(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001948
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】ワーク計測方法、および溶接システム
(51)【国際特許分類】
G01B 11/24 20060101AFI20241226BHJP
【FI】
G01B11/24 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023101761
(22)【出願日】2023-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉本 達也
(72)【発明者】
【氏名】岡本 陽
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA21
2F065AA53
2F065BB05
2F065DD02
2F065FF11
2F065FF31
2F065FF67
2F065FF68
2F065JJ03
2F065JJ26
2F065MM02
2F065PP12
2F065QQ21
2F065QQ31
(57)【要約】
【課題】従来よりも計測対象の計測時間を短縮化しつつ、計測対象の構成を精度良く計測可能にする。
【解決手段】柱状部材とダイアフラムとから構成され、ポジショナに保持されたワークを計測するためのワーク計測方法であって、所定の方向から撮影された、前記ポジショナにて保持された前記ワークの表面の点群データを取得する取得工程と、前記ポジショナの三次元座標系において、当該点群データの分布が変化している部分を特定し、前記柱状部材と前記ダイアフラムとの境界位置として検出する検出工程と、前記検出工程にて検出された境界位置に基づいて、前記ワークを構成する前記柱状部材と前記ダイアフラムの個数を導出する導出工程と、を有する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状部材とダイアフラムとから構成され、ポジショナに保持されたワークを計測するためのワーク計測方法であって、
所定の方向から撮影された、前記ポジショナにて保持された前記ワークの表面の点群データを取得する取得工程と、
前記ポジショナの三次元座標系において、当該点群データの分布が変化している部分を特定し、前記柱状部材と前記ダイアフラムとの境界位置として検出する検出工程と、
前記検出工程にて検出された境界位置に基づいて、前記ワークを構成する前記柱状部材と前記ダイアフラムの個数を導出する導出工程と、
を有することを特徴とするワーク計測方法。
【請求項2】
前記検出工程において、前記所定の方向に対応する第1の軸と、前記第1の軸に直交する第2の軸とにより表され、かつ、前記所定の方向に平行な平面に前記点群データを投影し、当該点群データの変化点を、前記柱状部材と前記ダイアフラムとの境界位置として検出することを特徴とする請求項1に記載のワーク計測方法。
【請求項3】
前記検出工程にて検出された境界位置に基づいて、前記ワークの寸法および位置を算出する算出工程を更に有することを特徴とする請求項2に記載のワーク計測方法。
【請求項4】
前記算出工程において、前記ワークを構成する柱状部材の径および長さ、および前記ダイアフラムの板厚のうちの少なくとも1つが算出されることを特徴とする請求項3に記載のワーク計測方法。
【請求項5】
前記取得工程において、前記ポジショナにて前記ワークを前記第2の軸を中心として所定の回転角にて回転させることにより複数の点群データが取得され、
前記算出工程において、前記複数の点群データに基づいて前記ワークの寸法および位置が算出される、請求項3に記載のワーク計測方法。
【請求項6】
前記検出工程において、前記第2の軸と、前記第1の軸および前記第2の軸に直交する第3の軸とにより表され、かつ、前記所定の方向に直交する平面に投影される点群データのうち、前記第3の軸方向の中心から所定の範囲の点群データを用いて、前記境界位置の検出が行われる、請求項2に記載のワーク計測方法。
【請求項7】
前記算出工程において算出されたワークの寸法または位置の少なくとも一方をセンシングによって補正する補正工程を有する請求項3に記載のワーク計測方法。
【請求項8】
溶接トーチを有する溶接ロボットと、
前記溶接ロボットを制御する溶接制御装置と、
柱状部材とダイアフラムとから構成されるワークを保持するポジショナと、
前記ワークを所定の方向から撮影して点群データを取得するセンサと、
を備える溶接システムであって、
前記溶接制御装置は、
前記所定の方向から前記センサにて撮影された、前記ポジショナにて保持された前記ワークの表面の点群データを取得する取得手段と、
前記ポジショナの三次元座標系において、当該点群データの分布が変化している部分を特定し、前記柱状部材と前記ダイアフラムとの境界位置として検出する検出手段と、
前記検出手段にて検出された境界位置に基づいて、前記ワークの寸法および位置を算出する算出手段と、
を有することを特徴とする溶接システム。
【請求項9】
前記溶接トーチは第2のセンサを有し、
前記溶接制御装置は、前記算出手段にて算出されたワークの寸法または位置の少なくとも一方を前記第2のセンサによるセンシングにて補正する補正手段を有することを特徴とする請求項8に記載の溶接システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク計測方法、および溶接システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、予め定めた位置に被溶接部材(以下、「ワーク」とも称する)を準備し、溶接ロボットを用いてワークの溶接が行われている。このような場合に、ワークの自動溶接などを目的として、ワークの形状や設置状態の把握を容易にし、省力化することが求められている。ワークの位置を把握する際には、例えば、ToF(Time of Flight)センサを用いて取得される点群データが用いられている。
