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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025019377
(43)【公開日】2025-02-07
(54)【発明の名称】電解水生成装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/461 20230101AFI20250131BHJP
   B01F 23/2373 20220101ALI20250131BHJP
   B01F 23/2375 20220101ALI20250131BHJP
   B01F 23/23 20220101ALI20250131BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20250131BHJP
   C25B 1/01 20210101ALI20250131BHJP
   C25B 9/21 20210101ALI20250131BHJP
【FI】
C02F1/461 A
B01F23/2373
B01F23/2375
B01F23/23
C25B9/00 A
C25B1/01 Z
C25B9/21
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023122956
(22)【出願日】2023-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】592250414
【氏名又は名称】株式会社テックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】岡 力矢
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 隆康
【テーマコード(参考)】
4D061
4G035
4K021
【Fターム(参考)】
4D061DA03
4D061DB07
4D061DB08
4D061EA02
4D061EB01
4D061EB04
4D061EB13
4D061EB14
4D061EB19
4D061EB39
4D061ED12
4D061ED13
4D061GC01
4G035AB04
4G035AE13
4K021AB25
4K021BA02
4K021CA08
4K021CA10
4K021CA15
4K021DB06
4K021DB31
4K021DB36
(57)【要約】
【課題】電解槽の長寿命化を図ることができる電解水生成装置を提供すること。
【解決手段】三室型電解槽(2)と、電解質供給部(4)と、電解質水溶液が前記電解質供給部(4)から供給されるとともに、前記中間室(23)との間で第1循環経路(50)を介して電解質水溶液が循環する電解質循環部(5)と、第1循環経路(50)と異なる経路で電解質水溶液を電解質循環部(5)に循環させる第2循環経路(60)と、第2循環経路(60)に接続する分岐経路(70)から電解質水溶液が供給される一室型電解槽(3)と、前記分岐経路(70)に設けられるファインバブル生成器(7)と、を備えることを特徴とする電解水生成装置(1)。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給される電解質水溶液を電気分解し、電解質の一部が消費された電解質水溶液を排出する中間室と、前記中間室からイオン化した電解質が供給されるアノード室及びカソード室と、を有する三室型電解槽と、
電解質供給部と、
電解質水溶液が前記電解質供給部から供給されるとともに、前記中間室との間で第1循環経路を介して電解質水溶液が循環する電解質循環部と、
前記第1循環経路と異なる経路で電解質水溶液を前記電解質循環部に循環させる第2循環経路と、
前記第2循環経路に接続する分岐経路から電解質水溶液が供給される一室型電解槽と、
前記分岐経路おいて、前記一室型電解槽の上流に設けられ、生成するファインバブルを、前記分岐経路を流れる電解質水溶液に含有させるファインバブル生成器と、
を備えることを特徴とする電解水生成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電解水生成装置において、
前記第2循環経路には、第1リザーバタンクが設けられるとともに、前記第1リザーバタンクの下流、かつ前記電解質循環部の上流に第1ポンプが設けられ、
前記分岐経路は、前記第1リザーバタンクに接続することを特徴とする電解水生成装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電解水生成装置において、
