(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025019515
(43)【公開日】2025-02-07
(54)【発明の名称】ドア開閉装置
(51)【国際特許分類】
E05F 15/63 20150101AFI20250131BHJP
B60J 5/04 20060101ALI20250131BHJP
【FI】
E05F15/63
B60J5/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023123158
(22)【出願日】2023-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000148896
【氏名又は名称】三井金属アクト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】川野辺 修
【テーマコード(参考)】
2E052
【Fターム(参考)】
2E052AA09
2E052DA06
2E052DB06
2E052EA03
2E052EB01
2E052EC01
2E052GA08
2E052GB12
2E052GD02
(57)【要約】
【課題】ドアに対して当該ドアの開閉方向に駆動力を発生させるモータを活用してドアを所定の開閉位置で保持させることを可能にするドア開閉装置を提供する。
【解決手段】ドア開閉装置100の制御装置120は、サイドドアDの開閉位置が所定範囲内になった場合に、開閉位置を保持する保持力を駆動力として電動モータ11から発生させるドア保持制御を行い、当該ドア保持制御では、電動モータ11の少なくとも2相以上に通電し、当該電動モータ11のロータRTの回転を制動することで保持力を発生させる。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアに対して当該ドアの開閉方向に駆動力を発生させるモータと、
前記ドアの開閉位置を検出するドア位置センサと、
前記ドア位置センサによって検出された開閉位置に基づいて、前記モータを制御する制御装置と、
を備えるドア開閉装置であって、
前記モータは、
少なくとも3相のコイルを有するステータと、当該ステータに対して回転可能に設けられたロータと、を備え、前記ロータが前記ステータに対して回転することで前記駆動力を発生させ、
前記制御装置は、
前記開閉位置が所定範囲内になった場合に、前記開閉位置を保持する保持力を前記駆動力として発生させるドア保持制御を行い、
前記ドア保持制御では、前記モータの少なくとも2相以上に通電し、前記ロータの回転を制動することで前記保持力を発生させる、
ドア開閉装置。
【請求項2】
請求項1に記載のドア開閉装置であって、
前記制御装置は、
前記ドア保持制御中に前記開閉位置が前記所定範囲外になった場合に、前記ドア保持制御を終了する、
ドア開閉装置。
【請求項3】
請求項1に記載のドア開閉装置であって、
前記制御装置は、
前記ドアの開閉方向の加速度が所定値未満であり、且つ前記開閉位置が前記所定範囲内になった場合に、前記ドア保持制御を行い、
前記加速度が前記所定値以上である場合に、前記開閉位置にかかわらず前記ドア保持制御を行わない、
ドア開閉装置。
【請求項4】
請求項1に記載のドア開閉装置であって、
前記制御装置は、
前記ドア保持制御によって2相通電状態とする場合に、前記ステータに対する前記ロータの回転位置に応じた2相に通電させる、
ドア開閉装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のドア開閉装置であって、
前記制御装置は、
前記ドア保持制御では、前記開閉位置に応じて前記保持力の大きさを変化させる、
ドア開閉装置。
【請求項6】
請求項5に記載のドア開閉装置であって、
前記所定範囲は、
第1位置から第2位置までの範囲であるとともに、前記第1位置と前記第2位置との間の所定位置を含み、
前記制御装置は、
前記開閉位置が前記所定位置に近づくにつれて前記保持力を大きくし、前記開閉位置が前記所定位置から遠ざかるにつれて前記保持力を小さくする、
ドア開閉装置。
【請求項7】
請求項5に記載のドア開閉装置であって、
前記所定範囲は、
第1位置から第2位置までの範囲であるとともに、前記第1位置と前記第2位置との間の所定位置を含み、
前記制御装置は、
前記開閉位置が前記所定位置である場合の前記保持力を、前記開閉位置が前記第1位置から前記所定位置までの範囲に含まれる場合の前記保持力の最大値、及び前記開閉位置が前記所定位置から前記第2位置までの範囲に含まれる場合の前記保持力の最大値よりも小さくする、
ドア開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドア開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、一方の端部側がボデー側に回転可能に取り付けられ且つその回転中心軸方向における厚みを長手方向にわたって変化させることにより係止用凹部が形成されたアームと、ドア側に設けられ且つアームの係止用凹部に係脱可能なチェック機構と、を有するドアチェック装置があった(例えば下記特許文献1を参照)。
【0003】
また、従来、車両本体の側面にヒンジを介して支持させたサイドドアを開閉するためのドア開閉装置であって、サイドドアの内部空間に配設した駆動ユニットと、当該駆動ユニットの出力軸から車両本体までの間を連結するリンク機構とを備え、当該リンク機構は、駆動ユニットの出力軸から径方向に延在する駆動アームと、車両本体に回転可能に連結した従動アームとを備え、駆動ユニットが駆動した場合に駆動アーム及び従動アームを介してサイドドアを車両本体に対して開閉するようにした技術があった(例えば下記特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許6681202号公報
