(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025019431
(43)【公開日】2025-02-07
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化型組成物及び積層体
(51)【国際特許分類】
C09D 11/101 20140101AFI20250131BHJP
【FI】
C09D11/101
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023123042
(22)【出願日】2023-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(72)【発明者】
【氏名】塚原 将也
(72)【発明者】
【氏名】岡本 真平
【テーマコード(参考)】
4J039
【Fターム(参考)】
4J039AD21
4J039BB01
4J039BE01
4J039CA07
4J039EA04
4J039EA42
4J039EA45
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、優れた硬化性とレベリング性を有し、環境への負荷の小さい生物由来の有機性ワックスを用いた活性エネルギー線硬化型組成物を提供することにある。
【解決手段】
生物由来の有機性ワックスと、(メタ)アクリレート化合物とを含む、活性エネルギー線硬化型組成物であって、生物由来の有機性ワックスの融点が、40℃以上であり、生物由来の有機性ワックスのヨウ素価が、1以上であり、(メタ)アクリレート化合物の比重をA、生物由来の有機性ワックスの比重をBとした時、A-B>0.11である、活性エネルギー線硬化型組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物由来の有機性ワックスと、(メタ)アクリレート化合物とを含む、活性エネルギー線硬化型組成物であって、
生物由来の有機性ワックスの融点が、40℃以上であり、
生物由来の有機性ワックスのヨウ素価が、1以上であり、
(メタ)アクリレート化合物の比重をA、生物由来の有機性ワックスの比重をBとした時、
A-B>0.11
である、活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項2】
活性エネルギー線硬化型組成物の分散度が、25μm以下である、請求項1記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項3】
生物由来の有機性ワックスの含有量が、活性エネルギー線硬化型組成物全量中0.1~10質量%である、請求項1記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項4】
生物由来の有機性ワックスの比重が、1.00以下である、請求項1記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項5】
(メタ)アクリレート化合物が、分子中に(メタ)アクリロイル基を2個以上有する化合物を含む、請求項1記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項6】
さらに樹脂を含む、請求項1記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項7】
基材と、請求項1~6いずれかに記載の活性エネルギー線硬化型組成物の硬化物の層とを有する積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた硬化性とレベリング性を有する活性エネルギー線硬化型組成物及び積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
活性エネルギー線硬化型インキは、酸化重合型や浸透乾燥型、熱風乾燥型の油性インキと比較して、瞬時に硬化するという利便性と、強い硬化皮膜を形成することが可能であるという特性、また石油系の揮発性化合物を含まないノンVOCという特性から、飲料や食品包装用途、医薬品包装用途、化粧品包装用途、また一般的な紙器に至るまで、パッケージ印刷産業の分野で広く使用されている。このため、基材や印刷層を保護するための高い塗膜耐性や、美粧性を持たすための光沢、加工性などが要求される。
【0003】
特に食品包装分野においては活性エネルギー線硬化型インキの理想形として、光重合開始剤を含まず、人体、環境への安全・安心を考慮した電子線(以下、「EB」ともいう)硬化型インキが提案されているが、その初期設備投資の大きさから一般的であるとは言い難く、紫外線(以下、「UV」ともいう)硬化型インキが市場では一般的である。
【0004】
近年では、省電力でありオゾンと熱の発生を抑制するUV-LED光源を使用したLED硬化型システムや、熱の発生する赤外領域とオゾンの発生する紫外領域を排除したメタルハライドランプ1灯を使用した省エネUVシステム、また従来のUVランプの灯数を通常の3~4灯から1灯に削滅した省エネUVシステムなどへ徐々に移行しつつあることが知られている。
【0005】
これらの新しいシステムに対応するために設計された省エネUV硬化型インキは、商業印刷において、一般の油性インキからの切り替えが近年増加する傾向であるが、一方で、省エネUV硬化型インキは印刷適性、印刷品質など、一般油性インキと同等の性能が求められている。
【0006】
一方で、印刷インキにおいても化石資源由来成分の低減が望まれている。印刷インキ工業連合会においても、環境負荷低減の活動として、インキグリーンマーク(以下、IGマークと称する)制度を制定し、インキ組成物に含まれる成分のうちのバイオマスに由来する成分の比率を指標とし、その比率に応じて環境対応の度合いをランク付けする活動を行っている。また、一般社団法人日本有機資源協会によるバイオマスマーク制度などもある。これらの制度は、循環型社会の構築を目的として、インキ組成物に含まれる化石資源由来成分からバイオマス由来成分への代替を促進している。バイオマスとは、二酸化炭素と水から光合成された植物、生物等から得られる有機化合物であり、それを利用することにより、再度二酸化炭素と水になる持続的に再生可能な資源のことである。
