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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025019485
(43)【公開日】2025-02-07
(54)【発明の名称】内燃機関の制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 45/00 20060101AFI20250131BHJP
【FI】
F02D45/00 368F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023123118
(22)【出願日】2023-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(72)【発明者】
【氏名】神田 高輔
【テーマコード(参考)】
3G384
【Fターム(参考)】
3G384AA01
3G384BA18
3G384DA02
3G384DA14
3G384EA01
3G384EB05
3G384EB06
3G384EB07
3G384FA01Z
3G384FA28Z
3G384FA37Z
3G384FA56Z
3G384FA58Z
(57)【要約】
【課題】1気筒当たり1本の吸気バルブと、吸気バルブの上流の吸気ポートに燃料を噴射する燃料噴射弁とを備える内燃機関において、筒内における混合気の均質度を向上させることができる、内燃機関の制御装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る内燃機関の制御装置は、その一態様において、吸気バルブと排気バルブとが共に開弁するバルブオーバーラップが生じない状態で運転される非バルブオーバーラップ運転領域において、吸気バルブの開弁前に、吸気バルブの直前の下流吸気ポート領域における混合気の空燃比が8以上10以下となるように、燃料噴射弁による燃料噴射を制御する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の制御装置であって、
前記内燃機関は、
1気筒当たり1本の吸気バルブと、
前記吸気バルブの上流の吸気ポートに燃料を噴射する燃料噴射弁と、
を備え、
前記吸気バルブと排気バルブとが共に開弁するバルブオーバーラップが生じない状態で運転される非バルブオーバーラップ運転領域を有し、
前記制御装置は、
前記非バルブオーバーラップ運転領域において、前記吸気バルブの開弁前に、前記吸気バルブの直前の下流吸気ポート領域における混合気の空燃比が8以上10以下となるように、前記燃料噴射弁による燃料噴射を制御する、
内燃機関の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関の制御装置であって、
前記下流吸気ポート領域は、前記吸気バルブの外周からシリンダボアに向かう吸気流速が生じる前記吸気バルブの開弁直後の期間において燃焼室内に吸引される混合気の総量に相当する体積を有する、
内燃機関の制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の内燃機関の制御装置であって、
前記下流吸気ポート領域の空燃比を、前記吸気バルブの前後における圧力差が大きいときほどリーンにする、
内燃機関の制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の内燃機関の制御装置であって、
前記下流吸気ポート領域の空燃比を、前記内燃機関の温度が低いときほどリーンにする、
内燃機関の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示される内燃機関は、シリンダヘッドと、シリンダと、燃焼室の吸気を行う吸気ポートと、燃焼室の排気を行う排気ポートと、燃焼室に燃料を直接噴射するインジェクタと、を備え、吸気ポートは、燃焼室にスワール流を形成し、インジェクタは、燃料噴射口をスワール流に対向させるように、シリンダ軸線に対して傾斜して延びている。
係る構成によって、燃焼室の内壁に燃料が付着することを抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-187023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、内燃機関が、1気筒当たり1本の吸気バルブと、吸気バルブの上流の吸気ポートに燃料を噴射する燃料噴射弁とを備える場合、吸気ポートに沿った吸気の流れ方向から遠い筒内周辺部への燃料供給が不十分となって、筒内における混合気の均質度が低下し、排気性状、燃費性能が悪化するという課題があった。
