(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025019583
(43)【公開日】2025-02-07
(54)【発明の名称】棒状化粧材保持部材及び棒状化粧材繰出容器
(51)【国際特許分類】
A45D 40/20 20060101AFI20250131BHJP
【FI】
A45D40/20 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023123263
(22)【出願日】2023-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000252090
【氏名又は名称】鈴野化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大庭 淳
(57)【要約】
【課題】棒状化粧材の芯抜けや芯折れの発生を防止する。
【解決手段】繰出容器1内において棒状化粧材Aを保持する芯チャック部材10は、棒状化粧材Aの外周面を保持する化粧材保持部11と、化粧材保持部11が立設するベース部15と、を備え、化粧材保持部11は、棒状化粧材Aの軸方向に沿って延び棒状化粧材Aの外周面を保持する複数の爪片12を有し、複数の爪片12の少なくとも一つは、軸方向へ弾性変形可能なばね部12aを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状化粧材繰出容器内において棒状化粧材を保持する棒状化粧材保持部材であって、
前記棒状化粧材の外周面を保持する化粧材保持部と、
前記化粧材保持部が立設するベース部と、
を備え、
前記化粧材保持部は、前記棒状化粧材の軸方向に沿って延び前記棒状化粧材の前記外周面を保持する複数の爪片を有し、
前記複数の爪片の少なくとも一つは、軸方向へ弾性変形可能な弾性部を有する、
ことを特徴とする棒状化粧材保持部材。
【請求項2】
請求項1に記載の棒状化粧材保持部材であって、
前記弾性部は、前記爪片の軸方向に力が加わると変形する弾性片を有する、
ことを特徴とする棒状化粧材保持部材。
【請求項3】
請求項2に記載の棒状化粧材保持部材であって、
前記弾性片は、前記爪片に周方向の端部から切り欠かれる空間部が設けられることによって形成される、
ことを特徴とする棒状化粧材保持部材。
【請求項4】
請求項2に記載の棒状化粧材保持部材であって、
前記弾性片は、
周方向に延設される第1係合片と、
前記第1係合片と連結されて軸方向に延設される第2係合片と、
を有する、
ことを特徴とする棒状化粧材保持部材。
【請求項5】
請求項4に記載の棒状化粧材保持部材であって、
前記第1係合片と前記第2係合片とは、複数設けられて軸方向に交互に連結される、
ことを特徴とする棒状化粧材保持部材。
【請求項6】
請求項3に記載の棒状化粧材保持部材であって、
前記弾性片は、前記空間部に臨んで設けられて前記棒状化粧材と軸方向に係合する係合部を有する、
ことを特徴とする棒状化粧材保持部材。
【請求項7】
請求項6に記載の棒状化粧材保持部材であって、
前記空間部は、軸方向に沿って周方向の両端部から複数形成され、
前記係合部は、複数の前記空間部の各々に臨むように複数設けられる、
ことを特徴とする棒状化粧材保持部材。
【請求項8】
請求項7に記載の棒状化粧材保持部材であって、
周方向の両端部から各々形成される前記空間部は、一部が周方向に重複する、
ことを特徴とする棒状化粧材保持部材。
【請求項9】
請求項7に記載の棒状化粧材保持部材であって、
前記複数の爪片のうち中心軸を挟んで対向する一対の爪片には、前記空間部が周方向の同じ向きに形成される、
ことを特徴とする棒状化粧材保持部材。
【請求項10】
請求項6から9のいずれか一つに記載の棒状化粧材保持部材であって、
前記空間部は、前記爪片が周方向の両端部から軸方向に互い違いになるようにU字状に切り欠かれて形成される、
ことを特徴とする棒状化粧材保持部材。
【請求項11】
請求項6から9のいずれか一つに記載の棒状化粧材保持部材であって、
前記空間部は、前記爪片が周方向の両端部から三角形状に切り欠かれて形成される、
ことを特徴とする棒状化粧材保持部材。
【請求項12】
請求項6から9のいずれか一つに記載の棒状化粧材保持部材であって、
前記空間部は、前記爪片が周方向の両端部から軸方向に互い違いになるように三角形状に切り欠かれて形成される、
ことを特徴とする棒状化粧材保持部材。
【請求項13】
請求項1に記載の棒状化粧材保持部材を備える棒状化粧材繰出容器であって、
前記棒状化粧材が進退可能である貫通孔を有する先筒と、
前記先筒に相対回転可能に組み付けられる基筒と、
前記先筒と前記基筒との相対回転によって、前記棒状化粧材保持部材により保持された前記棒状化粧材を、前記先筒の前記貫通孔の先端開口から進退させる繰出機構と、を備え、
前記先筒の前記貫通孔には、前記棒状化粧材保持部材を軸方向に沿って案内する案内溝が設けられ、
前記案内溝には、前記爪片が位置している、
ことを特徴とする棒状化粧材繰出容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棒状化粧材保持部材及び棒状化粧材繰出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、棒状化粧料(棒状化粧材)を保持する芯チャック(棒状化粧材保持部材)を備えた化粧料容器(棒状化粧材繰出容器)が記載されている。この容器では、芯チャックは、円筒状の芯チャック本体に複数のスリットを設けて、円周部を複数の保持片(爪片)に分割して形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の容器では、芯チャックは、4つの保持片を有しており、各々の保持片は、カートリッジ体先部(先筒)内の溝部に位置している。そのため、落下等によって振動が加わると、その振動が棒状化粧料に直接伝達されて、棒状化粧料が芯チャックから抜ける芯抜けや、棒状化粧材が折れる芯折れが発生するおそれがある。
【0005】
本発明は、このような技術的課題に鑑みてなされたものであり、棒状化粧材の芯抜けや芯折れの発生を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によれば、棒状化粧材繰出容器内において棒状化粧材を保持する棒状化粧材保持部材は、前記棒状化粧材の外周面を保持する化粧材保持部と、前記化粧材保持部が立設するベース部と、を備え、前記化粧材保持部は、前記棒状化粧材の軸方向に沿って延び前記棒状化粧材の前記外周面を保持する複数の爪片を有し、前記複数の爪片の少なくとも一つは、軸方向へ弾性変形可能な弾性部を有する。
【発明の効果】
【0007】
上記態様によれば、棒状化粧材の軸方向に沿って延び棒状化粧材の外周面を保持する複数の爪片の少なくとも一つは、軸方向へ弾性変形可能な弾性部を有する。そのため、棒状化粧材を軸方向に弾性的に支持することができるので、落下等によって振動が加わっても、その振動は弾性部によって吸収される。したがって、棒状化粧材への振動の伝達が抑制されるので、棒状化粧材の芯抜けや芯折れの発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る棒状化粧材繰出容器を示す図であり、(a)は、棒状化粧材保持部材が前進限に位置した状態を示す正面の断面図であり、(b)は、棒状化粧材保持部材が後退限に位置した状態を示す側面の断面図であり、(c)は、
図1(b)におけるIC-IC線に沿う断面図である。
【
図2】
図2は、棒状化粧材保持部材を示す図であり、(a)は、正面図であり、(b)は、側面図である。
【
図3】
図3は、化粧材保持部の拡大図であり、(a)は、正面図であり、(b)は、側面図であり、(c)は、
図3(b)におけるIIIC-IIIC線に沿う断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態の第1変形例に係る棒状化粧材保持部材の化粧材保持部を示す図であり、(a)は、正面図であり、(b)は、(a)における中心軸に沿った平面による断面図であり、(c)は、側面図であり、(d)は、
図4(c)におけるIVD-IVD線に沿う断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態の第2変形例に係る棒状化粧材保持部材の化粧材保持部を示す図であり、(a)は、正面図であり、(b)は、側面図であり、(c)は、
図5(a)におけるVC-VC線に沿う断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態の第3変形例に係る棒状化粧材保持部材の化粧材保持部の正面図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態の第4変形例に係る棒状化粧材保持部材の化粧材保持部を示す図であり、(a)は、正面図であり、(b)は、側面図であり、(c)は、
