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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025019400
(43)【公開日】2025-02-07
(54)【発明の名称】柱梁接合構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/30 20060101AFI20250131BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20250131BHJP
【FI】
E04B1/30 K
E04B1/58 505P
E04B1/58 507P
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023122999
(22)【出願日】2023-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】林 智之
(72)【発明者】
【氏名】日向 大樹
(72)【発明者】
【氏名】久保田 淳
(72)【発明者】
【氏名】羽田 尚広
(72)【発明者】
【氏名】山元 雄亮
(72)【発明者】
【氏名】服部 恭典
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA04
2E125AA14
2E125AB01
2E125AB12
2E125AC02
2E125AC04
2E125AC15
2E125AG03
2E125AG04
2E125AG32
2E125BE10
2E125CA82
(57)【要約】
【課題】耐力および剛性を高めるとともに、高い耐力および高い剛性を有する構造を効率よく構築できる柱梁接合構造を提供する。
【解決手段】一実施形態に係る柱梁接合構造は、鉄筋コンクリート柱2の側面部に鉄骨梁3Bが交差して接合される柱梁接合構造である。鉄骨梁3Bは、鉛直方向に延在するウェブ3fと、ウェブ3fの下端において水平方向に延在する下フランジ3gと、ウェブ3fの上端において水平方向に延在する上フランジ3hとを有する。柱梁接合構造1は、鉄筋コンクリート柱2の内部において、ウェブ3fの側面部、上フランジ3hの下面、および下フランジ3gの上面に接合されている補強部材5を備える。補強部材5は、鉄骨梁3Bが延在する方向である延在方向に補強部材5を貫通する貫通孔6を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリート柱の側面部に鉄骨梁が交差して接合される柱梁接合構造であって、
前記鉄骨梁は、鉛直方向に延在するウェブと、前記ウェブの下端において水平方向に延在する下フランジと、前記ウェブの上端において水平方向に延在する上フランジとを有し、
前記鉄筋コンクリート柱の内部において、前記ウェブの側面部、前記上フランジの下面、および前記下フランジの上面に接合されている補強部材を備え、
前記補強部材は、前記鉄骨梁が延在する方向である延在方向に前記補強部材を貫通する貫通孔を有する、
柱梁接合構造。
【請求項2】
前記延在方向に直交する断面において、前記補強部材は、前記ウェブの側面部と、前記上フランジの下面と、前記下フランジの上面とによって画成された領域から外方に突出している、
請求項1に記載の柱梁接合構造。
【請求項3】
前記貫通孔は、前記延在方向に直交する断面において、前記ウェブの側面部と、前記上フランジの下面と、前記下フランジの上面とによって画成された領域の外部に形成されている、
請求項1または請求項2に記載の柱梁接合構造。
【請求項4】
前記貫通孔は、前記延在方向に直交する断面において、前記ウェブの側面部と、前記上フランジの下面と、前記下フランジの上面とによって画成された領域の内部に形成されている、
請求項1または請求項2に記載の柱梁接合構造。
【請求項5】
前記貫通孔は、前記延在方向に直交する断面において、前記ウェブの側面部と、前記上フランジの下面と、前記下フランジの上面とによって画成された領域の外縁にまたがる位置に形成されている、
