(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025019560
(43)【公開日】2025-02-07
(54)【発明の名称】フローティングコネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 12/91 20110101AFI20250131BHJP
【FI】
H01R12/91
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023123226
(22)【出願日】2023-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100117662
【弁理士】
【氏名又は名称】竹下 明男
(74)【代理人】
【氏名又は名称】福市 朋弘
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 勇之介
(72)【発明者】
【氏名】小林 豊
(72)【発明者】
【氏名】松井 元
【テーマコード(参考)】
5E223
【Fターム(参考)】
5E223AB05
5E223AB25
5E223AB26
5E223AB64
5E223BA01
5E223BA07
5E223BB12
5E223CB22
5E223CB24
5E223CB38
5E223CB62
5E223CD01
5E223DA05
5E223DB08
5E223DB11
5E223DB13
5E223EA03
(57)【要約】
【課題】フローティングコネクタにおいて良好な通信性能を得られる技術を提供することを目的とする。
【解決手段】フローティングコネクタは、固定ハウジングと可動ハウジングと信号端子とを備える。前記信号端子は、前記固定ハウジングに保持される第1端部と、前記可動ハウジングに保持される第2端部と、前記第1端部と前記第2端部とを連結する連結部とを含む。前記可動ハウジングの移動時に前記連結部が弾性変形しつつ前記第2端部が前記可動ハウジングに追従可能である。前記第2端部は、前記第1端部における保持力よりも弱い保持力で前記可動ハウジングに保持されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定ハウジングと、
前記固定ハウジングに対して移動可能に設けられる可動ハウジングと、
前記固定ハウジングと前記可動ハウジングとの間に架け渡される信号端子と、
を備え、
前記信号端子は、前記固定ハウジングに保持される第1端部と、前記可動ハウジングに保持される第2端部と、前記第1端部と前記第2端部とを連結する連結部とを含み、
前記可動ハウジングの移動時に前記連結部が弾性変形しつつ前記第2端部が前記可動ハウジングに追従可能であり、
前記第2端部は、前記第1端部における保持力よりも弱い保持力で前記可動ハウジングに保持されている、フローティングコネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のフローティングコネクタであって、
前記第1端部には、前記固定ハウジングに圧入される圧入突起が設けられ、
前記可動ハウジングには、前記信号端子が通される保持孔が形成され、
前記第2端部は、前記保持孔に前記信号端子の長手方向に沿って移動可能に保持される、フローティングコネクタ。
【請求項3】
請求項2に記載のフローティングコネクタであって、
前記保持孔のうち前記信号端子の板厚方向に沿って互いに逆向きの第1内面及び第2内面の間隔が前記信号端子の板厚よりも大きく、
前記第2端部は、板厚方向に曲がりつつ前記第1内面及び前記第2内面の両方に接触している、フローティングコネクタ。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載のフローティングコネクタであって、
前記固定ハウジングにも、前記信号端子が通される保持孔が形成され、
前記固定ハウジングの前記保持孔の延長線上に前記可動ハウジングの前記保持孔が位置する、フローティングコネクタ。
【請求項5】
請求項1に記載のフローティングコネクタであって、
前記第1端部には、前記固定ハウジングに圧入される圧入突起が設けられ、
前記第2端部には、前記可動ハウジングに圧入される圧入突起が設けられていない、フローティングコネクタ。
【請求項6】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のフローティングコネクタであって、
前記信号端子は、直線状に延びる第1延在部と、前記第1延在部に対して交差する方向に直線状に延びる第2延在部とを有し、
前記第1延在部と前記第2延在部とが互いに同じ向きに曲がる複数の曲げ部を介して連結されている、フローティングコネクタ。
【請求項7】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のフローティングコネクタであって、
前記第1端部と前記第2端部とは、相手コネクタとの嵌合方向に沿って互いに離れており、
前記連結部には、前記第1端部から前記第2端部に向けて前記嵌合方向に沿って台形波状に延びる弾性部が設けられている、フローティングコネクタ。
【請求項8】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のフローティングコネクタであって、
前記連結部は、前記第1端部から前記第2端部に向けて直線状に延びる、フローティングコネクタ。
【請求項9】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のフローティングコネクタであって、
前記固定ハウジングと前記可動ハウジングとの間に架け渡される電源端子を備え、
前記電源端子は、前記信号端子の導体断面積よりも大きい導体断面積を有し、前記可動ハウジングに圧入状態で保持されている、フローティングコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フローティングコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基板に固定される固定ハウジングと、前記固定ハウジングに対して移動可能に設けられる可動ハウジングと、前記固定ハウジングと前記可動ハウジングとの間に架け渡されると共に所定間隔で並設される複数の端子と、を備えるフローティングコネクタが開示されている。かかるフローティングコネクタにおいて、可動ハウジングが固定ハウジングに対して移動することによって、基板間のずれや相手方コネクタとの嵌合位置のずれが吸収される。端子のうち可動ハウジングに保持された部分が、可動ハウジングの移動に伴い、端子のうち固定ハウジングに保持された部分に対して移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フローティングコネクタにおいて、信号端子における固定ハウジングに保持された部分と可動ハウジングに保持された部分との間の部分の長さが長くなると、通信性能へ悪影響を及ぼす恐れがある。
【0005】