前記分岐経路には、第2リザーバタンクが設けられるとともに、前記第2リザーバタンクの下流、かつ前記ファインバブル生成器の上流に第2ポンプが設けられることを特徴とする電解水生成装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電解水生成装置において、
前記分岐経路において前記第2リザーバタンクの上流には、前記第1リザーバタンクから前記電解質水溶液を吸い出して前記第2リザーバタンクに送る第3ポンプが設けられることを特徴とする電解水生成装置。
【請求項5】
請求項1に記載の電解水生成装置において、
前記第2循環経路には、第1リザーバタンクが設けられるとともに、前記第1リザーバタンクの下流、かつ前記電解質循環部の上流に第1ポンプおよび第1開閉機構が上流から順に設けられ、
前記第2循環経路における前記第1ポンプの下流、かつ前記第1開閉機構の上流に前記分岐経路が接続し、
前記分岐経路には、前記第2循環経路から前記第1ポンプにより前記電解質水溶液が送られる第2リザーバタンクが設けられ、前記第2リザーバタンクの上流に第2開閉機構が設けられ、前記第2リザーバタンクの下流、かつ前記ファインバブル生成器の上流に第2ポンプが設けられる
ことを特徴とする電解水生成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解水生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、本願出願人が開発した電解水生成装置100(特許文献1)の構成を示す図である。
三室型電解槽2から排出される電気分解後の電解質水溶液は、第1循環経路50により再度、三室型電解槽2に戻されるところ、三室型電解槽2の下流にて、所定濃度の電解質水溶液が供給され、消費分の電解質が補充される。従来、この補充に伴う余剰の電解質水溶液は、第1循環経路50から電解水生成装置100外に廃棄されていた。
【0003】
そこで、電解水生成装置100では、第1循環経路50に電解質循環部5が設けられている。電解質循環部5には、電解質供給部4から所定濃度の電解質水溶液が供給される。余剰の電解質水溶液は、電解質循環部5から一室型電解槽3に送られる。これにより、電解水生成装置100では、電解質水溶液の廃液の発生が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6139809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電解水生成装置では、電解質水溶液中に硬度成分としてカルシウムイオンやマグネシウムイオン等の陽イオンが含まれていると、それらの陽イオンが陰極に集まってスケールとして析出する。該スケールにより電流密度が低下し、電極の寿命が低下し、ひいては電解槽の寿命が低下するおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、電解槽の長寿命化を図ることができる電解水生成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、例えば以下の通りである。以下では、図の符号を参照のために用いている。
〔1〕供給される電解質水溶液を電気分解し、電解質の一部が消費された電解質水溶液を排出する中間室(23)と、前記中間室(23)からイオン化した電解質が供給されるアノード室(22)及びカソード室(21)と、を有する三室型電解槽(2)と、
電解質供給部(4)と、
電解質水溶液が前記電解質供給部(4)から供給されるとともに、前記中間室(23)との間で第1循環経路(50)を介して電解質水溶液が循環する電解質循環部(5)と、
前記第1循環経路(50)と異なる経路で電解質水溶液を前記電解質循環部(5)に循環させる第2循環経路(60)と、
前記第2循環経路(60)に接続する分岐経路(70)から電解質水溶液が供給される一室型電解槽(3)と、
前記分岐経路(70)において、前記一室型電解槽(3)の上流に設けられ、生成するファインバブルを、前記分岐経路(70)を流れる電解質水溶液に含有させるファインバブル生成器(7)と、
を備えることを特徴とする電解水生成装置(1,1A,1B)。
〔2〕〔1〕に記載の電解水生成装置(1,1A)において、
前記第2循環経路(60)には、第1リザーバタンク(64)が設けられるとともに、前記第1リザーバタンク(64)の下流、かつ前記電解質循環部(5)の上流に第1ポンプ(62)が設けられ、
