(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025019446
(43)【公開日】2025-02-07
(54)【発明の名称】立体物の製造装置及び立体物の製造方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20250131BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20250131BHJP
B05C 9/12 20060101ALI20250131BHJP
B05C 13/02 20060101ALI20250131BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20250131BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20250131BHJP
B05D 3/06 20060101ALI20250131BHJP
B05D 1/26 20060101ALI20250131BHJP
B41J 2/21 20060101ALI20250131BHJP
【FI】
B41J2/01 109
B05C5/00 101
B05C9/12
B05C13/02
B05D7/00 K
B05D7/24 301M
B05D7/24 301T
B05D7/24 303A
B05D3/06 Z
B05D1/26 Z
B41J2/01 129
B41J2/01 123
B41J2/21
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023123064
(22)【出願日】2023-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000253503
【氏名又は名称】キリンホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(72)【発明者】
【氏名】山口 菜穂
(72)【発明者】
【氏名】吉井 孝平
【テーマコード(参考)】
2C056
4D075
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
2C056EA23
2C056EA24
2C056EE18
2C056FA13
2C056FB01
2C056FB09
2C056HA42
4D075AC06
4D075AC09
4D075AC71
4D075AC76
4D075AC88
4D075AE03
4D075BB41Z
4D075BB42Z
4D075BB46Z
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4D075CA13
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA23
4D075DB01
4D075DB11
4D075DB13
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4D075DB48
4D075DC41
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4D075EB22
4D075EB24
4F041AA03
4F041AB01
4F041BA01
4F041BA10
4F041BA13
4F042AA11
4F042AB00
4F042BA08
4F042DB42
4F042DB51
4F042DB52
4F042DF17
4F042DF21
4F042DF25
4F042ED02
(57)【要約】
【課題】本開示は、装置全体のサイズを縮小化し、かつ、コストを抑制することができる立体物の製造装置及び立体物の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本開示に係る立体物の製造装置100は、プライマーインクを吐出するプライマーインク用吐出ヘッド101と、第1照射装置121と、第1彩色インクを吐出する第1彩色インク用吐出ヘッド111と、第2彩色インクを吐出する第2彩色インク用吐出ヘッド112と、を含む吐出ヘッドユニット110と、第2照射装置122と、この順に立体物1を搬送する搬送装置105(105a,105b,105c)と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体物の外表面にプライマー層と該プライマー層上に設けられたインク層とを有する印刷部を形成する立体物の製造装置において、
前記プライマー層は、活性エネルギー線硬化型インクジェットインクであるプライマーインクの硬化物を含み、
前記インク層は、彩色部を有し、該彩色部は、色材を含有する活性エネルギー線硬化型インクジェットインクである彩色インクの硬化物を含み、
該彩色インクは、少なくとも、第1彩色インクと、該第1彩色インクとは異なる色の第2彩色インクと、を有し、
前記立体物の製造装置は、
前記プライマーインクを吐出するプライマーインク用吐出ヘッドと、
第1照射装置と、
前記第1彩色インクを吐出する第1彩色インク用吐出ヘッドと、前記第2彩色インクを吐出する第2彩色インク用吐出ヘッドと、を含む吐出ヘッドユニットと、
第2照射装置と、
この順に前記立体物を搬送する搬送装置と、を備えることを特徴とする立体物の製造装置。
【請求項2】
前記立体物の製造装置は、前記第2照射装置よりも前記搬送装置の下流側に配置された第3照射装置を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の立体物の製造装置。
【請求項3】
前記インク層は、前記プライマー層と前記彩色部との間に背景印刷部を更に有し、
該背景印刷部は、白色色材を含有する活性エネルギー線硬化型インクジェットインクである背景白インクの硬化物を含み、
前記立体物の製造装置は、前記第1照射装置と前記吐出ヘッドユニットとの間に、背景印刷部形成ユニットを更に有し、
該背景印刷部形成ユニットは、
前記背景白インクを吐出する背景白インク用吐出ヘッドと、
第4照射装置と、
を順に有することを特徴とする請求項1又は2に記載の立体物の製造装置。
【請求項4】
前記プライマーインク用吐出ヘッドと前記第1照射装置との間の前記搬送装置の立体物の搬送距離は、前記吐出ヘッドユニットと前記第2照射装置との間の前記搬送装置の立体物の搬送距離よりも長いことを特徴とする請求項1又は2に記載の立体物の製造装置。
【請求項5】
立体物の外表面にプライマー層と該プライマー層上に設けられたインク層とを有する印刷部を形成する立体物の製造方法において、
前記プライマー層は、活性エネルギー線硬化型インクジェットインクであるプライマーインクの硬化物を含み、
前記インク層は、彩色部を有し、該彩色部は、色材を含有する活性エネルギー線硬化型インクジェットインクである彩色インクの硬化物を含み、
該彩色インクは、少なくとも、第1彩色インクと、該第1彩色インクとは異なる色の第2彩色インクと、を有し、
前記立体物の製造方法は、
前記プライマーインクの硬化物上に前記第1彩色インクを付着させる第1彩色インク付着工程と、前記プライマーインクの硬化物上に前記第2彩色インクを付着させる第2彩色インク付着工程と、を少なくとも含む彩色インク付着工程と、
該彩色インク付着工程で前記プライマーインクの硬化物上に付着した前記第1彩色インク及び前記第2彩色インクを含む彩色インク群に活性エネルギー線を照射する第2照射工程と、
を有することを特徴とする立体物の製造方法。
【請求項6】
前記立体物の製造方法は、前記彩色インク付着工程より前に、
前記立体物の外表面に前記プライマーインクを付着させるプライマーインク付着工程と、
前記立体物の外表面に付着した前記プライマーインクに活性エネルギー線を照射する第1照射工程と、
を更に有することを特徴とする請求項5に記載の立体物の製造方法。
【請求項7】
前記立体物の製造方法は、
前記第2照射工程より後に、
前記彩色インク群に活性エネルギー線を更に照射する第3照射工程を更に有することを特徴とする請求項5に記載の立体物の製造方法。
【請求項8】
前記インク層は、前記プライマー層と前記彩色インクの硬化物との間に、背景印刷部を更に有し、
該背景印刷部は、白色色材を含有する活性エネルギー線硬化型インクジェットインクである背景白インクの硬化物を含み、
前記立体物の製造方法は、前記前記第1照射工程と前記彩色インク付着工程との間に、背景印刷部形成工程を更に有し、
該背景印刷部形成工程は、