【0005】
本発明は、従来の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、1気筒当たり1本の吸気バルブと、吸気バルブの上流の吸気ポートに燃料を噴射する燃料噴射弁とを備える内燃機関において、筒内における混合気の均質度を向上させることができる、内燃機関の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのため、本発明に係る内燃機関の制御装置は、その一態様として、吸気バルブと排気バルブとが共に開弁するバルブオーバーラップが生じない状態で運転される非バルブオーバーラップ運転領域において、吸気バルブの開弁前に、吸気バルブの直前の下流吸気ポート領域における混合気の空燃比が8以上10以下となるように、燃料噴射弁による燃料噴射を制御する。
【発明の効果】
【0007】
上記発明によると、1気筒当たり1本の吸気バルブと、吸気バルブの上流の吸気ポートに燃料を噴射する燃料噴射弁とを備える内燃機関において、筒内における混合気の均質度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ポート噴射式の2バルブ型内燃機関を示す模式図である。
図2】燃料噴射弁と吸気バルブとの位置関係を示す断面図である。
図3】吸気バルブのリフト量と吸気バルブ近傍での流速との相関を示す線図である。
図4】期間Aでの吸気流速の方向を示す図である。
図5】期間Bでの吸気流速の方向を示す図である。
図6】吸気ポートにおける領域分けを示す状態図である。
図7】燃焼室内における吸気の流れを示す図である。
図8】下流吸気ポート領域VAの空燃比と筒内均質度との相関を示す線図である。
図9】バルブリフト量、下流吸気ポート領域VAの空燃比、筒内付着量、及び、筒内均質度と、噴射終了タイミングとの相関を示す線図である。
図10】吸気ポートと筒内との差圧と、下流吸気ポート領域VAの設定空燃比との相関を示す線図である。
図11】水温(内燃機関の温度)と、下流吸気ポート領域VAの設定空燃比との相関を示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明の実施の形態を説明する。
図1は、自動車やモーターサイクルなどに搭載される内燃機関1の一態様を示す図であって、内燃機関1のシリンダをシリンダ軸線に沿う上方(シリンダヘッド側)から見たときの模式図である。
【0010】
内燃機関1は、1気筒当たり1本の吸気バルブ2と、1気筒当たり1本の排気バルブ3と、吸気バルブ2の上流の吸気ポート4に燃料を噴射する燃料噴射弁5と、点火プラグ6とを備える。
つまり、内燃機関1は、2バルブ型の火花点火ガソリン機関であって、噴射方式としてポート噴射方式を採用する。
なお、内燃機関1は、単気筒機関、複数気筒機関のいずれであってもよい。
【0011】
内燃機関1は、少なくとも一部の運転領域で、吸気バルブ2と排気バルブ3とが共に開弁するバルブオーバーラップが生じない状態で運転される。
以下では、バルブオーバーラップが生じない状態で運転される運転領域を、非バルブオーバーラップ運転領域と称する。
内燃機関1の吸気ポート4と排気ポート7は、シリンダ軸線に沿う上方から見たとき、吸気ポート4の軸線の延長線と排気ポート7の軸線の延長線とが、シリンダ軸線を挟んで略平行になるように形成されている。
【0012】
制御装置8は、取得した情報に基づいて演算した結果を出力するコントロール部としてのマイクロコンピュータ8Aを備え、内燃機関1の運転を制御する電子制御装置である。
マイクロコンピュータ8Aは、図示を省略したMPU(Microprocessor Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを有する。
【0013】
マイクロコンピュータ8Aは、内燃機関1の運転状態を検出する各種センサが出力する信号を取得し、取得した信号に基づく演算処理によって燃料噴射弁5の燃料噴射を制御するための噴射制御信号や、点火プラグ6による点火タイミングを制御するための点火制御信号などを出力する。
上記の各種センサとして、内燃機関1の吸入空気流量を検出する流量センサ11、内燃機関1のクランク軸の回転角を検出するクランク角センサ12、内燃機関1の冷却水の温度を検出する水温センサ13、内燃機関1の排気空燃比を検出する空燃比センサ14などが設けられている。