そこで、フローティングコネクタにおいて良好な通信性能を得られる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のフローティングコネクタは、固定ハウジングと、前記固定ハウジングに対して移動可能に設けられる可動ハウジングと、前記固定ハウジングと前記可動ハウジングとの間に架け渡される信号端子と、を備え、前記信号端子は、前記固定ハウジングに保持される第1端部と、前記可動ハウジングに保持される第2端部と、前記第1端部と前記第2端部とを連結する連結部とを含み、前記可動ハウジングの移動時に前記連結部が弾性変形しつつ前記第2端部が前記可動ハウジングに追従可能であり、前記第2端部は、前記第1端部における保持力よりも弱い保持力で前記可動ハウジングに保持されている、フローティングコネクタである。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、フローティングコネクタにおいて良好な通信性能を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は実施形態1にかかるフローティングコネクタ及びこれを備えるコネクタ装置を示す斜視図である。
【
図2】
図2は
図1に示すコネクタ装置を示す分解斜視図である。
【
図3】
図3は
図1に示すコネクタ装置を示す分解正面図である。
【
図6】
図6は
図1に示すフローティングコネクタを示す分解斜視図である。
【
図7】
図7は実施形態1にかかる信号端子を示す斜視図である。
【
図8】
図8は実施形態1にかかる電源端子を示す斜視図である。
【
図10】
図10は実施形態1にかかる可動ハウジングが移動した様子を示す説明図である。
【
図11】
図11は変形例にかかるコネクタ装置を示す分解斜視図である。
【
図12】
図12は変形例にかかるコネクタ装置を示す分解正面図である。
【
図15】
図15は変形例にかかる信号端子を示す斜視図である。
【
図16】
図16は変形例にかかる電源端子を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
本開示のフローティングコネクタは、次の通りである。
【0011】
(1)固定ハウジングと、前記固定ハウジングに対して移動可能に設けられる可動ハウジングと、前記固定ハウジングと前記可動ハウジングとの間に架け渡される信号端子と、を備え、前記信号端子は、前記固定ハウジングに保持される第1端部と、前記可動ハウジングに保持される第2端部と、前記第1端部と前記第2端部とを連結する連結部とを含み、前記可動ハウジングの移動時に前記連結部が弾性変形しつつ前記第2端部が前記可動ハウジングに追従可能であり、前記第2端部は、前記第1端部における保持力よりも弱い保持力で前記可動ハウジングに保持されている、フローティングコネクタである。
【0012】
(1)のフローティングコネクタによると、第2端部が第1端部における保持力と同じかそれよりも大きい保持力で可動ハウジングに保持されていると、可動ハウジングの移動時に、連結部において弾性変形する部分に大きな応力がかかり得る。この場合、応力分散のために例えば連結部の長さを長くするなどの対応が必要となる。本開示では、第2端部が第1端部における保持力よりも弱い保持力で可動ハウジングに保持されているため、第2端部が可動ハウジングに追従して移動する際、連結部において弾性変形する部分に大きな応力がかかることを抑制できる。これにより、連結部の長さが長くなることを抑制でき、もって通信性能への悪影響を抑制できる。これにより、フローティングコネクタにおいて良好な通信性能が得られる。
【0013】
(2)(1)のフローティングコネクタにおいて、前記第1端部には、前記固定ハウジングに圧入される圧入突起が設けられ、前記可動ハウジングには、前記信号端子が通される保持孔が形成され、前記第2端部は、前記保持孔に前記信号端子の長手方向に沿って移動可能に保持されてもよい。これにより、第2端部が保持孔に対して移動可能であることによって、信号端子に応力がかかったときに、第2端部の特定の部位への応力集中が生じにくい。これにより、応力分散のために信号端子の長さを長くする必要性がより低下する。
【0014】
(3)(2)のフローティングコネクタにおいて、前記保持孔のうち前記信号端子の板厚方向に沿って互いに逆向きの第1内面及び第2内面の間隔が前記信号端子の板厚よりも大きく、前記第2端部は、板厚方向に曲がりつつ前記第1内面及び前記第2内面の両方に接触していてもよい。これにより、可動ハウジングが信号端子の板厚方向に沿った一方側及び他方側のいずれに移動しても、第2端部が可動ハウジングに追従しやすくなる。
【0015】
(4)(2)又は(3)のフローティングコネクタにおいて、前記固定ハウジングにも、前記信号端子が通される保持孔が形成され、前記固定ハウジングの前記保持孔の延長線上に前記可動ハウジングの前記保持孔が位置してもよい。これにより、信号端子を固定ハウジングの保持孔と可動ハウジングの保持孔とに通す作業が容易となる。また、フローティングコネクタの幅寸法を小さくできる。
【0016】
(5)(1)から(4)のいずれか1つのフローティングコネクタにおいて、前記第1端部には、前記固定ハウジングに圧入される圧入突起が設けられ、前記第2端部には、前記可動ハウジングに圧入される圧入突起が設けられていなくてもよい。これにより、互いに保持力の異なる構成を簡易な構造で設けることができる。
【0017】
(6)(1)から(5)のいずれか1つのフローティングコネクタにおいて、前記信号端子は、直線状に延びる第1延在部と、前記第1延在部に対して交差する方向に直線状に延びる第2延在部とを有し、前記第1延在部と前記第2延在部とが互いに同じ向きに曲がる複数の曲げ部を介して連結されていてもよい。通信性能の悪化する要因の一つに、曲げ部における反射による減衰が考えられる。本開示では、第1延在部と第2延在部とが互いに同じ向きに曲がる複数の曲げ部を介して連結されていることによって、複数の曲げ部それぞれの曲げ角度が緩やかになる。これにより、曲げ部における反射波も進行方向に進みやすくなる。これにより、曲げ部における反射による減衰が生じにくくなり、通信性能の悪化を抑制できる。
【0018】
(7)(1)から(6)のいずれか1つのフローティングコネクタにおいて、前記第1端部と前記第2端部とは、相手コネクタとの嵌合方向に沿って互いに離れており、前記連結部には、前記第1端部から前記第2端部に向けて前記嵌合方向に沿って台形波状に延びる弾性部が設けられていてもよい。弾性部が設けられていることにより、第2端部が可動ハウジングに追従する際、弾性部が弾性変形しやすくなる。また、弾性部が第1端部から第2端部に向けて台形波状に延びるため、弾性部が多段の階段状又は嵌合方向に沿って往復するU字状などに形成される場合と比べて、フローティングコネクタの幅寸法を小さくできる。
【0019】
(8)(1)から(6)のいずれか1つのフローティングコネクタにおいて、前記連結部は、前記第1端部から前記第2端部に向けて直線状に延びてもよい。これにより、信号端子の長さをより短くしやすい。
【0020】
