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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025019519
(43)【公開日】2025-02-07
(54)【発明の名称】制御装置、建設機械、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/22 20060101AFI20250131BHJP
   E02F 9/00 20060101ALI20250131BHJP
【FI】
E02F9/22 E
E02F9/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023123168
(22)【出願日】2023-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120167
【弁理士】
【氏名又は名称】木田 博
(74)【代理人】
【識別番号】100189186
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】廣澤 允紀
(72)【発明者】
【氏名】井原 駿也
(72)【発明者】
【氏名】井上 皓二
(72)【発明者】
【氏名】石田 晃暉
【テーマコード(参考)】
2D003
2D015
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB00
2D003BA02
2D003CA02
2D003DA04
2D003DB06
2D015CA00
(57)【要約】
【課題】 アクチュエータの動作に対する暖機運転の影響を抑制できる制御装置等を提供する。
【解決手段】 油路を流れる作動油の油圧に基づき動作可能な1つ以上のアクチュエータを備える建設機械を制御する制御装置であって、作動油の油圧負荷を高めることで暖機制御を行う暖機制御部と、1つ以上のアクチュエータのうちの、少なくとも1つの第1アクチュエータを、動作指示に基づいて動作させるアクチュエータ制御部と、動作指示を検出又は予測する検出予測部とを備え、暖機制御部は、暖機制御中に検出予測部により動作指示が検出又は予測された場合に、暖機制御を制限し、アクチュエータ制御部は、検出予測部による検出又は予測結果に基づき暖機制御部により暖機制御が制限された場合、所定の制限解除条件が成立するまで、動作指示に応じた第1アクチュエータの動作を制限する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油路を流れる作動油の油圧に基づき動作可能な1つ以上のアクチュエータを備える建設機械を制御する制御装置であって、
前記作動油の油圧負荷を高めることで暖機制御を行う暖機制御部と、
前記1つ以上のアクチュエータのうちの、少なくとも1つの第1アクチュエータを、動作指示に基づいて動作させるアクチュエータ制御部と、
前記動作指示を検出又は予測する検出予測部とを備え、
前記暖機制御部は、暖機制御中に前記検出予測部により前記動作指示が検出又は予測された場合に、前記暖機制御を制限し、
前記アクチュエータ制御部は、前記検出予測部による検出又は予測結果に基づき前記暖機制御部により前記暖機制御が制限された場合、所定の制限解除条件が成立するまで、前記動作指示に応じた前記第1アクチュエータの動作を制限する、制御装置。
【請求項2】
前記第1アクチュエータの動作の制限は、前記第1アクチュエータの動作の禁止、又は、前記動作指示に応じた前記第1アクチュエータの出力レベルの増加量又は増加速度に対する制限を含む、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記アクチュエータ制御部は、前記第1アクチュエータの動作の制限度合いを、前記暖機制御が制限される際の前記作動油の油圧が高いほど強くなる態様で、変化させる、請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記所定の制限解除条件は、前記暖機制御が制限されてからの時間の経過、及び、前記暖機制御が制限された後の前記作動油の油圧の低下のうちの、少なくともいずれか一方に関連する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項5】
前記暖機制御部は、前記作動油の温度情報、及び、前記油路内を流れる前記作動油から受熱可能な昇温対象物の温度情報の少なくともいずれか一方に基づいて、前記作動油及び前記昇温対象物の少なくともいずれか一方の温度が所定範囲内に保たれるように、前記暖機制御を実行する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項6】