前記分岐経路(70)は、前記第1リザーバタンク(64)に接続することを特徴とする電解水生成装置(1,1A)。
〔3〕〔2〕に記載の電解水生成装置(1,1A)において、
前記分岐経路(70)には、第2リザーバタンク(39)が設けられるとともに、前記第2リザーバタンク(39)の下流、かつ前記ファインバブル生成器(7)の上流に第2ポンプ(34)が設けられることを特徴とする電解水生成装置(1,1A)。
〔4〕〔3〕に記載の電解水生成装置(1A)において、
前記分岐経路(70)において前記第2リザーバタンク(39)の上流には、前記第1リザーバタンク(64)から前記電解質水溶液を吸い出して前記第2リザーバタンク(39)に送る第3ポンプ(92)が設けられることを特徴とする電解水生成装置(1A)。
〔5〕〔1〕に記載の電解水生成装置(1B)において、
前記第2循環経路(60)には、第1リザーバタンク(64)が設けられるとともに、前記第1リザーバタンク(64)の下流、かつ前記電解質循環部(5)の上流に第1ポンプ(62)および第1開閉機構(93)が上流から順に設けられ、
前記第2循環経路(60)における前記第1ポンプ(62)の下流、かつ前記第1開閉機構(93)の上流に前記分岐経路(70)が接続し、
前記分岐経路(70)には、前記第2循環経路(60)から前記第1ポンプ(62)により前記電解質水溶液が送られる第2リザーバタンク(39)が設けられ、前記第2リザーバタンク(39)の上流に第2開閉機構(94)が設けられ、前記第2リザーバタンク(39)の下流、かつ前記ファインバブル生成器(7)の上流に第2ポンプ(34)が設けられる
ことを特徴とする電解水生成装置(1B)。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】従来の電解水生成装置の構成を示す図である。
図2】電解水生成装置の構成を示す図である。
図3】電解質循環部の構成の一例を示す図である。
図4】第1リザーバタンクの構成の一例を示す図である。
図5】ファインバブル生成器の構成の一例を示す図である。
図6】他の電解水生成装置の構成を示す図である。
図7】他の電解水生成装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図2は、電解水生成装置1の構成を示す図である。
電解水生成装置1は、三室型電解槽2、一室型電解槽3、電解質供給部4、電解質循環部5、第2循環経路60、ファインバブル生成器7を備える。
【0010】
三室型電解槽2は、内部がカソード室21、アノード室22、カソード室21およびアノード室22の間にある中間室23に仕切られる。中間室23には、電解質循環部5から配管53を介して電解質水溶液が供給される。電解質水溶液として、例えばNaClが高濃度で溶解する塩水が用いられる。高濃度の塩水は、飽和食塩水であってもよい。電解質水溶液として、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、塩酸、塩化カリウム、塩化カルシウムまたはその混合物などの電解質が溶解するものが用いられてもよい。
【0011】
カソード室21と中間室23は、陽イオン交換膜211に仕切られる。陽イオン交換膜211は、Na等の陽イオンを選択的に透過させる。陽イオン交換膜211の背面側にカソード電極24がある。
【0012】
アノード室22と中間室23は、陰イオン交換膜221に仕切られる。陰イオン交換膜221は、Cl等の陰イオンを選択的に透過させる。陰イオン交換膜221の背面側にアノード電極25がある。
【0013】
原水供給部81は、原水を、配管82および配管82から分岐する配管83を介してカソード室21に供給する。原水供給部81は、原水を、配管82および配管82から分岐する配管84を介してアノード室22に供給する。原水として、水道水やRO(Reverse Osmosis)水等を用いることができる。原水は、電解質の濃度が15ppm以下等、電解質が僅かに溶解していてもよい。配管82には、配管82内を開閉する開閉機構85が設けられている。開閉機構85は、電磁弁であってもよい。後述の開閉機構38,91,93も同様である。
【0014】
電解水生成装置1は、全体を制御する不図示のプロセッサ、プロセッサに読み込まれるプログラム等を記憶する不図示のメモリ、設定画面等を表示する不図示のディスプレイ、ユーザから設定等の入力を受け付けるボタン等の不図示の入力部を備える。開閉機構85は、プロセッサに制御される。
【0015】