(9)(1)から(8)のいずれか1つのフローティングコネクタにおいて、前記フローティングコネクタが前記固定ハウジングと前記可動ハウジングとの間に架け渡される電源端子を備え、前記電源端子は、前記信号端子の導体断面積よりも大きい導体断面積を有し、前記可動ハウジングに圧入状態で保持されていてもよい。これにより、電源端子を介して可動ハウジングをしっかり支持できる。
【0021】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示のフローティングコネクタの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0022】
[実施形態1]
以下、実施形態1にかかるフローティングコネクタについて説明する。
図1は実施形態1にかかるフローティングコネクタ10及びこれを備えるコネクタ装置100を示す斜視図である。
図2はコネクタ装置100を示す分解斜視図である。
図3はコネクタ装置100を示す分解正面図である。
図4は
図3のIV-IV線に沿った断面図である。
図5は
図3のV-V線に沿った断面図である。
図6はフローティングコネクタ10を示す分解斜視図である。
図7は信号端子40を示す斜視図である。
図8は電源端子60を示す斜視図である。各図において、互いに直交するX、Y、Z方向が示されている。
【0023】
本開示において、コネクタ装置100は、フローティングコネクタ10と、フローティングコネクタ10に嵌合する相手コネクタ90とを備える。
図3などに示すように、本実施形態では、フローティングコネクタ10及び相手コネクタ90は、それぞれ基板B1、B2に電気的に接続される基板コネクタであるものとして説明される。フローティングコネクタ10及び相手コネクタ90が嵌合することによって、フローティングコネクタ10の端子と相手コネクタ90の端子とが電気的に接続される。これにより、フローティングコネクタ10及び相手コネクタ90が接続された基板B1、B2同士が電気的に接続される。フローティングコネクタ10及び相手コネクタ90は、基板コネクタ以外のコネクタであってもよい。
【0024】
フローティングコネクタ10及び相手コネクタ90は、嵌合方向に沿って接近移動することによって嵌合する。本実施形態では、嵌合方向は、基板B1、B2の主面に直交する方向であり、各図のZ方向で示される。各図のX方向及びY方向は、嵌合方向に直交する方向であり、基板B1、B2の主面に沿う方向である。以下では、X方向を前後方向、Y方向を左右方向、Z方向を上下方向と呼ぶことがある。なお、フローティングコネクタ10及び相手コネクタ90の嵌合方向は、Z方向以外の方向であってもよい。
【0025】
フローティングコネクタ10は、固定ハウジング20と可動ハウジング30と複数の信号端子40と複数の電源端子60とを備える。固定ハウジング20は固定具80を介して基板B1に固定される。可動ハウジング30は、固定ハウジング20に対して移動可能に設けられる。複数の信号端子40及び複数の電源端子60は固定ハウジング20と可動ハウジング30との間に架け渡される。本実施形態では、可動ハウジング30は、信号端子40及び電源端子60を介して固定ハウジング20に対して浮いた状態で支持される。これにより、可動ハウジング30は、固定ハウジング20に対して移動可能に支持されている。
【0026】
本実施形態では、複数の信号端子40及び複数の電源端子60が、X方向及びY方向に沿って並んでいる。複数の電源端子60は、X方向に沿って、複数の信号端子40の両側に並んでいる。例えば、X方向に沿った信号端子40の並列数は10以上(ここでは80)であり、Y方向に沿った信号端子40の並列数は2である。複数の信号端子40に対してX方向に沿った一方側及び他方側のそれぞれにおいて、電源端子60はX方向及びY方向にそれぞれ2列で並んでいる。もっとも、X方向に沿った各端子40、60の並列数、及び、Y方向に沿った各端子40、60の並列数は、特に限定するものではなく、適宜設定可能である。実施形態の例のように、X方向に沿った信号端子40の並列数がY方向に沿った信号端子40の並列数よりも多いとよい。
【0027】
X方向に沿って隣り合う一対の信号端子40の姿勢は、互いに同じ向きとなっている。Y方向に沿って隣り合う一対の信号端子40の姿勢は、互いに逆向きとなっている。同様に、X方向に沿って隣り合う一対の電源端子60の姿勢は、互いに同じ向きとなっており、Y方向に沿って隣り合う一対の電源端子60の姿勢は、互いに逆向きとなっている。
【0028】
固定ハウジング20は、合成樹脂等の電気絶縁性の材料を用いて成形されている。固定ハウジング20は、上部及び下部が開口する筒状に形成されている。固定ハウジング20は、X方向に沿って延びる一対の壁部21Xと、Y方向に沿って延びる一対の壁部21Yとを含む。一対の壁部21X及び一対の壁部21Yがつながって、開口部の周りを覆う周壁21とされる。周壁21の内部空間に可動ハウジング30の下部が配置される。可動ハウジング30の上部は、固定ハウジング20の上部開口から上方に突出する。X方向及びY方向において、周壁21の内面と可動ハウジング30の外面とは、間隔をあけて対向している。固定ハウジング20は、信号端子保持部22と電源端子保持部24と第1カバー部26と固定具保持部29とを備える。
【0029】
信号端子保持部22は、信号端子40のうち第1端部42を保持する部分である。信号端子保持部22は直方体のブロック状に形成された一対の保持本体23を有する。各保持本体23は、各壁部21Xの内面から周壁21の内部空間に向けて突出する。各保持本体23は、各壁部21XのX方向に沿った中間部、かつ、Z方向に沿った下部に設けられている。一対の保持本体23は、Y方向に沿って間隔をあけて並んでいる。各保持本体23にはZ方向に貫通する第1保持孔23Hが形成されている。
【0030】
第1保持孔23Hは、複数の第1孔部23H1と1つの第2孔部23H2とを有する。1つの保持本体23において複数の第1孔部23H1はX方向に並ぶ。複数の第1孔部23H1には、X方向に並ぶ複数の信号端子40が個別に通される。複数の第1孔部23H1の下方に1つの第2孔部23H2が位置する。複数の第1孔部23H1と1つの第2孔部23H2とはZ方向に沿って連続している。1つの第2孔部23H2には、X方向に並ぶ複数の信号端子40がまとめて通される。
【0031】
電源端子保持部24は、電源端子60のうち第1端部42を保持する部分である。電源端子保持部24は、直方体のブロック状に形成された二対の保持本体25を有する。各保持本体25は、各壁部21Xの内面から周壁21の内部空間に向けて突出する。第1の対の保持本体25と、第2の対の保持本体25との間に、信号端子保持部22の保持本体23が位置する。各保持本体25は、各壁部21XのZ方向に沿った下部に設けられている。各対の保持本体25は、Y方向に沿って間隔をあけて並んでいる。各保持本体25には2つの凹部25Aが形成されている。各凹部25Aは、保持本体25の下面とY方向に沿って内側を向く内面とにかけて形成されている。各凹部25Aに個別に電源端子60が収まる。
【0032】
第1カバー部26は、信号端子40の中間部をY方向外側から覆う。本実施形態では、第1カバー部26は、壁部21Xのうち保持本体23が形成された部分の上側の部分である。第1カバー部26の内面が第1斜面部27とされる。第1斜面部27は、保持本体23の上面から壁部21Xの上面まで連続している。第1カバー部26の内面全体が第1斜面部27とされている。