図1(c)に相当する断面図であり、(d)は、
図7(b)におけるVIID-VIID線に沿う断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施形態の第5変形例に係る棒状化粧材保持部材の化粧材保持部を示す図であり、(a)は、正面図であり、(b)は、側面図であり、(c)は、
図1(c)に相当する断面図であり、(d)は、
図8(b)におけるVIIID-VIIID線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0010】
まず、
図1から
図3を参照して、本発明の実施形態に係る棒状化粧材繰出容器(以下、単に「繰出容器」と称する。)1について説明する。
【0011】
図1は、繰出容器1を示す図であり、(a)は、芯チャック部材10が前進限に位置した状態を示す正面の断面図であり、(b)は、芯チャック部材10が後退限に位置した状態を示す側面の断面図であり、(c)は、
図1(b)におけるIC-IC線に沿う断面図である。
図2は、芯チャック部材10を示す図であり、(a)は、正面図であり、(b)は、側面図である。
図3は、化粧材保持部11の拡大図であり、(a)は、正面図であり、(b)は、側面図であり、(c)は、
図3(b)におけるIIIC-IIIC線に沿う断面図である。
【0012】
図1(a)に示すように、繰出容器1は、断面形状が略円形状の棒状化粧材Aを繰り出し可能な容器である。棒状化粧材Aは、棒状に成形される成形芯であり、例えばアイブロウ、アイライナー及びリップライナー等として用いられるものである。棒状化粧材Aの外径寸法は、後述する化粧材保持部11(
図3(c)参照)の内径寸法よりも僅かに大きく形成される。
【0013】
繰出容器1は、棒状化粧材Aが進退可能である貫通孔20aを有する先筒20と、先筒20に相対回転可能に組み付けられる基筒30と、棒状化粧材Aを保持する棒状化粧材保持部材としての芯チャック部材10と、基筒30内に基筒30に対して相対回転不能に設けられる雌ねじ筒40と、を備える。
【0014】
以下では、先筒20における貫通孔20aの中心軸に沿う方向を「軸方向」と称し、貫通孔20aの中心軸周りの方向を「周方向」と称し、貫通孔20aの中心軸を中心とする放射方向を「径方向」と称する。また、繰出容器1から棒状化粧材Aが繰り出される動きを「前進」、棒状化粧材Aが繰り出される方向を「前方」と称し、繰出容器1内に棒状化粧材Aが繰り戻される動きを「後退」、棒状化粧材Aが繰り戻される方向を「後方」と称する。
【0015】
先筒20は、軸方向に貫通する貫通孔20aが形成される筒状部材である。先筒20は、棒状化粧材Aが進退可能に設けられる。先筒20は、使用者が摘む摘部24と、摘部24と軸方向に連続して形成され基筒30内に嵌入される嵌入部27と、を有する。
【0016】
貫通孔20aは、芯チャック部材10を軸方向に沿って案内する。貫通孔20aの断面形状は、棒状化粧材Aの断面形状と相似しており、略円形状に形成されている。摘部24は、嵌入部27側から先端に向かって徐々に外径が小さくなるように軸方向にテーパ状に形成されている。
【0017】
嵌入部27の外周面には、基筒30に形成される後述する嵌合凹部32に嵌合する環状の嵌合凸部25と、Oリング2が装着されるOリング溝26と、が形成される。Oリング2は、先筒20と基筒30との間に圧縮された状態で設けられることで、先筒20と基筒30とを相対回転させる際に適度な抵抗を生じさせる。これにより、使用者の操作感を向上させることができる。
【0018】
貫通孔20aは、軸方向に沿って延設され、径方向外側に向かって突出して芯チャック部材10を軸方向に沿って案内する案内溝21と、棒状化粧材Aの外周面が軸方向に沿って摺動する壁状部22と、を有する。
【0019】
図1(b)及び
図1(c)に示すように、案内溝21は、複数(ここでは2つ)の溝によって構成される。2つの案内溝21は、中心軸を通過する直線上に、中心軸を挟んで対向するように設けられる。2つの案内溝21は、複数の爪片12の位置に対応するように、周方向に180°間隔に配置される。案内溝21は、複数設けられていればよいので、3つ以上設けられてもよい。
【0020】
案内溝21の内周面は、中心軸を中心とする円弧の一部を構成するように曲面状に形成される。案内溝21内には、芯チャック部材10の後述する爪片12が位置すると共に、後述する係合条部16が係合する。
【0021】
図1(b)に示すように、案内溝21は、先筒20の後端面22aまで形成されている。案内溝21は、貫通孔20aの先端開口20bには至ることなく、その手前まで形成されている。
【0022】
壁状部22の内周面は、中心軸を中心とする円弧の一部を構成するように曲面状に形成される。壁状部22は、棒状化粧材Aの外周面を支持する。壁状部22は、隣り合う爪片12の間にて棒状化粧材Aの外周面を支持するように設けられる。
【0023】
基筒30は、芯チャック部材10を収容すると共に先筒20の嵌入部27が嵌入され、雌ねじ筒40が挿入される収容孔33を有する有底筒状に形成された部材である。収容孔33には、先筒20の嵌合凸部25が嵌合される環状の嵌合凹部32が設けられる。
【0024】
図1(a)及び
図1(b)に示すように、芯チャック部材10は、繰出容器1内において棒状化粧材Aを保持する。
図2(a)及び
図2(b)に示すように、芯チャック部材10は、棒状化粧材Aの外周面を保持する化粧材保持部11と、化粧材保持部11が立設するベース部15と、を有する。
【0025】
化粧材保持部11には、軟質かつ細径であり断面形状が真円形状の棒状化粧材Aが装填される。ここでは、棒状化粧材Aの外径は、約φ2.0[mm]である。
【0026】
化粧材保持部11は、棒状化粧材Aの軸方向に沿って延び棒状化粧材Aの外周面を保持する複数(ここでは2つ)の爪片12と、棒状化粧材Aの底部を保持する底面部としてのベース部端面15a(
図3(a)及び
図3(b)参照)と、を備える。
【0027】
図3(a)及び
図3(b)に示すように、爪片12は、ベース部端面15aから軸方向に立設される。爪片12の外周面は、ベース部15における係合条部16の外周面よりも小径に形成される。爪片12の内周面は、棒状化粧材Aの外周面に沿うように曲面状に形成される。爪片12は、棒状化粧材Aを挟むように複数(ここでは2つ)設けられる。
【0028】
爪片12は、周方向に間隔をあけて複数設けられる。具体的には、2つの爪片12は、複数の案内溝21の位置に対応するように、周方向に180°間隔に配置される。爪片12は、案内溝21と同じ数であればよいので、案内溝21が3つ以上設けられる場合には3つ以上設けられてもよい。
【0029】
図3(a)から
図3(c)に示すように、2つの爪片12は、中心軸を挟んで対向するように設けられる。爪片12は、径方向の厚さが約0.60[mm]に形成される。各々の爪片12は、弾性部としてのばね部12aと、テーパ面12gと、突部12hと、を有する。
【0030】
ばね部12aは、軸方向に弾性変形可能に設けられる。ばね部12aは、複数の爪片12のすべてに設けられる。
【0031】
このように、棒状化粧材Aの軸方向に沿って延び棒状化粧材Aの外周面を保持する複数の爪片12は、軸方向へ弾性変形可能なばね部12aを有する。そのため、棒状化粧材Aを軸方向に弾性的に支持することができるので、落下等によって振動が加わっても、その振動はばね部12aによって吸収される。したがって、棒状化粧材Aへの振動の伝達が抑制されるので、棒状化粧材Aの芯抜けや芯折れの発生を防止することができる。
【0032】
続けて、ばね部12aの詳細な構成について説明する。ばね部12aは、複数の弾性片12bと、係合部としての抜止部12cと、回転止部12dと、を有する。
【0033】
弾性片12bは、爪片12の軸方向に力が加わると変形する。弾性片12bは、爪片12の軸方向の一部の周方向の幅が他の部分よりも小さく形成されることによって設けられる。具体的には、弾性片12bは、爪片12が周方向の両端部から互い違いになるようにU字状に切り欠かれる空間部12eが設けられることによって形成される。弾性片12bは、軸方向に複数設けられる。
【0034】
弾性片12bは、周方向に延設される第1係合片12b1と、第1係合片12b1と軸方向に連結されて軸方向に延設される第2係合片12b2と、を有する。第1係合片12b1と第2係合片12b2とは、複数設けられて軸方向に交互に連結される。
【0035】
弾性片12bは、空間部12eの軸方向の大きさが変化しながら第1係合片12b1と第2係合片12b2とが変形することによって、軸方向に伸縮するように変形することが可能である。爪片12を軸方向に縮めるような力が作用した場合には、空間部12eの軸方向の大きさが小さくなるように弾性片12bが変形することによってばね部12aが軸方向に縮み、力が作用しなくなると弾性片12bが復元することによってばね部12aが軸方向に伸びて元に戻る。