前記プライマー層上に前記背景白インクを付着させる背景白インク付着工程と、
前記プライマー層上に付着した前記背景白インクに活性エネルギー線を照射する第4照射工程と、
を有することを特徴とする請求項6に記載の立体物の製造方法。
【請求項9】
前記プライマーインク付着工程の終了後前記第1照射工程で前記活性エネルギー線の照射を開始するまでの時間は、前記彩色インク付着工程の終了後前記第2照射工程で前記活性エネルギー線の照射を開始するまでの時間よりも長いことを特徴とする請求項6に記載の立体物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、立体物の製造装置及び立体物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
省資源の機運が高まっており、ワンウェイプラスチックの削減が求められている。PETボトルをはじめとした容器のラベルはその用途が終了した後は、廃棄され、特にプラスチックラベルは再生利用も困難なために廃棄率が非常に高い。そこで、ラベルレスを実現するため、容器へ直接印字を形成する技術が提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。特許文献1には、容器の側面に直接印刷を施す装置が開示されており、プリントヘッドとしてドロップオンデマンド原理に従って動作するプリントヘッドが開示されている。
【0003】
また、紫外線硬化型インクで、シアンインク(C)、マゼンタインク(M)、ブラックインク(K)及びイエローインク(Y)の各インクを印刷する印刷装置が開示されている(例えば、特許文献2を参照。)。特許文献2には、凸版印刷方式による印刷装置の技術であるが、特許文献2の
図1に示される印刷装置では、各インクの印刷ユニットと、各インクを硬化させる紫外線照射部とが、搬送ドラムの周囲に交互に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第11235592号明細書
【特許文献2】国際公開第2010/150780号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、プリンタヘッドを一つだけ有する装置が開示されている。しかし、容器への直接印刷では、高い美粧性の要求に応えるべく、複数色のカラーインクに対応した複数台のプリンタヘッドを有する印刷装置が求められている。一般的に複数色のカラーインクを印刷する場合、カラーインク同士の滲みを抑制して、高詳細なデザインを得るために、特許文献2に開示された印刷装置のように、各色印刷後にその都度紫外線照射が行われてきた。しかし、特許文献1のように容器の側面に直接印刷するにあたり、特許文献2の装置のようにカラーインクの全色について紫外線照射を行うと、印刷1面あたりインクジェットヘッドを4台以上(C、M、Y、K)に加えて、UVランプを4台以上の合計8台以上の装置を配列する必要があり、さらに、UVランプからの迷光対策でインクジェットヘッドとUVランプの間に一定の距離を確保しなくてはならないため、印刷装置の複雑化、印刷装置のサイズの巨大化及びコストの増大という課題があった。
【0006】
本開示は、装置全体のサイズを縮小化し、かつ、コストを抑制することができる立体物の製造装置及び立体物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る立体物の製造装置は、立体物の外表面にプライマー層と該プライマー層上に設けられたインク層とを有する印刷部を形成する立体物の製造装置において、前記プライマー層は、活性エネルギー線硬化型インクジェットインクであるプライマーインクの硬化物を含み、前記インク層は、彩色部を有し、該彩色部は、色材を含有する活性エネルギー線硬化型インクジェットインクである彩色インクの硬化物を含み、該彩色インクは、少なくとも、第1彩色インクと、該第1彩色インクとは異なる色の第2彩色インクと、を有し、前記立体物の製造装置は、前記プライマーインクを吐出するプライマーインク用吐出ヘッドと、第1照射装置と、前記第1彩色インクを吐出する第1彩色インク用吐出ヘッドと、前記第2彩色インクを吐出する第2彩色インク用吐出ヘッドと、を含む吐出ヘッドユニットと、第2照射装置と、この順に前記立体物を搬送する搬送装置と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る立体物の製造装置は、前記第2照射装置よりも前記搬送装置の下流側に配置された第3照射装置を更に備える形態を包含する。
【0009】
本発明に係る立体物の製造装置では、前記インク層は、前記プライマー層と前記彩色部との間に背景印刷部を更に有し、該背景印刷部は、白色色材を含有する活性エネルギー線硬化型インクジェットインクである背景白インクの硬化物を含み、前記立体物の製造装置は、前記第1照射装置と前記吐出ヘッドユニットとの間に、背景印刷部形成ユニットを更に有し、該背景印刷部形成ユニットは、前記背景白インクを吐出する背景白インク用吐出ヘッドと、第4照射装置と、を順に有することが好ましい。背景白インクを彩色部のインクに先立って硬化させることで、背景印刷部上に彩色インクをより安定して定着させることができる。その結果、より鮮明な画像を得ることができる。
【0010】
本発明に係る立体物の製造装置では、前記プライマーインク用吐出ヘッドと前記第1照射装置との間の前記搬送装置の立体物の搬送距離は、前記吐出ヘッドユニットと前記第2照射装置との間の前記搬送装置の立体物の搬送距離よりも長いことが好ましい。プライマーインクのレベリングによって得られるプライマー層を平坦状としつつ、彩色インクの滲みを抑制してより鮮明が画像を得ることができる。
【0011】
本発明に係る立体物の製造方法は、立体物の外表面にプライマー層と該プライマー層上に設けられたインク層とを有する印刷部を形成する立体物の製造方法において、前記プライマー層は、活性エネルギー線硬化型インクジェットインクであるプライマーインクの硬化物を含み、前記インク層は、彩色部を有し、該彩色部は、色材を含有する活性エネルギー線硬化型インクジェットインクである彩色インクの硬化物を含み、該彩色インクは、少なくとも、第1彩色インクと、該第1彩色インクとは異なる色の第2彩色インクと、を有し、前記立体物の製造方法は、前記プライマーインクの硬化物上に前記第1彩色インクを付着させる第1彩色インク付着工程と、前記プライマーインクの硬化物上に前記第2彩色インクを付着させる第2彩色インク付着工程と、を少なくとも含む彩色インク付着工程と、該彩色インク付着工程で前記プライマーインクの硬化物上に付着した前記第1彩色インク及び前記第2彩色インクを含む彩色インク群に活性エネルギー線を照射する第2照射工程と、を有することを特徴とする。
【0012】
本発明に係る立体物の製造方法は、前記彩色インク付着工程より前に、前記立体物の外表面に前記プライマーインクを付着させるプライマーインク付着工程と、前記立体物の外表面に付着した前記プライマーインクに活性エネルギー線を照射する第1照射工程と、を更に有する形態を包含する。
【0013】
本発明に係る立体物の製造方法は、前記第2照射工程より後に、前記彩色インク群に活性エネルギー線を更に照射する第3照射工程を更に有する形態を包含する。
【0014】
本発明に係る立体物の製造方法では、前記インク層は、前記プライマー層と前記彩色インクの硬化物との間に、背景印刷部を更に有し、該背景印刷部は、白色色材を含有する活性エネルギー線硬化型インクジェットインクである背景白インクの硬化物を含み、前記立体物の製造方法は、前記前記第1照射工程と前記彩色インク付着工程との間に、背景印刷部形成工程を更に有し、該背景印刷部形成工程は、前記プライマー層上に前記背景白インクを付着させる背景白インク付着工程と、前記プライマー層上に付着した前記背景白インクに活性エネルギー線を照射する第4照射工程と、を有することが好ましい。背景白インクを彩色部のインクに先立って硬化させることで、背景印刷部上に彩色インクをより安定して定着させることができる。その結果、より鮮明な画像を得ることができる。
【0015】
本発明に係る立体物の製造方法では、前記プライマーインク付着工程の終了後前記第1照射工程で前記活性エネルギー線の照射を開始するまでの時間は、前記彩色インク付着工程の終了後前記第2照射工程で前記活性エネルギー線の照射を開始するまでの時間よりも長いことが好ましい。プライマーインクのレベリングによって得られるプライマー層を平坦状としつつ、彩色インクの滲みを抑制してより鮮明が画像を得ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、装置全体のサイズを縮小化し、かつ、コストを抑制することができる立体物の製造装置及び立体物の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図4】本実施形態に係る立体物の製造装置の一例を示す概略構成図である。