【0007】
特許文献1には、25℃で液状のワックスを使用した活性エネルギー線硬化型組成物が開示されている。しかしながら、液状のワックスの使用は、積層体としてのブロッキング性が劣る、保存安定性が劣化するという課題があった。
【0008】
特許文献2には、ライスワックスと、バインダー樹脂と、植物油類とを含有した油性ヒートセット型平版印刷組成物が開示されている。しかしながら、油性ヒートセット型平版印刷組成物は、活性エネルギー線硬化型組成物と比較すると硬化手法の特性により耐摩擦性に課題があった。また、ライスワックスを含む生物由来の有機性ワックスは油性成分であるため、油性インキとの相性は良好であるが、植物油類等を含まず、極性の高い(メタ)アクリレート化合物等を多く含む活性エネルギー線硬化型組成物への使用は、分離等の懸念から避けられてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2016-104831号公報
【特許文献2】特開2015-183079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、優れた硬化性とレベリング性を有し、環境への負荷の小さい生物由来の有機性ワックス成分を利用した活性エネルギー線硬化型組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す活性エネルギー線硬化型インキ組成物により、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
生物由来の有機性ワックスと、(メタ)アクリレート化合物とを含む、活性エネルギー線硬化型組成物であって、
生物由来の有機性ワックスの融点が、40℃以上であり、
生物由来の有機性ワックスのヨウ素価が、1以上であり、
(メタ)アクリレート化合物の比重をA、生物由来の有機性ワックスの比重をBとした時、
A-B>0.11
である、活性エネルギー線硬化型組成物に関する。
【0013】
活性エネルギー線硬化型組成物の分散度が、25μm以下である、上記活性エネルギー線硬化型組成物に関する。
【0014】
生物由来の有機性ワックスの含有量が、活性エネルギー線硬化型組成物全量中0.1~10質量%である、上記活性エネルギー線硬化型組成物に関する。
【0015】
生物由来の有機性ワックスの比重が、1.00以下である、上記活性エネルギー線硬化型組成物に関する。
【0016】
(メタ)アクリレート化合物が、分子中に(メタ)アクリロイル基を2個以上有する化合物を含む、上記の活性エネルギー線硬化型組成物に関する。
【0017】
さらに樹脂を含む、上記活性エネルギー線硬化型組成物に関する。
【0018】
基材と、上記活性エネルギー線硬化型組成物の硬化物の層とを有する積層体に関する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によって、優れた硬化性とレベリング性を有し、環境への負荷の小さい生物由来の有機性ワックス成分を利用した活性エネルギー線硬化型組成物及び積層体を提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0021】
本明細書で使用される用語について説明する。「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイル及び/又はメタアクリロイル(メタクリロイル)を意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及び/又はメタアクリレート(メタクリレート)を意味する。「活性エネルギー線」とは、紫外線、電子線等、照射することによって照射されたものに化学反応等の化学的変化を生じさせ得る性質を有するエネルギー線を意味する。
【0022】
<活性エネルギー線硬化型組成物>
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、生物由来の有機性ワックスと、(メタ)アクリレート化合物とを含み、
生物由来の有機性ワックスの融点が、40℃以上であり、
生物由来の有機性ワックスのヨウ素価が、1以上であり、
(メタ)アクリレート化合物の比重をA、生物由来の有機性ワックスの比重をBとした時、
A-B>0.11
である、活性エネルギー線硬化型組成物である。
【0023】
<生物由来の有機性ワックス>
本発明における生物由来の有機性ワックスは、融点が、40℃以上であり、かつ、ヨウ素価が、1以上であり、
(メタ)アクリレート化合物の比重をA、生物由来の有機性ワックスの比重をBとした時、
A-B>0.11
となるものである。
ヨウ素価が1以上の生物由来の有機性ワックスを使用することで、硬化時にワックスが有する不飽和結合の一部または全部が、(メタ)アクリレート化合物と結合を作ることで高い耐摩擦性を保つ事ができる。
また、融点が40℃以上であることにより高いブロッキング性を保つ事ができる。
また、(メタ)アクリレート化合物の比重と生物由来の有機性ワックスの比重との差がこの範囲になることにより、ワックスの効果が顕著に発現する。これは、比重差がこの範囲となることで、組成物の印刷後にワックス成分が表面側(基材と反対側)に配向するためと考えられる。
【0024】
本発明における生物由来の有機性ワックスとしては、ライスワックス、雪ロウワックス、モクロウワックス、ウルシロウワックス、シュガーケンワックス、ミツワックス、キャンデリラロウワックス、木ロウワックス、及びモンタンワックスがあげられる。これらワックスは単体で用いてもよいし、複数組み合わせて使用してもよい。
中でも、耐摩擦性の効果が特に高くできることから、生物由来の有機性ワックスとして、ライスワックス、雪ロウワックスなる群から選ばれる1種以上を含むことが好ましく、ライスワックスを含むことがより好ましい。
【0025】
本発明における生物由来の有機性ワックスの含有量は、活性エネルギー線硬化型組成物全量の0 .1~10質量%であることが好ましい。生物由来の有機性ワックスの含有量が組成物全量の0 .1~10質量%であることで、耐摩擦性、光沢、印刷適性がいずれも良好となる。生物由来の有機性ワックスの含有量は、より好ましくは組成物全量中1.5~8質量%である。