【0036】
周方向の両端から形成される空間部12eは、一部が周方向に重複する。即ち、周方向の両端から形成される空間部12eは、爪片12の幅の半分以上の長さに形成される。空間部12eが周方向に大きく形成されることで、第1係合片12b1は、第2係合片12b2によって軸方向に連結される部分が小さくなり、第2係合片12b2は、周方向の幅が小さくなる。そのため、第1係合片12b1と第2係合片12b2とは、弾性率が小さくなるので変形しやすくなる。このように、空間部12eどうしが重複する重複部分が大きいほど、弾性片12bは変形しやすい。また、第2係合片12b2の周方向の幅が爪片12の他の部分よりも小さいほど、弾性片12bは変形しやすい。
【0037】
これにより、複数の弾性片12bは、例えば繰出容器1に落下等によって振動が加わった際に、棒状化粧材Aが前進する方向に抜けようとすると、空間部12eの軸方向の大きさが変化するように変形する。よって、複数の弾性片12bは、軸方向に変形することによってばね部12aが振動を吸収するため、棒状化粧材Aの芯抜けや芯折れを防止できる。
【0038】
また、化粧材保持部11に棒状化粧材Aを挿入する際には、棒状化粧材Aを先端から軸方向に挿入してゆくと、棒状化粧材Aとの摩擦によって、空間部12eの軸方向の大きさが小さくなるように複数の弾性片12bが変形するため、ばね部12aが軸方向に縮みながら爪片12が棒状化粧材Aを保持する。そして、棒状化粧材Aの底部がベース部端面15aに当接すると、複数の弾性片12bが復元することによってばね部12aが軸方向に伸びて元に戻る。このように、棒状化粧材Aが細径である場合であっても、棒状化粧材Aに過度な力が作用することはなく、爪片12に棒状化粧材Aを保持させることができる。したがって、棒状化粧材Aを充填する際に芯折れが発生することを防止することができる。
【0039】
空間部12eは、軸方向に沿って周方向の両端部から互い違いになるように複数(ここでは3つ)形成される。そのため、複数の弾性片12bが軸方向に連続して形成されるので、ばね部12aの軸方向への変形量を大きくすることができる。
【0040】
また、空間部12eが設けられることで、化粧材保持部11に挿入された棒状化粧材Aの外周面が空間部12eに食い込むことで、化粧材保持部11への棒状化粧材Aの係合を強固にすることができる。よって、衝撃などにより棒状化粧材Aが軸方向前方へ移動しそうになっても、棒状化粧材Aの外周が後述する抜止部12cに引っかかるため、棒状化粧材Aが抜けるのを防止することができる。
【0041】
複数の爪片12のうち中心軸を挟んで対向する一対の爪片12には、空間部12eが周方向の同じ向きに形成される。即ち、一対の爪片12のうち一方に形成される空間部12eと、他方に形成される空間部12eとは、中心軸まわりに回転対称となるように形成される。これにより、空間部12eが規則的に配置されるため、化粧材保持部11内において棒状化粧材Aが係合する位置を均等にすることができる。よって、化粧材保持部11内で、棒状化粧材Aの保持力が偏ることを防ぎ、棒状化粧材Aが抜けるのを防止することができる。
【0042】
抜止部12cは、第1係合片12b1に設けられる。抜止部12cは、空間部12eの軸方向の前端部に形成される。つまり、第1係合片12b1の後端部に抜止部12cが形成されている。抜止部12cは、棒状化粧材Aの周方向に沿って設けられる。抜止部12cは、棒状化粧材Aと軸方向に係合する。抜止部12cの後方には、空間部12eが形成される。
【0043】
ここで、周方向の両端から形成される空間部12eの一部が周方向に大きく重複しているため、空間部12eは、爪片12の周方向の中央を越えて形成されている。したがって、抜止部12cの周方向の寸法を大きくできるため、抜止部12cは、棒状化粧材Aの外周と周方向に係合する範囲が大きくなる。更に、空間部12eは、軸方向に沿って複数設けられている。
【0044】
これにより、衝撃などにより棒状化粧材Aが軸方向前方へ移動しそうになっても、棒状化粧材Aの外周が抜止部12cの周方向に広い範囲で引っかかり、抜止部12cが軸方向に複数形成されているため、棒状化粧材Aが抜けるのを防止する効果が高くなる。
【0045】
回転止部12dは、第2係合片12b2に設けられる。回転止部12dは、空間部12eの周方向の端部に形成される。つまり、第2係合片12b2の側方に回転止部12dが形成されている。回転止部12dは、棒状化粧材Aの軸方向に沿って設けられる。回転止部12dは、棒状化粧材Aと周方向に係合する。回転止部12dの側方には、空間部12eが形成される。
【0046】
これにより、棒状化粧材Aの使用時などに棒状化粧材Aが周方向に回転しそうになっても、棒状化粧材Aの外周が回転止部12dに引っかかるため、棒状化粧材Aが回転するのを防止することができる。
【0047】
なお、爪片12には、空間部12eが軸方向に3つ設けられているため、棒状化粧材Aと軸方向に係合する抜止部12c及び周方向に係合する回転止部12dも3つずつ形成される。このように、1本の爪片12に空間部12eを複数設けることにより、爪片12が棒状化粧材Aの外周と係合する係合箇所が増え、軸方向と周方向の係合値を高くすることができる。よって、棒状化粧材Aを保持する爪片12の本数(ここでは2つ)が少なくても、棒状化粧材Aの抜けと回転とを充分に防止することができる。また、細径の棒状化粧材Aを保持することにより爪片12の周方向の幅寸法が小さくなっていても、棒状化粧材Aの抜けと回転とを充分に防止することができる。
【0048】
テーパ面12gは、先端部に向けて棒状化粧材Aの外周面から離間するように傾斜する。テーパ面12gは、爪片12の先端部から軸方向に離間した位置に設けられる。テーパ面12gは、先端部に向かうほど一対の爪片12の間の距離である内径が大きくなるように傾斜して形成される。テーパ面12gが設けられることで、化粧材保持部11への棒状化粧材Aの挿入が容易になると共に、棒状化粧材Aを挿入する際に棒状化粧材Aの後端部外周が爪片12によって削られることを防止できる。
【0049】
なお、
図3(a)に示すように、爪片12におけるテーパ面12gよりも先端部側の部分は、棒状化粧材Aの外径よりも大径に形成される。そのため、この部分は、棒状化粧材Aとは当接しない。
【0050】
突部12hは、爪片12の外周に突出する突起である。突部12hは、棒状化粧材Aが充填されている状態において、先筒20の案内溝21に径方向に当接している。突部12hは、空間部12eよりも先端部に近い軸方向の位置に設けられる。突部12hが設けられている付近は、爪片12が棒状化粧材Aからの反力によって外周に拡がろうとするのを抑制できるため、棒状化粧材Aが抜けるのを防止できる。
【0051】
ベース部端面15aは、ベース部15における軸方向の先端部に設けられる。ベース部端面15aには、棒状化粧材Aの底面が当接する。
【0052】
先筒20の貫通孔20aには、棒状化粧材Aの外周面が軸方向に沿って摺動する壁状部22が設けられる。
図1(b)に示すように、先筒20に芯チャック部材10を組み付けると、案内溝21内に爪片12が位置する。
【0053】
壁状部22は、棒状化粧材Aの外周面を支持する。壁状部22は、貫通孔20aにおける案内溝21を除くすべての部分に形成される。よって、壁状部22と棒状化粧材Aの外周面との間のクリアランスを最小にすることのできる面積を大きくすることができる。
【0054】
壁状部22が設けられることで、爪片12が設けられない位置においては、先筒20の貫通孔20aと棒状化粧材Aとの間の距離を最小にして棒状化粧材Aを支持することができる。したがって、棒状化粧材Aの傾斜に起因する芯折れの発生を防止することができる。
【0055】
また、壁状部22が、棒状化粧材Aの外周面を軸方向に沿って常時支持することができるので、棒状化粧材Aの進退を安定させることができる。そのため、棒状化粧材Aが極細かつ軟質で、繰り出しストロークが長く折れやすい場合であっても、芯チャック部材10の後退限から前進限まで全体にわたって棒状化粧材Aの傾斜による芯折れを防止することができる。
【0056】
図2(a)及び
図2(b)に示すように、ベース部15は、案内溝21に対して周方向に係合する係合条部16と、係合条部16から軸方向に連続して形成される雄ねじ部17と、を有する。
【0057】
係合条部16は、爪片12が立設されるベース部端面15aと雄ねじ部17との間の部分の外周に形成される。係合条部16は、軸方向に沿って直線状に形成される。係合条部16が先筒20の案内溝21に係合することで、先筒20と芯チャック部材10との周方向への相対回転が規制される。隣り合う係合条部16の間には、端面19まで溝部が形成される。端面19は、先筒20における壁状部22の後端面22a(