【0014】
マイクロコンピュータ8Aは、燃料噴射弁5による燃料噴射量が、目標空燃比である理論空燃比の混合気を生成する量となるように、1サイクル当たりの燃料噴射量をシリンダ吸入空気量などから演算する。
また、マイクロコンピュータ8Aは、空燃比センサ14が検出する排気空燃比と、目標空燃比(理論空燃比)とを比較して、実際の空燃比が目標空燃比に近づくように燃料噴射量を修正する、空燃比フィードバック制御を実施する。
そして、演算した燃料噴射量に相当するパルス幅の噴射制御信号を、燃焼サイクルに応じた噴射タイミングにおいて燃料噴射弁5に与える。
【0015】
図2は、吸気ポート4を、吸気ポート4の軸線を含みかつシリンダ軸線と平行な平面で切ったときの断面図であって、燃料噴射弁5と吸気バルブ2との位置関係を示す。
燃料噴射弁5は、吸気バルブ2の傘部2aを指向するように、吸気ポート4の周壁に取り付けられ、燃料噴射弁5から吸気バルブ2までの吸気ポート4内には、所定体積の空間部41が設けられる。
【0016】
図3は、非バルブオーバーラップ運転領域における、吸気バルブ2のバルブリフト量と、吸気バルブ2の近傍における吸気流速との相関を示す図である。
ここで、図3の期間A、期間Bは、吸気バルブ2の開期間内において吸気バルブ2の近傍での吸気流速の方向が相互に異なる期間である。
【0017】
図4は、吸気バルブ2の開弁直後の期間Aにおける吸気バルブ2の近傍での吸気流速の方向を示す。
図3に示した吸気バルブ2の開弁直後の期間Aは、図4に示したように、燃焼室9において吸気バルブ2の外周からシリンダボア(シリンダライナ)に向かう吸気流が生じる期間、換言すれば、燃焼室9において吸気バルブ2の傘部の径方向に向けて吸気が流れる期間である。
【0018】
また、図5は、吸気バルブ2の開弁直後の期間Aが経過した後の期間Bにおける吸気バルブ2の近傍での吸気流速の方向を示す。
図3に示した期間Aが経過した後の期間Bは、図5に示したように、吸気バルブ2の外周からピストンに向かう吸気流が燃焼室9に生じる期間である。
【0019】
図6は、吸気バルブ2の開弁直前における空間部41を、図3の期間A,Bに関連して領域分けされた状態を示す図である。
ここで、吸気バルブ2直前の下流吸気ポート領域VAは、期間Aで吸引されることになる混合気が、吸気バルブ2の開弁直前において占める領域である。
【0020】
換言すれば、下流吸気ポート領域VAは、吸気バルブ2の外周からシリンダボアに向かう吸気流が生じる吸気バルブの開弁直後の期間Aにおいて燃焼室内に吸引される混合気の総量に相当する体積を有する領域である。
なお、期間Aで吸引されることになる混合気の総量、つまり、下流吸気ポート領域VAの体積は、内燃機関1の運転領域(負荷、回転速度)や吸気バルブ2の開時期IVOなどの条件で変化することになる。
また、下流吸気ポート領域VAより上流で燃料噴射弁5より下流の上流吸気ポート領域VBは、期間B以降で吸引されることになる混合気が、吸気バルブ2の開弁直前において占める領域である。
【0021】
ここで、制御装置8のマイクロコンピュータ8Aは、下流吸気ポート領域VAの混合気の空燃比が設定空燃比になるように、燃料噴射弁5による燃料噴射を制御する機能を有する。
詳細には、制御装置8のマイクロコンピュータ8Aは、吸気バルブ2の開弁前に、下流吸気ポート領域VAにおける混合気の空燃比が8以上10以下になり、上流吸気ポート領域VBにおける混合気の空燃比が下流吸気ポート領域VAの空燃比よりリーンになるように、燃料噴射弁5の噴射タイミングを制御する。
【0022】
前述したように、期間Aで吸引されることになる混合気の総量は、内燃機関1の運転領域や吸気バルブ2の開時期IVOなどの条件で変化する。
このため、制御装置8のマイクロコンピュータ8Aは、吸気バルブ2の直前の吸気ポート4における混合気の空燃比を8以上10以下に制御しつつ、空燃比が8以上10以下に設定される領域の体積を、そのときの運転条件において期間Aで吸引されることになる混合気の総量に相当する体積に制御する。
これにより、空燃比が8以上10以下に設定された混合気が、吸気バルブ2の外周からシリンダボアに向かう吸気流が生じる吸気バルブ2の開弁直後の期間Aにおいて燃焼室内に吸引される。
【0023】
図7は、1気筒当たり1本の吸気バルブ2を備える内燃機関1における吸気ポート4に沿った吸気の流れ方向を例示する。