【
図5】本実施形態に係る立体物の製造装置の別の例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明するが、本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。
【0019】
本実施形態に係る立体物の製造装置は、例えば、
図1に示すような立体物1の外表面に、
図2又は
図3に示すように、プライマー層21とプライマー層21上に設けられたインク層22とを有する印刷部20を形成する装置である。
【0020】
(立体物)
図1は、立体物の一例を示す画像である。立体物1は、
図1では一例として口部11と口部11に連接する胴部12とを有する容器本体10を備えるプラスチック容器である形態を示したが、本発明はこれに限定されない。立体物1の材質は、特に限定されず、例えば、プラスチック、ガラス、石英又は金属である。立体物1は、飲料容器であってもよい。飲料容器は、例えば、
図1に示すようなプラスチック容器、金属缶、ガラス瓶である。このうち、立体物1は、プラスチック容器であることが好ましい。
【0021】
立体物1の材料の一例として、プラスチックの種類は、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂(PP)、シクロオレフィンコポリマー樹脂(COC、環状オレフィン共重合)、アイオノマ樹脂、ポリ‐4‐メチルペンテン-1樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリスチレン樹脂、エチレン‐ビニルアルコール共重合樹脂、アクリロニトリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、又は、4弗化エチレン樹脂、アクリロニトリル-スチレン樹脂、アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン樹脂を例示することができる。この中で、PETが特に好ましい。立体物1がプラスチック容器である場合、プラスチック容器の容量は、特に制限はなく、例えば100ml~3000mlである。
【0022】
プラスチック容器の成形方法は、特に限定されないが、例えば、ブロー成形法である。具体的には、まず、熱可塑性樹脂を射出成形してプリフォームを製造し、次に、プリフォームをブロー成形して、
図1に示すように、口部11及び胴部12が順に連接された形状を有するプラスチック容器を製造する。
【0023】
容器本体10は、内容物を収容する内部空間を有する。内容物は、特に限定されないが、例えば、飲料、酒類、調味料などの液体、食品、薬品又は工業製品である。飲料は、例えば、牛乳、ヨーグルト飲料、乳酸菌飲料、乳飲料、アルコール飲料などの白色飲料、ストレートティー、レモンティー、緑茶、果汁系飲料、炭酸飲料、ビールなどの有色透明飲料、ミルクティー、コーヒーなどの混濁色飲料又はスポーツ飲料、水、炭酸水、酎ハイなどの透明飲料である。
【0024】
口部11は、内容物の充填口及び注ぎ口である。口部11には、キャップ(不図示)が装着されることによってボトルの密閉がなされる。口部11の下端には、ネックサポートリングが形成されていてもよい。
【0025】
胴部12は、口部11の下端に連接する部分であり、口部11側から順に、口部11の下端から下方に向かうにしたがって胴径を拡径させた上胴部12aと、筒状の胴部本体12bと、胴部本体12bとほぼ同じ胴径で連接して接地面を有する下胴部12cと、を有していてもよい。上胴部12aは、その形状から肩部と呼ばれることもある。胴部本体12bは、例えば、円筒形状又は正n角筒形状(ただし、nは4以上の整数である。)である。下胴部12cは、容器本体10の底部となる。
【0026】
印刷部20は、上胴部12a、胴部本体12b及び下胴部12cの少なくともいずれか一部に設けられる。
図1では一例として、胴部本体12bに印刷部20として1次元コードを示す識別コード部が設けられた形態を示したが、本発明はこれに限定されない。胴部12がリブを有する場合、識別コード部は、リブを避けた部分に設けることが好ましい。印刷部20は、識別コード部の他、文字列(不図示)又はデザイン画像部(不図示)を含んでいてもよい。文字列は、例えば、商品の名称、原材料名、内容量、賞味期限及び製造元などの商品情報を含む。デザイン画像部は、例えば、商品名若しくは会社名などを示すロゴ、又は、色彩、絵画、写真、イラスト若しくは模様などの意匠性を高めるための画像を含む。
【0027】
印刷部20が設けられる領域は、1カ所だけであるか、又は2カ所以上であってもよい。印刷部20は胴部12のうち光透過性を有する部分に設けられることが好ましい。光透過性を有する形態は、例えば、無彩色であり胴部12の向こう側が透けて見える程度の可視光透過率を有する無色透明、有彩色であり胴部12の向こう側が透けて見える程度の可視光透過率を有する有色透明、胴部12を透過した光によって胴部12の向こう側の文字が読める程度の可視光透過率を有する半透明、又は胴部12を透過した光によって胴部12の向こう側の文字は読めないがシルエットは見える程度の可視光透過率を有する不透明を包含する。胴部12の少なくとも一部が光透過性を有する容器は、特に限定されないが、例えば、胴部12の全体が無色透明である一般的なペットボトル、胴部12の少なくとも一部が半透明又は可視光透過率を有する不透明である発泡ペットボトルを包含する。
【0028】
図2は、印刷部の一例を示す概略断面図である。印刷部20は、
図2に示すように、胴部12の外表面側から順に、プライマー層21、インク層22を有する。
【0029】
プライマー層21は、立体物1の外表面と印刷部20のインクとの密着性を確保するための層である。プライマー層21は、アルカリ剥離性を有するか、又はアルカリ剥離性を有さなくてもよい。本実施形態では、プライマー層21は、アルカリ剥離性を有することが好ましい。例えば、ペットボトルなどの容器は、リサイクルシステムにおいて、破砕処理及び粉砕処理を行った後、比重分離法によって比重の大きい容器の粉砕物と、比重の小さい蓋の粉砕物とに選別される。この選別は、例えば、容器を処理液(例えば、アルカリ水溶液)に浸漬させることによって行われる。プライマー層21がアルカリ剥離性を有することで、リサイクル適性に優れた容器とすることができる。本明細書において、アルカリ剥離性とは、アルカリ溶液に浸漬させると胴部12からプライマー層21が剥がれる性質をいう。アルカリ剥離性は、例えば、プライマー層21がアルカリに溶解して胴部12から剥離してもよいし、あるいはプライマー層21がアルカリに溶解せずアルカリ溶液中で胴部12とプライマー層21との間で界面剥離してもよい。本実施形態では、プライマー層21は、例えば、立体物1の少なくとも印刷部20を含む領域を、85℃以上90℃以下の1.5質量%水酸化ナトリウム水溶液中に15分浸漬および攪拌させると、印刷部20の少なくとも一部が立体物1の外表面から剥がれることが好ましい。プライマー層の厚さは、特に限定されないが、6~26μmであることが好ましく、11~15μmであることがより好ましい。
【0030】
プライマー層21は、活性エネルギー線硬化型インクジェットインクであるプライマーインクの塗布膜であり、プライマーインクの硬化物であるプライマー硬化物を含む。プライマー層21は、プライマー硬化物だけからなるか、又はプライマー硬化物に加えて、フィラー又は顔料・染料等の着色剤などの添加物を含んでいてもよい。
【0031】
