特開 2025-19487 回路基板用電気コネクタ

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2025019487

(43)【公開日】2025-02-07

(54)【発明の名称】回路基板用電気コネクタ

(51)【国際特許分類】

   H01R 12/91 20110101AFI20250131BHJP

【ＦＩ】

H01R12/91

【審査請求】未請求

【請求項の数】3

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2023123122

(22)【出願日】2023-07-28

(71)【出願人】

【識別番号】390005049

【氏名又は名称】ヒロセ電機株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100138140

【弁理士】

【氏名又は名称】藤岡 努

(72)【発明者】

【氏名】早川 義隆

(72)【発明者】

【氏名】玉井 暢洋

【テーマコード（参考）】

5E223

【Ｆターム（参考）】

5E223AB26

5E223AB60

5E223AC23

5E223BA01

5E223BA07

5E223BB01

5E223BB12

5E223CB22

5E223CB31

5E223CB38

5E223CD01

5E223DB11

(57)【要約】

【課題】固定ハウジングに対する可動ハウジングの相対移動を許容しつつ、良好なインピーダンス整合を実現できる回路基板用電気コネクタを提供する。
【解決手段】固定ハウジング２０に形成された内部空間に配置され、可動ハウジング３０に取り付けられた誘電体部材４０を有し、誘電体部材４０は、端子１０の中間部１５との間に隙間をもって中間部１５に沿って延びる沿設部４２Ａを有しており、沿設部４２Ａは、中間部１５が端子配列方向に対して直角なコネクタ幅方向で弾性変形したとき、中間部１５に追従可能となっている。
【選択図】図３

【特許請求の範囲】

【請求項1】

回路基板の実装面に配置される回路基板用電気コネクタであって、
前記実装面に対して平行な一方向を端子配列方向として配列された複数の端子と、前記端子を介して前記回路基板に固定される固定ハウジングと、前記固定ハウジングに対して相対移動可能な可動ハウジングとを有し、
前記端子は、前記固定ハウジングに保持される固定側被保持部と、前記可動ハウジングに保持される可動側被保持部と、前記固定側被保持部と前記可動側被保持部との間に位置し弾性変形可能な中間部とを有し、前記固定ハウジングと前記可動ハウジングとに架け渡されて設けられている回路基板用電気コネクタにおいて、
前記固定ハウジングおよび前記可動ハウジングの少なくとも一方に形成された内部空間に少なくとも一部が配置され、前記固定ハウジングまたは前記可動ハウジングに取り付けられた誘電体部材を有し、
前記誘電体部材は、前記中間部との間に隙間をもって前記中間部に沿って延びる沿設部を有しており、
前記沿設部は、前記中間部が端子配列方向に対して直角なコネクタ幅方向で弾性変形したとき、前記中間部に追従可能となっていることを特徴とする回路基板用電気コネクタ。

【請求項2】

前記誘電体部材は、前記可動ハウジングに取り付けられており、コネクタ幅方向で前記固定ハウジングに当接可能な被規制部を、前記沿設部とは異なる位置に有していることとする請求項１に記載の回路基板用電気コネクタ。

【請求項3】

前記誘電体部材は、前記固定ハウジングに対して端子配列方向で当接する部分を有しておらず、前記誘電体部材全体が前記可動ハウジングとともに端子配列方向で移動可能となっていることとする請求項１または請求項２に記載の回路基板用電気コネクタ。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、回路基板の実装面に配置される回路基板用電気コネクタに関する。

【背景技術】

【0002】

この種の回路基板用電気コネクタとして、例えば、特許文献１の電気コネクタが知られている。この特許文献１の電気コネクタでは、回路基板の実装面に対して平行な一方向を端子配列方向として配列された複数の端子が、互いに別体をなす固定ハウジングと可動ハウジングに架け渡されて設けられている。固定ハウジングは、端子を介して回路基板に固定されている。可動ハウジングは、端子の弾性変形により固定ハウジングに対して相対移動可能となっている。

【0003】

端子は、金属帯状片を板厚方向に屈曲して作られており、下端側に形成された接続部で回路基板の実装面に半田接続可能となっているとともに、上端側に形成された接触部で相手コネクタに設けられた相手端子に接触可能となっている。また、接続部と接触部との間には、固定ハウジングに保持される固定側被保持部と、可動ハウジングに保持される可動側被保持部と、固定側被保持部と可動側被保持部とを連結する変形部が設けられている。

【0004】

変形部は、固定ハウジングおよび可動ハウジングのいずれにも保持されることなく両ハウジング同士の間で延びており、該変形部の弾性変形により可動ハウジングの移動を許容している。変形部は、誘電材料製のインピーダンス整合部によって被覆されている。インピーダンス整合部は、変形部との一体成形により該変形部の外面に接触して形成されており、該変形部とともに弾性変形可能となっている。特許文献１では、このようにインピーダンス整合部で変形部を被覆することにより、端子におけるインピーダンスが調整され、その結果、インピーダンス整合が図られている。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0005】

【特許文献1】特開２０１４－２２２５７６号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0006】

特許文献１では、インピーダンス整合部は、端子の変形部に接触して形成されている。このように誘電材料製のインピーダンス整合部が変形部に接触していると、該変形部におけるインピーダンスが過剰に低下するおそれがあり、端子におけるインピーダンス整合が困難となる。

【0007】

本発明は、かかる事情に鑑み、固定ハウジングに対する可動ハウジングの相対移動を許容しつつ、良好なインピーダンス整合を実現できる回路基板用電気コネクタを提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0008】

（１） 本発明に係る回路基板用電気コネクタは、回路基板の実装面に配置される回路基板用電気コネクタであって、前記実装面に対して平行な一方向を端子配列方向として配列された複数の端子と、前記端子を介して前記回路基板に固定される固定ハウジングと、前記固定ハウジングに対して相対移動可能な可動ハウジングとを有し、前記端子は、前記固定ハウジングに保持される固定側被保持部と、前記可動ハウジングに保持される可動側被保持部と、前記固定側被保持部と前記可動側被保持部との間に位置し弾性変形可能な中間部とを有し、前記固定ハウジングと前記可動ハウジングとに架け渡されて設けられている。

【0009】

かかる回路基板用電気コネクタにおいて、本発明では、前記固定ハウジングおよび前記可動ハウジングの少なくとも一方に形成された内部空間に少なくとも一部が配置され、前記固定ハウジングまたは前記可動ハウジングに取り付けられた誘電体部材を有し、前記誘電体部材は、前記中間部との間に隙間をもって前記中間部に沿って延びる沿設部を有しており、前記沿設部は、前記中間部が端子配列方向に対して直角なコネクタ幅方向で弾性変形したとき、前記中間部に追従可能となっていることを特徴としている。