【特許文献2】特許6583685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術では、ドアに対して当該ドアの開閉方向に駆動力を発生させるモータを活用してドアを所定の開閉位置で保持させることについては十分に検討されておらず、この点に改善の余地があった。
【0006】
本発明は、ドアに対して当該ドアの開閉方向に駆動力を発生させるモータを活用してドアを所定の開閉位置で保持させることを可能にするドア開閉装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、
ドアに対して当該ドアの開閉方向に駆動力を発生させるモータと、
前記ドアの開閉位置を検出するドア位置センサと、
前記ドア位置センサによって検出された開閉位置に基づいて、前記モータを制御する制御装置と、
を備えるドア開閉装置であって、
前記モータは、
少なくとも3相のコイルを有するステータと、当該ステータに対して回転可能に設けられたロータと、を備え、前記ロータが前記ステータに対して回転することで前記駆動力を発生させ、
前記制御装置は、
前記開閉位置が所定範囲内になった場合に、前記開閉位置を保持する保持力を前記駆動力として発生させるドア保持制御を行い、
前記ドア保持制御では、前記モータの少なくとも2相以上に通電し、前記ロータの回転を制動することで前記保持力を発生させる、
ドア開閉装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ドアに対して当該ドアの開閉方向に駆動力を発生させるモータを活用してドアを所定の開閉位置で保持させることを可能にするドア開閉装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本実施形態のドア開閉装置を適用した車両の要部を概念的に示す図である。
【
図2】
図2は、
図1に示した車両のサイドドアと車両本体との接続部分を概念的に示す拡大平面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示した車両に適用するドア開閉装置を車両外側の斜め下方から見た外観斜視図である。
【
図4】
図4は、
図1に示した車両に適用するドア開閉装置を車両内側の斜め下方から見た外観斜視図である。
【
図5】
図5は、
図1に示した車両に適用するドア開閉装置を斜め上方から見た外観斜視図である。
【
図6】
図6は、
図1に示した車両に適用するドア開閉装置の出力軸及びリンク機構を側方から見た外観斜視図である。
【
図7】
図7は、
図1に示した車両に適用するドア開閉装置のリンク機構を斜め上方から見た外観斜視図である。
【
図8】
図8は、
図1に示した車両のサイドドアと車両本体との接続部分を概念的に示すもので、(a)はサイドドアが閉じた状態の拡大平面図、(b)はサイドドアが半開き状態の拡大平面図、(c)はサイドドアが開放した状態の拡大平面図である。
【
図9】
図9は、ドア開閉装置100の機能的構成の一例を示すブロック図である。
【
図11】
図11は、ドア保持制御により通電される相とロータRTの回転位置との関係の一例を示す図である。
【
図12】
図12は、ドア開閉装置100の制御装置120が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図13】
図13は、ドア保持制御による保持力の第1例を示す図である。
【
図14】
図14は、ドア保持制御による保持力の第2例を示す図である。
【
図15】
図15は、ドア保持制御による保持力の第3例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のドア開閉装置の一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。以下では、本発明のドア開閉装置を自動車等の車両に適用した場合の例について説明する。図面は、符号の向きに見るものとする。また、以下の実施形態は特許請求の範囲に記載の発明を限定するものではなく、実施形態で説明されている特徴の組み合わせのすべてが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち2つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。なお、以下では、同一又は類似の要素には同一又は類似の符号を付して、その説明を適宜省略又は簡略化することがある。
【0011】
<ドア開閉装置を適用した車両の一例>
図1は、本実施形態のドア開閉装置を適用した車両の要部を概念的に示す図である。本実施形態のドア開閉装置を適用した車両(以下、単に「車両」ともいう)は、例えば、車両本体Bの両側面にそれぞれ前サイドドアD及び後サイドドアDが設けられた4ドアタイプの四輪自動車である。
【0012】
前サイドドアD及び後サイドドアDは、それぞれ中空状に構成したドア本体DMと、ドア本体DMの上部に枠状に設けたサッシュDSとを備えて構成したものである。個々のサイドドアDは、ドア本体DMの前面DMFに設けた上方ヒンジH及び下方ヒンジH(以下、総称して「ヒンジH」ともいう)によって車両本体Bに連結してあり、上下方向に沿ったヒンジ軸HSを中心に回転し、車両本体Bの乗降用開口BOを開閉することが可能である。
【0013】
サイドドアDのサッシュDSには、
図1に示すように、ウインドウガラスWGが配設してある。ウインドウガラスWGは、ドア本体DMの内部に配設した図示せぬ昇降機構により昇降ガイドGGに沿って上下方向に移動可能に配設してあり、上方に移動した場合にサッシュDSの開口を閉じることが可能である。ウインドウガラスWGが下方に移動した場合には、ウインドウガラスWGがドア本体DMの内部に収容され、サッシュDSの開口を開放することができる。
【0014】