【0003】
例えば、溶接システムにおいてワークの寸法を計測する例として、特許文献1では、計測対象の形状に応じて計測プログラムを選定して、溶接ロボットに備え付けられたセンサにより計測を行う構成が開示されている。また、被計測物を計測する例として、特許文献2では、ガラステーブル上に設置された被計測物などの三次元データをレーザ計測装置により計測し、複数の視点から見た被計測物全体の三次元形状を取得する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-162554号公報
【特許文献2】特開2010-276485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、特許文献1の手法では、センサとしてタッチセンサなどを利用することが想定されている。このとき、計測プログラムに従ってセンサを動作させる際に、センサによる計測開始位置と計測対象の実際の設置位置との距離が離れている場合、無駄な計測動作が生じてしまい、計測に時間がかかってしまう。また、特許文献1では、計測対象の形状に応じて計測プログラムを切り替える必要があり、その際に計測プログラムの選択は人手で行う必要がある。加えて、ポジショナにおいてワークの設置誤差が生じている場合には誤った寸法が計測されてしまう可能性がある。一方、特許文献2の構成では、多数のセンサが必要であるため、装置が高コストになり、また、装置の大型化が懸念される。
【0006】
本発明は、従来よりも計測対象の計測時間を短縮化しつつ、計測対象の構成を精度良く計測可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は以下の構成を有する。すなわち、柱状部材とダイアフラムとから構成され、ポジショナに保持されたワークを計測するためのワーク計測方法は、
所定の方向から撮影された、前記ポジショナにて保持された前記ワークの表面の点群データを取得する取得工程と、
前記ポジショナの三次元座標系において、当該点群データの分布が変化している部分を特定し、前記柱状部材と前記ダイアフラムとの境界位置として検出する検出工程と、
前記検出工程にて検出された境界位置に基づいて、前記ワークを構成する前記柱状部材と前記ダイアフラムの個数を導出する導出工程と、
を有する。
【0008】
また、本発明の別の形態は以下の構成を有する。すなわち、溶接システムであって、
溶接トーチを有する溶接ロボットと、
前記溶接ロボットを制御する溶接制御装置と、
柱状部材とダイアフラムとから構成されるワークを保持するポジショナと、
前記ワークを所定の方向から撮影して点群データを取得するセンサと、
を備え、
前記溶接制御装置は、
前記所定の方向から前記センサにて撮影された、前記ポジショナにて保持された前記ワークの表面の点群データを取得する取得手段と、
前記ポジショナの三次元座標系において、当該点群データの分布が変化している部分を特定し、前記柱状部材と前記ダイアフラムとの境界位置として検出する検出手段と、
前記検出手段にて検出された境界位置に基づいて、前記ワークの寸法および位置を算出する算出手段と、
を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、従来よりも計測対象の計測時間を短縮化しつつ、計測対象の構成を精度良く計測可能にすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る溶接システムの全体概要を示す外観斜視図。
【
図2】本発明の一実施形態に係る計測対象であるワークの構成例を示す外観斜視図。
【
図3】本発明の一実施形態に係る溶接制御装置の構成例を示すブロック図。
【
図4】本発明の一実施形態に係る溶接制御装置の機能構成の例を示すブロック図。
【
図5】本発明の一実施形態に係るワークの構成例を説明するための概略図。
【
図6】本発明の一実施形態に係るワークの計測を説明するための概略図。
【
図7A】本発明の一実施形態に係るワークの計測結果の例を示すグラフ図。
【
図7B】本発明の一実施形態に係るワークの計測結果の例を示すグラフ図。
【
図8A】本発明の一実施形態に係るワークの設置誤差の補正を説明するための概略図。
【
図8B】本発明の一実施形態に係るワークの設置誤差の補正を説明するための概略図。
【
図9】本発明の一実施形態に係る溶接処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について図面などを参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を説明するための一実施形態であり、本発明を限定して解釈されることを意図するものではなく、また、各実施形態で説明されている全ての構成が本発明の課題を解決するために必須の構成であるとは限らない。また、各図面において、同じ構成要素については、同じ参照番号を付すことにより対応関係を示す。なお、本実施形態において、用語「第1の」、「第2の」という表現は、他の要素と区別するために用いているに過ぎず、特定の要素として限定的に解釈することを意図するものではない。したがって、構成要素の組み合わせや数などに応じて、これらの表現は適宜読み替えられるものとする。