三室型電解槽2による電気分解の実行時には、カソード電極24およびアノード電極25に直流電圧が印加される。すると、中間室23内のNa等の陽イオンがカソード室21に移動し、公知の反応によりカソード室21にアルカリ性電解水が生じる。アルカリ性電解水は、カソード室21から配管86を介してアルカリ性電解水排出口87へ送られる。
【0016】
また、中間室23内のCl等の陰イオンがアノード室22に移動し、公知の反応によりアノード室22に酸性電解水(例えば次亜塩素酸水)が生じる。酸性電解水は、アノード室22から配管88を介して酸性電解水排出口89へ送られる。配管88と原水供給部81とが配管90で接続される。配管90には、プロセッサの制御下にある開閉機構91が設けられている。開閉機構91を開け、原水供給部81から配管90を介して原水を配管88に送ることで、アノード室22で生成される酸性電解水を希釈できる。これにより、例えば、アノード室22で生成される次亜塩素酸水を、弱酸性次亜塩素酸水または微酸性次亜塩素酸水に希釈できる。このように、三室型電解槽2による電気分解の作用により、中間室23では、電解質水溶液中の電解質の一部が消費される。中間室23は、電解質の一部が消費された電解質水溶液を配管51を介して電解質循環部5に送る。
【0017】
電解質供給部4は、電解質が高濃度(所定濃度)に溶解する電解質水溶液、例えば飽和食塩水を貯留する。電解質供給部4は、プロセッサの制御下にあるポンプ41が設けられた配管42を介し、電解質循環部5に接続する。プロセッサが例えば三室型電解槽2の稼働時間に応じてポンプ41を駆動することで、電解質供給部4は、必要量の電解質水溶液を電解質循環部5に送る。
【0018】
電解質循環部5は、電解質水溶液が電解質供給部4から供給されるとともに、中間室23との間で第1循環経路50を介して電解質水溶液が循環する。電解質循環部5と中間室23との間では、配管51,53を介して電解質水溶液が循環しており、電解質循環部5と中間室23とに電解質水溶液を循環させる第1循環経路50は、配管53、51を含んで構成される。配管53には、プロセッサの制御下にあるポンプ52が設けられている。ポンプ52の駆動により、電解質水溶液が第1循環経路50を循環する。
【0019】
電解質循環部5から中間室23に供給される電解質水溶液は、三室型電解槽2による電気分解の作用により、塩分濃度が低下し、pHが低下する(酸性度が高くなる)。pHが低下する要因としては、中間室23に存在する例えばNaイオンとHイオンの陽イオンの内、イオン化傾向としてNaイオンの方が大きいため、陽イオン交換膜211を優先的に透過しカソード室21に移動する。したがって、中間室23では相対的にHイオンが残存するため、これにより、中間室23の電解質水溶液の酸性度が高くなり、pHが低くなることが知られている。
【0020】
そこで、電解質循環部5は、電気分解に利用した電解質水溶液を中間室23から回収し、電解質供給部4から供給される電解質の濃度の高い電解質水溶液を該電解質水溶液に加えて混合する。この混合された電解質水溶液は、電解質循環部5から中間室23に送られる。このようにして電解質水溶液は、中間室23と電解質循環部5との間で循環する。
【0021】
電解質の濃度の高い電解質水溶液が電解質循環部5を介して第1循環経路50に補給されるとともに、これに伴う第1循環経路50における余剰の電解質水溶液は、第2循環経路60、および第2循環経路60に接続する分岐経路70を介して一室型電解槽3に供給される。
【0022】
一室型電解槽3では、陰極31および陽極32が隔膜で仕切られていない。一室型電解槽3は、供給される酸性に傾いた電解液水溶液を、陰極31および陽極32により電気分解し、酸性電解水(例えば微酸性電解水)を生成する。一室型電解槽3で生成される酸性電解水は、配管35を介して酸性電解水排出口36に送られる。配管35と原水供給部81とが配管37で接続される。配管37には、プロセッサの制御下にある開閉機構38が設けられている。開閉機構38を開け、原水供給部81から配管37を介して原水を配管35に送ることで、一室型電解槽3で生成される酸性電解水を希釈できる。
【0023】
本実施形態では、三室型電解槽2で電解質水溶液を循環利用しながらアルカリ性電解水および酸性電解水を生成する。また、本実施形態では、三室型電解槽2で循環利用した電解質水溶液を一室型電解槽3で再利用し、酸性電解水を生成する。これにより、本実施形態では、電解質水溶液の廃液を抑制しつつ、大容量の酸性電解水を継続して生成できる。
【0024】
