(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001944
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】積層チューブ
(51)【国際特許分類】
F16L 11/04 20060101AFI20241226BHJP
B32B 1/08 20060101ALI20241226BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
F16L11/04
B32B1/08
B32B27/32 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023101755
(22)【出願日】2023-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154483
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 和寛
(72)【発明者】
【氏名】岡久 正志
(72)【発明者】
【氏名】水谷 幸治
【テーマコード(参考)】
3H111
4F100
【Fターム(参考)】
3H111AA02
3H111BA15
3H111CB03
3H111CB04
3H111CB14
3H111CB22
3H111CB23
3H111CB29
3H111DA26
3H111DB09
3H111EA04
4F100AK01
4F100AK01A
4F100AK07
4F100AK07A
4F100AK07B
4F100AK46
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4F100AL07
4F100AL07A
4F100AL07B
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4F100DE01A
4F100EJ42
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4F100JL11B
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】ポリプロピレンを含む内層とポリアミドを含む外層の層間接着性に優れる積層チューブを提供する。
【解決手段】ポリプロピレンを含む内層12とポリアミドを含む外層14の間に酸変性ポリプロピレンを含む接着層16を有し、軸方向100μmの範囲における、外層14の外周面14aの長さaと接着層16の外周面16aの長さbとの比(b/a)が1.003以上1.050以下の積層チューブ10とする。また、ポリプロピレンを含む内層22とポリアミドを含む外層24を有する積層チューブ20のポリプロピレンが酸変性ポリプロピレンを含み、軸方向100μmの範囲における、外層24の外周面24aの長さa’と内層22の外周面22aの長さb’との比(b’/a’)が1.003以上1.050以下である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレンを含む内層とポリアミドを含む外層を有する積層チューブにおいて、
前記内層と前記外層の間に、酸変性ポリプロピレンを含む接着層を有し、
軸方向100μmの範囲における、前記外層の外周面の長さaと、前記接着層の外周面の長さbと、の比(b/a)が、1.003以上1.050以下である、積層チューブ。
【請求項2】
ポリプロピレンを含む内層とポリアミドを含む外層を有する積層チューブにおいて、
前記ポリプロピレンが、酸変性ポリプロピレンを含み、
軸方向100μmの範囲における、前記外層の外周面の長さa’と、前記内層の外周面の長さb’と、の比(b’/a’)が、1.003以上1.050以下である、積層チューブ。
【請求項3】
前記接着層は、酸変性ポリプロピレンのマトリックス中に有機重合体の粒子を含む樹脂組成物で構成されている、請求項1に記載の積層チューブ。
【請求項4】
前記内層は、酸変性ポリプロピレンのマトリックス中に有機重合体の粒子を含む樹脂組成物で構成されている、請求項2に記載の積層チューブ。
【請求項5】
前記有機重合体の粒子が、エチレン-プロピレン共重合体またはエチレン重合体で構成されている、請求項3または請求項4に記載の積層チューブ。
【請求項6】
前記有機重合体の粒子の含有量が、前記酸変性ポリプロピレンのマトリックス100質量部に対し、5質量部以上20質量部以下である、請求項3または請求項4に記載の積層チューブ。
【請求項7】
前記有機重合体の粒子の平均粒径が、0.1μm以上10μm以下である、請求項3または請求項4に記載の積層チューブ。
【請求項8】
前記ポリアミドのアミン価が、15mmol/kg以上100mmol/kg以下である、請求項1または請求項2に記載の積層チューブ。
【請求項9】
前記接着層と前記外層の界面における接着力が、30N/cm以上である、請求項1に従属する請求項8に記載の積層チューブ。
【請求項10】
前記内層と前記外層の界面における接着力が、30N/cm以上である、請求項2に従属する請求項8に記載の積層チューブ。
【請求項11】
車両用冷却液輸送チューブ用である、請求項1または請求項2に記載の積層チューブ。
【請求項12】
前記接着層は、酸変性ポリプロピレンのマトリックス中に有機重合体の粒子を含む樹脂組成物で構成され、
前記有機重合体の粒子が、エチレン-プロピレン共重合体またはエチレン重合体で構成され、
前記有機重合体の粒子の含有量が、前記酸変性ポリプロピレンのマトリックス100質量部に対し、5質量部以上20質量部以下であり、
前記有機重合体の粒子の平均粒径が、0.1μm以上10μm以下であり、
前記ポリアミドのアミン価が、15mmol/kg以上100mmol/kg以下であり、
前記接着層と前記外層の界面における接着力が、30N/cm以上である、請求項1に記載の積層チューブ。
【請求項13】
前記内層は、酸変性ポリプロピレンのマトリックス中に有機重合体の粒子を含む樹脂組成物で構成され、
前記有機重合体の粒子が、エチレン-プロピレン共重合体またはエチレン重合体で構成され、
前記有機重合体の粒子の含有量が、前記酸変性ポリプロピレンのマトリックス100質量部に対し、5質量部以上20質量部以下であり、
前記有機重合体の粒子の平均粒径が、0.1μm以上10μm以下であり、
前記ポリアミドのアミン価が、15mmol/kg以上100mmol/kg以下であり、
前記内層と前記外層の界面における接着力が、30N/cm以上である、請求項2に記載の積層チューブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層チューブに関し、さらに詳しくは、自動車等の冷却システムにおける冷却液を輸送するためのチューブとして好適な積層チューブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガソリン車や電気自動車などの冷却システムにおける冷却液を輸送するためのチューブとして、冷却液輸送チューブがある。冷却液輸送チューブには、耐熱性の観点から、ポリアミド樹脂がよく採用されている。また、コスト的に有利なポリプロピレン樹脂も検討されている。さらに、ポリアミド樹脂とポリプロピレン樹脂の積層チューブも検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2008-507436号公報