請求項1または請求項2に記載の柱梁接合構造。
【請求項6】
前記延在方向に沿って並ぶ複数の前記補強部材を備える、
請求項1または請求項2に記載の柱梁接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、鉄筋コンクリート柱の側面部に鉄骨梁が接合される柱梁接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、鉄筋コンクリート部材と鉄骨部材の接合構造が記載されている。鉄骨部材は、フランジおよびウェブを有する。鉄骨部材の端部は鉄筋コンクリート部材に埋め込まれ、当該端部におけるフランジおよびウェブには孔が形成されている。ウェブに形成された孔は、鉄骨部材の端部から0.3×鉄骨部材の埋め込み長さの範囲内に設けられる。フランジに形成された孔は、鉄骨部材が埋め込まれる鉄筋コンクリート部材のコンクリートフェイス位置から所定距離だけ離隔した位置に設けられる。フランジに形成された孔は、鉄骨部材の端部において三角形分布を仮定した曲げモーメントに対し、鉄骨部材位置までの曲げ耐力が大きくなるように設けられている。
【0003】
特許文献2には、RCS造柱梁接合構造が記載されている。RCS造柱梁接合構造は、鉄筋コンクリート造の柱と、上下にフランジを有する鉄骨梁とを接合する。鉄骨梁の端部または中間部が柱内に埋め込まれる。鉄骨梁における柱内に埋め込まれる部分には、フランジの反ウェブ側の面に位置する孔あき鋼板が設けられる。
【0004】
特許文献3には、建築物の仕口接合構造が記載されている。仕口接合構造では、鉄筋コンクリート柱と鉄骨梁とが建築物の柱-梁接合部において接合されている。鉄骨梁は、フランジおよびウェブを有し、柱を貫通している。柱-梁接合部は、鉄骨梁のフランジの幅と同じ幅を有するスチフナプレートを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-31011号公報
【特許文献2】特開2011-106108号公報
【特許文献3】特開平7-207752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、柱梁接合構造では、耐力および剛性を高めることが求められる。さらに、高い耐力および高い剛性を有する柱梁接合構造を効率よく構築できることが求められる。本開示は、耐力および剛性を高めるとともに、高い耐力および高い剛性を有する構造を効率よく構築できる柱梁接合構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る柱梁接合構造は、鉄筋コンクリート柱の側面部に鉄骨梁が交差して接合される柱梁接合構造である。鉄骨梁は、鉛直方向に延在するウェブと、ウェブの下端において水平方向に延在する下フランジと、ウェブの上端において水平方向に延在する上フランジとを有する。柱梁接合構造は、鉄筋コンクリート柱の内部において、ウェブの側面部、上フランジの下面、および下フランジの上面に接合されている補強部材を備える。補強部材は、鉄骨梁が延在する方向である延在方向に補強部材を貫通する貫通孔を有する。
【0008】
この柱梁接合構造では、鉄筋コンクリート柱の側面部に鉄骨梁が接合され、鉄骨梁はウェブと、下フランジと、上フランジとを有する。柱梁接合構造は、鉄筋コンクリート柱の内部に位置する補強部材を備える。この補強部材によって柱の内部に位置する柱と梁の接合部分を補強することができる。補強部材は、ウェブの側面部、上フランジの下面、および下フランジの上面に接合されている。したがって、柱の内部においてウェブの側面部、上フランジの下面、および下フランジの上面に接合された補強部材が設けられるので、柱と梁の接合部分における耐力および剛性を高めることができる。補強部材は、鉄骨梁の延在方向に補強部材を貫通する貫通孔を有する。したがって、補強部材において応力を効率よく伝達させることができるので、さらなる耐力の向上に寄与する。さらに、ウェブの側面部、上フランジの下面、および下フランジの上面に補強部材を接合させればよいので、高い耐力、および高い剛性を有する構造を効率よく構築することができる。