【0026】
また、本発明における生物由来の有機性ワックスは、有機性ワックスの中でも、活性エネルギー線硬化型組成物に分散しやすいという特徴も有している。
【0027】
<(メタ)アクリレート化合物>
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、(メタ)アクリレート化合物を含む。
本発明における(メタ)アクリレート化合物として好適に用いられる化合物は、分子中に、少なくとも1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物であればよく、モノマー、オリゴマー、ポリマー等の化学形態をもつものが含まれる。(メタ)アクリレート化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0028】
本発明における(メタ)アクリレート化合物は、硬化性の観点から、分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましく、分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート化合物を含むことがより好ましく、分子中に4個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート化合物を含むことが特に好ましい。
【0029】
本発明における(メタ)アクリレート化合物の含有量は、活性エネルギー線硬化型組成物全量中10~95質量%であることが好ましい。
【0030】
本発明における(メタ)アクリレート化合物としては、具体的に、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、β-カルボキシルエチル(メタ)アクリレート、4-tert-ブチルシクロヘキサノール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、アルコキシ化テトラヒドロフルフリルアクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(オキシエチル)(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノール(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンフォルマル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、EO変性(2)ノニルフェノールアクリレート、(2-メチル-2-エチル-1、3-ジオキソラン-4-イル)メチルアクリレート、アクリロイルモルフォリン、N-ビニルカルバゾール、1-ビニルイミダゾール、N-ビニル-2-ピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルホルムアミドなどの分子中に1個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート化合物、
1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(200)ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(300)ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(400)ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(600)ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性(2)1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、PO変性(2)ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、(ネオペンチルグリコール変性)トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、EO変性(4)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性(4)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレートなどの分子中に2個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート化合物、
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性(3)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性(3)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどの分子中に3個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート化合物、
ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートなどの分子中に4個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート化合物、
ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどの分子中に5個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート化合物、
ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの分子中に6個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0031】
また、(メタ)アクリレート化合物としては、脂肪族ウレタンアクリレート、芳香族ウレタンアクリレートなどのウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレートなどを用いることができる。