【0012】
<第1の実施形態>
以下、本発明に係る一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0013】
[溶接システムの構成]
図1は、本実施形態に係るワーク計測方法を適用可能な溶接システム100の全体概要を示す外観斜視図である。溶接システム100は、溶接装置1、ポジショナ2、溶接ロボット3、溶接制御装置8、コントローラ9、およびカメラ10(第1のセンサ)を含んで構成される。
【0014】
溶接装置1は、ポジショナ2に保持されたワークWを、溶接ロボット3により溶接を行うように構成される。溶接制御装置8は、コントローラ9を介して、溶接ロボット3を制御する。このとき、溶接制御装置8は更に、移動手段11、12を制御することにより、溶接ロボット3とワークWの相対位置が制御されてよい。また、溶接制御装置8は、ポジショナ2の回転動作やカメラ10の撮影動作を制御する。なお、本実施形態では、溶接制御装置8が包括的に溶接に係る制御を行うものとして説明するが、各装置に対して別個の制御装置が設けられ、それらが連携して溶接を行うような構成であってもよい。
【0015】
本実施形態に係るワークWは、
図2に示すようにコラム21とダイアフラム22から構成される。ワークWは、ポジショナ2により保持され、所定の軸回りにて回転可能に設置される。ポジショナ2は、ワークWを保持して、ワークWを軸方向に固定する面板である。また、ポジショナ2は、ワークWを周方向に旋回させる回転駆動部を備える。なお、
図1ではワークWの片端を保持する片持ち方式のポジショナ2が記載されているが、ワークWの両端を保持する両持ち方式のポジショナが用いられてもよい。
【0016】
溶接ロボット3は、ポジショナ2で保持されたワークWの各種溶接継手を溶接施工するための各種機能を有するように構成される。例えば、溶接ロボット3として、アーク溶接ロボットが用いられてよい。溶接ロボット3は、多関節のアーム4、アーム4によって支持される溶接トーチ5、溶接トーチ5の先端に送給される溶接ワイヤ6、溶接トーチ5の先端における位置検出が可能なセンサ7(第2のセンサ)を備える。
【0017】
センサ7は、溶接ロボット3の先端部周辺に備えられ、溶接ロボット3を移動させることによって、ワークWにおける予め設定された検出位置の座標を計測データとして計測する。センサ7は、ワークWの座標を計測データとして計測できるものであればよく、レーザなどの非接触式位置検出用センサ、タッチセンサなどの接触式位置検出用センサなどであってよい。本実施形態では、センサ7により、ワークWの位置や形状を把握するためのタッチセンシング機能が提供されるものとして説明する。また、センサ7で計測される計測データは、検出位置以外の位置での座標情報を含んでいてもよい。
【0018】
コントローラ9は、予め規定された計測プログラム、および、溶接プログラムによって溶接ロボット3を制御する。具体的には、計測プログラムに基づいて溶接ロボット3を移動させることによって、溶接ロボット3に備えられたセンサ7でワークWにおける検出位置の座標を計測データとして計測する。また、溶接プログラムに基づいて溶接ロボット3を移動させることによって、ワークWの溶接を行う。計測プログラムや溶接プログラムは、溶接制御装置8から提供される。
【0019】
カメラ10は、溶接前にワークWの撮影を行い、ワークWの形状、寸法、位置などを特定するために用いられる。カメラ10は、3次元データとしてのワークW表面の点群データを取得可能に構成される。カメラ10としては、例えば、ToF(Time of Flight)カメラ、ステレオカメラ、または、LiDAR(Light Detection And Ranging)などのセンサが利用可能である。上記各センサは、それぞれ異なる特性を有するため、計測環境や計測対象であるワークWに応じて使い分けられてよい。本実施形態では、カメラ10は、ワークWおよびポジショナ2の上方に設置され、下方に位置するワークWを撮影可能に構成される。なお、カメラ10の設置位置および撮影方向はこれに限定するものではなく、ポジショナ2によるワークWの回転軸に対応して、任意に設定されてよい。
【0020】
カメラ10として利用可能なToFカメラは、レーザ光を計測対象に照射し、その反射したレーザ光を撮像素子で計測することで画素ごとに距離を算出する。ToFカメラの計測可能距離は、数十cm~数m程度となる。ステレオカメラは、複数(例えば、2台)のカメラにて撮影された複数の画像を用いてそれらの視差から距離を算出する。ステレオカメラの計測可能距離は、数十cm~数m程度となる。LiDARは、レーザ光を周囲に照射し、反射したレーザ光を計測することで距離を算出する。LiDARの計測可能距離は、数十cm~数十m程度となる。
【0021】
移動手段11、12は、溶接ロボット3をポジショナ2に保持されたワークWの回転軸方向に対して平行方向および直交方向の少なくとも一方向に移動させるものである。具体的には、移動手段11として台車が用いられ、移動手段12としてレールが用いられてよい。移動手段12は、ポジショナ2の回転軸に平行な移動手段11に沿って走行移動することによって、移動手段12上に載置された溶接ロボット3をワークWの軸方向に対して平行に移動させる。また、移動手段12を移動手段11に直交する方向に移動可能に構成することによって、移動手段12上に載置された溶接ロボット3をワークWの軸方向に対して直交方向に移動させる。
【0022】
