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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025019513
(43)【公開日】2025-02-07
(54)【発明の名称】ドア開閉アシスト装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 15/75 20150101AFI20250131BHJP
   E05F 15/63 20150101ALI20250131BHJP
   B60J 5/10 20060101ALI20250131BHJP
【FI】
E05F15/75
E05F15/63
B60J5/10 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023123156
(22)【出願日】2023-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000148896
【氏名又は名称】三井金属アクト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】川野辺 修
【テーマコード(参考)】
2E052
【Fターム(参考)】
2E052AA09
2E052DA01
2E052DA02
2E052DB01
2E052DB02
2E052EA03
2E052EB01
2E052EC01
2E052GB15
2E052GD07
(57)【要約】
【課題】コストを低減しつつ、ドアの開閉操作を容易に行うことが可能な状態でドアを所望の位置の近傍に保持することができるドア開閉アシスト装置を提供する。
【解決手段】ドア開閉アシスト装置100の制御装置30は、バックドア2の自重の開閉方向の成分と釣り合うように三相直流モータ7の出力を制御してバックドア2を静止させるドア平衡制御と、三相直流モータ7の出力を制御してバックドア2の開閉方向にアシスト力を発生させるパワーアシスト制御と、を設定及び解除可能である。ドア平衡制御が設定されている状態で、バックドア2の開閉加速度aが第3閾値a3以上である状態が第1所定時間t1以上継続すると、ドア平衡制御からパワーアシスト制御に切り替わる。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に開閉可能に支持されたドアの操作力をアシストする動力を発生する三相直流モータと、
前記三相直流モータを制御する制御装置と、
を備える、ドア開閉アシスト装置であって、
前記制御装置は、
前記ドアの開閉方向において、前記ドアの自重の前記開閉方向の成分と釣り合うように前記三相直流モータの出力を制御して前記ドアを静止させるドア平衡制御と、
前記三相直流モータの出力を制御して前記ドアの前記開閉方向にアシスト力を発生させるパワーアシスト制御と、
を設定及び解除可能であり、
前記ドア平衡制御が設定されている状態で、前記ドアの開閉加速度が第3閾値以上である状態が所定時間以上継続すると、前記ドア平衡制御から前記パワーアシスト制御に切り替わる、
ドア開閉アシスト装置。
【請求項2】
車体に開閉可能に支持されたドアの操作力をアシストする三相直流モータと、
前記三相直流モータを制御する制御装置と、
を備える、ドア開閉アシスト装置であって、
前記制御装置は、
前記ドアの開閉方向において、前記ドアの重力加速度の開閉方向成分との合力が、前記重力加速度の前記開閉方向成分と反対方向に所定の大きさとなるように前記三相直流モータの出力を制御して前記ドアを動作させるプリパワーアシスト制御と、
前記三相直流モータの出力を制御して前記ドアの前記開閉方向にアシスト力を発生させるパワーアシスト制御と、
を設定及び解除可能であり、
前記プリパワーアシスト制御が設定されている状態で、前記ドアの開閉加速度が第3閾値以上である状態が所定時間以上継続すると、前記プリパワーアシスト制御から前記パワーアシスト制御に切り替わる、
ドア開閉アシスト装置。
【請求項3】
請求項1に記載のドア開閉アシスト装置であって、
前記制御装置は、
前記三相直流モータの少なくとも2相以上に通電する前記ドアの位置を保持するドア保持制御を設定及び解除可能であり、前記三相直流モータのステータに対するロータの周方向位置に応じて、通電する相を設定し、
前記ドアの開閉速度が第1閾値以下の場合、前記ドア保持制御が設定され、
前記ドア保持制御が設定されている状態で、前記ドアの開閉加速度、開閉速度、及び、移動距離の少なくとも1つが、第2閾値以上になると、前記ドア保持制御から前記ドア平衡制御に切り替わる、
ドア開閉アシスト装置。
【請求項4】
請求項2に記載のドア開閉アシスト装置であって、
前記制御装置は、
前記三相直流モータの少なくとも2相以上に通電する前記ドアの位置を保持するドア保持制御を設定及び解除可能であり、前記三相直流モータのステータに対するロータの周方向位置に応じて、通電する相を設定し、
前記ドアの開閉速度が第1閾値以下になると、前記ドア保持制御を開始し、
前記ドア保持制御が設定されている状態で、前記ドアの開閉加速度、開閉速度、及び、移動距離の少なくとも1つが、第2閾値以上になると、前記ドア保持制御から前記プリパワーアシスト制御に切り替わる、
ドア開閉アシスト装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のドア開閉アシスト装置であって、
前記ドア開閉アシスト装置は、前記ドアに取り付けられたセンサをさらに備え、
前記制御装置は、前記センサの検出値に基づいて、前記ドアの開閉加速度、開閉速度、及び、移動距離の少なくとも1つを取得する、
ドア開閉アシスト装置。
【請求項6】
請求項5に記載のドア開閉アシスト装置であって、
前記ドア開閉アシスト装置は、一端部に設けられたドアヒンジを介して前記車体に連結し、且つ、前記ドアヒンジの回動軸を中心として回動可能なヒンジドアの開閉操作をアシストするものであり、
前記センサは、前記ヒンジドアの前記一端部と反対側の他端部に取り付けられている、
ドア開閉アシスト装置。
【請求項7】
請求項6に記載のドア開閉アシスト装置であって、
前記センサは、前記ヒンジドアのドアラッチ装置に内蔵されている、
ドア開閉アシスト装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のドアを開閉する際の操作力をアシストするドア開閉アシスト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両のドアを開閉する際の操作力をアシストするドア開閉アシスト装置が知られている。特許文献1には、開閉アシストの利便性の向上を目的に、ドアに設けた角速度センサと駆動部に設けたセンサとで手動操作を検知して操作方向にアシスト力を発生させるドア開閉アシスト装置が記載されている。また、特許文献2には、車両の傾きに応じて適切なアシスト力を発生させることを目的に、ハンドルスイッチを起点にアシスト制御を開始し、記憶した開度に応じて、傾斜を補正しつつアシスト制御を行うドア開閉アシスト装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6409212号公報