【0032】
<重合禁止剤>
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、重合禁止剤を添加することができる。これにより高い保存安定性を得る事ができる。
本発明における重合禁止剤としては特に制限はなく、公知のもの用いることができる。具体的には、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、メトキシハイドロキノン、tert-ブチルハイドロキノン、N‐ニトロソフェニルヒドロキシルアミン等が挙げられる。これら重合禁止剤は単体で用いてもよいし、複数組み合わせて使用してもよい。これら重合禁止剤の含有量は活性エネルギー線硬化型組成物全量中0 .01~3質量%であることが好ましい。重合禁止剤の含有量がこの範囲である場合、保存安定性と硬化性とのバランスが良好となる。また、重合禁止剤の含有量は、好ましくは活性エネルギー線硬化型組成物全量中0.03~2質量%であり、0.05~1質量%であることが特に好ましい。
【0033】
<光重合開始剤>
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物には、光重合開始剤を使用することができる。
本発明において使用される光重合開始剤は、一般的に市販される物を使用する事が出来るが、特にアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、ジアルコキシアセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、及びα-ヒドロキシアルキルフェノン系光重合開始剤からなる群から選ばれる1種以上を使用することが好ましい。これら光重合開始剤はそれぞれ単独で使用してもよいし、複数の種類を併用して使用することもできる。
【0034】
アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、ジフェニルアシルフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル―ビス(4-メチルフェニル)フォスフィニルオキサイド、エトキシフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドなどが挙げられる。
【0035】
ジアルコキシアセトフェノン系光重合開始剤としては、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、ジメトキシアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノンなどが挙げられる。
【0036】
ベンゾフェノン系光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0037】
α-ヒドロキシアルキルフェノン系光重合開始剤としては、1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシメトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オンなどが挙げられる。
【0038】
本発明において、光重合開始剤の含有量は、活性エネルギー線硬化型組成物全量中2~15質量%であることが好ましい。光重合開始剤の含有量がこの範囲であると、硬化性と、硬化塗膜の耐摩擦性とが良好となる。光重合開始剤の含有量は、より好ましくは5~15質量%である。ただし、活性エネルギー線としてEBを用いる場合は、光重合開始剤を使用しなくても十分な硬化性が確保できる。
【0039】
<体質顔料>
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、体質顔料を使用することができる。
【0040】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物に用いることができる体質顔料としては、特に制限はなく、公知の体質顔料を用いることができる。具体的には、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、シリカ等が例示できる。
【0041】
体質顔料の含有量は、活性エネルギー線硬化型組成物全量中1~20質量%であることが好ましい。体質顔料の含有量がこの範囲であると、光沢や印刷適性が良好となる。体質顔料の含有量は、より好ましくは2~15質量%である。
【0042】
<着色剤>
本発明活性エネルギー線硬化型組成物は、着色剤を使用することができる。
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物に用いることができる着色剤としては、特に制限はなく、公知の顔料、染料を用いることができる。顔料としては、無機顔料及び有機顔料のいずれも用いることができる。
【0043】
無機顔料としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャネルブラックなどのカーボンブラック類、酸化鉄、酸化チタンなどが挙げられる
【0044】
有機顔料としては、β-ナフトール系、β-オキシナフトエ酸系、β-オキシナフトエ酸系アニリド系、アセト酢酸アニリド系、ピラゾロン系等の溶性アゾ顔料; β-ナフトール系、β-オキシナフトエ酸系アニリド系、アセト酢酸アニリド系モノアゾ、アセト酢酸アニリド系ジスアゾ、ピラゾロン系などの不溶性アゾ顔料;銅フタロシアニンブルー、ハロゲン化(例えば、塩素化、臭素化など)銅フタロシアニンブルー、スルホン化銅フタロシアニンブルー、金属フリーフタロシアニン等のフタロシアニン系顔料;キナクリドン系、ジオキサジン系、スレン系(ピラントロン、アントアントロン、インダントロン、アントラピリミジン、フラバントロン、チオインジゴ系、アントラキノン系、ペリノン系、ペリレン系など)、イソインドリノン系、金属錯体系、キノフタロン系、ジケトピロロピロール系等の多環式顔料及び複素環式顔料;などが挙げられる。
【0045】