【0009】
(2)上記(1)では、当該延在方向に直交する断面において、補強部材は、ウェブの側面部と、上フランジの下面と、下フランジの上面とによって画成された領域から外方に突出していてもよい。この場合、補強部材が当該領域から外方に突出するように鉄骨梁に接合されることにより、耐力および剛性のさらなる向上が可能となる。
【0010】
(3)上記(1)または(2)では、貫通孔は、当該延在方向に直交する断面において、ウェブの側面部と、上フランジの下面と、下フランジの上面とによって画成された領域の外部に形成されていてもよい。
【0011】
(4)上記(1)または(2)では、貫通孔は、当該延在方向に直交する断面において、ウェブの側面部と、上フランジの下面と、下フランジの上面とによって画成された領域の内部に形成されていてもよい。
【0012】
(5)上記(1)または(2)では、貫通孔は、当該延在方向に直交する断面において、ウェブの側面部と、上フランジの下面と、下フランジの上面とによって画成された領域の外縁にまたがる位置に形成されていてもよい。
【0013】
(6)上記(1)から(5)のいずれかにおいて、当該延在方向に沿って並ぶ複数の補強部材を備えてもよい。この場合、鉄筋コンクリート柱の内部において鉄骨梁の延在方向に沿って並ぶ複数の補強部材が設けられるので、柱と梁の接合部分をさらに補強できる。したがって、柱と梁の接合部分における耐力および剛性をさらに高めることができる。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、耐力および剛性を高めるとともに、高い耐力および高い剛性を有する構造を効率よく構築できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態に係る柱梁接合構造の外観を示す斜視図である。
図2図1の柱梁接合構造における柱と梁の接合部分を示す側面図である。
図3図2のA-A線断面図である。
図4】(a)、(b)、(c)および(d)は、実施形態に係る柱梁接合構造の構築方法を示す図である。
図5】変形例に係る柱梁接合構造における柱と梁の接合部分を示す側面図である。
図6】(a)は、変形例に係る柱梁接合構造における補強部材および鉄骨梁を示す断面図である。(b)は、さらなる変形例に係る柱梁接合構造における補強部材および鉄骨梁を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、図面を参照しながら本開示に係る柱梁接合構造の実施形態について説明する。図面の説明において同一または相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。図面は、理解の容易化のため、一部を簡略化または誇張して描いている場合があり、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
【0017】
図1は、第1実施形態に係る柱梁接合構造1の外観を示す斜視図である。図1に示されるように、柱梁接合構造1は、鉄筋コンクリート柱2と、鉄筋コンクリート柱2から第1方向D1に沿って延びる鉄骨梁3Aと、鉄筋コンクリート柱2から第1方向D1に交差する第2方向D2に沿って延びる鉄骨梁3Bとを有する。例えば、鉄骨梁3Aおよび鉄骨梁3BはH形鋼である。
【0018】
鉄筋コンクリート柱2は、第1方向D1および第2方向D2の双方に交差する第3方向D3に沿って延在している。例えば、第1方向D1は水平方向であり、第2方向D2は水平方向であってかつ第1方向D1に直交する方向である。例えば、第3方向D3は、鉛直方向である。鉄筋コンクリート柱2は、第1方向D1および第3方向D3の双方に延在する側面部2bと、第2方向D2および第3方向D3の双方に延在する側面部2cとを有する。本実施形態において、「側面部」は、水平方向を向く面を示している。
【0019】
鉄骨梁3Aは側面部2cに接合されており、鉄骨梁3Bは側面部2bに接合されている。例えば、柱梁接合構造1は、第1方向D1に沿って並ぶ一対の鉄骨梁3Aを有する。例えば、平面視において、鉄筋コンクリート柱2から延びる一対の鉄骨梁3A、および鉄筋コンクリート柱2から延びる一対の鉄骨梁3Bは十字状を呈する。