活性エネルギー線硬化型インクジェットインクは、例えば、重合性モノマーと、重合性界面活性剤と、を含むことが好ましい。重合性モノマーは、アルカリ剥離性の観点から、少なくとも多官能モノマーを含むことが好ましい。多官能モノマーは、重合性基を2つ以上有するモノマーであれば特に限定されない。多官能モノマーは、硬化性の観点から、多官能のラジカル重合性モノマーであることが好ましく、多官能エチレン性不飽和モノマーであることがより好ましく、例えば、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレートである。また、重合性モノマーは、多官能モノマーに加えて、更に単官能モノマーを含んでいてもよい。単官能モノマーは、重合性基を1つ有するモノマーであれば特に限定されない。単官能モノマーは、硬化性の観点から、単官能のラジカル重合性モノマーであることが好ましく、単官能エチレン性不飽和モノマーであることがより好ましい。単官能エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、単官能(メタ)アクリレート、単官能(メタ)アクリルアミド、単官能芳香族ビニル化合物、単官能ビニルエーテル及び単官能N-ビニル化合物が挙げられ、例えば、環状トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、ステアリル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートである。重合性界面活性剤としては、例えば、重合性シリコーン系界面活性剤、重合性フッ素系界面活性剤、及び重合性アクリル系界面活性剤が挙げられる。重合性シリコーン系界面活性剤の市販品としては、例えば、BYK-UV3500、3505、3530、3570、3575、3576(BYK社製)、Tegorad2100、2200、2250、2300、2500、2600、2700、2800、2010、2011(エボニック社製)、EBECRYL350、1360(ダイセル・オルネクス社製)、KP-410、411,412,413,414,415,416,418、420、422、423(信越シリコーン社製)等の(メタ)アクリロイル基を有するシリコーン系界面活性剤が挙げられる。重合性フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキル基と重合性基とを有する化合物が挙げられる。重合性フッ素系界面活性剤の市販品としては、例えば、メガファックRS-56、RS-72-K、RS-75、RS-76-E、RS-65-NS、RS-78、RS-90(DIC社製)等の(メタ)アクリロイル基を有するフッ素系界面活性剤が挙げられる。重合性アクリル系界面活性剤としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル構造の側鎖に重合性基が結合した化合物が挙げられる。重合性アクリル系界面活性剤の市販品としては、例えば、CN821(Sartomer社製)が挙げられる。活性エネルギー線硬化型インクジェットインクは、少なくとも1種の重合開始剤を含有してもよい。重合開始剤は、ラジカルを発生するラジカル重合開始剤であることが好ましく、例えば、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、1,3-ジ({α-[1-クロロ-9-オキソ-9H-チオキサンテン-4-イル)オキシ]アセチルポリ[オキシ(1-メチルエチレン)]}オキシ)-2,2-ビス({α-[1-メチルエチレン)]}オキシメチル)プロパンである。
【0032】
プライマーインクは、色材を含有しないクリアインクであるか、又は色材を含有する着色インクであってもよい。色材の色は、黒、白、青、赤、緑、黄、橙など何色でもよく、特に限定されるものではない。
【0033】
インク層22は、プライマー層21上に形成されて、文字、数字若しくは記号(以降、文字、数字又は記号をまとめて文字等ということもある)、及び/又は、イラスト若しくはアイコンなどのデザイン画像を示す層である。インク層22は、1層だけからなるか、又は2層以上であってもよい。
【0034】
彩色部22Aは、インク層22のうち、文字等及び/又はデザイン画像を構成する。例えば
図1において、彩色部22Aは、黒色で印刷された1次元コードのバーの集合体及び数字群である。彩色部22Aは、色材を含有する活性エネルギー線硬化型インクジェットインクである彩色インクの塗布膜であり、彩色インクの硬化物であるインク硬化物を含む。彩色インクは、プライマーインクとして例示した活性エネルギー線硬化型インクジェットインクと基本的な構成を同じくし、色材を含む。色材は、着色剤とも呼ばれ、例えば、染料及び顔料が挙げられる。耐熱性、耐光性、耐水性等の耐久性の観点から、色材は、顔料であることが好ましい。顔料としては、通常市販されている有機顔料及び無機顔料のいずれも使用することができる。顔料としては、例えば、伊藤征司郎編「顔料の辞典」(2000年刊)、W.Herbst,K.Hunger「Industrial Organic Pigments」、特開2002-12607号公報、特開2002-188025号公報、特開2003-26978号公報及び特開2003-342503号公報に記載の顔料が挙げられる。色材の色は、例えば、黒、白、青、赤、緑、黄、橙など何色でもよく、特に限定されるものではない。彩色部22Aは、アルカリ剥離性を有するか、又はアルカリ剥離性を有さなくてもよい。本実施形態では、プライマー層21がアルカリ剥離性を有する場合、彩色部22Aは、アルカリ剥離性を有さないことがより好ましい。彩色部22Aは、インク硬化物だけからなるか、又はインク硬化物に加えて、フィラー又は顔料・染料等の着色剤などの添加物を含んでいてもよい。
【0035】
本実施形態では、彩色インクは、少なくとも、色材の色が第1色である第1彩色インクと、色材の色が第2色である該第1彩色インクとは異なる色の第2彩色インクと、を有する。第1彩色インクの色及び第2彩色インクの色は、相互に異なる色であればよく、各色は特に限定されない。例えば、第1彩色インクは、ブラックインク、シアンインク、イエローインク及びマゼンタインクからなる群の中から選ばれるいずれか一種であることが好ましい。第2彩色インクは、ブラックインク、シアンインク、イエローインク及びマゼンタインクからなる群の中から選ばれ第1彩色インクとは異なるいずれか一種であることが好ましい。彩色インクは、第1彩色インク及び第2彩色インクに加えて、第3彩色インク及び第4彩色インクを更に有し、第1彩色インク、第2彩色インク、第3彩色インク及び第4彩色インクは、それぞれ、イエローインク、マゼンタインク、シアンインク、ブラックインクであることが好ましい。印刷部20をフルカラー印刷とすることができ、美粧性により優れた立体物を得ることができる。本実施形態では、彩色インクの色及び色数は、前記した例に限定されない。また、彩色インクは、彩色白インクを更に有していてもよい。
【0036】
図3は、印刷部の別の例を示す概略断面図である。本実施形態では、インク層22は、
図3に示すように、プライマー層21と彩色部22Aとの間に背景印刷部22Bを更に有していてもよい。背景印刷部22Bは、例えば
図1において、印刷部20のうち長方形状の白ベタ印刷である。背景印刷部22Bは、白色色材を含有する活性エネルギー線硬化型インクジェットインクである背景白インクの硬化物を含む。背景白インクは、プライマーインクとして例示した活性エネルギー線硬化型インクジェットインクと基本的な構成を同じくし、白色色材を含む。白色色材は、彩色インクの色材として例示した色材の中から白色の色材を用いればよく、特に限定されないが、例えば、二酸化チタンである。背景印刷部22Bは、プライマー層21と情報画像部22Aとの間に設けられたベタ印刷であることが好ましく、1度塗りであるか、又は2度塗り以上の重ね塗りであってもよい。背景印刷部22Bの厚さは、特に限定されないが、6~26μmであることが好ましく、11~15μmであることがより好ましい。背景印刷部22Bは、アルカリ剥離性を有するか、又はアルカリ剥離性を有さなくてもよい。本実施形態では、プライマー層21がアルカリ剥離性を有する場合、背景印刷部22Bは、アルカリ剥離性を有さないことがより好ましい。背景印刷部22Bは、背景白インクの硬化物だけからなるか、又は背景白インクの硬化物に加えて、フィラー又は顔料・染料等の着色剤などの添加物を含んでいてもよい。
【0037】
(立体物の製造装置)
図4は、本実施形態に係る立体物の製造装置の一例を示す概略構成図である。立体物の製造装置100は、プライマーインクを吐出するプライマーインク用吐出ヘッド101と、第1照射装置121と、第1彩色インクを吐出する第1彩色インク用吐出ヘッド111と、第2彩色インクを吐出する第2彩色インク用吐出ヘッド112と、を含む吐出ヘッドユニット110と、第2照射装置122と、この順に立体物1を搬送する搬送装置105(105a,105b,105c)と、を備える。
【0038】
プライマーインク用吐出ヘッド101は、インクジェット記録方式に用いられるインクジェットヘッドであればよく、特に限定されない。インクジェット記録方式は、画像を記録し得る方式であれば特に限定されず、コンティニュアス型又はオンデマンド型などの公知の方式を用いることができる。本実施形態では、インクジェット記録方式はオンデマンド型であることが好ましい。オンデマンド型には、ピエゾ方式及びサーマル方式があるが、本実施形態ではピエゾ方式であることがより好ましい。