また、それぞれのサイドドアDには、ドア本体DMの内部に駆動ユニット10が設けてある。駆動ユニット10は、車両本体Bに対するサイドドアDの開閉を補助するためのものである。本実施形態では、
図3~
図5に示すように、駆動源となる電動モータ11と、減速機12及び出力軸13を備えて駆動ユニット10が構成してある。図には明示していないが、減速機12としては、遊星歯車機構等のように複数の歯車によって構成したものを適用すればよい。また、電動モータ11から出力軸13までの間には、サイドドアDが手動操作された場合に電動モータ11からの動力伝達を断つようにクラッチ機構を介在させるようにしても構わない。
【0015】
車両に対しては、
図1に示すように、電動モータ11が上方に位置し、且つ出力軸13がほぼ鉛直下方に向けて延在する状態で、それぞれのサイドドアDの内部に駆動ユニット10が取り付けてある。駆動ユニット10を取り付ける位置は、ドア本体DMの内部においてヒンジHが取り付けられた前面DMFと昇降ガイドGGとの間の内部空間Aである。より具体的には、
図2に示すように、サイドドアDが閉じられた状態においてサイドドアDのヒンジ軸HSよりも車両内側、且つ車両後方側となる位置に出力軸13が位置する状態でサイドドアDの内部に駆動ユニット10が取り付けてある。駆動ユニット10の出力軸13は、リンク機構20を介して車両本体Bに連結してある。
【0016】
リンク機構20は、電動モータ11の駆動によって出力軸13が回転した場合に車両本体Bの乗降用開口BOに対してサイドドアDを開閉させるためのものである。本実施形態では、出力軸13に固定した駆動アーム21と、車両本体BにおいてサイドドアDの前面DMFに対向する部位、例えばピラーBPと駆動アーム21との間を連結する従動アーム22とを備えてリンク機構20が構成してある。
【0017】
駆動アーム21は、
図3~
図7に示すように、長手方向に沿って相対的にスライド可能に連結した第1アーム要素21A及び第2アーム要素21Bを備えて構成したものである。具体的には、第2アーム要素21Bの基端部両側にそれぞれガイド突起21B1が設けてあり、これらガイド突起21B1の間に第1アーム要素21Aが長手方向に沿ってスライド可能、且つ相対回転ができない状態で配設してある。また、第2アーム要素21Bの先端部には、長手方向に沿って溝21B2が形成してある。この駆動アーム21には、第2アーム要素21Bの溝21B2を介して第1アーム要素21Aの基端部に出力軸13が固定してある。図には明示していないが、第1アーム要素21Aと出力軸13との間は、スプライン結合してあり、出力軸13の軸芯13C回りに相対回転することはない。第2アーム要素21Bは、第1アーム要素21Aと出力軸13に固定したワッシャ14との間に挟持された状態にある。したがって、第1アーム要素21A及び第2アーム要素21Bは、出力軸13に対して径方向に沿ってのみ相対的に移動し、出力軸13の軸芯13Cに沿って相対移動することはない。
【0018】
本実施形態では、
図2に示すように、先端が車両内側に向けて後方側にほぼ40°傾斜した状態が駆動アーム21の待機状態となる。この状態から電動モータ11が駆動した場合に、駆動アーム21の先端が出力軸13よりも車両内側を通過し、先端が車両内側に向いて前方へほぼ25°となる位置まで回転することが可能である。
【0019】
従動アーム22は、リンクブラケットLBを介して基端部が車両本体BのピラーBPに回転可能に連結してある。従動アーム22の先端部は、サイドドアDの前面DMFに設けた切欠LFを介してサイドドアDの内部空間Aに進入し、駆動アーム21における第2アーム要素21Bの基端部に回転可能に連結してある。従動アーム22とリンクブラケットLBとの回転軸芯C1及び従動アーム22と第2アーム要素21Bとの回転軸芯C2は、それぞれ出力軸13の軸芯13Cに対してほぼ平行となるように設定してある。図からも明らかなように、サイドドアDが閉じた状態において駆動アーム21が待機状態にある場合、従動アーム22は、車両の前後に沿って延在するようにその長さが設定してある。
【0020】
図2~
図7に示すように、駆動アーム21の第2アーム要素21Bには、その先端部側の上面に位置規定ピン21Cが突設してある。位置規定ピン21Cは、第2アーム要素21Bからほぼ鉛直上方に向けて延在した円柱状部材であり、延在端部がガイドプレート15のスライド溝15aに挿入してある。ガイドプレート15は、駆動ユニット10の下方部に固定した厚板状部材であり、出力軸13に対してほぼ直交するように延在している。スライド溝15aは、
図2に示すように、出力軸13よりも車両内側となる位置に車両の前後に沿うように設けたもので、車両外側に向けてわずかに凸となる湾曲状に形成してある。すなわち、ガイドプレート15に設けたスライド溝15aは、駆動アーム21が待機状態から前方に向けて回転し、出力軸13から車両内側に向けてほぼ直角となる位置までの間においては、駆動ユニット10の出力軸13に対して漸次近接するように位置規定ピン21Cを案内する。その後、車両の前後に対してほぼ直角となる位置から前方に向けて回転する間においてスライド溝15aは、駆動ユニット10の出力軸13に対して漸次離隔するように位置規定ピン21Cを案内するように形成してある。
【0021】
上記のように構成した本実施形態のドア開閉装置では、
図8の(a)に示すように、サイドドアDが閉じた状態で待機状態にある駆動ユニット10の電動モータ11を駆動すると、出力軸13の回転が駆動アーム21を介して従動アーム22に伝達され、従動アーム22が前方に押し出されるようになる。したがって、例えば、車両本体Bに設けた図示せぬストライカと、サイドドアDに設けたラッチ装置との噛合が解除された状態で駆動ユニット10を動作させれば、
図8の(b)及び
図8の(c)に示すように、サイドドアDの前面DMFから従動アーム22が前方に向けて順次外部に突出し、車両本体Bに対してサイドドアDがヒンジ軸HSを中心に開放されることになる。