なお、本実施形態において、溶接ロボット3の座標系であるロボット座標系、ポジショナ2の座標系であるポジショナ座標系、カメラ10の座標系であるカメラ座標系の3つの三次元座標系が用いられる。これらは座標値が変換可能に対応付けられているものとする。また、各座標系は、いずれかを基準として相対的に定義されてもよいし、それぞれが絶対座標系にて定義されてもよい。以下、ある特定の座標系を指して説明する場合には、具体的に座標系を示す。
【0023】
(ワーク)
図2は、本実施形態に係る計測対象であるワークWの構成例を示す外観斜視図である。ワークWの上方にはカメラ10が配置され、ワークW表面の点群データを取得可能となっている。ワークWは、1つのコラム21と、その両側に配置された2つのダイアフラム22から構成される。コラム21は、角型筒状(例えば、角型鋼管)や円筒状(例えば、円形鋼管)にて構成される柱状部材であってよい。コラム21の外周部分は、形状に応じて、平面部や一定の曲率を有する曲面部を含んで構成される。曲面部の曲率は特に限定するものではない。
【0024】
図2において、コラム21の長さをLにて示し、径をHにて示している。ダイアフラム22は、例えば、矩形形状にて構成される。また、
図2に示すP0~P6は、計測データから抽出される位置座標の例を示している。ワークWにおいて、抽出される位置座標は特に限定するものではない。また、ワークWの形状は
図2に示すような1段コアの構成に限定するものではない。例えば、2つのコラムと、それらの間および両端に設置される3つのダイアフラムから構成される2段コアの構成であってもよい。なお、ワークWが2段コアの構成である場合などには、カメラ10はその撮影範囲に応じて位置が調整され、複数回の撮影を行うことでワークW全体の点群データを取得してもよい。また、コラム21とダイアフラム22の接続部には、所定形状の開先23が形成される。
【0025】
(溶接制御装置)
図3は、本実施形態に係る溶接制御装置8の構成例を示すブロック図である。溶接制御装置8は、例えば、PC(Personal Computer)などの情報処理装置から構成されてよい。溶接制御装置8は、制御部301、記憶部302、IF(Interface)部303、通信部304、およびUI(User Interface)部305を含んで構成される。
【0026】
制御部301は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphical Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、あるいはFPGA(Field Programmable Gate Array)のうち少なくとも1つを用いて構成されてよい。また、記憶部302は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、ROM(Read Only Memory)、またはRAM(Random Access Memory)などの揮発性や不揮発性の記憶装置により構成される。制御部301が、記憶部302に記憶された各種プログラムを読み出して実行することにより、後述の各種機能を実現する。
【0027】
IF部303は、外部装置との接続のためのインターフェースであり、外部装置との送受信を司る。IF部303は、例えば、コントローラ9やポジショナ2などに接続される。
【0028】
通信部304は、外部装置や各種センサとの通信を行うための部位である。通信部304による通信は有線/無線は問わず、また、その通信規格を限定するものでもない。UI部305は、ユーザからの操作を受け付けたり、計測結果を表示したりする。UI部305は、例えば、不図示のマウスやキーボードなどを含んでもよいし、表示部と操作部が一体となったタッチパネルディスプレイなどで構成されてもよい。溶接制御装置8内の各部位は、不図示の内部バスなどにより通信可能に接続される。
【0029】
[機能構成]
図4は、本実施形態に係る溶接制御装置8の機能構成の例を示す。
図4に示す各部位は、溶接制御装置8の制御部301が記憶部302に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより実現されてよい。なお、
図4に示す構成は一例であり、1つの部位が複数の部位として構成されてもよいし、複数の部位が1つの部位にまとめられて構成されてもよい。また、溶接システム100において複数の制御装置が連携して溶接を行う場合には、その構成に応じて、
図4に示す各部位は対応する制御装置に配置されてよい。
【0030】
データ取得部401は、カメラ10を介して、計測対象であるワークWの点群データを取得する。また、データ取得部401は、溶接ロボット3の先端部に設けられたセンサ7を用いたタッチセンシング機能にて計測された各種データを取得する。データモード制御部402は、溶接システム100における動作モードを制御する。例えば、溶接前に実施されるワークWの計測に係るモードやパラメータ制御、溶接時のモードやパラメータ制御などが行われてよい。
【0031】
前処理部403は、取得した点群データに対して前処理を行う。ここでの前処理は、利用する点群データに応じて異なっていてよく、例えば、フィルタ処理、外れ値除去処理、クラスタリング処理、座標変換処理などが挙げられる。プログラム生成部404は、計測結果に基づいて、予め保持された汎用的な内容の溶接プログラムやセンシングプログラムを修正することにより、溶接を行うワークWに応じたプログラムを生成する。
【0032】