【0020】
しかしながら、鉄骨梁3Aの数、および鉄骨梁3Bの数は2本でなくてもよく、鉄骨梁3Aの数、および鉄骨梁3Bの数の少なくともいずれかが1本であってもよい。この場合、平面視において、鉄筋コンクリート柱2から延びる鉄骨梁3A,3Bは、T字状またはL字状を呈する。
【0021】
例えば、鉄筋コンクリート柱2は、鉄骨梁3A,3Bが接合される接合部分2dと、接合部分2dよりも下方に位置する下方延在部2fと、接合部分2dよりも上方に延在する上方延在部2gとを有する。鉄骨梁3A,3Bは接合部分2dから第1方向D1および第2方向D2に沿って延び出している。
【0022】
例えば、鉄骨梁3Aは、鉛直方向に延在するウェブ3bと、ウェブ3bの下端において水平方向に延在する下フランジ3cと、ウェブ3bの上端において水平方向に延在する上フランジ3dとを有する。ウェブ3bは、第1方向D1および第3方向D3の双方に沿って延在するとともに第2方向D2に厚みを有する。下フランジ3cおよび上フランジ3dは、第1方向D1および第2方向D2の双方に延在するとともに第3方向D3に厚みを有する。
【0023】
例えば、鉄骨梁3Bは、鉛直方向に延在するウェブ3fと、ウェブ3fの下端において水平方向に延在する下フランジ3gと、ウェブ3fの上端において水平方向に延在する上フランジ3hとを有する。ウェブ3fは、第2方向D2および第3方向D3の双方に沿って延在するとともに第1方向D1に厚みを有する。下フランジ3gおよび上フランジ3hは、第1方向D1および第2方向D2の双方に延在するとともに第3方向D3に厚みを有する。
【0024】
図2は、鉄骨梁3Bと鉄筋コンクリート柱2の接合部分2dを示す側面図である。図2に示されるように、例えば、接合部分2dにおいて、鉄骨梁3Bは、コンクリートCに埋設されているとともに鉄筋コンクリート柱2を貫通している。この場合、接合部分2dにおいて鉄骨梁3Aは分断されており、接合部分2dから一対の鉄骨梁3Aが延び出している。
【0025】
柱梁接合構造1は、鉄筋コンクリート柱2の内部に位置する補強部材5を備える。例えば、補強部材5は、鉄骨梁3Bの側面部に固定されている。一例として、補強部材5は予め工場において鉄骨梁3Bに固定される。例えば、柱梁接合構造1は複数の補強部材5を備えており、複数の補強部材5は第2方向D2に沿って並んでいる。
【0026】
例えば、複数の補強部材5の大きさ(厚さ、または板厚直交方向の大きさ)は、互いに同一である。しかしながら、複数の補強部材5の大きさは、互いに同一でなくてもよい。この場合、互いに異なる大きさを有する複数の補強部材5が鉄筋コンクリート柱2の内部に配置されてもよい。このように補強部材5の大きさは適宜変更可能である。
【0027】
例えば、鉄筋コンクリート柱2の幅方向の中央を通ると共に第3方向D3に沿って延在する基準線Lに対して、一組の補強部材5が互いに対称となる位置に配置されている。この場合、一対の補強部材5のうちの一方の補強部材5から基準線Lまでの距離は、一対の補強部材5のうちの他方の補強部材5から基準線Lまでの距離と同一である。本実施形態において、「同一」とは、厳密に同一である場合だけでなく、多少異なる場合であっても同一である場合と同様の作用効果を奏する場合(例えば略同一である場合)も含まれる。
【0028】
図3は、図2のA-A線断面図である。図2および図3に示されるように、補強部材5は平板状を呈する。一例として、補強部材5は鋼板である。補強部材5は、鉄筋コンクリート柱2の内部において、ウェブ3fの側面部、上フランジ3hの下面、および下フランジ3gの上面に接合されている。例えば、補強部材5は鉄骨梁3Bのウェブ3f、下フランジ3gおよび上フランジ3hに溶接によって固定されている。
【0029】
例えば、柱梁接合構造1は、第2方向D2に直交する断面において、第1方向D1に沿って並ぶ一対の補強部材5を有する。一対の補強部材5のうちの一方は鉄骨梁3Bのウェブ3fの一方側(例えば左側)に固定されており、一対の補強部材5のうちの他方は鉄骨梁3Bのウェブ3fの他方側(例えば右側)に固定されている。