前記暖機制御部は、前記建設機械に備わる油圧ポンプ、エンジン、及び前記油路に設けられる比例弁の少なくともいずれかを用いて、2段階以上の暖機目標値に基づいて、前記暖機制御を実行する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項7】
前記アクチュエータ制御部は、前記第1アクチュエータの動作の制限度合いを、前記暖機制御が制限される時点の直近の前記暖機目標値が高いほど強くなる態様で、変化させる、請求項6に記載の制御装置。
【請求項8】
前記1つ以上のアクチュエータのうちの、前記第1アクチュエータとは異なる少なくとも1つの第2アクチュエータを、前記第1アクチュエータに連動して半自動又は自動的に動作させる自動制御部と、
ユーザからのモード入力に基づいて、前記自動制御部が動作可能な半自動又は自動モードを形成するモード切替部とを更に含み、
前記暖機制御部は、前記半自動又は自動モード中、前記暖機制御を実行する、請求項1から7のうちのいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項9】
前記動作指示は、前記建設機械に設けられる操作部材に対する操作に応じて生成され、
前記暖機制御部は、前記半自動又は自動モード中、前記操作部材を操作不能にロックするロック機構の状態とは無関係に、前記暖機制御を実行する、請求項8に記載の制御装置。
【請求項10】
前記暖機制御部は、前記半自動又は自動モードが解除された場合に、前記暖機制御を停止する、請求項8に記載の制御装置。
【請求項11】
前記1つ以上のアクチュエータは、前記第1アクチュエータとは異なる第3アクチュエータであって、前記建設機械の走行に係る第3アクチュエータを含み、
前記アクチュエータ制御部は、前記第1アクチュエータ及び前記第3アクチュエータのうちの、前記第1アクチュエータに対してのみ、動作を制限する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項12】
油路を流れる作動油の油圧に基づき動作可能な1つ以上のアクチュエータを備える建設機械本体と、
前記建設機械本体を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記作動油の油圧負荷を高めることで暖機制御を行う暖機制御部と、
前記1つ以上のアクチュエータのうちの、少なくとも1つの第1アクチュエータを、動作指示に基づいて動作させるアクチュエータ制御部と、
前記動作指示を検出又は予測する検出予測部とを備え、
前記暖機制御部は、暖機制御中に前記検出予測部により前記動作指示が検出又は予測された場合に、前記暖機制御を制限し、
前記アクチュエータ制御部は、前記検出予測部による検出又は予測結果に基づき前記暖機制御部による前記暖機制御が制限された場合、所定の制限解除条件が成立するまで、前記動作指示に応じた前記第1アクチュエータの動作を制限する、建設機械。
【請求項13】
油路を流れる作動油の油圧に基づき動作可能な1つ以上のアクチュエータを備える建設機械を制御する制御プログラムであって、
前記作動油の油圧負荷を高めることで暖機制御を行う暖機制御処理と、
前記1つ以上のアクチュエータのうちの、少なくとも1つの第1アクチュエータを、動作指示に基づいて動作させるアクチュエータ制御処理と、
前記動作指示を検出又は予測する検出予測処理とを、コンピュータに実行させ、
前記暖機制御処理は、暖機制御中に前記検出予測処理により前記動作指示が検出又は予測された場合に、前記暖機制御を制限し、
前記アクチュエータ制御処理は、前記検出予測処理による検出又は予測結果に基づき前記暖機制御処理により前記暖機制御が制限された場合、所定の制限解除条件が成立するまで、前記動作指示に応じた前記第1アクチュエータの動作を制限する、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御装置、建設機械、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
引用文献1には、低温時の暖機のため、作動油温度又はエンジン冷却水温度が所定値よりも低い時に暖機運転を開始する暖機運転装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-074011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の従来技術では、レバー操作が検出されると、油圧負荷を切って暖機運転を解除すると同時にレバー操作に従った動作を許容している。このため、暖機運転を解除した後も暖機運転の影響が一時的に残り、施工の精度が低下するおそれがある。