【特許文献2】特開2012-082885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ポリプロピレン樹脂とポリアミド樹脂の積層チューブは、樹脂間の接着性が悪い。特許文献2では、ポリプロピレン樹脂に酸変性ポリプロピレンを用いることでポリアミド樹脂との接着性を高めることが検討されている。しかしながら、層間接着性には、未だ改善の余地がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、ポリプロピレンを含む内層とポリアミドを含む外層の層間接着性に優れる積層チューブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る積層チューブは、ポリプロピレンを含む内層とポリアミドを含む外層を有する積層チューブにおいて、前記内層と前記外層の間に、酸変性ポリプロピレンを含む接着層を有し、軸方向100μmの範囲における、前記外層の外周面の長さaと、前記接着層の外周面の長さbと、の比(b/a)が、1.003以上1.050以下である。
【0007】
また、本発明に係る他の積層チューブは、ポリプロピレンを含む内層とポリアミドを含む外層を有する積層チューブにおいて、前記ポリプロピレンが、酸変性ポリプロピレンを含み、軸方向100μmの範囲における、前記外層の外周面の長さa’と、前記内層の外周面の長さb’と、の比(b’/a’)が、1.003以上1.050以下である。
【0008】
本発明に係る積層チューブにおいて、前記接着層は、酸変性ポリプロピレンのマトリックス中に有機重合体の粒子を含む樹脂組成物で構成されているとよい。また、本発明に係る他の積層チューブにおいて、前記内層は、酸変性ポリプロピレンのマトリックス中に有機重合体の粒子を含む樹脂組成物で構成されているとよい。
【0009】
前記有機重合体の粒子は、エチレン-プロピレン共重合体またはエチレン重合体で構成されているとよい。前記有機重合体の粒子の含有量は、前記酸変性ポリプロピレンのマトリックス100質量部に対し、5質量部以上20質量部以下であるとよい。前記有機重合体の粒子の平均粒径は、0.1μm以上10μm以下であるとよい。
【0010】
そして、前記ポリアミドのアミン価は、15mmol/kg以上100mmol/kg以下であるとよい。ここで、本発明に係る積層チューブにおいて、前記接着層と前記外層の界面における接着力は、30N/cm以上であるとよい。また、本発明に係る他の積層チューブにおいて、前記内層と前記外層の界面における接着力は、30N/cm以上であるとよい。
【0011】
そして、本発明に係る積層チューブおよび本発明に係る他の積層チューブは、車両用冷却液輸送チューブ用であるとよい。
【0012】
(1)本発明に係る積層チューブは、ポリプロピレンを含む内層とポリアミドを含む外層を有する積層チューブにおいて、前記内層と前記外層の間に、酸変性ポリプロピレンを含む接着層を有し、軸方向100μmの範囲における、前記外層の外周面の長さaと、前記接着層の外周面の長さbと、の比(b/a)が、1.003以上1.050以下である。
【0013】
(2)本発明に係る他の積層チューブは、ポリプロピレンを含む内層とポリアミドを含む外層を有する積層チューブにおいて、前記ポリプロピレンが、酸変性ポリプロピレンを含み、軸方向100μmの範囲における、前記外層の外周面の長さa’と、前記内層の外周面の長さb’と、の比(b’/a’)が、1.003以上1.050以下である。
【0014】
(3)上記(1)において、前記接着層は、酸変性ポリプロピレンのマトリックス中に有機重合体の粒子を含む樹脂組成物で構成されているとよい。
【0015】
(4)上記(2)において、前記内層は、酸変性ポリプロピレンのマトリックス中に有機重合体の粒子を含む樹脂組成物で構成されているとよい。
【0016】
(5)上記(3)または(4)において、前記有機重合体の粒子は、エチレン-プロピレン共重合体またはエチレン重合体で構成されているとよい。
【0017】
(6)上記(3)から(5)のいずれか1において、前記有機重合体の粒子の含有量は、前記酸変性ポリプロピレンのマトリックス100質量部に対し、5質量部以上20質量部以下であるとよい。
【0018】
(7)上記(3)から(6)のいずれか1において、前記有機重合体の粒子の平均粒径は、0.1μm以上10μm以下であるとよい。
【0019】
(8)上記(1)から(7)のいずれか1において、前記ポリアミドのアミン価は、15mmol/kg以上100mmol/kg以下であるとよい。
【0020】
(9)上記(1)に従属する上記(8)において、前記接着層と前記外層の界面における接着力は、30N/cm以上であるとよい。
【0021】
(10)上記(2)に従属する上記(8)において、前記内層と前記外層の界面における接着力は、30N/cm以上であるとよい。
【0022】
(11)上記(1)から(10)のいずれか1において、車両用冷却液輸送チューブ用であるとよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る積層チューブは、ポリプロピレンを含む内層とポリアミドを含む外層を有する積層チューブにおいて、前記内層と前記外層の間に、酸変性ポリプロピレンを含む接着層を有し、軸方向100μmの範囲における、前記外層の外周面の長さaと、前記接着層の外周面の長さbと、の比(b/a)が、1.003以上1.050以下である。ポリプロピレンを含む内層とポリアミドを含む外層を接着する接着層の外周面の長さbが外層の外周面の長さaよりも長くなることで、外層の内周面と接着層の外周面の接触面積が大きくなるため、接着層と外層の層間接着性に優れたものとなる。また、接着層と内層は、ともにポリプロピレンを含む層であるから、接着層と内層の層間接着性にも優れる。これにより、ポリプロピレンを含む内層とポリアミドを含む外層の層間接着性に優れる。
【0024】
また、本発明に係る他の積層チューブは、ポリプロピレンを含む内層とポリアミドを含む外層を有する積層チューブにおいて、前記ポリプロピレンが、酸変性ポリプロピレンを含み、軸方向100μmの範囲における、前記外層の外周面の長さa’と、前記内層の外周面の長さb’と、の比(b’/a’)が、1.003以上1.050以下である。ポリプロピレンを含む内層とポリアミドを含む外層の接着界面となる内層の外周面の長さb’が外層の外周面の長さa’よりも長くなることで、外層の内周面と内層の外周面の接触面積が大きくなるため、ポリプロピレンを含む内層とポリアミドを含む外層の層間接着性に優れる。
【0025】
本発明に係る積層チューブにおいて、前記接着層が、酸変性ポリプロピレンのマトリックス中に有機重合体の粒子を含む樹脂組成物で構成されていると、有機重合体の粒子の影響により接着層の外周面に凹凸形状を形成しやすく、接着層の外周面の長さbを外層の外周面の長さaよりも長くしやすい。また、酸変性ポリプロピレンのマトリックスの長さ方向における引裂強度を向上することができる。これにより、ポリプロピレンを含む内層とポリアミドを含む外層の層間接着性をより向上することができる。
【0026】
本発明に係る他の積層チューブにおいて、前記内層が、酸変性ポリプロピレンのマトリックス中に有機重合体の粒子を含む樹脂組成物で構成されていると、有機重合体の粒子の影響により内層の外周面に凹凸形状を形成しやすく、内層の外周面の長さb’を外層の外周面の長さa’よりも長くしやすい。また、酸変性ポリプロピレンのマトリックスの長さ方向における引裂強度を向上することができる。これにより、ポリプロピレンを含む内層とポリアミドを含む外層の層間接着性をより向上することができる。
【0027】
ここで、前記有機重合体の粒子が、エチレン-プロピレン共重合体またはエチレン重合体で構成されていると、接着層または内層の外周面に凹凸形状を形成しやすい。また、酸変性ポリプロピレンのマトリックスの長さ方向における引裂強度の向上効果に優れる。
【0028】
