(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025019499
(43)【公開日】2025-02-07
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド、および、液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20250131BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20250131BHJP
B41J 2/015 20060101ALI20250131BHJP
【FI】
B41J2/14 305
B41J2/01 451
B41J2/14 613
B41J2/015 101
B41J2/14 611
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023123134
(22)【出願日】2023-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】森 政貴
(72)【発明者】
【氏名】鷹合 仁司
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA21
2C056EA24
2C056EB08
2C056EB30
2C056FA04
2C056FA10
2C056HA05
2C056KC14
2C057AF82
2C057AF93
2C057AF99
2C057AG29
2C057AG44
2C057AG55
2C057AG68
2C057AG75
2C057AG84
2C057AG91
2C057AG92
2C057AG93
2C057AK07
2C057AL25
2C057AN01
2C057AP25
2C057AQ02
2C057AR08
2C057BA04
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】水分の吸着を抑制しつつ、温度検出用の抵抗体へのノイズの影響を低減させる。
【解決手段】液体吐出ヘッドは、第1方向に配列された複数の圧力室を含む圧力室列が設けられた圧力室基板と、複数の個別電極と、複数の個別電極に積層され、複数の圧力室の内部の液体に圧力を付与するために駆動される圧電体と、圧電体に積層される少なくとも1つの電極を含む共通電極と、積層方向における圧電体の下側において、複数の個別電極と重ならない位置に配置され、複数の個別電極と共通電極と同じ材料で形成され、複数の圧力室の内部の液体の温度に応じて抵抗値が変化する検出抵抗体と、を備え、複数の圧力室の長手方向と積層方向とに平行な平面で圧力室が存在する位置で圧力室基板を切断した断面において、検出抵抗体は、共通電極と重なる重複領域と、共通電極と重ならない非重複領域とを含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体吐出ヘッドであって、
第1方向に配列された複数の圧力室を含む圧力室列が設けられた圧力室基板と、
前記複数の圧力室に個別に設けられる複数の個別電極と、
前記複数の個別電極にそれぞれ積層され、前記複数の圧力室の内部の液体に圧力を付与するために駆動される圧電体と、
前記複数の圧力室に共通に設けられ、前記圧電体に積層される少なくとも1つの電極を含む共通電極と、
前記複数の個別電極と前記圧電体と前記共通電極とが積層される積層方向における前記圧電体の下側において、前記複数の個別電極と重ならない位置に配置され、前記複数の個別電極と前記共通電極との少なくともいずれかと同じ材料で形成され、前記複数の圧力室の内部の液体の温度に応じて抵抗値が変化する検出抵抗体と、
を備え、
前記複数の圧力室の長手方向と前記積層方向とに平行な平面で圧力室が存在する位置で前記圧力室基板を切断した断面において、前記検出抵抗体は、前記共通電極と重なる重複領域と、前記共通電極と重ならない非重複領域とを含む、
液体吐出ヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載の液体吐出ヘッドであって、
前記重複領域は、前記長手方向において前記非重複領域より前記圧力室に近い位置にある、
液体吐出ヘッド。
【請求項3】
請求項1に記載の液体吐出ヘッドであって、
前記重複領域の前記長手方向における長さが、前記非重複領域の前記長手方向における長さより長い、
液体吐出ヘッド。
【請求項4】
請求項1に記載の液体吐出ヘッドであって、
前記重複領域の前記長手方向における長さが、前記非重複領域の前記長手方向における長さより短い、
液体吐出ヘッド。
【請求項5】
請求項1に記載の液体吐出ヘッドであって、
前記非重複領域と重なる領域において、前記圧電体の前記積層方向の上側には、前記共通電極と同じ材料で形成されており、前記共通電極と電気的に接続されていない非電極層が設けられている、
液体吐出ヘッド。
【請求項6】
請求項5に記載の液体吐出ヘッドであって、
前記非電極層が設けられた範囲の層の厚みは、前記共通電極が設けられた範囲の層の厚みと同じである、
液体吐出ヘッド。
【請求項7】
請求項1に記載の液体吐出ヘッドであって、
前記圧力室の前記長手方向と前記積層方向とに平行な平面で前記圧力室が存在しない位置で前記圧力室基板を切断した断面において、前記検出抵抗体は前記非重複領域を含まない、
液体吐出ヘッド。
【請求項8】
請求項1に記載の液体吐出ヘッドであって、
配線基板をさらに有し、
前記検出抵抗体は、
前記圧力室列の近傍において前記長手方向に沿って延びており、一端が前記配線基板に接続する第1部分と、
前記圧力室列に対して前記第1部分が配置されている側とは反対の側であって、前記圧力室の近傍において前記長手方向に沿って延びており、一端が前記配線基板に接続する第2部分と、
前記圧力室の近傍において、屈曲することなく前記第1方向に沿って延びており、前記第1部分の他端と前記第2部分の他端とをつなぐ第3部分と、
を含んでいる、
液体吐出ヘッド。
【請求項9】
液体吐出装置であって、
請求項1から8のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッドと、
前記検出抵抗体の抵抗値を取得する抵抗値取得部と、
前記抵抗値取得部が取得した抵抗値に基づいて前記圧力室の近傍の温度を取得する温度取得部と、
を備える液体吐出装置。
【請求項10】
請求項9に記載の液体吐出装置であって、
前記温度取得部が取得した温度に基づいて、前記複数の個別電極に印加する駆動波形を決定する駆動波形決定部、