推定処理部405は、取得した点群データを用いて、ワークWの形状を推定する処理を行う。推定処理の詳細については後述する。推定結果保持部406は、推定処理部405の推定処理により推定されたワークWの形状や位置を推定結果として保持する。データ管理部407は、予め規定されたワークWの情報や溶接動作に係るデータを保持する。
【0033】
センシングプログラム保持部408は、溶接ロボット3の先端部に設置されたセンサ7を用いて行われるセンシングのためのセンシングプログラムを保持する。溶接プログラム保持部409は、溶接ロボット3を用いて溶接を行う際に用いられる溶接プログラムを保持する。
【0034】
ロボット制御部410は、溶接プログラムやセンシングプログラムを用いて、コントローラ9を介して溶接ロボット3を制御し、各種動作を実行させる。ロボット制御部410は、移動手段11、12も制御するような構成であってよい。ポジショナ制御部411は、溶接プログラムやセンシングプログラムを用いて、ワークWを保持したポジショナ2を制御し、回転動作などを実行させる。カメラ制御部412は、カメラ10による計測動作を制御する。
【0035】
[計測例]
図5~
図8Bを用いて、本実施形態に係るワークWの計測の例を説明する。
図5は、ワークWの外観図である。
図5に示す座標軸は、原点の位置は異なるが、その向きがポジショナ2におけるポジショナ座標系に対応しているものとする。
図2を用いて説明したように、ワークWはコラム21とダイアフラム22とから構成される。このとき、
図5において領域Rは曲面となっており、カメラ10の撮影の向きなどによっては、正確にその形状を点群データとして取得することができない場合がある。そのため、例えば、長さlに示すように、ワークWの寸法が本来よりも短く検出されることが懸念される。本実施形態では、このようなワークWの構成にも対応して計測を行うことが可能なように構成される。
【0036】
図6は、ワークWをx軸方向に沿って側面側から見た状態を示している。ワークWに重畳して示している座標系はポジショナ座標系であり、ポジショナ2は、
図1に示したように水平方向にワークWを保持している。ここでは、ポジショナ座標系のz軸がポジショナ2の回転軸に一致しているものとする。また、カメラ10は、y軸方向に沿ってワークWを撮影するものとする。
【0037】
図6において、長さLはz軸方向におけるコラム21の長さを示し、径Hはコラム21の半径を示す。点群データPdは、カメラ10により取得されるワークWの外形を示す点群データを、yz平面に投影した状態にて示している。また、P2、P3は、
図2に示したダイアフラム22とコラム21との接続位置を示す。P2およびP3に示すように、yz平面で見た場合、ダイアフラム22とコラム21の接続位置は、所定方向において点群データの分布が変化している、点群データの変化点として捉えることができる。したがって、ポジショナ座標系のy座標の値に基づいてコラム21の径Hを導出することができる。また、ポジショナ座標系のy座標およびz座標の値に基づいてコラム21の長さLを導出することができる。更には、ポジショナ座標系のy座標およびz座標の値に基づいてダイアフラム22のz軸方向の長さ、すなわち板厚も導出することができる。
【0038】
図7Aは、ワークWを計測した際の点群データの例を示す。
図7Aにおいて、横軸はポジショナ座標系におけるz座標の値を示し、縦軸はポジショナ座標系におけるy座標の値を示す。z座標の原点は、ポジショナ2によるワークWの保持位置に対応する。
【0039】
実線700は、点群データから推定されたワークWの表面の位置座標である。また、ワークWのP2、P3は、コラム21とダイアフラム22の実際の接続位置である。
図7Aでも計測されているように、溶接前の状態では、コラム21とダイアフラム22の接続位置には開先が存在している。実線700は、例えばFused Lassoの変化点検知手法などを用いることによって得ることができる。この実線700において、例えば、Y座標の最小値から所定の閾値を離れた点を変化点とすることができる。
図7Aに示す例では、P2、P3の位置において、Y座標の最小値から所定の閾値を離れた点が検知される。
【0040】
図7Bは、2段コアのワークを計測した際の点群データの例を示す。
図7Bにおいて、横軸はポジショナ座標系におけるz座標の値を示し、縦軸はポジショナ座標系におけるy座標の値を示す。z座標の原点は、ポジショナ2によるワークWの保持位置に対応する。実線800は、点群データから推定されたワークの表面の位置座標である。P1’~P4’は、コラムとダイアフラムの実際の接続位置を示す。
図7Aや
図7Bに示すように、コラムとダイアフラムの接続位置に相当する点群データの変化点、すなわち、点群データの分布が変化している部分を捉えることで、ワークWの構成要素の数、すなわち、コラムの数とダイアフラムの数も導出することができる。
【0041】
ここで、本実施形態に係るポジショナ2のワークWの設置誤差への対応について説明する。ポジショナ2によるワークWの保持位置がポジショナ2の回転軸からずれている場合を想定する。この場合、
図8Aに示すように、コラム21の中心軸Cと、ポジショナ2の回転軸(z軸に対応)とがずれた状態となる。その結果、コラム21の径の計測値にずれが生じる。
図8Aの例の場合、実測値hに対し、設置誤差h
errが生じている。このとき、実際のコラム21の径は(h+h
err)となる。
【0042】
本実施形態では、このようなポジショナ2の設置誤差を考慮し、ポジショナ2により回転を行わせて複数回の計測を行う。そして、その複数回の計測結果に基づいて、設置誤差の修正を行う。