【0030】
第2方向D2に直交する断面において、補強部材5は、ウェブ3fの側面部と、上フランジ3hの下面と、下フランジ3gの上面とによって画成された領域Aから外方に突出している。すなわち、補強部材5の第1方向D1の端部は、鉄骨梁3Bの第1方向D1の端部から突出している。
【0031】
例えば、補強部材5は、第1上面5bと、第2上面5cと、側面5dと、第1下面5fと、第2下面5eとを有する。第1上面5bは、上フランジ3hの下面に固定されており、第1方向D1に延在している。第2上面5c、側面5dおよび第2下面5eは、領域Aから突出する部位である。第2上面5cは、第1上面5bの延長上に設けられ、第1方向D1に沿って延在している。
【0032】
第1下面5fは、下フランジ3gの上面に固定されており、第1方向D1に延在している。第2下面5eは、第1下面5fの延長上に設けられ、第1方向D1に沿って延在している。側面5dは、第2上面5cから第2下面5eまで延びており、第3方向D3に沿って延在している。
【0033】
補強部材5は、鉄骨梁3Bが延在する方向である第2方向D2に補強部材5を貫通する貫通孔6を有する。例えば、第2方向D2に沿って見たときにおける貫通孔6の形状は円形状である。しかしながら、貫通孔6の形状は、長円形状、または楕円形状であってもよい。さらに、貫通孔6の形状は、三角形状または四角形状等の多角形状であってもよい。このように貫通孔6の形状は適宜変更可能である。
【0034】
貫通孔6は、補強部材5をその板厚方向に貫通している。補強部材5はコンクリートCに埋設されている。例えば、補強部材5は、鉄筋コンクリート柱2の内部においてコンクリートCに埋設される孔あき鋼板ジベルである。例えば、孔あき鋼板ジベルである補強部材5と鉄骨梁3Bは溶接によって一体化されている。
【0035】
貫通孔6は、第2方向D2に直交する断面において、ウェブ3fの側面部と、上フランジ3hの下面と、下フランジ3gの上面とによって画成された領域Aの外部に形成されている。例えば、補強部材5は複数の貫通孔6を有する。複数の貫通孔6は、第3方向D3に沿って並んでいる。
【0036】
例えば、複数の貫通孔6の大きさは、互いに同一である。しかしながら、複数の貫通孔6の大きさは、互いに異なっていてもよい。一例として、直径が大きい貫通孔6と直径が小さい貫通孔6とが交互に並んでいてもよい。このように、貫通孔6の大きさおよび配置態様は適宜変更可能である。
【0037】
図3の例とは異なり、第1方向D1に沿って複数の貫通孔6が並んでいてもよい。一例として、第3方向D3に沿って並ぶ貫通孔6の数は、第1方向D1に沿って並ぶ貫通孔6の数よりも多い。例えば、第3方向D3に沿って並ぶ貫通孔6の数は4であり、第1方向D1に沿って並ぶ貫通孔6の数は1である。この場合、補強部材5は4個の貫通孔6を有する。
【0038】
次に、柱梁接合構造1の構築方法について図4(a)~図4(d)を参照しながら説明する。以下では、現場打ちによる柱梁接合構造1の構築方法の例について説明する。まず、鉄筋コンクリート柱2の下方延在部2fを構築する。また、鉄骨梁3Bに補強部材5を固定させておく。例えば、鉄骨梁3Bのウェブ3f、下フランジ3gおよび上フランジ3hによって画成された領域Aに補強部材5を挿入し、ウェブ3f、下フランジ3gおよび上フランジ3hに補強部材5を溶接によって固定する。
【0039】
例えば、鉄骨梁3Bの延在方向に沿って並ぶ2つの補強部材5を鉄骨梁3Bに溶接によって固定する。その後、図4(b)に示されるように、下方延在部2fの天端面に鉄骨梁3Bを載せる。例えば、鉄骨梁3Aおよび鉄骨梁3Bは事前に互いに接合されており、接合された鉄骨梁3Aおよび鉄骨梁3Bが下方延在部2fの天端面に載せられる。鉄骨梁3Aの当該天端面に載せられる部分に単数または複数の補強部材5が固定されていてもよい。なお、図4(b)~図4(d)では、簡略化のため鉄骨梁3Aの図示を省略している。
【0040】