【0010】

本発明では、可動ハウジングに取り付けられた誘電体部材は、端子の中間部との間に隙間をもって該中間部に沿って延びる沿設部を有している。このように誘電体部材の沿設部が中間部に沿って延びていることにより、該中間部における特性インピーダンスを調整して、その結果、端子における特性インピーダンス整合を図ることができる。このとき、沿設部は、中間部との間に隙間をもって位置しているので、該中間部に接触していない。したがって、中間部における特性インピーダンスが過剰に低下することないので、良好な特性インピーダンス整合を図りやすい。また、沿設部は、中間部に追従可能となっているので、中間部の弾性変形ひいては可動ハウジングの移動を妨げることはない。

【0011】

（２） （１）の発明において、前記誘電体部材は、前記可動ハウジングに取り付けられており、コネクタ幅方向で前記固定ハウジングに当接可能な被規制部を、前記沿設部とは異なる位置に有していてもよい。

【0012】

このような構成とすることにより、可動ハウジングがコネクタ幅方向に移動するとき、誘電体の被規制部は、固定ハウジングに当接することにより、可動ハウジングに追従した移動を規制される。その結果、誘電体部材の沿設部が、被規制部と固定ハウジングとの当接位置を支点として変位することにより、端子の中間部とともに可動ハウジングの移動に追従する。その結果、可動ハウジングの移動後においても、沿設部と中間部との間の隙間が確保された状態、ひいては特性インピーダンス整合が良好に図られた状態を維持しやすくなる。

【0013】

（３） （１）または（２）の発明において、前記誘電体部材は、前記固定ハウジングに対して端子配列方向で当接する部分を有しておらず、前記誘電体部材全体が前記可動ハウジングとともに端子配列方向で移動可能となっていてもよい。

【0014】

このような構成とすることにより、可動ハウジングが端子配列方向に移動するとき、誘電体部材全体が、固定ハウジングと干渉することなく、可動ハウジングの移動に円滑に追従できる。

【発明の効果】

【0015】

本発明では、固定ハウジングに対する可動ハウジングの相対移動を許容しつつ、良好な特性インピーダンス整合を実現できる回路基板用電気コネクタを提供することができる。

【図面の簡単な説明】

【0016】

【図1】本発明の第一実施形態に係るソケットコネクタおよびプラグコネクタの斜視図であり、嵌合接続前の状態を示している。

【図2】図１のソケットコネクタの各部材を分離して示した斜視図である。

【図3】図１のソケットコネクタおよびプラグコネクタの端子配列方向に対して直角な面での断面を示す断面図であり、嵌合接続前の状態を示している。

【図4】可動ハウジングへの誘電体部材の取付形態を示す断面図であり、（Ａ）は取付前の状態を示しており、（Ｂ）は取付後の状態を示している。

【図5】ソケットコネクタおよびプラグコネクタの端子配列方向に対して直角な面での断面を示す断面図であり、嵌合接続後の状態を示している。

【図6】ソケットコネクタおよびプラグコネクタの端子配列方向に対して直角な面での断面を示す断面図であり、嵌合接続後においてフローティングが生じている状態を示している。

【図7】本発明の第二実施形態に係るソケットコネクタのコネクタ幅方向に対して直角な面での断面を示す断面図である。

【図8】本発明の第三実施形態に係るソケットコネクタの端子配列方向に対して直角な面での断面を示す断面図である。

【図9】本発明の第四実施形態に係るソケットコネクタの端子配列方向に対して直角な面での断面を示す断面図である。

【発明を実施するための形態】

【0017】

以下、添付図面にもとづき、本発明の実施形態を説明する。

【0018】

＜第一実施形態＞
図１は、本実施形態に係るソケットコネクタ１およびプラグコネクタ２の斜視図であり、嵌合接続前の状態を示している。ソケットコネクタ１は、回路基板（図示せず）の実装面に実装される回路基板用電気コネクタである。また、ソケットコネクタ１に接続される相手接続体（相手コネクタ）としてのプラグコネクタ２は、他の回路基板（図示せず）の実装面に実装される回路基板用電気コネクタである。ソケットコネクタ１およびプラグコネクタ２は、回路基板の実装面同士が対面した姿勢で、実装面に対して直角なコネクタ高さ方向（Ｚ軸方向として示される上下方向）で嵌合接続され、電気コネクタ組立体を構成する。本実施形態では、ソケットコネクタ１に対してプラグコネクタ２が上方から嵌合接続されるようになっている。

【0019】

ソケットコネクタ１は、回路基板の実装面に対して平行な一方向（Ｙ軸方向）を端子配列方向として配列された複数の金属板製のソケット端子１０と、複数のソケット端子１０を保持する樹脂等の誘電材料製（電気絶縁材製）のソケットハウジング２０，３０（後述する固定ハウジング２０および可動ハウジング３０）と、可動ハウジング３０に取り付けられる樹脂等の誘電材料製の誘電体部材４０（図２および図３参照）とを有している。ソケットハウジング２０，３０を構成する誘電材料として、例えば、ポリアミド（ＰＡ）や液晶ポリマー（ＬＣＰ）等のエンジニアリングプラスチック等が挙げられる。また、誘電体部材４０を構成する誘電材料として、例えば、ポリアミド（ＰＡ）や液晶ポリマー（ＬＣＰ）等のエンジニアリングプラスチックや、エラストマー、ゴム等が挙げられる。

【0020】

図２は、ソケットコネクタ１の各部材を分離して示した斜視図である。図３は、嵌合接続前におけるソケットコネクタ１およびプラグコネクタ２の端子配列方向に対して直角な面での断面を示す断面図であり、ソケット端子１０の位置での断面を示している。図２および図３に示されているように、ソケット端子１０は２列をなして配列されている。２列のソケット端子１０は、端子配列方向（Ｙ軸方向）および上下方向（Ｚ軸方向）の両方向に対して直角なコネクタ幅方向（Ｘ軸方向）で互いに対称な向きに設けられている。また、本実施形態では、２列のソケット端子１０は、千鳥状に配置されており、一方の列のソケット端子１０と他方の列のソケット端子１０とが端子配列方向で互いに異なって位置している。

【0021】

ソケットハウジング２０，３０は、ソケット端子１０を介して回路基板（図示せず）に固定される固定ハウジング２０と、固定ハウジング２０に対して相対移動可能な可動ハウジング３０とを有している。ソケット端子１０は、固定ハウジング２０と可動ハウジング３０とに架け渡されて設けられている。