【0039】
第1照射装置121は、活性エネルギー線硬化型インクジェットインクを硬化させる活性エネルギー線を照射する装置であって、立体物1の外表面上に付着したプライマーインクを硬化させる装置である。活性エネルギー線は、例えば、γ線、β線、電子線、紫外線、及び可視光線である。このうち、活性エネルギー線は紫外線であることが好ましい。紫外線のピーク波長は、特に限定されないが、200~410nmであることが好ましく、250~400nmであることがより好ましい。紫外線照射用の光源は、特に限定されず、例えば、水銀ランプ又はメタルハライドランプなどのランプ、紫外線発光ダイオード(UV-LED)などの発光ダイオード、ガスレーザー、固体レーザー又は紫外線レーザーダイオード(UV-LD)などのレーザー光源である。
【0040】
第1照射装置121は、プライマーインクの仮硬化のための仮硬化装置であるか、又はプライマーインクの本硬化のための本硬化装置であってもよい。本明細書において、「仮硬化」とは、活性エネルギー線硬化型インクジェットインク中の重合性モノマーの一部のみを重合させることをいい、仮硬化のための活性エネルギー線の照射を「ピニング露光」ということもある。また、本明細書において、「本硬化」とは、活性エネルギー線硬化型インクジェットインク中の重合性モノマーの実質的に全部を重合させることをいい、本硬化のための活性エネルギー線の照射を「本露光」ということもある。
【0041】
吐出ヘッドユニット110は、少なくとも第1彩色インク用吐出ヘッド111及び第2彩色インク用吐出ヘッド112を含む。吐出ヘッドユニット110は、
図4に示すように、第1彩色インク用吐出ヘッド111及び第2彩色インク用吐出ヘッド112に加えて、第3彩色インク用吐出ヘッド113及び第4彩色インク用吐出ヘッド114を更に含むことが好ましい。これらの彩色インク用吐出ヘッド111,112,113,114は、搬送装置105bの搬送経路106沿いに配置されることが好ましい。彩色インク用吐出ヘッド111,112,113,114は、プライマーインク用吐出ヘッド101と同様のインクジェットヘッドを用いることができる。吐出ヘッドユニット110における各彩色インク用吐出ヘッド111,112,113,114の配置は、特に限定されないが、例えば、搬送装置105bの搬送方向Cの上流側から順に、第1彩色インク用吐出ヘッド111としてブラックインクを吐出するブラックヘッド、第2彩色インク用吐出ヘッド112としてシアンインクを吐出するシアンヘッド、第3彩色インク用吐出ヘッド113としてマゼンタインクを吐出するマゼンタヘッド、第4彩色インク用吐出ヘッド114としてイエローインクを吐出するイエローヘッドを配置することが好ましい。各彩色インク用吐出ヘッド111,112,113,114の吐出打滴量は、1~100pL(ピコリットル)であることが好ましく、3~80pLであることがより好ましく、3~50pLであることがさらに好ましい。
【0042】
吐出ヘッドユニット110は、彩色白インクを吐出する彩色白インク用吐出ヘッド(不図示)を更に有していてもよい。彩色白インク用吐出ヘッドの順番は、吐出ヘッドユニット110に含まれる彩色インク用吐出ヘッド111,112,113,114のうち何番目に配置してもよく、例えば、彩色白インク用吐出ヘッドは、搬送方向Cの最上流側、すなわち
図4における第1照射装置121と第1彩色インク用吐出ヘッド111との間に配置するか、第1彩色インク用吐出ヘッド111と第2彩色インク用吐出ヘッド112との間に配置するか、第2彩色インク用吐出ヘッド112と第3彩色インク用吐出ヘッド113との間に配置するか、第3彩色インク用吐出ヘッド113と第4彩色インク用吐出ヘッド114との間に配置するか、又は搬送方向Cの最下流側、すなわち
図4における第4彩色インク用吐出ヘッド114と第2照射装置122との間に配置してもよい。
【0043】
第2照射装置122は、活性エネルギー線硬化型インクジェットインクを硬化させる活性エネルギー線を照射する装置であって、プライマーインク硬化物上に付着した彩色インクを硬化させる装置である。第2照射装置122は、彩色インクの仮硬化のための仮硬化装置である。また、第2照射装置122は、彩色インクにピニング露光後、本露光することで、彩色インクの仮硬化装置及び本硬化装置を兼ねていてもよい。第2照射装置122は、第1照射装置121と同様の装置を用いることができる。
【0044】
搬送装置105(105a,105b,105c)は、立体物1を搬送経路106に沿って移動させる装置であり、例えばベルトコンベア又はロータリーテーブルである。搬送装置105(105a,105b,105c)は、製造装置100の稼働中は、原則、立体物1を定速で連続的に搬送することが好ましいが、必要に応じて一時停止したり、立体物1を間欠的に搬送したり、又は搬送速度を変更してもよい。搬送装置105(105a,105b,105c)は、印刷前の立体物1を搬送する第1搬送ライン105aと、立体物1を印刷エリアへ搬送する第2搬送ライン105bと、印刷後の立体物1を搬送する第3搬送ライン105cと、を包含する。
図4では一例として、第1搬送ライン105a及び第3搬送ライン105cがベルトコンベアであり、第2搬送ライン105bがロータリーテーブルであるロータリー式の製造装置である形態を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、第1~第3搬送ライン105a,105b,105cがいずれもベルトコンベアであるリニア式の製造装置であってもよい。また、搬送装置105を停止し、停止した立体物1に対して吐出ヘッドユニット110を移動させて印刷を行う方式であってもよい。
図4及び
図5では、代表して一つの立体物1だけを図示して他の立体物1の図示を省略しており、搬送装置105(105a,105b,105c)は、複数の立体物1を搬送させることが好ましい。複数の立体物1は、相互に所定の間隔をあけて搬送装置105(105a,105b,105c)上に配置されることが好ましい。また、立体物1は、搬送装置105(105a,105b,105c)上に一列に配置されるか、又は二列以上の多列で配置されてもよい。立体物1が多列で配置される場合、プライマーインク用吐出ヘッド101、第1照射装置121、吐出ヘッドユニット110、第2照射装置122を含む各構成要素を立体物1の列に応じて多列で配置してもよい。また、プライマーインク用吐出ヘッド101、第1照射装置121、吐出ヘッドユニット110、第2照射装置122を含む各構成要素は、立体物1の搬送経路106に対してロータリーテーブル(搬送装置105b)の径方向外側に配列した形態を示したが、本発明はこれに限定されず、立体物1の搬送経路106に対してロータリーテーブル(搬送装置105b)の径方向内側に配列してもよく、立体物1の搬送経路106に対してロータリーテーブル(搬送装置105b)の径方向外側及び径方向内側の両サイドに配列してもよい。
【0045】
本実施形態に係る立体物1の製造装置100は、立体物1の自転装置(不図示)を更に備えることが好ましい。立体物1の自転装置は、立体物1を搬送装置105で移動させながら立体物1の中心軸を中心に回転(自転)させる装置である。立体物1の自転装置は、特に限定されないが、例えば、搬送装置105上に設置されたターンテーブル、立体物1を持ち上げて回転させる昇降回転装置である。立体物1の自転装置がターンテーブルである場合、ターンテーブルは立体物1を載せて搬送装置105によって搬送経路106を移動しつつターンテーブルの回転によって立体物1を立体物1の中心軸を中心に回転させる。立体物1の自転装置が昇降回転装置である場合、昇降回転装置は、立体物1を搬送装置105の搬送面から持ち上げて持ち上げた立体物1を立体物1の中心軸を中心に回転させる。製造装置100が自転装置を備えることで、立体物1を自転させて立体物1の側面の全周に印刷を施すことができる。また、プライマーインクを付着後自転装置によってその場で立体物1を自転させることで、プライマーインクをレベリングする時間を確保することができる。
【0046】
本実施形態に係る立体物1の製造装置100は、立体物1の整列装置(不図示)を更に備えることが好ましい。立体物1の整列装置は、搬送装置105によって搬送される立体物1を所定の方向に向ける装置である。立体物1を所定の方向に向けるとは、例えば、印刷部20(例えば