【特許文献2】特開2022-190503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたドア開閉アシスト装置は、角速度センサを用いてドアの手動操作を検知しているが、角速度センサは傾斜の検出が難しいため、車両の傾きに応じて適切なアシスト力を発生させるのが難しいという課題があった。一方、特許文献2に記載されたドア開閉アシスト装置は、車両の傾きに応じて適切なアシスト力を発生させることができるが、アシストを開始するにあたりハンドルスイッチが必要となるため、コスト面では課題があった。
【0005】
本発明は、コストを低減しつつ、ドアの開閉操作を容易に行うことが可能な状態でドアを所望の位置の近傍に保持することができるドア開閉アシスト装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様は、
車体に開閉可能に支持されたドアの操作力をアシストする動力を発生する三相直流モータと、
前記三相直流モータを制御する制御装置と、
を備える、ドア開閉アシスト装置であって、
前記制御装置は、
前記ドアの開閉方向において、前記ドアの自重の前記開閉方向の成分と釣り合うように前記三相直流モータの出力を制御して前記ドアを静止させるドア平衡制御と、
前記三相直流モータの出力を制御して前記ドアの前記開閉方向にアシスト力を発生させるパワーアシスト制御と、
を設定及び解除可能であり、
前記ドア平衡制御が設定されている状態で、前記ドアの開閉加速度が第3閾値以上である状態が所定時間以上継続すると、前記ドア平衡制御から前記パワーアシスト制御に切り替わる、
ドア開閉アシスト装置である。
【0007】
本発明の第2態様は、
車体に開閉可能に支持されたドアの操作力をアシストする三相直流モータと、
前記三相直流モータを制御する制御装置と、
を備える、ドア開閉アシスト装置であって、
前記制御装置は、
前記ドアの開閉方向において、前記ドアの重力加速度の開閉方向成分との合力が、前記重力加速度の前記開閉方向成分と反対方向に所定の大きさとなるように前記三相直流モータの出力を制御して前記ドアを動作させるプリパワーアシスト制御と、
前記三相直流モータの出力を制御して前記ドアの前記開閉方向にアシスト力を発生させるパワーアシスト制御と、
を設定及び解除可能であり、
前記プリパワーアシスト制御が設定されている状態で、前記ドアの開閉加速度が第3閾値以上である状態が所定時間以上継続すると、前記プリパワーアシスト制御から前記パワーアシスト制御に切り替わる、
ドア開閉アシスト装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ドアの開閉操作を容易に行うことが可能な状態でドアを所望の位置の近傍に保持することができるので、コストを低減しつつ、ドアの開閉操作を容易に行うことが可能な状態でドアを所望の位置の近傍に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態のドア開閉アシスト装置が搭載された車両の後部斜視図である。
図2図1の車両の後部の左側面図である。
図3】本発明の第1実施形態のドア開閉アシスト装置におけるアクチュエータの要部断面図である。
図4】本発明の第1実施形態のドア開閉アシスト装置における制御装置のブロック図である。
図5】本発明の第1実施形態のドア開閉アシスト装置において、三相直流モータの二相通電状態の一例を示す図である。
図6】本発明の第1実施形態のドア開閉アシスト装置において、ドア保持制御により通電される相とロータRTの回転位置との関係の一例を示す図である。
図7】本発明の第1実施形態のドア開閉アシスト装置の制御装置が実行するアシスト制御における処理を説明するためのフローチャートである。
図8】本発明の第2実施形態のドア開閉アシスト装置が搭載された車両のサイドドアを示す左側面図である。
図9】本発明の第2実施形態のドア開閉アシスト装置の制御装置が実行するアシスト制御における処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のドア開閉アシスト装置の各実施形態について、添付図面に基づいて説明する。なお、図面は、符号の向きに見るものとする。また、本明細書等では説明を簡単且つ明確にするために、前後、左右、上下の各方向は、ドア開閉アシスト装置が搭載される車両の運転者から見た方向に従って記載し、図面には、車両の前方をFr、後方をRr、左方をL、右方をR、上方をU、下方をD、として示す。
【0011】
[第1実施形態]
まず、本発明のドア開閉アシスト装置の第1実施形態として、車両Vのバックドアを開閉操作する際の操作力をアシストするドア開閉アシスト装置100について、図1から図5を参照して説明する。
【0012】
図1及び図2に示すように、車両Vの車体1の後部には、跳ね上げ式のヒンジドアであるバックドア2が上下方向に開閉可能に支持されている。バックドア2の上端部には、左右一対のドアヒンジ3が設けられている。バックドア2は、ドアヒンジ3を介して車体1の後上部に連結し、且つ、ドアヒンジ3の左右方向を向く回動軸4を中心として上下方向へ回動可能となっている。バックドア2は、図2において実線で示される全閉位置から、図2において2点鎖線で示される中間位置を経て、同じく2点鎖線で示す全開位置まで開方向に回動可能であり、また、その逆方向の閉方向にも回動可能になっている。
【0013】
バックドア2の上端部と反対側の先端部2aには、車体側のストライカ(図示略)に噛合することでバックドア2を全閉位置に保持するためのドアラッチ装置DLが設けられている。また、バックドア2の後面には、ドアラッチ装置DLとストライカとの噛合を解除してバックドア2を手動で開操作する際に操作されるリリーススイッチ21が設けられている。
【0014】
車体1の後端両側部には、バックドア2の開方向に付勢するガススプリング22が設けられている。ガススプリング22、又は、ガススプリング22の近傍には、ガススプリング22の環境温度を検出する温度センサ19が設けられている。
【0015】