【0033】
固定具保持部29は、固定具80を保持する部分である。固定具保持部29は、壁部21Yの外面に形成されている。固定具保持部29は、固定具80を上方から差込可能なスロット状に形成されている。
【0034】
可動ハウジング30は、合成樹脂等の電気絶縁性の材料を用いて成形されている。可動ハウジング30は、Y方向よりもX方向に長いブロック状に形成されている。可動ハウジング30は、信号端子保持部31と電源端子保持部34と第2カバー部36とガイド部39とを含む。
【0035】
信号端子保持部31は、信号端子40のうち第2端部48を保持する部分である。信号端子保持部31は、ベース部32とリブ33とを含む。ベース部32はY方向に並ぶ一対の信号端子40の間に位置する。リブ33は、ベース部32の下部からY方向外側に向けて突出する。ベース部32の上部のうちY方向外側を向く外面には複数の保持溝32Gが形成されている。リブ33には複数の第2保持孔33Hが形成されている。複数の保持溝32Gと複数の第2保持孔33Hとは、同数設けられ、1対1で対応している。各保持溝32Gと各第2保持孔33HとがZ方向に連続している。複数の信号端子40の第2端部48の下部は、複数の第2保持孔33Hに個別に通される。複数の信号端子40の第2端部48の上部は、複数の保持溝32Gに個別に収められる。
【0036】
電源端子保持部34は電源端子60の第2端部64を保持する。電源端子保持部34は、直方体のブロック状に形成された2つの保持本体35を有する。2つの保持本体35の間に信号端子保持部31が配置される。各保持本体35には複数の保持孔35Hが形成されている。複数の電源端子60が複数の保持孔35Hに個別に通される。
【0037】
第2カバー部36は、ベース部32の下部から下方に突出する。第2カバー部36のY方向を向く外面に第2斜面部37が設けられる。第2斜面部37の上部はリブ33の下面に連続している。
【0038】
ガイド部39は、可動ハウジング30のX方向に沿った両端にそれぞれ設けられる。2つのガイド部39の間に、2つの電源端子保持部34が位置し、2つの電源端子保持部34の間に1つの信号端子保持部31が位置する。ガイド部39は、互いに離れた位置にあるフローティングコネクタ10と相手コネクタ90とが嵌合方向に沿って接近したときに、相手コネクタ90に最初に接触する部分である。ガイド部39が設けられることによって、端子同士の接触前に、X方向及びY方向におけるフローティングコネクタ10の可動ハウジング30と相手コネクタ90との位置ずれが矯正される。
【0039】
信号端子40及び電源端子60のそれぞれは、金属等の導電性材料の平板がプレス加工(打ち抜き加工及び曲げ加工)されることによって、所定形状に形成されている。かかる平板は、YZ平面において曲がりつつ、Z方向に長尺となるように概ねZ方向に延びている。かかる平板の横断面は、例えば、長方形状である。長方形状の横断面における短尺方向が板厚方向、長尺方向が板幅方向である。信号端子40及び電源端子60のそれぞれは、平板の板幅方向がX方向に沿う姿勢で配置される。また、かかる平板がZ方向に平行に延びる部分におけるY方向の平板の厚みが板厚である。
【0040】
信号端子40は、固定ハウジング20に保持される第1端部42と、可動ハウジング30に保持される第2端部48と、第1端部42と第2端部48とを連結する連結部54とを含む。第1端部42と第2端部48とが嵌合方向(ここではZ方向)に沿って互いに離れている。連結部54は嵌合方向に沿って延びる。可動ハウジング30がX方向又はY方向に沿って移動する時に、連結部54が弾性変形しつつ第2端部48が可動ハウジング30に追従可能である。
【0041】
第1端部42は、基板B1に接続される基板接続部43と、固定ハウジング20に保持される第1被保持部44とを有する。基板接続部43は、固定ハウジング20の下方に露出する。基板接続部43は、基板B1の主面に沿って延びる形状に形成されて、基板B1に表面実装可能に形成されている。基板接続部43は、基板B1にスルーホール接続可能なピン形状などに形成されていてもよい。第1被保持部44は、固定ハウジング20の第1保持孔23Hに圧入保持される。第1被保持部44において、平板の長手方向に沿った2箇所に圧入突起45が設けられている。各圧入突起45は板幅方向(X方向)に沿った両外縁から外側に突出する。2箇所の圧入突起45のうち一方は第1孔部23H1に収まる部分に設けられ、他方は第2孔部23H2に収まる部分に設けられている。
【0042】
第1端部42には、3つの直交曲げ部46が設けられている。3つの直交曲げ部46は、信号端子40の長手方向に沿って互いに間隔をあけた位置に設けられている。3つの直交曲げ部46は、曲げの内周側となる平板の主面が順に逆となるように設けられている。3つの直交曲げ部46のうち最も下部に位置する1番目の直交曲げ部46と、Y方向に沿って最も内側に位置する3番目の直交曲げ部46とは、平板のうちY方向に沿って外向きの主面が内周側となるように曲がっている。真ん中の2番目の直交曲げ部46は、平板のうちY方向に沿って内向きの主面が内周側となるように曲がっている。なお、基板接続部43に連なる1番目の直交曲げ部46は、90度よりもわずかに小さい角度で曲がっているが、90度プラスマイナス10度程度の曲げ部も直交曲げ部46とみなすことができる。2番目の直交曲げ部46と3番目の直交曲げ部46とは、ほぼ90度で曲がっている。
【0043】
ここでは、第2端部48は、第1端部42における保持力よりも弱い保持力で可動ハウジング30に保持されている。ここでは第1端部42には固定ハウジング20に圧入される圧入突起45が設けられている。第2端部48には第1端部42の圧入突起45のように板幅方向に突出して可動ハウジング30に圧入される圧入突起45が設けられていない。これにより、第2端部48は、第1端部42における保持力よりも弱い保持力で可動ハウジング30に保持されている。
【0044】
固定ハウジング20における第1端部42の保持力及び可動ハウジング30における第2端部48の保持力は、例えば、嵌合方向に沿った保持力である。例えば、嵌合方向に沿って第1端部42は第2端部48よりも移動困難に保持される。例えば、第1端部42は可動ハウジング30の移動時に生じる力によっても嵌合方向に沿って移動不可に固定ハウジング20に保持されてもよい。これに対して、第2端部48は、可動ハウジング30の移動時に生じる力によって嵌合方向に沿って移動可能に可動ハウジング30に保持されてもよい。
【0045】
第2端部48は、相手コネクタ90の端子と接続される端子部49と、可動ハウジング30に保持される第2被保持部51とを有する。端子部49は、板厚方向に曲がった板ばね形状部50を有する。第2被保持部51の主部は、板ばね形状部50よりも下部であり、ここでは第2保持孔33Hに挿通されている部分を含む。
【0046】