図1(a)参照)に当接した状態で、芯チャック部材10の前進限を規定する。
【0058】
雄ねじ部17は、係合条部16から軸方向に連続して係合条部16よりも小径に形成される部分の外周に突出するように複数設けられる。雄ねじ部17は、周方向の複数個所(ここでは2か所)に設けられると共に、軸方向の複数個所に設けられる。雄ねじ部17は、雌ねじ筒40の雌ねじ部43(
図1(a)参照)に螺合する。
【0059】
図1(b)に示すように、雌ねじ筒40は、芯チャック部材10の雄ねじ部17が螺合する雌ねじ部43が軸方向に貫通して形成された樹脂製の筒状部材である。雌ねじ筒40は、基筒30内に挿入された際に基筒30の段部35に当接する後端面44と、基筒30に先筒20が組付けられた際に先筒20の後端面22aに当接する前端面42と、を有する。
【0060】
雌ねじ筒40の外周面には、軸方向に延びる複数の縦リブ(図示省略)が周方向に等間隔で形成されている。縦リブは、基筒30の内周面に形成されたローレット(図示省略)と係合し、雌ねじ筒40が基筒30に対して回転することを防止する回転止めとして機能する。
【0061】
雌ねじ筒40の雌ねじ部43に芯チャック部材10の雄ねじ部17が螺合した状態で、先筒20と基筒30とを相対回転させると、芯チャック部材10は先筒20と一体に回転し、雌ねじ筒40は基筒30と一体に回転するので、芯チャック部材10と基筒30とが相対回転する。これにより、雌ねじ部43に対して芯チャック部材10の雄ねじ部17が回転するので、芯チャック部材10は雌ねじ筒40に対して軸方向に相対移動する。即ち、先筒20と基筒30との相対回転によって、芯チャック部材10により保持された棒状化粧材Aを、先筒20の貫通孔20aの先端開口20bから進退させる繰出機構が構成される。
【0062】
このように、繰出容器1では、雌ねじ筒40と芯チャック部材10とにより棒状化粧材Aを軸方向に繰り出す繰出機構が構成されており、先筒20と基筒30とを相対回転させると先筒20及び基筒30内で芯チャック部材10が軸方向に進退し、芯チャック部材10の進退に応じて棒状化粧材Aも進退する。
【0063】
具体的には、使用者が先筒20と基筒30とを順方向に相対回転させたときには、芯チャック部材10が先筒20の先端開口20bに向かって軸方向に移動して棒状化粧材Aを前進させる。これにより、先端開口20bから棒状化粧材Aが繰り出される。一方、使用者が先筒20と基筒30とを逆方向に相対回転させたときには、芯チャック部材10が逆方向に移動して棒状化粧材Aを後退させる。これにより、棒状化粧材Aが繰り戻される。なお、芯チャック部材10の後退限は、芯チャック部材10の後端面が基筒30の底面に当接することによって規定される。
【0064】
<第1変形例>
続いて、
図4を参照して、本発明の実施形態の第1変形例に係る棒状化粧材保持部材としての芯チャック部材110における化粧材保持部111ついて説明する。なお、以下の各変形例では、前述した実施形態と同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0065】
図4は、第1変形例に係る化粧材保持部111を示す図であり、(a)は、正面図であり、(b)は、(a)における中心軸に沿った平面による断面図であり、(c)は、側面図であり、(d)は、
図4(c)におけるIVD-IVD線に沿う断面図である。
【0066】
この第1変形例に係る化粧材保持部111は、一方の爪片12にのみばね部12aが設けられる点で、上述した実施形態とは相違する。
【0067】
図4(a)及び
図4(b)に示すように、芯チャック部材110は、棒状化粧材Aの外周面を保持する化粧材保持部111と、化粧材保持部111が立設するベース部15と、を有する。
【0068】
化粧材保持部111は、棒状化粧材Aの軸方向に沿って延び棒状化粧材Aの外周面を保持する複数(ここでは2つ)の爪片112及び爪片12と、棒状化粧材Aの底部を保持する底面部としてのベース部端面15aと、を備える。
【0069】
爪片112及び爪片12は、ベース部端面15aから軸方向に立設される。爪片112及び爪片12の外周面は、ベース部15における係合条部16の外周面よりも小径に形成される。爪片112及び爪片12の内周面は、棒状化粧材Aの外周面に沿うように曲面状に形成される。
【0070】
爪片112と爪片12とは、周方向に間隔をあけて設けられる。具体的には、爪片112と爪片12とは、複数の案内溝21の位置に対応するように、周方向に180°間隔に配置される。
【0071】
爪片12は、ばね部12aを有するのに対して、爪片112は、ばね部12aを有していない。ばね部12aは、片方の爪片12のみに設けられる。即ち、ばね部12aは、複数の爪片(爪片112及び爪片12)のうち少なくとも一つに設けられればよい。
【0072】
このように、棒状化粧材Aの軸方向に沿って延び棒状化粧材Aの外周面を保持する複数の爪片(爪片112及び爪片12)の少なくとも一つは、軸方向へ弾性変形可能なばね部12aを有する。そのため、棒状化粧材Aを軸方向に弾性的に支持することができるので、落下等によって振動が加わっても、その振動はばね部12aによって吸収される。したがって、棒状化粧材Aへの振動の伝達が抑制されるので、棒状化粧材Aの芯抜けや芯折れの発生を防止することができる。
【0073】
以上のように、第1変形例に係る化粧材保持部111によっても、上述した実施形態と同様の効果を奏する。
【0074】
<第2変形例>
続いて、
図5を参照して、本発明の実施形態の第2変形例に係る棒状化粧材保持部材としての芯チャック部材210における化粧材保持部211について説明する。
【0075】
図5は、第2変形例に係る化粧材保持部211を示す図であり、(a)は、正面図であり、(b)は、側面図であり、(c)は、
図5(a)におけるVC-VC線に沿う断面図である。
【0076】
この第2変形例に係る化粧材保持部211は、ばね部212aを構成する弾性片212bの形状が、上述した実施形態とは相違する。
【0077】
図5(a)及び
図5(b)に示すように、芯チャック部材210は、棒状化粧材Aの外周面を保持する化粧材保持部211と、化粧材保持部211が立設するベース部15と、を有する。
【0078】
化粧材保持部211は、棒状化粧材Aの軸方向に沿って延び棒状化粧材Aの外周面を保持する複数(ここでは2つ)の爪片212と、棒状化粧材Aの底部を保持する底面部としてのベース部端面15aと、を備える。
【0079】
爪片212は、周方向に間隔をあけて複数設けられる。具体的には、2つの爪片212は、複数の案内溝21の位置に対応するように、周方向に180°間隔に配置される。爪片212は、案内溝21と同じ数であればよいので、案内溝21が3つ以上設けられる場合には3つ以上設けられてもよい。
【0080】
図5(a)から
図5(c)に示すように、2つの爪片212は、中心軸を挟んで対向するように設けられる。爪片212は、径方向の厚さが約0.60[mm]に形成される。各々の爪片212は、弾性部としてのばね部212aと、テーパ面12gと、突部12hと、を有する。
【0081】
ばね部212aは、軸方向に弾性変形可能に設けられる。ばね部212aは、複数の爪片212のすべてに設けられる。
【0082】
このように、棒状化粧材Aの軸方向に沿って延び棒状化粧材Aの外周面を保持する複数の爪片212は、軸方向へ弾性変形可能なばね部212aを有する。そのため、棒状化粧材Aを軸方向に弾性的に支持することができるので、落下等によって振動が加わっても、その振動はばね部212aによって吸収される。したがって、棒状化粧材Aへの振動の伝達が抑制されるので、棒状化粧材Aの芯抜けや芯折れの発生を防止することができる。
【0083】
続けて、ばね部212aの詳細な構成について説明する。ばね部212aは、複数の弾性片212bと、抜止部12cと、回転止部212dと、を有する。
【0084】
弾性片212bは、爪片212の軸方向に力が加わると変形する。弾性片212bは、爪片212の軸方向の一部の周方向の幅が他の部分よりも小さく形成されることによって設けられる。具体的には、弾性片212bは、爪片212が周方向の両端部から互い違いになるように三角形状に切り欠かれる空間部212eが設けられることによって軸方向に斜めに形成される。即ち、弾性片212bは、略Z字状になるように形成される。弾性片212bは、軸方向に複数設けられる。
【0085】
弾性片212bは、周方向に延設される第1係合片212b1と、第1係合片212b1と軸方向に連結されて軸方向に延設される第2係合片212b2と、を有する。第1係合片212b1と第2係合片212b2とは、複数設けられて軸方向に交互に連結される。
【0086】