【0043】
図8Bは、設置誤差の修正を行う際の概念を説明するための図である。ここでは、コラム21の中心軸Cと、ポジショナ2の回転軸(z軸に対応)とがずれた状態である。Pd1は、1回目の計測にて得られた点群データである。この点群データPd1に基づくと、コラム21の径としてh1が得られ、設置誤差に起因して実際の値とは異なる値が得られる。これに対し、ポジショナ2によりワークWを180度、回転軸(z軸に対応)に沿って回転させ、再度、計測を行う。その結果、点群データとしてPd2が取得される。この点群データPd2に基づくと、コラム21の径としてh2が得られる。
【0044】
本実施形態では、これらの複数回の計測の結果として得られた値を平均化することで、設置誤差の修正を行う。したがって、H=(h1+h2)/2にて設置誤差による影響を除去したコラム21の径Hを算出することができる。なお、設置誤差の方向を考慮して、他の回転角が用いられてよい。例えば、ポジショナ2の回転角として、90度や270度が用いられてもよい。また、計測回数についても2回に限定するものではなく、計測精度などを考慮して、さらに多くの回数の計測が行われてよい。
【0045】
カメラ10により得られた点群データにより、ワークWを構成する各部位のおおよその寸法および設置位置を特定することが可能である。この結果に基づいて、溶接ロボット3をワークWの周辺へ接近させることができる。溶接の際には、溶接トーチ5の先端部をより高精度に位置制御を行うとよい。そのため、溶接トーチ5の先端部に備えられたセンサ7によるタッチセンシングにて更に精密な位置検出を行う。言い換えると、カメラ10により得られた点群データにより、一定の精度でワークWの寸法および設置位置を推定してその近傍まで移動させ、タッチセンシングの開始位置を調整することができる。そのため、センサ7によるタッチセンシング動作に要する時間を削減することができる。
【0046】
そして、上記の点群データを用いた手法で一定の精度にてワークWの寸法や設置位置を推定した後、センサ7によるタッチセンシング動作により、領域Rや開先などの部位について精密に計測し、ワークWの寸法や設置位置を補正することが可能である。これにより、ワークWに対して溶接する位置を正確に特定し、より精密な溶接の自動化を図ることができる。
【0047】
[処理フロー]
以下、本実施形態に係るワーク計測処理を含む溶接の流れを説明する。
図9は、本実施形態に係るワーク計測処理を含む溶接全体の流れを示すフローチャートである。各工程は、
図1に示す溶接制御装置8が溶接システム100の各部位を制御することで実現される。ここでは、説明を簡略化するために、処理主体を溶接制御装置8としてまとめて記載する。本処理フローが開始される前に、ワークWが、ポジショナ2にて保持され、カメラ10にて撮影可能な位置に配置されているものとする。
【0048】
ステップS901にて、溶接制御装置8は、計測モードの設定を行う。ここでの計測モードは、ユーザから指定されたモードに基づいて行われてもよいし、予め規定されたモードであってもよい。計測モードにおいては、例えば、上述したようなポジショナ2の回転角を変化させて計測を複数回行うモードと、計測を1回のみ行うモードが指定可能であってよい。
【0049】
ステップS902にて、溶接制御装置8は、カメラ10を用いてワークWを撮影し、点群データを取得する。ワークWが所定の寸法よりも小さい場合には、1回の撮影動作にて点群データが取得されてよい。また、ワークWが所定の寸法よりも大きい場合には、複数回の撮影動作により複数の点群データを取得し、それらを統合してもよい。本工程において、撮影の際には、溶接制御装置8がポジショナ2の位置に応じて撮影範囲や撮影角度を調整するような構成であってもよいし、ステップS901にて設定される計測モードに応じて規定されてもよい。
【0050】
ステップS903にて、溶接制御装置8は、ステップS902にて取得した点群データに対して前処理を行う。前処理としては、例えば、フィルタ処理、外れ値除去処理、クラスタリング処理、座標変換処理などが挙げられる。なお、本工程における前処理は、ステップS902にて取得した点群データの構成に応じて必要な処理が実行されればよく、前処理が省略されてもよい。
【0051】
フィルタ処理は、例えば、公知のVoxel Gridフィルタなどを用いて、点群データに含まれる点群を一定の間隔にてリサンプリングすることで、所定体積当たりの点群密度を一定にする処理であってよい。外れ値除去処理は、計測精度を低下させうる外れ値を除去する処理であってよい。外れ値は、例えば、隣接点群の平均と分散などの統計情報から特定してもよいし、所定半径内に存在する隣接点群の数から特定されてもよい。クラスタリング処理は、例えば、点群データに含まれる点群を距離などに基づいて複数のグループに分割し、属する点群の数が所定の閾値以下のグループを削除することで、ワークWの形状を示す点群以外の点群を除去する処理であってよい。座標変換処理は、カメラ10の撮影位置や撮影角度に基づいて、カメラ10のカメラ座標系から所定の座標系へ変換する。所定の座標系は、例えば、ポジショナ2のポジショナ座標系であってよい。座標系の変換に要するパラメータは、事前のキャリブレーション処理などで導出しておいてよい。
【0052】
ステップS904にて、溶接制御装置8は、ステップS903にて処理された点群データを用いてワークWの寸法・形状の推定処理を行う。ここでの推定処理には、ワークWの設置位置やワークWを構成するコラム21やダイアフラム22の数の推定が含まれてよい。本実施形態では、