【0022】

ソケット端子１０は、金属帯状片をその板厚方向に屈曲して作られており、図２に示されるように、その端子幅方向（ソケット端子１０の板厚方向に対して直角な方向）が端子配列方向（Ｙ軸方向）と一致するように配されている。ソケット端子１０は、図２および図３に示されるように、下方に位置する一端部に形成された接続部１１と、接続部１１から上方へ向けて延びる固定側被保持部１２と、接続部１１よりも上方かつコネクタ幅方向内方に位置する他端部に形成された接触腕部１３と、接触腕部１３から下方へ向けて延びる可動側被保持部１４と、固定側被保持部１２と可動側被保持部１４との間に位置する中間部１５および移行部１６とを有している。

【0023】

ソケット端子１０のさらなる説明に先立ち、固定ハウジング２０および可動ハウジング３０の構成を説明する。固定ハウジング２０は、図１および図２に示されるように、端子配列方向（Ｙ軸方向）を長手方向とする直方体外形の四角筒状をなしている。固定ハウジング２０は、端子配列方向に延びる一対の側壁２１と、コネクタ幅方向（Ｘ軸方向）に延び一対の側壁２１の端部同士を連結する一対の端壁２２とを有し、この一対の側壁２１および一対の端壁２２によって周壁を形成している。この周壁に囲まれて上下方向に貫通する内部空間２３は、図３に示されているように、可動ハウジング３０の一部、ソケット端子１０の一部および誘電体部材４０を収容している。

【0024】

側壁２１の下部には、図３に示されるように、該側壁２１の内壁面から没入するとともに上下方向に延びる溝状の固定側保持部２１Ａが形成されている。固定側保持部２１Ａは、その下端が開放されており、下方から圧入されたソケット端子１０の固定側被保持部１２を保持するようになっている。また、この側壁２１の下部において、端子配列方向で各固定側保持部２１Ａの両側に位置する部分は、誘電体部材４０のコネクタ幅方向での所定量以上の移動を規制するための規制部２１Ｂをなしている。

【0025】

可動ハウジング３０は、固定ハウジング２０の内部空間２３へ下方から挿入されて配置されており、図３に示されるように、可動ハウジング３０の下部が内部空間２３の上部に収容されている。可動ハウジング３０は、図２に示されるように、端子配列方向に延びる一対の長壁３１と、コネクタ幅方向に延び一対の長壁３１の端部同士を連結する一対の短壁３２と、一対の長壁３１および一対の短壁３２から成る周壁に囲まれた空間を下方から閉塞する底壁３３（図３参照）とを有している。上記周壁に囲まれ上方へ開口した空間は、プラグコネクタ２の一部を受け入れるためのソケット側受入部３４をなしている。

【0026】

長壁３１の上部には、図３に示されるように、該長壁３１の内壁面から没入したソケット端子溝部３１Ａが配列形成されている。ソケット端子溝部３１Ａは、ソケット端子１０の接触腕部１３の上部に沿って上下方向に延びており、該接触腕部１３の上部の弾性変形を許容可能となっている。

【0027】

底壁３３には、図３に示されるように、ソケット端子１０の可動側被保持部１４を圧入保持するための可動側保持部３３Ａが、上下方向で底壁３３を貫通する孔部として形成されている。また、底壁３３は、端子配列方向での複数位置（本実施形態では３位置）に、誘電体部材４０の取付けのための取付突部３３Ｂを有している（図４（Ａ），（Ｂ）も参照）。取付突部３３Ｂは、コネクタ幅方向での中央に位置し、底壁３３の底面から四角柱状に突出している。

【0028】

ソケット端子１０の説明に戻る。接続部１１は、図３に見られるように、固定ハウジング２０の底面より下方位置でコネクタ幅方向外方に向けて延びており、回路基板の実装面の対応回路部（図示せず）に半田接続されるようになっている。固定側被保持部１２は、接続部１１のコネクタ幅方向での内側の端部で屈曲され上方へ向けて直状に延びており、両側縁部（端子幅方向での両側で上下方向に延びる縁部）に形成された圧入突起で固定ハウジング２０の固定側保持部２１Ａにより圧入保持されている。

【0029】

接触腕部１３は、可動ハウジング３０の長壁３１の内壁面に沿って上下方向に延びており、上部がコネクタ幅方向（接触腕部１３の板厚方向）で弾性変形可能となっている。具体的には、接触腕部１３の下部は、図３に示されるように、長壁３１の内壁面に接面しており、該内壁面によってコネクタ幅方向で外側から支持されている。接触腕部１３の上部は、図３に示されるように、上下方向で長壁３１のソケット端子溝部３１Ａに対応して位置しており、相手端子であるプラグ端子５０との接触状態において、コネクタ幅方向で外側へ向けた弾性変形がソケット端子溝部３１Ａによって許容されている。接触腕部１３の上端部には、プラグ端子５０との接触のための接触部１３Ａが、コネクタ幅方向内方へ向けて突出するように屈曲して形成されている。

【0030】

可動側被保持部１４は、図３に示されるように、接触腕部１３の下端から下方へ向けて直状に延びており、可動ハウジング３０の底壁３３によって保持されている。具体的には、可動側被保持部１４は、両側縁部（端子幅方向での両側で上下方向に延びる縁部）に形成された圧入突起で可動ハウジング３０の可動側保持部３３Ａにより圧入保持されている。

【0031】

中間部１５は、上下方向に延びる第一脚部１５Ａと、コネクタ幅方向に延びる第二脚部１５Ｂとを有しており、全体形状が略逆Ｌ字状をなしている。第一脚部１５Ａは、固定ハウジング２０の側壁２１の内壁面に沿って上下方向に沿って直状に延びており、コネクタ幅方向で弾性変形可能となっている。この第一脚部１５Ａの弾性変形により、コネクタ幅方向における可動ハウジング３０の移動（フローティング）が許容されている（図６参照）。第一脚部１５Ａは、その下端からコネクタ幅方向外方へ向けて延びる移行部１６を介して、固定側被保持部１２の上端に連結されている。第一脚部１５Ａは、図３に示されるように、コネクタ幅方向で側壁２１の内壁面との間に隙間を形成した位置に設けられている。

【0032】

また、第一脚部１５Ａは、端子配列方向にも弾性変形可能となっている。この第一脚部１５Ａの弾性変形により、端子配列方向における可動ハウジング３０の移動（フローティング）が許容されている。