信号端子40の一端から他端に向けて、基板接続部43、第1被保持部44、連結部54、第2被保持部51、端子部49の順に連なっている。フローティングコネクタ10の組立時に信号端子40は、端子部49側から順に第1保持孔23H及び第2保持孔33Hに通される。端子部49に板ばね形状部50が設けられていることによって、Y方向に沿った端子部49の寸法は、板厚よりも大きい。当該端子部49を通すため、Y方向に沿った各保持孔23H、33Hの寸法は、板厚よりも大きい。
【0047】
第2保持孔33Hのうち信号端子40の板厚方向(ここではY方向)に沿って互いに逆向きの内面を第1内面33A及び第2内面33Bとする。ここでは、保持溝32Gの底面と連なる面を第1内面33Aとする。第1内面33A及び第2内面33Bの間隔が信号端子40の板厚よりも大きい。第1内面33A及び第2内面33Bの間隔が、Y方向に沿った板ばね形状部50の寸法よりも大きい。これにより、板ばね形状部50を有する端子部49が第2保持孔33Hを通過する際、第1内面33Aと第2内面33Bとの両面に接触することが抑制される。第2被保持部51は、板厚方向に曲がりつつ第1内面33A及び第2内面33Bの両方に接触している。従って、ここではY方向に沿った第2被保持部51の寸法は、Y方向に沿った板ばね形状部50の寸法よりも大きい。なお、第2被保持部51は、例えば、第1内面33A及び第2内面33Bの両方に摺動可能に接触している。
【0048】
第2被保持部51は2つの曲げ部52を有する。2つの曲げ部52は、互いに逆向きの主面が内周側となるように曲がっている。第2被保持部51が2つの曲げ部52を有することで、板厚よりも大きい第2保持孔33Hの互いに逆向きの第1内面33A及び第2内面33Bの両方に第2被保持部51が接触可能である。第2被保持部51のうち2つの曲げ部52よりも上部が第1内面33A又はこれに連続する保持溝32Gの底面に接しつつ上方に延びる。第2端部48のうち第2被保持部51からばね形状部50に至る部分は、第2被保持部51の上端から保持溝32Gに沿いつつ真っすぐ上方に延びる。当該部分のX方向両側が保持溝32Gの両側面によって隣の信号端子40と仕切られている。第2被保持部51のうち下方の曲げ部52よりも下部が第2内面33Bに接しつつ下方に延びる。
【0049】
なお、ここでは第1内面33Aと保持溝32Gの底面とが連続していることから、保持溝32Gの底面も第1内面33Aの延長部分とみなせる。従って、第2被保持部51は、第2保持孔33Hの内部で第1内面33Aに接している場合のほか、第2保持孔33Hの外部で保持溝32Gの底面に接する場合も第1内面33Aに接しているものとみなす。また、第2被保持部51の2つの曲げ部52が共に第2保持孔33Hの内部にあってもよい。第2被保持部51の2つの曲げ部52は、共に第2保持孔33Hの上方の外部にあってもよい。第2被保持部51の2つの曲げ部52のうち下方の曲げ部52が第2保持孔33Hの内部にあり、上方の曲げ部52が第2保持孔33Hの上方の外部にあってもよい。2つの曲げ部52と、2つの曲げ部52の間でZ方向に対して斜めに延びる部分とは、Z方向に真っすぐ延びる信号端子40のY方向に沿った位置をオフセットするオフセット部ととらえることもできる。
【0050】
連結部54は、第1被保持部44の上端と第2被保持部51の下端とを接続する。第1被保持部44の上端と第2被保持部51の下端とはY方向に沿って互いに同じ位置に位置する。連結部54の下部は、第1被保持部44の上端から真っすぐ上方に延びる。連結部54の上部は、第2被保持部51の下端から真っすぐ下方に延びる。連結部54の長手方向に沿った中間部には弾性部55が設けられている。
【0051】
弾性部55は、第1端部42から第2端部48に向けて台形波状に延びる。
図4に示す例では、かかる台形は、等脚台形状である。台形は、等脚台形以外の形状であってもよい。弾性部55は、階段状など、台形波状以外の形状であってもよい。
【0052】
弾性部55は2つのオフセット部55A、55Bを有するとみなすこともできる。オフセット部55A、55Bは、Z方向に真っすぐ延びる信号端子40のY方向に沿った位置をオフセットする。2つのオフセット部55A、55Bのうち第1端部42側に位置する方を第1オフセット部55Aとし、第2端部48側に位置する方を第2オフセット部55Bとする。連結部54が第1端部42から第2端部48に向けてZ方向に延びる位置は、第1オフセット部55AによってY方向外側から内側に移り、第2オフセット部55BによってY方向内側から外側に移る。Y方向に沿って、第1オフセット部55Aのオフセット量と、第2オフセット部55Bのオフセット量とは互いに同じである。また、第1オフセット部55A及び第2オフセット部55Bは、同様の角度の斜面を有するように設けられている。
【0053】
第1オフセット部55Aは、第2被保持部51のオフセット部と同じ向きに設けられる。Y方向に沿って、第1オフセット部55Aのオフセット量と、第2被保持部51のオフセット部のオフセット量とは互いに同じである。ここでは第1オフセット部55Aの斜面は、第2被保持部51のオフセット部の斜面よりも急斜面となるように設けられている。第1オフセット部55A及び第2被保持部のオフセット部は、同様の角度の斜面を有するように設けられていてもよい。
【0054】
固定ハウジング20及び可動ハウジング30のそれぞれに、信号端子40が通される保持孔23H、33Hが形成されている。固定ハウジング20の第1孔部23H1の延長線上に可動ハウジング30の第2保持孔33Hが位置する。固定ハウジング20の第1孔部23H1と可動ハウジング30の第2保持孔33Hとは、ガイド面を除いてXY平面において互いに同じ形状で同じ大きさである。第1孔部23H1と第2保持孔33Hとは、XY平面上の位置が互いに同じであり、嵌合方向から見て重なる。例えば、X方向における第1孔部23H1及び第2保持孔33Hの大きさは、平板のうち圧入突起45のない部分における板幅と同程度の大きさ(例えば、同じかそれよりもわずかに小さい大きさ)である。Y方向における第1孔部23H1及び第2保持孔33Hの大きさは、第2被保持部51及び弾性部55におけるY方向のオフセット量と同じである。
【0055】
連結部54は、嵌合方向と交差する第1方向(ここではY方向)に沿った一方側から固定ハウジング20の第1カバー部26に覆われ、他方側から可動ハウジング30の第2カバー部36に覆われる。第1カバー部26又は第2カバー部36は、嵌合方向(ここではZ方向)に対して傾斜する斜面部を有する。第1カバー部26に斜面部として第1斜面部27が設けられている。第2カバー部36に斜面部として第2斜面部37が設けられている。
図6に示すように、第1斜面部27及び第2斜面部37には凹凸形状が設けられず、第1斜面部27及び第2斜面部37は平滑な面であってもよい。
【0056】
第1方向に沿った第1斜面部27と第2斜面部37との間隔が、第2端部48側から第1端部42側に向けて徐々に広がる。第2斜面部37の下端は、第1斜面部27の下端よりも上方に位置する。第2斜面部37は、第1斜面部27よりもZ方向に対する傾斜角度が大きい急斜面とされている。第2カバー部36は第2斜面部37の下方に連なる垂直面部38を有する。垂直面部38の下端は、第1斜面部27の下端よりも下方に延びる。垂直面部38の下端は、固定ハウジング20の一対の保持本体23の間に位置する。