その後、図4(c)に示されるように、下方延在部2fの天端面における鉄骨梁3A,3Bが載せられた部分を囲むように型枠を設置してコンクリートCを当該型枠内に打設することによって鉄筋コンクリート柱2の接合部分2dを構築する。接合部分2dのコンクリートCが硬化した後には、上記の型枠を外す。そして、図4(d)に示されるように、接合部分2dの上に上方延在部2gを構築する。以上の工程を経て柱梁接合構造1の構築が完了する。
【0041】
次に、本実施形態に係る柱梁接合構造1から得られる作用効果について説明する。柱梁接合構造1では、鉄筋コンクリート柱2の側面部2cに鉄骨梁3Bが接合され、鉄骨梁3Bはウェブ3fと、下フランジ3gと、上フランジ3hとを有する。柱梁接合構造1は、鉄筋コンクリート柱2の内部に位置する補強部材5を備える。補強部材5によって鉄筋コンクリート柱2の内部に位置する鉄筋コンクリート柱2と鉄骨梁3Bの接合部分2dを補強することができる。
【0042】
補強部材5は、ウェブ3fの側面部、上フランジ3hの下面、および下フランジ3gの上面に接合されている。したがって、鉄筋コンクリート柱2の内部においてウェブ3fの側面部、上フランジ3hの下面、および下フランジ3gの上面に接合された補強部材5が設けられるので、鉄筋コンクリート柱2と鉄骨梁3Bの接合部分2dにおける耐力および剛性を高めることができる。すなわち、補強部材5が設けられることにより、接合部分2dのコンクリートCとのせん断応力の伝達によって接合部分2dの耐力および剛性を向上させることができる。
【0043】
図3に示されるように、本実施形態において、補強部材5は、鉄骨梁3Bの延在方向に補強部材5を貫通する貫通孔6を有する。したがって、補強部材5において応力を効率よく伝達させることができるので、さらなる耐力の向上に寄与する。さらに、ウェブ3fの側面部、上フランジ3hの下面、および下フランジ3gの上面に補強部材5を接合させればよいので、高い耐力、および高い剛性を有する構造を効率よく構築することができる。
【0044】
本実施形態では、当該延在方向に直交する断面において、補強部材5は、ウェブ3fの側面部と、上フランジ3hの下面と、下フランジ3gの上面とによって画成された領域Aから外方に突出している。この場合、補強部材5が領域Aから外方に突出するように鉄骨梁3Bに接合されることにより、耐力および剛性のさらなる向上が可能となる。
【0045】
図2に示されるように、本実施形態において、柱梁接合構造1は、当該延在方向に沿って並ぶ複数の補強部材5を備える。この場合、鉄筋コンクリート柱2の内部において鉄骨梁3Bの延在方向(第2方向D2)に沿って並ぶ複数の補強部材5が設けられるので、鉄筋コンクリート柱2と鉄骨梁3Bの接合部分2dをさらに補強できる。したがって、鉄筋コンクリート柱2と鉄骨梁3Bの接合部分2dにおける耐力および剛性をさらに高めることができる。
【0046】
本実施形態において、柱梁接合構造1は、接合部分2dのコンクリートCの内部において鉄骨梁3Bの延在方向に沿って並ぶ一対の補強部材5を備える。例えば、鉄骨梁3Bに曲げモーメントが発生したときに、一対の補強部材5のうちの一方に上方へのせん断力が働き、一対の補強部材5のうちの他方に下方へのせん断力が働く。さらに、本実施形態に係る柱梁接合構造1では、剛性が高い孔あき鋼板ジベルである補強部材5によって応力を効率よく伝達させることができる。
【0047】
次に、変形例に係る柱梁接合構造11について図5を参照しながら説明する。柱梁接合構造11の一部の構成は、前述した柱梁接合構造1の一部の構成と同一である。よって、以下の説明では、柱梁接合構造1の構成と重複する説明を同一の符号を付して適宜省略する。
【0048】
柱梁接合構造11は、鉄筋コンクリート柱2を貫通する鉄骨梁3Bに代えて、鉄筋コンクリート柱2から片側(第2方向D2)に延び出す鉄骨梁13を有する。鉄骨梁13は、その端部が鉄筋コンクリート柱2に保持されている。鉄骨梁13の側面部に補強部材5が固定されている。例えば、補強部材5は、接合部分2dの補強リブプレート(FBP:Face Bearing Plate)として機能する。
【0049】