なお、図2に示すように、バックドア2に作用するガススプリング22の付勢力は、バックドア2が全開位置を含む開方向エリアR1内にある場合には、バックドア2を全開位置まで持ち上げ可能な力であり、バックドア2が全閉位置を含む閉方向エリアR2内にある場合には、バックドア2が自重により閉方向に移動可能な力であり、開方向エリアR1と閉方向エリアR2との間の中間エリアR3内にある場合には、バックドア2が自重により閉方向に移動する力と平衡する力になるように設定される。これにより、バックドア2を手動で開閉操作する際の操作力が軽減される。
【0016】
車体1の後部には、ドア開閉アシスト装置100が取り付けられている。
【0017】
ドア開閉アシスト装置100は、車体1の後上部に設けられたアクチュエータ5と、車両Vの任意の位置に搭載可能な制御装置30(図4参照)と、バックドア2に取り付けられたドア先端センサ20と、を備える。
【0018】
ドア先端センサ20は、バックドア2の上端部と反対側の先端部2aに取り付けられている。ドア先端センサ20は、バックドア2の開閉移動の加速度(開閉加速度)、速度(開閉速度)、及び、移動距離の少なくとも1つを算出するための検出値を取得するセンサである。ドア先端センサ20は、例えば、1軸アナログジャイロの角速度センサとすることができるが、バックドア2の先端部2aのバックドア2の開閉移動の加速度(開閉加速度)、速度(開閉速度)、及び、移動距離の少なくとも1つを正確に算出するための検出値を取得できるものであれば任意の構成のものであってよい。
【0019】
このように、バックドア2の上端部と反対側の先端部2aにドア先端センサ20が取り付けられていることによって、バックドア2の開閉時にドア先端センサ20の移動量が大きくなる。これにより、ドア先端センサ20において、バックドア2の開閉移動の加速度(開閉加速度)、速度(開閉速度)、及び、移動距離の少なくとも1つを算出するための検出値をより精度よく取得することができる。
【0020】
アクチュエータ5は、車体1のルーフ1a内に配設されている。アクチュエータ5の構造は、本発明には直接関係しないので、本発明に関係する部分と大まかな全体構成のみについて説明し、それ以外の詳細な説明は省略する。
【0021】
図3に示すように、アクチュエータ5は、左右方向を向く筒状のケース6を備える。
【0022】
アクチュエータ5のケース6内には、バックドア2の操作力をアシストする動力を発生する三相直流モータ7と、第1遊星歯車機構8、第2遊星歯車機構9、及び、第3遊星歯車機構10とが順次配設されている。そして、三相直流モータ7の回転軸11の回転力が、第1遊星歯車機構8、第2遊星歯車機構9、及び、第3遊星歯車機構10で順次減速されて、回転軸11と同一軸線上に配設した中間軸12及び出力軸13に順次伝達される。出力軸13の先端部には、アーム14が固着されている。アーム14の先端部には、リンク15が連結している。そして、アクチュエータ5の出力軸13は、アーム14及びリンク15を介して左方のドアヒンジ3の中間部に連結している。
【0023】
アクチュエータ5は、三相直流モータ7を駆動して回転軸11を予め定めた方向に回転させることによって、バックドア2を全開位置に向かって開操作する操作力をアシストし、回転軸11を逆方向に回転させることによって、バックドア2を全閉位置に向かって閉操作する操作力をアシストすることができるようになっている。
【0024】
アクチュエータ5の中間軸12には、1個又は複数個の永久磁石(図示略)を円周方向に適宜の間隔(複数の場合)をもって設けた磁気リング16が、他のギヤとともに、中間軸12と一体となって回転するように外嵌されている。
【0025】
ケース6内には、ホール素子等のセンサ部(図示略)を設けたセンサ基板17が、磁気リング16と対向し、且つ、ケース6と一体となるように回り止めして設けられ、このセンサ基板17と磁気リング16とにより、バックドア2の開閉移動に応じたパルスを発生するユニット内センサ18が構成される。なお、ユニット内センサ18は、ロータリエンコーダとしても良い。
【0026】
次に、図4を参照して、制御装置30の構成について説明する。
【0027】
制御装置30は、内部メモリに記憶された制御プログラムの指示に従って一連の制御処理を実行するマイクロプロセッサにより構成される主制御部31と、主制御部31が指示するPWM(Pulse Width Modulation)制御に基づいて、三相直流モータ7に印加する電圧を制御するPWM制御部32と、主制御部31からの指示に基づいて、三相直流モータ7を正転及び逆転方向へ駆動しうるように切り替え可能なリレー出力部33と、を備える。
【0028】
制御装置30の主制御部31には、ユニット内センサ18、温度センサ19、ドア先端センサ20、及び、操作者により操作されたことを検出するリリーススイッチ21が、それぞれ電気的に接続される。そして、ユニット内センサ18、温度センサ19、ドア先端センサ20、及び、リリーススイッチ21が発生する各信号は、制御装置30の主制御部31に入力される。また、制御装置30のPWM制御部32及びリレー出力部33には、三相直流モータ7が電気的に接続される。
【0029】
主制御部31は、バックドア2の状態を取得する状態取得部311と、バックドア2の制御モードを設定する制御モード設定部312と、PWM制御のデューティ比を決定する駆動力演算部313と、リレー出力部33をオン、オフ制御するモータ回路切替部314と、を有する。
【0030】
状態取得部311は、ユニット内センサ18、温度センサ19、ドア先端センサ20、及び、リリーススイッチ21から受信した検出信号に基づいて、バックドア2の状態に関する情報を取得する。状態取得部311は、ユニット内センサ18、温度センサ19、ドア先端センサ20、及び、リリーススイッチ21から受信した検出信号に基づいて、バックドア2の開閉移動の加速度(開閉加速度)、速度(開閉速度)、及び、移動距離の少なくとも1つを取得する。ユニット内センサ18から出力されるパルス信号の数、幅、間隔等に基づいて演算し、ドア先端センサ20からの検出信号を演算することで、バックドア2の位置、角度、開閉移動の移動方向、加速度、速度、移動距離、を検出する。また、例えば、三相直流モータ7が停止していることを前提として、ユニット内センサ18から規定より短い幅のパルスが規定回数以上(例えば、4個以上)のパルス信号が連続して発生したとき、又は、ドア先端センサ20が角度変化の信号を発生したとき、バックドア2が手動操作されたと判定する。
【0031】
このように、状態取得部311において、ユニット内センサ18、温度センサ19、ドア先端センサ20、及び、リリーススイッチ21から受信した検出信号に基づいて、バックドア2の状態に関する情報を取得することによって、簡素な構成でバックドア2の状態に関する情報を取得することができる。
【0032】