更に詳しくは、C.I.カラーインデックスで示すと、黒顔料としては、C.I.Pigment Black 1、6、7、9、10、11、28、26、31などが挙げられる。
【0046】
白顔料としては、C.I.Pigment White 5、6、7、12、28などが挙げられる。
【0047】
黄顔料としては、C.I.Pigment Yellow 1、2、3、12、13、14、16、17、18、24、73、74、75、83、93、95、97、98、100、108、109、110、114、120、128、129、138、139、174、150、151、154、155、167、180、185、213などが挙げられる。
【0048】
青又はシアン顔料としては、C.I.Pigment Blue 1、2、14、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62などが挙げられる。
【0049】
赤又は紅顔料としては、C.I.Pigment RED 1、3、5、19、21、22、31、38、42、43、48:1、48:2、48:3、48:4、48:5、49:1、50、52、53:1、57:1、57:2、58:4、63:1、81、81:1、81:2、81:3、81:4、83、90、104、108、112、114、122、144、146、148、149、150、166、168、169、170、172、173、176、177、178、184、185、187、193、202、209、214、242、254、255、264、266、269、C.I.Pigment Violet 19などが挙げられる。
【0050】
緑顔料としては、C.I.Pigment Green 1、2、3、4、7、8、10、15、17、26、36、45、50などが挙げられる。
【0051】
紫顔料としては、C.I.Pigment Violet 1、2、3、4、5:1、12、13、15、16、17、19、23、25、29、31、32、36、37、39、42などが挙げられる。
【0052】
オレンジ顔料としては、C.I.Pigment Orange 13、16、20、34、36、38、39、43、51、61、63、64、74などが挙げられる。
【0053】
本発明において、着色剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
着色剤の添加量としては、活性エネルギー線硬化型組成物全量中1~60質量%が好ましい。
【0054】
<樹脂>
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、樹脂を含むことができる。
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物に含有される樹脂としては、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース誘導体(例えば、エチルセルロース、酢酸セルロース、ニトロセルロース)、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、アルキッド樹脂、ロジン変性樹脂、石油樹脂、尿素樹脂、ブタジエン-アクリルニトリル共重合体のような合成ゴムなどが挙げられる。さらに、これらの樹脂を変性して使用することもできる。具体的には塩素化、臭素化、アミン変性、カルボン酸変性等が例示できる。
樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物に含有される樹脂としては、硬化性の点からは特にジアリルフタレート樹脂を用いることが好ましく、流動性の点からは特にロジン変性樹脂を含むことが好ましい。
【0056】
<ジアリルフタレート樹脂>
本発明におけるジアリルフタレート樹脂は、ジアリルフタレートモノマーを重合してなる樹脂である。ジアリルフタレート樹脂としては、公知のものを用いることができ、具体的には大阪ソーダ社製ダイソーダップシリーズ(ダイソーダップA、ダイソーダップK)等が挙げられる。ジアリルフタレート樹脂を含むことで、硬化性が向上する。
【0057】
<ロジン変性樹脂>
本発明の樹脂は、ロジン変性樹脂を含むことが特に好ましい。本発明におけるロジン変性樹脂とは、樹脂骨格中に、ロジン由来の骨格を含有する樹脂のことである。ロジン変性樹脂を含むことで、流動性のバランスを保ち、インキ乳化率が向上する。
【0058】
本発明におけるロジン変性樹脂としては、ロジン酸類(a)に含まれる共役二重結合を有する有機酸とα,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物(b)とのディールスアルダー反応によって得られる化合物、ロジン酸類(a)のうち共役二重結合を有さない有機酸、およびその他の有機酸、それぞれにおけるカルボン酸とポリオール(c)との反応によってエステル結合を形成した化合物が有する水酸基と反応しエステル結合を形成したロジン変性樹脂を用いることが好ましい。
【0059】
<ロジン酸類(a)>
本発明におけるロジン変性樹脂を得るために用いるロジン酸類(a)とは、環式ジテルペン骨格を有する一塩基酸を指す。ロジン酸、不均化ロジン酸、水添ロジン酸、または前記化合物のアルカリ金属塩等を表し、具体的には、共役二重結合を有するアビエチン酸、およびその共役化合物である、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、レボピマル酸や、共役二重結合を有さないピマル酸、イソピマル酸、サンダラコピマル酸、およびデヒドロアビエチン酸等が挙げられる。またこれらのロジン酸類(a)を含有する天然樹脂として、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等が挙げられる。
【0060】
本発明におけるロジン変性樹脂を得るために用いるロジン酸類(a)の配合量は、樹脂原料の全配合量を基準として20~70質量%であることが好ましく、30~60質量%であることがより好ましい。ロジン酸類(a)の配合量が20質量%以上であれば、その樹脂を含む活性エネルギー線硬化型コーティングニスの光沢性が良好になり、配合量が70質量%以下であると、活性エネルギー線硬化型コーティングニスの耐摩擦性が良好となる。
【0061】