図6に示すように、コラムの長さLと径Hを推定する。
【0053】
図5に示したように、ワークWを構成するコラム21は、一定の曲率を有する領域Rが存在し得る。コラム21が、円筒状(例えば、円形鋼管)である場合には、その領域Rがより広くなる。そこで本実施形態では、ポジショナ座標系のxz平面において、コラム21の中心部付近のみの点群データを抽出する。本実施形態では、zy平面は、水平平面であり、カメラ10の撮影方向に直交している。ここでのワークWの中心部付近としては、例えば、
図6に示すようにポジショナ座標系を想定した場合、x軸方向において、-50mm<x<50mmの範囲であってよい。この範囲は、計測対象であるワークWのサイズや形状、ポジショナ座標系(すなわち、ポジショナ2におけるワークWの設置位置)の設定などに応じて変更されてよい。その領域についての点群データとして、
図7Aに示すようなデータが取得できる。
【0054】
ステップS905にて、溶接制御装置8は、計測が完了したか否かを判定する。例えば、ステップS901にて設定したモードに基づいて規定される計測回数が実行されたか否かに基づいて判定されてもよい。もしくは、ユーザからの操作を受け付け、その操作に基づいて計測を完了したと判定してもよい。計測が完了した場合(ステップS905にてYES)、溶接制御装置8の処理はステップS907へ進む。一方、計測が完了していない場合(ステップS905にてNO)、溶接制御装置8の処理はステップS906へ進む。
【0055】
ステップS906にて、溶接制御装置8は、予め規定された回転角にポジショナ2の回転制御を行わせる。ここでの回転角は、例えば、ステップS901にて設定されたモードに応じて規定されていてよい。具体的には、1回目の回転角をポジショナ座標系のz軸回りに0度とした場合、180度、90度、270度などが適宜用いられてよい。その後、溶接制御装置8の処理はステップS902へ戻り、処理を繰り返す。
【0056】
ステップS907にて、溶接制御装置8は、推定結果の修正、設置誤差の算出を行う。具体的には、
図8Bを用いて説明したように修正や算出が行われる。なお、本工程は、ワークWをポジショナ2にて回転させて、計測を複数回行った場合に実行すればよい。そのため、計測を1回のみ行った場合には、本工程は省略されてよい。また、計測結果に応じて、実行される処理を切り替えてもよい。
【0057】
ステップS908にて、溶接制御装置8は、推定結果に基づいて、タッチセンシングプログラムを生成する。タッチセンシングプログラムは、汎用的な内容で予め規定される。そして、推定結果によるワークWの寸法や設置位置に基づいて、ワークWに対するパラメータが調整されることで、タッチセンシングプログラムが生成される。
【0058】
ステップS909にて、溶接制御装置8は、ステップS908にて生成されたタッチセンシングプログラムに基づいて溶接ロボット3などを動作させ、溶接ロボット3の先端に設置されたセンサ7により、より精密なワークWの寸法や位置を計測する。
【0059】
ステップS910にて、溶接制御装置8は、ステップS909にて計測されたワークWの寸法や位置に基づいて、溶接プログラムを生成する。溶接プログラムは、汎用的な内容で予め規定される。そして、計測結果によるより精密なワークWの寸法や設置位置に基づいて、ワークWに対するパラメータが調整されることで、溶接プログラムが生成される。
【0060】
ステップS911にて、溶接制御装置8は、ステップS910にて生成された溶接プログラムに基づいて溶接ロボット3などを動作させ、ワークWに対する溶接を実行する。そして、溶接が完了した後、本処理フローを終了する。
【0061】
以上、本実施形態により、従来よりも計測対象の計測時間を短縮化しつつ、計測対象の構成を精度良く計測可能にすることが可能となる。特に、ワークを構成するコラムやダイアフラムの数や位置を容易に、かつ、一定程度の精度に推定することができ、溶接ロボットを動作させて計測するための時間を短縮することが可能となる。
【0062】
<その他の実施形態>
本実施形態は、上述した1つ以上の実施形態の機能を実現するためのプログラムやアプリケーションを、ネットワークまたは記憶媒体などを用いてシステムまたは装置に供給し、そのシステムまたは装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。
【0063】
また、本実施形態は、1以上の機能を実現する回路によって実現してもよい。なお、1以上の機能を実現する回路としては、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。
【0064】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 柱状部材(例えば、コラム21)とダイアフラム(例えば、ダイアフラム22)とから構成され、ポジショナ(例えば、ポジショナ2)に保持されたワーク(例えば、ワークW)を計測するためのワーク計測方法であって、
所定の方向(例えば、ポジショナ座標系のy軸方向)に沿って撮影された、前記ポジショナにて保持された前記ワークの表面の点群データを取得する取得工程と、
前記ポジショナの三次元座標系において、当該点群データの分布が変化している部分を特定し、前記柱状部材と前記ダイアフラムとの境界位置(例えば、P2、P3)として検出する検出工程と、
前記検出工程にて検出された境界位置に基づいて、前記ワークを構成する前記柱状部材と前記ダイアフラムの個数を導出する導出工程と、
を有することを特徴とするワーク計測方法。