第2係合片212b2は、軸方向に沿って周方向に傾斜するように斜めに延びる。弾性片212bは、空間部212eの軸方向の大きさが変化しながら第1係合片212b1と第2係合片212b2が変形することによって、軸方向に伸縮するように変形することが可能である。爪片212を軸方向に縮めるような力が作用した場合には、空間部212eの軸方向の大きさが小さくなるように弾性片212bが変形することによってばね部212aが軸方向に縮み、力が作用しなくなると弾性片212bが復元することによってばね部212aが軸方向に伸びて元に戻る。
【0087】
周方向の両端から形成される空間部212eは、一部が周方向に重複する。即ち、周方向の両端から形成される空間部212eは、爪片212の幅の半分以上の長さに形成される。空間部212eが周方向に大きく形成されることで、第1係合片212b1は、第2係合片212b2によって軸方向に連結される部分が小さくなり、第2係合片212b2は、周方向の幅が小さくなる。そのため、第1係合片212b1と第2係合片212b2とは、弾性率が小さくなるので変形しやすくなる。このように、空間部212eどうしが重複する重複部分が大きいほど、弾性片212bは変形しやすい。また、第2係合片212b2の周方向の幅が爪片212の他の部分よりも小さいほど、弾性片212bは変形しやすい。
【0088】
これにより、複数の弾性片212bは、例えば繰出容器1に落下等によって振動が加わった際に、棒状化粧材Aが前進する方向に抜けようとすると、空間部212eの軸方向の大きさが変化するように変形する。よって、複数の弾性片212bは、軸方向に変形することによってばね部212aが振動を吸収するため、棒状化粧材Aの芯抜けや芯折れを防止できる。
【0089】
空間部212eは、軸方向に沿って周方向の両端部から互い違いになるように複数(ここでは6つ)形成される。そのため、複数の弾性片212bが軸方向に連続して形成されるので、ばね部212aの軸方向への変形量を大きくすることができる。
【0090】
空間部212eが設けられることで、化粧材保持部211に挿入された棒状化粧材Aの外周面が空間部212eに食い込むことで、化粧材保持部211への棒状化粧材Aの係合を強固にすることができる。よって、衝撃などにより棒状化粧材Aが軸方向前方へ移動しそうになっても、棒状化粧材Aの外周が抜止部12c及び回転止部212dに引っかかるため、棒状化粧材Aが抜けるのを防止することができる。
【0091】
複数の爪片212のうち中心軸を挟んで対向する一対の爪片212にて周方向の同じ向きに形成される空間部212eは、同じ形状に形成される。即ち、一対の爪片212のうち一方に形成される空間部212eと、他方に形成される空間部212eとは、中心軸まわりに回転対称となるように形成される。これにより、空間部212eが規則的に配置されるため、化粧材保持部211内で棒状化粧材Aが係合する位置を均等にすることができる。よって、化粧材保持部211内で、棒状化粧材Aの保持力が偏ることを防ぎ、棒状化粧材Aが抜けるのを防止することができる。
【0092】
抜止部12cは、第1係合片212b1に設けられる。抜止部12cは、空間部212eの軸方向の端部に形成される。つまり、第1係合片212b1の後端部に抜止部12cが形成されている。抜止部12cは、棒状化粧材Aの周方向に沿って設けられる。抜止部12cは、棒状化粧材Aと軸方向に係合する。抜止部12cの後方には、空間部212eが形成される。
【0093】
回転止部212dは、第2係合片212b2に設けられる。回転止部212dは、空間部212eの周方向の端部に形成される。つまり、第2係合片212b2の側方(ここでは前端部と後端部)に回転止部212dが形成されている。回転止部212dは、棒状化粧材Aの軸方向に沿って周方向に傾斜するように斜めに設けられる。回転止部212dは、前端部と後端部とが棒状化粧材Aと周方向に係合すると共に、後端部が軸方向にも係合する。即ち、第2係合片212b2は、回転止部212dだけでなく、抜止部12cと同様の抜止部212cとしての機能も有する。回転止部212dの側方には、空間部212eが形成される。
【0094】
これにより、棒状化粧材Aの使用時などに棒状化粧材Aが周方向に回転しそうになっても、棒状化粧材Aの外周が回転止部212dに引っかかるため、棒状化粧材Aが回転するのを防止することができる。
【0095】
以上のように、第2変形例に係る化粧材保持部211によっても、上述した実施形態と同様の効果を奏する。
【0096】
<第3変形例>
続いて、
図6を参照して、本発明の実施形態の第3変形例に係る棒状化粧材保持部材としての芯チャック部材310における化粧材保持部311について説明する。
【0097】
図6は、第3変形例に係る化粧材保持部311の正面図である。
【0098】
この第3変形例に係る化粧材保持部311は、一部の第2係合片212b2の向きが異なる点で、第2変形例に係る化粧材保持部211とは相違する。
【0099】
図6に示すように、芯チャック部材310は、棒状化粧材Aの外周面を保持する化粧材保持部311と、化粧材保持部311が立設するベース部15と、を有する。
【0100】
化粧材保持部311は、棒状化粧材Aの軸方向に沿って延び棒状化粧材Aの外周面を保持する複数(ここでは2つ)の爪片312と、棒状化粧材Aの底部を保持する底面部としてのベース部端面15aと、を備える。
【0101】
爪片312は、周方向に間隔をあけて複数設けられる。具体的には、2つの爪片312は、複数の案内溝21の位置に対応するように、周方向に180°間隔に配置される。爪片312は、案内溝21と同じ数であればよいので、案内溝21が3つ以上設けられる場合には3つ以上設けられてもよい。
【0102】
2つの爪片312は、中心軸を挟んで対向するように設けられる。爪片312は、径方向の厚さが約0.60[mm]に形成される。各々の爪片312は、弾性部としてのばね部312aと、テーパ面12gと、突部12hと、を有する。
【0103】
ばね部312aは、軸方向に弾性変形可能に設けられる。ばね部312aは、複数の爪片312のすべてに設けられる。
【0104】
このように、棒状化粧材Aの軸方向に沿って延び棒状化粧材Aの外周面を保持する複数の爪片312は、軸方向へ弾性変形可能なばね部312aを有する。そのため、棒状化粧材Aを軸方向に弾性的に支持することができるので、落下等によって振動が加わっても、その振動はばね部312aによって吸収される。したがって、棒状化粧材Aへの振動の伝達が抑制されるので、棒状化粧材Aの芯抜けや芯折れの発生を防止することができる。
【0105】
続けて、ばね部312aの詳細な構成について説明する。ばね部312aは、複数の弾性片312bと、抜止部12cと、回転止部212dと、を有する。
【0106】
弾性片312bは、爪片312の軸方向に力が加わると変形する。弾性片312bは、爪片312の軸方向の一部の周方向の幅が他の部分よりも小さく形成されることによって設けられる。具体的には、弾性片312bは、爪片312が周方向の両端部から三角形状に切り欠かれる空間部212eが設けられることによって軸方向に斜めに形成される。弾性片312bは、軸方向に複数設けられる。
【0107】
弾性片312bは、周方向に延設される第1係合片212b1と、第1係合片212b1と軸方向に連結されて軸方向に延設される第2係合片212b2と、を有する。第1係合片212b1と第2係合片212b2とは、複数設けられて軸方向に交互に連結される。
【0108】
複数の第2係合片212b2のうち一つは、軸方向に隣り合う他の第2係合片212b2とは、逆方向に傾斜するように設けられる。具体的には、ベース部端面15aに最も近い第2係合片212b2は、弾性片312bが略Z字状になるように傾斜するのに対して、この第2係合片212b2と軸方向に隣り合う他の第2係合片212b2は、弾性片312bが略逆Z字状になるように傾斜する。即ち、ばね部312aには、略Z字状に形成される第2係合片212b2と略逆Z字状に形成される第2係合片212b2とが軸方向に交互に設けられる。
【0109】
なお、第2係合片212b2の作用、空間部212eが設けられることによる作用、及び抜止部12cと回転止部212dとの作用については、上述した第2変形例に係る化粧材保持部211と同様であるので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0110】
以上のように、第3変形例に係る化粧材保持部311によっても、上述した実施形態と同様の効果を奏する。
【0111】
<第4変形例>
続いて、
図7を参照して、本発明の実施形態の第4変形例に係る棒状化粧材保持部材としての芯チャック部材410における化粧材保持部411について説明する。
【0112】
図7は、第4変形例に係る化粧材保持部411を示す図であり、(a)は、正面図であり、(b)は、側面図であり、(c)は、
図1(c)に相当する断面図であり、(d)は、
図7(b)におけるVIID-VIID線に沿う断面図である。
【0113】