をさらに備える液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液体吐出ヘッド、および、液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、圧電素子を備える液体吐出ヘッドにおいて、圧力室内の液体の温度を検出するため、温度変化に応じて抵抗値が変化する抵抗体の配線を圧力室の近傍に配置することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術においては、抵抗体が圧電体に覆われた状態で配置されている(
図5を参照)。この場合、圧電素子を駆動させるための駆動配線を流れる駆動電流によるノイズの影響を受ける。ノイズの影響を相対的に低減させるため、圧電体に積層される共通電極の配置する範囲を限定して、抵抗体が配置された位置に共通電極が設けられた範囲が重ならないようにすることが考えられる。ここで、圧電体の上部に設けられている共通電極は、圧電体に水分が吸着されることを抑制する機能を有する。水分の吸着を抑制する観点から、共通電極の範囲をむやみに限定することは望ましくない。よって、水分の吸着を抑制しつつ、抵抗体へのノイズの影響を低減させる技術が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一形態によれば、液体吐出ヘッドが提供される。この液体吐出ヘッドは、第1方向に配列された複数の圧力室を含む圧力室列が設けられた圧力室基板と、前記複数の圧力室に個別に設けられる複数の個別電極と、前記複数の個別電極にそれぞれ積層され、前記複数の圧力室の内部の液体に圧力を付与するために駆動される圧電体と、前記複数の圧力室に共通に設けられ、前記圧電体に積層される少なくとも1つの電極を含む共通電極と、前記複数の個別電極と前記圧電体と前記共通電極とが積層される積層方向における前記圧電体の下側において、前記複数の個別電極と重ならない位置に配置され、前記複数の個別電極と前記共通電極との少なくともいずれかと同じ材料で形成され、前記複数の圧力室の内部の液体の温度に応じて抵抗値が変化する検出抵抗体と、を備え、前記複数の圧力室の長手方向と前記積層方向とに平行な平面で圧力室が存在する位置で前記圧力室基板を切断した断面において、前記検出抵抗体は、前記共通電極と重なる重複領域と、前記共通電極と重ならない非重複領域とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】液体吐出装置の概略構成を示す模式図である。
【
図2】制御部と液体吐出ヘッドの機能についての概略構成を表すブロック図である。
【
図3】液体吐出ヘッドの構成を示す分解斜視図である。
【
図4】液体吐出ヘッドの構成を平面視で示す説明図である。
【
図5】
図4の液体吐出ヘッドのV-V断面を示す断面図である。
【
図6】第1圧力室列における圧電素子の近傍を拡大した断面図である。
【
図7】
図4の液体吐出ヘッドのVII-VII断面を示す断面図である。
【
図8】他の実施形態1にかかる圧電素子の近傍を拡大した断面図である。
【
図9】他の実施形態2にかかる圧電素子の近傍を拡大した断面図である。
【
図10】他の実施形態3にかかる第2電極の配置についての説明図である。
【
図11】他の実施形態6にかかる液体吐出ヘッドの構成を平面視で表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
A.実施形態:
図1は、液体吐出ヘッド100を備える液体吐出装置1の概略構成を示す模式図である。
図1において、理解を容易にするためXYZ直交座標系を設定する。X軸およびY軸は水平面に沿っており、Z軸は鉛直方向に沿っている。なお、液体吐出装置1の載置方向によってはこの限りではない。直交とは、90°±10°の範囲を含む。
図2以降の図面においても同様にXYZ直交座標系が設定されている。
【0008】
液体吐出装置1は、液体の一例としてインクを吐出することによって媒体である印刷用紙P上に画像を印刷するインクジェットプリンターである。液体吐出装置1がインクを吐出する対象である媒体は、印刷用紙Pに限らず、プラスチック、フィルム、繊維、布帛、皮革、金属、ガラス、木材、セラミックス等であってもよい。
【0009】
液体吐出装置1は、液体を吐出する液体吐出ヘッド100と、液体容器310と、ヘッド移動機構320と、搬送機構330と、制御部500とを備える。
【0010】
液体吐出ヘッド100は、液体を吐出する複数のノズル21を有し、液体容器310から供給された液体を印刷用紙P上に吐出する。複数のノズル21は、Y軸方向に沿って配列されている。液体吐出ヘッド100の構造の詳細については後述する。
【0011】
液体容器310は液体吐出ヘッド100から吐出される液体を貯留する。液体容器310が貯留する液体は、樹脂製のチューブ312を介して液体吐出ヘッド100に供給される。液体容器310は、例えば、可撓性フィルムで形成された袋状の液体パックである。
【0012】
ヘッド移動機構320は、液体吐出ヘッド100を搭載するキャリッジ322と、キャリッジ322が固定されている駆動ベルト324と、駆動ベルト324を主走査方向に往復移動させる移動用モーター326およびプーリー327とを備える。移動用モーター326が、駆動ベルト324を主走査方向に往復移動することにより、キャリッジ322および液体吐出ヘッド100が主走査方向に往復移動する。主走査方向は+X方向および-X方向である。副走査方向は、主走査方向と交差する方向であり、+Y方向および-Y方向である。図示する例においては、液体がノズル21から+Z方向に吐出される。
【0013】
搬送機構330は、3つの搬送ローラー332と、搬送ローラー332が装着された搬送ロッド334と、搬送用モーター336とを備える。搬送用モーター336が、搬送ロッド334を回転駆動することにより、印刷用紙Pは副走査方向に搬送される。
【0014】
図2は、制御部500と液体吐出ヘッド100の機能についての概略構成を表すブロック図である。液体吐出ヘッド100は、圧電素子150と、温度検出部410と、温度検出回路450とを備えている。なお、液体吐出ヘッド100の詳細な構成については後述する。なお、温度検出回路450は液体吐出ヘッド100の外部に設けられていてもよい。
【0015】
圧電素子150は、液体吐出ヘッド100の後述する圧力室内の液体に圧力を付与するための駆動素子である。
【0016】
温度検出部410は、温度検出に用いられる抵抗配線により構成されている。本明細書では、温度を検出するために用いられる抵抗配線を検出抵抗体とよぶ。温度検出部410の詳細については後述する。
【0017】
温度検出回路450は、金属、半導体等の抵抗配線の電気抵抗値が温度によって変化する特性を利用して、圧力室内の液体の温度を推定する。
【0018】