ここで、吸気ポート4に沿って燃焼室9に吸引された混合気は燃焼室9でスワール流を形成するが、流れ方向において吸気バルブ2から最も遠い筒内周辺部(図7における斜線領域10)における燃料供給が不十分になり易く、筒内における混合気の均質度を低下させる要因になる。
【0024】
これに対し、期間Aにおいて吸気バルブ2の外周からシリンダボアに向けて吸引される混合気の空燃比が8以上10以下に設定されることで、筒内における混合気の均質度が可及的に高められ、排気性状、燃費性能が向上する。
つまり、期間Aにおいて燃焼室内に吸引される混合気は、吸気バルブ2の外周からシリンダボアに向けて流れるため、図7における斜線領域10にも直接的に燃料を供給することができ、しかも、最終的な筒内での混合気形成を考慮した空燃比に設定された混合気を図7における斜線領域10に供給するため、筒内における空燃比ばらつきが抑止され、筒内均質度が向上する。
【0025】
図8は、吸気バルブ2の開弁前における下流吸気ポート領域VAの混合気の空燃比と、筒内における混合気の均質度との相関を示す線図である。
ここで、図8は、吸気バルブ2の開弁前における下流吸気ポート領域VAの混合気の空燃比が8以上10以下に設定されるときに、筒内における混合気の均質度が最も高くなり、空燃比が8未満に低下するほど(換言すれば、空燃比が8よりリッチになるほど)均質度が低下し、また、空燃比が10を超えて大きくなるほど(換言すれば、空燃比が10よりリーンになるほど)均質度が低下することを示す。
つまり、図8は、下流吸気ポート領域VAの混合気の空燃比を8以上10以下としたときに、筒内均質度が極大値になることを示す。
【0026】
図9は、吸気バルブ2の開弁前における下流吸気ポート領域VAの混合気の空燃比、筒内付着量、及び、筒内均質度と、燃料噴射の終了タイミングとの相関を例示する線図である。
図9は、吸気上死点(吸気TDC)において排気バルブ3が閉弁し吸気バルブ2が開弁する、非バルブオーバーラップ運転領域での相関を例示するものであり、噴射終了タイミングの可変範囲は上死点前100degから上死点後40degまでに設定される。
【0027】
ここで、図9は、燃料噴射弁5の噴射終了タイミングが前記可変範囲内で遅くなるほど、吸気バルブ2の開弁前における下流吸気ポート領域VAの混合気の空燃比がリーンになることを示す。
また、図9は、噴射終了タイミングが上死点前80degから上死点前60degの範囲内であるときに、筒内における混合気の均質度が最も高くなり、このときの下流吸気ポート領域VAでの空燃比が8以上10以下であることを示す。
【0028】
つまり、吸気バルブ2の開弁前における下流吸気ポート領域VAの混合気の空燃比が8以上10以下であるときに、筒内における混合気の均質度が最も高くなり、燃料噴射弁5の噴射終了タイミングの調整によって、下流吸気ポート領域VAにおける空燃比を8以上10以下に制御することが可能である。
また、図9は、筒内における混合気の均質度が可及的に高くなる噴射終了タイミング、換言すれば、吸気バルブ2の開弁前における下流吸気ポート領域VAの混合気の空燃比が8以上10以下となる噴射終了タイミングを選定しても、筒内付着量、つまり、シリンダボアやピストンへの燃料の付着量は低く抑えられることを示す。
【0029】
そこで、マイクロコンピュータ8Aは、非バルブオーバーラップ運転領域において、期間Aで吸引される混合気の空燃比が8以上10以下となる噴射タイミングで燃料噴射弁5による燃料噴射を行わせることで、筒内付着量を悪化させずに筒内均質度を最大化する。
そして、1気筒当たり1本の吸気バルブ2を備えたポート噴射式の内燃機関1において、筒内付着量を悪化させずに筒内均質度が最大化されれば、内燃機関1の排気性状、燃費性能が向上する。
【0030】
なお、マイクロコンピュータ8Aは、吸気バルブ2の開弁前における下流吸気ポート領域VAの設定空燃比、換言すれば、期間Aで吸引される混合気の設定空燃比を、内燃機関1の運転条件に応じて可変とすることができる。
詳細には、マイクロコンピュータ8Aは、吸気バルブ2の前後における圧力差、つまり、吸気ポート4と筒内との差圧に基づいて、吸気バルブ2の開弁前における下流吸気ポート領域VAの設定空燃比を変更することができる。
【0031】
図10は、吸気ポート4と筒内との差圧と、下流吸気ポート領域VAの設定空燃比との相関を例示する。
ここで、下流吸気ポート領域VAの設定空燃比は、8以上10以下の範囲内で、差圧が大きいほど大きい値の空燃比に、つまり、差圧の増大に応じてリーン方向に変更される。
【0032】