そして、前記有機重合体の粒子の含有量が、前記酸変性ポリプロピレンのマトリックス100質量部に対し、5質量部以上20質量部以下であると、接着層または内層の外周面に凹凸形状を形成して接触面積を向上することにより接着層または内層と外層の接着性を向上する効果と、酸変性ポリプロピレンとポリアミドによる接着性の向上効果のバランスに優れる。
【0029】
そして、前記有機重合体の粒子の平均粒径が、0.1μm以上10μm以下であると、接着層または内層の外周面に凹凸形状を形成して接触面積を向上することにより接着層または内層と外層の接着性を向上する効果と、酸変性ポリプロピレンとポリアミドによる接着性の向上効果のバランスに優れる。
【0030】
そして、前記ポリアミドのアミン価が15mmol/kg以上100mmol/kg以下であると、酸変性ポリプロピレンとポリアミドの接着性に優れる。これにより、接着層と外層の接着性あるいは内層と外層の接着性が向上する。
【0031】
そして、本発明に係る積層チューブにおいて、前記接着層と前記外層の界面における接着力が30N/cm以上であると、接着層と外層の接着性に優れる。また、本発明に係る他の積層チューブにおいて、前記内層と前記外層の界面における接着力が30N/cm以上であると、内層と外層の接着性に優れる。
【0032】
そして、本発明に係る積層チューブおよび本発明に係る他の積層チューブは、車両用冷却液輸送チューブ用に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の一実施形態に係る積層チューブを示す構成図である。
【
図2】
図1に示す積層チューブの軸方向100μmの範囲における断面図である。
【
図3】本発明の他の実施形態に係る積層チューブを示す構成図である。
【
図4】
図3に示す積層チューブの軸方向100μmの範囲における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明に係る積層チューブについて詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る積層チューブの構成図である。
図2は、
図1に示す積層チューブの軸方向100μmの範囲における断面図である。
【0035】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る積層チューブ10は、内層12と、外層14と、接着層16と、を有する。内層12、外層14、接着層16の各層は、管状に構成されている。積層チューブ10は、内側から順に、内層12、接着層16、外層14が管状に積層された3層の積層構造を有する。接着層16は、内層12と外層14とを接着する層として、内層12と外層14の間に配置されている。接着層16は、内層12の外周面上に内層12と接して配置されている。外層14は、接着層16の外周面上に接着層16と接して配置されている。
【0036】
積層チューブ10は、ポリプロピレンを含む内層12とポリアミドを含む外層14を有する。ポリアミドを含む外層14は、強度や耐熱性を確保する。ポリプロピレンを含む内層12は、積層チューブ10内を流れる流体がポリアミドを含む外層14に接触するのを抑えて加水分解による強度低下を抑える。積層チューブ10内を流れる流体の内圧に対し、ポリプロピレンを含む内層12がポリアミドを含む外層14の保護を受けるため、ポリプロピレンを含む内層12とポリアミドを含む外層14は、層間接着性が重要である。ポリプロピレンとポリアミドは一般に接着性が低いため、積層チューブ10では、内層12と外層14とを接着する層として接着層16を配置している。接着層16は、酸変性ポリプロピレンを含む層である。
【0037】
図2において、14aは、外層14の外周面である。16aは、接着層16の外周面である。16bは、接着層16の内周面である。積層チューブ10の軸方向とは、積層チューブ10が延びる方向であり、
図1,2におけるX方向である。
【0038】
図2に示すように、積層チューブ10においては、軸方向100μmの範囲における、外層14の外周面14aの長さaと、接着層16の外周面16aの長さbと、の比(b/a)が、1.003以上1.050以下である。外層14の外周面14aは、押出成形時において、成形型に接触する部分であり、押出成形時のうねりの発生が抑えられる部分である。したがって、うねりがなく直線に近い長さとして表すことができる。この外周面14aの長さaに対し、接着層16の外周面16aの長さbは、比(b/a)が1を超えるものである。ポリプロピレンを含む内層12とポリアミドを含む外層14を接着する接着層16の外周面16aの長さbが外層14の外周面14aの長さaよりも長くなることで、外層14の内周面と接着層16の外周面16aの接触面積が大きくなるため、接着層16と外層14の層間接着性に優れたものとなる。
【0039】
本発明では、意図的に、接着層16の外周面16aのうねりを大きくし、接着層16の外周面16aと外層14の内周面の接触面積を大きくして、接着層16と外層14の層間接着性を向上させている。上記比(b/a)が1.003未満であると、接触面積の増大による接着性の向上が不十分である。また、上記比(b/a)が1.050超であると、接着層16の外周面16aのうねりが大きくなりすぎて、接着性が低下する。接着層16の外周面16aのうねりを大きくする方法としては、押出成形時に各層の押出し温度を変更し、各層の粘度差を広げるなどして自然発生する不可避のうねりよりも大きいうねりを形成する、接着層16の材料中に有機重合体の粒子18を配合して、接着層16の外周面16aに、有機重合体の粒子18に起因する凸部または凹部を発生させるなどの方法が挙げられる。
【0040】
上記比(b/a)は、接触面積の増大による接着性の向上の観点から、好ましくは1.005以上、より好ましくは1.007以上である。また、上記比(b/a)は、うねりの増大による接着性の低下を抑えるなどの観点から、好ましくは1.040以下、より好ましくは1.030以下である。
【0041】
外層14の外周面14aの長さa、接着層16の外周面16aの長さbは、積層チューブ10を軸方向に半割して観察される断面を走査電子顕微鏡(SEM)にて倍率5000倍で撮影し、その画像を10枚連結させたものから、求めることができる。
【0042】
内層12は、ポリプロピレンを含む組成物で構成される。内層12は、ポリプロピレンを主成分として含む。主成分とは、50質量%以上であり、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。
【0043】
内層12のポリプロピレンとしては、プロピレン単独重合体、プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体、プロピレン-α-オレフィンブロック共重合体などのプロピレン系重合体が挙げられる。これらのうちでは、プロピレン-α-オレフィンブロック共重合体が好ましい。α-オレフィンとしては、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテンなどが挙げられる。これらのうちでは、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセンが好ましく、特にエチレンが好ましい。
【0044】