【0022】
一方、サイドドアDが開放した状態から駆動ユニット10の電動モータ11を逆転させれば、
図8の(c)に示す状態から
図8の(b)に示すように、従動アーム22がサイドドアDの内部空間Aに収容されるように後方に向けて移動し、
図8の(a)に示すように、車両本体Bに対してサイドドアDを閉めることができるようになる。
【0023】
<ドア開閉装置の機能的構成>
次に、本実施形態のドア開閉装置(以下、「ドア開閉装置100」ともいう)の機能的構成について説明する。
図9は、ドア開閉装置100の機能的構成の一例を示すブロック図である。
【0024】
図9に示すように、ドア開閉装置100は、サイドドアDに対して当該サイドドアDの開閉方向に駆動力を発生させる電動モータ11と、サイドドアDの状態を検出するドアセンサ110と、電動モータ11を制御する制御装置120とを含んで構成される。詳細は後述するが、本実施形態では、電動モータ11は3相のブラシレスモータとなっている。
【0025】
ドアセンサ110は、サイドドアDの開閉方向における位置(以下、「開閉位置」とも称する)を検出するドア位置センサ111を含んで構成される。本実施形態では、サイドドアDが全閉状態(すなわち完全に閉じた状態)であるときの開閉位置を0(ゼロ)とし、全開状態(すなわち完全に開放した状態)に近づくほど、開閉位置としての値が大きくなるものとする。すなわち、本実施形態において、開閉位置は、サイドドアDの開度(以下、「ドア開度」とも称する)ともいえる。
【0026】
ドア位置センサ111は、例えば、現在の開閉位置(すなわちドア開度)を検出し、その検出結果を示す検出信号を制御装置120へ出力する。また、ドア位置センサ111は、現在の開閉位置を示す検出信号に代えて、例えば、サイドドアDの開閉移動に応じたパルス信号を制御装置120へ出力するようにしてもよい。ドア位置センサ111は、例えばロータリエンコーダ等によって実現することができる。
【0027】
ドアセンサ110は、さらに、サイドドアDの開閉方向の加速度(以下、「ドア加速度」ともいう)を検出するドア加速度センサ112を含んでもよい。ドア加速度センサ112は、例えば、現在のサイドドアDの先端部(具体的には、ヒンジHが設けられた一端部の反対側の他端部)における開閉方向の加速度をドア加速度として検出し、その検出結果を示す検出信号を制御装置120へ出力する。ドア加速度センサ112は、例えばジャイロセンサ等によって実現することができる。
【0028】
制御装置120は、ドアセンサ110によって検出されたサイドドアDの状態に基づいて、電動モータ11を制御する。例えば、制御装置120は、電動モータ11の各相に対応するハーフブリッジ回路を有するモータ駆動回路、及び、これらハーフブリッジ回路に設けられたスイッチング素子(例えばMOSFET)の開閉を制御するマイクロコントローラ等によって実現される。そして、制御装置120は、例えば、上記のマイクロコントローラがあらかじめ記憶されたプログラムを実行することによって、又は上記のモータ駆動回路によって実現される機能部として、判定部121と、モータ制御部122とを含んで構成される。
【0029】
判定部121は、モータ制御部122によって後述のドア保持制御が行われていない場合に、ドア保持制御の実行条件が成立したか否かを判定し、その判定結果をモータ制御部122へ渡す。より具体的には、判定部121は、ドア位置センサ111によって検出されたサイドドアDの開閉位置(すなわちドア開度)に基づいて、開閉位置が所定範囲内になったか否かを判定する。そして、判定部121は、開閉位置が所定範囲内になったと判定したことに基づいて、ドア保持制御の実行条件が成立したと判定する。換言すると、判定部121は、開閉位置が所定範囲内になっていないと判定した場合には、ドア保持制御の実行条件が成立していないと判定する。
【0030】
本実施形態では、所定範囲として第1範囲と第2範囲とが設けられており、判定部121は、開閉位置が第1範囲内又は第2範囲内になったか否かを判定する。ここで、第1範囲は、第1位置の一例としての「a-α」から、第2位置の一例としての「a+α」までの範囲であり、所定位置の一例としての「a」を含む範囲である。また、第2範囲は、第1位置の他の一例としての「b-α」から、第2位置の他の一例としての「b+α」までの範囲であり、所定位置の他の一例としての「b」を含む範囲である。なお、ここで、αは0(ゼロ)よりも大きい任意の値とすることができ、aはαよりも大きい任意の値とすることができ、bはaよりも大きい任意の値とすることができる。
【0031】
モータ制御部122は、ドア保持制御の実行条件が成立したと判定部121によって判定された場合に、サイドドアDの開閉位置を保持する保持力を上記の駆動力として電動モータ11から発生させるドア保持制御を行う。前述のように、本実施形態では、開閉位置が所定範囲内(より具体的には第1範囲内又は第2範囲内)になった場合に、ドア保持制御の実行条件が成立したと判定され得る。したがって、モータ制御部122は、開閉位置が所定範囲内になった場合にドア保持制御を行い得る。また、本実施形態では、ドア保持制御において、モータ制御部122は、電動モータ11を所定の2相通電状態とすることで、保持力を発生させる。
【0032】
図10は、2相通電状態の一例を示す図である。
図10に示すように、本実施形態では、電動モータ11は3相2極3スロットのブラシレスモータとなっており、互いに独立した3つのコイルL1、L2、L3(すなわち3相のコイル)を有するステータSTと、ステータSTに対して回転可能に設けられた2極のロータRTとを備える。
【0033】
2相通電状態は、ステータSTに対するロータRTの回転を制動する状態であり、例えば、回転磁界が発生しないように、ステータSTの3つのコイルのうちの2つ(すなわち2相)に、互いに大きさが等しく且つ反対方向の電流を流した状態である。