温度検出回路450は、電源部451と、抵抗測定部452とを備えている。電源部451は、例えば、定電流回路である。電源部451は、温度管理部550による制御に従って温度検出部410に定電流を流す。抵抗測定部452は、電源部451が温度検出部410に流す定電流の電流値と、温度検出部410に含まれる検出抵抗体の両端の電圧値と、に基づいて温度検出部410の検出抵抗体の抵抗値を取得する。抵抗測定部452は取得した温度検出部410の検出抵抗体の抵抗値を温度管理部550に出力する。抵抗測定部452を「抵抗値取得部」ともよぶ。
【0019】
制御部500は液体吐出装置1全体を制御する。制御部500は、CPU(Central Processing Unit)501とメモリー502とを備えるマイクロコンピューターである。メモリー502には、CPU501が実行する各種のプログラムが格納されている。また、メモリー502には後述する変換テーブルTBが格納されている。CPU501は、メモリー502に格納されたプログラムを実行することで、ヘッド制御部520、および、温度管理部550として機能する。なお、制御部500は、CPUに代えて、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の1または複数の処理回路によって実現されてもよい。
【0020】
ヘッド制御部520は、キャリッジ322の主走査方向に沿った往復動作、印刷用紙Pの副走査方向に沿った搬送動作を制御する。また、ヘッド制御部520は、圧電素子150を駆動することにより、印刷用紙Pへの液体の吐出を制御する。本実施形態においては、ヘッド制御部520は、温度管理部550から取得した圧力室内の液体の温度に基づいて圧電素子150を駆動するための駆動波形を決定し、決定した駆動波形の駆動信号で圧電素子150を駆動する。よって、圧力室内の液体の温度に応じて圧電素子150を駆動することができる。ヘッド制御部520を「駆動波形決定部」ともよぶ。
【0021】
温度管理部550は、抵抗測定部452から取得した温度検出部410の検出抵抗体の抵抗値と変換テーブルTBとを用いて、圧力室の近傍の温度を取得する。本実施形態において、取得された圧力室の近傍の温度により、圧力室内の液体の温度を検出できる。例えば、取得された圧力室の近傍の温度を圧力室内の液体の温度として扱ってもよい。あるいは、取得された圧力室の近傍の温度からあらかじめ定められた方法で求められる値を圧力室内の液体の温度として扱ってもよい。変換テーブルTBは、検出抵抗体の電気抵抗値と温度との対応関係を表す情報を含む。温度管理部550は、求めた圧力室内の液体の温度をヘッド制御部520に出力する。なお、温度管理部550は、温度検出部410の検出抵抗体の抵抗値と、あらかじめ記憶部584に格納された温度算出式とを用いて、圧力室内の液体の温度を算出してもよい。温度管理部550を「温度取得部」ともよぶ。
【0022】
図3から
図5を参照して液体吐出ヘッド100の詳細な構成について説明する。
図3は、液体吐出ヘッド100の構成を示す分解斜視図である。
図4は、液体吐出ヘッド100の構成を平面視で表す説明図である。本明細書において、「平面視」とは、積層方向に沿って対象物を見た状態を意味する。
図5は、
図4における液体吐出ヘッド100のV-V断面を示す断面図である。
【0023】
図3に示すように、液体吐出ヘッド100は、圧力室基板10と、連通基板15と、ノズル基板20と、コンプライアンス基板25と、保護基板30と、ケース部材40と、振動板130と、複数の圧電素子150と、複数の個別電極171と、共通電極172と、複数の配線175と、配線基板200と、温度検出部410と、温度検出回路450とを備える。なお、
図3において、振動板130(
図5を参照)、圧電素子150(
図5を参照)、温度検出部410(
図4を参照)、および、温度検出回路450(
図5を参照)の図示を省略している。
【0024】
圧力室基板10、連通基板15、ノズル基板20、コンプライアンス基板25、保護基板30、ケース部材40、振動板130、および、圧電素子150は積層部材である。これらの積層部材が積層されることで、液体吐出ヘッド100が形成される。液体吐出ヘッド100を形成する積層部材が積層される方向を「積層方向」ともよぶ。本実施形態において積層方向はZ軸方向と一致する。あらかじめ決められた基準位置に対して、+Z方向側を「下側」ともよび、-Z方向側を「上側」ともよぶ。
【0025】
圧力室基板10は、シリコン単結晶基板により形成されている。あるいは、圧力室基板10は、ステンレス鋼(SUS)、ニッケル(Ni)等の金属、ジルコニア(ZrO2)、アルミナ(Al2O3)等のセラミック材料、ガラスセラミック材料、酸化マグネシウム(MgO)、ランタンアルミン酸(LaAlO3)等の酸化物材料によって形成されてもよい。
【0026】
図4に示すように、圧力室基板10には複数の圧力室12が形成されている。圧力室12は液体に圧力を付与するための空間である。
図4に示す例では、圧力室基板10には、Y軸方向に沿って配列されている複数の圧力室12を含む第1圧力室列L1と、Y軸方向に沿って配列されている複数の圧力室12を含む第2圧力室列L2と、が形成されている。複数の圧力室12は配列されている方向(Y軸方向)を配列方向という。第1圧力室列L1と第2圧力室列L2とは、配列方向に交差する方向(X軸方向)に沿って並ぶよう配置されている。第1圧力室列L1に属する圧力室12と第2圧力室列L2に属する圧力室12とは、配列方向(Y軸方向)における位置が互い違いとなるように配置されている。複数の圧力室12は配列されている配列方向を「第1方向」ともよぶ。
【0027】
図3に示すように、連通基板15は圧力室基板10の下側に配置される。連通基板15は接着剤により圧力室基板10の下側の面に固定されている。連通基板15は、例えば、シリコン単結晶基板によって形成されている。
【0028】
図5に示すように、連通基板15には、インク供給路16と、第1共通液室17と、第2共通液室18と、ノズル連通口19とが形成されている。インク供給路16は連通基板15をZ軸方向に貫通する貫通孔である。インク供給路16は圧力室基板10に形成された圧力室12と第2共通液室18とを接続する。インク供給路16は圧力室12へ液体を導入する流路である。第1共通液室17は連通基板15をZ軸方向に貫通する貫通孔として形成されている。第2共通液室18は連通基板15の下面(-Z側の面)に設けられた凹部として形成されている。第2共通液室18は、インク供給路16と第1共通液室17と接続する。第1共通液室17と第2共通液室18とは、後述するケース部材40に形成された液室部42とともに、共通液室となるマニホールドM1を構成する。ノズル連通口19は連通基板15をZ軸方向に貫通する貫通孔である。ノズル連通口19は圧力室12とノズル21とを接続する。ノズル連通口19は圧力室12から液体を排出する流路である。連通基板15には、ノズル21の数に対応する数のノズル連通口19が形成されている。