電解水生成装置1において、一室型電解槽3で所定の品質の酸性電解水を継続して生成する観点から、電解質循環部5では、供給される所定濃度の電解質水溶液が、電気分解後の電解質水溶液に十分に混合されることが望ましい。該混合がなされれば、塩分濃度および酸性度が一室型電解槽3での電気分解に適した状態である電解質水溶液、すなわち、品質が安定した電解質水溶液を、電解質循環部5を経由して一室型電解槽3に送ることができ、一室型電解槽3で所定の品質の酸性電解水を継続して生成できる。そこで、一室型電解槽3にて電解水の生成を開始する前に、所定の時間、三室型電解槽2への電解質水溶液の循環を繰り返すことで、第1循環経路50を流れる電解質水溶液を十分に撹拌して品質を安定させることが考えられる。しかしながら、この方法では、一室型電解槽3による電解水の生成開始までに、所定の時間、一室型電解槽3を待機させる必要がある。
【0025】
上述の通り、一室型電解槽3に送られる電解質水溶液は、塩分濃度および酸性度が、一室型電解槽3による微酸性電解水の生成に適した液性であることが望ましい。そこで、本実施形態では、三室型電解槽2による電気分解を開始した後、第1循環経路50中の電解質水溶液が一室型電解槽3での利用に適した液性となるまで、一室型電解槽3への電解質水溶液の送出および一室型電解槽3による電気分解を待機し、第1循環経路50中の電解質水溶液が一室型電解槽3での利用に適した液性になると、一室型電解槽3への電解質水溶液の送出および一室型電解槽3による電気分解を始める。なお、三室型電解槽2および一室型電解槽3による電気分解を最初から共に行ってもよい。例えば、第1循環経路50中の電解質水溶液が一室型電解槽3での利用に適した液性となるまで、一室型電解槽3で生成される酸性電解水を適宜の用途に利用してもよい。
【0026】
電解質循環部5では、酸性度が高くなった電解質水溶液に高濃度の電解質水溶液が混合するところ、十分な混合を短時間で行うことができれば、三室型電解槽2の電気分解開始から一室型電解槽3の電気分解の開始までの一室型電解槽3の待機時間を減らすことができる。そこで、本実施形態では、第1循環経路50と異なる経路で電解質水溶液を電解質循環部5に循環させる第2循環経路60が設けられ、この第2循環経路60で電解質循環部5に電解質水溶液を循環させることにより、電解質循環部5内の迅速な電解質水溶液の撹拌が図られる。
【0027】
第2循環経路60には、第1リザーバタンク64(余剰循環部)とポンプ62(第1ポンプ)とが設けられている。電解質循環部5と第1リザーバタンク64とは配管63で接続され、第1リザーバタンク64と電解質循環部5とは配管61で接続される。ポンプ62は、配管61中に設けられている、換言すると、第1リザーバタンク64の下流、かつ電解質循環部5の上流に設けられている。ポンプ62は、プロセッサによる制御下にあり、第1リザーバタンク64および電解質循環部5の間に電解質水溶液を循環させる。
【0028】
第1リザーバタンク64は、電解質循環部5との間に上記第2循環経路60が形成されている。電解質循環部5において、中間室23および一室型電解槽3への電解質水溶液の供給量よりも、電解質供給部5および中間室23からの電解質水溶液の供給量が多いことによる余剰の電解質水溶液は、ポンプ62の駆動により、第2循環経路60を通って第1リザーバタンク64と電解質循環部5との間で循環する。これにより、本実施形態では、電解質循環部5内の電解質水溶液が撹拌されるので、第1循環経路50を循環する電解質水溶液の濃度を短時間で均一化でき、該電解質水溶液の液性を、短時間で、塩分濃度および酸性度が一室型電解槽3での微酸性電解水の生成に適した液性にできる。従って、本実施形態では、電解質循環部5から第2循環経路60および分岐経路70を介して一室型電解槽3に、電気分解に適した電解質水溶液を短時間で送ることができるようになる。
【0029】
分岐経路70は、第2循環経路60に接続し、一室型電解槽3に電解液水溶液を送る経路を意味する。分岐経路70は、本実施形態では、第2循環経路60における第1リザーバタンク64に接続する。分岐経路70は、第1リザーバタンク64と第2リザーバタンク39を接続する配管73、第2リザーバタンク39と一室型電解槽3を接続する配管74を含む。分岐経路70には、第2リザーバタンク39が設けられるとともに、第2リザーバタンク39の下流、かつファインバブル生成器7の上流にポンプ34(第2ポンプ)が設けられる。ポンプ34は、プロセッサの制御下にある。このポンプ34の駆動により、第2循環経路60(第1リザーバタンク64)から一室型電解槽3に分岐経路70を介して電解液水溶液が供給される。
【0030】