【0033】

第二脚部１５Ｂは、第一脚部１５Ａの上端で直角に屈曲されてコネクタ幅方向内方へ向けて延び、可動側被保持部１４の下端に連結されている。第二脚部１５Ｂは、可動ハウジング３０の底壁３３の底面（下面）に沿って直状に延びている。

【0034】

誘電体部材４０は、可動ハウジング３０に下方から取り付けられて、固定ハウジング２０の内部空間２３内に配置されており（図３参照）、端子配列方向で全てのソケット端子１０の端子配列範囲を含むように位置している（図４（Ｂ）参照）。誘電体部材４０は、図２および図３に示されるように、回路基板の実装面（図示せず）に対面し端子配列方向に延びる板状の底板部４１と、コネクタ幅方向での底板部４１の両端から上方へ延びる側板部４２と、２つの側板部４２の上端を連結し端子配列方向に延びる上板部４３とを有している。本実施形態では、底板部４１、側板部４２および上板部４３は、端子配列方向において間欠部分を有しておらず、すなわち、端子配列方向全域にわたって連続して中実となっている。

【0035】

底板部４１は、図３に示されるように、固定ハウジング２０の内部空間２３の下部に位置しており、その底面（下面）が固定ハウジング２０の底面と同じ高さに位置している。底板部４１の側面（コネクタ幅方向で両端に位置する面）は、コネクタ幅方向で内部空間２３の内壁面、換言すると規制部２１Ｂの内壁面との間に若干の隙間を持った状態で該内壁面に対面している。

【0036】

側板部４２は、端子配列方向で底板部４１と同じ範囲にわたって設けられ、コネクタ幅方向を板厚方向とする薄板状をなしている。側板部４２の下部は、側板部４２における他部よりもコネクタ幅方向で若干外側に位置しており、コネクタ幅方向で内部空間２３の内壁面、換言すると規制部２１Ｂの内壁面との間に若干の隙間を持った状態で該内壁面に対面している。側板部４２の下部の側面と底板部４１の側面は、コネクタ幅方向で同じ位置に形成されており、１つの平坦面を形成している。本実施形態では、側板部４２の下部および底板部４１の側部、すなわち上記１つの平坦面を形成する部分は、固定ハウジング２０の規制部２１Ｂと当接可能な被規制部４４として機能している。

【0037】

側板部４２において上記下部から上方へ向けて延びる部分は、コネクタ幅方向に弾性変形可能な第一沿設部４２Ａとして形成されている。第一沿設部４２Ａは、ソケット端子１０の中間部１５における第一脚部１５Ａの内側面（コネクタ幅方向で内側に位置する板面）との間にコネクタ幅方向で若干の隙間をもって位置しており、該第一脚部１５Ａに沿って上下方向に延びている。第一沿設部４２Ａと第一脚部１５Ａとの間の隙間は、ソケット端子１０において適切なインピーダンスが確保されるような寸法で形成されている。ここで、「適切なインピーダンス」の値は所定の許容範囲をもって設定されており、したがって、上記寸法も所定の許容範囲をもって設定されている。第一沿設部４２Ａは第一脚部１５Ａとともにコネクタ幅方向に弾性変形可能であり、弾性変形状態においても第一脚部１５Ａとの間に上記許容範囲内の寸法の隙間が確保されるようになっている（図６参照）。

【0038】

上板部４３は、可動ハウジング３０の底壁３３の底面に沿って端子配列方向に延びて設けられている。上板部４３は、コネクタ幅方向での中央域に設けられた取付板部４３Ａと、コネクタ幅方向における取付板部４３Ａの両側に設けられた第二沿設部４３Ｂとを有している。

【0039】

取付板部４３Ａは、第二沿設部４３Ｂよりも厚く、かつ、底板部４１よりも薄い板状をなしており、その上面が第二沿設部４３Ｂよりも上方に突出している。取付板部４３Ａは、図２に示されるように、可動ハウジング３０の取付突部３３Ｂと対応する複数位置（本実施形態では３位置）に、可動ハウジング３０への取り付けのための取付孔部４３Ａ－１が、取付板部４３Ａを上下方向に貫通して形成されている。取付孔部４３Ａ－１は、取付突部３３Ｂに適合した形状、すなわち上下方向に見て長方形状をなしている。取付突部３３Ｂがそれぞれ対応する取付孔部４３Ａ－１に上方から圧入されることにより、誘電体部材４０が可動ハウジング３０に取り付けられるようになっている。

【0040】

第二沿設部４３Ｂは、図３に示されるように、側板部４２と同じ厚さ寸法の板状をなしており、取付板部４３Ａの上部の側端と第一沿設部の上端とを連結している。第二沿設部４３Ｂは、ソケット端子１０の中間部１５における第二脚部１５Ｂの下面との間に上下方向で若干の隙間をもって位置しており、該第二脚部１５Ｂの下面に沿ってコネクタ幅方向に延びている。第二沿設部４３Ｂと第二脚部１５Ｂとの間の隙間は、ソケット端子１０において適切なインピーダンスが確保されるような寸法で形成されている。ここで、「適切なインピーダンス」の値は所定の許容範囲をもって設定されており、したがって、上記寸法も所定の許容範囲をもって設定されている。

【0041】

本実施形態では、上述したように、第一沿設部４２Ａと第一脚部１５Ａ、および第二沿設部４３Ｂと第二脚部１５Ｂには、適切なインピーダンスが確保されるような寸法の隙間をもって位置しており、互いに接触していない。したがって、中間部１５における特性インピーダンスが過剰に低下することなく、良好な特性インピーダンス整合が図られている。

【0042】

本実施形態では、誘電体部材４０全体は、図３に示されるように、固定ハウジング２０の内面から離間して設けられており、端子配列方向に見て、固定ハウジング２０と重複する部分を有していない。つまり、誘電体部材４０は、固定ハウジング２０に対して端子配列方向で当接する部分を有していない。したがって、誘電体部材４０全体は、固定ハウジング２０と干渉することなく可動ハウジング３０とともに端子配列方向で移動可能となっている。

【0043】

次に、ソケットコネクタ１の組立要領について説明する。まず、ソケット端子１０の可動側被保持部１４を可動ハウジング３０の可動側保持部３３Ａへ下方から圧入することにより、ソケット端子１０を可動ハウジング３０に取り付ける。そして、誘電体部材４０を可動ハウジング３０に下方から取り付ける。具体的には、図４（Ａ）に示されるように、可動ハウジング３０の底壁３３へ向けて誘電体部材４０を下方から移動させて（図４（Ａ）の矢印参照）、図４（Ｂ）に示されるように、可動ハウジング３０の取付突部３３Ｂを誘電体部材４０の取付孔部４３Ａ－１に上方から圧入させる。