【0005】
そこで、1つの側面では、本発明は、アクチュエータの動作に対する暖機運転の影響を抑制できる制御装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの側面では、
油路を流れる作動油の油圧に基づき動作可能な1つ以上のアクチュエータを備える建設機械を制御する制御装置であって、
前記作動油の油圧負荷を高めることで暖機制御を行う暖機制御部と、
前記1つ以上のアクチュエータのうちの、少なくとも1つの第1アクチュエータを、動作指示に基づいて動作させるアクチュエータ制御部と、
前記動作指示を検出又は予測する検出予測部とを備え、
前記暖機制御部は、暖機制御中に前記検出予測部により前記動作指示が検出又は予測された場合に、前記暖機制御を制限し、
前記アクチュエータ制御部は、前記検出予測部による検出又は予測結果に基づき前記暖機制御部により前記暖機制御が制限された場合、所定の制限解除条件が成立するまで、前記動作指示に応じた前記第1アクチュエータの動作を制限する、制御装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、アクチュエータの動作に対する暖機運転の影響を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施例の制御装置を備える建設機械の構成を例示する図である。
図2】本実施例の制御装置の構成を機能的に示す図である。
図3】検出予測部における許可フラグ設定処理を例示するフローチャートである。
図4】暖機制御部における暖機制御処理を例示するフローチャートである。
図5】マシンコントロールモードが選択されている場合の動作例を示す図である。
図6】アクチュエータ制御部における動作制限フラグ設定処理を例示するフローチャートである。
図7】アクチュエータ制御部における動作制限処理を例示するフローチャートである。
図8】レバーの操作量の補正によりアクチュエータの出力レベルの増加量に対する制限を行う方法を例示する図である。
図9】レバーの操作量の補正によりアクチュエータの出力レベルの増加速度に対する制限を行う方法を例示する図である。
図10図6に示す処理に代わる動作制限フラグ設定処理を示すフローチャートである。
図11図7に示す処理に代わる動作制限処理を示すフローチャートである。
図12】ステップS406Aにおけるレバーの操作量の補正の方法を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら各実施例について説明する。
【0010】
図1は、本実施例の制御装置を備える建設機械の構成を例示する図、図2は、本実施例の制御装置の構成を機能的に示す図である。
【0011】
図1に示すように、本実施例の制御装置10を備える建設機械は、作動油タンク21、エンジン22、エンジン22により駆動される油圧ポンプ23、油圧ポンプ23の傾転を制御する傾転比例弁24、比例弁25aとアンロード弁25bを有するコントロールバルブ25、及び冷却器27を含んで構成される。作動油は、作動油タンク21から、油圧ポンプ23、コントロールバルブ25、冷却器27を順次、経由し、作動油タンク21に戻るように循環する。作動油タンク21には、温度センサ31が取り付けられ、作動油タンク21内の作動油の温度を検出温度として出力する。
【0012】
なお、建設機械としての電気ショベルに対して、本開示に係る制御装置を適用して暖機運転を行うこともできる。この場合、作動油だけではなく、バッテリーセルの温度で出力が制限される可能性がある。したがって、バッテリーセルの温度を温度センサで検出し、この検出温度を作動油等の温度と併せて管理してもよい。
【0013】
制御装置10は、温度センサ31からの検出温度、レバーロック信号、操作レバー32からのレバー操作信号、モード切替部33からの運転モード信号、及びその他の信号に基づいて、エンジン22、傾転比例弁24、比例弁25a及びアンロード弁25bを制御する。
【0014】
なお、レバーロック信号は、レバー操作信号に対応する操作レバー32への操作をロックするロック機構に係る信号であり、ロック機構は、作業機械の動作を確実に停止させるという安全面を考慮して設けられている。具体的には、操作レバー32自体を機構的に操作不能にする方法、及び操作用パイロットバルブの圧力源をカットする方法などがある。後者の場合、操作レバー32は動かせるが、操作用パイロットバルブの圧力源をカット(油圧回路を遮断)するので、動作指示が伝わらない状態となる。
【0015】
なお、図1では、コントロールバルブ25のみを示しているが、実際には、建設機械の種類に応じた複数のコントロールバルブを設けることができる。本開示は、任意の建設機械に適用可能である。