ファインバブル生成器7は、本実施形態では、分岐経路70において、ポンプ34の下流、かつ一室型電解槽3の上流に設けられる。ファインバブル生成器7は、ファインバブルを生成し、分岐経路70を流れる電解質水溶液にファインバブルを含有させる。ファインバブルは、直径100μm未満の泡を意味し、直径100μm未満で1μm(=0.001mm)以上の泡であるマイクロバブルと、直径1μm未満の泡であるウルトラファインバブルとを含む概念である。ファインバブル生成器7は、マイクロバブルを主に生成してもよいし、ウルトラファインバブルを主に生成してもよく、本実施形態では、両方を生成するものであるとする。
【0031】
ファインバブルは、電解質水溶液中に長期間残存する特性を有する(特にウルトラファインバブル)。例えば、ファインバブル生成にあたり流路の急激な収縮、及び拡大の作用により電解質水溶液にキャビテーション現象を生じさせ、電解質水溶液に溶存するガスをファインバブルとして電解質水溶液中に析出させることができる。このファインバブルを含有する電解質水溶液は、キャビテーションノズルから吐出され、一室型電解槽3に送出される。
【0032】
本実施形態では、このファインバブルを含んだ電解質水溶液により、一室型電解槽3の陰極31にスケールが付着することを抑制できるので、陰極31の長寿命化が図れ、ひいては一室型電解槽3の長寿命化が図れる。また、本実施形態では、ファインバブル生成器7を一室型電解槽3のすぐ上流に配置したので、ファインバブルを含んだ電解質水溶液を三室型電解槽2に送らずに一室型電解槽3にのみ送ることができる。
【0033】
図3は、電解質循環部5の構成の一例を示す図である。図3では、電解質水溶液の流れが横方向となるように描いている。
電解質循環部5には、電解質供給部4からの電解質水溶液の第1流入口59と、第1リザーバタンク64(第2循環経路60)への電解質水溶液の第1流出口55と、がある。第1流出口55は、電解質水溶液が流れる方向Xにおいて、第1流入口59よりも下流にある。
【0034】
電解質循環部5には、中間室23からの電解質水溶液の第2流入口56が、方向Xにおいて、第1流入口59よりも下流、かつ第1流出口55よりも上流にある。電解質循環部5には、中間室23への電解質水溶液の第2流出口57が、方向Xにおいて、第2流入口56よりも上流にあり、本実施形態では、第1流入口59よりも上流にある。電解質循環部5には、第1リザーバタンク64からの電解質水溶液の第3流入口58が、方向Xにおいて、第1流出口55よりも上流にある、
【0035】
このような各流出、流入口55~59の位置関係により、本実施形態では、電解質循環部5内において、電解質水溶液を良好に撹拌、混合でき、一室型電解槽3に送る電解質水溶液の品質を一室型電解槽3での酸性電解水の生成に適した品質に安定化できる。なお、各流出、流入口55~59は、それぞれ複数あってもよい。各流出、流入口55~59の上記位置は、例示であり、適宜に設定できる。
【0036】
図4は、第1リザーバタンク64の構成の一例を示す図である。
第1リザーバタンク64は、例えばオーバーフロータンクであり、水位が設定値に至ると、余剰の電解質水溶液を排出口611から排出する。第1リザーバタンク64内には、排出口611よりも高い位置に、電解質循環部5からの電解質水溶液の不図示の供給口がある。第1リザーバタンク64内には、例えば配管61の一部を構成するチューブが差し込まれる。ポンプ62の駆動により、第1リザーバタンク64内の電解質水溶液がチューブに吸い上げられ、配管61により電解質循環部5へ送られる。同様に、第1リザーバタンク64内には、例えば、第1リザーバタンク64と第2リザーバタンク39とを接続する配管73の一部を構成するチューブが差し込まれる。第2リザーバタンク39の下流にあるポンプ34の駆動により、第1リザーバタンク64内の電解質水溶液がチューブに吸い上げられ、配管73により第2リザーバタンク39へ送られる。
【0037】
第2リザーバタンク39も、例えばオーバーフロータンクであり、第1リザーバタンク64と同様の構成を有していてもよい。この場合、第2リザーバタンク39には、電解質水溶液を一室型電解槽3へ送る配管74の一部を構成するチューブが差し込まれる。ポンプ34の駆動により第2リザーバタンク39内の電解質水溶液が該チューブに吸い上げられ、配管74によりファインバブル生成器7へ送られる。
【0038】
図5は、ファインバブル生成器7の構成の一例を示す図である。