【0029】
図3に示すように、ノズル基板20およびコンプライアンス基板25は、連通基板15の下側に配置される。ノズル基板20およびコンプライアンス基板25は、連通基板15の下側の面に接着剤により固定されている。ノズル基板20は、例えば、シリコン単結晶基板により形成されている。ノズル基板20には複数のノズル21が形成されている。
【0030】
コンプライアンス基板25はノズル基板20の周囲に配置されている。
図5に示すように、コンプライアンス基板25は、連通基板15に設けられた第1共通液室17および第2共通液室18のそれぞれの開口を覆う。コンプライアンス基板25は、可撓性を有する薄膜からなる封止膜26と、金属等の硬質の材料からなる固定基板27と、を備えている。
【0031】
図5に示すように、保護基板30は、振動板130を介して圧力室基板10の上側に配置される。保護基板30は振動板130の上側の面に接着剤により固定されている。圧力室基板10と保護基板30との間に配置されている振動板130については後述する。保護基板30を形成する材料は圧力室基板10と同様である。
【0032】
保護基板30は、圧電素子150を保護するとともに、圧力室基板10および振動板130の強度を補強するために設けられている。保護基板30には、凹部33と、貫通孔39と、が形成されている。凹部33は+Z側に開口している凹部である。凹部33は液体の流路と接続されていない。このため、凹部33には液体が流通しない。貫通孔39は、保護基板30をZ軸方向に貫通する貫通孔である。貫通孔39には配線基板200が挿入される。
【0033】
図3に示すように、ケース部材40は、連通基板15の上側に配置される。ケース部材40は、例えば、樹脂材料によって形成される。
【0034】
図5に示すように、ケース部材40は、液室部42と、接続口43と、2つの液体流通口44とを有する。前述したように、液室部42は、連通基板15に形成された第1共通液室17と第2共通液室18とともに共通液室となるマニホールドM1を構成する。接続口43は、ケース部材40をZ軸方向に貫通する貫通孔である。接続口43には保護基板30が差し込まれる。液体流通口44は、ケース部材40をZ軸方向に貫通する貫通孔である。液体流通口44から液体が液体吐出ヘッド100内部に流入する。
【0035】
振動板130は、積層方向に見たときに、複数の圧力室12と重なる位置において圧力室基板10の上側に積層されている。振動板130は、可撓層131と保護層133とを有する。可撓層131は圧力室基板10上に成膜される。可撓層131は、例えば、二酸化シリコン(SiO2)によって形成される。保護層133は可撓層131上に成膜される。保護層133は、例えば、酸化ジルコニウム(ZrO2)によって形成される絶縁膜である。
【0036】
圧電素子150は、振動板130とともに圧力室基板10の上側に配置される。より具体的には、圧電素子150は、保護基板30に形成された凹部33の内部において振動板130上に配置されている。圧電素子150は振動板130を振動させて圧力室12内の液体に圧力を付与する。圧力室12内の液体に圧力が付与されると、ノズル連通口19を介してノズル21から液体が吐出される。
【0037】
図6は、第1圧力室列L1における圧電素子150の近傍を拡大した断面図である。以下、第1圧力室列L1の圧電素子150を例に説明するが、第2圧力室列L2も同様の構成を備える。圧電素子150は、第1電極151と、第2電極153と、圧電体155とを有する。第1電極151と圧電体155と第2電極153とは積層方向に沿ってこの順で積層されている。
【0038】
第1電極151は、複数の圧力室12に個別に設けられる個別電極である。第1電極151は、金(Au)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、チタン(Ti)、タングステン(W)等の導電材料によって形成される。第1電極151は、積層方向に見たときに、振動板130の上側の面において対応する圧力室12に重なる位置に配置されている。
図4に示すように、圧力室12の短手方向(Y軸方向)の幅より第1電極151の幅が小さい。
【0039】
図6に示すように、第1電極151の+X側の端部151aは圧力室12の+X側の端部12aより外側(+X側)に位置する。第1電極151の-X側の端部151bは圧力室12の-X側の端部12bより外側(-X側)に位置する。すなわち、圧力室12の長手方向(X軸方向)の長さより第1電極151の長さが長い。
【0040】
圧電体155は、圧力室12の配列方向(Y軸方向)に沿って延びて配置される。圧電体155は、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)によって形成されるが、ニオブ酸カリウムナトリウム、チタン酸バリウムなどの他の材料で形成されてもよい。圧電体155は、例えば、1000ナノメートルから4000ナノメートルの範囲の厚さで形成される。
【0041】
図6に示すように、圧電体155の+X側の端部155aは圧力室12の+X側の端部12aより外側(+X側)に位置する。圧電体155の-X側の端部155bは圧力室12の-X側の端部12bより外側(-X側)に位置する。すなわち、圧力室12の長手方向(X軸方向)の長さより圧電体155の長さが長い。このように、圧電体155が長手方向において圧力室12の外側まで延びていることにより、振動板130の強度が向上する。
【0042】
図7は、
図4におけるVI-VI断面図である。隣り合う2つの圧電体155の間には溝部157が形成されている。
図4に示すように、溝部157は積層方向に見たときに矩形形状を有している。
図7に示すように、溝部157は各隔壁11に対応する位置に設けられる。隔壁11は隣接する2つの圧力室12を区画する壁部である。Y軸方向における溝部157の幅は隔壁11の幅以上に設定されている。溝部157は、振動板130および第1電極151の上に圧電体155の層を形成した後、該当する領域において圧電体155を除去することにより形成される。
【0043】
第2電極153は、複数の圧力室12に共通に設けられる共通電極である。
図4に示すように、第2電極153は圧力室12の配列方向(Y軸方向)に沿って延びて配置されている。第2電極153は、第1圧力室列L1、第2圧力室列L2それぞれについて、圧力室列に属する複数の圧力室12すべてと重なる範囲にわたって配置されている。第2電極153は、第1電極151と同様の材料で形成されてもよいし、異なる材料で形成されてもよい。