【0016】
図2に示すように、制御装置10は、作動油の油圧負荷を高めることで暖機制御を行う暖機制御部11と、建設機械の動作に係るアクチュエータ(第1のアクチュエータ、第2のアクチュエータを含む)を動作指示に基づいて動作させるアクチュエータ制御部12と、動作指示を検出又は予測する検出予測部13とを備える。
【0017】
図3は、検出予測部における許可フラグ設定処理を例示するフローチャートである。
【0018】
図3のステップS102では、検出予測部13は、操作タイマーのカウント時間をゼロにリセットし、操作タイマーによるカウントを開始する。
【0019】
ステップS104では、検出予測部13は、レバー操作信号、レバーロック信号、その他の信号に基づき、所定の操作があったか否か判断し、判断が肯定されれば処理をステップS106へ進め、判断が否定されれば処理をステップS108へ進める。
【0020】
ここで、上記の所定の操作には、建設機械に対する動作指示に対応する操作、又は、建設機械に対する動作指示が予測される操作が含まれる。動作指示が予測される操作は、その後に、オペレータの建設機械に対する動作指示が行われる蓋然性が認められる操作である。
【0021】
例えば、レバーロック信号が、操作レバー32への操作に対するロックの解除操作を示す場合には、当該操作を操作レバー32を用いた動作指示が予測される操作として取り扱うことができる。また、建設機械に対する動作指示に対応する操作又は動作指示が予測される操作として、各種操作レバーへの操作、走行ペダル(または操作レバー)への操作、先端アタッチを操作するための種々のレバーやペダルへの操作、建設機械に対する遠隔操作、などを含めることができる。さらに、通常、作業開始前に行なわれるホーンスイッチへの操作を、動作指示が予測される操作に含めてもよい。
【0022】
さらに、建設機械に対する動作指示に対応する操作、又は、建設機械に対する動作指示が予測される操作は、手動操作に限定されず、これらの操作に自動操作を含めてもよい。
【0023】
ステップS106では、検出予測部13は、許可フラグをオフし、処理をステップS102へ進める。
【0024】
ステップS108では、検出予測部13は、操作タイマーのカウント時間が所定値Tを超えたか否か判断し、判断が肯定されれば、処理をステップS110へ進め、判断が否定されれば処理をステップS104へ進める。
【0025】
ステップS110では、検出予測部13は、許可フラグをオンにし、処理をステップS104へ進める。
【0026】
図4は、暖機制御部における暖機制御処理を例示するフローチャートである。
【0027】
図4のステップS202では、暖機制御部11は、運転モード信号に基づき、運転モードとしてマシンコントロールモード(半自動又は自動モード)が選択されているか否か判断し、判断が肯定されれば処理をステップS204へ進め、判断が否定されれば処理をステップS230へ進める。
【0028】
図5は、マシンコントロールモードが選択されている場合の動作例を示す図である。
【0029】
図5では、油圧ショベルにおける動作を例示する。この油圧ショベルは、地面Gの上を走行可能な下部走行体41と、下部走行体41に搭載される上部旋回体42と、上部旋回体42に搭載される作業装置50とを備える。
【0030】
上部旋回体42は、旋回フレーム42aと、その上に搭載される複数の要素と、を有する。当該複数の要素は、エンジン22(図1)を収容するエンジンルーム42bや運転室であるキャブ42cを含む。
【0031】
作業装置50は、掘削作業その他の必要な作業のための動作を行うことが可能であり、ブーム51、アーム52及びバケット53を含む。ブーム51は、旋回フレーム42aの前端に起伏可能すなわち水平軸回りに回動可能に支持される。アーム52は、ブーム51の先端部に水平軸回りに回動可能に取付けられる。バケット53は、アーム52の先端部に回動可能に取付けられる。また、ブーム51、アーム52及びバケット53のそれぞれに対応して、複数の伸縮可能なアクチュエータとしての油圧シリンダ、具体的には、少なくとも一つのブームシリンダ61、アームシリンダ62及びバケットシリンダ63が設けられる。
【0032】
ブームシリンダ61、アームシリンダ62及びバケットシリンダ63の収縮により、それぞれブーム上げ、アーム引き、バケット開きの動作が行われる。他方、ブームシリンダ61、アームシリンダ62及びバケットシリンダ63の伸長により、それぞれブーム下げ、アーム押し、バケット閉じの動作が行われる。
【0033】