【0044】

さらに、ソケット端子１０および誘電体部材４０が取り付けられた可動ハウジング３０を固定ハウジング２０の内部空間２３へ下方から進入させ、ソケット端子１０の固定側被保持部１２を固定ハウジング２０の固定側保持部２１Ａに圧入する。その結果、ソケット端子１０が固定ハウジング２０に取り付けられ、ソケットコネクタ１の組立てが完了する。

【0045】

次に、相手コネクタであるプラグコネクタ２の構成を説明する。プラグコネクタ２は、相手端子としての複数の金属板製のプラグ端子５０と、プラグ端子５０を保持する樹脂等の誘電材料製（電気絶縁材製）のプラグハウジング６０とを有している。プラグハウジング６０を構成する誘電材料として、例えば、ポリアミド（ＰＡ）や液晶ポリマー（ＬＣＰ）等のエンジニアリングプラスチック等が挙げられる。プラグ端子５０は、図１および図３に示されているように、ソケット端子１０の配列方向と同じ方向（Ｙ軸方向）を端子配列方向として２列をなして配列されている。２列のプラグ端子５０は、ソケット端子１０に対応して千鳥状に配置されている。

【0046】

プラグ端子５０は、金属帯状片をその板厚方向に屈曲して作られており、その端子幅方向が端子配列方向と一致するように配されている。プラグ端子５０は、図３に示されるように、一端部（図３における上端部）に形成された接続部５１と、他端部（図３における下端部）に形成された接触腕部５２と、接続部５１と接触腕部５２との間で階段状に屈曲された５３とを有している。

【0047】

プラグ端子５０のさらなる説明に先立ち、プラグハウジング６０の構成を説明する。プラグハウジング６０は、図１に示されるように、端子配列方向（Ｙ軸方向）を長手方向とする直方体外形をなしている。プラグハウジング６０は、端子配列方向に延びる一対の側壁６１と、コネクタ幅方向（Ｘ軸方向）に延び一対の側壁６１の端部同士を連結する一対の端壁６２とを有し、この一対の側壁６１および一対の端壁６２によって周壁を形成している。この周壁に囲まれて形成された内部空間は、図３に示されるように、上下方向での中間位置に設けられた中間壁６３によって上下に隔てられており、下側の内部空間であるプラグ側受入部６４によってソケットコネクタ１の一部を受入可能となっている。また、プラグ側受入部６４内には、中間壁６３の下面から下方へ突出するとともに端子配列方向に延びる突壁６５が設けられている。突壁６５の下部には、突壁６５の側面から没入するとともに上下方向に延びるプラグ端子溝部６５Ａが配列形成されている。

【0048】

プラグ端子５０の説明に戻る。接続部５１は、プラグハウジング６０の底面（図３における上面）よりも上方に位置し、連結部５３の上端からコネクタ幅方向外方へ向けて延びており、回路基板（図示せず）の実装面の対応回路部に半田接続されるようになっている。接触腕部５２は、ソケット端子１０の接触腕部１３と同じ形状をなしている。接触腕部５２は、図３に示されるように、連結部５３の下端から、プラグハウジング６０の突壁６５の側面に沿って下方へ向けて延びており、コネクタ幅方向（接触腕部５２の板厚方向）で弾性変形可能となっている。具体的には、接触腕部５２の上部は、図３に示されるように、突壁６５の側面に接面しており、該側面によってコネクタ幅方向で内側から支持されている。接触腕部５２の下部は、図３に示されるように、上下方向で突壁６５のプラグ端子溝部６５Ａに対応して位置しており、ソケット端子１０との接触状態において、コネクタ幅方向で内側へ向けた弾性変形がプラグ端子溝部６５Ａによって許容されている。接触腕部５２の下端部には、ソケット端子１０との接触のための接触部５２Ａが、コネクタ幅方向外方へ向けて突出するように屈曲して形成されている。

【0049】

プラグ端子５０は、プラグハウジング６０の底面側（図３における上面側）から該プラグハウジング６０に取り付けられる。具体的には、連結部５３の下端部が、中間壁６３を貫通して形成されたプラグ端子保持孔部６３Ａで圧入保持されるとともに、連結部５３の上端部が、側壁６１の内壁面から没入して形成されたプラグ端子保持溝部６１Ａで圧入保持される。

【0050】

次に、ソケットコネクタ１とプラグコネクタ２との嵌合動作については説明する。まず、ソケットコネクタ１とプラグコネクタ２を、それぞれ対応する回路基板（図示せず）の実装面へ半田接続により実装する。すなわち、ソケット端子１０の接続部１１が回路基板の対応回路部に半田接続され、プラグ端子５０の接続部５１が他の回路基板の対応回路部に半田接続されることで、ソケットコネクタ１およびプラグコネクタ２が、それぞれ対応する回路基板へ取り付けられる。

【0051】

次に、図１および図３に示されるように、プラグコネクタ２を、プラグ側受入部６４（図３参照）が下方に開口した姿勢として、ソケットコネクタ１の上方に位置させる。そして、プラグコネクタ２をそのままの姿勢で降下させ、突壁６５をソケットコネクタ１の可動ハウジング３０のソケット側受入部３４へ上方から進入させる。これと同時に、プラグコネクタ２のプラグ側受入部６４には、可動ハウジング３０の周壁が下方から進入する。この結果、図５に示されるように、ソケットコネクタ１とプラグコネクタ２とが嵌合する。

【0052】

プラグコネクタ２がソケットコネクタ１に嵌合されると、図５に示されるように、ソケット端子１０の接触腕部１３は弾性変形しながら接触部１３Ａでプラグ端子５０の接触腕部５２の上部、すなわち根元側の部分に接圧をもって接触する。また、プラグ端子５０の接触腕部５２は弾性変形しながら接触部５２Ａでソケット端子１０の接触腕部１３の下部、すなわち根元側の部分に接圧をもって接触する。つまり、図５に示されるように、ソケット端子１０とプラグ端子５０は２点で接触して電気的に導通する。本実施形態では、接触腕部５２の上部はプラグハウジング６０の突壁６５に支持されており、また、接触腕部１３の下部は可動ハウジング３０の長壁３１に支持されているので、ソケット端子１０とプラグ端子５０が十分に高い接圧をもって互いに接触している。このようにして、ソケットコネクタ１とプラグコネクタ２との嵌合接続動作が完了する。