プロピレン-α-オレフィンブロック共重合体とは、プロピレン単量体が連続してなるブロックと、α-オレフィン単量体が連続してなるブロックとを少なくとも有するブロック共重合体に限らず、例えば、プロピレンの単独重合体等のポリプロピレン成分を海相とし、ポリエチレン成分および/またはエチレン系ゴム成分を島相とする海島構造を有するアロイ(混合物)をも包含する概念である。ポリエチレン成分としては、例えば、エチレン単独共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレンとα-オレフィンの共重合体(エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-オクテン共重合体)等のエチレン系共重合体が挙げられる。また、エチレン系ゴム成分としては、例えば、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体(EPDM)、エチレン-プロピレン共重合体(EPR)、エチレン-ブテン共重合体(EBR)、エチレン-オクテン共重合体(EOR)等が挙げられる。また、アロイ(混合物)全体に対するポリエチレン成分および/またはエチレン系ゴム成分の含有割合は、例えば、1~49質量%であり、2.5~20質量%である。
【0045】
内層12を構成する組成物は、ポリプロピレンに加え、安定剤、滑剤、顔料、染料、帯電防止剤、可塑剤、老化防止剤等を必要に応じて適宜配合しても差し支えない。また、内層12を構成する組成物は、必要に応じ、これらの材料を溶融混練したものをペレット化したものが用いられる。
【0046】
外層14は、ポリアミドを含む組成物で構成される。外層14は、ポリアミドを主成分として含む。主成分とは、50質量%以上であり、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。ポリアミドは、脂肪族ポリアミドであってもよいし、芳香族ポリアミドであってもよい。ポリアミドとしては、ポリプロピレンとの親和性などの観点から、脂肪族ポリアミドがより好ましい。
【0047】
ポリアミドは、酸変性ポリプロピレンとの接着性が向上するなどの観点から、アミン価15mmol/kg以上であることが好ましい。より好ましくは20mmol/kg以上、さらに好ましくは25mmol/kg以上である。一方、押出成形性に優れるなどの観点から、上記アミン価は、100mmol/kg以下が好ましい。より好ましくは80mmol/kg以下、さらに好ましくは60mmol/kg以下である。ポリアミドのアミン価は、ポリアミドの固形分1kgに含まれるアミンのmmol数を示すものである。外層14は、特定のアミン価を示すポリアミドを50質量%以上含むとよい。好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。
【0048】
特定のアミン価を示すポリアミドとしては、例えば、ポリアミド46(PA46)、ポリアミド410(PA410)、ポリアミド6(PA6)、ポリアミド66(PA66)、ポリアミド610(PA610)、ポリアミド612(PA612)、ポリアミド11(PA11)、ポリアミド12(PA12)、ポリアミド1010(PA1010)等の脂肪族ポリアミドや、ポリアミド6T(PA6T)、ポリアミド9T(PA9T)、ポリアミド10T(PA10T)等の芳香族ポリアミドが挙げられる。外層14のポリアミドとしては、これらの1種を単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0049】
ポリアミドは、耐熱性の観点から、融点160℃以上であることが好ましい。より好ましくは170℃以上である。一方、接着性の確保などの観点から、融点は280℃以下であることが好ましい。より好ましくは270℃以下である。
【0050】
外層14を構成する組成物は、ポリアミドに加え、安定剤、滑剤、顔料、染料、帯電防止剤、可塑剤、老化防止剤等を必要に応じて適宜配合しても差し支えない。また、外層14を構成する組成物は、必要に応じ、これらの材料を溶融混練したものをペレット化したものが用いられる。
【0051】
接着層16は、マトリックスポリマーとして酸変性ポリプロピレンを含む。これにより、ポリアミドを含む外層14との接着性に優れる。接着層16は、マトリックスポリマーとして酸変性ポリプロピレンを含み、酸変性ポリプロピレンのマトリックス中に有機重合体の粒子18を含む樹脂組成物で構成されているとよい。マトリックスポリマーは、接着層16における主成分である。主成分とは、50質量%以上であり、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。接着層16におけるポリマー成分は、酸変性ポリプロピレンのみで構成されていてもよいし、酸で変性されていないポリプロピレンなどのポリマー成分を含んでいてもよい。この場合、接着層16におけるポリマー成分のうち、酸変性ポリプロピレンは、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上であるとよい。なお、接着層16は、必ずしも有機重合体の粒子18を含んでいなくてもよい。
【0052】
酸変性ポリプロピレンにおける酸としては、不飽和カルボン酸およびその誘導体が挙げられる。不飽和カルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、アクリル酸、メタクリル酸などが挙げられる。不飽和カルボン酸誘導体としては、酸無水物、エステル、アミド、イミド、金属塩などが挙げられる。これらのうちでは、ポリアミドとの反応性などの観点から、マレイン酸、無水マレイン酸 が特に好ましい。
【0053】
酸変性ポリプロピレンにおける酸変性量は、外層14との接着性の向上などの観点から、0.05質量%以上が好ましい。より好ましくは0.1質量%以上である。一方、耐熱性の確保などの観点から、上記酸変性量は、7質量%以下が好ましい。より好ましくは5質量%以下である。また、酸変性ポリプロピレンは、耐熱性の確保などの観点から、融点130℃以上であることが好ましい。より好ましくは140℃以上である。一方、接着性の確保などの観点から、融点は180℃以下であることが好ましい。より好ましくは170℃以下である。
【0054】
有機重合体の粒子18は、接着層16のマトリックスポリマー(酸変性ポリプロピレン)内に配置される。有機重合体の粒子18を含むことで、
図2に示すように、接着層16の外周面16aや内周面16bに凸部や凹部(凹凸形状)を形成しやすくなる。これにより、接着層16の外周面16aの長さbを外層14の外周面14aの長さaよりも長くしやすくなる。また、押出成形される積層チューブ10において、長さ方向に配向する接着層16のマトリックスポリマー(酸変性ポリプロピレン)は、繊維状に裂けやすく、長さ方向における引裂強度が弱くなる。接着層16のマトリックスポリマー内に配置される有機重合体の粒子18は、長さ方向の引裂力に対して障害となるため、これにより長さ方向における引裂強度が向上する。
【0055】
有機重合体の粒子18としては、ゴムや樹脂などの有機重合体の粒子18が挙げられる。ゴム材料としては、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-オクテン共重合体、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-ヘキセン共重合体、エチルアクリレートなどが挙げられる。樹脂としては、ポリエチレンなどが挙げられる。有機重合体の粒子18としては、これらの1種を単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。これらのうちでは、マトリックスポリマーとの相溶性により優れる、接着層16の外周面16aに凹凸形状を形成しやすい、酸変性ポリプロピレンのマトリックスの長さ方向における引裂強度の向上効果に優れるなどの観点から、エチレン-プロピレン共重合体、ポリエチレンがより好ましい。
【0056】
有機重合体の粒子18は、予め造粒されたものをマトリックスポリマーに加えるようにしてもよいし、造粒されていない有機重合体をマトリックスポリマーと特定の条件で溶融混練してペレット化した後、特定の条件で溶融押出成形することにより、酸変性ポリプロピレンのマトリックス中に有機重合体の粒子18を含むようにしてもよい。
【0057】