図7に示すように、第2電極153は、圧電体155の溝部157の側面の上および溝部157の底面である保護層133上にも設けられている。本実施形態においては、第1圧力室列L1、第2圧力室列L2それぞれに第2電極153を設けることにより、第1圧力室列L1または第2圧力室列L2のいずれかだけを駆動させる場合に、不必要な電力を消費することを防止できる。
【0044】
第1電極151および第2電極153は、いずれも配線基板200(
図5を参照)に設けられた駆動回路201と電気的に接続されている。第1電極151には、駆動信号が印加される。駆動信号は液体の吐出量に応じて異なる。本実施形態においては、駆動信号の波形は圧力室12内の液体の温度に応じて異なる。第2電極153には、基準電圧信号が印加される。基準電圧信号は、液体の吐出量に関わらず一定である。液体の吐出量は、圧力室12に必要な容積変化量である。第1電極151と第2電極153との間に電位差が生じると、圧電体155が変形する。圧電体155の変形により、振動板130が振動して圧力室12の容積が変化する。圧力室12の容積が変化することにより、圧力室12に収容されている液体に圧力が付与され、ノズル連通口19を介してノズル21から液体が吐出される。
【0045】
図4および
図6に示すように、個別電極171と後述する共通電極172とは圧電体155を駆動する電圧を圧電体155に印加するための駆動配線として機能する。個別電極171は第1電極151を配線基板200に接続する。配線175は、第1電極151の-X側の端部151bの近傍において、個別電極171と第1電極151とを接続する。よって、個別電極である第1電極151が配線基板200に電気的に接続される。
【0046】
図4に示すように、第1圧力室列L1および第2圧力室列L2それぞれにおいて、共通電極172は、対応する共通電極である第2電極153を配線基板200に接続する。共通電極172は、延長部172a、延長部172b、接続部172c、および、接続部172dを有する。
【0047】
図4および
図6に示すように、延長部172aは、圧力室12の+X側の端部12aに対応する位置において、圧力室12の短手方向(Y軸方向)に沿って延びている。延長部172bは、圧力室12の-X側の端部12bに対応する位置において、圧力室12の短手方向(Y軸方向)に沿って延びている。
【0048】
接続部172cは、延長部172bの-Y側の端部の近傍に配置され、延長部172bから配線基板200に向かって延びている部分である。接続部172cは、X軸に対してあらかじめ定められた傾きを有する方向に沿って延びている。例えば、接続部172cは、X軸をXY平面内で時計回りに20度回転させた場合の軸方向に沿って延びている。接続部172cの端部は配線基板200に接続されている。よって、共通電極である第2電極153の一端が配線基板200に電気的に接続される。
【0049】
接続部172dは、延長部172bの+Y側の端部の近傍に配置され、延長部172bから配線基板200に向かって延びている部分である。接続部172dは、接続部172cと同じ方向に延びている。接続部172dの端部は配線基板200に接続されている。よって、共通電極である第2電極153の他端が配線基板200に電気的に接続される。
【0050】
図5に示すように、個別電極171および共通電極172は、その一部が保護基板30に形成された貫通孔39内に露出するように配置されている。個別電極171および共通電極172は、貫通孔39内において配線基板200に電気的に接続されている。
【0051】
個別電極171および共通電極172は、例えば、金(Au)、銅(Cu)、チタン(Ti)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)等の導電性を有する材料により形成されている。個別電極171と共通電極172とは同じ層で形成される。ただし、個別電極171と共通電極172とは電気的に接続されていない。個別電極171と共通電極172と異なる層で形成する場合にくらべて、製造工程を簡略してコストを低減できる。
【0052】
配線基板200は、例えば、フレキシブル基板(FPC:Flexible Printed Circuit)により構成されている。
【0053】
図5に示すように、配線基板200には駆動回路201と後述する温度検出回路450とが設けられている。駆動回路201は、制御部500のヘッド制御部520から供給される制御信号に基づいて、圧電素子150を駆動するための駆動信号を生成する。
【0054】
図4に示すように、温度検出部410は、第1検出抵抗体411と、第2検出抵抗体412と、第1検出用リード電極413と、第2検出用リード電極414とを含む。抵抗測定部452は、これらの合成抵抗の抵抗値を取得する。
【0055】
図4に示すように、第1検出抵抗体411は、第1部分411aと、第2部分411bと、第3部分411cとを含む。第1部分411aは、第1圧力室列L1の近傍において圧力室12の長手方向(X軸方向)に沿って延びている部分である。第2部分411bは、第1圧力室列L1に対して、第1部分411aが配置されている側とは反対の側であって、第1圧力室列L1の近傍において、圧力室12の長手方向に沿って延びている部分である。第3部分411cは、第1圧力室列L1の近傍において、屈曲することなく、配列方向(Y軸方向)に沿って延びており、第1部分411aと第2部分411bとをつなぐ部分である。よって、第1検出抵抗体411は第1圧力室列L1の周囲を囲むように配置されている。第1圧力室列L1の近傍とは、第1部分411a、第2部分411b、および、第3部分411cそれぞれから第1圧力室列L1までの距離があらかじめ定められた距離以内であって、第1検出抵抗体411の抵抗値が、第1圧力室列L1の圧力室12の内部の液体の温度に応じて変化する位置をいう。このように、第1検出抵抗体411は、第1圧力室列L1の圧力室12の内部の液体の温度に応じて抵抗値が変化するような位置に配置されている。
【0056】
第2検出抵抗体412は、第1検出抵抗体411と同様に、第1部分412aと、第2部分412bと、第3部分412cとを含む。第2検出抵抗体412は、第2圧力室列L2の近傍において、第2圧力室列L2の周囲を囲むように配置されている。第2圧力室列L2の近傍とは、第1部分412a、第2部分412b、および、第3部分412cそれぞれから第3圧力室列L3までの距離があらかじめ定められた距離以内であって、第2検出抵抗体412の抵抗値が、第2圧力室列L2の圧力室12の内部の液体の温度に応じて変化する位置をいう。このように、第2検出抵抗体412は、第2圧力室列L2の圧力室12の内部の液体の温度に応じて抵抗値が変化するような位置に配置されている。
【0057】