【0053】

嵌合接続動作が完了した時点にてソケットコネクタ１とプラグコネクタ２との相対位置にずれがない場合には、ソケットコネクタ１およびプラグコネクタ２は、図５に示される正規位置にある。この正規位置において、ソケット端子１０の第一脚部１５Ａは、コネクタ幅方向において固定ハウジング２０の側壁２１の内壁面との間に所定の隙間を有するように位置している。ソケット端子１０の第二脚部１５Ｂは、上下方向において可動ハウジング３０の底壁３３の底面との間に所定の隙間を有するように位置している。また、誘電体部材４０の第一沿設部４２Ａは、コネクタ幅方向においてソケット端子１０の第一脚部１５Ａの内壁面との間に所定の隙間を有するように位置している。誘電体部材４０の第二沿設部４３Ｂは、上下方向においてソケット端子１０の第二脚部１５Ｂの下面との間に所定の隙間を有するように位置している。

【0054】

仮に、コネクタ嵌合接続動作が開始される直前にソケットコネクタ１とプラグコネクタ２との相対位置がずれていた場合には、コネクタ嵌合過程およびコネクタ嵌合後において、ずれが生じている方向へ可動ハウジング３０が移動（フローティング）し、その結果、ずれが吸収された状態で嵌合接続が可能となっている（図６参照）。

【0055】

また、嵌合接続動作が完了した時点において、ソケットコネクタ１およびプラグコネクタ２が正規位置（図５参照）にある場合でも、その後、例えば振動が生じる環境でコネクタが使用されたときには、ソケットコネクタ１の可動ハウジング３０のフローティングによって、その振動が吸収される。

【0056】

図６は、嵌合接続されたソケットコネクタ１およびプラグコネクタ２の断面図であり、可動ハウジング３０のフローティングが生じている状態を示している。図６では、ソケット端子１０の位置における、端子配列方向に対して直角な面での断面が示されている。また、この図６では、可動ハウジング３０がコネクタ幅方向（Ｘ軸方向）でＸ１側へフローティングした状態が示されている。可動ハウジング３０がＸ１側へフローティングする場合、図６に示される２つのソケット端子１０、すなわちＸ１側およびＸ２側に位置する両方のソケット端子１０の第一脚部１５Ａは、該第一脚部１５Ａの下端部近傍を支点として、Ｘ１側へ向けて傾斜するように弾性変形する。このとき、Ｘ１側のソケット端子１０の第一脚部１５Ａは、固定ハウジング２０の側壁２１の内壁面との間に形成されている隙間の範囲で弾性変形する。

【0057】

図６に示されるように、可動ハウジング３０がコネクタ幅方向でＸ１側へフローティングすると、該可動ハウジング３０に取り付けられている誘電体部材４０は、まず、その全体が可動ハウジング３０とともにＸ１側へ若干移動し、Ｘ１側の被規制部４４で固定ハウジング２０のＸ１側の規制部２１Ｂに当接する。このようにＸ１側で被規制部４４が規制部２１Ｂに当接することにより、誘電体部材４０全体の移動が規制される。このとき、Ｘ２側では被規制部４４は規制部２１Ｂから離間するように移動するので、被規制部４４と規制部２１Ｂが当接することはない。

【0058】

可動ハウジング３０がさらにＸ１側へ移動すると、図６に示されるように、誘電体部材４０のＸ１側の第一沿設部４２Ａが、被規制部４４と規制部２１Ｂとの当接位置を支点として、ソケット端子１０のＸ１側の第一脚部１５Ａの弾性変形に追従してＸ１側へ向けて傾斜するように弾性変形する。このとき、Ｘ２側の第一沿設部４２Ａは、Ｘ２側の第一脚部１５Ａの弾性変形に追従してＸ１側へ弾性変形する。

【0059】

本実施形態では、上述したように、可動ハウジング３０がコネクタ幅方向でフローティングすると、誘電体部材４０の２つの第一沿設部４２Ａは、該第一沿設部４２Ａに隣接している第一脚部１５Ａとともにコネクタ幅方向で弾性変形する。このように、第一沿設部４２Ａは、第一脚部１５Ａに追従可能となっているので、第一脚部１５Ａの弾性変形ひいては可動ハウジング３０の移動を妨げることはない。

【0060】

また、第一沿設部４２Ａは、弾性変形状態においても、既述した所定の許容範囲で第一脚部１５Ａとの間に隙間を維持しており、第一脚部１５Ａに接触することはない。また、図６に示されるように、コネクタ幅方向でのフローティング時においては、ソケット端子１０の第二脚部１５Ｂおよび誘電体部材４０の第二沿設部４３Ｂは弾性変形することがない。したがって、上下方向における第二脚部１５Ｂと第二沿設部４３Ｂとの間の隙間は維持されるので、両者同士が接触することはない。

【0061】

このように可動ハウジング３０がフローティングしても、誘電体部材４０の第一沿設部４２Ａおよび第二沿設部４３Ｂとソケット端子１０の中間部１５との間に隙間が形成された状態が維持される。したがって、中間部１５における特性インピーダンスが過剰に低下することないので、ソケット端子１０における特性インピーダンス整合が図られた状態を維持することができる。

【0062】

また、本実施形態では、上述したように、誘電体部材４０の第一沿設部４２Ａが、誘電体部材４０の被規制部４４と固定ハウジング２０の規制部２１Ｂとの当接位置を支点として、ソケット端子１０の第一脚部１５Ａとともに可動ハウジング３０の移動に追従して弾性変形する。したがって、第一沿設部４２Ａおよび第一脚部１５Ａの弾性変形状態においても、両者間の隙間が確保された状態、ひいては特性インピーダンス整合が良好に図られた状態を維持しやすくなる。

【0063】

また、可動ハウジング３０が端子配列方向でフローティングする場合、そのフローティングは、ソケット端子１０の中間部１５が端子配列方向に弾性変形することにより許容される。本実施形態では、誘電体部材４０は、固定ハウジング２０に対して端子配列方向で当接する部分を有していない。したがって、誘電体部材４０全体が端子配列方向で固定ハウジング２０と干渉することないので、可動ハウジング３０の移動に円滑に追従することができる。

【0064】

このとき、第一沿設部４２Ａ自体および第二沿設部４３Ｂ自体は、端子配列方向に弾性変形することなく、ソケット端子１０の中間部１５を覆った状態を維持しながら、弾性変形する中間部１５に追従して移動する。本実施形態では、第一沿設部４２Ａおよび第二沿設部４３Ｂは、端子配列方向全域にわたって連続して中実に形成されているので、中間部１５が端子配列方向で弾性変形した状態にあるときにおいても、中間部１５を確実に覆っており、その結果、ソケット端子１０において特性インピーダンス整合が図られた状態を良好に確保できる。