有機重合体の粒子18の含有量は、接着層16の外周面16aに凹凸形状を形成して接触面積を向上することにより、接着層16と外層14の接着性を向上する効果に優れる、酸変性ポリプロピレンのマトリックスの長さ方向における引裂強度の向上効果に優れるなどの観点から、酸変性ポリプロピレンのマトリックス100質量部に対し、5質量部以上が好ましい。より好ましくは10質量部以上である。一方、酸変性ポリプロピレンとポリアミドによる接着性の向上効果に優れるなどの観点から、酸変性ポリプロピレンのマトリックス100質量部に対し、20質量部以下が好ましい。より好ましくは15質量部以下である。接着層16内における有機重合体の粒子18の含有量は、走査電子顕微鏡(SEM)にて、倍率1000倍で撮影し、二値化処理すること等により、求めることができる。
【0058】
有機重合体の粒子18の平均粒径は、接着層16の外周面16aに凹凸形状を形成して接触面積を向上することにより、接着層16と外層14の接着性を向上する効果に優れる、酸変性ポリプロピレンのマトリックスの長さ方向における引裂強度の向上効果に優れるなどの観点から、0.1μm以上であることが好ましい。より好ましくは0.3μm以上である。一方、酸変性ポリプロピレンとポリアミドによる接着性の向上効果に優れるなどの観点から、上記平均粒径は10μm以下が好ましい。より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは3μm以下である。有機重合体の粒子18の平均粒径は、接着層16の断面を走査電子顕微鏡(SEM)にて倍率5000倍で撮影し、確認される任意の10個の有機重合体の粒子18の粒径を測定し、その平均により表すことができる。
【0059】
接着層16を構成する組成物は、酸変性ポリプロピレンに加え、安定剤、滑剤、顔料、染料、帯電防止剤、可塑剤、老化防止剤等を必要に応じて適宜配合しても差し支えない。また、接着層16を構成する組成物は、必要に応じ、これらの材料を溶融混練したものをペレット化したものが用いられる。
【0060】
図2に示すように、接着層16の外周面16aおよび内周面16bには、1以上の凸部または凹部を有するとよい。投錨効果(アンカー効果)によって、接着層16と外層14の接着性や、接着層16と内層12の接着性が向上する。凸部の高さまたは凹部の深さは、0.1μm以上10μm以下であるとよい。より好ましくは、0.1μm以上5μm以下である。投錨効果(アンカー効果)によって、接着層16と外層14の接着性や、接着層16と内層12の接着性が向上する。凸部および凹部は、相対的なものであり、表現上、どちらであってもよい。
【0061】
上記凸部または凹部は、上記投錨効果(アンカー効果)の観点から、任意の位置の長さ方向において、2個/100μm以上有することが好ましい。また、任意の位置の周方向において、2個/100μm以上有することが好ましい。一方、酸変性ポリプロピレンによる接着性の確保などの観点から、任意の位置の長さ方向において、100個/100μm以下であることが好ましい。また、任意の位置の周方向において、100個/100μm以下であることが好ましい。凸部または凹部の個数は、接着層16の所定の方向の断面を走査電子顕微鏡(SEM)にて、倍率5000倍で撮影し、その画像を10枚連結させたものから算出することができる。
【0062】
上記凸部または凹部は、有機重合体の粒子18の配合に起因して、あるいは、各層の押出し温度を変更し、各層の粘度差を広げることなどにより、形成することができる。
【0063】
接着層16の長さ方向における引裂強度は、20N/mm以上であることが好ましい。より好ましくは25N/mm以上、さらに好ましくは30N/mm以上である。例えば、接着層16が酸変性ポリプロピレンのマトリックス中に有機重合体の粒子18を含む樹脂組成物で構成されることで、上記引裂強度を満足することができる。上記引裂強度は、厚み0.3mmのフィルムを押出し、JIS K 6252に準拠し、トラウザ型試験片を用いて、室温下、引張速度100mm/minの条件で測定することができる。
【0064】
接着層16と外層14の界面における接着力は、30N/cm以上であることが好ましい。より好ましくは35N/cm以上、さらに好ましくは40N/cm以上である。例えば、酸変性ポリプロピレンの酸変性量、ポリアミドのアミン価、外層14の外周面14aの長さaと接着層16の外周面16aの長さbとの比(b/a)、有機重合体の粒子18の配合量などを調整することにより、上記界面における接着力を満足することができる。上記接着力は、軸方向に半割した積層チューブ10から10mmの短冊状の試験片を作製し、ニッパー等で試験片の端部を剥離し、その剥離部を掴み、引張試験機にて層間剥離を行うことにより測定することができる。引張速度は25mm/minとし、剥離強度が安定した状態が30秒続いた時の接着力(N/cm)の平均値を接着力とする。
【0065】
積層チューブ10は、次のようにして製造することができる。まず、内層12を構成する組成物、外層14を構成する組成物、接着層16を構成する組成物をそれぞれ調製する。各組成物は、必要に応じてペレット化する。次に、押出成形機を用いて、各組成物をマンドレル上にチューブ状に溶融押出成形(共押出成形)する。これにより、内側から順に、内層12、接着層16、外層14が管状に積層された3層の積層構造を有する積層チューブ10を得ることができる。
【0066】
各層の押出成形は、200~350℃(好ましくは220~280℃)の温度で、引取り速度1~15m/分(好ましくは3~5m/分)で行うとよい。ここで、外層14のポリアミドの融点よりも20~100℃高い温度(好ましくは20~80℃高い温度)で溶融押出成形(共押出成形)すると、接着層16中の有機重合体の粒子18を接着層16と外層14の界面付近あるいは接着層16と内層12の界面付近に偏在させやすくなる。これにより、有機重合体の粒子18による接着層16の外周面16aのうねりを大きくして、外層14の内周面と接着層16の外周面16aの接触面積を大きくすることができ、接着層16と外層14の層間接着性に優れたものとすることができる。
【0067】
以上の構成の積層チューブ10は、ポリプロピレンを含む内層12とポリアミドを含む外層14の間に、酸変性ポリプロピレンを含む接着層16を有し、軸方向100μmの範囲における、外層14の外周面14aの長さaと、接着層16の外周面16aの長さbと、の比(b/a)が、1.003以上1.050以下である。ポリプロピレンを含む内層12とポリアミドを含む外層14を接着する接着層16の外周面16aの長さbが外層14の外周面14aの長さaよりも長くなることで、外層14の内周面と接着層16の外周面16aの接触面積が大きくなるため、接着層16と外層14の層間接着性に優れたものとなる。また、接着層16は、酸変性ポリプロピレンを含むため、ポリアミドを含む外層14との接着性はさらに良好となる。そして、接着層16と内層12は、ともにポリプロピレンを含む層であるから、接着層16と内層12の層間接着性にも優れる。これにより、ポリプロピレンを含む内層12とポリアミドを含む外層14の層間接着性に優れる。
【0068】
積層チューブ10は、ラジエーターホース、ヒーターホース、エアコンホース等や、電気自動車や燃料電池自動車用の電池パックの冷却用チューブに用いられる。また、積層チューブ10は、自動車用のみならず、その他の輸送機械(飛行機,フォークリフト,ショベルカー,クレーン等の産業用輸送車両、鉄道車両等)等にも用いることができる。
【0069】
積層チューブ10において、チューブ内径は、2~40mmの範囲が好ましく、4~35mmの範囲がより好ましい。また、内層12の厚みは、0.1~1.9mmの範囲が好ましく、0.2~1.8mmの範囲がより好ましい。また、外層14の厚みは、0.1~1.9mmの範囲が好ましく、0.2~1.8mmの範囲がより好ましい。また、接着層16の厚みは、0.05~0.5mmの範囲が好ましく、0.05~0.3mmの範囲がより好ましい。