マシンコントロールモードが選択されている場合、簡単な手動操作だけで、例えば、目標施工面G1に対応する自動制御が実行される。例えば、手動によるレバー操作により、アーム引きを行うと、ブームの上げ下げ動作及びバケットの開閉動作が自動制御される。すなわち、手動操作に従うアームシリンダ62(第1のアクチュエータ)の伸縮動作に応じて、ブームシリンダ61(第2のアクチュエータ)及びバケットシリンダ63(第2のアクチュエータ)の伸縮動作を制御する。これにより、例えば、アーム52を引き付ける手動操作をするだけで、バケット53の先端(下端)が目標施工面G1に沿って地面Gを掘削する自動制御(半自動制御)が実行される。
【0034】
なお、自動制御(半自動制御)における制御の内容は任意であり、自動制御(半自動制御)が適用される建設機械の種類も任意である。自動制御(半自動制御)としては、あらかじめ掘削動作のティーチングが行われ、ティーチングに応じた動きを指定回数や指定期間の間行う制御が一例としてあげられる。
【0035】
次に、図4のステップS204では、暖機制御部11は、許可フラグがオンしているか否か判断し、判断が肯定されれば処理をステップS206へ進め、判断が否定されれば処理をステップS202へ進める。
【0036】
ステップS206では、暖機制御部11は、温度センサ31から検出温度を取得する。
【0037】
ステップS208では、暖機制御部11は、検出温度が所定値Th1(例えば30℃)未満か否か判断し、判断が肯定されれば処理をステップS208Aへ進め、判断が否定されれば処理をステップS210へ進める。
【0038】
ステップS208Aでは、暖機制御部11は、暖機運転の暖機目標馬力を馬力F1に設定し、処理をステップS220へ進める。ここで、暖機運転は、作動油の流量を増加させ、あるいは作動油の圧力を上昇させることにより実行される。作動油の流量は、油圧ポンプ23の傾転を上昇させることにより、あるいはエンジン22の回転数を上昇させることにより増加させることができる。また、作動油の圧力は、アンロード弁(アンロード弁25bなど)を絞り、スプール開口を狭めた部位に作動油を流すことにより上昇させることができる。なお、暖機運転において、油圧負荷を高めることに加えて冷却ファンの回転数を下げる又は停止させる等の制御により、暖機を行うこととしてもよい。このようにすれば、油圧負荷のみを制御する場合よりも暖機の効果を高めることができる。
【0039】
ステップS210では、暖機制御部11は、検出温度が所定値Th2(例えば、60℃)未満か否か判断し、判断が肯定されれば処理をステップS210Aへ進め、判断が否定されれば処理をステップS230へ進める。ここで、所定値Th2は、所定値Th1よりも高い値(温度)である。
【0040】
ステップS210Aでは、暖機制御部11は、暖機運転の暖機目標馬力を馬力F2に設定し、処理をステップS220へ進める。ここで、馬力F2は、馬力F1よりも低い値(馬力)である。
【0041】
ステップS220では、暖機制御部11は、暖機フラグをオンし、処理をステップS202へ進める。
【0042】
ステップS230では、暖機制御部11は、暖機運転を制限する。ここでは、例えば、暖機運転を停止することができる。
【0043】
また、暖機運転の継続が必要な場合、ステップS230において、暖機運転の停止に代えて、暖機目標馬力を馬力F2より小さな値に抑制することができる。本実施例では、暖機運転の制限は、マシンコントロールモードにおいて、アクチュエータを適切に動作させることを目的としている。このため、ステップS230における暖機運転の制限は、マシンコントロールモードに適合したアクチュエータの適切な動作が可能となる状態が得られる条件に対応している。
【0044】
ステップS232では、暖機制御部11は、暖機フラグをオフし、処理をステップS202へ進める。
【0045】
このように、本実施例では、暖機制御中に動作指示が検出又は予測された場合に、暖機制御を制限している。このため、暖機運転の有無や強度を自動的に制御することができる。例えば、ロック機構により特定の動作を禁止しているか否かにかかわりなく、暖機運転を行わせることが可能となる。
【0046】
また、本実施例では、正確な動作が要求されるマシンコントロールモードが選択されている場合には、暖機運転が行われる。ここで、マシンコントロールモードが選択されている際には、想定した軌跡どおりにアタッチメントを動かす必要がある。例えば、比例弁が低温の場合に比例弁の動特性が常温時とは変化し、コントローラの指示に対する応答の速い/遅いが発生し、動き出しのアタッチメントの挙動が狙いどおりにならない。例えば、低温時に作動油の粘度が高くなり、応答が速くなる可能性がある。本実施例では、暖機制御により、作動油温度を所定値以上に制御することにより、動作を安定させることが可能になる。したがって、マシンコントロールモードにおける作業の精度を高めることができる。
【0047】