図1に図示)を形成しようとする面を、プライマーインク用吐出ヘッド101、第1照射装置121、吐出ヘッドユニット110、第2照射装置122を含む各構成要素に対面させることをいう。製造装置100が整列装置を備えることで、印刷ずれを抑制することができる。また、印刷部20を所定の場所に設けることができる。立体物1の整列装置は、特に限定されないが、例えば、立体物1を挟持して搬送装置105の搬送面の所定の位置に移動させる挟持治具、搬送装置105の搬送面に設けられて立体物1を搬送面上の所定の位置に誘導する整列リブである。
【0047】
本実施形態に係る立体物1の製造装置100は、立体物1の保持装置(不図示)を更に備えることが好ましい。立体物1の保持装置は、搬送装置105によって搬送される立体物1を保持する装置である。立体物1の保持装置は、特に限定されないが、例えば、立体物1を掴む挟持アーム、立体物1を支持する保持ガイドである。製造装置100が保持装置を備えることで、印刷ずれを抑制することができる。また、印刷部20を所定の場所に設けることができる。
【0048】
「この順に立体物1を搬送する搬送装置105(105a,105b,105c)」とは、少なくとも、立体物1に対して、プライマーインク用吐出ヘッド101、第1照射装置121、吐出ヘッドユニット110、第2照射装置122の順番に処理が施されるように、搬送装置105が立体物1を移送させることを意味している。本実施形態では、搬送経路106沿いに上流側から順に、プライマーインク用吐出ヘッド101、第1照射装置121、吐出ヘッドユニット110、第2照射装置122が配置されていることが好ましい。本実施形態では、プライマーインク用吐出ヘッド101、第1照射装置121、吐出ヘッドユニット110及び第2照射装置122の各構成要素同士の間に、その他の構成要素が配置されていてもよい。
【0049】
従来の立体物の製造装置では、2種以上の彩色インクを用いる場合、インク同士の滲みを防止するために、彩色インクの吐出ヘッドと彩色インクへの照射装置とを交互に配置させて、各彩色インクの付着とピニングとが交互に行われてきた。このため、彩色インクの色数が増えると、その数に相当する吐出ヘッド及び照射装置のセットを設置する必要があり、製造装置の大型化の問題があった。本実施形態に係る立体物の製造装置100では、2種以上の彩色インクを一つの照射装置でまとめてピニングさせて一部ピニングレスとすることで、照射装置の台数を削減し、製造装置のサイズを縮小化することができる。また、搬送装置105で立体物1を移動させながらインクジェット方式で高速印刷する公転印刷方式を採用することで、一部ピニングレスとしても商品の成分表示などの文字の視認性を確保した画質を得ることができる。
【0050】
本実施形態に係る立体物の製造装置100は、
図4に示すように、第2照射装置122よりも搬送装置105の下流側に配置された第3照射装置123を更に備える形態を包含する。
【0051】
第3照射装置123は、活性エネルギー線硬化型インクジェットインクを硬化させる活性エネルギー線を照射する装置である。第3照射装置123は、彩色インクの本硬化のための本硬化装置である。第3照射装置123は、第1照射装置121と同様の装置を用いることができる。第3照射装置123は、第2照射装置122よりも搬送経路106の下流側に配置されることが好ましい。
【0052】
図5は、本実施形態に係る立体物の製造装置の別の例を示す概略構成図である。本実施形態に係る立体物の製造装置100では、インク層22は、
図3に示すように、プライマー層21と彩色部22Aとの間に背景印刷部22Bを更に有し、背景印刷部22Bは、白色色材を含有する活性エネルギー線硬化型インクジェットインクである背景白インクの硬化物を含み、立体物の製造装置100は、
図5に示すように、第1照射装置121と吐出ヘッドユニット110との間に、背景印刷部形成ユニット130を更に有し、背景印刷部形成ユニット130は、背景白インクを吐出する背景白インク用吐出ヘッド131と、第4照射装置132と、を順に有することが好ましい。
【0053】
背景印刷部形成ユニット130は、第1照射装置121と第1彩色インク用吐出ヘッド111との間に配置されることが好ましい。
【0054】
背景白インク用吐出ヘッド131は、プライマーインク用吐出ヘッド101と同様のインクジェットヘッドを用いることができる。
【0055】
第4照射装置132は、活性エネルギー線硬化型インクジェットインクを硬化させる活性エネルギー線を照射する装置であって、背景白インクを硬化させるための装置である。第4照射装置132は、背景白インク用吐出ヘッド131よりも搬送経路106の下流側に配置されることが好ましい。第4照射装置132は、第1照射装置121と同様の装置を用いることができる。第4照射装置132は、背景白インクの仮硬化のための仮硬化装置であるか、又は背景白インクの本硬化のための本硬化装置であってもよい。吐出ヘッドユニット110の搬送経路6の上流側に第4照射装置132を設けることで、背景白インクを彩色部のインクに先立って硬化させることができ、背景印刷部上に彩色インクをより安定して定着させることができる。その結果、より鮮明な画像を得ることができる。
【0056】
本実施形態に係る立体物の製造装置100では、プライマーインク用吐出ヘッド101と第1照射装置121との間の搬送装置105の立体物1の搬送距離は、吐出ヘッドユニット110と第2照射装置122との間の搬送装置105の立体物1の搬送距離よりも長いことが好ましい。吐出ヘッドユニット110と第2照射装置122との間の搬送装置105の立体物1の搬送距離は、吐出ヘッドユニット110のうち搬送経路106の最下流に配置された彩色インク用吐出ヘッド(
図4では第4彩色インク用吐出ヘッド114)と第2照射装置122との間の搬送装置105の立体物1の搬送距離である。ここで、プライマーインク用吐出ヘッド101と第1照射装置121との間の区間における立体物1の搬送速度が、吐出ヘッドユニット110と第2照射装置122との間の区間における立体物1の搬送速度と同じであれば、両区間において搬送距離と搬送時間とは比例関係にある。例えば、プライマーインク用吐出ヘッド101、第1照射装置121、吐出ヘッドユニット110及び第2照射装置122がすべて
図4に示す第2搬送ライン105bのようにロータリーテーブル沿いにある場合、前記両区間において搬送距離と搬送時間とは比例関係にある。両区間において搬送距離と搬送時間とは比例関係にある場合、プライマーインク用吐出ヘッド101と第1照射装置121との間の搬送装置105の立体物1の搬送距離を、吐出ヘッドユニット110と第2照射装置122との間の搬送装置105の立体物1の搬送距離よりも長くすることによって、プライマーインク用吐出ヘッド101と第1照射装置121との間の区間の搬送時間をより長く確保することができる。その結果、プライマーインクのレベリングによって得られるプライマー層を平坦状としつつ、彩色インクの滲みを抑制してより鮮明が画像を得ることができる。プライマーインクをレベリングすることで、プライマー硬化物を、インク硬化物が侵入するようなピンホールを有していない連続膜状とすることができ、インク硬化物のすべてを、プライマー硬化物の上に位置させることができる。これによって、立体物1の外表面上にインク層22が直に接している部分がなくなり、印刷部20の中央部を含めた全域においてアルカリ剥離性が確保される。プライマーインク用吐出ヘッド101と第1照射装置121との間の搬送装置105の立体物1の搬送距離は、吐出ヘッドユニット110と第2照射装置122との間の搬送装置105の立体物1の搬送距離の2~10倍であることが好ましく、2.5~8倍であることがより好ましく、3~5倍であることが更に好ましい。
【0057】
本実施形態に係る立体物の製造装置100では、プライマーインク用吐出ヘッド101と第1照射装置121との間の搬送装置105の立体物1の搬送距離は、吐出ヘッドユニット110のうち搬送経路106の最上流に配置された彩色インク用吐出ヘッド(
図4では第1彩色インク用吐出ヘッド111)と第2照射装置122との間の搬送装置105の立体物1の搬送距離よりも長いことが更に好ましい。プライマーインク用吐出ヘッド101と第1照射装置121との間の搬送装置105の立体物1の搬送距離は、吐出ヘッドユニット110のうち搬送経路106の最上流に配置された彩色インク用吐出ヘッド(
図4では第1彩色インク用吐出ヘッド111)と第2照射装置122との間の搬送装置105の立体物1の搬送距離の2~10倍であることが好ましく、2.5~8倍であることがより好ましく3~5倍であることが更に好ましい。このような範囲とすることでプライマーインクをレベリングしながら彩色インクの着弾後短時間で硬化させることができるため、インクドットの広がりが抑制される。その結果、より高詳細なデザインを描画することができる。