<α,β-不飽和カルボン酸またはその酸無水物(b)>
本発明におけるロジン変性樹脂を得るために用いるα,β-不飽和カルボン酸またはその酸無水物(b)としては、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸等およびこれらの酸無水物が例示される。ロジン酸類(a)との反応性を鑑みると、好ましくはマレイン酸またはその酸無水物である。
【0062】
本発明における、α,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物(b)の配合量は、ロジン酸類(a)に対して、60~200モル%の範囲であることが好ましく、70~180モル%の範囲であることがより好ましく、80~155モル%の範囲であることが特に好ましい。α,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物(b)の配合量を上記範囲内に調整した場合、対摩擦性、および密着性に優れるロジン変性樹脂を得ることが容易である。
【0063】
<(a)および(b)以外のカルボン酸(以下「その他の有機酸類」ともいう)>
本発明におけるロジン変性樹脂を得るために、ロジン酸類(a)、α,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物(b)に加えて、その他の有機酸類を、単独または2種類以上用いることもできる。
その他の有機酸類の配合量は、樹脂原料の全配合量を基準として0~30質量%であることが好ましく、0~20質量%であることが更に好ましい。
【0064】
その他の有機酸類の具体的な例としては以下が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0065】
<有機一塩基酸>
安息香酸、メチル安息香酸、ターシャリーブチル安息香酸、ナフトエ酸、オルトベンゾイル安息香酸等の芳香族一塩基酸、
共役リノール酸、エレオステアリン酸、パリナリン酸、カレンジン酸等の共役二重結合を有するが環式ジテルペン骨格を有さない化合物
等が挙げられる。
【0066】
<脂環式多塩基酸またはその酸無水物>
1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸、3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸、4-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、およびこれらの酸無水物等が挙げられる。
【0067】
(その他の有機多塩基酸またはその酸無水物)
シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデセニルコハク酸、ペンタデセニルコハク酸などのアルケニルコハク酸、o-フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、およびこれらの酸無水物等が挙げられる。
【0068】
<ポリオール(c)>
ポリオール(c)は、ロジン酸類(a)に含まれる共役二重結合を有する有機酸とα,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物(b)とのディールスアルダー反応によって得られる化合物、ロジン酸類(a)のうち共役二重結合を有さない有機酸およびその他の有機酸、それぞれにおけるカルボン酸との反応によってエステル結合を形成する。本発明におけるロジン変性樹脂を得るために、以下に記載のポリオールを、単独または2種類以上用いることもできる。ポリオールの具体的な例としては以下が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0069】
(直鎖状アルキレン2価ポリオール)
1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,2-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,2-デカンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,2-ドデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,2-テトラデカンジオール、1,16-ヘキサデカンジオール、1,2-ヘキサデカンジオール等。
【0070】
<分岐状アルキレン2価ポリオール>
2-メチル-2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジメチル-2,4-ペンタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオ-ル、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ジメチロールオクタン、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール等。
【0071】
<環状2価ポリオール>
1,2-シクロヘプタンジオール、トリシクロデカンジメタノール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、水添ビスフェノールS、水添カテコール、水添レゾルシン、水添ハイドロキノン等の環状アルキレン2価ポリオール;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、カテコール、レゾルシン、ハイドロキノン等の芳香族2価ポリオール。
【0072】
<その他の2価のポリオール>
ポリエチレングリコール(n=2~20)、ポリプロピレングリコール(n=2~20)、ポリテトラメチレングリコール(n=2~20)等の2価のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール等。
【0073】
<3価のポリオール>
グリセリン、トリメチロ-ルプロパン、1,2,6-ヘキサントリオール、3-メチルペンタン-1,3,5-トリオール、ヒドロキシメチルヘキサンジオール、トリメチロールオクタン等。