吸気ポート4と筒内との差圧が大きいと、期間Aにおいて吸気バルブ2の外周からシリンダボア方向への流速が強くなるため、筒内の周辺部への燃料供給量が多くなり過ぎ、相対的に筒内中央がリーン化する傾向となる。
そこで、マイクロコンピュータ8Aは、吸気ポート4と筒内との差圧が大きいほど、下流吸気ポート領域VAの設定空燃比をリーン化させて、差圧の増大に伴って筒内中央がリーン化することによる均質度の低下を抑制する。
【0033】
ここで、吸気ポート4と筒内との差圧は、吸気バルブ2の開時期IVOや、排気還流装置による排気還流率などによって変化する。
詳細には、吸気ポート4と筒内との差圧は、吸気バルブ2の開時期IVOが吸気上死点から遅角するほど大きくなる。
また、吸気ポート4と筒内との差圧は、排気還流装置による排気還流率が小さいほど大きくなる。
【0034】
なお、マイクロコンピュータ8Aは、燃料噴射弁5による噴射タイミングを遅らせることで、下流吸気ポート領域VAの設定空燃比のリーン化を実現する。
したがって、マイクロコンピュータ8Aは、吸気ポート4と筒内との差圧が大きくなるほど、燃料噴射弁5による噴射タイミングを遅らせることになる。
【0035】
また、マイクロコンピュータ8Aは、内燃機関1の温度を代表する冷却水温度に基づいて、吸気バルブ2の開弁前における下流吸気ポート領域VAの設定空燃比を変更することができる。
図11は、冷却水温度(内燃機関1の温度)と、下流吸気ポート領域VAの設定空燃比との相関を例示する。
ここで、下流吸気ポート領域VAの設定空燃比は、8以上10以下の範囲内で、冷却水温度が低いほど大きい値の空燃比に、つまり、冷却水温度の低下に応じてリーン方向に変更される。
【0036】
冷却水温度が低く、内燃機関1の温度が低い状態では、期間Aで燃焼室に吸引される燃料がシリンダボアに付着し易くなり、筒内付着量が増大する傾向となる。
そこで、マイクロコンピュータ8Aは、冷却水温度が低いほど、下流吸気ポート領域VAの設定空燃比をリーン化させて、冷却水温度が低いときに筒内付着量が増大することを抑制する。
なお、マイクロコンピュータ8Aは、燃料噴射弁5による噴射タイミングを遅らせることで、下流吸気ポート領域VAの設定空燃比のリーン化を実現するから、冷却水温度が低いほど、燃料噴射弁5による噴射タイミングを遅らせることになる。
【0037】
上記実施形態で説明した各技術的思想は、矛盾が生じない限りにおいて、適宜組み合わせて使用することができる。
また、好ましい実施形態を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種々の変形態様を採り得ることは自明である。
【0038】
たとえば、内燃機関1の吸気ポート4と排気ポート7とは、シリンダ軸線に沿う上方から見たとき、吸気ポート4の軸線の延長線と排気ポート7の軸線の延長線とが略一直線上に重なるように形成されてもよい。
また、内燃機関1は、1気筒当たり、1本の吸気バルブと、2本の排気バルブとを有する3バルブ型機関であってもよい。
【0039】
また、内燃機関1は、吸気バルブ2と排気バルブ3とのうちの少なくとも一方のバルブタイミングを可変とする可変バルブタイミング機構を備えることができる。
ここで、可変バルブタイミング機構によって、バルブオーバーラップが生じる状態とバルブオーバーラップが生じない状態とに切り替えらえる場合、制御装置8(マイクロコンピュータ8A)は、バルブオーバーラップ運転領域では、下流吸気ポート領域VAの空燃比を8以上10以下とする制御を停止することができる。
また、制御装置8(マイクロコンピュータ8A)は、非バルブオーバーラップ運転領域であっても、内燃機関1の負荷、回転速度、温度などの運転条件に応じて、下流吸気ポート領域VAの空燃比を8以上10以下とする制御を停止することができる。
【0040】
また、制御装置8(マイクロコンピュータ8A)は、燃料噴射弁5による燃料噴射の制御において、1サイクル当たりの燃料噴射量を複数回に分けて噴射させる分割噴射を実施することができる。
たとえば、制御装置8(マイクロコンピュータ8A)は、分割噴射として、下流吸気ポート領域VAの空燃比を8以上10以下とするための吸気バルブ2の開時期IVO前の排気行程での燃料噴射と、吸気バルブ2の開時期IVO以降の吸気行程での燃料噴射とに分けて実施することができる。
【符号の説明】
【0041】
1…内燃機関、2…吸気バルブ、3…排気バルブ、4…吸気ポート、5…燃料噴射弁、8…制御装置、8A…マイクロコンピュータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11