また、マシンコントロールモードが選択されていない場合には、暖機運転を停止ないし抑制することにより、エネルギー消費(燃料消費)を抑制することができる。
【0048】
また、本実施例では、マシンコントロールモードが選択されている場合には、検出温度に応じて複数の段階の暖機目標馬力を設定している。このため、作動油の温度の安定化を図ることができる。例えば、図4の例では、例えば、作動油の温度を30~60℃の間で安定させることができる。また、暖機目標馬力が馬力F2に設定されている間、作動油の温度を、例えば30~60℃の間でいわば保温する動作となるため、暖機運転のオン・オフにより油圧負荷が大きく変動することがなく、継続的に油圧負荷をかけることができる。
図4の例では、作動油の温度を検出しているが、油路内を流れる作動油から受熱可能な昇温対象物の温度に基づく制御を実行してもよい。例えば、図1に示すように、油圧ポンプ23に取り付けられた温度センサ31A、エンジン22に取り付けられた温度センサ31B、比例弁25aに取り付けられた温度センサ31Cの検出温度に基づいて、同様の制御を実行してもよい。とくに、比例弁(比例弁25aなど)はレイアウトによって温まりやすさに差がでやすく、かつ温度差が応答性などに影響を及ぼす。例えば、作動油の粘性(温度依存)が高まると、スプールが動きにくいが、油圧は立ちやすくなる。また、比例弁本体の電磁力(導体の温度依存)の影響もある。これにより、仮に、ブーム上げ比例弁は適温だが、ブーム下げ比例弁は低温のままであれば、上げ下げの動的挙動が大きく異なるなどの現象が起こりうる。したがって、このような場合には、例えば、すべての比例弁の検出温度に基づく制御を行うことにより、比例弁の温度差に起因する不具合を回避できる。
【0049】
図6は、アクチュエータ制御部における動作制限フラグ設定処理を例示するフローチャートである。本実施例において、動作制限フラグがオンからオフに移行することが、制限解除条件の成立に対応する。
【0050】
図6のステップS302では、アクチュエータ制御部12は、経過時間カウンタのカウント時間をゼロにリセットし、経過時間カウンタによるカウントを開始する。
【0051】
ステップS304では、アクチュエータ制御部12は、暖機フラグがオンしているか否か判断し、判断が肯定されれば処理をステップS306へ進め、判断が否定されれば処理をステップS308へ進める。
【0052】
ステップS306では、アクチュエータ制御部12は、動作制限フラグをオンし、処理をステップS302へ進める。
【0053】
ステップS308では、アクチュエータ制御部12は、経過時間カウンタのカウント時間が所定時間T0を超えたか否か判断し、判断が肯定されれば処理をステップS310へ進め、判断が否定されれば処理をステップS304へ進める。
【0054】
ステップS310では、アクチュエータ制御部12は、動作制限フラグをオフし、処理をステップS302へ進める。
【0055】
このように、図6に示す動作制限フラグ設定処理では、暖機フラグがオンしている場合には、動作制限フラグをオンする(ステップS306)。また、動作制限フラグがオフしており、かつ動作制限フラグがオンからオフに切り替わってから所定時間T0が経過した場合に、動作制限フラグをオフ(ステップS310)している。
【0056】
図7は、アクチュエータ制御部における動作制限処理を例示するフローチャートである。
【0057】
図7のステップS402では、アクチュエータ制御部12は、レバー操作信号に基づき、レバー操作がされたか否か判断し、判断が肯定されるのを待って処理をステップS404へ進める。判断が否定されればステップS402をくり返す。
【0058】
ステップS404では、アクチュエータ制御部12は、動作制限フラグがオンしているか否か判断し、判断が肯定されれば処理をステップS406へ進め、判断が否定されれば処理をステップS408へ進める。
【0059】
ステップS406では、アクチュエータ制御部12は、レバー操作信号が示す操作量を補正する。
【0060】
ステップS408では、アクチュエータ制御部12は、操作量に対応するアクチュエータの動作を実行させ、処理をステップS402へ進める。
【0061】
このように、図7に示す動作制限処理において、動作制限フラグがオンしている場合には、レバー操作信号が示す操作量を補正する(ステップS406)ことにより、アクチュエータの動作が制限される(ステップS408)。例えば、図5を参照して例示したように、アーム52を引き付けるレバー操作を行っても、動作制限フラグがオンしている場合には、レバー操作信号が示す操作量が補正される。これにより、オペレータが意図しない急激な動作が発生することを回避できる。すなわち、暖機制御(暖機運転)により高まった油圧が暖機運転がされない通常状態時の圧力まで低下しない間にレバー操作が行われた場合、通常時よりも大きな動きが発生する可能性がある。しかし、本実施例によれば、動作制限フラグがオンからオフに切り替わってから所定時間T0が経過するまでの間は、動作が制限される。このため、油圧が通常状態時の圧力まで低下しない間におけるオペレータの意図に反する急激な動作が効果的に抑制される。