制御モード設定部312は、状態取得部311で取得したバックドア2の状態に関する情報に基づいて、バックドア2の制御モードを設定する。本実施形態では、制御モード設定部312で設定される制御モードとして、ドア保持制御モードと、ドア平衡制御モードと、パワーアシスト制御モードと、を有する。制御装置30は、制御モード設定部312で設定された制御モードに基づいて、ドア保持制御と、ドア平衡制御と、パワーアシスト制御と、を設定及び解除可能となっている。ドア保持制御、ドア平衡制御、及び、パワーアシスト制御の詳細については、後述する。
【0033】
駆動力演算部313は、状態取得部311で取得したバックドア2の状態に関する情報と、制御モード設定部312で設定された制御モードと、に基づいて、三相直流モータ7をPWM制御するデューティ比を決定し、決定したデューティ比に基づく制御信号をPWM制御部32に出力する。
【0034】
モータ回路切替部314は、状態取得部311で取得したバックドア2の状態に関する情報と、制御モード設定部312で設定された制御モードと、に基づいて、リレー出力部33をオン、オフ制御するための制御信号をリレー出力部33に出力する。
【0035】
次に、ドア保持制御と、ドア平衡制御と、パワーアシスト制御の各制御の詳細について、説明する。
【0036】
まず、ドア保持制御について、図5及び図6を参照して説明する。
【0037】
ドア保持制御は、三相直流モータ7を二相通電状態に制御することによって、バックドア2の開閉位置を保持する保持力を三相直流モータ7の駆動力として発生させる制御である。
【0038】
図5は、二相通電状態の一例を示す図である。図5に示すように、三相直流モータ7は、3相2極3スロットのブラシレスモータとなっており、互いに独立した3つのコイルL1、L2、L3(すなわち3相のコイル)を有するステータSTと、ステータSTに対して回転可能に設けられた2極のロータRTとを備える。
【0039】
二相通電状態は、ステータSTに対するロータRTの回転を制動する状態であり、例えば、回転磁界が発生しないように、ステータSTの3つのコイルのうちの2つ(すなわち2相)に、互いに大きさが等しく且つ反対方向の電流を流した状態である。図5には、コイルL1及びコイルL3に、互いに大きさが等しく且つ反対方向の電流を流した場合の二相通電状態を図示した。三相直流モータ7がこのような二相通電状態とされることで、磁力によってロータRTはステータSTに対して所定の回転位置で停止した状態を維持しようとし、これによって上記の保持力が発生する。
【0040】
ただし、三相直流モータ7が二相通電状態とされていても、バックドア2を操作するユーザ(以下、単に「ユーザ」ともいう)がバックドア2に対して保持力を上回る操作力を入力すると、この操作力によってバックドア2は開閉移動し、これに伴ってロータRTがステータSTに対して回転し得る。
【0041】
仮に、ドア保持制御の際(すなわち三相直流モータ7が二相通電状態とされる際)に通電される相を一定とすると、保持力を上回る操作力が入力されることによってロータRTが回転した場合に、保持力が次に最大値をとるのが、ロータRTが電気角で360°回転した後になる。したがって、ドア保持制御の際に通電される相を一定とすると、ドア保持制御中にユーザが一定の操作力でバックドア2を操作したとしてもバックドア2の動きが断続的なものとなり、ドア保持制御中のバックドア2の操作性が低下するおそれがある。
【0042】
そこで、制御装置30は、ドア保持制御において、三相直流モータ7を二相通電状態とする場合に、ステータSTに対するロータRTの周方向位置に応じて、通電する2つの相を設定する。
【0043】
図6は、ドア保持制御により通電される相とロータRTの周方向位置との関係の一例を示す図である。図6に示すように、ドア保持制御中、制御装置30は、ステータSTに対するロータRTの周方向位置に応じて、通電する2相を設定して三相直流モータ7を二相通電状態とする。このようにすることで、ロータRTが電気角で120°回転するごとに保持力が最大値をとるようにすることが可能となる。これにより、ドア保持制御中のバックドア2の動きの断続感を低減し、ドア保持制御中のバックドア2の操作性の向上を図ることができる。
【0044】
制御装置30は、ユニット内センサ18からの検出信号に基づいてロータRTの回転位置を取得可能に構成される。そして、PWM制御部32は、ドア保持制御によって三相直流モータ7を二相通電状態とする場合、この情報を参照して、ロータRTの回転位置に応じた二相に通電させる。例えば、制御装置30には、ロータRTの回転位置に応じてどの相に通電させるかを示す情報が予め記憶されていてもよい。
【0045】
次に、ドア平衡制御について、図2を参照して説明する。
【0046】
ドア平衡制御は、バックドア2の自重の開閉方向の成分と釣り合うように三相直流モータ7の出力をPWM制御により制御して、バックドア2を静止させる制御である。
【0047】
図2に示すように、左右方向から見て、ドアヒンジ3のヒンジ軸を中心とするバックドア2の鉛直方向に対する角度が角度θ、バックドア2の質量が質量m[kg]、重力加速度をg[m/s^2]とすると、バックドア2には、自重により鉛直下方にm・g[N]の力が作用する。このとき、バックドア2の自重の開閉方向の成分は、m・g・sinθ[N]となっている。
【0048】
ドア平衡制御においては、このとき、三相直流モータ7がバックドア2の自重の開閉方向の成分と反対方向にm・g・sinθ[N]の出力を発生するようにPWM制御により制御する。これにより、バックドア2の自重の開閉方向の成分と三相直流モータ7から出力された駆動力とが釣り合い、バックドア2が静止した状態となる。
【0049】
次に、パワーアシスト制御について、説明する。
【0050】
パワーアシスト制御は、バックドア2がユーザにより手動で開閉操作された際に、バックドア2の操作方向に所定のアシスト力が付与されるように、三相直流モータ7から駆動力を出力する制御である。
【0051】
パワーアシスト制御は、状態取得部311で取得したバックドア2の開度位置に基づいて、バックドア2の操作方向に所定のアシスト力が付与されるように、三相直流モータ7をPWM制御により制御してもよい。例えば、バックドア2が、中間エリアR3を移動する際には、アシスト力を漸次弱めるようにデューティ比を減少させるようにPWM制御を行ってもよい。
【0052】
また、パワーアシスト制御は、バックドア2の開閉操作速度に基づいて、バックドア2の操作方向に所定のアシスト力が付与されるように、三相直流モータ7をPWM制御により制御してもよい。例えば、バックドア2の手動開閉速度が速いほどデューティ比を大きくし、遅いほどデューティ比を小さくするようにPWM制御を行ってもよい。これにより、バックドア2の手動開閉速度に応じたアシスト力を付与することができるため、追従性の高いアシスト制御を行うことができ、バックドア2を自然な操作で手動操作できる。