【0074】
<4価以上のポリオール>
ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ジトリメチロ-ルプロパン、ジペンタエリスリト-ル、ソルビトール、イノシトール、トリペンタエリスリトール等の直鎖状、分岐状、および環状の4価以上のポリオール。
【0075】
本発明におけるロジン変性樹脂は、重量平均分子量が3,000~30,000であることが好ましく、3,000~15,000であることがより好ましい。重量平均分子量が3,000~30,000であることで、耐摩擦性と密着性が良好となる。
【0076】
なお、本発明において、Mwは、ゲルパーミエイションクロマトグラフィ(以下、「GPC」という。)で測定した。GPCの具体的な測定方法は、以下の通りである。東ソー(株)製HLC-8020を用い、検量線は標準ポリスチレンサンプルにより作成した。溶離液はテトラヒドロフランを、カラムにはTSKgel SuperHM-M(東ソー(株)製)3本を用いた。測定は流速0.6ml/分、注入量10μl、カラム温度40℃で行った。
【0077】
本発明におけるロジン変性樹脂は、酸価が20~80mgKOH/gが好ましく、30~80mgKOH/gがより好ましく、40~80mgKOH/gがさらに好ましく、50~80mgKOH/gが特に好ましい。ロジン変性樹脂の酸価が上記範囲内である場合、活性エネルギー線硬化型組成物の密着性が良好となる。なお酸価は、中和滴定法によって測定した値である。具体的には、先ず、ロジン変性樹脂1gをキシレン:エタノール=2:1の重量比で混合した溶媒20mLに溶解させた。次いで、先に調製したロジン変性樹脂の溶液に、指示薬として3重量%のフェノールフタレイン溶液を3mL加えた後に、0.1mol/Lのエタノール性水酸化カリウム溶液で中和滴定を行った。
【0078】
また、ロジン変性樹脂の融点は50℃以上であることが好ましく、60~100℃の範囲がより好ましい。なお融点は、BUCHI社製のMeltingPointM-565を用い、昇温速度0.5℃/分の条件下で測定できる。
【0079】
<その他の成分>
本発明において、活性エネルギー線硬化型組成物は、本発明の効果が低下しない範囲で、分散剤、レベリング剤、帯電防止剤、界面活性剤、消泡剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などを必要に応じて添加することができる。
【0080】
<分散度>
活性エネルギー線硬化型組成物を印刷・塗工等する場合、ワックス由来の粗大粒子や、ワックスを混合したことによる凝集物の発生などがあると、印刷・塗工等するときのトラブルや、得られた硬化物の表面状態のトラブルなどが発生することから、本発明における活性エネルギー線硬化型組成物の分散度は、25μm以下であることが好ましく、12.5μm以下であることがより好ましい。なお、本発明における分散度は、活性エネルギー線硬化型組成物をJIS K5600-2-5に従って分散粒子径測定器(グラインドメーター)で測定したときの値である。
【0081】
<積層体>
本発明における積層体は、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物を、基材上、または基材にインキを印刷した印刷物の印刷面上に塗工し、活性エネルギー線で硬化することによって得られる。
基材としては、特に制限はなく、公知のものを用いることができる。具体的には、アート紙、コート紙、キャスト紙などの塗工紙や上質紙、中質紙、新聞用紙などの非塗工紙、ユポ紙などの合成紙、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)、OPP(2軸延伸ポリプロピレン)のようなプラスチックフィルムなどが挙げられる。
また、基材にインキを印刷した印刷物に用いられるインキとしては、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷等公知の印刷方法に適した任意のインキを使用することができる。
【0082】
本発明における活性エネルギー線硬化型組成物を、基材上、または基材にインキを印刷した印刷物の印刷面上に塗工する方法としては、ロールコーター、グラビアコーター、フレキソコーター、エアドクターコーター、ブレードコーター、エアナイフコーター、スクイズコーター、含浸コーター、トランスファーロールコーター、キスコーター、カーテンコーター、キャストコーター、スプレーコーター、ダイコーター、オフセット印刷( 湿し水を使用する通常の平版及び湿し水を使用しない水無し平版)、フレキソ印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷等が挙げられる。
【0083】
本発明において、活性エネルギー線硬化型組成物を硬化する方法に特に制限はなく、活性エネルギー線源として公知のものを用いることができる。具体的には、水銀ランプ、キセノンランプ、メタルハイドライドランプ、紫外線発光ダイオード(UV-LED)、紫外線レーザーダイオード(UV-LD)等のLED(発光ダイオード)、電子線、ガス・固体レーザーなどが挙げられる。
【実施例0084】
以下に実施例および比較例を示し、本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は、以
下の実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例および比較例中、「部」及
び「% 」は、それぞれ「質量部」及び「質量%」を表す。
【0085】
[活性エネルギー線硬化型組成物の製造]
実施例1
顔料 15.0部、ロジン変性樹脂 40.0部、TMPTA(EO) 39.5部、ライスワックス 0.5部、379 2.0部、DETX 1.5部、184 1.0部、Q-1301 0.5部を測り取り、60℃で加熱しながら攪拌し、全体が均一になったことを確認した後3本ロールで分散し、ろ過を行うことで活性エネルギー線硬化型組成物を得た。
【0086】
実施例2~18 、比較例1~6
表1に記載した原料の種類と量を用いた以外は、実施例1と同様の方法で実施例2~18、比較例1~6を得た。なお、数値は特に断りがない限り「質量部」を表し、空欄は配合していないことを表す。