【0065】

＜第二実施形態＞
第一実施形態では、第一沿設部４２Ａおよび第二沿設部４３Ｂは、端子配列方向全域にわたって連続して中実に形成されていることとしたが、第二実施形態では、第一沿設部および第二沿設部は、端子配列方向でスリットが所定間隔をもって形成されていることにより、端子配列方向で不連続となっており、この点で、第一実施形態と構成が異なる。本実施形態では、第一実施形態との相違点を中心に説明し、第一実施形態と同じ部分には第一実施形態における符号に「１００」を加えた符号を付して説明を省略する。

【0066】

図７は、第二実施形態に係るソケットコネクタ１０１のコネクタ幅方向に対して直角な面での断面を示す断面図である。この図７では、コネクタ幅方向におけるソケットコネクタ１０１の中央位置での断面が示されている。また、図７では、端子配列方向（Ｙ軸方向）におけるＹ２側の端部の図示が省略されている。本実施形態では、誘電体部材１４０の下部が固定ハウジング１２０の下部に固定されており、この点で、誘電体部材４０が固定ハウジング２０に固定されていない第一実施形態のソケットコネクタ１と構成が異なっている。

【0067】

図７に示されるように、誘電体部材１４０の第一沿設部１４２Ａおよび第二沿設部（図７には図示せず）には、端子配列方向でソケット端子１１０同士の間に対応する位置にスリット１４４が形成されている。スリット１４４は、第一沿設部１４２Ａの上下方向（Ｚ軸方向）におけるほぼ全範囲および第二沿設部のコネクタ幅方向（Ｘ軸方向）におけるほぼ全範囲にわたって連続して延び、第一沿設部１４２Ａおよび第二沿設部の板厚方向に貫通して形成されている。その結果、第一沿設部１４２Ａおよび第二沿設部において、端子配列方向での各スリット１４４の両側には、細条片１４５が形成されている。細条片１４５は、ソケット端子１１０の中間部（図７には図示せず）とほぼ同じ幅寸法で形成されている。したがって、細条片１４５は、該細条片１４５に対応して位置する中間部をコネクタ幅方向内方および下方から覆っている。

【0068】

本実施形態では、第一沿設部１４２Ａおよび第二沿設部が複数の細条片１４５によって形成されており、端子配列方向で不連続となっている。したがって、本実施形態では、第一実施形態のように第一沿設部４２Ａおよび第二沿設部４３Ｂが端子配列方向全域にわたって連続して中実に形成されている場合と比べて、第一沿設部４２Ａおよび第二沿設部４３Ｂがコネクタ幅方向でさらに弾性変形しやすくなり、これらの方向での可動ハウジング１３０のフローティングが容易となる。

【0069】

また、本実施形態では、誘電体部材１４０は、その上部で可動ハウジング１３０に固定されているとともに、その下部で固定ハウジング１２０に固定されている。したがって、端子配列方向における可動ハウジング１３０のフローティング時に、ソケット端子１１０の中間部が端子配列方向で弾性変形すると、誘電体部材１４０の細条片１４５が中間部に追従するようにして端子配列方向で弾性変形する。したがって、可動ハウジング１３０がフローティングした状態においても、誘電体部材１４０の細条片１４５がソケット端子１１０の中間部を覆った状態が維持される。また、このとき、細条片１４５と中間部との間に所定の隙間が形成された状態も維持される。その結果、ソケット端子１１０における特性インピーダンス整合が図られた状態を良好に確保できる。

【0070】

＜第三実施形態＞
第一実施形態では、ソケット端子１０の中間部１５の全体形状が略逆Ｌ字状をなしていたが、中間部の形状はこれに限られない。第三実施形態では、ソケット端子の中間部は略Ｓ字状に屈曲された部分を一部に有しており、この点で、第一実施形態と構成が異なる。本実施形態では、第一実施形態との相違点を中心に説明し、第一実施形態と同じ部分には第一実施形態における符号に「２００」を加えた符号を付して説明を省略する。

【0071】

図８は、第三実施形態に係るソケットコネクタ２０１の端子配列方向に対して直角な面での断面を示す断面図である。この図８では、コネクタ幅方向におけるＸ１側の半部の図示が省略されている。図８に示されるように、本実施形態では、ソケット端子２１０の中間部２１５の第一脚部２１５Ａは、その下部に、略横Ｓ字状に屈曲され弾性変形可能な屈曲弾性部２１７を有している。屈曲弾性部２１７は、上下方向に延びる外側脚部２１７Ａ、中間脚部２１７Ｃおよび内側脚部２１７Ｅと、これらのうち２つの脚部同士を連結する上側屈曲部２１７Ｂおよび下側屈曲部２１７Ｄとを有している。

【0072】

具体的には、コネクタ幅方向で外側から順に外側脚部２１７Ａ、中間脚部２１７Ｃ、内側脚部２１７Ｅが並んで設けられており、外側脚部２１７Ａと中間脚部２１７Ｃの上端同士が上側屈曲部２１７Ｂによって連結され、中間脚部２１７Ｃと内側脚部２１７Ｅの下端同士が下側屈曲部２１７Ｄによって連結されている。本実施形態では、このように第一脚部２１５Ａの一部に屈曲弾性部２１７を設けることにより、第一脚部２１５Ａの上下方向の寸法を大きくすることなく、第一脚部２１５Ａのばね長を大きく確保できる。

【0073】

また、誘電体部材２４０の第一沿設部２４２Ａは、図８に示されるように、外側脚部２１７Ａと中間脚部２１７Ｃとの間で、上側屈曲部２１７Ｂの直下位置まで上方へ向けて延出する延出部２４６を有している。延出部２４６は、外側脚部２１７Ａ、上側屈曲部２１７Ｂおよび中間脚部２１７Ｃとの間に所定寸法の隙間をもって位置している。この隙間は、ソケット端子２１０において適切なインピーダンスが確保されるような寸法で形成されている。ここで、「適切なインピーダンス」の値は所定の許容範囲をもって設定されており、したがって、上記寸法も所定の許容範囲をもって設定されている。

【0074】

延出部２４６は、弾性変形可能な第一沿設部２４２Ａの一部に形成されており、外側脚部２１７Ａ、上側屈曲部２１７Ｂおよび中間脚部２１７Ｃで形成される略逆Ｕ字状部分とともにコネクタ幅方向に変位可能となっている。上記略逆Ｕ字状部分が弾性変形すると、延出部２４６は、該略逆Ｕ字状部分に追従するように変位する。その結果、略逆Ｕ字状部分の弾性変形状態においても、略逆Ｕ字状部分と延出部２４６との間に上記許容範囲内の寸法の隙間が確保されるようになっている。