【0053】
また、パワーアシスト制御は、車両Vの駐停車時における車両姿勢、すなわち全閉位置にあるときのバックドア2の角度に応じてデューティ比を決定し、当該デューティ比に基づいて、バックドア2を全閉位置から開方向への初期アシスト制御を行ってもよい。なお、全閉位置にあるときのバックドア2の角度は、例えば、ドア先端センサ20により検出される。例えば、車両Vの駐停車姿勢が後下がりである場合には、バックドア2を閉鎖位置から開方向へ移動させるときの初期の操作力が、駐停車姿勢が水平にあるときよりも大きくなるため、デューティ比を規定値よりも高くするようにPWM制御を行ってもよい。
【0054】
また、パワーアシスト制御に切り替わった直後、及び、パワーアシスト制御が解除された直後は、手動開閉操作における違和感を解消するために、デューティ比を徐々に増加、減少させるようにPWM制御を行ってもよい。
【0055】
続いて、図7を参照して、バックドア2の開閉時におけるアシスト制御について説明する。
【0056】
アシスト制御では、まず、ステップS101へと進み、制御装置30は、状態取得部311において、ドア先端センサ20からの信号に基づいて、バックドア2が全閉位置と全開位置との間の中間位置にあるか否かを判定する。バックドア2が全閉位置と全開位置との間の中間位置にない場合(ステップS101:NO)、すなわち、バックドア2が全閉位置又は全開位置にある場合は、一連の制御を終了して、スタートに戻る。バックドア2が全閉位置と全開位置との間の中間位置にある場合(ステップS101:YES)は、ステップS102へと進む。
【0057】
ステップS102では、制御装置30は、状態取得部311において、ドア先端センサ20からの信号に基づいて、バックドア2の開閉速度vが第1閾値v1以下であるか否かを判定する。
【0058】
ステップS102において、バックドア2の開閉速度vが第1閾値v1以下でないと判定された場合(ステップS102:NO)、すなわち、バックドア2の開閉速度vが第1閾値v1超であると判定された場合は、後述するステップS301へと進む。ステップS102において、バックドア2の開閉速度vが第1閾値v1以下であると判定された場合(ステップS102:YES)は、ステップS201へと進む。なおステップS102において、バックドア2の開閉速度vが第1閾値v1以上であると判定された場合(ステップS102:YES)に、開閉加速度が第3閾値を以上の場合にはS302へと進み、開閉加速度が第3閾値未満の場合にはステップS203へと進むようにしてもよい。
【0059】
ステップS201では、制御装置30は、制御モード設定部312において、制御モードをドア保持制御に設定する。そして、制御装置30は、ドア保持制御を開始し、ステップS202へと進む。
【0060】
ステップS202では、制御装置30は、状態取得部311において、ドア先端センサ20からの信号に基づいて、ドア保持制御によるバックドア2の保持力を上回る操作力がバックドア2に入力され、バックドア2の開閉加速度aが、第2閾値a2以上になったか否かを判定する。
【0061】
ステップS202において、バックドア2の開閉加速度aが、第2閾値a2以上になっていない場合は、バックドア2の開閉加速度aが、第2閾値a2以上になるまで、ステップS202で待機状態となる(ステップS202:NOのループ)。
【0062】
そして、ステップS202において、バックドア2の開閉加速度aが、第2閾値a2以上になると(ステップS202:YES)、ステップS203へと進み、制御装置30は、制御モード設定部312において、制御モードをドア保持制御からドア平衡制御に切り替える。そして、制御装置30は、ドア平衡制御を開始し、ステップS301へと進む。
【0063】
ステップS301では、制御装置30は、状態取得部311において、ドア先端センサ20からの信号に基づいて、バックドア2が手動で操作されてバックドア2に操作力が入力され、バックドア2の開閉加速度aが、第3閾値a3以上である状態が第1所定時間t1以上継続したか否かを判定する。
【0064】
ステップS301において、バックドア2の開閉加速度aが、第3閾値a3以上である状態が第1所定時間t1以上継続していない場合は、バックドア2の開閉加速度aが、第3閾値a3以上である状態が第1所定時間t1以上継続するまで、ステップS301で待機状態となる(ステップS301:NOのループ)。
【0065】
そして、ステップS301において、バックドア2の開閉加速度aが、第3閾値a3以上である状態が第1所定時間t1以上継続すると(ステップS301:YES)、ステップS302へと進み、制御装置30は、制御モード設定部312において、制御モードをパワーアシスト制御に設定する。そして、制御装置30は、パワーアシスト制御を開始し、ステップS101へと戻る。
【0066】
したがって、制御モード設定部312において、ドア平衡制御が設定されている状態で、バックドア2の開閉加速度aが、第3閾値a3以上である状態が第1所定時間t1以上継続すると、ドア平衡制御からパワーアシスト制御に切り替わる。
【0067】
このようにバックドア2の制御を行うことで、バックドア2が中間位置で停止している状態のときに手動で操作された場合に、バックドア2が手動で操作されたことを速やかに検出して二相通電によるドア保持制御を解除しつつ、バックドア2が自重で開閉しないようにドア平衡制御を行うので、コストを低減しつつ、バックドア2の開閉操作を容易に行うことが可能な状態でバックドア2を所望の位置で保持することができる。
【0068】
また、車両Vが傾斜面に停車しているときにバックドア2の開閉操作が行われた場合でも、操作を検出するスイッチが不要で傾斜に対応することができるので、バックドア2を操作する者の意思に応じて動作する使い勝手のよいアシスト制御が可能となる。
【0069】
[第2実施形態]
次に、本発明のドア開閉アシスト装置の第2実施形態として、車両のサイドドアを開閉操作する際の操作力をアシストするドア開閉アシスト装置について、図8及び図9を参照して説明する。なお、図8は、後述するプリパワーアシスト制御を説明するために、車両Vが下り傾斜面に位置している場合の状態を示している。
【0070】
本実施形態のドア開閉アシスト装置100は、車両Vの車体1の左側部に支持されているサイドドアDを開閉操作する際の操作力をアシストする。
【0071】
図8に示すように、サイドドアDは、車両Vの車体1の左側部に支持されたヒンジドアである。サイドドアDは、左右方向に開閉可能に車両Vの車体1の左側部に支持されている。サイドドアDの前端部には、上下一対のドアヒンジDHが設けられている。サイドドアDは、ドアヒンジDHを介して車体1の左側部に連結し、且つ、サイドドアDの前端部に設けられたドアヒンジDHの上下方向を向く回動軸を中心として左右方向へ回動可能となっている。