【0070】
ここで、積層チューブ10が車両用冷却液輸送用に用いられる場合、ポリプロピレンを含む内層12には、所定の耐熱性が求められることがある。この場合、内層12のポリプロピレンを含む組成物には、老化防止剤を配合することが考えられる。車両用冷却液輸送チューブの材料として老化防止剤を配合すると、老化防止剤に由来する成分が冷却液中に抽出(溶出)される傾向があるため、車両冷却システム内のフィルタの目詰まり等を招く恐れや、抽出された上記成分が冷却液の導電性を高め、短絡や漏電等を招く恐れがある。したがって、耐熱性および耐抽出性に優れることが求められる。
【0071】
老化防止剤を用いる場合、耐熱性と耐抽出性とが背反する。すなわち、耐熱性を向上させる観点からは老化防止剤の配合量を多くすることが求められるが、老化防止剤の配合量を多くすると、老化防止剤に由来する成分の冷却液に対する抽出量を抑制することが困難になるため、耐抽出性を担保することができない。これに対し、特定のポリプロピレンと特定の老化防止剤とを併用し、両者の含有割合を特定範囲にすれば、耐熱性および耐抽出性に優れる。
【0072】
内層12のポリプロピレンは、メルトフローレート(MFR)が0.2g/10分以上2.0g/10分未満であることが好ましい。また、融点が145℃以上であることが好ましい。これにより、耐抽出性および耐熱性に優れる。上記MFRが2.0g/10分未満であり、上記融点が145℃以上であることで、ポリプロピレンと老化防止剤の相溶性が向上し、冷却液中への抽出量が抑えられるため、耐熱性および耐抽出性を高度に両立させることができる。
【0073】
また、上記観点から、ポリプロピレンのMFRは、より好ましくは1.8g/10分以下、さらに好ましくは1.6g/10分以下、特に好ましくは1.5g/10分以下である。一方、ポリプロピレンのMFRは、流動性の確保などの観点から、好ましくは0.3g/10分以上、より好ましくは0.4g/10分以上、さらに好ましくは0.5g/10分以上である。MFRは、JIS K7210:1999に準拠し、230℃、2.16kg荷重の条件にて測定されるものである。
【0074】
また、上記観点から、ポリプロピレンの融点は、より好ましくは148℃以上、さらに好ましくは150℃以上、特に好ましくは155℃以上である。一方、ポリプロピレンの融点の上限値は、特に限定されないが、175℃以下であるとよい。ポリプロピレンの融点は、JIS K7121-2012に準拠する方法により測定することができる。
【0075】
老化防止剤は、耐熱性および耐抽出性の観点から、融点60℃以上であることが好ましい。より好ましくは70℃以上、さらに好ましくは75℃以上、特に好ましくは80℃以上、90℃以上である。また、300℃以下が好ましく、より好ましくは250℃以下である。
【0076】
老化防止剤の分子量は、特に限定されないが、例えば、550~1300が好ましく、より好ましくは580~1280、さらに好ましくは600~1250、特に好ましくは700~1200である。
【0077】
老化防止剤としては、フェノール系老化防止剤、アミン系老化防止剤、イミダゾール系老化防止剤、リン酸系老化防止剤などを挙げることができる。老化防止剤は、これらの1種のみで構成されていてもよいし、2種以上で構成されていてもよい。これらのうちでは、より耐熱性に優れるなどの観点から、フェノール系老化防止剤が好ましい。また、フェノール系老化防止剤のなかでも、耐熱性の観点から、ヒンダードフェノール系老化防止剤が特に好ましい。
【0078】
ヒンダードフェノール系老化防止剤としては、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート](例えばBASF製「イルガノックス1010」、融点110~125℃、分子量1178)、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート(例えばBASF製「イルガノックス3114」、融点220-222℃、分子量784)、2,4,6-トリス(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルベンジル)メシチレン(例えばBASF製「イルガノックス1330」、融点248-252℃、分子量775)、6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルアニリノ)-2,4-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン(例えばBASF製「イルガノックス565」、融点91~96℃)、2,2’-チオジエチルビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート](例えばBASF社製「イルガノックス1035」、融点63~78℃)、N,N’-ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンアミド](例えばBASF製「イルガノックス1098」、融点156~161℃、分子量637)、1,6-ヘキサンジオールビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート](例えばBASF製「イルガノックス259」、融点104~108℃、分子量639)などが挙げられる。
【0079】
老化防止剤の含有量は、耐熱性および耐抽出性の観点から、ポリプロピレンに対して比較的少量にすることが好ましい。具体的には、ポリプロピレン100質量部に対し、0.1質量部以上1.0質量部以下が好ましい。
【0080】
本発明に係る積層チューブは、
図1に示すような3層構造の積層チューブであってもよいし、接着層16を省略した、内層と外層の2層構造の積層チューブであってもよい。また、さらに、他の樹脂層やゴム層や補強層(PET糸等の補強糸をブレード編組等して形成された層)を外層の外周面上に積層するようにしてもよい。
【0081】
図3には、本発明の他の実施形態に係る積層チューブを示す。
図4には、
図3に示す積層チューブの軸方向100μmの範囲における断面図を示す。
【0082】
図3に示すように、本発明の他の実施形態に係る積層チューブ20は、内層22と、外層24と、を有する。内層22、外層24の各層は、管状に構成されている。積層チューブ20は、内側から順に、内層22、外層24が管状に積層された2層の積層構造を有する。外層24は、内層22の外周面上に内層22と接して配置されている。
【0083】
積層チューブ20は、ポリプロピレンを含む内層22とポリアミドを含む外層24を有する。ポリアミドを含む外層24は、強度や耐熱性を確保する。ポリプロピレンを含む内層22は、積層チューブ20内を流れる流体がポリアミドを含む外層24に接触するのを抑えて加水分解による強度低下を抑える。積層チューブ20内を流れる流体の内圧に対し、ポリプロピレンを含む内層22がポリアミドを含む外層24の保護を受けるため、ポリプロピレンを含む内層22とポリアミドを含む外層24は、層間接着性が重要である。ポリプロピレンとポリアミドは一般に接着性が低いため、積層チューブ20では、ポリアミドを含む外層24に接する内層22に酸変性ポリプロピレンを用いている。
【0084】
図4において、24aは、外層24の外周面である。22aは、内層22の外周面である。22bは、内層22の内周面である。積層チューブ20の軸方向とは、積層チューブ20が延びる方向であり、
図3,4におけるX方向である。
【0085】