【0062】
他方、動作制限フラグがオフしている場合には、レバー操作信号が示す操作量を補正することなく、アクチュエータの動作はレバー操作信号に従う(ステップS408)。すなわち、アクチュエータの動作は制限されない。
【0063】
図8は、レバーの操作量の補正によりアクチュエータの出力レベルの増加量に対する制限を行う方法を例示する図である。図8において、横軸は手動でレバーを実際に動かした幅(量)を示すレバー操作量を、縦軸はレバー操作量を補正(ステップS406)した後の補正後操作量を示している。
【0064】
図8において、動作制限フラグがオフしており、したがってレバー操作量を補正(ステップS406)しない場合には、直線70に示すように補正後操作量は、レバー操作量に一致する。例えば、レバー操作量が100%であれば、補正後操作量も100%となる。
【0065】
一方、動作制限フラグがオンしている場合に、図8の折れ線71に示すように、補正後操作量に上限値71aを設けることで動作を制限することができる。この態様では、レバー操作量が上限値71a以下であれば、補正後操作量はレバー操作量に一致する。しかし、レバー操作量が上限値71aを超えると、補正後操作量は上限値71aに維持される。この場合、例えば、レバー操作量が100%であっても、補正後操作量は100%未満となる。
【0066】
また、動作制限フラグがオンしている場合に、図8の直線72に示すように、補正後操作量のレバー操作量に対する比率(操作感度)を抑制することにより、動作を制限してもよい。この場合も、例えば、レバー操作量が100%であっても、補正後操作量は100%未満となる。
【0067】
さらに、動作制限フラグがオンしている場合に、図8の直線73に示すように、レバー操作を無効とし、レバー操作量に係わらず補正後操作量をゼロとしてもよい。
【0068】
なお、動作制限フラグがオフした後に、動作の制限の度合いを段階的に、あるいは連続的に弱めながら補正後操作量をレバー操作量に一致させる状態に移行させてもよい。例えば、図8において、操作感度を、直線73で示す値から、直線72で示す状態及び直線72Aで示す値を順次、経由した後に、直線70で示す値に移行させてもよい。動作の制限の度合いを段階的又は連続的に移行させることにより、操作性を向上させることができる。上限値71aを段階的又は連続的に上昇させる場合も、同様の効果を得ることができる。
【0069】
図9は、レバーの操作量の補正によりアクチュエータの出力レベルの増加速度に対する制限を行う方法を例示する図である。図9において、横軸は時間経過を、縦軸はレバー操作量及び補正後操作量を示している。
【0070】
図9において、曲線80はレバー操作量を、直線81及び折れ線82は補正後操作量を示している。
【0071】
図9の曲線80に示すような急激なレバー操作が行われた場合、直線81に示すように、補正後操作量の増加速度を一定値以下に抑制することにより、アクチュエータの出力レベルの増加速度を制限することができる。また、折れ線82に示すように、補正後操作量の増加速度を一定値以下に抑制するとともに、補正後操作量に上限値82aを設けてもよい。
【0072】
このように、補正後操作量の増加速度を抑制することにより、アクチュエータの出力レベルの増加速度に対する制限を行うことができる。
【0073】
図10は、図6に示す処理に代わる動作制限フラグ設定処理を示すフローチャートである。以下、図6の処理と異なる部分について説明する。
【0074】
図10のステップS308Aでは、油圧ポンプ23の出力ポート側の油圧が、所定の圧力値P0よりも小さいか否か判断し、判断が肯定されれば処理をステップS310へ進め、判断が否定されれば処理をステップS304へ進める。油圧ポンプ23の出力ポート側の油圧は、油圧ポンプ23の出力ポート側に圧力センサを取り付けることにより取得できる。
【0075】
ここで、圧力値P0は、マシンコントロールモードに適合したアクチュエータの適切な動作が可能となる油圧の上限値に対応している。
【0076】
図6に示す動作制限フラグ設定処理では、暖機フラグがオンからオフに切り換えられてからの経過時間が所定時間T0を超えること(図6のステップS308)を条件として動作制限フラグをオフしている。これに対し、図10に示す動作制限フラグ設定処理では、油圧ポンプ23の出力ポート側の油圧の低下(油圧が圧力値P0まで低下すること)を条件として(図10のステップS308A)、動作制限フラグをオフしている。これにより、図10に示す動作制限フラグ設定処理では、図6の処理と比較して、より適切なタイミングで動作制限フラグをオフすることができる。