ファインバブル生成器7では、ポンプ34から圧送される電解質水溶液がキャビテーションノズル71に送られる。キャビテーションノズル71は、流路の急激な収縮部および拡大部の作用により、電解質水溶液にキャビテーション現象を生じさせ、電解質水溶液に溶存するガスをファインバブルとして電解質水溶液中に析出させる。ファインバブルを含有する電解質水溶液は、キャビテーションノズル71から吐出口72を介して吐出され、一室型電解槽3に送られる。ファインバブル生成器7は、以下の(1)~(4)等の適宜の方式によりファインバブルを生成してもよい。例えば、(1)電解質水溶液中に外気等の気体を吸引し、または溶存する気体を析出させ、気体を機械的高速回転体によって粉砕する方式、(2)電解質水溶液中に外気等の気体を吸引し、または溶存する気体を析出させ、水流を高速回転させることで気体を旋回裁断する方式、(3)電解質水溶液中に外気等の気体を吸引し、または溶存する気体を析出させ、気泡を超音波によって分断する方式、(4)電解質水溶液を加圧して気体を飽和状態まで溶解させ、飽和溶液を急減圧する加圧溶解方式がある。
【0039】
第1リザーバタンク64より、第2リザーバタンク39への電解質水溶液の供給は、以下のとおり、構成しても良い。
図6は、電解水生成装置1Aの構成を示す図である。
電解水生成装置1Aでは、第1リザーバタンク64の下流、かつ第2リザーバタンク39の上流(配管73)にポンプ92(第3ポンプ)が設けられている。ポンプ92は、プロセッサの制御下にある。電解水生成装置1Aでは、第1リザーバタンク64のすぐ下流にあるポンプ92が、第1リザーバタンク64から電解質水溶液を吸い出して第2リザーバタンク39に送るので、第2リザーバタンク39への電解質水溶液の供給が容易である。電解水生成装置1Aの他の構成は、電解水生成装置1と同様である。
【0040】
図7は、電解水生成装置1Bの構成を示す図である。
第2循環経路60において、ポンプ62の下流、かつ電解質循環部5の上流に開閉機構93(第1開閉機構)が設けられている。開閉機構93は、例えば電磁弁であり、プロセッサの制御下にあり、電解質水溶液を流通させたり、電解質水溶液を遮断したりする。第2循環経路60におけるポンプ62の下流、かつ開閉機構93の上流に、分岐経路70の配管75の一端が接続している。この配管75により、第2循環経路60と第2リザーバタンク39とが接続されている。分岐経路70において、第2リザーバタンク39の上流には、開閉機構94(第2開閉機構)が設けられている。開閉機構94は、例えば電磁弁であり、プロセッサの制御下にあり、電解質水溶液を流通させたり、電解質水溶液を遮断したりする。電解水生成装置1Bの他の構成は、電解水生成装置1と同様である。
【0041】
電解水生成装置1Bは、一室型電解槽3に電解質水溶液を送る前には、第2循環経路60の開閉機構93を空けるとともに、分岐経路70の開閉機構93を閉じ、第1、第2循環経路50,60で循環する電解質水溶液が分岐経路70に流れていかないようにする。電解水生成装置1Bは、このようにして所定の時間、三室型電解槽2への電解質水溶液の循環を繰り返すことで、第1循環経路50を流れる電解質水溶液を十分に撹拌して品質を安定させる。その後、電解水生成装置1Bは、一室型電解槽3に電解質水溶液を送るが、この際、第2循環経路60を開閉機構93により遮断するとともに、分岐経路70を開閉機構94により開けることで、ポンプ62により第1リザーバタンク64から吸い出した電解質水溶液を、第2循環経路60および分岐経路70を介して第2リザーバタンク39に送る。電解水生成装置1Bでも、第1リザーバタンク64のすぐ下流にあるポンプ62を利用して第1リザーバタンク64から電解質水溶液を吸い出すので、第2リザーバタンク39への電解質水溶液の供給が容易である。電解水生成装置1Bでは、第2循環経路60用のポンプ62を、第2リザーバタンク39への電解質水溶液の送出用にも利用するので、ポンプの設置台数を抑えつつ、第2リザーバタンク39への電解質水溶液の供給を容易にできる。
【0042】
本発明は、その特徴から逸脱することなく、実施形態で実施できる。実施形態、変形例、効果は単なる例示であり、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。実施形態および変形例の特徴、構造は、追加でき、また代替の構成を得るために様々な方法で組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0043】
1,1A,1B…電解水生成装置、3…一室型電解槽、4…電解質供給部、5…電解質循環部、7…ファインバブル生成器、21…カソード室、22…アノード室、23…中間室、50…第1循環経路、60…第2循環経路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7