図4に示すように、積層チューブ20においては、軸方向100μmの範囲における、外層24の外周面24aの長さa’と、内層22の外周面22aの長さb’と、の比(b’/a’)が、1.003以上1.050以下である。外層24の外周面24aは、押出成形時において、成形型に接触する部分であり、押出成形時のうねりの発生が抑えられる部分である。したがって、うねりがなく直線に近い長さとして表すことができる。この外周面24aの長さa’に対し、内層22の外周面22aの長さb’は、比(b’/a’)が1.000を超えるものである。内層22の外周面の長さb’が外層24の外周面の長さa’よりも長くなることで、外層24の内周面と内層22の外周面の接触面積が大きくなるため、内層22と外層24の層間接着性に優れたものとなる。
【0086】
本発明では、意図的に、内層22の外周面のうねりを大きくし、内層22の外周面と外層24の内周面の接触面積を大きくして、内層22と外層24の層間接着性を向上させている。上記比(b’/a’)が1.003未満であると、接触面積の増大による接着性の向上が不十分である。また、上記比(b’/a’)が1.050超であると、内層22の外周面のうねりが大きくなりすぎて、接着性が低下する。内層22の外周面のうねりを大きくする方法としては、押出成形時に各層の押出し温度を変更し、各層の粘度差を広げるなどして自然発生する不可避のうねりよりも大きいうねりを形成する、内層22の材料中に有機重合体の粒子18を配合して、内層22の外周面に、有機重合体の粒子18に起因する凸部または凹部を発生させるなどの方法が挙げられる。
【0087】
上記比(b’/a’)は、接触面積の増大による接着性の向上の観点から、好ましくは1.005以上、より好ましくは1.007以上である。また、上記比(b’/a’)は、うねりの増大による接着性の低下を抑えるなどの観点から、好ましくは1.040以下、より好ましくは1.030以下である。
【0088】
外層24の外周面24aの長さa’、内層22の外周面22aの長さb’は、積層チューブ20を軸方向に半割して観察される断面を走査電子顕微鏡(SEM)にて撮影した画像から、求めることができる。上記長さa’、長さb’は、積層チューブ10の長さa、長さbと同様にして測定することができる。
【0089】
内層22は、酸変性ポリプロピレンを含む。マトリックスポリマーとして酸変性ポリプロピレンを含む。これにより、ポリアミドを含む外層14との接着性に優れる。内層22は、マトリックスポリマーとして酸変性ポリプロピレンを含み、酸変性ポリプロピレンのマトリックス中に有機重合体の粒子18を含む樹脂組成物で構成されているとよい。マトリックスポリマーは、内層22における主成分である。主成分とは、50質量%以上であり、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。内層22におけるポリマー成分は、酸変性ポリプロピレンのみで構成されていてもよいし、酸で変性されていないポリプロピレンなどのポリマー成分を含んでいてもよい。この場合、内層22におけるポリマー成分のうち、酸変性ポリプロピレンは、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上であるとよい。なお、内層22は、必ずしも有機重合体の粒子18を含んでいなくてもよい。
【0090】
積層チューブ20における内層22の構成は、積層チューブ10における接着層16の構成と同様である。酸変性ポリプロピレンの構成、有機重合体の粒子28の構成、他の添加成分に関する構成などは、積層チューブ10における接着層16の構成と同様である。また、積層チューブ20の内層22には、積層チューブ10の内層12と同様に、所定の老化防止剤を添加してもよい。また、積層チューブ20の内層22のポリプロピレンは、積層チューブ10の内層12と同様に、所定のMFRを有するものとしてもよい。
【0091】
積層チューブ20における外層24の構成は、積層チューブ10における外層14の構成と同様である。
【0092】
図4に示すように、積層チューブ20において、内層22の外周面22aには、1以上の凸部または凹部を有するとよい。投錨効果(アンカー効果)によって、内層22と外層24の接着性が向上する。凸部の高さまたは凹部の深さは、0.1μm以上10μm以下であるとよい。より好ましくは、0.1μm以上5μm以下である。投錨効果(アンカー効果)によって、内層22と外層24の接着性が向上する。凸部および凹部は、相対的なものであり、表現上、どちらであってもよい。
【0093】
上記凸部または凹部は、上記投錨効果(アンカー効果)の観点から、任意の位置の長さ方向において、2個/100μm以上有することが好ましい。また、任意の位置の周方向において、2個/100μm以上有することが好ましい。一方、酸変性ポリプロピレンによる接着性の確保などの観点から、任意の位置の長さ方向において、100個/100μm以下であることが好ましい。また、任意の位置の周方向において、100個/100μm以下であることが好ましい。凸部または凹部の個数は、内層22の所定の方向の断面を走査電子顕微鏡(SEM)にて、倍率5000倍で撮影し、その画像を10枚連結させたものから算出することができる。
【0094】
上記凸部または凹部は、有機重合体の粒子28の配合に起因して、あるいは、各層の押出し温度を変更し、各層の粘度差を広げることなどにより、形成することができる。
【0095】
内層22の長さ方向における引裂強度は、20N/mm以上であることが好ましい。より好ましくは25N/mm以上、さらに好ましくは30N/mm以上である。例えば、内層22が酸変性ポリプロピレンのマトリックス中に有機重合体の粒子18を含む樹脂組成物で構成されることで、上記引裂強度を満足することができる。上記引裂強度は、積層チューブ10の接着層16の引裂強度と同様にして測定することができる。
【0096】
内層22と外層24の界面における接着力は、30N/cm以上であることが好ましい。より好ましくは35N/cm以上、さらに好ましくは40N/cm以上である。例えば、酸変性ポリプロピレンの酸変性量、ポリアミドのアミン価、外層24の外周面の長さa’と内層22の外周面の長さb’との比(b’/a’)、有機重合体の粒子28の配合量などを調整することにより、上記界面における接着力を満足することができる。上記界面における接着力は、積層チューブ10の接着層16と外層14の界面における接着力と同様にして測定することができる。
【0097】
積層チューブ20は、次のようにして製造することができる。まず、内層22を構成する組成物、外層24を構成する組成物をそれぞれ調製する。各組成物は、必要に応じてペレット化する。次に、押出成形機を用いて、各組成物をマンドレル上にチューブ状に溶融押出成形(共押出成形)する。これにより、内側から順に、内層22、外層24が管状に積層された2層の積層構造を有する積層チューブ20を得ることができる。
【0098】
各層の押出成形は、200~350℃(好ましくは220~280℃)の温度で、引取り速度1~15m/分(好ましくは3~5m/分)で行うとよい。ここで、外層24のポリアミドの融点よりも20~100℃高い温度(好ましくは20~80℃高い温度)で溶融押出成形(共押出成形)すると、内層22中の有機重合体の粒子28を内層22と外層24の界面付近に偏在させやすくなる。これにより、有機重合体の粒子28による内層22の外周面のうねりを大きくして、外層24の内周面と内層22の外周面の接触面積を大きくすることができ、内層22と外層24の層間接着性に優れたものとすることができる。
【0099】