この第4変形例に係る化粧材保持部411は、断面形状が略楕円形状の棒状化粧材Bを保持する点で、上述した実施形態及び変形例とは相違する。
【0114】
先筒420は、軸方向に貫通する貫通孔420aが形成される筒状部材である。先筒420は、棒状化粧材Bが進退可能に設けられる。
【0115】
貫通孔420aは、芯チャック部材410を軸方向に沿って案内する。貫通孔420aの断面形状は、棒状化粧材Bの断面形状と相似しており、略楕円形状に形成されている。貫通孔420aは、軸方向に沿って延設され、径方向外側に向かって突出して芯チャック部材410を軸方向に沿って案内する案内溝421と、棒状化粧材Bの外周面が軸方向に沿って摺動する壁状部422と、を有する(
図7(c)参照)。
【0116】
図7(c)に示すように、案内溝421は、複数(ここでは2つ)の溝によって構成される。2つの案内溝421は、中心軸を通過する直線上に、中心軸を挟んで対向するように設けられる。2つの案内溝421は、複数の爪片412の位置に対応するように、周方向に180°間隔に配置される。案内溝421は、複数設けられていればよいので、3つ以上設けられてもよい。
【0117】
案内溝421の内周面は、中心軸を中心とする円弧の一部を構成するように曲面状に形成される。案内溝421内には、爪片412が位置すると共に、後述する係合条部16が係合する。
【0118】
案内溝421は、先筒420の後端面(図示省略)まで形成されている。案内溝421は、貫通孔420aの先端開口(図示省略)には至ることなく、その手前まで形成されている。案内溝421は、貫通孔420aの長軸を挟むように短軸の両端に各々設けられる。
【0119】
壁状部422の内周面は、棒状化粧材Bの外周面を構成する円弧の一部を構成するように曲面状に形成される。壁状部422は、棒状化粧材Bの外周面を支持する。壁状部422は、隣り合う爪片412の間にて棒状化粧材Aの外周面を支持するように設けられる。
【0120】
図7(a)から
図7(c)に示すように、芯チャック部材410は、棒状化粧材Bの外周面を保持する化粧材保持部411と、化粧材保持部411が立設するベース部15と、を有する。芯チャック部材410は、棒状化粧材Bを保持する。
【0121】
化粧材保持部411には、断面形状が略楕円形状の棒状化粧材Bが装填される。棒状化粧材Bは、棒状に成形される成形芯であり、例えばアイブロウ、アイライナー及びリップライナー等として用いられるものである。棒状化粧材Bの外径寸法は、化粧材保持部411の内径寸法よりも僅かに大きく形成される。棒状化粧材Bにおける短軸と長軸との比は、短軸を1とした場合に長軸が略3である。
【0122】
図7(a)及び
図7(b)に示すように、爪片412は、ベース部端面15aから軸方向に立設される。爪片412の外周面は、ベース部15における係合条部16の外周面よりも小径に形成される。爪片412の内周面は、棒状化粧材Bの外周面に沿うように曲面状に形成される。爪片412は、棒状化粧材Bを短軸方向に挟むように複数(ここでは2つ)設けられる。
【0123】
爪片412は、周方向に間隔をあけて複数設けられる。具体的には、2つの爪片412は、複数の案内溝421の位置に対応するように、周方向に180°間隔に配置される。爪片412は、案内溝421と同じ数であればよいので、案内溝421が3つ以上設けられる場合には3つ以上設けられてもよい。
【0124】
2つの爪片412は、中心軸を挟んで対向するように設けられる。爪片412は、径方向の厚さが約0.90[mm]に形成される。各々の爪片412は、弾性部としてのばね部412aと、テーパ面12gと、突部12hと、を有する。
【0125】
ばね部412aは、軸方向に弾性変形可能に設けられる。ばね部412aは、複数の爪片412のすべてに設けられる。
【0126】
このように、棒状化粧材Bの軸方向に沿って延び棒状化粧材Bの外周面を保持する複数の爪片412は、軸方向へ弾性変形可能なばね部412aを有する。そのため、棒状化粧材Bを軸方向に弾性的に支持することができるので、落下等によって振動が加わっても、その振動はばね部412aによって吸収される。したがって、棒状化粧材Bへの振動の伝達が抑制されるので、棒状化粧材Bの芯抜けや芯折れの発生を防止することができる。
【0127】
続けて、ばね部412aの詳細な構成について説明する。ばね部412aは、複数の弾性片12bと、抜止部12cと、回転止部12dと、を有する。
【0128】
弾性片12bは、爪片412の軸方向に力が加わると変形する。弾性片12bは、爪片412の軸方向の一部の周方向の幅が他の部分よりも小さく形成されることによって設けられる。具体的には、弾性片12bは、爪片412が周方向の両端部から互い違いになるようにU字状に切り欠かれる空間部12eが設けられることによって形成される。
【0129】
弾性片12bは、上述した実施形態における弾性片12bと同様の構成であり、空間部12eの数が4つである点でのみ相違するため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0130】
周方向の両端から形成される空間部12eは、一部が周方向に重複する。即ち、周方向の両端から形成される空間部12eは、爪片412の幅の半分以上の長さに形成される。空間部12eが周方向に大きく形成されることで、第1係合片12b1は、第2係合片12b2によって軸方向に連結される部分が小さくなり、第2係合片12b2は、周方向の幅が小さくなる。そのため、第1係合片12b1と第2係合片12b2とは、弾性率が小さくなるので変形しやすくなる。このように、空間部12eの重複部が大きいほど、弾性片12bは変形しやすい。また、第2係合片12b2の周方向の幅が爪片412他の部分より小さいほど、弾性片12bは変形しやすい。
【0131】
以上のように、第4変形例に係る化粧材保持部411によっても、上述した実施形態と同様の効果を奏する。
【0132】
また、芯チャック部材410の前進時及び後退時に棒状化粧材Bが傾いても、棒状化粧材Bと壁状部422との間のクリアランスを最小にすることのできる面積が大きいので、傾斜角度は小さい。よって、壁状部422が、棒状化粧材Bの外周面を軸方向に沿って充分な面積で常時支持することができるので、棒状化粧材Bの傾斜による芯折れを防止し、棒状化粧材Bの進退を安定させることができる。そのため、棒状化粧材Bが極細かつ軟質で、繰り出しストロークが長く折れやすい場合であっても、芯チャック部材410の後退限から前進限まで全体にわたって棒状化粧材Bの傾斜による芯折れを防止することができる。
【0133】
<第5変形例>
続いて、
図8を参照して、本発明の実施形態の第5変形例に係る棒状化粧材保持部材としての芯チャック部材510における化粧材保持部511について説明する。
【0134】
図8は、第5変形例に係る化粧材保持部511を示す図であり、(a)は、正面図であり、(b)は、側面図であり、(c)は、
図1(c)に相当する断面図であり、(d)は、
図8(b)におけるVIIID-VIIID線に沿う断面図である。
【0135】
この第5変形例に係る化粧材保持部411は、ばね部512aを構成する弾性片512bの形状が、上述した第4変形例とは相違する。
【0136】
図8(a)から
図8(c)に示すように、芯チャック部材510は、棒状化粧材Bの外周面を保持する化粧材保持部511と、化粧材保持部511が立設するベース部15と、を有する。
【0137】
化粧材保持部511は、棒状化粧材Bの軸方向に沿って延び棒状化粧材Bの外周面を保持する複数(ここでは2つ)の爪片512と、棒状化粧材Bの底部を保持する底面部としてのベース部端面15aと、を備える。化粧材保持部511には、断面形状が略楕円形状の棒状化粧材Bが装填される。
【0138】
爪片512は、周方向に間隔をあけて複数設けられる。具体的には、2つの爪片512は、複数の案内溝421の位置に対応するように、周方向に180°間隔に配置される。爪片512は、案内溝421と同じ数であればよいので、案内溝421が3つ以上設けられる場合には3つ以上設けられてもよい。
【0139】
2つの爪片512は、中心軸を挟んで対向するように設けられる。爪片512は、径方向の厚さが約0.90[mm]に形成される。各々の爪片512は、弾性部としてのばね部512aと、テーパ面12gと、突部12hと、を有する。
【0140】
ばね部512aは、軸方向に弾性変形可能に設けられる。ばね部512aは、複数の爪片512のすべてに設けられる。
【0141】
このように、棒状化粧材Bの軸方向に沿って延び棒状化粧材Bの外周面を保持する複数の爪片512は、軸方向へ弾性変形可能なばね部512aを有する。そのため、棒状化粧材Bを軸方向に弾性的に支持することができるので、落下等によって振動が加わっても、その振動はばね部512aによって吸収される。したがって、棒状化粧材Bへの振動の伝達が抑制されるので、棒状化粧材Bの芯抜けや芯折れの発生を防止することができる。