図10には、コイルL1及びコイルL3に、互いに大きさが等しく且つ反対方向の電流を流した場合の2相通電状態を図示した。電動モータ11がこのような2相通電状態とされることで、ロータRTはステータSTに対して所定の回転位置で停止した状態を維持しようとし、これによって上記の保持力が発生する。
【0034】
ただし、電動モータ11が2相通電状態とされていても、ドア開閉装置100のユーザ(以下、単に「ユーザ」ともいう)がサイドドアDに対して2相通電状態による保持力を上回る操作力を入力すると、この操作力によってサイドドアDは開閉移動し、これに伴ってロータRTがステータSTに対して回転し得る。
【0035】
仮に、ドア保持制御の際(すなわち電動モータ11が2相通電状態とされる際)に通電される相を一定とすると、2相通電状態による保持力を上回る操作力が入力されることによってロータRTが回転した場合に、保持力が次に最大値をとるのが、ロータRTが電気角で360°回転した後になる。したがって、ドア保持制御の際に通電される相を一定とすると、ドア保持制御中にユーザが一定の操作力でサイドドアDを操作したとしてもサイドドアDの動きが断続的なものとなり、ドア保持制御中のサイドドアDの操作性が低下するおそれがある。
【0036】
そこで、モータ制御部122は、ドア保持制御によって電動モータ11を2相通電状態とする場合に、その際のステータSTに対するロータRTの回転位置に応じた2相に通電させるようにするのが好ましい。
【0037】
図11は、ドア保持制御により通電される相とロータRTの回転位置との関係の一例を示す図である。
図11に示すように、ドア保持制御中、モータ制御部122がロータRTの回転位置に応じた2相に通電させて電動モータ11を2相通電状態とすることで、例えば、ロータRTが電気角で120°回転するごとに保持力が最大値をとるようにすることが可能となる。これにより、ドア保持制御中のサイドドアDの動きの断続感を低減し、ドア保持制御中のサイドドアDの操作性の向上を図れる。
【0038】
なお、このようにした場合、例えば、制御装置120には、ロータRTの回転位置に応じてどの相に通電させるかを示す情報があらかじめ記憶される。そして、モータ制御部122は、ドア保持制御によって電動モータ11を2相通電状態とする場合、この情報を参照して、ロータRTの回転位置に応じた2相に通電させる。また、例えば、電動モータ11には、ロータRTの回転位置を検出する位置検出器(例えばホールセンサ又は光学式エンコーダ)が設けられ、制御装置120(例えばモータ制御部122)は、この位置検出器からの検出信号に基づいてロータRTの回転位置を取得可能に構成される。
【0039】
ところで、ユーザがドアDを速やかに開閉させようとした際には、サイドドアDに対するユーザの操作力が大きくなり、ドア加速度が所定値以上となり得る。換言すると、ドア加速度が所定値以上の場合には、ユーザがサイドドアDを速やかに開閉させようとしている可能性が高い。このような場合に保持力を発生させると、この保持力によってサイドドアDの開閉を阻害してしまうおそれがある。
【0040】
そこで、判定部121は、例えば、ドア加速度センサ112によって検出されたドア加速度に基づいて、ドア加速度が所定値未満であるか否かをさらに判定してもよい。そして、判定部121は、ドア加速度が所定値未満であり、且つ開閉位置が所定範囲内(例えば第1範囲内又は第2範囲内)になったと判定したことに基づいて、ドア保持制御の実行条件が成立したと判定してもよい。換言すると、判定部121は、ドア加速度が所定値以上と判定した場合には、開閉位置が所定範囲内であるか否かによらず、ドア保持制御の実行条件が成立していないと判定してもよい。すなわち、モータ制御部122は、ドア加速度が所定値未満であり、且つ開閉位置が所定範囲内になった場合にドア保持制御を行う一方、ドア加速度が所定値以上である場合には開閉位置にかかわらずドア保持制御を行わないようにしてもよい。このようにすることで、サイドドアDを速やかに開閉させようとするユーザの意に反して、サイドドアDの開閉を阻害し得る保持力を発生させてしまうのを抑制することが可能となる。
【0041】
なお、制御装置120は、ドア加速度センサ112によって検出されたドア加速度の代わりに、ドア位置センサ111によって検出されたサイドドアDの開閉位置を時間微分することにより求めたサイドドアDの開閉方向の速度をさらに時間微分することにより求めたドア加速度を用いるようにしてもよい。
【0042】
また、判定部121は、モータ制御部122によってドア保持制御が行われている場合に、ドア保持制御の終了条件が成立したか否かを判定し、その判定結果をモータ制御部122へ渡す。より具体的には、判定部121は、ドア位置センサ111によって検出されたサイドドアDの開閉位置に基づいて、開閉位置が所定範囲内から所定範囲外になったか否かを判定する。そして、判定部121は、開閉位置が所定範囲内から所定範囲外になったと判定したことに基づいて、ドア保持制御の終了条件が成立したと判定する。
【0043】
本実施形態では、前述のように、所定範囲として第1範囲と第2範囲とが設けられている。このため、判定部121は、ドア保持制御中に開閉位置が第1範囲内から第1範囲外になったか否か又は第2範囲内から第2範囲外になったか否かを判定する。そして、判定部121は、開閉位置が第1範囲内から第1範囲外になった又は第2範囲内から第2範囲外になったと判定したことに基づいて、ドア保持制御の終了条件が成立したと判定する。
【0044】
モータ制御部122は、判定部121によってドア保持制御の終了条件が成立したと判定された場合に、ドア保持制御を終了する。すなわち、モータ制御部122は、ドア保持制御中に開閉位置が所定範囲内から所定範囲外になった場合に、ドア保持制御を終了する。より具体的には、本実施形態では、モータ制御部122は、ドア保持制御中に開閉位置が第1範囲内から第1範囲外になった場合、又は第2範囲内から第2範囲外になった場合に、ドア保持制御を終了する。