以上の構成の積層チューブ20は、ポリプロピレンを含む内層22とポリアミドを含む外層24を有する積層チューブ20において、ポリプロピレンが、酸変性ポリプロピレンを含み、軸方向100μmの範囲における、外層24の外周面の長さa’と、内層22の外周面の長さb’と、の比(b’/a’)が、1.003以上1.050以下である。ポリプロピレンを含む内層22とポリアミドを含む外層24の接着界面となる内層22の外周面の長さb’が外層24の外周面の長さa’よりも長くなることで、外層24の内周面と内層22の外周面の接触面積が大きくなるため、ポリプロピレンを含む内層22とポリアミドを含む外層24の層間接着性に優れる。また、内層22は、酸変性ポリプロピレンを含むため、ポリアミドを含む外層24との接着性はさらに良好となる。これにより、ポリプロピレンを含む内層22とポリアミドを含む外層24の層間接着性に優れる。
【0100】
積層チューブ20も、積層チューブ10と同様の用途に用いることができる。また、積層チューブ20の内径、内層22の厚み、外層24の厚みも、積層チューブ10と同様の構成とすることができる。
【0101】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
【実施例0102】
以下、実施例および比較例を用いて本発明を詳細に説明する。
【0103】
(実施例1-7、比較例1-2)
(外層材料)
下記に示す市販のポリアミドを外層材料として用いた。
【0104】
(接着層材料の調製)
表に示す配合割合(質量部)にて各成分を配合し、二軸混練押出機(東芝機械製「TEM-18SS」)により200℃で5分間混練して混練物を得て、これをペレット化して、接着層材料を調製した。
【0105】
(内層材料の調製)
下記に示す市販のポリプロピレンを内層材料として用いた。
【0106】
(積層チューブの作製)
表に示す組み合わせにて、外層材料、接着層材料、内層材料を、共押出成形可能な多層押出成形機(プラスチック工学研究所製)を用いてチューブ状に溶融押出成形(共押出成形)し、3層構成の積層チューブを作製した(内層厚0.6mm、接着層厚0.1mm、外層厚0.3mm、内径12mm)。各材料の押出温度は、融点よりも20℃高い温度に設定し、引取速度は、3m/分とした。
【0107】
(実施例8、比較例3)
(外層材料)
下記に示す市販のポリアミドを外層材料として用いた。
【0108】
(内層材料の調製)
表に示す配合割合(質量部)にて各成分を配合し、二軸混練押出機(東芝機械製「TEM-18SS」)により200℃で5分間混練して混練物を得て、これをペレット化して、内層材料を調製した。
【0109】
(積層チューブの作製)
表に示す組み合わせにて、外層材料、内層材料を、共押出成形可能な多層押出成形機(プラスチック工学研究所製)を用いてチューブ状に溶融押出成形(共押出成形)し、2層構成の積層チューブを作製した(内層厚0.7mm、外層厚0.3mm、内径12mm)。各材料の押出温度は、融点よりも20℃高い温度に設定し、引取速度は、3m/分とした。
【0110】
用いた材料は、以下の通りである。
(外層用材料)
・PA<1>:ポリアミド、ダイセルエボニック製「SX8002」、融点211℃、アミン価70.7mmol/g
・PA<2>:ポリアミド、デュポン製「Zytel RSLC3060」、融点223℃、アミン価52.0mmol/g
・PA<3>:ポリアミド、東レ製「CM2001」、融点222℃、アミン価18.0mmol/g
【0111】
(接着層用材料)
・酸変性PP<1>:無水マレイン酸変性ポリプロピレン、三井化学製「アドマーQF500」、変性量0.27質量%、融点165℃
・EP共重合体<1>:エチレン-プロピレン共重合体、三井化学製「タフマーDF840」
・EP共重合体<2>:エチレン-プロピレン共重合体、三井化学製「タフマーDF8200」
【0112】
(内層用材料)
・ブロックPP:プロピレン-α-オレフィンブロック共重合体、プライムポリマー製「E-702MG」、MFR1.4g/10分、融点162℃
・酸変性PP<1>:無水マレイン酸変性ポリプロピレン(三井化学製「アドマーQF500」)、変性量0.27質量%、融点165℃
・EP共重合体<1>:エチレン-プロピレン共重合体(三井化学製「タフマーDF840」)
・EP共重合体<2>:エチレン-プロピレン共重合体(三井化学製「タフマーDF8200」)
【0113】
得られた積層チューブを軸方向に半割し、その断面を、走査電子顕微鏡(SEM)にて、倍率5000倍で撮影し、その画像を10枚連結させた。その画像をもとに、3層構成の積層チューブでは、軸方向100μmの範囲における、外層の外周面の長さaと、接着層の外周面の長さbをそれぞれ計測し、その比(b/a)を算出し、2層構成の積層チューブでは、軸方向100μmの範囲における、外層の外周面の長さa’と、内層の外周面の長さb’をそれぞれ計測し、その比(b’/a’)を算出した。また、その画像をもとに、接着層内あるいは内層内に確認される任意の10個の有機重合体の粒子の粒径を測定し、その平均粒径(μm)を求めた。また、前記画像において、接着層あるいは内層と外層の界面における接着層あるいは内層側に凸部が認められるものに関しては、界面における直線距離での凸部の個数(個/100μm)を数えた。その結果を、後記の表に示した。
【0114】
得られた各積層チューブに関し、下記の基準に従って、各特性の評価を行った。その結果を、後記の表に示した。
【0115】
<界面の接着性>
作製した積層チューブを半割し、半割したチューブから幅10mmの短冊状の試験片を作製した。そして、ニッパーで試験片の端部を剥離し、剥離部を掴み、引張り試験機で25mm/minの速さで引張り、層間剥離を行った。このとき、剥離強度が安定した状態が30秒続いたときの接着力(N/cm)の平均値を測定し、「接着力(N/cm)」として表記した。接着力が40N/cm以上の場合を「◎」、20N/cm以上40N/cm未満の場合を「○」、20N/cm未満の場合を「×」とした。
【0116】
【0117】
【0118】
比較例1は、内層、外層、接着層の3層構成の積層チューブにおいて、軸方向100μmの範囲における、外層の外周面の長さaと接着層の外周面の長さbとの比(b/a)が1.000で、1.003未満である。そして、比較例1では、接触面積の増大効果が得られず、接着層と外層の層間接着性が不十分となっている。比較例2は、上記長さの比(b/a)が1.058で、1.050超である。そして、比較例2では、接着層の外周面のうねりが大きくなりすぎて、接着層と外層の層間接着性が不十分となっている。一方、実施例1-7は、上記長さの比(b/a)が1.003以上1.050以下である。ポリプロピレンを含む内層とポリアミドを含む外層を接着する接着層の外周面の長さbが外層の外周面の長さaよりも長くなることで、外層の内周面と接着層の外周面の接触面積が大きくなるため、接着層と外層の層間接着性に優れたものとなる。また、接着層と内層は、ともにポリプロピレンを含む層であるから、接着層と内層の層間接着性にも優れる。これにより、ポリプロピレンを含む内層とポリアミドを含む外層の層間接着性に優れる。
【0119】
比較例3は、内層、外層の2層構成の積層チューブにおいて、軸方向100μmの範囲における、外層の外周面の長さa’と接着層の外周面の長さb’との比(b’/a’)が1.000で、1.003未満である。そして、比較例3では、接触面積の増大効果が得られず、内層と外層の層間接着性が不十分となっている。一方、実施例8は、上記長さの比(b’/a’)が1.003以上1.050以下である。ポリプロピレンを含む内層とポリアミドを含む外層の接着界面となる内層の外周面の長さb’が外層の外周面の長さa’よりも長くなることで、外層の内周面と内層の外周面の接触面積が大きくなるため、ポリプロピレンを含む内層とポリアミドを含む外層の層間接着性に優れる。
【0120】
以上、本発明の実施形態・実施例について説明したが、本発明は上記実施形態・実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。