【0087】
【0088】
【0089】
また、(メタ)アクリレート化合物の比重を表2に、ワックスの融点、ヨウ素価、比重を表3に示す。
【0090】
【0091】
【0092】
なお、表1~3中に記載した原料の詳細は、以下のとおりである。
[樹脂]
・ロジン変性樹脂:国際公開第2017/164246号の段落番号0076に記載の樹脂4を使用した。
・ジアリルフタレート樹脂:株式会社大阪ソーダ製、ダイソーダップA
[(メタ)アクリレート化合物]
・TMPTA(EO):BASF社製、LAROMER LR8863、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリアクリレート
・DiTMPTA:ダイセル・オルネクス社製、EBECRYL1142、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート
・DPHA:MIWON社製、MIRAMER M600、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
・DDDA:MIWON社製、MIRAMER M2010、1、10―デカンジオールジアクリラート
・大豆油アクリレート:DKSHジャパン株式会社製、PHOTOMER 3005、エポキシ化大豆油アクリレート
[顔料]
・Permanent Yellow BHS:Clariant社製、Permanent Yellow BHS(C.I.Pigment Yellow 174)
・Permanent Rubine L5B-01:Clariant社製、Permanent Rubine L5B-01(C.I.Pigment Red 57:1)
・HELIOGEN BLUE D7088:BASF社製、HELIOGEN BLUE D7088(C.I.Pigment Blue 15:3)
・Raven 1080 Ultra:Bilra Carbon社製、Raven 1080 Ultra Powder(C.I.Pigment Black 7)
[光重合開始剤]
・379:IGM RESINS社製、Omnirad379、1,2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルフォリニル)フェニル]-1-ブタノン
・DETX:Chemark Chemical社製、CHEMARK DETX、2,4-ジエチルチオキサントン
・184:IGM RESINS社製、Omnirad184、1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン
[光重合禁止剤]
・Q-1301:富士フィルム和光純薬株式会社製、ニトロソ系化合物、N-ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩
[ワックス]
・ライスワックス:日本精鑞株式会社製 ライスワックス
・雪ロウ:株式会社セラリカNODA製 雪ロウ
・カルナバワックス:株式会社セラリカNODA製 カルナバワックス
・ポリエチレンワックス:三洋化成工業製 サンワックス161P ポリエチレン樹脂
・液状ポリエチレンワックス:SHAMROCK製 VARSAFLOW EV ポリエチレン樹脂
・ポリテトラフルオロエチレン:SHAMROCK製 SST-3T1 RC ポリテトラフルオロエチレン
【0093】
[積層体の作成方法]
実施例1~11、13~18および比較例1~6で得られた活性エネルギー線硬化型組成物を、RIテスター(テスター産業株式会社製)を用いて、OKトップコート(紙基材)上に0.25mlの盛り量でベタ画像を印刷した。その後、コンベア速度60m/分、高圧水銀ランプ(アイグラフィックス株式会社製、照射距離10mm、出力160W/cmの条件)で活性エネルギー線硬化型組成物を硬化させ、積層体を作製した。
また、実施例12で得られた活性エネルギー線硬化型組成物を、RIテスター(テスター産業株式会社製)を用いて、OKトップコート上に0.25mlの盛り量でベタ画像を印刷した。その後、岩崎電気社製の電子線照射機EC250/15/180Lを使用し、加速電圧110kV 、電子線量30kGyの条件で活性エネルギー線硬化型組成物を硬化させ、積層体を作製した。
【0094】
[耐摩擦性]
上記方法で作成した積層体を用い、テスター産業(株)製の学振型摩擦堅牢度試験機(荷重500g 200回、対紙:上質紙)にて耐摩擦性試験を行い、積層体に生じた傷について評価した。3以上で実用上問題ないレベルであると評価する。
5:全く傷付きがない
4:傷の面積が5% 未満である
3:傷の面積が5% 以上10% 未満である
2:傷の面積が10% 以上20% 未満である
1:傷の面積が20 % 以上である
【0095】
[ブロッキング性]
上記方法で作成した積層体を2枚、片方の積層体の基材面と、もう片方の積層体の活性エネルギー線硬化型組成物の硬化物の面を重ね、重石(1m2当たり1kg)を載せて加圧し、恒温恒湿装置(温度60℃、湿度80%RH)に入れて24時間放置した。取り出し後、重ねた積層体を剥がし、剥がした面の状態を評価した。3以上で実用上問題ないレベルであると評価する。
5:積層体の剥がれが全くない。
4:積層体の剥がれの面積が5%未満である
3:積層体の剥がれの面積が5%以上10%未満である
2:積層体の剥がれの面積が10%以上20%未満である
1:積層体の剥がれの面積が20%以上である
【0096】
[レベリング性]
上記方法で作成した試験片を用いて、村上色彩研究所製の光沢計GM62Dにて、活性エネルギー線硬化型組成物の硬化物の面の60°反射角での光沢値(JISZ8741に準拠)を測定した。〇、△が実用上問題ないレベルであると評価する。
〇・・・光沢値が40以上
△・・・光沢値が34以上40未満
×・・・光沢値が34未満
【0097】
[分散度]
得られた活性エネルギー線硬化型組成物について、JIS K5600-2-5に従って分散粒子径測定器(グラインドメーター)で分散度を測定した。〇、△が実用上問題ないレベルであると評価する。
〇:分散粒子径が12.5μm未満
△:分散粒子径が12.5μm以上 25μm以下
×:分散粒子径が25μmを超える