【0057】
電源端子60は、信号端子40の導体断面積よりも大きい導体断面積を有する。電源端子60は、可動ハウジング30に圧入状態で保持されている。ここでは電源端子60は固定ハウジング20にも圧入状態で保持されている。電源端子60も、信号端子40と同様に、固定ハウジング20に保持される第1端部62と、可動ハウジング30に保持される第2端部64と、第1端部62と第2端部64とを連結する連結部66とを有する。
【0058】
電源端子60の第1端部62は、信号端子40の第1端部42よりもY方向に長尺とされる。電源端子60の第1端部62にも3つの直交曲げ部が設けられ、1番目の直交曲げ部と3番目の直交曲げ部との間の部分が保持本体25の凹部25Aに収まっている。例えば、第1端部62は固定ハウジング20の電源端子保持部24に圧入保持される。
【0059】
電源端子60の第2端部64は、第1端部62よりも板厚方向の寸法が大きい。例えば、第2端部64において電源端子60を構成する平板が折り返されて重ねられて板厚方向の寸法が大きくされる。例えば、第2端部64は可動ハウジング30の電源端子保持部34に圧入保持される。第2端部64はZ方向に真っすぐ延びている。相手電源端子97にばね形状部98が設けられており、当該電源端子60にはばね形状部は設けられていない。もっとも、当該電源端子60にばね形状部が設けられていてもよい。
【0060】
電源端子60の連結部66にも弾性部67が設けられている。弾性部67は上記弾性部55と同様に嵌合方向に沿って台形波状に延びる。さらに電源端子60の延在方向に沿った中間部には、平板の板幅方向中間部に延在方向に沿って延びるスリット68が形成されている。これにより、電源端子60の延在方向に沿った中間部では、平板が板幅方向に分割されている。ここでは1つの平板に2つの平行なスリット68が設けられ、1つの平板が3分割されている。1つの平板に1つのスリットが設けられ、1つの平板が2分割されていてもよい。1つの平板に3つ以上の平行なスリット68が設けられ、1つの平板が4つ以上に分割されていてもよい。スリット68は、連結部66の延在方向に沿って全体にわたって形成されている。スリット68は、第1端部62の一部及び第2端部64の一部にも達している。
【0061】
可動ハウジング30は、電源端子保持部34の下方において電源端子60の周囲を個別に囲っている。
図5に示すように、電源端子保持部34の保持孔35Hが広がりつつ可動ハウジング30の下端まで延びる。可動ハウジング30は、各電源端子60の連結部66の四方を連結部66と間隔をあけつつ囲う周壁部35Aを有する。可動ハウジング30は、電源端子保持部34の上方において複数の電源端子60の周囲をまとめて囲っている。可動ハウジング30は、電源端子保持部34の上部の外縁から上方に延びる周壁部35Bを有する。
【0062】
図9は
図7の領域IXの拡大側面図である。
図9は、1つの直交曲げ部46の拡大図である。
【0063】
図9に示すように、信号端子40は、直線状に延びる第1延在部56と、第1延在部56に対して交差する方向に直線状に延びる第2延在部57とを有する。第1延在部56と第2延在部57とが互いに同じ向きに曲がる複数の曲げ部を介して連結されている。複数の曲げ部の間は、直線状に延びる延在部とされる。例えば、上記直交曲げ部46では、第1延在部56と第2延在部57との間に介在して第1延在部56及び第2延在部57のそれぞれと交差する方向に直線状に延びる第3延在部58が設けられる。第1延在部56と第3延在部58との間に1つの曲げ部C1が介在されている。第2延在部57と第3延在部58との間に1つの曲げ部C2が介在されている。そして、曲げ部C1と曲げ部C2とは平板状の第3延在部58によって連結されている。ここでは、第1延在部56と第2延在部57との間に2つの曲げ部C1、C2が設けられているが、3つ以上の曲げ部が設けられていてもよい。
【0064】
図9において、仮想線で示されている曲延在部59は、第1延在部56及び第2延在部57を、第3延在部58の代わりに一定の曲げRで連結した仮想の延在部である。曲延在部59は円弧であり、第1延在部56及び第2延在部57は当該円弧の接線である。ここでは、2つの曲げ部C1、C2の外周側における第1延在部56から第2延在部57までの信号端子40の外面は、C面取り状の面とされる。これに対して、仮想の曲延在部59の外周側における第1延在部56から第2延在部57までの信号端子40の面は、R面取り状の面とされる。
図9に示すように、第3延在部58の外面は、曲げ延在部59の外面よりも内周側に位置する。このように、第1延在部56と第2延在部57とが1つ以上の直線状の延在部を介して連結され、当該1つ以上の直線状の延在部の外周側の面が、仮想の曲延在部59の外周側の面よりも内側に位置するように当該1つ以上の直線状の延在部が設けられていると良い。
【0065】
図9において、仮想線で示されている線分L1、L2、L3は、それぞれ延在部56、57、58の延在方向に沿う仮想の線である。角度A1は、第1延在部56に対する第2延在部57の曲げ角度である。ここで第1延在部56に対する第2延在部57の曲げ角度とは、第1延在部56が直線状に延在していたと仮定した場合に第2延在部57の延在方向にするまで曲げ角度である。以下の曲げ角度も同様である。また角度A2は、第1延在部56に対する第3延在部58の曲げ角度であり、角度A3は、第2延在部57に対する第3延在部58の曲げ角度である。角度A2、A3が、角度A1よりも小さい。
図9に示す例では、角度A1は直交する角度である。角度A1は、直交以外の角度であってもよい。角度A2と角度A3とは、互いに同じ角度であってもよいし、異なっていてもよい。角度A2と角度A3とは、なるべく差が小さいことが好ましい。角度A1が直交する角度である場合、角度A2と角度A3とは、例えば、45度プラスマイナス5度の範囲であると良い。
【0066】
信号端子40には、第2被保持部51の曲げ部52を含む複数の曲げ部が設けられている。これら複数の曲げ部の角度は、角度A2、A3のように、45度プラスマイナス5度よりも小さい角度であることが好ましい。ここでは、弾性部55のオフセット部55A、55Bにかかる曲げ部、第2被保持部51の曲げ部52、及び、ばね形状部50にかかる曲げ部における角度は、角度A2、A3のように、45度プラスマイナス5度よりも小さい角度である。例えば、信号端子40を50度よりも大きく曲げたい場合に、第3延在部58のように短い直線状の延在部を介在させることによって、各曲げ部52の曲げ角度が45度プラスマイナス5度よりも小さくなるように設けられると良い。
【0067】
<相手コネクタ90について>
相手コネクタ90は、相手ハウジング91と、複数の相手信号端子95と、複数の相手電源端子97とを有している。相手ハウジング91は、複数の相手端子95、97を複数の端子40、60と同じ配列に保持している。相手ハウジング91は、相手信号端子95を保持する信号端子保持部92と、相手電源端子97を保持する電源端子保持部93と、ガイド部39と接触するガイド受部94とを有する。相手信号端子95はばね形状部96を有する。相手電源端子97はばね形状部98を有すると共に電源端子60の第2端部64が挿入される筒状に形成されている。可動ハウジング30の信号端子保持部31と相手コネクタ90の信号端子保持部92とが嵌合するとともに、可動ハウジング30の電源端子保持部34と相手コネクタ90の電源端子保持部93とが嵌合する。これらの嵌合前に、ガイド部39とガイド受部94とが接触することによってX方向及びY方向の位置ずれが矯正される。