【0072】
サイドドアDの前端部と反対側の先端部D1には、車体側のストライカ(図示略)に噛合することでサイドドアDを全閉位置に保持するためのドアラッチ装置DLが設けられている。
【0073】
サイドドアDの先端部D1には、第1実施形態と同様のドア先端センサ20が設けられている。ドア先端センサ20は、サイドドアDの開閉移動の加速度(開閉加速度)、速度(開閉速度)、及び、移動距離の少なくとも1つを算出するための検出値を取得する。
【0074】
このように、サイドドアDの前端部と反対側の先端部D1にドア先端センサ20が取り付けられていることによって、サイドドアDの開閉時にドア先端センサ20の移動量が大きくなる。これにより、ドア先端センサ20において、サイドドアDの開閉移動の加速度(開閉加速度)、速度(開閉速度)、及び、移動距離の少なくとも1つを算出するための検出値をより精度よく取得することができる。
【0075】
サイドドアDの前部には、第1実施形態と同様のアクチュエータ5が設けられている。本実施形態のドア開閉アシスト装置100は、サイドドアDの開閉操作に対して、アクチュエータ5を起動させてアシスト力を付与する。
【0076】
なお、サイドドアDにおいては、ガススプリング22は省略されるのが好ましい。
【0077】
サイドドアDの左側面には、ドアラッチ装置DLとストライカとの噛合を解除してサイドドアDを手動で開操作する際に操作されるアウトサイドハンドルOHが設けられている。
【0078】
本実施形態では、制御装置30の主制御部31において、状態取得部311は、サイドドアDの状態を取得し、制御モード設定部312は、状態取得部311で取得したサイドドアDの状態に関する情報に基づいて、サイドドアDの制御モードを設定する。本実施形態では、制御モード設定部312で設定される制御モードとして、ドア保持制御モードと、プリパワーアシスト制御モードと、パワーアシスト制御モードと、を有する。制御装置30は、制御モード設定部312で設定された制御モードに基づいて、ドア保持制御と、プリパワーアシスト制御と、パワーアシスト制御と、を設定及び解除可能となっている。
【0079】
本実施形態において、ドア保持制御は、三相直流モータ7を二相通電状態に制御することによって、サイドドアDの開閉位置を保持する保持力を三相直流モータ7の駆動力として発生させる制御である。
【0080】
プリパワーアシスト制御は、サイドドアDの自重の開閉方向の成分と釣り合う力に所定の力を追加した駆動力がサイドドアDの自重の開閉方向と反対方向に発生するように三相直流モータ7の出力をPWM制御により制御して、サイドドアDの自重の開閉方向と反対方向に微速でサイドドアDを動作させる制御である。
【0081】
図8に示すように、左右方向から見て、ドアヒンジDHのヒンジ軸の鉛直方向に対する角度を角度φ、サイドドアDの質量を質量m[kg]、重力加速度をg[m/s^2]とすると、サイドドアDには、自重により鉛直下方にm・g[N]の力が作用する。このとき、サイドドアDの自重の開閉方向の成分は、m・g・sinφ[N]となっている。
【0082】
プリパワーアシスト制御においては、このとき、三相直流モータ7がサイドドアDの自重の開閉方向の成分と反対方向にm・g・sinφ+α[N]の出力を発生するようにPWM制御により制御する。これにより、サイドドアDの自重の開閉方向の成分と三相直流モータ7から出力された駆動力との合力により、サイドドアDの自重の開閉方向と反対方向にサイドドアDがαの駆動力で動作する状態となる。
【0083】
プリパワーアシスト制御において、サイドドアDの自重の開閉方向と反対方向にサイドドアDに付与される駆動力αは、パワーアシスト制御時にサイドドアDに付与される駆動力よりも小さくなっている。
【0084】
パワーアシスト制御は、サイドドアDがユーザにより手動で開閉操作された際に、サイドドアDの操作方向に所定のアシスト力が付与されるように、三相直流モータ7から駆動力を出力する制御である。
【0085】
続いて、図9を参照して、サイドドアDの開閉時におけるアシスト制御について説明する。
【0086】
アシスト制御では、まず、ステップS501へと進み、制御装置30は、状態取得部311において、ドア先端センサ20からの信号に基づいて、サイドドアDが全閉位置と全開位置との間の中間位置にあるか否かを判定する。サイドドアDが全閉位置と全開位置との間の中間位置にない場合(ステップS501:NO)、すなわち、サイドドアDが全閉位置又は全開位置にある場合は、一連の制御を終了して、スタートに戻る。サイドドアDが全閉位置と全開位置との間の中間位置にある場合(ステップS501:YES)は、ステップS502へと進む。
【0087】
ステップS502では、制御装置30は、状態取得部311において、ドア先端センサ20からの信号に基づいて、サイドドアDの開閉速度vが第1閾値v1以下であるか否かを判定する。
【0088】
ステップS502において、サイドドアDの開閉速度vが第1閾値v1以下でないと判定された場合(ステップS502:NO)、すなわち、サイドドアDの開閉速度vが第1閾値v1超であると判定された場合は、後述するステップS701へと進む。ステップS502において、サイドドアDの開閉速度vが第1閾値v1以下であると判定された場合(ステップS502:YES)は、ステップS601へと進む。なおステップS502において、サイドドア2の開閉速度vが第1閾値v1以上であると判定された場合(ステップS502:YES)に、開閉加速度が第3閾値を以上の場合には702へと進み、開閉加速度が第3閾値未満の場合にはステップS203へと進むようにしてもよい。
【0089】
ステップS601では、制御装置30は、制御モード設定部312において、制御モードをドア保持制御に設定する。そして、制御装置30は、ドア保持制御を開始し、ステップS602へと進む。
【0090】
ステップS602では、制御装置30は、状態取得部311において、ドア先端センサ20からの信号に基づいて、ドア保持制御によるサイドドアDの保持力を上回る操作力がサイドドアDに入力され、サイドドアDの開閉加速度aが、第2閾値a2以上になったか否かを判定する。
【0091】
ステップS602において、サイドドアDの開閉加速度aが、第2閾値a2以上になっていない場合は、サイドドアDの開閉加速度aが、第2閾値a2以上になるまで、ステップS602で待機状態となる(ステップS602:NOのループ)。
【0092】