【0045】
また、モータ制御部122は、例えば、開閉位置が所定範囲内(例えば第1範囲内又は第2範囲内)に含まれないと判定部121によって判定された場合には、サイドドアDの開閉を補助(すなわちアシスト)するようなアシスト力を駆動力として電動モータ11から発生させるようにしてもよい。このようにすれば、ユーザが少ない操作力でサイドドアDの開閉を行うことが可能となり、ユーザの利便性が向上する。
【0046】
<制御装置が実行する処理の一例>
図12は、ドア開閉装置100の制御装置120が実行する処理の一例を示すフローチャートである。制御装置120は、例えば、車両のバッテリ等から電力が供給されている場合に、
図12に示す一連の処理を実行する。
【0047】
図12に示すように、制御装置120は、まず、ドア保持制御中であるか否かを判定する(ステップS1)。ドア保持制御中でないと判定した場合(ステップS1:NO)、制御装置120は、ドア位置センサ111によって検出されたサイドドアDの開閉位置に基づいて、開閉位置が第1範囲(すなわちa±αの範囲)内になったか否かを判定する(ステップS2)。
【0048】
開閉位置が第1範囲内になったと判定した場合(ステップS2:YES)、制御装置120は、ステップS4の処理へ進む。一方、開閉位置が第1範囲内になっていないと判定した場合(ステップS2:NO)、制御装置120は、ドア位置センサ111によって検出されたサイドドアDの開閉位置に基づいて、開閉位置が第2範囲(すなわちb±αの範囲)内になったか否かを判定する(ステップS3)。
【0049】
開閉位置が第2範囲内になったと判定した場合(ステップS3:YES)、制御装置120は、ドア保持制御を開始して(ステップS4)、ステップS1の処理へ復帰する。一方、開閉位置が第2範囲内になっていないと判定した場合(ステップS3:NO)、制御装置120は、ドア保持制御を開始せず、そのままステップS1の処理へ復帰する。
【0050】
また、ステップS1の処理によりドア保持制御中であると判定した場合(ステップS1:YES)、制御装置120は、ドア位置センサ111によって検出されたサイドドアDの開閉位置に基づいて、開閉位置が第1範囲内から第1範囲外になったか否かを判定する(ステップS5)。
【0051】
開閉位置が第1範囲内から第1範囲外になったと判定した場合(ステップS5:YES)、制御装置120は、ステップS7の処理へ進む。一方、開閉位置が第1範囲内から第1範囲外になったと判定しなかった場合(ステップS5:NO)、制御装置120は、ドア位置センサ111によって検出されたサイドドアDの開閉位置に基づいて、開閉位置が第2範囲内から第2範囲外になったか否かを判定する(ステップS6)。
【0052】
開閉位置が第2範囲内から第2範囲外になったと判定した場合(ステップS6:YES)、制御装置120は、ドア保持制御を終了して(ステップS7)、ステップS1の処理へ復帰する。一方、開閉位置が第2範囲内から第2範囲外になったと判定しなかった場合(ステップS6:NO)、制御装置120は、ドア保持制御を終了せず、そのままステップS1の処理へ復帰する。
【0053】
以上に説明したように、ドア開閉装置100によれば、サイドドアDの開閉位置が所定範囲内になった場合に、電動モータ11から保持力を発生させ、当該保持力によってサイドドアDを保持する。これにより、電動モータ11を活用してサイドドアDを所定の開閉位置(例えば全閉位置と全開位置との間の半開位置)で保持することができる。したがって、例えば、電動モータ11とは別に従来のチェックリンク(ドアチェッカーとも称される)を車両に設けなくても、サイドドアDを所定の開閉位置で保持し、ユーザの意に反してサイドドアDが開閉移動してしまうのを抑制することが可能となる。換言すると、従来のチェックリンクを車両に設けなくても、サイドドアDの開閉に際し、従来のチェックリンクを車両に設けた場合と同様の(又は類似した)操作感をユーザに提供することが可能となる。よって、ユーザの利便性を向上させつつも、電動モータ11に加えて従来のチェックリンクも車両に設けるようにした場合に比べて、車両の部品点数が増加するのを抑制することができる。
【0054】
また、ドア開閉装置100によれば、ドア保持制御中にサイドドアDの開閉位置が所定範囲外になった場合に、ドア保持制御を終了する。これにより、サイドドアDの開閉位置が所定範囲内である場合のみ、電動モータ11から保持力によってサイドドアDを保持でき、サイドドアDの開閉に際し、従来のチェックリンクを設けた場合と同様の(又は類似した)操作感をユーザに提供することが可能となる。
【0055】
<ドア保持制御による保持力の第1例>
以下、ドア保持制御による保持力の具体例について説明する。
図13は、ドア保持制御による保持力の第1例を示す図である。
図13において、縦軸は保持力の大きさをあらわし、横軸はサイドドアDの開閉位置(換言するとドア開度)をあらわす。
【0056】
図13に示すように、制御装置120(例えばモータ制御部122)は、例えば、サイドドアDの開閉位置が第1範囲内又は第2範囲内(すなわち所定範囲内)である場合に、ほぼ一定の大きさ(
図13に示す例ではf1)の保持力を発生させる。このようにすれば、例えば、
図14に示す第2例や
図15に示す第3例のように保持力を変化させるようにした場合に比べて、制御装置120の処理負担を低減しつつ、保持力によってサイドドアDを第1範囲内又は第2範囲内に保持することを可能にする。なお、保持力をどの程度の大きさとするかは、ドア開閉装置100の製造者等が任意に定めることができる。
【0057】
<ドア保持制御による保持力の第2例>
図13に示した第1例では、サイドドアDの開閉位置が第1範囲内又は第2範囲内である場合の保持力を一定としたが、これに限られない。