【0075】

また、延出部２４６と、第一沿設部２４２Ａの他部、具体的には、コネクタ幅方向で延出部２４６よりも内側に位置し上下方向で延出部２４６と同じ範囲に位置する部分２４２Ａ－１との間には、図８に示されるように、上方に開口する凹部２４７が形成されている。凹部２４７は、中間脚部２１７Ｃ、下側屈曲部２１７Ｄおよび内側脚部２１７Ｅで形成される略Ｕ字状部分を収容している。この略Ｕ字状部分は、凹部２４７の内壁面との間に所定寸法の隙間をもって位置している。この隙間は、ソケット端子２１０において適切なインピーダンスが確保されるような寸法で形成されている。ここで、「適切なインピーダンス」の値は所定の許容範囲をもって設定されており、したがって、上記寸法も所定の許容範囲をもって設定されている。上記略Ｕ字状部分の弾性変形状態においても、該略Ｕ字状部分と凹部２４７の内壁面との間には、上記許容範囲内の寸法の隙間が確保されるようになっている。

【0076】

また、本実施形態では、図８に示されるように、ソケット端子２１０の第二脚部２１５Ｂは、第一実施形態の第二脚部１５Ｂ（図５参照）より短くなっており、これに合わせて、誘電体部材２４０の第二沿設部２４３Ｂも、第一実施形態の第二沿設部４３Ｂ（図５参照）より短くなっている。

【0077】

＜第四実施形態＞
第一実施形態では、ソケットコネクタ１は該ソケットコネクタ１が実装される回路基板の実装面に対して直角な方向を接続方向として相手コネクタであるプラグコネクタ２に嵌合接続されていたが、第四実施形態では、回路基板の実装面に対して平行な方向を接続方向として相手コネクタであるプラグコネクタに嵌合接続されるようになっており、この点で、第一実施形態と構成が異なる。本実施形態では、第一実施形態との相違点を中心に説明し、第一実施形態と同じ部分には第一実施形態における符号に「３００」を加えた符号を付して説明を省略する。

【0078】

図９は、第四実施形態に係るソケットコネクタ３０１の端子配列方向に対して直角な面での断面を示す断面図である。この図９では、端子配列方向（Ｙ軸方向）におけるソケット端子３１０の位置での断面が示されている。図９に示されるように、本実施形態では、ソケットコネクタ３０１は、回路基板（図示せず）の実装面に対して平行な左右方向（図９におけるＸ軸方向）を接続方向として、相手コネクタであるプラグコネクタ（図示せず）に嵌合接続されるようになっている。

【0079】

本実施形態のソケットコネクタ３０１は、第一実施形態のソケットコネクタ１（図３参照）を横倒しにするとともにソケット端子１０において接続部１１が設けられている側の一端側部分を延長したような構成となっている。図９に示されるように、本実施形態では、ソケット端子３１０には、固定側被保持部３１２の右端（Ｘ１側の端部）で屈曲されて下方へ向けて直状に延びる延長部３１８が設けられており、接続部３１１が延長部３１８の下端から右方へ向けて延びて設けられている。図９に示されるように、上側（Ｚ１側）のソケット端子３１０の延長部３１８は、下側（Ｚ２側）のソケット端子３１０の延長部３１８よりも右方（Ｘ１側）に位置し、かつ、該延長部３１８よりも長く形成されている。

【0080】

本実施形態のソケットコネクタ３０１においても、第一実施形態と同様に、誘電体部材３４０の第一沿設部３４２Ａとソケット端子３１０の第一脚部３１５Ａとの間の隙間、および誘電体部材３４０の第二沿設部３４３Ｂとソケット端子３１０の第二脚部３１５Ｂとの間の隙間は、ソケット端子３１０において適切なインピーダンスが確保されるような寸法で形成されている。第一沿設部３４２Ａと第一脚部３１５Ａとの間、および第二沿設部３４３Ｂと第二脚部３１５Ｂとの間に隙間が形成された状態は、可動ハウジング３３０がフローティング状態にあるときも維持される。

【0081】

既述した第一実施形態ないし第四実施形態では、固定ハウジングに形成された内部空間に誘電体部材全体が収容されているが、これに替わる変形例として、誘電体部材の一部のみが収容されるようにしてもよい。また、第一実施形態ないし第四実施形態では、誘電体部材は固定ハウジングの内部空間に収容されているが、これに替わる変形例として、可動ハウジングに内部空間を形成して、その内部空間に誘電体部材を収容するようにしてもよい。

【0082】

第一実施形態ないし第四実施形態では、誘電体部材は可動ハウジングに取り付けられていたが、これに替わる変形例として、誘電体部材は、可動ハウジングには取り付けられずに、固定ハウジングに取り付けられていてもよい。この変形例では、誘電体部材の一部に形成された被規制部が、可動ハウジングに形成された規制部にコネクタ幅方向で当接可能となっている。その結果、コネクタ幅方向での可動ハウジングのフローティング時に、被規制部が規制部に当接することにより、誘電体部材の第一沿設部がソケット端子に追従するようにコネクタ幅方向で弾性変形する。また、この変形例において、誘電体部材は、可動ハウジングに対して端子配列方向で当接する部分を有していなくてもよい。その場合、可動ハウジングが端子配列方向にフローティングしても、誘電体部材は可動ハウジングとともに移動することはない。

【0083】

第一実施形態ないし第四実施形態では、誘電体部材の沿設部はソケット端子の中間部に追従するときに弾性変形するが、沿設部が弾性変形することは必須ではなく、弾性変形を伴うことなく変位するようになっていてもよい。

【符号の説明】

【0084】

１，１０１，２０１，３０１ ソケットコネクタ（回路基板用電気コネクタ）
１０，１１０，２１０，３１０ ソケット端子
１２，３１２ 固定側被保持部
１４ 可動側被保持部
１５，２１５，３１５ 中間部
２０，１２０，２２０，３２０ 固定ハウジング
２３，１２３，２２３，３２３ 内部空間
３０，１３０，２３０，３３０ 可動ハウジング
４０，１４０，２４０，３４０ 誘電体部材
４２Ａ，１４２Ａ，２４２Ａ，３４２Ａ 第一沿設部
４３Ｂ，２４３Ｂ，３４３Ｂ 第二沿設部
４４ 被規制部

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】