そして、ステップS602において、サイドドアDの開閉加速度aが、第2閾値a2以上になると(ステップS602:YES)、ステップS603へと進み、制御装置30は、制御モード設定部312において、制御モードをドア保持制御からプリパワーアシスト制御に切り替える。そして、制御装置30は、プリパワーアシスト制御を開始し、ステップS701へと進む。
【0093】
ステップS701では、制御装置30は、状態取得部311において、ドア先端センサ20からの信号に基づいて、サイドドアDが手動で操作されてサイドドアDに操作力が入力され、サイドドアDの開閉加速度aが、第3閾値a3以上である状態が第1所定時間t1以上継続したか否かを判定する。
【0094】
ステップS701において、サイドドアDの開閉加速度aが、第3閾値a3以上である状態が第1所定時間t1以上継続していない場合は、サイドドアDの開閉加速度aが、第3閾値a3以上である状態が第1所定時間t1以上継続するまで、ステップS701で待機状態となる(ステップS701:NOのループ)。
【0095】
そして、ステップS701において、サイドドアDの開閉加速度aが、第3閾値a3以上である状態が第1所定時間t1以上継続すると(ステップS701:YES)、ステップS702へと進み、制御装置30は、制御モード設定部312において、制御モードをパワーアシスト制御に設定する。そして、制御装置30は、パワーアシスト制御を開始し、ステップS301へと戻る。
【0096】
したがって、制御モード設定部312において、プリパワーアシスト制御が設定されている状態で、サイドドアDの開閉加速度aが、第3閾値a3以上である状態が第1所定時間t1以上継続すると、プリパワーアシスト制御からパワーアシスト制御に切り替わる。
【0097】
このようにサイドドアDの制御を行うことで、サイドドアDが中間位置で停止している状態のときに手動で操作された場合に、サイドドアDが手動で操作されたことを速やかに検出して二相通電によるドア保持制御を解除しつつ、サイドドアDが自重で開閉しないようにプリパワーアシスト制御を行うので、コストを低減しつつ、サイドドアDの開閉操作を容易に行うことが可能な状態でサイドドアDを所望の位置の近傍に保持することができる。さらに、プリパワーアシスト制御では、サイドドアDの自重の開閉方向と反対方向に微速でサイドドアDを動作させることができるので、プリパワーアシスト制御が行われていることをユーザが認識しやすく、操作性に優れる。
【0098】
また、車両Vが傾斜面に停車しているときにサイドドアDの開閉操作が行われた場合でも、操作を検出するスイッチが不要で傾斜に対応することができるので、サイドドアDを操作する者の意思に応じて動作する使い勝手のよいアシスト制御が可能となる。
【0099】
以上、本発明の各実施形態について、添付図面を参照しながら説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0100】
例えば、ドア先端センサ20は、ドアラッチ装置DLに内蔵されていてもよい。これにより、ドア先端センサ20の取付場所を別途確保する必要がなく、バックドア2の先端部2a又はサイドドアDの先端部D1にドア先端センサ20を取り付けることができる。
【0101】
また、例えば、ドア保持制御は、三相直流モータを二相通電状態に制御することとしたが、三相に通電する事でドアを保持してもよい。
【0102】
また、例えば、第1実施形態では、バックドア2の開閉加速度aが第2閾値a2以上になるとドア保持制御からドア平衡制御に切り替わるものとしたが、バックドア2の開閉加速度、開閉速度、及び、移動距離の少なくとも1つが、第2閾値以上になると、ドア保持制御からドア平衡制御に切り替わるものであってもよい。
【0103】
同様に、第2実施形態では、サイドドアDの開閉加速度aが第2閾値a2以上になるとドア保持制御からプリパワーアシスト制御に切り替わるものとしたが、サイドドアDの開閉加速度、開閉速度、及び、移動距離の少なくとも1つが、第2閾値以上になると、ドア保持制御からプリパワーアシスト制御に切り替わるものであってもよい。
【0104】
また、例えば、第1実施形態のドア開閉アシスト装置100は、バックドア2を開閉操作する際の操作力をアシストするものとしたが、サイドドアDを開閉操作する際の操作力をアシストするものであってもよい。すなわち、サイドドアDを開閉操作する際の操作力をアシストするドア開閉アシスト装置100の制御装置30が、ドア平衡制御を設定及び解除可能であってもよい。
【0105】
同様に、第2実施形態のドア開閉アシスト装置100は、サイドドアDを開閉操作する際の操作力をアシストするものとしたが、バックドア2を開閉操作する際の操作力をアシストするものであってもよい。すなわち、バックドア2を開閉操作する際の操作力をアシストするドア開閉アシスト装置100の制御装置30が、プリパワーアシスト制御を設定及び解除可能であってもよい。
【0106】
また、例えば、第1実施形態のドア開閉アシスト装置100は、バックドア2を開閉操作する際の操作力をアシストするものとしたが、車両上下方向の鉛直方向に対する角度が角度ψ、スライドドアの質量が質量m[kg]、重力加速度をg[m/s^2]とすると、スライドドアには、自重により鉛直下方にm・g[N]の力が作用する。このとき、スライドドアの自重の開閉方向の成分は、m・g・sinψ[N]となっていると考える事で、スライドドアを開閉操作する際の操作力をアシストするものであってもよい。すなわち、スライドドアを開閉操作する際の操作力をアシストするドア開閉アシスト装置100の制御装置30が、ドア平衡制御を設定及び解除可能であってもよい。
【0107】
同様に、第2実施形態のドア開閉アシスト装置100は、サイドドアDを開閉操作する際の操作力をアシストするものとしたが、車両上下方向の鉛直方向に対する角度が角度ψ、スライドドアの質量が質量m[kg]、重力加速度をg[m/s^2]とすると、スライドドアには、自重により鉛直下方にm・g[N]の力が作用する。このとき、スライドドアの自重の開閉方向の成分は、m・g・sinψ[N]となっていると考える事で、スライドドアを開閉操作する際の操作力をアシストするものであってもよい。すなわち、スライドドアを開閉操作する際の操作力をアシストするドア開閉アシスト装置100の制御装置30が、プリパワーアシスト制御を設定及び解除可能であってもよい。
【0108】
本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。括弧内には、上記した実施形態において対応する構成要素等を一例として示しているが、これに限定されるものではない。
【0109】
(1) 車体(車体1)に開閉可能に支持されたドア(バックドア2)の操作力をアシストする動力を発生する三相直流モータ(三相直流モータ7)と、
前記三相直流モータを制御する制御装置(制御装置30)と、