【0068】
<フローティングコネクタ10と相手コネクタ90との嵌合について>
フローティングコネクタ10と相手コネクタ90とを接続する際、作業者は、フローティングコネクタ10と相手コネクタ90とを嵌合方向に沿って相対移動させる。ここでは基板B1、B2同士を嵌合方向に沿って相対移動させる。
【0069】
フローティングコネクタ10と相手コネクタ90とが接近すると、ガイド部39が相手コネクタ90のガイド受部94に接触してガイドされる。このとき、X方向及びY方向に沿ってフローティングコネクタ10と相手コネクタ90との位置にずれが生じていた場合に、当該位置ずれがある方向に可動ハウジング30が移動する。可動ハウジング30が移動すると、信号端子40の第2端部48及び電源端子60の第2端部64が、可動ハウジング30との接触面において可動ハウジング30から力を受ける。例えば、可動ハウジング30が
図4に示す状態から左に移動すると、左側の信号端子40は第1内面33A及び保持溝32Gの底面から左向きの力を受ける。右側の信号端子40は第2内面33Bから左向きの力を受ける。これにより、信号端子40の弾性部55及び電源端子60の弾性部67が弾性変形し、信号端子40の第2端部48及び電源端子60の第2端部64が、可動ハウジング30に追従する。以上より、X方向及びY方向に沿ったフローティングコネクタ10と相手コネクタ90との位置ずれが矯正される。
【0070】
ここで、可動ハウジング30の移動時に、信号端子40が可動ハウジング30から力を受けて弾性変形する場合について考える。
【0071】
第1端部42及び第2端部48のそれぞれに圧入突起が設けられることによって、第1端部42及び第2端部48が同様の保持力で保持されている仮想の場合について考える。この場合、可動ハウジング30が固定ハウジング20に対して移動する際、第1端部42のうち圧入突起が設けられた部分は固定ハウジング20の所定の位置に保持され、第2端部48のうち圧入突起が設けられた部分は可動ハウジング30の所定の位置に保持される。従って、第1端部42の圧入突起と第2端部48の圧入突起との間の部分に、端子延在方向に沿う比較的大きな引張応力が生じる。特に第2端部48が移動する側であるため、第2端部48の圧入突起の付近に、端子延在方向に沿う比較的大きな引張応力が生じる。
【0072】
これに対して、ここでは可動ハウジング30における第2端部48の保持力が、固定ハウジング20における第1端部42の保持力よりも小さい。このため、第1端部42及び第2端部48のそれぞれに圧入突起が設けられている仮想の場合と比べて、第1端部42の圧入突起45よりも第2端部48側において、端子延在方向に沿う引張応力が小さくなる。
【0073】
そして、第2端部48が第2保持孔33Hに対して嵌合方向に移動可能であると、第1端部42の圧入突起45よりも第2端部48側において、第2端部48が第2保持孔33Hに対して嵌合方向に移動することによって端子延在方向に沿う引張応力を逃がすことができる。これにより、端子延在方向に沿う引張応力がより小さくなる。
【0074】
信号端子40の第2端部48及び電源端子60の第2端部64が、可動ハウジング30に追従した状態で、信号端子保持部31、92同士が嵌合するとともに、電源端子保持部34、93同士が嵌合する。これにより、信号端子40、95同士が電気的に接続するとともに、電源端子60、97同士が電気的に接続する。
【0075】
相手信号端子95のばね形状部96は、信号端子40のばね形状部50と第2被保持部51との間に接触する。信号端子40のばね形状部50と第2被保持部51との間が相手信号端子95のばね形状部96の長さよりも長い。基板B1、B2同士のZ方向の位置がずれていた場合、相手信号端子95のばね形状部96がZ方向に沿って信号端子40と接触する位置が変わる。また、電源端子60の端子部は直線状に延びている。相手電源端子97の筒部への電源端子60の端子部の挿入量は、変更可能である。基板B1、B2同士のZ方向の位置がずれていた場合、相手電源端子97への電源端子60の挿入量が変わる。これらより、Z方向の位置ずれも吸収される。
【0076】
図10は可動ハウジング30が移動した様子を示す説明図である。
図10において、可動ハウジング30がY方向に沿って左側に移動している。
図10において、Y方向における可動ハウジング30の移動量がほぼ最大の状態である。
【0077】
図10に示すように、第1カバー部26及び第2カバー部36がY方向に沿って互いに接近しつつ固定ハウジング20に対する可動ハウジング30の移動量が最大となった状態で、連結部54は嵌合方向に沿ったいずれの位置においてもY方向に沿って第1カバー部26又は第2カバー部36と離れている。
図10に示す例では、連結部54は嵌合方向に沿ったいずれの位置においてもY方向に沿って第1カバー部26及び第2カバー部36と離れている。
【0078】
本実施形態では、信号端子40、第1カバー部26及び第2カバー部36が左右に一組ずつ、対称な形状で設けられている。本実施形態では、左右の2組の第1カバー部26及び第2カバー部36のうち一方の組がY方向に沿って互いに接近すると、他方の組の第1カバー部26及び第2カバー部36がY方向に沿って互いに離れる。
図10に示す例では、左側の組の第1カバー部26及び第2カバー部36がY方向に沿って互いに接近しつつ固定ハウジング20に対する可動ハウジング30の移動量が最大となった状態である。このとき、左側の信号端子40の連結部54、66は嵌合方向に沿ったいずれの位置においてもY方向に沿って第1カバー部26又は第2カバー部36と離れている。
【0079】
なお、
図4は、可動ハウジング30が初期位置にある状態(位置ずれのないノミナルの状態)である。
図4に示すように、可動ハウジング30が初期位置にある状態で、信号端子40の連結部54は嵌合方向に沿ったいずれの位置においてもY方向に沿って第1カバー部26及び第2カバー部36と離れている。従って、この状態よりも第1カバー部26及び第2カバー部36がY方向に沿って互いに離れる状態(
図10の右側の状態)では、当然、信号端子40の連結部54は嵌合方向に沿ったいずれの位置においてもY方向に沿って第1カバー部26及び第2カバー部36と離れた状態となる。
【0080】
<効果等>