第1検出抵抗体411の第2部分411bの-X側の端部と、第2検出抵抗体412の第2部分412bの+X側の端部とは、第1圧力室列L1および第2圧力室列L2の-Y側の端部の近傍において接続されている。よって、第1検出抵抗体411と第2検出抵抗体412とは1本の抵抗配線を構成する。
【0058】
第1検出用リード電極413は、第1圧力室列L1の-Y側の端部の近傍で、第1検出抵抗体411の第1部分411aの端部を配線基板200に接続する。第2検出用リード電極414は、第2圧力室列L2の-Y側の端部の近傍で、第2検出抵抗体412の第1部分412aの端部を配線基板200に接続する。よって、第1検出抵抗体411と第2検出抵抗体412とが構成する1本の抵抗配線の一端と他端とが配線基板200に電気的に接続される。
【0059】
第1検出用リード電極413および第2検出用リード電極414は、積層方向において個別電極171および共通電極172と同じ層に配置される。第1検出用リード電極413および第2検出用リード電極414は、個別電極171および共通電極172と同じ材料で形成される。第1検出用リード電極413および第2検出用リード電極414は、個別電極171と共通電極172を形成する工程で個別電極171と共通電極172とともに形成される。ただし、第1検出用リード電極413および第2検出用リード電極414は、個別電極171および共通電極172に電気的に接続されていない。第1検出用リード電極413および第2検出用リード電極414を個別電極171および共通電極172と異なる層で形成する場合にくらべて、製造工程を簡略してコストを低減できる。
【0060】
図6に示すように、第1検出抵抗体411は振動板130の-Z側の面に設けられている。具体的には、第1検出抵抗体411は、積層方向(Z軸方向)において振動板130と圧電体155との間に配置され、圧電体155に覆われている。第2検出抵抗体412も同様である。
【0061】
第1検出抵抗体411および第2検出抵抗体412は、積層方向において第1電極151と同じ層に配置される。第1検出抵抗体411および第2検出抵抗体412は、第1電極151と同じ材料で形成される。第1検出抵抗体411および第2検出抵抗体412は、第1電極151と同様に、例えば、金(Au)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、チタン(Ti)、タングステン(W)等により形成される。これらの材料は、導電性を有するとともに、電気抵抗値が温度依存性を有する材料である。
【0062】
第1検出抵抗体411および第2検出抵抗体412は、第1電極151を形成する工程で第1電極151とともに形成される。ただし、第1検出抵抗体411および第2検出抵抗体412は、第1電極151と電気的に接続されていない。第1検出抵抗体411および第2検出抵抗体412を第1電極151と異なる層で形成する場合にくらべて、製造工程を簡略してコストを低減できる。
【0063】
続いて、本実施形態において特徴的な構成を説明する。以下、第1検出抵抗体411を例に説明するが、第2検出抵抗体412も同様の構成を備える。
【0064】
第1検出抵抗体411の一部の領域は、共通電極である第2電極153と重なる。また、第1検出抵抗体411の他の一部の領域は、第2電極153と重ならない。
図6に示す例では、第2電極153と重なる領域を第1領域R1として、第2電極153と重ならない領域を第2領域R2として図示している。第1領域R1を「重複領域」ともよぶ。第2領域R2を「非重複領域」ともよぶ。
図4に示すように、第1検出抵抗体411が配列方向(Y軸方向)に沿って配置されている範囲において、第1検出抵抗体411の一部の領域は第2電極153と重なり、第1検出抵抗体411の他の一部の領域は第2電極153と重なっていない。また、第1検出抵抗体411が圧力室12の長手方向(X軸方向)に沿って配置されている範囲において、第1検出抵抗体411は第2電極153と重ならないように配置されている。
【0065】
このように第1検出抵抗体411を配置することにより、水分の吸着を抑制しつつ、第1検出抵抗体411へのノイズの影響を低減させることができる。よって、温度検出の精度を向上させることができる。
【0066】
図6に示すように、圧力室12の長手方向(X軸方向)において、第1領域R1の長さは第2領域R2の長さより短いので、長手方向において第1領域R1の長さが第2領域R2の長さより長い態様にくらべて、第1検出抵抗体411へのノイズの影響を低減できる。
【0067】
また、圧力室12の長手方向(X軸方向)において、第2領域R2は第1領域R1より圧力室12に遠い位置にある。圧力室12から離れた位置においては、圧電体155の上部に第2電極153が配置されていなくても、圧電体155への水分の吸着の影響は少ないためである。
【0068】
また、
図4、6に示すように、Y軸方向に沿って延びている範囲において、第1検出抵抗体411のX軸方向における幅を広くしているので、第1検出抵抗体411の断面積を広くできる。第2検出抵抗体412も同様である。よって、第1検出抵抗体411および第2検出抵抗体412の抵抗値を低くできる。
【0069】
さらに、第1検出抵抗体411を屈曲させずに配置しているので、第1検出抵抗体411を屈曲させる態様にくらべて、第1検出抵抗体411の配線長が短くなる。第2検出抵抗体412も同様である。よって、第1検出抵抗体411を屈曲させる態様にくらべて、第1検出抵抗体411および第2検出抵抗体412の抵抗が低くなる。第1検出抵抗体411および第2検出抵抗体412の抵抗が低くなることにより、第1検出抵抗体411および第2検出抵抗体412を流れる電流値が大きくなる。従来のように、第1検出抵抗体411および第2検出抵抗体412の全範囲において第2電極153が重なっている場合、圧電素子150の駆動電流が第1検出抵抗体411および第2検出抵抗体412を流れる電流に対するノイズとなるだけではなく、第1検出抵抗体411および第2検出抵抗体412を流れる電流が圧電素子150の駆動電流に対するノイズとなってしまう。
【0070】
しかしながら、実施形態においては、第1検出抵抗体411は、一部の領域が共通電極である第2電極153と重なり、他の一部の領域が第2電極153と重ならないように配置される。第2検出抵抗体412も同様である。このように第1検出抵抗体411および第2検出抵抗体412を配置することにより、第1検出抵抗体411および第2検出抵抗体412が共通電極である第2電極153と重ならない範囲を含んでいない態様にくらべて、圧電素子150の駆動電流による第1検出抵抗体411および第2検出抵抗体412へのノイズの影響を低減させることができる。
【0071】
B.他の実施形態:
B1.他の実施形態1:
図8は、他の実施形態1にかかる第1圧力室列L1における圧電素子150の近傍を拡大した断面図である。以下、実施形態と異なる構成を中心に説明する。実施形態と同様の構成については説明を省略する。他の実施形態1においては、圧力室12の長手方向(X軸方向)において、第1領域R1の長さは第2領域R2の長さより長く設定される。長手方向において、第1領域R1の長さが第2領域R2の長さより短い態様にくらべて、第2電極153が圧電体155を覆う範囲が広くなるので、水分の吸着をより抑制できる。
【0072】
また、実施形態と同様に、第1検出抵抗体411が第2電極153と重ならない範囲を含んでいない態様にくらべて、第1検出抵抗体411へのノイズの影響を低減させることができる。
【0073】
B2.他の実施形態2:
図9は、他の実施形態2において、第1圧力室列L1における圧電素子150の近傍を拡大した断面図である。以下、実施形態と異なる構成を中心に説明する。実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0074】
他の実施形態2においては、非重複領域である第2領域R2と重なる範囲において、圧電体155の上側(-Z側)に第1非電極層163が設けられている。さらに、第1非電極層163の上側には、第2非電極層165が設けられている。第1非電極層163および第2非電極層165を「非電極層」ともよぶ。
【0075】
第1非電極層163は第2電極153と同じ層で形成される。ただし、第1非電極層163は、第2電極153と電気的に接続されていない。第1非電極層163を形成する材料は第2電極153と同じである。第1非電極層163は、第2電極153を形成する工程で第2電極153とともに形成される。第1非電極層163を第2電極153と異なる層で形成する場合にくらべて、製造工程を簡略してコストを低減できる。
【0076】
第2非電極層165は個別電極171および共通電極172と同じ層で形成される。ただし、第2非電極層165は、個別電極171および共通電極172と電気的に接続されていない。第2非電極層165を形成する材料は個別電極171および共通電極172と同じである。第2非電極層165は、共通電極172を形成する工程で共通電極172とともに形成される。第2非電極層165を共通電極172で形成する場合にくらべて、製造工程を簡略してコストを低減できる。
【0077】
第1非電極層163および第2非電極層165を設けることにより、第2電極153および共通電極172が積層された範囲の層の厚みと、非重複領域である第2領域R2の範囲の層の厚みとが合わせられる。第2電極153および共通電極172が積層された範囲の層の厚みと、非重複領域である第2領域R2の範囲の層の厚みとを同じとすることが好ましい。例えば、共通電極172の上に板状の封止部材を配置することがあるが、第1非電極層163および第2非電極層165を設けることにより、封止部材の配置が容易である。
【0078】
B3.他の実施形態3:
実施形態においては、
図6に示すように、第1領域R1および第2領域R2の圧力室12の長手方向における長さがそれぞれ一定である例を説明した。
【0079】
図10は、他の実施形態3にかかる第2電極153の配置についての説明図である。
図10に示す例では、実施形態において第1領域R1として設定されていた範囲を範囲Rb1として、第2領域R2として設定されていた範囲を範囲Rb2として表す。他の実施形態3においては、範囲Rb1において、第1検出抵抗体411と第2電極153とが重なっている。すなわち、範囲Rb1は第1領域R1として設定されている。範囲Rb2では、第2電極153に圧力室12の短手方向(Y軸方向)に沿って矩形形状の切り欠きが設けられている。この結果、圧力室12の短手方向(Y軸方向)に沿って、第1検出抵抗体411と第2電極153とが重なる領域と、第1検出抵抗体411と第2電極153とが重なる領域と、が交互に配置される。すなわち、範囲Rb2においては、圧力室12の短手方向に沿って、第1領域R1と第2領域R2とが交互に設定されている。
【0080】
範囲Rb2において、第2領域R2が設定されているY軸上の位置は、圧力室12のY軸上の位置に対応する。複数の圧力室12は一定間隔を空けてY軸方向に配列されているため、範囲Rb2に、第2領域R2と第1領域R1とが交互に配置されることになる。このため、断面線S1で示した位置で、圧力室12の長手方向と積層方向とに平行な平面で圧力室12が存在しない位置で圧力室基板10を切断した断面において、第1検出抵抗体411は第2領域R2を含まない。また、断面線S2で示した位置で、圧力室12の長手方向と積層方向とに平行な平面で圧力室12が存在しない位置で圧力室基板10を切断した断面において、第1検出抵抗体411は第2領域R2を含む。
【0081】
個別電極である第1電極151と第1検出抵抗体411とが重ならない範囲においては、第1検出抵抗体411が共通電極である第2電極153と重なっていたとしても、第1検出抵抗体411はノイズの影響を受けない。このため、ノイズの影響がない範囲においては、圧電体155の上に第2電極153を配置することで、水分の吸着を効率的に抑制できる。
【0082】
B4.他の実施形態4:
また、第1圧力室列L1と第2圧力室列L2とに第2電極153を個別に設けるのではなく、第1圧力室列L1と第2圧力室列L2の両方に対応する1つの共通の電極を設けてもよい。つまり、
図4における2つの第2電極153が繋がっているような形態であってもよい。
【0083】
B5.他の実施形態5:
実施形態においては、個別電極171、接続部172c、および、接続部172dが同じ方向に沿って延びている例を説明した(
図4を参照)。あるいは、個別電極171、接続部172c、および、接続部172dの配置は、
図4とは異なっていてもよい。
【0084】
図11は、液体吐出ヘッド100の他の構成を平面視で表す説明図である。
図11に示す例では、圧力室基板10の+Y側の端部および-Y側の端部においては、個別電極171、接続部172c、および、接続部172dは、X軸に対してあらかじめ定められた傾きを有する方向に沿って延びている。より具体的には、圧力室基板10の+Y側の端部においては、個別電極171、および、接続部172dは、X軸をXY平面内で時計回りに20度回転させた場合の軸方向に沿って延びている。圧力室基板10の-Y側の端部においては、個別電極171、および、接続部172cは、X軸をXY平面内で反時計回りに20度回転させた場合の軸方向に沿って延びている。圧力室基板10のY軸方向における中央部においては、個別電極171は、X軸方向に沿って延びている。
【0085】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替え、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0086】
C.他の形態:
(1)本開示の一形態によれば、液体吐出ヘッドが提供される。この液体吐出ヘッドは、第1方向に配列された複数の圧力室を含む圧力室列が設けられた圧力室基板と、前記複数の圧力室に個別に設けられる複数の個別電極と、前記複数の個別電極にそれぞれ積層され、前記複数の圧力室の内部の液体に圧力を付与するために駆動される圧電体と、前記複数の圧力室に共通に設けられ、前記圧電体に積層される少なくとも1つの電極を含む共通電極と、前記複数の個別電極と前記圧電体と前記共通電極とが積層される積層方向における前記圧電体の下側において、前記複数の個別電極と重ならない位置に配置され、前記複数の個別電極と前記共通電極との少なくともいずれかと同じ材料で形成され、前記複数の圧力室の内部の液体の温度に応じて抵抗値が変化する検出抵抗体と、を備え、前記複数の圧力室の長手方向と前記積層方向とに平行な平面で圧力室が存在する位置で前記圧力室基板を切断した断面において、前記検出抵抗体は、前記共通電極と重なる重複領域と、前記共通電極と重ならない非重複領域とを含む。
この形態によれば、検出抵抗体が共通電極と重ならない範囲を含んでいない態様にくらべて検出抵抗体へのノイズの影響を低減させることができる。
【0087】
(2)上記形態の液体吐出ヘッドにおいて、前記重複領域は、前記長手方向において前記非重複領域より前記圧力室に近い位置にあってもよい。
圧力室から離れた位置においては、非重複領域を圧力室から遠い位置に配置し、圧電体の上部に共通電極が配置されていなくても圧電体への水分の吸着の影響を少なくする。
【0088】
(3)上記形態の液体吐出ヘッドにおいて、前記重複領域の前記長手方向における長さが、前記非重複領域の前記長手方向における長さより長くてもよい。
この形態によれば、長手方向において重複領域が非重複領域より長いので、長手方向において重複領域が非重複領域より短い態様にくらべて、水分の吸着を抑制できる。
【0089】
(4)上記形態の液体吐出ヘッドにおいて、前記重複領域の前記長手方向における長さが、前記非重複領域の前記長手方向における長さより短くてもよい。
この形態によれば、長手方向において重複領域が非重複領域より短いので、長手方向において重複領域が非重複領域より長い態様にくらべて、抵抗体へのノイズの影響を低減できる。
【0090】
(5)上記形態の液体吐出ヘッドにおいて、前記非重複領域と重なる領域において、前記圧電体の前記積層方向の上側には、前記共通電極と同じ材料で形成されており、前記共通電極と電気的に接続されていない非電極層が設けられていてもよい。
この形態によれば、非電極層を設けることにより、検出抵抗体が配置された範囲において層の厚みを、共通電極が積層された範囲の層の厚みに合わせることができる。
【0091】
(6)上記形態の液体吐出ヘッドにおいて、前記非電極層が設けられた範囲の層の厚みは、前記共通電極が設けられた範囲の層の厚みと同じであってもよい。
この形態によれば、非電極層を設けることにより、非重複領域の範囲における層の厚みを共通電極が設けられた範囲の層の厚みと合わせることができる。
【0092】
(7)上記形態の液体吐出ヘッドにおいて、前記圧力室の前記長手方向と前記積層方向とに平行な平面で前記圧力室が存在しない位置で前記圧力室基板を切断した断面において、前記検出抵抗体は前記非重複領域を含まなくてもよい。
この形態によれば、個別電極が検出抵抗体と重ならないため、検出抵抗体が共通電極と重なる領域があったとしても、検出抵抗体はノイズの影響を受けない。このため、ノイズの影響がない範囲においては、水分の吸着を抑制するため圧電体に共通電極を配置できる。
【0093】
(8)上記形態の液体吐出ヘッドにおいて、配線基板をさらに有し、前記検出抵抗体は、前記圧力室列の近傍において前記長手方向に沿って延びており、一端が前記配線基板に接続する第1部分と、前記圧力室列に対して前記第1部分が配置されている側とは反対の側であって、前記圧力室の近傍において前記長手方向に沿って延びており、一端が前記配線基板に接続する第2部分と、前記圧力室の近傍において、屈曲することなく前記第1方向に沿って延びており、前記第1部分の他端と前記第2部分の他端とをつなぐ第3部分と、を含んでいてもよい。
【0094】
(9)本開示の他の形態によれば、液体吐出装置が提供される。この液体吐出装置は、上記形態の液体吐出ヘッドと、前記検出抵抗体の抵抗値を取得する抵抗値取得部と、前記抵抗値取得部が取得した抵抗値に基づいて前記圧力室の近傍の温度を取得する温度取得部と、を備える。
この形態によれば、ノイズの影響を低減させ、温度検出の精度を向上させることができる。
【0095】
(10)上記形態の液体吐出装置において、前記温度取得部が取得した温度に基づいて、前記複数の個別電極に印加する駆動波形を決定する駆動波形決定部、をさらに備えてもよい。
この形態によれば、温度に応じて圧電素子を駆動させることができる。
【0096】
本開示は、上述した液体吐出装置としての形態に限らず、液体吐出システム、液体吐出装置を備える複合機等の種々の態様で実現可能である。
【符号の説明】
【0097】
1…液体吐出装置、10…圧力室基板、11…隔壁、12…圧力室、12a,12b…端部、15…連通基板、16…インク供給路、17…第1共通液室、18…第2共通液室、19…ノズル連通口、20…ノズル基板、21…ノズル、25…コンプライアンス基板、26…封止膜、27…固定基板、30…保護基板、33…凹部、39…貫通孔、40…ケース部材、42…液室部、43…接続口、44…液体流通口、100…液体吐出ヘッド、130…振動板、131…可撓層、133…保護層、150…圧電素子、151…第1電極、151a,151b…端部、153…第2電極、155…圧電体、157…溝部、163…第1非電極層、165…第2非電極層、170…配線部、171…個別電極、172…共通電極、172a,172b…延長部、172c,172d…接続部、175…配線、200…配線基板、201…駆動回路、310…液体容器、312…チューブ、320…ヘッド移動機構、322…キャリッジ、324…駆動ベルト、326…移動用モーター、327…プーリー、330…搬送機構、332…搬送ローラー、334…搬送ロッド、336…搬送用モーター、410…温度検出部、411…第1検出抵抗体、411a…第1部分、411b…第2部分、411c…第3部分、412…第2検出抵抗体、412a…第1部分、412b…第2部分、412c…第3部分、413…第1検出用リード電極、414…第2検出用リード電極、450…温度検出回路、451…電源部、452…抵抗測定部、500…制御部、501…CPU、502…メモリー、520…ヘッド制御部、550…温度管理部、584…記憶部、L1…第1圧力室列、L2…第2圧力室列、M1…マニホールド、P…印刷用紙、R1…第1領域、R2…第2領域、S1,S2…断面線、TB…変換テーブル