を備える、ドア開閉アシスト装置(ドア開閉アシスト装置100)であって、
前記制御装置は、
前記ドアの開閉方向において、前記ドアの自重の前記開閉方向の成分と釣り合うように前記三相直流モータの出力を制御して前記ドアを静止させるドア平衡制御と、
前記三相直流モータの出力を制御して前記ドアの前記開閉方向にアシスト力を発生させるパワーアシスト制御と、
を設定及び解除可能であり、
前記ドア平衡制御が設定されている状態で、前記ドアの開閉加速度(開閉加速度a)が第3閾値(第3閾値a3)以上である状態が所定時間(第1所定時間t1)以上継続すると、前記ドア平衡制御から前記パワーアシスト制御に切り替わる、
ドア開閉アシスト装置。
【0110】
(1)によれば、ドアの開閉操作を容易に行うことが可能な状態でドアを所望の位置の近傍に保持することができるので、コストを低減しつつ、ドアの開閉操作を容易に行うことが可能な状態でドアを所望の位置の近傍に保持することができる。
【0111】
(2) 車体(車体1)に開閉可能に支持されたドア(サイドドアD)の操作力をアシストする動力を発生する三相直流モータ(三相直流モータ7)と、
前記三相直流モータを制御する制御装置(制御装置30)と、
を備える、ドア開閉アシスト装置(ドア開閉アシスト装置100)であって、
前記制御装置は、
前記ドアの開閉方向において、前記ドアの重力加速度の開閉方向成分との合力が、前記重力加速度の前記開閉方向成分と反対方向に所定の大きさとなるように前記三相直流モータの出力を制御して前記ドアを動作させるプリパワーアシスト制御と、
前記三相直流モータの出力を制御して前記ドアの前記開閉方向にアシスト力を発生させるパワーアシスト制御と、
を設定及び解除可能であり、
前記プリパワーアシスト制御が設定されている状態で、前記ドアの開閉加速度(開閉加速度a)が第3閾値(第3閾値a3)以上である状態が所定時間(第1所定時間t1)以上継続すると、前記プリパワーアシスト制御から前記パワーアシスト制御に切り替わる、
ドア開閉アシスト装置。
【0112】
(2)によれば、ドアの開閉操作を容易に行うことが可能な状態でドアを所望の位置の近傍に保持することができるので、コストを低減しつつ、ドアの開閉操作を容易に行うことが可能な状態でドアを所望の位置の近傍に保持することができる。
【0113】
(3) (1)に記載のドア開閉アシスト装置であって、
前記制御装置は、
前記三相直流モータの少なくとも2相以上に通電する前記ドアの位置を保持するドア保持制御を設定及び解除可能であり、前記三相直流モータのステータ(ステータST)に対するロータ(ロータRT)の周方向位置に応じて、通電する相を設定し、
前記ドアの開閉速度(開閉速度v)が第1閾値(第1閾値v1)以下の場合、前記ドア保持制御が設定され、
前記ドア保持制御が設定されている状態で、前記ドアの開閉加速度、開閉速度、及び、移動距離の少なくとも1つが、第2閾値(第2閾値a2)以上になると、前記ドア保持制御から前記ドア平衡制御に切り替わる、
ドア開閉アシスト装置。
【0114】
(3)によれば、ロータRTが電気角で120°回転するごとに保持力が最大値をとるようにすることが可能となる。これにより、ドア保持制御中のドアの動きの断続感を低減し、ドア保持制御中のドアの操作性の向上を図ることができる。
【0115】
(4) (2)に記載のドア開閉アシスト装置であって、
前記制御装置は、
前記三相直流モータの少なくとも2相以上に通電する前記ドアの位置を保持するドア保持制御を設定及び解除可能であり、前記三相直流モータのステータ(ステータST)に対するロータ(ロータRT)の周方向位置に応じて、通電する相を設定し、
前記ドアの開閉速度(開閉速度v)が第1閾値(第1閾値v1)以下の場合、前記ドア保持制御が設定され、
前記ドア保持制御が設定されている状態で、前記ドアの開閉加速度、開閉速度、及び、移動距離の少なくとも1つが、第2閾値(第2閾値a2)以上になると、前記ドア保持制御から前記プリパワーアシスト制御に切り替わり、
ドア開閉アシスト装置。
【0116】
(4)によれば、ロータRTが電気角で120°回転するごとに保持力が最大値をとるようにすることが可能となる。これにより、ドア保持制御中のドアの動きの断続感を低減し、ドア保持制御中のドアの操作性の向上を図ることができる。
【0117】
(5) (1)から(4)のいずれかに記載のドア開閉アシスト装置であって、
前記ドア開閉アシスト装置は、前記ドアに取り付けられたセンサ(ドア先端センサ20)をさらに備え、
前記制御装置は、前記センサの検出値に基づいて、前記ドアの開閉加速度、開閉速度、及び、移動距離の少なくとも1つを取得する、
ドア開閉アシスト装置。
【0118】
(5)によれば、ドアに取り付けられたセンサの検出値に基づいて、ドアの開閉加速度、開閉速度、及び、移動距離の少なくとも1つを取得するので、簡素な構成でドアの開閉加速度、開閉速度、及び、移動距離の少なくとも1つを取得することができる。
【0119】
(6) (5)に記載のドア開閉アシスト装置であって、
前記ドア開閉アシスト装置は、一端部に設けられたドアヒンジ(ドアヒンジ3、ドアヒンジDH)を介して前記車体に連結し、且つ、前記ドアヒンジの回動軸を中心として回動可能なヒンジドア(バックドア2、サイドドアD)の開閉操作をアシストするものであり、
前記センサは、前記ヒンジドアの前記一端部と反対側の他端部(先端部2a、先端部D1)に取り付けられている、
ドア開閉アシスト装置。
【0120】
(6)によれば、ドアのドアヒンジが設けられている側と反対側の他端部にセンサが取り付けられているので、ドアの開閉時にセンサの移動量が大きくなる。これにより、センサにおいて、ドアの開閉加速度、開閉速度、及び、移動距離の少なくとも1つを算出するための検出値をより精度よく取得することができる。
【0121】
(7) (6)に記載のドア開閉アシスト装置であって、
前記センサは、前記ヒンジドアのドアラッチ装置(ドアラッチ装置DL)に内蔵されている、
ドア開閉アシスト装置。
【0122】
(7)によれば、センサの取付場所を別途確保する必要がなく、ドアのドアヒンジが設けられている側と反対側の他端部にセンサを取り付けることができる。
【符号の説明】
【0123】
1 車体
2 バックドア(ドア、ヒンジドア)
2a 先端部(他端部)
3 ドアヒンジ
7 三相直流モータ
20 ドア先端センサ(センサ)
30 制御装置
100 ドア開閉アシスト装置
D サイドドア(ドア、ヒンジドア)
D1 先端部(他端部)
DH ドアヒンジ
DL ドアラッチ装置
RT ロータ
ST ステータ
a 開閉加速度
a2 第2閾値
a3 第3閾値
t1 第1所定時間(所定時間)
v 開閉速度
v1 第1閾値


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9