図14は、ドア保持制御による保持力の第2例を示す図である。ここでは、
図13に示した第1例と異なる箇所を中心に説明することとし、
図13に示した第1例と共通する箇所についてはその説明を適宜省略又は簡略化する。
【0058】
図14に示すように、制御装置120(例えばモータ制御部122)は、サイドドアDの開閉位置が第1範囲内又は第2範囲内(すなわち所定範囲内)である場合に、その際の開閉位置に応じて保持力の大きさを変化させてもよい。換言すると、制御装置120は、ドア保持制御では、サイドドアDの開閉位置に応じて保持力の大きさを変化させるようにしてもよい。
【0059】
より具体的には、サイドドアDの開閉位置が第1範囲内である場合、制御装置120は、第1範囲内の所定位置である「a」に開閉位置が近づくにつれて保持力を大きくし、また、「a」から開閉位置が遠ざかるにつれて保持力を小さくしてもよい。同様に、サイドドアDの開閉位置が第2範囲内である場合、制御装置120は、第2範囲内の所定位置である「b」に開閉位置が近づくにつれて保持力を大きくし、また、「b」から開閉位置が遠ざかるにつれて保持力を小さくしてもよい。
【0060】
このようにすれば、サイドドアDの開閉位置が所定範囲外から所定範囲内になった際、又は所定範囲内から所定範囲外になった際に保持力が急激に変化して、サイドドアDを操作するユーザの手に大きな衝撃が加わってしまうのを抑制することが可能となる。したがって、例えば、サイドドアDの開閉に際し、従来のチェックリンクを車両に設けた場合と同様の自然な操作感をユーザに提供することが可能となり、ユーザが違和感なくサイドドアDの開閉を行うことを可能とする。
【0061】
<ドア保持制御による保持力の第3例>
図15は、ドア保持制御による保持力の第3例を示す図である。ここでは、
図13に示した第1例又は
図14に示した第2例と異なる箇所を中心に説明することとし、
図13に示した第1例又は
図14に示した第2例と共通する箇所についてはその説明を適宜省略又は簡略化する。
【0062】
図15に示すように、制御装置120(例えばモータ制御部122)は、サイドドアDの開閉位置が第1範囲内であり、且つ当該第1範囲内の所定位置である「a」周辺となった場合に保持力を一旦弱めてもよい。
【0063】
より具体的には、サイドドアDの開閉位置が第1範囲内である場合、制御装置120は、開閉位置が「a-α」から「a-β(ただしβ<α)」までの範囲では保持力をf1に向けて漸増させ、「a-β」から「a」までの範囲では保持力をf2(ただしf2<f1)に向けて漸減させるようにしてもよい。そして、制御装置120は、開閉位置が「a」から「a+β」までの範囲では保持力をf1に向けて再度漸増させ、「a+β」から「a+α」までの範囲では保持力を0(ゼロ)に向けて漸減させるようにしてもよい。
【0064】
すなわち、サイドドアDの開閉位置が第1範囲内である場合、制御装置120は、開閉位置が第1範囲内の所定位置「a」である場合の保持力(
図15に示す例ではf2)を、開閉位置が「a-α」から「a」までの範囲に含まれる場合の保持力の最大値(
図15に示す例ではf1)、及び開閉位置が「a」から「a+α」までの範囲に含まれる場合の保持力の最大値(
図15に示す例ではf1)よりも小さくしてもよい。
【0065】
このように、制御装置120は、サイドドアDの開閉位置が第1範囲内であり、且つ当該第1範囲内の所定位置である「a」周辺となった場合に保持力を一旦弱めることで、開閉位置が「a」周辺となったことを保持力によってユーザに示唆することが可能となる。
【0066】
同様に、制御装置120は、サイドドアDの開閉位置が第2範囲内であり、且つ当該第2範囲内の所定位置である「b」周辺となった場合に保持力を一旦弱めてもよい。より具体的には、サイドドアDの開閉位置が第2範囲内である場合、制御装置120は、開閉位置が第2範囲内の所定位置「b」である場合の保持力を、開閉位置が「b-α」から「b」までの範囲に含まれる場合の保持力の最大値、及び開閉位置が「b」から「b+α」までの範囲に含まれる場合の保持力の最大値よりも小さくしてもよい。これにより、制御装置120は、開閉位置が「b」周辺となったことを保持力によってユーザに示唆することが可能となる。
【0067】
以上、本発明のドア開閉装置の一実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されないことはいうまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0068】
例えば、前述の実施形態で説明した駆動ユニット10や電動モータ11の構成はあくまで一例であり、これらは他の構成をとるようにしてもよい。
【0069】
また、前述の実施形態で説明した例では、電動モータ11からの保持力によって保持されるドアをサイドドアDとしたが、これに限られない。例えば、車両のリアゲートに対してその開閉方向に駆動力を発生させるモータを設けて、このモータからの保持力によってリアゲートが保持されるようにしてもよい。
【0070】
また、前述の実施形態で説明した例では、ドア保持制御において、電動モータ11の2相に通電することにより保持力を発生させるものとしたが、これに限られず、例えば、電動モータ11の3相に通電することにより保持力を発生させてもよい。
【0071】
また、前述の実施形態では、「a±α」の範囲を第1範囲としたが、これに限られず、例えば「a-α」から「a+β」の範囲を第1範囲としてもよい。さらに、第1範囲と第2範囲とは必ずしも同一の大きさを有する範囲とする必要はなく、例えば、「a±α」の範囲を第1範囲とし、「b±β」の範囲を第2範囲としてもよい。
【0072】
また、前述の実施形態では、所定範囲を第1範囲と第2範囲の2つの範囲を設定したが、所定範囲は第1範囲のみとしてもよく、3つ以上の範囲を設定してもよい。