以上のように構成されたフローティングコネクタ10によると、信号端子40の第2端部48が第1端部42における保持力よりも弱い保持力で可動ハウジング30に保持されている。ここで、第2端部48が第1端部42における保持力と同じかそれよりも大きい保持力で可動ハウジング30に保持されていると、可動ハウジング30の移動時に、連結部54において弾性変形する部分に大きな応力がかかり得る。この場合、応力分散のために例えば連結部54の長さを長くするなどの対応が必要となる。本開示では、第2端部48が第1端部42における保持力よりも弱い保持力で可動ハウジング30に保持されているため、第2端部48が可動ハウジング30に追従して移動する際、連結部54において弾性変形する部分に大きな応力がかかることを抑制できる。これにより、連結部54の長さが長くなることを抑制でき、もって通信性能への悪影響を抑制できる。これにより、フローティングコネクタ10において良好な通信性能が得られる。
【0081】
また、信号端子40の第2端部48は、第2保持孔33Hに信号端子40の長手方向に沿って移動可能に保持される。これにより、第2端部48が第2保持孔33Hに対して移動可能であることによって、信号端子40に応力がかかったときに、第2端部48の特定の部位への応力集中が生じにくい。これにより、応力分散のために信号端子40の長さを長くする必要性がより低下する。
【0082】
また、第2端部48は、第2保持孔33Hの内部で曲がりつつ第1内面33A及び第2内面33Bの両方に接触している。これにより、可動ハウジング30が信号端子40の板厚方向に沿った一方側及び他方側のいずれに移動しても、第2端部48が可動ハウジング30に追従しやすくなる。
【0083】
また、固定ハウジング20の第1孔部23H1の延長線上に可動ハウジング30の第2保持孔33Hが位置する。これにより、フローティングコネクタ10の組立時に信号端子40を固定ハウジング20の第1保持孔23Hと可動ハウジング30の第2保持孔33Hとに通す作業が容易となる。また、保持孔23H、33HがY方向に離れている場合と比べて、フローティングコネクタ10の幅寸法(Y方向の寸法)を小さくできる。
【0084】
また、信号端子40の第1端部42には固定ハウジング20に圧入される圧入突起45が設けられ、第2端部48には可動ハウジング30に圧入される圧入突起45が設けられていない。これにより、互いに保持力の異なる構成を簡易な構造で設けることができる。
【0085】
また、通信性能の悪化する要因の一つに、曲げ部52における反射による減衰が考えられる。本開示では、第1延在部56と第2延在部57とが互いに同じ向きに曲がる複数の曲げ部52を介して連結されていることによって、複数の曲げ部52それぞれの曲げ角度が緩やかになる。これにより、曲げ部52における反射波も進行方向に進みやすくなる。これにより、曲げ部52における反射による減衰が生じにくくなり、通信性能の悪化を抑制できる。
【0086】
また、信号端子40の連結部54に弾性部55が設けられていることにより、第2端部48が可動ハウジング30に追従する際、弾性部55が弾性変形しやすくなる。また、弾性部55が第1端部42から第2端部48に向けて台形波状に延びるため、弾性部55が多段の階段状又は嵌合方向に沿って往復するU字状などに形成される場合と比べて、フローティングコネクタ10の幅寸法(Y方向に沿った寸法)を小さくできる。
【0087】
また、信号端子40の導体断面積よりも大きい導体断面積を有する電源端子60が、可動ハウジング30に圧入されている。これにより、電源端子60を介して可動ハウジング30をしっかり支持できる。
【0088】
[付記]
変形例にかかるフローティングコネクタ及びこれを備えるコネクタ装置について説明する。
図11は変形例に係るコネクタ装置200を示す分解斜視図である。
図12は変形例に係るコネクタ装置200を示す分解正面図である。
図13は
図12のXI-XI線に沿った断面図である。
図14は
図12のXII-XII線に沿った断面図である。
図15は信号端子140を示す斜視図である。
図16は電源端子160を示す斜視図である。なお、以下の説明において、これまで説明したものと同様構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0089】
本変形例に係るフローティングコネクタ110では、信号端子140の連結部154が、第1端部42から第2端部48に向けて直線状に延びる。これにより、信号端子140の長さをより短くしやすい。さらに、固定ハウジング120における第1斜面部127と可動ハウジング130における第2斜面部137とが互いに平行である。これにより、第1斜面部127と第2斜面部137とが連結部154とより近い位置で連結部154を覆うことができる。
【0090】
また、フローティングコネクタ110では、電源端子160の第1端部62と第2端部64とがZ方向ではなく、Y方向に離れている。そして電源端子160の弾性部167がU字状に形成されている。
【0091】
これまで、可動ハウジング30における第2端部48の保持力が、固定ハウジング20における第1端部42の保持力よりも弱いものとして説明されたが、このことは必須の構成ではない。可動ハウジング30における第2端部48、64の保持力が、固定ハウジング20における第1端部42、62の保持力と同じかそれよりも強くてもよい。上記圧入突起45が第1端部42、62及び第2端部48、64の両方に設けられていてもよい。
【0092】
これまで、固定ハウジング20が第1カバー部26を有し、可動ハウジング30が第2カバー部36を有し、第1カバー部26又は第2カバー部36が斜面部を有するものとして説明されたが、このことは必須の構成ではない。例えば、第1カバー部26及び第2カバー部36のうちいずれか一方、又は両方が設けられていなくてもよい。また、第1カバー部26及び第2カバー部36が両方設けられる場合に、第1カバー部26及び第2カバー部36の両方が斜面部を有していなくてもよい。
【0093】
なお、上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0094】
10、110 フローティングコネクタ
20、120 固定ハウジング
21 周壁
21X、21Y 壁部
22 信号端子保持部
23 保持本体
23H 第1保持孔
23H1 第1孔部
23H2 第2孔部
24 電源端子保持部
25 保持本体
25A 凹部
26 第1カバー部
27、127 第1斜面部
29 固定具保持部
30、130 可動ハウジング
31 信号端子保持部
32 ベース部
32G 保持溝
33 リブ
33A 第1内面
33B 第2内面
33H 第2保持孔
34 電源端子保持部
35 保持本体
35A、35B 周壁部
35H 保持孔
36 第2カバー部
37、137 第2斜面部
38 垂直面部
39 ガイド部
40、140 信号端子
42 第1端部
43 基板接続部
44 第1被保持部
45 圧入突起
46 直交曲げ部
48 第2端部
49 端子部
50 ばね形状部
51 第2被保持部
52 曲げ部
54、154 連結部
55 弾性部
55A、55B オフセット部
56 第1延在部
57 第2延在部
58 第3延在部
60、160 電源端子
62 第1端部
64 第2端部
66 連結部
67、167 弾性部
68 スリット
80 固定具
90 相手コネクタ
91 相手ハウジング
92 信号端子保持部
93 電源端子保持部
94 ガイド受部
95 相手信号端子
96 ばね形状部
97 相手電源端子
98 ばね形状部
100、200 コネクタ装置
B1、B2 基板
C1、C2 曲げ部