。結果を表1~4に示す。
【0086】
[実施例6]
実施例1に記載の難燃性リサイクル繊維を紡績糸全体の60重量%と単繊維繊度が1.7dtex、繊維長51mm、残留溶媒量0.05重量%、結晶化度が19%の未使用のメタ系アラミド繊維(帝人株式会社製「テイジンコーネックス ネオ」(商標名))を37.2重量%および未使用のパラ系アラミド繊維(テイジンアラミド社製「トワロン」(商標名))を2.0重量%、未使用の導電繊維(三菱ケミカル社製「コアブリッド」(商品名))を0.8重量%混合し、カード工程、練条工程、粗紡工程および精紡工程に付し、Z方向に22.1回/インチに下撚を付与し、難燃性紡績糸40番手/単糸(英式綿番手)を製造した。次いで合糸工程、撚糸工程に付し、S方向に19.9回/インチの上撚を付与し、難燃性リサイクル紡績糸40番手/双糸(英式綿番手)を製造した。
得られた難燃性リサイクル紡績糸を使用して、実施例1と同様に製織、染色を実施し、染色された難燃性リサイクル織物を得た。結果を表1~4に示す。
【0087】
[実施例7]
実施例1に記載の難燃性リサイクル繊維を紡績糸全体の20重量%と単繊維繊度が1.7dtex、繊維長51mm、残留溶媒量0.05重量%、結晶化度が65%の未使用のメタ系アラミド繊維(帝人株式会社製「テイジンコーネックス」(商標名))を74.4重量%および未使用のパラ系アラミド繊維(テイジンアラミド社製「トワロン」(商標名))を4.0重量%、未使用の導電繊維(三菱ケミカル社製「コアブリッド」(商品名))を1.6重量%混合し、カード工程、練条工程、粗紡工程および精紡工程に付し、Z方向に22.1回/インチに下撚を付与し、難燃性紡績糸40番手/単糸(英式綿番手)を製造した。次いで合糸工程、撚糸工程に付し、S方向に19.9回/インチの上撚を付与し、難燃性リサイクル紡績糸40番手/双糸(英式綿番手)を製造した。得られた難燃性リサイクル紡績糸を使用して、実施例1と同様に製織した。
【0088】
事前に難燃性リサイクル繊維の測色し、色差が3以下になる様に未使用のメタ系アラミド繊維をビーカー染色したが、結晶化度が高くメタ系アラミド繊維が染まらず色差が3以下となる染色条件を見出すことが出来なかった。染色を実施し、染色された難燃性リサイクル織物を得た。結果を表1~4に示す。
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
本発明によれば、難燃性リサイクル繊維と未使用の難燃性繊維を用いてなり、防護衣料用途に適した難燃性能および優れた外観品位を有する難燃性リサイクル織編物および繊維製品が提供され、その工業的価値は極めて大である。