柱梁接合構造11において補強部材5が固定されている位置は、例えば、柱梁接合構造1において補強部材5が固定されている位置と同一である。柱梁接合構造11からは柱梁接合構造1と同様の作用効果が得られる。
【0050】
次に、変形例に係る補強部材15について図6(a)を参照しながら説明する。補強部材15は、補強部材5に代えて、または補強部材5とともに鉄骨梁3Bの側面部に接合される。補強部材15は、貫通孔6の位置が補強部材5とは異なる。貫通孔6は、鉄骨梁3Bの延在方向に直交する断面において、ウェブ3fの側面部と、上フランジ3hの下面と、下フランジ3gの上面とによって画成された領域Aの外縁A1にまたがる位置に形成されている。一例として、貫通孔6は、その中心が外縁A1に位置するように配置されている。しかしながら、貫通孔6は、その中心が外縁A1からずれた位置となるように配置されていてもよい。
【0051】
さらなる変形例に係る補強部材25について図6(b)を参照しながら説明する。補強部材25は、補強部材5に代えて、または補強部材5(もしくは補強部材15)とともに鉄骨梁3Bの側面部に固定される。貫通孔6は、鉄骨梁3Bの延在方向に直交する断面において、ウェブ3fの側面部と、上フランジ3hの下面と、下フランジ3gの上面とによって画成された領域Aの内部に形成されている。
【0052】
なお、図6(b)では、全ての貫通孔6が領域Aの内部に配置されている例を示している。しかしながら、複数の貫通孔6のうちのいずれかが領域Aの外部に形成されていてもよいし、複数の貫通孔6のうちのいずれかが領域Aの外縁A1にまたがる位置に形成されていてもよい。以上のように補強部材における貫通孔6の位置は適宜変更可能である。
【0053】
以上、本開示に係る柱梁接合構造の実施形態および種々の変形例について説明した。しかしながら、本開示に係る柱梁接合構造は、特許請求の範囲に記載した要旨を変更しない範囲においてさらに変形されたものであってもよい。すなわち、本開示に係る柱梁接合構造の各部の形状、大きさ、材料、数および配置態様は、上記の要旨の範囲内において適宜変更可能である。
【0054】
例えば、前述した実施形態では、下方延在部2f、鉄骨梁3A、3B、接合部分2d、および上方延在部2gが現場打ちによって構築される柱梁接合構造1の構築方法について説明した。しかしながら、本開示に係る柱梁接合構造1の構築方法では、下方延在部2f、鉄骨梁3A,3B、接合部分2dおよび上方延在部2gの少なくともいずれかがプレキャストによって構築されてもよい。この場合、下方延在部2fが予め工場において製造されてもよい。また、下方延在部2f、鉄骨梁3A、3Bおよび接合部分2dが一体化された構造物が工場において製造されてもよい。この場合、現場では接合部分2dの上に上方延在部2gを構築すればよいので、作業の効率化に寄与する。
【0055】
前述した実施形態では、鉄骨梁3Aおよび鉄骨梁3Bの双方がH形鋼である例について説明した。しかしながら、鉄骨梁3Aおよび鉄骨梁3Bの少なくともいずれかはI形鋼であってもよい。さらに、柱梁接合構造において、鉄骨梁3Aおよび鉄骨梁3Bのいずれかは、RC梁であってもよい。
【0056】
前述した実施形態では、一対の補強部材5を備える柱梁接合構造1について説明した。しかしながら、柱梁接合構造が有する補強部材5の数は、1であってもよいし、3以上であってもよく、特に限定されない。前述した実施形態では、補強部材5に形成された貫通孔6の数が4である例について説明した。しかしながら、貫通孔6の数は、1以上かつ3以下であってもよいし、5以上であってもよい。
【符号の説明】
【0057】
1…柱梁接合構造、2…鉄筋コンクリート柱、2b…側面部、2c…側面部、2d…接合部分、2f…下方延在部、2g…上方延在部、3A,3B…鉄骨梁、3b…ウェブ、3c…下フランジ、3d…上フランジ、3f…ウェブ、3g…下フランジ、3h…上フランジ、5…補強部材、6…貫通孔、11…柱梁接合構造、13…鉄骨梁、15,25…補強部材、A…領域、A1…外縁、C…コンクリート、D1…第1方向、D2…第2方向、D3…第3方向、L…基準線。
図1
図2
図3
図4
図5
図6