【0142】
続けて、ばね部512aの詳細な構成について説明する。ばね部512aは、弾性片512bと、抜止部12cと、回転止部512dと、を有する。
【0143】
弾性片512bは、爪片512の軸方向に力が加わると変形する。弾性片512bは、爪片512の軸方向の一部の周方向の幅が他の部分よりも小さく形成されることによって設けられる。具体的には、弾性片512bは、爪片512が周方向の両端部から互い違いになるようにU字状に切り欠かれる空間部512eが設けられることによって形成される。即ち、弾性片512bは、略S字状になるように形成される。
【0144】
弾性片512bは、周方向に延設される単一の第1係合片512b1と、第1係合片512b1と軸方向に連結されて軸方向に延設される単一の第2係合片512b2と、を有する。
【0145】
第2係合片512b2は、軸方向に沿って周方向の異なる方向へ交互に傾斜するような略S字状に延びる。弾性片512bは、空間部512eの軸方向の大きさが変化しながら第1係合片512b1と第2係合片512b2とが変形することによって、軸方向に伸縮するように変形することが可能である。爪片512を軸方向に縮めるような力が作用した場合には、空間部512eの軸方向の大きさが小さくなるように弾性片512bが変形することによってばね部512aが軸方向に縮み、力が作用しなくなると弾性片512bが復元することによってばね部512aが軸方向に伸びて元に戻る。
【0146】
周方向の両端から形成される空間部512eは、一部が周方向に重複する。即ち、周方向の両端から形成される空間部512eは、爪片512の幅の半分以上の長さに形成される。空間部512eが周方向に大きく形成されることで、第1係合片512b1は、第2係合片512b2によって軸方向に連結される部分が小さくなり、第2係合片512b2は、周方向の幅が小さくなる。そのため、第1係合片512b1と第2係合片512b2とは、弾性率が小さくなるので変形しやすくなる。このように、空間部512eの重複部が大きいほど、弾性片512bは変形しやすい。また、第2係合片512b2の周方向の幅が爪片512他の部分より小さいほど、弾性片512bは変形しやすい。
【0147】
これにより、弾性片512bは、例えば繰出容器1に落下等によって振動が加わった際に、棒状化粧材Bが前進する方向に抜けようとすると、空間部512eの軸方向の大きさが変化するように変形する。よって、弾性片512bは、軸方向に変形することによってばね部512aが振動を吸収するため、棒状化粧材Bの芯抜けや芯折れを防止できる。
【0148】
空間部512eは、軸方向に沿って周方向の両端部から互い違いになるように複数(ここでは4つ)形成される。そのため、弾性片512bが軸方向に略S字状に形成されるので、ばね部512aの軸方向への変形量を大きくすることができる。
【0149】
空間部512eが設けられることで、化粧材保持部511に挿入された棒状化粧材Bの外周面が空間部512eに食い込むことで、化粧材保持部511への棒状化粧材Bの係合を強固にすることができる。よって、衝撃などにより棒状化粧材Bが軸方向前方へ移動しそうになっても、棒状化粧材Bの外周が抜止部12c及び回転止部512dに引っかかるため、棒状化粧材Bが抜けるのを防止することができる。
【0150】
複数の爪片512のうち中心軸を挟んで対向する一対の爪片512にて周方向の同じ向きに形成される空間部512eは、同じ形状に形成される。即ち、一対の爪片512のうち一方に形成される空間部512eと、他方に形成される空間部512eとは、中心軸まわりに回転対称となるように形成される。これにより、空間部512eが規則的に配置されるため、化粧材保持部511内で棒状化粧材Bが係合する位置を均等にすることができる。よって、化粧材保持部511内で、棒状化粧材Bの保持力が偏ることを防ぎ、棒状化粧材Bが抜けるのを防止することができる。
【0151】
抜止部12cは、第1係合片512b1に設けられる。抜止部12cは、空間部512eの軸方向の端部に形成される。つまり、第1係合片512b1の後端部に抜止部12cが形成されている。抜止部12cは、棒状化粧材Bの周方向に沿って設けられる。抜止部12cは、棒状化粧材Bと軸方向に係合する。抜止部12cの後方には、空間部512eが形成される。
【0152】
回転止部512dは、第2係合片512b2に設けられる。回転止部512dは、空間部512eの周方向の端部に形成される。つまり、略S字状に形成される第2係合片512b2の側方(ここでは前端部と後端部)に回転止部512dが形成されている。回転止部512dは、棒状化粧材Bの軸方向に沿って周方向に傾斜するように斜めに設けられる。回転止部512dは、前端部と後端部とが棒状化粧材Bと周方向に係合すると共に、後端部が軸方向にも係合する。即ち、第2係合片512b2は、回転止部512dだけでなく、抜止部12cと同様の抜止部512cとしての機能も有する。回転止部512dの側方には、空間部512eが形成される。
【0153】
これにより、棒状化粧材Bの使用時などに棒状化粧材Bが周方向に回転しそうになっても、棒状化粧材Bの外周が回転止部512dに引っかかるため、棒状化粧材Bが回転するのを防止することができる。
【0154】
また、空間部512eを増やすことで、第2係合片512b2の抜止部512cの数が増える。よって、抜止部12cを有する第1係合片512b1が単一であっても、爪片512が棒状化粧材Bの外周と軸方向に係合する係合箇所を増やすことができるため、棒状化粧材Bが抜けるのを防止する効果を高くできる。
【0155】
以上のように、第5変形例に係る化粧材保持部511によっても、上述した実施形態及び各変形例と同様の効果を奏する。
【0156】
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0157】
繰出容器1内において棒状化粧材A,Bを保持する芯チャック部材10,110,210,310,410,510は、棒状化粧材A,Bの外周面を保持する化粧材保持部11,111,211,311,411,511と、化粧材保持部11,111,211,311,411,511が立設するベース部15と、を備え、化粧材保持部11,111,211,311,411,511は、棒状化粧材A,Bの軸方向に沿って延び棒状化粧材A,Bの外周面を保持する複数の爪片12,112,212,312,412,512を有し、複数の爪片12,112,212,312,412,512の少なくとも一つは、軸方向へ弾性変形可能なばね部12a,212a,312a,412a,512aを有する。
【0158】
また、繰出容器1は、棒状化粧材A,Bの外周面を保持する化粧材保持部11,111,211,311,411,511と、化粧材保持部11,111,211,311,411,511が立設するベース部15と、を有し、棒状化粧材A,Bを保持する芯チャック部材10,110,210,310,410,510と、芯チャック部材10,110,210,310,410,510を軸方向に沿って案内する貫通孔20a,420aを有し、棒状化粧材A,Bが進退可能な先筒20,420と、先筒20,420に相対回転可能に組み付けられる基筒30と、先筒20,420と基筒30との相対回転によって、芯チャック部材10,110,210,310,410,510により保持された棒状化粧材A,Bを、先筒20,420の貫通孔20a,420aの先端開口20bから進退させる繰出機構と、を備え、化粧材保持部11,111,211,311,411,511は、棒状化粧材A,Bの軸方向に沿って延び棒状化粧材A,Bの外周面を保持する複数の爪片12,112,212,312,412,512を有し、複数の爪片12,112,212,312,412,512の少なくとも一つは、軸方向へ弾性変形可能なばね部12a,212a,312a,412a,512aを有し、先筒20,420の貫通孔20a,420aには、芯チャック部材10,110,210,310,410,510を軸方向に沿って案内する案内溝21,421が設けられ、案内溝21,421には、爪片12,112,212,312,412,512が位置している。
【0159】
これらの態様によれば、棒状化粧材A,Bの軸方向に沿って延び棒状化粧材A,Bの外周面を保持する複数の爪片12,112,212,312,412,512の少なくとも一つは、軸方向へ弾性変形可能なばね部12a,212a,312a,412a,512aを有する。そのため、棒状化粧材A,Bを軸方向に弾性的に支持することができるので、落下等によって振動が加わっても、その振動はばね部12a,212a,312a,412a,512aによって吸収される。したがって、棒状化粧材A,Bへの振動の伝達が抑制されるので、棒状化粧材A,Bの芯抜けや芯折れの発生を防止することができる。
【0160】