【0058】
(立体物の製造方法)
本実施形態に係る立体物の製造方法は、
図2又は
図3に示すように立体物1の外表面にプライマー層21とプライマー層21上に設けられたインク層22とを有する印刷部20を形成する方法である。本実施形態に係る立体物の製造方法は、プライマーインクの硬化物上に第1彩色インクを付着させる第1彩色インク付着工程と、プライマーインクの硬化物上に第2彩色インクを付着させる第2彩色インク付着工程と、を少なくとも含む彩色インク付着工程と、彩色インク付着工程でプライマーインクの硬化物上に付着した第1彩色インク及び第2彩色インクを含む彩色インク群に活性エネルギー線を照射する第2照射工程と、を有する。
【0059】
本実施形態に係る立体物の製造方法は、彩色インク付着工程より前に、立体物1の外表面にプライマーインクを付着させるプライマーインク付着工程と、立体物1の外表面に付着したプライマーインクに活性エネルギー線を照射する第1照射工程と、を更に有する形態を包含する。
【0060】
次に、各工程について、
図4又は
図5に示す立体物の製造装置100を用いた場合を例にとって説明するが、本実施形態に係る立体物の製造方法は、製造装置に限定されない。
【0061】
立体物1は、搬送装置105aから搬送装置105bに乗り継いで、印刷エリアに搬送され、プライマーインク用吐出ヘッド101のインク着弾範囲に移動する。プライマーインク付着工程では、プライマーインク用吐出ヘッド101からプライマーインクを吐出させる。これによって、立体物1の外表面上にプライマーインクが付着する。プライマーインク用吐出ヘッド101から吐出されるプライマーインクの打滴量は、特に限定されないが、1~100pL(ピコリットル)であることが好ましく、3~80pLであることがより好ましく、3~50pLであることがさらに好ましい。
【0062】
プライマーインクが付着した立体物1は、搬送方向Cに搬送され、第1照射装置121の活性エネルギー線の照射範囲に移動する。第1照射工程では、第1照射装置121から活性エネルギー線を照射する。第1照射工程において、第1照射装置121からの活性エネルギー線はピニング露光であるか、又は本露光であってもよい。このうち、第1照射工程において、第1照射装置121からの活性エネルギー線はピニング露光であることがより好ましい。
【0063】
次いで、立体物1は、第1彩色インク用吐出ヘッド111のインク着弾範囲に移動する。彩色インク付着工程は、すくなくとも、第1彩色インク付着工程と、第2彩色インク付着工程とを含む。彩色インク付着工程は、第1彩色インク付着工程及び第2彩色インク付着工程に加えて、プライマーインクの硬化物上に第3彩色インクを付着させる第3彩色インク付着工程及びプライマーインクの硬化物上に第4彩色インクを付着させる第4彩色インク付着工程を更に含んでいてもよい。
【0064】
第1彩色インク付着工程では、第1彩色インク用吐出ヘッド111から第1彩色インクを吐出させる。これによって、立体物1のプライマー硬化物上に第1彩色インクが付着する。第1彩色インクは、例えばブラックインクである。
【0065】
第1彩色インクが付着した立体物1は、搬送方向Cに搬送され、第2彩色インク用吐出ヘッド112のインク着弾範囲に移動する。第2彩色インク付着工程では、第2彩色インク用吐出ヘッド112から第2彩色インクを吐出させる。これによって、立体物1のプライマー硬化物上に第2彩色インクが付着する。第2彩色インクは、例えばシアンインクである。
【0066】
第2彩色インクが付着した立体物1は、搬送方向Cに搬送され、第3彩色インク用吐出ヘッド113のインク着弾範囲、第4彩色インク用吐出ヘッド114のインク着弾範囲へ順次移動して、第1彩色インク付着工程及び第2彩色インク付着工程と同様に、立体物1のプライマー硬化物上に第3彩色インク及び第4彩色インクが付着する。第3彩色インクは、例えばマゼンタインクであり、第4彩色インクは、例えばイエローインクである。各彩色インク用吐出ヘッド111,112,113,114から吐出される各彩色インクの打滴量は、特に限定されないが、1~100pL(ピコリットル)であることが好ましく、3~80pLであることがより好ましく、3~50pLであることがさらに好ましい。
【0067】
彩色インク付着工程は、プライマーインクの硬化物上に彩色白インクを付着させる彩色白インク付着工程を更に有していてもよい。彩色白インク付着工程を行うタイミングは、例えば、第1照射工程後第1彩色インク付着工程の前、すなわち彩色インク工程の一番最初に行うか、第1彩色インク付着工程と第2彩色インク付着工程との間に行うか、第2彩色インク付着工程と第3彩色インク付着工程との間に行うか、第3彩色インク付着工程と第3彩色インク付着工程との間に行うか、又は第2照射工程の直前、すなわち彩色インク工程の一番最後に行ってもよい。本発明では、彩色白インク付着工程を行うタイミングは特に限定されない。
【0068】
彩色インクが付着した立体物1は、搬送方向Cに搬送され、第2照射装置122の活性エネルギー線の照射範囲に移動する。第2照射工程では、第2照射装置122から活性エネルギー線を照射する。第2照射工程は、少なくとも第1彩色インク及び第2彩色インクを含む彩色インク群をまとめて硬化させる工程である。第2照射工程において、第2照射装置122からの活性エネルギー線はピニング露光であることが好ましい。また、第2照射工程は、彩色インク群の仮硬化に加えて第1照射工程で仮硬化されたプライマー仮硬化物を更に硬化させる工程であってもよい。
【0069】
本実施形態に係る立体物の製造装置100では、彩色インク付着工程における印刷速度が80~600bpm(bottle per minutes)であることが好ましく、100~300bpmであることがより好ましい。ここで、bpm(bottle per minutes)とは、1分あたりに印刷処理できる立体物1の数を示す指標である。例えば、
図5に示す製造装置100において、第2搬送ライン105bであるロータリーテーブルの回転速度を調整することで前記した印刷速度を実現することができる。
【0070】
従来の立体物の製造方法では、2種以上の彩色インクを用いる場合、インク同士の滲みを防止するために、各彩色インクに対して付着工程と照射工程とが交互に行われてきた。このため、彩色インクの色数が増えると、その数に相当する照射工程を行う必要があり、製造工程が増大する問題があった。本実施形態に係る立体物の製造方法では、2種以上の彩色インクを一つの照射工程でまとめてピニングさせて一部ピニングレスとすることで、製造方法を簡略化することができる。また、立体物1を移動させながらインクジェット方式で高速印刷する公転印刷方式を採用することで、一部ピニングレスとしても商品の成分表示などの文字の視認性を確保した画質を得ることができる。
【0071】
本実施形態に係る立体物の製造方法は、第2照射工程より後に、彩色インク群に活性エネルギー線を更に照射する第3照射工程を更に有する形態を包含する。第2照射工程後、立体物1は、搬送方向Cに搬送され、第3照射装置123の活性エネルギー線の照射範囲に移動する。第3照射工程では、第3照射装置123から活性エネルギー線を照射する。第3照射工程において、第3照射装置123からの活性エネルギー線は本露光であることが好ましい。
【0072】
本実施形態に係る立体物の製造方法では、インク層22は、
図3に示すように、プライマー層21と彩色インクの硬化物との間に、背景印刷部22Bを更に有し、背景印刷部22Bは、白色色材を含有する活性エネルギー線硬化型インクジェットインクである背景白インクの硬化物を含み、立体物の製造方法は、第1照射工程と彩色インク付着工程との間に、背景印刷部形成工程を更に有し、背景印刷部形成工程は、プライマー層上に背景白インクを付着させる背景白インク付着工程と、プライマー層上に付着した前記背景白インクに活性エネルギー線を照射する第4照射工程と、を有することが好ましい。
【0073】
背景白インク付着工程は、第1照射工程後、
図5に示すように、立体物1が搬送方向Cに搬送され、背景白インク用吐出ヘッド131のインク着弾範囲に移動してきたところへ、背景白インク用吐出ヘッド131から背景白インクを吐出させる。これによって、立体物1のプライマー硬化物上に背景白インクが付着する。
【0074】