【0077】
図11は、図7に示す処理に代わる動作制限処理を示すフローチャートである。図11に示す動作制限処理は、図10に示す動作制限フラグ設定処理と組み合わせることが効果的であるが、図6に示す動作制限フラグ設定処理と組み合わせることも可能である。
【0078】
以下、図11の動作制限処理について図7の処理と異なる部分について説明する。
【0079】
図11のステップS406Aでは、アクチュエータ制御部12は、油圧ポンプ23の出力ポート側の油圧に基づいて、レバー操作信号が示す操作量を補正する。
【0080】
図12は、ステップS406Aにおけるレバーの操作量の補正の方法を例示する図である。図12において、横軸は手動でレバーを実際に動かした幅(量)を示すレバー操作量を、縦軸はレバー操作量を補正(ステップS406A)した後の補正後操作量を示している。
【0081】
図12において、動作制限フラグがオフしており、したがってレバー操作量を補正(ステップS406)しない場合には、直線70に示すように補正後操作量は、レバー操作量に一致する。例えば、レバー操作量が100%であれば、補正後操作量も100%となる。
【0082】
一方、動作制限フラグがオンしている場合には、例えば、油圧ポンプ23の出力ポート側の油圧に応じて、図12のグラフにおける傾き(操作感度)が異なる直線74、75、76のうちの1つが選択される。
【0083】
この例では、例えば、油圧ポンプ23の出力ポート側の油圧が圧力値P1以上である場合に直線74に従う補正が行われる。ここで、圧力値P1>圧力値P0である。また、油圧ポンプ23の出力ポート側の油圧が圧力値P2以上である場合に直線75に従う補正が行われる。ここで、圧力値P2>圧力値P1である。また、油圧ポンプ23の出力ポート側の油圧が圧力値P3以上である場合に直線76に従う補正が行われる。ここで、圧力値P3>圧力値P2である。
【0084】
このように、油圧ポンプ23の出力ポート側の油圧が高いほど、操作感度が低下し、すなわちアクチュエータの動作の制限度合いが強くなる。このため、油圧ポンプ23の出力ポート側の油圧に応じた適切な補正後操作量が得られるため、アクチュエータの出力レベルを適正化することができる。
【0085】
アクチュエータの動作の制限度合いを油圧ポンプ23の出力ポート側の油圧の実測値に応じて可変する代りに、直前の暖機目標馬力に応じてアクチュエータの動作の制限度合いを可変としてもよい。例えば、図4に示す暖機制御処理において、暖機目標馬力を馬力F1に設定した場合(ステップS208A)には、暖機目標馬力を馬力F2に設定した場合(ステップS210A)よりもアクチュエータの動作の制限度合いを強めることができる。これにより、アクチュエータの動作の制限度合いを適正化することができる。
【0086】
以上のように、本実施例では、暖機制御中に動作指示が検出又は予測された場合に、暖機制御を制限している。このため、暖機運転の有無や強度を自動的に制御することができる。例えば、ロック機構により特定の動作を禁止しているか否かにかかわりなく、暖機運転を行わせることが可能となる。また、本実施例では、暖機制御が制限された場合、所定の制限解除条件が成立するまで、動作指示に応じた第1アクチュエータの動作を制限している。このため、第1アクチュエータの動作に対する暖機運転の影響を効果的に抑制することができる。
【0087】
本発明において、動作が制限される第1アクチュエータの種類(機能)と、動作の制限対象とならないアクチュエータの種類(機能)の組み合わせは任意である。例えば、第1アクチュエータとして、ブーム、アーム、バケットの角度を制御する各アクチュエータの動作を制限する一方で、建設機械の走行(すなわち下部走行体41の動作)に係るアクチュエータ(第3アクチュエータ)の動作は制限しないように制御してもよい。この場合、ブーム、アーム、バケットの角度に係る第1アクチュエータの動作を制限することにより作業に要求される精度を確保しつつ、走行動作に対するオペレータの違和感を抑制することができる。また、第1アクチュエータは、前述の通り、1つに限られるものではない。
【0088】
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0089】
10 制御装置
11 暖機制御部
12 アクチュエータ制御部
13 検出予測部
61 ブームシリンダ
62 アームシリンダ
63 バケットシリンダ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12