また、ばね部12a,212a,312a,412a,512aは、爪片12,212,312,412,512の軸方向に力が加わると変形する弾性片12b,212b,312b,512bを有する。弾性片12b,212b,312b,512bは、爪片12,212,312,412,512の軸方向の一部の周方向の幅が他の部分よりも小さく形成されることによって設けられる。
【0161】
また、弾性片12b,212b,312b,512bは、爪片12,212,312,412,512が周方向の端部から切り欠かれる空間部12e,212e,512eが設けられることによって形成される。
【0162】
これらの態様によれば、弾性片12b,212b,312b,512bは、例えば繰出容器1に落下等によって振動が加わった際に、棒状化粧材A,Bが前進する方向に抜けようとすると、空間部12e,212e,512eの軸方向の大きさが変化するように変形する。よって、弾性片12b,212b,312b,512bは、軸方向に変形することによってばね部12a,212a,312a,412a,512aが振動を吸収するため、棒状化粧材A,Bの芯抜けや芯折れを防止できる。
【0163】
また、弾性片12b,212b,312b,512bは、周方向に延設される第1係合片12b1,212b1,512b1と、第1係合片12b1,212b1,512b1と連結されて軸方向に延設される第2係合片12b2,212b2,512b2と、を有する。
【0164】
この態様によれば、弾性片12b,212b,312b,512bは、空間部12e,212e,512eの軸方向の大きさが変化しながら第1係合片12b1,212b1,512b1と第2係合片12b2,212b2,512b2が変形することによって、軸方向に伸縮するように変形することが可能である。爪片12,212,312,412,512を軸方向に縮めるような力が作用した場合には、空間部12e,212e,512eの軸方向の大きさが小さくなるように弾性片12b,212b,312b,512bが変形することによってばね部12a,212a,312a,412a,512aが軸方向に縮み、力が作用しなくなると弾性片12b,212b,312b,512bが復元することによってばね部12a,212a,312a,412a,512aが軸方向に伸びて元に戻る。
【0165】
また、空間部12e,212e,512eは、軸方向に沿って周方向の両端部から複数形成される。
【0166】
この態様によれば、弾性片12b,212b,312bが軸方向に連続して形成され、弾性片512bは略S字状に形成されるので、ばね部12a,212a,312a,412a,512aの軸方向への変形量を大きくすることができる。
【0167】
また、複数の爪片12,212,312,412,512のうち中心軸を挟んで対向する一対の爪片12,212,312,412,512には、空間部12e,212e,512eが周方向の同じ向きに形成される。
【0168】
この態様によれば、一対の爪片12,212,312,412,512のうち一方に形成される空間部12e,212e,512eと、他方に形成される空間部12e,212e,512eとは、中心軸まわりに回転対称となるように形成される。これにより、空間部12e,212e,512eが規則的に配置されるため、化粧材保持部11,211,311,411,511内で棒状化粧材A,Bが係合する位置を均等にすることができる。よって、化粧材保持部11,211,311,411,511内で、棒状化粧材A,Bの保持力が偏ることを防ぎ、棒状化粧材A,Bが抜けるのを防止することができる。
【0169】
また、空間部12e,512eは、爪片12,412,512が周方向の両端部から軸方向に互い違いになるようにU字状に切り欠かれて形成される。
【0170】
また、空間部212eは、爪片212,312が周方向の両端部から三角形状に切り欠かれて形成される。
【0171】
これらの態様によれば、弾性片12b,212b,312b,512bは、例えば繰出容器1に落下等によって振動が加わった際に、棒状化粧材A,Bが前進する方向に抜けようとすると、空間部12e,212e,512eの軸方向の大きさが変化するように変形する。よって、弾性片12b,212b,312b,512bは、軸方向に変形することによってばね部12a,212a,312a,412a,512aが振動を吸収するため、棒状化粧材A,Bの芯抜けや芯折れを防止できる。
【0172】
また、ばね部12a,212a,312a,412a,512aは、空間部12e,212e,512eの軸方向に臨んで設けられて棒状化粧材A,Bと軸方向に係合する抜止部12c,212c,512cを有する。抜止部12c,212c,512cは、複数の空間部12e,212e,512eの各々に臨むように複数設けられる。
【0173】
この態様によれば、衝撃などにより棒状化粧材A,Bが軸方向前方へ移動しそうになっても、棒状化粧材A,Bの外周が抜止部12c,212c,512cに引っかかるため、棒状化粧材A,Bが抜けるのを防止することができる。
【0174】
また、周方向の両端部から各々形成される空間部12e,212e,512eは、一部が周方向に重複する。
【0175】
この態様によれば、空間部12e,212e,512eが周方向に大きく形成されることで、第1係合片12b1,212b1,512b1は、第2係合片12b2,212b2,512b2によって軸方向に連結される部分が小さくなり、第2係合片12b2,212b2,512b2は、周方向の幅が小さくなる。そのため、第1係合片12b1,212b1,512b1と第2係合片12b2,212b2,512b2とは、弾性率が小さくなるので変形しやすくなる。
【0176】
これにより、弾性片12b,212b,312b,512bは、例えば繰出容器1に落下等によって振動が加わった際に、棒状化粧材A,Bが前進する方向に抜けようとすると、空間部12e,212e,512eの軸方向の大きさが変化するように変形する。よって、弾性片12b,212b,312b,512bは、軸方向に変形することによってばね部12a,212a,312a,412a,512aが振動を吸収するため、棒状化粧材A,Bの芯抜けや芯折れを防止できる。
【0177】
また、化粧材保持部11,111,211,311,411,511に棒状化粧材A,Bを挿入する際には、棒状化粧材A,Bを先端から軸方向に挿入してゆくと、棒状化粧材A,Bとの摩擦によって、空間部12e,212e,512eの軸方向の大きさが小さくなるように弾性片12b,212b,312b,512bが変形するため、ばね部12a,212a,312a,412a,512aが軸方向に縮みながら爪片12,212,312,412,512が棒状化粧材A,Bを保持する。そして、棒状化粧材A,Bの底部がベース部端面15aに当接すると、弾性片12b,212b,312b,512bが復元することによってばね部12a,212a,312a,412a,512aが軸方向に伸びて元に戻る。このように、棒状化粧材A,Bが細径である場合であっても、棒状化粧材A,Bに過度な力が作用することはなく、爪片12,212,312,412,512に棒状化粧材A,Bを保持させることができる。したがって、棒状化粧材A,Bを充填する際に芯折れが発生することを防止することができる。
【0178】
また、空間部12e,212e,512eが、爪片12,212,312,412,512の周方向の中央を越えて形成されている。したがって、抜止部12c,212c,512cの周方向の寸法を大きくできるため、抜止部12c,212c,512cは、棒状化粧材A,Bの外周と周方向に係合する範囲が大きくなる。更に、空間部12e,212e,512eは、軸方向に沿って複数設けられている。これにより、衝撃などにより棒状化粧材A,Bが軸方向前方へ移動しそうになっても、棒状化粧材A,Bの外周が抜止部12c,212c,512cの周方向に広い範囲で引っかかり、抜止部12c,212c,512cが軸方向に複数形成されているため、棒状化粧材A,Bが抜けるのを防止する効果が高くなる。
【0179】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0180】
1 繰出容器(棒状化粧材繰出容器)
10,110,210,310,410,510 芯チャック部材(棒状化粧材保持部材)
11,111,211,311,411,511 化粧材保持部
12,112,212,312,412,512 爪片
12a,212a,312a,412a,512a ばね部(弾性部)
12b,212b,312b,512b 弾性片
12b1,212b1,512b1 第1係合片
12b2,212b2,512b2 第2係合片
12c,212c,512c 抜止部(係合部)
12d,212d,512d 回転止部
12e,212e,512e 空間部
15 ベース部
20,420 先筒
20a,420a 貫通孔
20b 先端開口
22,422 壁状部
30 基筒
A,B 棒状化粧材