背景白インクが付着した立体物1は、搬送方向Cに搬送され、第4照射装置132の活性エネルギー線の照射範囲に移動する。第4照射工程では、第4照射装置132から活性エネルギー線を照射する。第4照射工程において、第4照射装置132からの活性エネルギー線はピニング露光であるか、又は本露光であってもよい。このうち第4照射工程において、第4照射装置132からの活性エネルギー線はピニング露光であることがより好ましい。背景白インクを彩色部のインクに先立って硬化させることで、背景印刷部上に彩色インクをより安定して定着させることができる。その結果、より鮮明な画像を得ることができる。
【0075】
本実施形態では、2種以上の彩色インクをまとめて仮硬化させた後、本硬化させることが好ましい。
【0076】
第1照射工程、第2照射工程、第3照射工程及び第4照射工程の各照射工程において、ピニング露光後における彩色インクの反応率は、本露光後における彩色インクの反応率よりも低い。ピニング露光後における彩色インクの反応率は、特に限定されないが、10~80%であることが好ましく、15~75%であることがより好ましい。このような範囲とすることで、得られる画像の画質が向上する。本露光後の彩色インクの反応率は、特に限定されないが、80%超100%以下であることが好ましく、85~100%であることがより好ましい。彩色インクの反応率は、以下の方法によって求める。インクに対する活性エネルギー線の照射終了までの操作が施された基材を準備する。この基材のインク膜が存在する領域から20mm×50mmの大きさのサンプル片(以下、照射後サンプル片とする)を切り出す。切り出した照射後サンプル片を、10mLのTHF(テトラヒドロフラン)中に24時間浸漬し、インクが溶出した溶出液を得る。得られた溶出液について、高速液体クロマトグラフィーにより、重合性モノマーの量(以下、「照射後モノマー量X1」とする)を求める。別途、基材上のインクに対して活性エネルギー線を照射しないこと以外は上記と同じ操作を実施し、重合性モノマーの量(以下、「未照射時モノマー量X1」とする)を求める。照射後モノマー量X1及び未照射時モノマー量X1に基づき、下記(数1)により、インクの反応率(%)を求める。
(数1) インクの反応率(%) = ((未照射時モノマー量X1-照射後モノマー量X1)/未照射時モノマー量X1)×100
【0077】
ピニング露光のための活性エネルギー線の露光量は、0.1~100mJ/cm2であることが好ましく、0.2~60mJ/cm2であることがより好ましい。このような範囲とすることで、彩色インクをピニングすることができる。本露光のための活性エネルギー線の露光量は、0.3~1000mJ/cm2であることが好ましく、0.5~800mJ/cm2であることがより好ましい。このような範囲とすることで、彩色インクを完全に硬化させることができる。
【0078】
本実施形態に係る立体物の製造方法では、プライマーインク付着工程の終了後第1照射工程で活性エネルギー線の照射を開始するまでの時間は、彩色インク付着工程の終了後第2照射工程で活性エネルギー線の照射を開始するまでの時間よりも長いことが好ましい。彩色インク付着工程の終了後第2照射工程で活性エネルギー線の照射を開始するまでの時間は、彩色インク付着工程のうち搬送経路106の最下流に配置された彩色インク用吐出ヘッド(
図4では第4彩色インク用吐出ヘッド114)から彩色インクの設定された全量がプライマーインクの硬化物上へ着弾し終えた時点から第2照射装置122において活性エネルギー線を照射開始するまでの時間である。プライマーインクのレベリングによって得られるプライマー層を平坦状としつつ、彩色インクの滲みを抑制してより鮮明が画像を得ることができる。プライマーインク付着工程後第1照射工程で活性エネルギー線の照射を開始するまでの時間を長くすることで、プライマーインクをレベリングさせることができる。プライマーインク付着工程後第1照射工程で活性エネルギー線の照射を開始するまでの時間を長くする方法は、特に限定されないが、例えば、立体物1の搬送距離を長くする方法、プライマーインクを付着後その場で立体物1を自転させてプライマーインクがレベリングするまで保持する方法がある。プライマーインク付着工程においてプライマーインクの設定された全量が立体物1の外表面へ着弾し終えた時点から第1照射工程において活性エネルギー線を照射開始するまでの時間は、彩色インク付着工程の終了後第2照射工程で活性エネルギー線の照射を開始するまでの時間の2~10倍であることが好ましく、2.5~8倍であることがより好ましく、3~5倍であることが更に好ましい。
【0079】
プライマーインク付着工程においてプライマーインクの設定された全量が立体物1の外表面へ着弾し終えた時点から第1照射工程において活性エネルギー線を照射開始するまでの時間は、0.5~60秒であることが好ましく、1.0~10秒であることがより好ましい。このような範囲とすることで、プライマーインクを十分にレベリングすることができる。一方、彩色インク付着工程において搬送経路6の最下流の彩色インク用吐出ヘッド(例えば
図4では第4彩色インク用吐出ヘッド114)から吐出された彩色インクの設定された全量がプライマー硬化物上へ着弾し終えた時点から第2照射工程において活性エネルギー線の照射を開始するまでの時間は、0.1~60秒であることが好ましく、0.3~1.0秒であることがより好ましい。このような範囲とすることで、カラーインク同士の滲みをより抑制することができる。
【0080】
本実施形態に係る立体物の製造方法では、プライマーインク付着工程の終了後第1照射工程で活性エネルギー線の照射を開始するまでの時間は、彩色インク付着工程において搬送経路6の最上流の彩色インク用吐出ヘッド(例えば
図4では第1彩色インク用吐出ヘッド111)から吐出された彩色インクの設定された全量がプライマー硬化物上へ着弾し終えた時点から第2照射工程において活性エネルギー線の照射を開始するまでの時間よりも長いことが更に好ましい。プライマーインクのレベリングによって得られるプライマー層をより平坦状としつつ、彩色インクの滲みをより抑制してより鮮明が画像を得ることができる。
【0081】
本実施形態では、彩色インク付着工程において搬送経路6の最上流の彩色インク用吐出ヘッド(例えば
図4では第1彩色インク用吐出ヘッド111)から吐出された彩色インクの設定された全量がプライマー硬化物上へ着弾し終えた時点から第2照射工程において活性エネルギー線の照射を開始するまでの時間は、0.2~60秒であることが好ましく、0.4~1.0秒であることがより好ましい。このような範囲とすることで、カラーインク同士の滲みを更に抑制することができる。プライマーインク付着工程においてプライマーインクの設定された全量が立体物1の外表面へ着弾し終えた時点から第1照射工程において活性エネルギー線を照射開始するまでの時間は、彩色インク付着工程において搬送経路6の最上流の彩色インク用吐出ヘッドから吐出された彩色インクの設定された全量がプライマー硬化物上へ着弾し終えた時点から第2照射工程において活性エネルギー線の照射を開始するまでの時間の2~10倍であることが好ましく、2.5~8倍であることがより好ましく、3~5倍であることが更に好ましい。
【0082】
本実施形態に係る立体物の製造方法では、立体物1が底面と側面とを有し、該底面を搬送装置105に向けて側面が起立した状態で搬送され、プライマーインク用吐出ヘッド101及び吐出ヘッドユニット110の各彩色インク用吐出ヘッド111,112,113,114は、立体物1の側面に対してインクを吐出させることが好ましい。ここで、側面が起立した状態で搬送されるとは、例えば立体物1が
図1に示すような容器である場合、容器がその中心軸を垂直方向に向けた状態で搬送されることをいう。このように、立体物1を直立状態で搬送することで、製造装置100をより小型化することができる。また、より効率的に立体物1の側面に印刷部20を形成することができる。
【符号の説明】
【0083】
1 立体物
10 容器本体
11 口部
12 胴部
12a 上胴部
12b 胴部本体
12c 下胴部
20 印刷部
21 プライマー層
22 インク層
22A 彩色部
22B 背景印刷部
100 立体物の製造装置
101 プライマーインク用吐出ヘッド
105(105a,105b,105c) 搬送装置
106 搬送経路
110 吐出ヘッドユニット
111 第1彩色インク用吐出ヘッド
112 第2彩色インク用吐出ヘッド
113 第3彩色インク用吐出ヘッド
114 第4彩色インク用吐出ヘッド
121 第1照射装置
122 第2照射装置
123 第3照射装置
130 背景印刷部形成ユニット
131 背景白インク用吐出ヘッド
132 第4照射装置
C 搬送方向