この構成によれば、従来よりも計測対象の計測時間を短縮化しつつ、計測対象の構成を精度良く計測可能にすることが可能となる。特に、ワークを構成するコラムやダイアフラムの数や位置を容易に、かつ、一定程度の精度に推定することができ、溶接ロボットを動作させて計測するための時間を短縮することが可能となる。
【0065】
(2) 前記検出工程において、前記所定の方向に対応する第1の軸(例えば、ポジショナ座標系のy軸)と、前記第1の軸に直交する第2の軸(例えば、ポジショナ座標系のz軸)とにより表され、かつ、前記所定の方向に平行な平面(yz平面)に前記点群データを投影し、当該点群データの変化点を、前記柱状部材と前記ダイアフラムとの境界位置として検出することを特徴とする(1)に記載のワーク計測方法。
この構成によれば、従来よりも計測対象の計測時間を短縮化しつつ、計測対象の構成を精度良く計測可能にすることが可能となる。特に、ポジショナによるワークの保持位置に基づいて、ワークの測定が可能となる。
【0066】
(3) 前記検出工程にて検出された境界位置に基づいて、前記ワークの寸法および位置を算出する算出工程を更に有することを特徴とする(2)に記載のワーク計測方法。
この構成によれば、溶接ロボットを動作させて計測する前に、一定の精度にてワークの寸法や位置を特定することができ、その結果に基づいて溶接ロボットを用いた計測の開始位置を調整することが可能となる。その結果、溶接ロボットに設置されたセンサによる計測時間を短縮することが可能となる。
【0067】
(4) 前記算出工程において、前記ワークを構成する柱状部材の径および長さ、および前記ダイアフラムの板厚のうちの少なくとも1つが算出されることを特徴とする(3)に記載のワーク計測方法。
この構成によれば、溶接ロボットを動作させて計測する前に、ワークを構成するコラムやダイアフラムの寸法を計測することが可能となる。
【0068】
(5) 前記取得工程において、前記ポジショナにて前記ワークを前記第2の軸を中心として所定の回転角にて回転させることにより複数の点群データが取得され、
前記算出工程において、前記複数の点群データに基づいて前記ワークの寸法および位置が算出される、(3)に記載のワーク計測方法。
この構成によれば、ポジショナに対するワークの設置誤差を考慮して、より精度の高い計測が可能となる。
【0069】
(6) 前記検出工程において、前記第2の軸と、前記第1の軸および前記第2の軸に直交する第3の軸(例えば、ポジショナ座標系のx軸)とにより表され、かつ、前記所定の方向に直交する平面(例えば、xz平面)に投影される点群データのうち、前記第3の軸方向の中心から所定の範囲の点群データを用いて、前記境界位置の検出が行われる、(2)に記載のワーク計測方法。
この構成により、センサの構成によっては計測精度が低下してしまう領域の点群データを除去して、ワークの構成をより精度よく導出することが可能となる。
【0070】
(7) 前記算出工程において算出されたワークの寸法または位置の少なくとも一方をセンシングによって補正する補正工程を有する(3)に記載のワーク計測方法。
この構成によれば、溶接システムにおいて、粗く得られた計測結果に基づいて、更に精度の良いセンシングにより補正を行うことが可能となる。
【0071】
(8) 溶接トーチ(例えば、溶接トーチ5)を有する溶接ロボット(例えば、溶接ロボット3)と、
前記溶接ロボットを制御する溶接制御装置(例えば、溶接制御装置8)と、
柱状部材(例えば、コラム21)とダイアフラム(例えば、ダイアフラム22)とから構成されるワーク(例えば、ワークW)を保持するポジショナ(例えば、ポジショナ2)と、
前記ワークを所定の方向から撮影して点群データを取得するセンサ(例えば、カメラ10)と、
を備える溶接システム(例えば、溶接システム100)であって、
前記溶接制御装置は、
前記所定の方向から前記センサにて撮影された、前記ポジショナにて保持された前記ワークの表面の点群データを取得する取得手段(例えば、制御部301、IF部303、データ取得部401)と、
前記ポジショナの三次元座標系において、当該点群データの分布が変化している部分を特定し、前記柱状部材と前記ダイアフラムとの境界位置として検出する検出手段(例えば、制御部301、推定処理部405)と、
前記検出手段にて検出された境界位置に基づいて、前記ワークの寸法および位置を算出する算出手段(例えば、制御部301、推定処理部405)と、
を有することを特徴とする溶接システム。
この構成によれば、従来よりも計測対象の計測時間を短縮化しつつ、計測対象の構成を精度良く計測可能にすることが可能となる。
【0072】
(9) 前記溶接トーチは第2のセンサ(例えば、センサ7)を有し、前記溶接制御装置は、前記算出手段にて算出されたワークの寸法または位置の少なくとも一方を前記第2のセンサによるセンシングにて補正する補正手段(例えば、制御部301、プログラム生成部404)を有することを特徴とする(8)に記載の溶接システム。
この構成によれば、溶接ロボットを動作させて計測する前に、一定の精度にてワークの寸法や位置を特定することができ、その結果に基づいて溶接ロボットを用いた計測の開始位置を調整することが可能となる。その結果、溶接ロボットに設置されたセンサによる計測時間を短縮することが可能となる。
【符号の説明】
【0073】
1…溶接装置
2…ポジショナ
3…溶接ロボット
4…アーム
5…溶接トーチ
6…溶接ワイヤ
7…センサ
8…溶接制御装置
9…コントローラ
10…カメラ
11、12…移動手段
21…コラム
22…ダイアフラム
23…開先
100…溶接システム
W…ワーク