【0073】
以上に説明したように、本発明によれば、ドアに対して当該ドアの開閉方向に駆動力を発生させるモータを活用してドアを所定の開閉位置で保持させることを可能にするドア開閉装置を提供できる。
【0074】
本明細書等には少なくとも以下の事項が記載されている。括弧内には、前述した実施形態において対応する構成要素等を一例として示しているが、これに限定されるものではない。
【0075】
(1) ドア(サイドドアD)に対して当該ドアの開閉方向に駆動力を発生させるモータ(電動モータ11)と、
前記ドアの開閉位置を検出するドア位置センサ(ドア位置センサ111)と、
前記ドア位置センサによって検出された開閉位置に基づいて、前記モータを制御する制御装置(制御装置120)と、
を備えるドア開閉装置(ドア開閉装置100)であって、
前記モータは、
少なくとも3相のコイル(コイルL1、L2、L3)を有するステータ(ステータST)と、当該ステータに対して回転可能に設けられたロータ(ロータRT)と、を備え、前記ロータが前記ステータに対して回転することで前記駆動力を発生させ、
前記制御装置は、
前記開閉位置が所定範囲内(第1範囲内又は第2範囲内)になった場合に、前記開閉位置を保持する保持力を前記駆動力として発生させるドア保持制御を行い、
前記ドア保持制御では、前記モータの少なくとも2相以上に通電し、前記ロータの回転を制動することで前記保持力を発生させる、
ドア開閉装置。
【0076】
(1)によれば、ドアの開閉位置が所定範囲内になった場合に、モータから保持力を発生させ、当該保持力によってドアを保持することができる。これにより、モータを活用してドアを所定の開閉位置で保持することができる。したがって、例えば、モータとは別に従来のチェックリンク(ドアチェッカーとも称される)を設けなくても、ドアを所定の開閉位置で保持し、ユーザの意に反してドアが開閉移動してしまうのを抑制することが可能となる。換言すると、従来のチェックリンクを設けなくても、ドアの開閉に際し、従来のチェックリンクを設けた場合と同様の(又は類似した)操作感をユーザに提供することが可能となる。よって、ユーザの利便性を向上させつつも、モータに加えて従来のチェックリンクも設けるようにした場合に比べて、部品点数が増加するのを抑制することができる。
【0077】
(2) (1)に記載のドア開閉装置であって、
前記制御装置は、
前記ドア保持制御中に前記開閉位置が前記所定範囲外になった場合に、前記ドア保持制御を終了する、
ドア開閉装置。
【0078】
(2)によれば、ドアの開閉位置が所定範囲内である場合のみ、モータから保持力によってドアを保持でき、ドアの開閉に際し、従来のチェックリンクを設けた場合と同様の(又は類似した)操作感をユーザに提供することが可能となる。
【0079】
(3) (1)又は(2)に記載のドア開閉装置であって、
前記制御装置は、
前記ドアの開閉方向の加速度が所定値未満であり、且つ前記開閉位置が前記所定範囲内になった場合に、前記ドア保持制御を行い、
前記加速度が前記所定値以上である場合に、前記開閉位置にかかわらず前記ドア保持制御を行わない、
ドア開閉装置。
【0080】
(3)によれば、ドアを速やかに開閉させようとするユーザの意に反して、ドアの開閉を阻害し得る保持力を発生させてしまうのを抑制することが可能となる。
【0081】
(4) (1)から(3)のいずれかに記載のドア開閉装置であって、
前記制御装置は、
前記ドア保持制御によって2相通電状態とする場合に、前記ステータに対する前記ロータの回転位置に応じた2相に通電させる、
ドア開閉装置。
【0082】
(4)によれば、ドア保持制御中のドアの動きの断続感を低減し、ドア保持制御中のドアの操作性の向上を図れる。
【0083】
(5) (1)から(4)のいずれかに記載のドア開閉装置であって、
前記制御装置は、
前記ドア保持制御では、前記開閉位置に応じて前記保持力の大きさを変化させる、
ドア開閉装置。
【0084】
(5)によれば、ドアの開閉に際し、従来のチェックリンクを設けた場合と同様の自然な操作感をユーザに提供することが可能となり、ユーザが違和感なくドアの開閉を行うことを可能とする。
【0085】
(6) (5)に記載のドア開閉装置であって、
前記所定範囲は、
第1位置から第2位置までの範囲であるとともに、前記第1位置と前記第2位置との間の所定位置を含み、
前記制御装置は、
前記開閉位置が前記所定位置に近づくにつれて前記保持力を大きくし、前記開閉位置が前記所定位置から遠ざかるにつれて前記保持力を小さくする、
ドア開閉装置。
【0086】
(6)によれば、ドアの開閉位置が所定範囲外から所定範囲内になった際、又は所定範囲内から所定範囲外になった際に保持力が急激に変化して、ドアを操作するユーザの手に大きな衝撃が加わってしまうのを抑制することが可能となる。したがって、ドアの開閉に際し、従来のチェックリンクを設けた場合と同様の自然な操作感をユーザに提供することが可能となり、ユーザが違和感なくドアの開閉を行うことを可能とする。
【0087】
(7) (5)に記載のドア開閉装置であって、
前記所定範囲は、
第1位置から第2位置までの範囲であるとともに、前記第1位置と前記第2位置との間の所定位置を含み、
前記制御装置は、
前記開閉位置が前記所定位置である場合の前記保持力を、前記開閉位置が前記第1位置から前記所定位置までの範囲に含まれる場合の前記保持力の最大値、及び前記開閉位置が前記所定位置から前記第2位置までの範囲に含まれる場合の前記保持力の最大値よりも小さくする、
ドア開閉装置。
【0088】
(7)によれば、開閉位置が所定範囲内の所定位置周辺となったことを保持力によってユーザに示唆することが可能となる。
【符号の説明】
【0089】
11 電動モータ(モータ)
100 ドア開閉装置
111 ドア位置センサ
120 制御装置
D サイドドア(ドア)
L1、L2、L3 コイル
RT ロータ
ST ステータ